(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ティーチング処理手段は、ティーチング走行経路上を車体が走行するとき前記物体検出部により検出された物体のうち、少なくとも2つの物体の位置に基づいて、当該少なくとも2つの物体を目標物として設定する目標物設定処理、前記目標物設定処理により設定された少なくとも2つの物体を通り、走行時の基準となる基準線を設定する基準線設定処理、及び、前記基準線から車体までの距離を演算する距離演算処理を実行し、
前記走行制御部は、前記基準線から前記車体までの距離を設定距離に維持する状態で前記基準線に沿って自動走行させる走行制御処理を実行する請求項2に記載の作業車。
前記ティーチング処理手段は、前記基準線設定処理において、車体が物体列に沿って走行しているときに、前記基準線に相当する物体列と隣接する物体列における2つの物体の位置に基づいて隣接する物体列についての位置情報を求めて前記保持手段に保持する請求項3に記載の作業車。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来構成は、種々の情報を取得するティーチング処理として、樹木列の間に位置する複数の中間領域を順次走行するという煩わしい作業が必要であり、ティーチング処理に手間がかかる不利があった。
【0005】
そこで、種々の情報を取得するティーチング処理を少ない手間で行えるようにすることが望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る作業車の特徴構成は、予め設定された検出用範囲に向けて検出信号を送信し、前記検出信号に対する反射信号を取得して、前記検出用範囲に存在する物体を検出する物体検出部と、
第1方向及び前記第1方向と直交する第2方向の夫々に沿って間隔をあけて並ぶ状態で複数の位置固定の物体が存在する作業用区画において、
前記作業用区画の周囲
に位置するティーチング走行経路上を車体が走行するときに、前記物体検出部の検出情報に基づいて、前記作業用区画に格子状に並ぶ物体の
前記第1方向及び前記第2方向夫々についての個数、
前記第1方向及び前記第2方向夫々についての物体同士の間隔、及び、最も近い物体列から
前記ティーチング走行経路までの距離を求めるティーチング処理手段と、
前記ティーチング処理手段にて求めた情報を保持する保持手段と、を備えている点にある。
【0007】
本発明によれば、種々の情報を取得するためのティーチング処理を行う場合には、作業用区画における周囲のティーチング走行経路に沿って車体を走行させる。車体が走行するに伴って物体検出部が検出用範囲に存在する物体を検出する。物体検出部は物体からの反射信号により車体と物体との間の相対的な位置情報等を取得可能であり、ティーチング処理手段は、物体検出部の検出情報に基づいて、作業用区画に格子状に並ぶ物体の第1方向及び第2方向夫々の個数は勿論、第1方向及び第2方向夫々についての物体同士の間隔、及び、最も近い物体列からティーチング走行経路までの距離を求めることができる。ティーチング処理にて取得した情報を保持手段にて保持することができ、ティーチング処理が終了した後には、保持手段にて保持されている情報を有効に利用することができる。
【0008】
従って、作業用区画における周囲を走行するだけで種々の情報を取得することが可能であり、少ない手間でティーチング処理を行うことが可能となった。
【0009】
本発明においては、前記保持手段にて保持されている情報に基づいて、前記作業用区画内において物体列に沿って車体を自動走行させる走行制御部を備えていると好適である。
【0010】
本構成によれば、ティーチング処理にて取得して保持される情報、すなわち、物体の個数、物体同士の間隔、及び、最も近い物体列からティーチング走行経路までの距離の情報に基づいて、走行制御部が車体を物体列に沿うように自動走行させることができる。
【0011】
従って、作業用区画において物体が存在する箇所以外の領域での作業を行う場合、物体についての情報、すなわち、物体の個数、物体同士の間隔、及び、作業用区画の周囲のティーチング走行経路から物体列までの離間距離の情報を用いて、物体列の間に位置する複数の中間領域や作業用区画の周囲の領域を走行しながら、物体との間の干渉を回避しながら自動で良好に作業を行うことができる。
【0012】
本発明においては、前記ティーチング処理手段は、ティーチング走行経路上を車両が走行するとき前記物体検出部により検出された物体のうち、少なくとも2つの物体の位置に基づいて、当該少なくとも2つの物体を目標物として設定する目標物設定処理、前記目標物設定処理により設定された少なくとも2つの物体を通り、走行時の基準となる基準線を設定する基準線設定処理、及び、前記基準線から車体までの距離を演算する距離演算処理を実行し、 前記走行制御部は、前記基準線から前記車体までの距離を設定距離に維持する状態で前記基準線に沿って自動走行させる走行制御処理を実行すると好適である。
【0013】
本構成によれば、ティーチング処理手段は、車両が物体列の先端部に近づくと、物体列における最前部の物体と、その物体に隣接し且つ車両進行方向下手側に位置する物体を目標物として設定する。そして、目標物として設定した2つの物体を通り、走行時の基準となる基準線を設定するとともに、基準線から車体までの距離を演算する。
【0014】
車両が走行すべき方向の基準となる物体の並び方向に沿う基準線を求めることができ、基準線から車体までの距離を設定した状態で基準線に沿って車体を走行させることが可能であり、車体を基準線に沿う適正な経路に沿う状態で自動走行させることが可能となる。
【0015】
本発明においては、前記ティーチング処理手段は、前記基準線設定処理において、車両が物体列に沿って走行しているときに、前記基準線に相当する物体列と隣接する物体列における2つの物体の位置に基づいて隣接する物体列についての位置情報を求めて前記保持手段に保持すると好適である。
【0016】
本構成によれば、所定の物体列に基づく基準線を設定して自動走行しているときに、物体検出部は、基準線に相当する物体列と隣接する物体列における物体が検出用範囲に存在すると、その隣接する物体列についての位置情報を求めることができる。その結果、基準線に沿う走行が終了したのちに、隣接する物体列について新たに基準線を設定して、その新たな基準線に基づいて自動走行させることが可能となる。
【0017】
本発明においては、前記物体が地面に植えられた樹木であると好適である。
【0018】
本構成によれば、第1方向及び第2方向の夫々に沿って間隔をあけて並ぶ状態で樹木が植えられている果樹園等において、樹木以外の他の領域についての作業(例えば、草刈作業等)を、未作業領域が生じるおそれの少ない状態で、車両を自動走行させながら良好に行うことが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に基づいて、本発明に係る作業車の実施形態を説明する。
本発明に係る作業車は、
図1に示されるような予め設定された作業用区画としての果樹園Pの内部において、複数の果樹(樹木の一例)Kの間に生えている草を刈り取る草刈作業を行う。
図1に示す例では、果樹園Pは、矩形状に区画された領域であって、第1方向D1及び第1方向D1と直交する第2方向D2の夫々に沿って間隔L1,L2をあけて並ぶ状態で、位置固定の物体としての複数の果樹が存在する領域である。
【0021】
〔全体構成〕
図3,10に示すように、作業車1は、走行車体2における長手方向の一端側に左右一対の第1車輪3Aを備え、長手方向の他端側に左右一対の第2車輪3Bを備えている。走行車体2には、動力源であるエンジン4が備えられ、走行車体2の下部における第1車輪3Aと第2車輪3Bとの間に草刈装置5が備えられている。走行車体2には、図示はしないが、エンジン4の動力を、第1車輪3Aと第2車輪3Bに伝達するとともに、草刈装置5に伝達する伝動機構が備えられている。伝動機構は、各車輪3A,3B及び草刈装置5に対する動力伝達を断続できるように構成されている。エンジン4の動力が各車輪3A,3B及び草刈装置5に伝達されることで、機体を走行させながら草刈作業を行うことができる。
【0022】
伝動機構に備えられた前後進切換装置6(
図4参照)により、走行車体2の進行方向を前後で切り換えることができる。第1車輪3A及び第2車輪3Bは夫々、後述する電動モータの駆動力により縦軸芯周りで揺動することによりステアリング操作自在に設けられている。
図9,10に示すように、第1車輪3A及び第2車輪3Bは夫々、直進用姿勢、右向き揺動姿勢、並びに、左向き揺動姿勢の夫々に向き変更操作可能である。
【0023】
この作業車1は、無線操縦による遠隔操作にて操縦操作する手動操縦操作状態と、走行車体2に対する複数の果樹の位置の情報を検出しながら、果樹園P内において果樹列に沿って走行車体2を自動走行させる自動走行操作状態とに切り換え可能に構成されている。
【0024】
図4に示すように、走行車体2には、エンジン4に対する燃料供給量を調整するアクセル7及び車輪3A,3Bを制動するブレーキ8を操作するアクセルモータ9と、前後進切換装置6を切り換え操作する前後進モータ10と、第1車輪3Aの操向操作を行う電動モータである第1操向モータ11と、第2車輪3Bの操向操作を行う電動モータである第2操向モータ12とが備えられている。詳述はしないが、ブレーキ8は制動状態に向けてバネ付勢されており、アクセルモータ9の操作に伴って、アクセル7がアイドリング状態になるとブレーキ8は制動状態となり、アクセル開度が増大すると制動状態が解除されるように、連動操作する構成となっている。
【0025】
図4に示すように、走行車体2には、アクセルモータ9、前後進モータ10、第1操向モータ11、第2操向モータ12の動作を制御して、作業車1の全体の運転状態を制御する制御装置13が備えられている。作業者が持ち運びしながら操作可能な送信機14が備えられ、走行車体2には送信機14にて無線送信される操作信号を受信可能な受信機15が備えられている。受信機15の受信情報は制御装置13に入力される。
【0026】
走行車体2には、運転停止スイッチ16、自動入切スイッチ17、物体検出部18、及び、障害物センサ19が備えられ、これらの情報が制御装置13に入力されている。運転停止スイッチ16は、走行車体2の走行操作及び草刈装置5の運転操作を強制的に停止させることができる。自動入切スイッチ17は、制御装置13の制御状態を手動操縦用制御状態と自動走行用制御状態とに切り換え可能である。物体検出部18は、詳細な構成については後述するが、走行車体2の外部における物体を検出することが可能である。障害物センサ19は、走行車体2のバンパー20に取付けられ、物体検出部18では検知できない低い位置にある樹木の切株等の障害物の存在を検知可能な接触式のセンサである。
【0027】
図3に示すように、物体検出部18は、走行車体2の上部に備えられている。物体検出部18は、予め設定された検出用範囲に向けて検出信号を送信し、検出信号に対する反射信号を取得して、検出用範囲に存在するように構成されている。具体的には、物体検出部18は、レーザースキャナセンサにより構成されている。予め設定された範囲とは物体検出部18の検出可能な範囲であり、本実施形態では、
図5に示されるように、走行車体2における縦向き軸芯を中心とする約270度の範囲Rである。検出信号はレーザー光であり空中伝搬する信号である。検出信号は、車体接地面から所定高さの位置で水平方向に投射される。この検出信号は物体に投射されると物体の表面で反射される。物体検出部18は、検出信号を予め設定された範囲に送信し、反射信号を取得する。物体検出部18は、検出信号の送信方向に基づいて物体検出部18を基準とした物体が存在する方向を示す情報と、検出信号を送信してから反射信号を取得するまでの時間に基づいて演算した物体検出部18から物体までの距離を示す情報とを取得する。本実施形態では、物体検出部18は水平方向に、且つ、上述した範囲Rに対して微小単位角毎に検出信号を送信する。
【0028】
図5に示されるように、物体検出部18は、車体進行方向に対して横一側外方に向けて検出信号を送信して、走行車体2の片側に存在する物体を検出する。尚、この構成に代えて、走行車体2の両側に存在する物体を検出するよう構成することも可能である。また、必要に応じて物体検出部18全体を回転し、範囲Rが走行車体2の予定走行経路Sに対して左右で反転するように構成することも可能である。
【0029】
図4に示すように、制御装置13は、自動走行に先立って行われる手動操縦に基づくティーチング走行において種々の情報を求めるティーチング処理手段としてのティーチング処理部100と、ティーチング処理部100にて求めた情報を保持する保持手段としての保持部101と、ティーチング処理部100にて求められて保持部101に保持されている情報に基づいて、果樹園P内において果樹列に沿って車体を自動走行させる走行制御部102とを備えている。この実施形態では、制御装置13は、マイクロコンピュータを備えて構成され、ティーチング処理部100及び走行制御部102は、制御プログラム型式で構成されている。保持部101は、種々のデータを記憶保持可能な不揮発性メモリ等からなる。
【0030】
〔ティーチング処理部〕
ティーチング処理部100は、ティーチング走行経路TL上を車両が走行するときに、物体検出部18の検出情報に基づいて、果樹園Pに格子状に並ぶ果樹(物体)の個数、果樹同士の間隔、及び、最も近い果樹列からティーチング走行経路TLまでの距離を求める。ティーチング走行は、運転者が送信機14を操作することにより手動操縦に基づいて行われる。つまり、
図1に示すように、果樹園Pの外周部に沿って第1方向及び第2方向夫々に走行することになる。
【0031】
説明を加えると、ティーチング処理部100は、ティーチング走行経路TL上を車両が走行するときに、物体検出部18の検出情報に基づいて物体の数を計数し、走行車体2が果樹園Pの端部に達したことを検知したときにまで計数した物体の数を当該果樹列における果樹の個数として設定する。
【0032】
また、ティーチング走行経路TL上を走行車体2が走行するときに、物体検出部18により検出された果樹Kのうち、少なくとも2つの果樹K(物体)の位置に基づいて、当該少なくとも2つの果樹Kを目標物Oとして設定する目標物設定処理を実行する。その結果、2つの目標物O(果樹K)の位置と走行車体2の位置との情報に基づいて三角測量法を用いて2つの果樹K同士の間隔を求めることができる。この2つの果樹K同士の間隔は、第1方向の間隔だけでなく第2方向の間隔も求めることができる。
【0033】
ティーチング処理部100は、目標物設定処理により設定された少なくとも2つの果樹K(物体)を通り、走行時の基準となる基準線SLを設定する基準線設定処理、及び、基準線SLから走行車体2までの距離を演算する距離演算処理を実行する。又、物体検出部18の検出結果に基づき、果樹Kの外径を推定する外形推定処理も合わせて実行する。
【0034】
基準線設定処理について説明する。
目標物設定処理により設定された少なくとも2つの目標物Oを通る基準線SLを設定する。つまり、
図5に示すように、制御装置13内で用いる座標系において、この第1の目標物O1と第2の目標物O2とを直線で繋いで基準線SLを設定する。基準線SLは、物体検出部18により一つの物体として検出された検出結果のうち、夫々の中央部分を通るように直線で繋いだものである。尚、このとき後述する果樹の外径の情報も加味される。
【0035】
距離演算処理について説明する。
上記したような座標系において、基準線SLから走行車体2までの距離を演算にて求める。この距離は、上記座標系において基準線SLと走行車体2とを最短で繋いだ距離、言い換えると、基準線SL上に位置する最も近い果樹列から走行車体2が位置するティーチング走行経路TLまでの距離に相当する。
【0036】
外径推定処理について説明する。
上述したように、物体検出部18は水平方向に所定の微小単位角(ピッチ)毎に検出信号を送信する。例えば、物体の外径の演算を1ステップ毎に行うとすると、
図7に示されるように、1ステップに係る物体の幅は、「L3×tanθ」で近似的に演算することができる(L3:物体までの距離、θ:1ステップでの検出角度)。この1ステップ分の物体の幅に、物体からの反射信号を受信したステップ数を掛けると、物体の外径を推定することができる。なお、上記の演算は、複数ピッチ毎に行ってもよく1ピッチ毎に行うことも可能である。
【0037】
ティーチング処理部100は、上記したような処理を実行することにより、物体検出部18の検出情報に基づいて、果樹園Pに格子状に並ぶ果樹Kの個数、果樹K同士の間隔(第1方向D1の間隔L1及び第2方向D2の間隔L2を含む)、及び、最も近い果樹列からティーチング走行経路TLまでの距離mを求め、それらの情報を保持部101に保持する。説明を加えると、果樹園Pにおける果樹Kが存在する箇所以外の他の領域(草刈作業すべき領域)、すなわち、果樹園Pの外周縁部と最外側に位置する果樹列までの外側領域、果樹列同士の間での中間領域等の作業幅の情報を取得することができる。
【0038】
ティーチング処理部100は、基準線設定処理において、走行車体2が果樹列に沿って走行しているときに、基準線に相当する果樹列と隣接する果樹列における2つの物体の位置に基づいて隣接する果樹列についての位置情報を求めて保持部101に保持することができる。
【0039】
〔走行制御部〕
走行制御部102は、ティーチング処理部100にて求められて保持部101に保持されている情報と、物体検出部18の検出情報とに基づいて、車体を第1方向及び第2方向の夫々に沿って自動走行させる形態で、果樹園P内において果樹列に沿って車体を自動走行させる。
【0040】
説明を加えると、走行制御部102は、物体検出部18の検出情報に基づいて、ティーチング処理部100における目標物設定処理及び基準線設定処理と同様な処理を実行する。すなわち、果樹列の並び方向に沿う基準線を設定する。さらに、走行制御部102は、ティーチング処理部100における距離演算処理と同様な処理を実行し、走行車体2と基準線SLとの距離を求める。そして、第1方向D1及び第2方向D2の夫々について、基準線SLから走行車体2までの距離mを目標走行経路に対応する設定距離に維持する状態で基準線SLに沿って往復走行させる走行制御処理を実行する。
【0041】
目標走行経路は、ティーチング処理部100によって取得されて保持部101に保持されている情報に基づいて、作業車1を用いて果樹園P内での草刈作業を行うのに適した走行経路として設定される。
図2に示すように、第1方向D1及び第2方向D2の夫々に沿う複数の目標走行経路が設定される。すなわち、草刈作業すべき領域の幅と作業車による草刈り作業幅とを考慮し、刈残しが生じないように作業域が少し重なる状態で目標走行経路が設定される。
【0042】
走行制御部102は、1つの目標走行経路での走行中に、検出された果樹の個数が保持部101に保持されている個数に達すると、経路終端部に至ったと判断して、当該走行経路での走行を終了して次の目標走行経路に向けて移動する。1つの作業領域内で隣接する目標走行経路に移動するときは、スイッチバックにて移動する。スイッチバックとは、走行車体2が果樹園Pの端部に達した際に前後進を繰り返して、走行車体2の位置を当該端部の位置から側方にずらすように移動する走行形態である。スイッチバックにて移動した後は、物体検出部18による検知方向がそのままであるから、同じ果樹列を対象にして自動走行が行われる。
【0043】
走行制御部102は、走行制御処理において、走行車体2が果樹列における第2方向D2一方側箇所を第1方向D1に沿って走行しているときに、果樹列の車体進行方向側端部に位置する端部側果樹の側方を通過すると、果樹列における第2方向D2他方側箇所に移動して第1方向D1に沿って走行するように旋回走行させる第一旋回処理を実行する。
【0044】
図2における最右側の紙面上下方向に並ぶ果樹列を対象として第一旋回処理について説明する。但し、紙面の向きとしては、第1方向を紙面上下方向として設定したものとして説明する。
果樹列における第2方向D2一方側箇所としての果樹列の右側領域において、果樹列に最も近い走行経路を紙面上向きに走行して、走行車体2が端部側果樹の側方を通過すると、第2方向D2他方側箇所としての当該果樹列の左側領域に移動するように旋回走行させる。このときは、略U字状の経路で前進走行しながら旋回する。その後は、走行車体2は当該果樹列の左側領域を紙面下向きに走行する。このとき、旋回する前に紙面上向きに走行するときは、物体検出部18は左側(進行方向視で左側)に位置する果樹列を検出対象として検出作動し、旋回した後に紙面下向きに走行するときは、物体検出部18は右側(進行方向視で左側)に位置する果樹列を検出対象として検出作動する。
【0045】
走行制御部102は、第2方向D2に離間する一対の果樹列の中間部を第1方向D1に沿って走行しているときに、果樹列の車体進行方向側端部に位置する端部側果樹の側方を通過すると、車体の向きが逆向きになるように方向転換させる第二旋回処理を実行する。
【0046】
図2における最右側の紙面上下方向に並ぶ果樹列とその左側の果樹列との間の中間領域を対象として第二旋回処理について説明する。
走行車体2が前記中間領域を紙面上側に向けて走行しているとき、次回の目標走行経路が中間部の幅方向中央位置を越える場合には、走行車体2が端部側果樹の側方を通過すると、左右向き姿勢になるように右方向に90度旋回したのち、そのまま直進状態で所定距離だけ後進し、さらに、紙面上下向き姿勢になるように90度右方向に旋回して、車体の向きが逆向きになるように方向転換させる。このように旋回することで、物体検出部18による検出対象が左側の果樹列となり、その果樹列を検出して、次回走行用の基準線SLを設定することができる。
【0047】
走行制御部102は、第1方向D1に沿う複数の走行経路のうち最後の走行経路において走行しているときに、果樹列の車体進行方向側端部に位置する端部側果樹Kの側方を通過するのに伴って、走行車体2の向きが第2方向D2に沿う向きになるように旋回走行させる第三旋回処理を実行する。
【0048】
図2における最左側の紙面上下方向に沿う走行経路を対象として第三旋回処理について説明する。
走行車体2が最左側の紙面上下方向に沿う走行経路(ティーチング走行経路TLの一部に相当する)を紙面下側に向けて走行しているとき、端部側果樹Kの側方を通過すると、走行車体2の向きが紙面左右方向に沿う向きになるように略L字状に旋回走行させる。このとき、紙面左右方向すなわち、第2方向D2に沿う走行経路のうち、最外側に位置する目標走行経路(本実行ではティーチング走行経路TLの一部に相当する)が設定される。
【0049】
第三旋回処理が終了して、第2方向D2に沿う自動走行が開始されると、以後は、第1方向D1に沿う自動走行と同じような処理を実行する。
すなわち、走行車体2が第三旋回処理によって向きを変更したのち、走行車体2が果樹列における第1方向D1一方側箇所を第2方向D2に沿って走行しているときに、果樹列の車体進行方向側端部に位置する端部側果樹の側方を通過するのに伴って、果樹列における第1方向D1他方側箇所に移動して第2方向D2に沿って走行するように略U字状に旋回させる第四旋回処理、及び、第1方向D1に離間する一対の果樹列の中間部を第2方向D2に沿って走行しているときに、果樹列の車体進行方向側端部に位置する端部側果樹の側方を通過するのに伴って、車体の向きが逆向きになるように方向転換させる第五旋回処理を実行する。
【0050】
第四旋回処理及び第五旋回処理は、車体走行方向が第1方向D1と第2方向D2とで異なるが、それ以外は、第一旋回処理及び第二旋回処理と同じである。
【0051】
図1に示すように、果樹園Pの外端縁に沿って固定状態で複数の支持体21が設置されている。支持体21は、例えば、柵やフェンス等の支柱等を兼ねる構成としてもよい。複数の支持体21のうち、果樹園Pの四隅に位置する支持体21にレーザ光を反射する被検知体としての反射体22が備えられている。反射体22は、照射光が入射した場合、その照射光の入射方向と同じ方向に光を反射するように構成されている。従って、どの角度からレーザ光を受けても、物体検出部に向けてレーザ光を反射するようになっている。
【0052】
物体検出部18が四隅のいずれかの反射体22を検出することで、走行車体2が果樹園Pの端部に達したことを検知するように構成されている。反射体22は四隅に位置する支持体21に対して所定距離だけ走行方向手前側に位置する支持体21にも備えられている。直進走行時に反射体を2回検出することで確実に果樹園Pの端部に至ったことを検知できる。この構成により、物体検出部18の検出情報を用いて果樹園Pの外端部に近づいたことを的確に検出することができる。反射体22は、支持体21だけでなく、後述する作業開始位置に対応する果樹Kにも設けられている。
【0053】
走行制御部102は、走行制御処理を実行して走行車体2を自動走行させているときに、障害物センサ19が検知作動すると、障害物Gを回避するように走行車体2を走行させる障害物回避処理を実行する。
【0054】
図8を参照して障害物回避処理について説明する。
所定の果樹列の右横側を目標走行経路に沿って走行しているときに、障害物センサ19が検知作動すると、その時点で、走行車体2の走行を一時停止する。そして、物体検出部18にて検出された2つの果樹Kの位置の情報と、物体検出部18の検出結果とに基づいて、三角測量法により障害物の位置を判別して、その位置を保持部101に記憶保持しておく。その後、走行車体2を所定距離だけ後進させたのち、果樹列とは反対側に向けて障害物を避けながら迂回するように走行して目標走行経路に復帰させる。
【0055】
〔制御内容〕
以下、制御装置13による具体的な制御内容についてフローチャートに基づいて説明する。
【0056】
ティーチング走行を行うときは、走行車体2を果樹園Pにおいて予め設定されている作業開始位置に位置させた状態で、送信機14の手動操縦に基づいて、走行車体2を果樹園Pの外周部に沿うティーチング走行経路TL上を走行させる。制御装置13は、ティーチング走行経路TLに沿う走行車体2の走行中に、
図11に示すティーチング処理を実行する。このティーチング処理は、送信機14に備えられた指令スイッチ(図示せず)の指令操作に基づいて行われる。
【0057】
ティーチング処理について説明する。
物体検出部18は、所定の範囲について物体の検出を開始する(ステップ#1)。以後、物体検出部18は、ティーチング処理が終了するまで継続して物体の検出を行う。走行車体2の周囲において、少なくとも2つの物体が検出されると(ステップ♯2)、その2つの物体を、目標物Oとして設定する(ステップ#3)。尚、走行車体2が作業開始位置STに位置しているとき、物体検出部18は作業開始位置STに対応する果樹Kに設けられた反射体22を検出することで、開始位置にあることを認識することができる。
【0058】
ここで、制御装置13は、物体検出部18により取得された当該物体検出部18を基準とした物体が存在する方向を示す情報と、物体検出部18から物体までの距離を示す情報とに基づき、走行車体2を基準とした座標系において目標物O1及び目標物O2の座標が演算される。この場合、
図6の♯101,♯102に示すように、走行車体2の座標が(0,0)として設定されると、目標物O1の座標が(X1,Y1)、目標物O2の座標が(X2,Y2)として演算される。しかし、以降の処理を行い易くするために、走行車体2を基準とした座標系から基準線SLをy軸とする座標系に座標変換が行われる。これにより、
図6の♯103に示すように、目標物O1の座標(X1,Y1)、及び目標物O2の座標(X2)が座標変換され、目標物O1の座標(0,y1)、及び目標物O2の座標(0,y2)となる。
【0059】
次に、2つの目標物O1及び目標物O2を基準に基準線SLを設定する(ステップ#4)。この基準線SLは、物体検出部18により検出された目標物O1と目標物O2の中心位置を繋いだ線で設定される。このとき、外径推定処理により推定した目標物の外径の情報も加味される。
【0060】
基準線SLから走行車体2までの離間距離を演算にて求める(ステップ#5)。また、果樹列の並び方向に沿う果樹K同士の間隔L1(又はL2)を三角測量法に基づいて演算にて求める(ステップ#6)。さらに、物体検出部18にて検出される果樹Kの本数をカウントして演算にて求める(ステップ#7)。
【0061】
物体検出部18が反射体22を検出することにより走行経路の終端部に至ったことが検出されると、上記したようにして求めた、離間距離、果樹K同士の間隔L1,L2、果樹Kの本数についてのデータを保持部101に記憶させて保持する(ステップ#8、#9)。ステップ#1からステップ#9までの処理を送信機14により終了が指令されるまで繰り返し実行する(ステップ#10)。
【0062】
次に、果樹列に沿って走行車体2を自動走行させる自動走行制御について説明する。
自動走行を行う場合には、無線操縦によって走行車体2を作業開始位置に移動して、草刈装置5を作動させて第1方向D1に向けて走行可能な状態でセットする。そして、自動入切スイッチ17を自動モードに切り換えると、自動走行制御を実行する。
【0063】
自動走行制御について説明する。
図12に示すように、ティーチング処理の場合と同様な、物体検出部18による物体の検出(ステップ#11)、2つの物体検出の判別(ステップ#12)、目標物の設定(ステップ#13)を実行し、さらに、2つの目標物Oの位置に基づいて基準線SLを設定(ステップ#14)し、設定された基準線SLから走行車体2までの距離を演算にて求め(ステップ#15)、さらに、現在走行中の走行経路における果樹Kの個数を計数する(ステップ#16)。次に、第1方向D1に沿う走行制御処理(ステップ#17)、及び、第2方向に沿う走行制御処理(ステップ#18)を実行する。第1方向D1に沿う走行制御処理及び第2方向に沿う走行制御処理については後で説明する。
【0064】
第1方向D1に沿う走行制御処理について説明する。
図13に示すように、第1方向D1に沿って走行車体2を走行させて、ステップ#14(
図12参照)にて求められた基準線SLから走行車体2までの距離が目標範囲に収まるように自動操向処理を実行する(ステップ#21、#22)。目標範囲は、目標走行経路に対応する状態で設定された設定距離mに所定の許容範囲を持たせたもの(m±α)である。従って、作業車1は目標走行経路に沿って移動走行しながら草刈作業を実行する。この自動操向処理において、走行車体2の向き変更操作を行うときは、第1車輪3A及び第2車輪3Bのうち進行方向前部側に位置する車輪だけを揺動させて向きを変更する。目標操向経路に沿って走行車体2を走行させているときに、障害物センサ19が検知作動すると、上述したような障害物回避処理を実行する。
【0065】
計数している果樹Kの個数がティーチング処理によって設定されている本数に達したことにより、又は、果樹園P端部に位置する反射体22を検知することにより、走行経路の終端に至ったことが判別されると、走行が終了した走行経路の数を計数するとともに、経路走行中に計数してきた果樹本数をリセットする(ステップ#23、#24、#25、#26)。
【0066】
走行が終了した走行経路が、第1方向D1の複数の走行経路のうちの最終経路でなく、次回の目標走行経路が果樹列同士の間の中間領域における中央位置を越える場合でなく、しかも、果樹列に最も近い走行経路でないときは、スイッチバックにて隣接する目標走行経路に移動する(ステップ#27、#28、#29、#30)。
【0067】
果樹列に近い走行経路を走行する場合には、検出対象である果樹列だけでなく、当該果樹列に隣接する果樹列についても物体検出を行い、隣接する果樹列についての情報も合せて検出しておくとよい。その検出結果に基づいて、隣接する果樹列についての基準線SLを設定することができる。
【0068】
ステップ#11〜ステップ#23を実行して、目標走行経路に沿って走行して経路終端に至ったことが判別されたときに、走行が終了した走行経路が、果樹列に最も近い走行経路であるときは、上述したような第一旋回処理を実行する(ステップ#29、#31)。すなわち、該当する果樹列の反対側の領域に移動するように、略U字状の経路で走行車体2を前進走行させながら旋回する。
【0069】
この第一旋回処理において、旋回走行するときは、車体前後方向の一端側の第1車輪3A及び他端側の第2車輪3Bの双方を逆方向にステアリング操作する。すなわち、
図9に示すように、第1車輪3A及び第2車輪3Bのうち進行方向前部側に位置するものを旋回方向側に向けて揺動し、進行方向後部側に位置するものを旋回方向とは反対側に向けて揺動させる。このように操作することで、旋回半径をできるだけ小さくして、端部の果樹Kの周囲の刈残しを少なくすることができる。
【0070】
ステップ#11〜ステップ#23を実行して、目標走行経路に沿って自動操向処理を実行しながら走行して、経路終端に至ったことが判別されたときに、走行が終了した走行経路の次回の目標走行経路が果樹列同士の間の中間領域における中央位置を越える場合であるときは、上述したような第二旋回処理を実行する(ステップ#28、#32)。すなわち、車体を右方向に90度旋回、所定距離だけ直進後進、再度、右方向に90度旋回を行い、車体の向きが逆向きになるように方向転換させる。このように操作することで、物体検出部18による検出の向きが反対方向になり、隣接する果樹列を検出対象に物体検出を行う状態になる。
【0071】
ステップ#11〜ステップ#23を実行して、目標走行経路に沿って自動操向処理を実行しながら走行して、経路終端に至ったことが判別されたときに、走行が終了した走行経路が第1方向D1の複数の走行経路のうちの最終経路であるときは、上述したような第三旋回処理を実行する(ステップ#27、#33)。すなわち、第1方向D1に沿う走行状態から第2方向D2に沿う走行状態に車体の向きを切り換える。
【0072】
そして、第三旋回処理が終了したのちは、
図14に示すような、第2方向D2に沿う走行制御処理を実行する(ステップ#41〜#52)。この第2方向D2に沿う走行制御処理は、車体の走行方向が異なる他は、第1方向D1に沿う走行制御処理と略同じである。第四旋回処理及び第五旋回処理は、走行方向が異なるが、夫々、第一旋回処理及び第二旋回処理と同じであるから、ここでは説明は省略する。第2方向D2に沿う走行制御処理において、第2方向D2の複数の走行経路のうちの最終経路を終了すると、自動走行制御が終了する。
【0073】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、目標物設定処理において、2つの果樹Kから2つの目標物Oを設定する構成としたが、この構成に代えて、3つ以上の果樹から3つ以上の目標物Oを設定する構成とすることも可能である。
【0074】
(2)上記実施形態では、走行車体2が果樹列に沿って走行しているときに、物体検出部18の検出情報に基づいて隣接する果樹列についての位置情報を求めるようにしたが、このような処理を行わないようにしてもよい。
【0075】
(3)上記実施形態では、走行車体2を基準とした座標系から目標物Oを基準とした座標系に座標変換を行って、自動走行に係る演算処理を行う構成としたが、座標変換を行わずに自動走行に係る演算処理を行うことも可能である。
【0076】
(4)上記実施形態では、自動走行制御において、所定位置での走行経路の端部において、作業車を略U字状に走行しながら旋回する第一旋回処理又は第四旋回処理、車体の向きが逆向きになるように方向転換させる第二旋回処理又は第五旋回処理を実行するようにしたが、この構成に代えて、例えば、走行経路の端部ではスイッチバック走行でのみ位置変更させる走行形態を採用してもよい。
【0077】
(5)上記実施形態では、作業車による作業対象となる作業用区画が、矩形状に区画された領域である場合を示したが、このような構成に代えて、例えば、外形が台形状に形成された領域や外形が略L字形に形成された領域等、矩形以外の形状であってもよい。
【0078】
(6)上記実施形態では、ティーチング処理部100にて求めて保持部101にて保持されている情報に基づいて、車体を自動走行させる走行制御部102を備える構成としたが、このような構成に代えて、例えば、車体操縦は手動で行うようにしながら、保持部101に保持されている情報に基づいて設定された目標経路等を表示モニタにて表示させる等、走行制御部102を備えない構成としてもよい。
【0079】
(7)上記実施形態では、作業車1が草の刈り取りを行いながら走行する構成としたが、作業車を例えば運搬車両として用いることも可能であるし、他の用途に用いることも可能である。