(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
昨今、電界やイオンを利用する技術や機器、電界やイオンの発生を伴う技術や機器が、広範に使用されている。また、大気中には正または負に帯電したイオンが浮遊しており、静電気や雷などの自然現象によって強い電界が発生することもある。ところが、電界やイオンのような不可視な物理量及び化学活性度は、専門家や熟練者であっても、対象の電界やイオンを迅速かつ正確に把握することは容易ではない。技術や機器の利用者などであって、電界やイオンについて専門的な知識を有していない者にとっては、対象の電界やイオンを理解し想像することも困難である。例えば、電界を利用する例として、絶縁された人体に高電圧を与えて人体の周囲に形成された電界による生体刺激作用を利用して治療を行う電位治療装置がある。このような装置を使用する際に、被治療者が自己の周囲に電界が形成されていることを認知することは困難である。また、直流電界は、直流送電や集塵装置の使用等において発生したり、電荷を帯びた液体や粉体を静電気力によって移動する性質を利用した静電塗装で利用したり、衣服の摩擦等により静電気という形で発生したりするが、これを視認することは困難である。さらに、イオンを利用する例として、空気分子をイオン化して静電気を除電する除電器や、消臭器、健康器具等があるが、空間中に放たれたイオンを認識することは困難である。
【0003】
このように、不可視な物理量の例として電界が形成されていることを認識するための方法として、例えば、電界を検知可能なプローブを用い、金属のプローブが金属製ケーブルを介して検出系に接続される電界測定装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この電界測定装置は、侵襲性を抑圧するために、電気光学結晶から成るプローブ先端部を光検出系に光ファイバケーブルで接続し、プローブ部の先端部を電界に挿入して、電界検知や測定を行うものである。ここで、侵襲性とは、外的要因によって被計測電界が乱される性質をいうものとする。
【0004】
また、基準とする点の電位を測定して基準電位とし、任意の測定対象近傍の1点について基準電位との差(電圧)を測定してそれを2点間の距離で割った値を電界とし、その形成された電界を検知して知らせる検電器が知られている(例えば、特許文献2参照。)。この検電器は、電界の有無を判別するものである。
【0005】
しかしながら、金属プローブは、電界に挿入した場合に被計測電界がプローブやケーブルによって乱されてしまい、高い侵襲性が発現する。そのため、本願発明者は、平板状の電極の間に複数のLED等による出力手段を備えた電界検知出力装置を提案した(例えば、特許文献3参照。)。この電界検知出力装置は、電界により電極に電荷が誘起されて電極間に電流が流れると、その電流値を仮想接地型電流検出機により検出し、その電流値に応じて点灯させるLEDの個数を変更させることにより、電界の強度を表示したものである。
【0006】
その他、直流電界を認識する例として、導電体あるいは絶縁体等の被測定体の表面電位を測定する表面電位測定方法や、空気中のイオンを認識する例として、例えば、気体が流通する流路を設けた大気イオン濃度測定装置が知られている(例えば、特許文献4及び5参照。)。この大気イオン濃度測定装置は、流路内の大気イオンの濃度を測定するための内筒と、電流値検出器と、流路内の風速を検知するための風速センサを備えたものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1に記載の電界測定装置は、侵襲性が低減されるものの、構成が複雑であり、装置が大型化するために携帯が困難であり、簡便性を有していないものである。また、特許文献2に記載の検電器は、電界の有無を判別するものであり、電界を精度よく測定して強度を把握することが出来ないものである。さらに、特許文献3に記載の電界検知出力装置では、静電気のような直流電界を検知対象とする場合、算出された電流値の時間積分値を算出する構成が無いと、電界強度の正確な測定が出来ないことが明らかになった。さらにまた、特許文献4に記載の表面電位測定方法や特許文献5に記載の大気イオン濃度測定装置も、装置が大型化するために簡便性を有していない、という課題があった。
【0009】
そこで本発明は、電界、特に電界が直流電界である場合や、イオン流の流速密度や方向を、簡便に精度よく計測して出力し、利用者がそれを容易に把握可能とするために、簡便性、速報性、精度、非侵襲性に優れ、空間分解能に優れた検知出力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、空間中の不可視な検知対象を検知し、検知した結果を出力する平板状の検知出力装置であって、略平行に配設された平板状の2つの電極と、前記2つの電極の間に配設され、前記2つの電極によって前記検知対象が検知された際に生じる電流を検出する仮想接地型電流検出器と、前記2つの電極の間に配設され、前記電流に応じた出力を行う出力手段と、前記2つの電極の間に配設され、
発光装置駆動回路および前記出力手段に電力を供給する電源と、を備え、前記仮想接地型電流検出器は、前記2つの電極の間に生じる電流の時間積分を行う積分回路を備えている、ことを特徴とする。
【0011】
この発明では、電界によって電極に電荷が誘起されると、2つの電極の間に電流が流れるので、仮想接地型電流検出器がこの電流を検知する。出力手段は、仮想接地型電流検出器が電極電流を検知しそれがある閾値に達していると判別されると出力を行う。また、仮想接地型電流検出器は、2つの電極の間に生じる電流の時間積分を行う積分回路を備えている。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の検知出力装置において、前記積分回路は、オペアンプ、抵抗、及びコンデンサにより構成されているアナログ積分回路である、ことを特徴とする。
【0014】
請求項
3に記載の発明は、請求項1
または2いずれか1項に記載の検知出力装置において、前記仮想接地型電流検出器は、前記電流の正負両極性に応答する両極性アンプ及びバイアス回路を備えている、ことを特徴とする。
【0015】
請求項
4に記載の発明は、請求項1ないし
3のいずれか1項に記載の検知出力装置において、前記検知対象は、電界であり、前記2つの電極は、前記電界の強度を検知する、ことを特徴とする。
【0016】
請求項
5に記載の発明は、請求項1ないし
3のいずれか1項に記載の検知出力装置において、前記検知対象は、イオンであり、前記2つの電極は、付着する前記イオン流の流速密度を検知する、ことを特徴とする。
【0017】
請求項
6に記載の発明は、請求項
5に記載の検知出力装置において、前記2つの電極は、絶縁膜により覆われ、前記絶縁膜に付着する前記イオン流の流速密度を検知する、ことを特徴とする。
【0018】
請求項
7に記載の発明は、請求項
5または
6のいずれか1項に記載の検知出力装置において、前記イオンが所定以上に前記2つの電極に付着した場合、前記イオンを除去するリフレッシュ装置が設けられている、ことを特徴とする。
【0019】
請求項
8に記載の発明は、請求項1ないし
7のいずれか1項に記載の検知出力装置において、前記出力手段は、複数の発光素子を備え、前記検知対象に対応して異なる個数の前記発光素子が発光する、ことを特徴とする。
【0020】
請求項
9に記載の発明は、請求項1ないし
7のいずれか1項に記載の検知出力装置において、前記出力手段は、前記検知対象に対応して異なる色相に発光する、ことを特徴とする。
【0021】
請求項
10に記載の発明は、請求項1ないし
7のいずれか1項に記載の検知出力装置において、前記出力手段は、発光素子であり、前記発光素子は、前記2つの電極の間に配設され、前記2つの電極の面に対して直角の方向に発光する、ことを特徴とする。
【0022】
請求項
11に記載の発明は、請求項1ないし
10のいずれか1項に記載の検知出力装置において、絶縁体で形成され、前記2つの電極よりも外方に張り出した把持部を備えている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
請求項1に記載の発明によれば、2つの電極の間に生じる電流の時間積分を行う積分回路を備えているので、例えば、電界の周波数に依存しない感度で電界強度を精度よく計測して出力し、利用者がそれを容易に把握することが可能になる。また、この積分回路を備えた仮想接地型電流検出器が平板状の2つの電極の間に配設されていることにより、簡便性、速報性、精度、非侵襲性に優れ、空間分解能に優れた検知出力装置を提供することが可能になる。
【0024】
請求項2に記載の発明によれば、オペアンプ、抵抗、及びコンデンサにより構成されているアナログ積分回路を備えているため、直流電界を検知して出力することが可能になる。
【0026】
請求項
3に記載の発明によれば、仮想接地型電流検出器が電流の正負両極性に応答する両極性アンプ及びバイアス回路を備えているため、電界の極性を判定することが可能になる。
【0027】
請求項
4に記載の発明によれば、検知対象は電界であり、2つの電極に電荷が誘起され、これにより生じる電流の電流値から電界を検知するため、本発明の検知出力装置を電界検知出力装置に適用することが可能になる。
【0028】
請求項
5に記載の発明によれば、検知対象はイオンであり、2つの電極はその電極に付着するイオン流の流速密度を検知するため、本発明の検知出力装置をイオン検知出力装置に適用することが可能になる。
【0029】
請求項
6に記載の発明によれば、2つの電極は絶縁膜により覆われ、絶縁膜に付着する前記イオン流の流速密度を検知するので、イオンが絶縁膜に付着することで装置内部に異なる極性の電荷が帯電するので、非侵襲性に優れた検知出力装置を提供することが可能になる。
【0030】
請求項
7に記載の発明によれば、イオンが所定以上に2つないし一方の電極に付着した場合、イオンを除去するリフレッシュ装置を備えたことにより、イオンによるチャージアップをリセットすることが可能になる。これにより、イオン流束が大きい場合にイオンの蓄積量が過剰になり、後続イオン流に影響を与えたり検出回路が飽和するのを防止し、イオン流の流速密度を安定的に計測することができる。
【0031】
請求項
8に記載の発明によれば、出力手段は複数の発光素子を備え、検知対象に対応して異なる個数の発光素子が発光するので、速報性及び精度に優れた検知出力装置を実現することが可能になる。
【0032】
請求項
9に記載の発明によれば、出力手段は検知対象に対応して異なる色相に発光するので、速報性及び精度に優れた検知出力装置を実現することが可能になる。
【0033】
請求項
10に記載の発明によれば、出力手段を発光素子により構成し、発光素子が2つの電極の間に配設されて電極の面に対して直角の方向に発光するように構成したので、電極の表面側から発光しているのを認識することが可能になるので、検知出力装置の視認性を向上させることが可能になる。
【0034】
請求項
11に記載の発明によれば、絶縁体で形成されて2つの電極よりも外方に張り出した把持部を備えているので、検出対象を検出する空間に対して直接測定者の手等を挿入することがないので、非侵襲性に優れた電界検知出力装置を実現することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0037】
(実施の形態1)
図1ないし
図6は、この発明の実施の形態1を示しており、
図1は、検知出力装置1の外観を示す斜視図(a)、及び検知出力装置1の機能を示すブロック構成図(b)である。また、
図2は、
図1の仮想接地型電流検出器3として両極性アンプ及びバイアス回路を備えている例を示す回路図である。この発明の実施の形態1に係る検知出力装置1は、所定の空間内に挿入されることによって、この空間内に存在している検知対象の数値、または強度、及び方向、または流れを、発光する発光素子の数により表示するための装置であり、例えば、検知対象として直流電界の強度を発光素子の発光により表示させ、この装置を空間中で走査することで電界の分布を把握し、空間内で回転走査することで電界の方向を把握するための装置である。なお、ここで直流電界とは、常に一定の電流値を示す場合に限らず、周波数が小さい交流電界を4分の1周期以内の時間で電界強度を測定する場合のように、電流の極性に変化が無く、略電流値にも変化が無いような場合や、直流のスイッチをオンにした直後の状態遷移過程における電界の変化のように、ゼロから一定値に漸近する場合も含む概念である。
【0038】
この検知出力装置1は、
図1(a)に示すように、主として、電極2と、LED(出力手段・発光素子)5とを備え、把持部8が取り付けられている。また、検知出力装置1の機能ブロック構成は、例えば、
図1(b)に示すように、電極2と、仮想接地型電流検出器3と、積分部(積分回路)4と、LED5と、電池(電源)6と、短絡スイッチ7とから構成され、仮想接地型電流検出器3、積分部4、LED5、電池6、及び短絡スイッチ7が2つの電極2の間に収納可能に形成されている。
【0039】
電極2は、
図1(a)に示すように、対向して略平行に配設された2枚の略長方形の平板電極であり、上部電極2aと、下部電極2bとから構成されており、電極間隔d、電極面積sに設定されて形成されている。この上部電極2a及び下部電極2bの大きさ(電極間隔d、電極面積s)及び形状は、検知対象の空間等の制約に応じて設定され、その大きさ及び形状に応じて仮想接地型電流検出器3と、積分部4と、LED5と、電池(電源)6と、短絡スイッチ7を収容可能になるように選択して決定している。具体的には、電極間隔dは、例えば、数mm以下に設定されており、電極面積sは、例えば、名刺サイズ程度の大きさになるように、約50cm
2以下に設定されている。
【0040】
仮想接地型電流検出器3は、
図1(b)に示すように、上部電極2a及び下部電極2bに電荷が誘起された際に生じる電流を検出するものであり、上部電極2a及び下部電極2bに信号線によって接続され、電流を検出する検出器を備えるように構成されている。この仮想接地型電流検出器3は、例えば
図2に示すように、仮想接地特性を有するオペアンプ(オペレーショナル・アンプリファイア、Operational Amplifier)31と、抵抗32,33,34とを備え、オペアンプ31の反転入力(−)の入力端子には上部電極2aが、非反転入力(+)の入力端子には下部電極2bが、オペアンプ31の出力端子には積分部4がそれぞれ接続され、正電源電圧Vcc及び負電源電圧−Vccにより稼働されている。また、オペアンプ31は、仮想接地特性を備え、非反転入力(+)と反転入力(−)の入力端子の電圧が常に等しい、すなわち、同電位となる。つまり、仮想接地型電流検出器3の入力端子(非反転入力(+)と反転入力(−))には、上部電極2a及び下部電極2bに接続された導線が接続されているので、上部電極2aと下部電極2bとの間には電位差を生じない。また、このオペアンプ31は、電界の極性を判別する両極性アンプにより構成されている。抵抗33,34は、バイアス回路を構成している。
【0041】
仮想接地型電流検出器3の入力端子には、導線により上部電極2a及び下部電極2bに接続されているため、検知出力装置1を電界内に静置すると、上部電極2aと下部電極2bとにはそれぞれ異なる極性の電荷が誘起され、その際に生じる電流を検出するようになっている。このとき、仮想接地型電流検出器3の仮想接地特性により、上部電極2aと下部電極2bとの間には電位差を生じないので、検知出力装置1は厚さdの金属板として動作しているとみなすことが出来る。
【0042】
積分部4は、仮想接地型電流検出器3によって検出された電流値を時間積分するための装置であり、この積分部4は、測定する電界が直流である場合は、電流値を以下の式によって算出する。ここで、Iは電流値、tは時間、εは誘電率、sは電極面積、E(t)は電界強度である。すなわち、算出された電流値Iの時間積分値と、電界強度E(t)は比例する。
【数1】
【0043】
ここで、仮想接地型電流検出器3におけるその他の回路構成の例について説明する。
図3は、
図1の仮想接地型電流検出器3及び積分部4として回路3Aを備えている例を示す回路図である。この回路3Aは、仮想接地特性を有するオペアンプ31と、抵抗33,34と、コンデンサ35とを備え、オペアンプ31の反転入力(−)の入力端子には上部電極2aが、非反転入力(+)の入力端子には下部電極2bが、オペアンプ31の出力端子にはLED5がそれぞれ接続され、正電源電圧Vcc及び負電源電圧−Vccにより稼働されている。オペアンプ31及び抵抗33,34は、
図2に示すオペアンプ31及び抵抗33,34と同様であり、オペアンプ31とコンデンサ35とにより積分器を構成している。このような回路構成であっても、仮想接地型電流検出器3及び積分部4と同様の効果が得られる。
【0044】
図4は、
図1の積分部4として積分器4Aを備えている例を示す回路図である。この回路4Aは、オペアンプ41と、コンデンサ42と、抵抗43,44,45とを備え、アナログ積分回路を構成している。このオペアンプ41の反転入力(−)の入力端子には抵抗43を介して仮想接地型電流検出器3が、非反転入力(+)の入力端子には抵抗44,45を介して正電源電圧Vcc及び負電源電圧−Vccが、オペアンプ41の出力端子にはLED5がそれぞれ接続され、正電源電圧Vcc及び負電源電圧−Vccにより稼働されている。このような回路構成であっても、積分部4と同様の効果が得られる。
【0045】
図5は、
図1の積分部4として積分器4Bを備えている例を示す回路図である。この回路4Bは、MPU(Micro Processing Unit)46を備えている。MPU46は、
図4に示すような回路構成を集積回路にて実装したものである。このような回路構成であっても、積分部4と同様の効果が得られる。
【0046】
LED5は、仮想接地型電流検出器3によって検出されて積分部4によって算出された電流値に応じた出力(例えば、発光)を行う装置であり、例えば、LED5a,5b,5c,5dにより構成されている。このLED5a,5b,5c,5dは、例えば、仮想接地型電流検出器3によって検出されて積分部4によって算出された電流値がゼロ〜所定値の場合、LED5a,5b,5c,5dは発光せず、仮想接地型電流検出器3によって検出された電流値が所定値より大きい場合、電流値の大きさ、すなわち、電界強度に応じて、LED5aのみが発光、LED5a,5bが発光、LED5a,5b,5cが発光、LED5a,5b,5c,5dが発光、というように、発光するLEDの個数が変化するようになっている。
【0047】
電池6は、
図1(b)に示すように、仮想接地型電流検出器3、積分部4、及びLED5に電力を供給するものであり、例えば、コイン型電池で構成されている。
【0048】
短絡スイッチ7は、上部電極2aと、下部電極2bとの間を短絡させるためのスイッチである。この短絡スイッチ7は、閉じることでノイズ等により発生した電荷蓄積のオフセットをリセットすることが可能であり、開くことでゼロ電界レベルでの検知を可能にするために使用される装置である。この短絡スイッチ7を開いてゼロ電界レベルでの検知を開始した状態で、検知出力装置1を直流電界内に静置すると、徐々に増加する直流電界値に応じて蓄積電荷も増加し、それに応じた電流も検出され、その積分値が電界値を示す。そして、電界のない場所まで検知出力装置1を移動させると、蓄積電荷も相殺される。このとき、上部電極2a及び下部電極2bには電荷の蓄積や電荷の偏りはないはずであるが、ノイズ等により電荷の蓄積や電荷の偏りが生じる可能性があり、次の計測に影響を及ぼすことがある。このような電荷の蓄積や電荷の偏りをリセットするために、短絡スイッチ7が設けられている。
【0049】
把持部8は、操作者が検知出力装置1を動かすための棒状部材である。この把持部8は、上部電極2a及び下部電極2bよりも外方に張り出すように形成されているが、上部電極2a及び下部電極2bから十分に離れて張り出すように形成されていることが望ましい。
【0050】
次に、この検知出力装置1の使用方法及び作用について説明する。
【0051】
図6は、
図1の検知出力装置1を、電界電極100a,100bによって形成される直流電界の電界方向に対して垂直方向に挿入した状態を示す概略図である。ここで、電界電極100a,100bは、それぞれ平板で構成されており、2枚の電界電極100a,100bが所定角度を成すように配設されている。ここで、距離Lは、計測対象の電界が一定値と見なされ得る長さを示しており、電極間隔dはこの距離Lに対して十分小さくなるように設定されている。また、面積Sは、計測対象の電界が一定値と見なされ得る面積を示しており、電極面積sはこの面積Sに対して十分小さくなるように設定されている。さらに、電界電極100aと100bとの間の矢印Xは、電気力線であり、電界がこの方向に生じていることを示している。
【0052】
利用者が電界方向をすでに把握している場合、利用者は、
図6に示すように、電界電極100a,100bによって形成される電界内に検知出力装置1を電界方向に対して垂直方向に挿入して静置する。このとき、上部電極2a及び下部電極2bに電荷が誘起され、この誘起された電荷が変化した時に生じる電流が、仮想接地型電流検出器3によって検出され、積分部4により時間積分されて電流値が算出される。この仮想接地型電流検出器3によって検出されて積分部4により算出された電流値に基づいて、LED5aのみが発光、LED5a,5bが発光、LED5a,5b,5cが発光、またはLED5a,5b,5c,5dが発光、のように段階的に発光するので、利用者は、このときに発光しているLEDの個数により電界強度を把握できる。
【0053】
また、利用者が電界方向を把握していない場合、利用者が電界電極100a,100bによって形成される電界内に検知出力装置1を電界方向に対して斜め方向に挿入して静置すると、上部電極2a及び下部電極2bに電荷が誘起され、この誘起された電荷が変化した時に生じる電流が、仮想接地型電流検出器3によって検出されるが、電界検知出力装置1を
図6に示す向きとした場合と比較すると電荷が減少するのに応じて逆方向電流が発生するので、この電流値を積分部4によって時間積分することにより、電流値が算出される。例えば、電界検知出力装置1を
図6に示す向きに挿入した場合に、LED5a,5b,5c,5dの両方が発光していたとすると、電界検知出力装置1を斜め方向に挿入した場合、例えば、LED5aのみが発光、LED5a,5bが発光、またはLED5a,5b,5cが発光する。そのため、利用者は、このときに発光しているLEDの個数により、電界強度が弱いことを把握できる。また、その場で電界検知出力装置1を動かすことにより、LED5a,5b,5c,5dの発光している個数が変化するので、その変化により電界方向を把握できる。
【0054】
さらに、例えば、利用者が電界電極100a,100bによって形成される電界内に検知出力装置1を電界方向に対して平行方向に挿入して静置すると、上部電極2a及び下部電極2bの静置方向が電界方向と一致するので電荷が誘起されないため、電荷が変化することはなく、この電流値を積分部4によって時間積分することにより電流値が算出されるが、電流値が0の場合にその値を時間積分しても0であるため、電流は検出されない。そのため、LED5a,5b,5c,5dは無発光状態のままとなる。そのため、利用者は、LED5a,5b,5c,5dの無発光状態により、電界方向が上部電極2a及び下部電極2bの静置方向と一致することを把握できる。これにより、電界を検知して発光した状態を光学映像に重ねて一画面上の図として表示、記録をする可視化装置として使用することも可能となる。
【0055】
以上のように、この検知出力装置1によれば、電界内に電界検知出力装置1が挿入されると、上部電極2a及び下部電極2bに電荷が誘起され、これにより発生する電流が仮想接地型電流検出器3によって検出されると、LED5a,5b,5c,5dが電界の電界強度に基づいてこの中のいずれか又は全てが発光するので、その発光している個数により、電界強度を容易に把握することができる。そのため、電極の辺の長さと、2つの電極の間の距離とのアスペクト比を保ちながら電界検知出力装置1の装置全体を小型化することで、電界内での装置による非侵襲性が維持されることにより、従来の電界検知出力装置と比較して分解能が向上するので、簡便性、速報性、精度、非侵襲性に優れた電界検知出力装置を実現することが可能になる。
【0056】
また、積分部4を備えたことにより、電荷の増減に応じて検出された電流値が時間積分されて電界が検出されるので、検出対象が直流電界であっても、この検知出力装置1を使用することが可能になる。さらに、仮想接地型電流検出器3が正負両極性に応答するオペアンプ31を備えたことにより、検知出力装置1を回転走査させることで電界の極性を判定することが可能になる。
【0057】
また、把持部8を備えたことにより、電界を乱すのを防止するので、非侵襲性に優れた電界検知出力装置を実現することが可能になる。
【0058】
(実施の形態2)
図7は、この発明の実施の形態2に係る検知出力装置1Aをイオン流201に挿入した例を示す概略図である。
図8は、
図7の検知出力装置1Aの機能を示すブロック構成図である。また、
図9は、
図7の検知出力装置1Aに付着されているイオンを除電パッド300を用いて除電している例を示す概略図である。この検知出力装置1Aは、
図7に示すように、イオン源200からイオンIが矢印方向に放出されて生成されたイオン流201内に挿入されてイオンIの流速密度を検知するための装置である。この検知出力装置1Aは、
図8に示すように、実施の形態1に係る検知出力装置1の積分部4を備えていない点、及び電極2が絶縁膜に覆われている点において、実施の形態1に係る検知出力装置1と異なる。電極2が絶縁膜に覆われているのは、化学活性度の高いイオンIが金属電極に直接付着することで電極が腐食すること等を防止するためである。
【0059】
また、この検知出力装置1Aには、
図9に示すように、検知出力装置1Aに付着されているイオンIを除電する除電パッド(リフレッシュ装置)300が設けられており、検知出力装置1Aの上部電極2a及び下部電極2bを接触させて使用される。この除電パッド300は、検知出力装置1Aの上部電極2a及び下部電極2bに付着されているイオンIのイオン流束が大きいとイオンIの蓄積量が過剰になり、後続イオン流に影響を与えたり検出回路の飽和をもたらす可能性があり、これを防止するために設けられている。その他の構成については、実施の形態1に係る電界検知出力装置1と同様である。
【0060】
次に、この検知出力装置1Aの使用方法及び作用について説明する。
【0061】
図10は、
図7の検知出力装置1Aを用いてイオンを検出する例を示す概略図であり、検知出力装置1Aを用いて流れているイオンIを検出する例を示す概略図(a)、及び検知出力装置1Aを用いて静止しているイオンIを検出する例を示す概略図(b)である。ここで、
図7に示すイオン流201では、イオンIが所定の方向に流れている場合と、一定の空間に浮遊している場合があるので、それぞれの場合について説明する。
【0062】
図10(a)に示すように、矢印Yに示すような所定の方向にイオンIが流れている場合、検知出力装置1Aをイオン流201に静置(所定の動作)することにより、イオンIが電極2に付着することになる。すると、上部電極2a及び下部電極2bに電荷が誘起されて電流が発生し、仮想接地型電流検出器3によって検出される。この仮想接地型電流検出器3によって検出された電流値に基づいて、LED5a,5b,5c,5dの一部またはすべてが発光する。これにより、利用者は、このときに発光しているLEDの個数によりイオン流の流速密度を把握できる。
【0063】
また、
図10(b)に示すように、イオンIが浮遊している場合、検知出力装置1Aをイオン流201内で矢印Z方向に移動(所定の動作)することにより、イオンIが電極2に付着することになる。すると、上部電極2a及び下部電極2bに電荷が誘起されて電流が発生し、仮想接地型電流検出器3によって検出される。この仮想接地型電流検出器3によって検出された電流値に基づいて、LED5a,5b,5c,5dの一部またはすべてが発光する。これにより、利用者は、このときに発光しているLEDの個数によりイオン流の流速密度を把握できる。
【0064】
以上のように、この電界検知出力装置1Aによれば、電極2が絶縁膜により覆われ、イオン流201に静置したり、イオン流201内で矢印Z方向に移動したりするような所定の動作を行うことで、イオンを検知することが可能になる。また、除電パッド300を設けたことにより、イオンによるチャージアップをリセットすることが可能になる。これにより、イオン流束が大きい場合にイオンの蓄積量が過剰になり、後続イオン流に影響を与えたり検出回路が飽和するのを防止し、イオン流の流速密度を安定的に計測することができる。
【0065】
(実施の形態3)
図11は、この発明の実施の形態3に係る検知出力装置1Bの概略を示す図であり、検知出力装置1Bの外観を示す斜視図(a)、及び検知出力装置1Bの内部構造を示す断面図(b)である。この検知出力装置1Bは、実施の形態1に係る検知出力装置1と同様に、所定の空間内に挿入されることによって、この空間内に存在している検知対象(例えば、直流電界)の強度を発光素子の発光色または光の強度により表示させ、この装置を空間中で走査することで電界の分布を把握し、空間内で回転走査することで電界の方向を把握するための装置である。検知出力装置1Bは、
図11に示すように、実施の形態1に係る検知出力装置1の上部電極2a及び下部電極2bに替えて、上部電極2Ba及び下部電極2Bbを備えている点、LED5a,5b,5c,5dに替えてLED5Bを備え、仮想接地型電流検出器3、積分部4、LED5B、電池6、及び短絡スイッチ7を構成する回路部10を備えている点、及び光導波拡散部8を備えている点において、実施の形態1に係る検知出力装置1と異なる。なお、仮想接地型電流検出器3、積分部4、電池6、及び短絡スイッチ7の図示は省略する。
【0066】
上部電極2Ba及び下部電極2Bbは、対向して略平行に配設された2枚の平板電極であり、例えば、略円形に形成されている。この上部電極2Ba及び下部電極2Bbの電極間隔及び電極面積は、上部電極2a及び下部電極2bと同様に、検知対象の空間等の制約に応じて設定されている。また、上部電極2Baの略中央箇所には、
図11(b)に示すように、略円形の貫通孔が設けられている。
【0067】
LED5Bは、仮想接地型電流検出器3によって検出された電流値に応じた発光を行う発光素子であり、例えば、仮想接地型電流検出器3によって検出された電流値に応じて発光色を変化させるRGB型の発光素子、または電流値に応じて発光強度を変化させる単色の発光素子である。このLED5Bは、回路部10に埋め込まれて配設され、発光する光が光導波拡散部8を経由して上部電極2Baの上面側の方向(上部電極2Ba及び下部電極2bの表面に対して直角の方向)に発光するように設けられている。
【0068】
光導波拡散部8は、LED5Bが発光する光を上部電極2Baの上面側の方向に拡散する装置であり、例えば、導光板等により構成されている。この光導波拡散部8は、上部電極2Baの貫通孔に嵌合されるように上部電極2Baと下部電極2Bbとの間に配設されている。
【0069】
回路部10は、仮想接地型電流検出器3、積分部4、LED5B、電池6、及び短絡スイッチ7を構成する平板状の基板であり、上部電極2Baと下部電極2Bbとの間に配設されるように輪状に形成されている。
【0070】
この検知出力装置1Bの使用方法は、実施の形態1に係る検知出力装置1と同様である。検知出力装置1Bによれば、上部電極2Baに貫通孔が設けられ、LED5Bが上部電極2Baと下部電極2Bbとの間に配設され、貫通孔の方向に発光するように設けられているので、上部電極2Ba側から発光しているのを認識することが可能になるので、検知出力装置1Bの視認性を向上させることが可能になる。また、光導波拡散部8が上部電極2Baの貫通孔に嵌合されるように上部電極2Baと下部電極2Bbとの間に配設されているので、LED5Bの光が拡散することにより、検知出力装置1Bの視認性をさらに向上させることが可能になる。なお、本実施の形態では、上部電極2Baに貫通孔を設けたが、下部電極2Bbに貫通孔を設けて光導波拡散部8を露出させ、LED5Bが発光する光を下部電極2Bbの下面側の方向に拡散させても良く、さらに、上部電極2Ba及び下部電極2Bbの両方に貫通孔を設けて光導波拡散部8の上下両方の端面を露出させ、LED5Bが発光する光を上部電極2Baの上面側及び下部電極2Bbの下面側の両方向に拡散させても良い。
【0071】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、検知出力装置1の検知対象は電界とし、検知出力装置1Aの検知対象はイオンとしたが、検知対象は電界またはイオンに限られず、電界や磁界、不可視光、音場、放射線、環境物質等の数値または強度、及び方向のような他の物理量及び化学活性度を検知対象とすることが可能である。これは、上部電極2a及び下部電極2bを検知対象に適したセンサ等に置き換えることにより、他の物理量及び化学活性度を検知対象とすることが可能である。
【0072】
また、検知出力装置1,1Aでは、出力手段として4つのLED5a,5b,5c,5dを備える構成としたが、2つ、3つ、または5つ以上のLEDを設けても良く、また、発光色が変化可能なRGB型の発光素子で構成し、電界強度に応じて発光するときの色相を変化させるように構成しても良い。さらに、このような構成に限られず、例えば、電波を介して外部装置に出力させるような構成にしても良い。また、検知出力装置1Bでは、上部電極2Ba及び下部電極2Bbを略円形に形成したが、この形状に限られず、上部電極2Baに設けられた貫通孔も、上部電極2Baの略中央箇所に限られず、さらに略円形にも限られない。
【0073】
さらに、複数の検知出力装置1,1Aをアレイ状に配設し、同時に複数の検知出力装置1,1Aによる検知を行っても良い。同時に複数箇所におけるLEDの輝度が観察可能であることにより、検知出力装置1,1Aが配設されたそれぞれの箇所の電界またはイオン流の流速密度が一目で判別可能であるとともに、本願発明の検知出力装置1,1Aを使用することで、従来と比べ単位面積当たりに配置可能な表示装置の数が増えることから、より狭い間隔での判別が可能となる。