【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本願発明は、特許文献2記載の発明品である「扇風機の転倒防止のための保持具」が持つ不便性を改良し、改良したことにより生じる新たな課題を解決する発明である。
因みに、特許文献2は、本願発明者が発明し、平成29年1月4日に特許査定を受けたものである。
【0012】
0013〜0016は、
保持具10が扇風機100を保持している状態で衝撃力を受けると、扇風機の送風機部101と送風機部保持部位11の間にずれが生じ、送風方向が真上ではなくなることがある。そのため、扇風機の送風機部101の設置位置の再調整が必要となる。その再調整の頻度を減らすために、解決しようとする課題である。
【0013】
保持具10に保持された扇風機100が少々の衝撃を受けても、扇風機の送風機部101と送風機部保持部位11の間にずれが生じないことが好ましい。若しくは、ずれが生じても、元の状態に復元することが好ましい。若しくは、ずれが生じても、送風方向が概ね真上を向くことを維持する程度のずれであることが好ましい。
しかし、大きな衝撃力や地震力等の外力が、直接に扇風機の送風機部101と送風機部保持部位11とに入力した場合、扇風機の送風機部101と送風機部保持部位11との間にずれが生じないと、保持具10と扇風機100とのそれぞれの部材に生じる応力は、送風機部101と送風機部保持部位11との間にずれが生じやすい保持具10と扇風機100部材とのそれぞれの部材に生じる応力より大きくなる。
【0014】
上記の大きな部材応力により、保持具10や保持された扇風機100が損傷することもある。
故に、扇風機の送風機部101と送風機部保持部位11との固定度を大きくしたり、完全に固定したりする時は、扇風機100及び保持具10の断面性能を高めたり、材料強度を高めたり、衝撃力を緩衝したり、衝撃力や地震力等の外力を低減したりする等の対策が必要である。
【0015】
通常の生活の中で人が軽く当たる程度の外力に対しては、扇風機の送風機部101と送風機部保持部位11の間には、ずれが生じないことが好ましい。若しくは、ずれが生じても、元の状態に復元することが好ましい。若しくは、ずれが生じても、送風方向が概ね真上を向くことを維持する程度のずれであることが好ましい。
大きい衝撃力や地震力等の想定する外力以上の入力であれば、扇風機の送風機部101と送風機部保持部位11の間に緩衝材を備え衝撃を緩衝したり、扇風機の送風機部101と送風機部保持部位11の間にずれが生じることにより衝撃力を緩衝したり、外力そのものを低減したりすることが好ましい。
【0016】
0017〜0018は、
扇風機の送風機部101と送風機部保持部位11の間の保持状態で簡単に移動できるために、解決しようとする課題である。
【0017】
保持具10に保持された扇風機100を移動する時、扇風機の送風機部101と送風機部保持部位11とそれぞれに生じる、移動程度の衝撃力に対し、扇風機の送風機部101と送風機部保持部位11間にずれが生じないことが好ましい。
【0018】
また、保持具10に保持された扇風機100を移動しない時には、想定以上の外力に対し、扇風機の送風機部101と送風機部保持部位11間にずれが生じることにより衝撃力を緩衝したり、外力を低減したりすることが好ましい。
【0019】
0020は、
送風機部保持部位11が扇風機の送風機部101を保持状態で、その保持部位11と床面との高さを高くした時に、衝撃力や地震力等の想定する外力に対し、保持具10の転倒モーメントや保持具10の部材応力が所定以上に大きくならないようにするための解決しようとする課題である。
【0020】
一般的な方法として、保持具10の部材の、材料強度を高める方法、断面性能を高める方法、抵抗モーメントを高める方法等がある。これらの方法は、制作コストが大きくなる。
そのために、保持具10への外力や保持具10の転倒モーメントは、小さい方が好ましい。
【0021】
0022〜0023は、
サーキュレーション効果を高めるために、扇風機の送風機部101が首振りできるようにするために解決しようとする課題である。
【0022】
保持具10が扇風機の送風機部101を保持していると、扇風機の送風機部101の首振りができない。
そのために、扇風機の支柱部102、若しくは、扇風機の送風部101と支柱部102との接合部位を保持する必要がある。そのために、次のような新たに解決すべき課題が生じる。
【0023】
保持具10は、扇風機の送風機部101が首振りをする回転運動により生じる反力に抵抗できる構造でなくてはならない。
また、扇風機100を構成する部位の中で最も重い送風機部101以外を保持すると、保持する部分を支点に、送風機部101側へ回転する危険性が高まる。
そして、扇風機の100の重心位置に近い部位を保持する時、保持具10が負担する鉛直荷重は、保持具が扇風機の送風機部101を保持する時より大きくなる。
【0024】
以下は、解決しようとする課題のまとめである。
送風機部保持部位11が扇風機の送風機部101を保持している状態で、審美性、省スペース性、移動の容易性、そしてサーキュレーション効果を高めるためには、保持具10と扇風機100との保持する固定度を高める必要があり、また、保持部分と床面との高さを高めることも必要となる。
上記事項を達成しようとする時、保持具10と扇風機100とには、部材応力の増加、転倒モーメントの増加、送風機部101回転運動の反力の発生、及び、鉛直荷重の増加等の力学的課題が生じる。この力学的課題が、特許文献2記載の発明品が持つ不便性を改良し、改良したことにより生じる新たな解決しようとする課題である。
そして、保持具10や扇風機100を損傷することなく、安全に、安定した方法で解決することが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本願発明の課題を解決するための手段は、特許文献2記載の発明品を改良するために生じる新たな課題を解決するための手段である。
請求項1及び請求項2は、
保持具10が衝撃緩衝手段、及び/若しくは、免震手段を備える解決手段である。
この解決手段によって、少々の衝撃を受けても、扇風機の送風機部101と送風機部保持部位11の間にずれが生じない、若しくは、ずれが生じても元の状態に復元する、若しくは、ずれが生じても送風方向が概ね真上を向くことを維持する程度のずれになる。
また、この解決手段によって、大きい衝撃力や地震力等の想定する外力以上の入力であれば、扇風機の送風機部101と送風機部保持部位11の間の衝撃を緩衝したり、扇風機の送風機部101と送風機部保持部位11の間にずれが生じることにより衝撃力を緩衝したり、外力そのものを低減したりする。
衝撃緩衝手段は、衝撃力により生じる保持具10と扇風機の送風機部101とのずれを制御する手段と、衝撃力を吸収する手段とがある。これらの手段は組み合わせても利用できる。
【0026】
ずれを制御する手段は、保持具10と扇風機の送風機部101とが少々の衝撃力では、ずれないようにし、想定以上の衝撃力では、ずれを生じるようにする。ずれが生じることにより、保持具10と扇風機の送風機部101とには所定以上の応力が生じない。
【0027】
ずれ制御手段の具体的事例として、所定の力を超えるとずれが生じる、マジックテープ(登録商標)、吸着盤、再利用可能な自動接着性のり、粘着力、摩擦力、及び弾性体材と摩擦力の利用等によるものがある。これらの事例は組み合わせても利用できる。
【0028】
ずれ制御手段の具体的事例である摩擦力の利用方法は、次の通りに働く。
少々の衝撃力に対しては、扇風機の送風機部101と送風機部保持部位11との間のずれようとする力が、静止摩擦力以下にあり、扇風機の送風機部101と送風機部保持部位11との間にずれは生じない。
想定以上の外力に対しては、扇風機の送風機部101と送風機部保持部位11との間のずれようとする力が静止摩擦力を超え扇風機の送風機部101と送風機部保持部位11との間にずれが生じる。
所定の静止摩擦力を生じるためには、扇風機の送風機部101と送風機部保持部位11との間の摩擦係数と接触する圧力を調整する。
【0029】
衝撃力を吸収する手段は、弾性体材によるもの、弾性体材と塑性体材の組合せによるもの、そして、所定の衝撃力以下では弾性変形し所定の衝撃力を超えると塑性変形する弾塑性体材によるものがある。これらの材の組み合わせもできる。
この解決手段によって、少々の衝撃を受けても、扇風機の送風機部101と送風機部保持部位11の間にずれが生じない、若しくは、ずれが生じても元の状態に復元する、若しくは、ずれが生じても送風方向が概ね真上を向くことを維持する程度のずれになる。
また、この解決手段によって、大きい衝撃力や地震力等の想定する外力以上の入力であれば、扇風機の送風機部101と送風機部保持部位11の間の衝撃を緩衝したり、扇風機の送風機部101と送風機部保持部位11の間にずれが生じることにより衝撃力を緩衝したりする。
【0030】
衝撃力を吸収する手段の具体的事例は、弾性体材、軟質弾性体材、低反発衝撃吸収材等がある。そして、具体的な低反発衝撃吸収材は、シリコン、フッ素、ウレタン、エチレンプロピレン、アクリル、ニトリル、ブチル、ポリエチレン、エピクロルヒドリン、スチレン、ポリマーアロイ、アミド系材料等がある。
【0031】
保持具10全体を衝撃吸収材にすることもできる。
保持具10の形状を、衝撃吸収材の弾塑性変形性能を考慮し、衝撃吸収材が塑性変形しても扇風機100が転倒しないような形状にする。また、衝撃吸収材の弾塑性変形性能は免震構造としても働く。
例えば、保持具10が頂部に凹みがある直方体をしたシリコン等の高分子化合物の衝撃吸収材であって、凹みの部分で送風機部101を保持する。この保持具10は、衝撃緩衝手段の機能と免震手段の機能を併せ持つ。
また、保持具10が衝撃吸収材の枕形状であって、送風機部101を、若しくは、扇風機100を保持することもできる。
【0032】
免震手段は、保持具10が床面と接する部分の滑り摩擦係数を低減する手段、キャスター等を備えることによる転がり摩擦係数を低減する手段、又は弾性体材による弾性支承手段等である。これらの手段を組み合わせて利用することもできる。
この解決手段によって、大きい衝撃力や地震力等の想定する外力以上の入力であれば、扇風機の送風機部101と送風機部保持部位11の間の衝撃を低減したり、外力そのものを低減したりする。
【0033】
保持具10全体を、免震手段として使用する弾性体材にすることもできる。
この弾性体材の弾性性能を考慮し、弾性体材を衝撃緩衝手段として使い、そして免震手段としても使う。
【0034】
請求項3は、
扇風機の送風機部101と送風機部保持部位11の一部とを、若しくは、全部とを固着することを特徴としている。
及び/若しくは、
扇風機の送風機部101と送風機部保持部位11の一部とを、若しくは、全部とを一体成形することを特徴としている。
【0035】
特許文献2記載の発明を実施する形態は、扇風機の送風機部101と送風機部保持部位11が固着や一体化していないため、想定以上の外力に対し、扇風機の送風機部101と送風機部保持部位11との間にずれが生じ、保持具10や送風機部101の部材応力は一定以上増えない。
【0036】
しかし、請求項3記載の発明は、扇風機の送風機部101と送風機部保持部位11とを固着または一体成形するため、扇風機に人がぶつかる時等の衝撃荷重を、ずれにより逃がすことができない。
【0037】
そのために、請求項3記載の発明は、特許文献2記載の発明を実施する形態の部材が負担する応力以上の応力に耐えられるように、保持具10及び扇風機100を設計しなくてはならない。
例えば、保持具10の部材の、及び、扇風機100部材の断面積を増やしたり、材料強度を高めたりする。
また、入力する外力を低減するため、保持部10の部材を弾性体材にし、その弾性変形を利用する免震構造手段、保持具のベース部位13の摩擦係数を低減する手段、及び、転がり摩擦係数を低減する手段等による免震構造手段を使うこともできる。
【0038】
請求項4は、
例えば夏期に、請求項3記載の発明品を扇風機として使用する時、扇風機の送風機部101に送風機部保持部位11が固着若しくは一体成形しているので、使い勝手が悪く、そして審美的に好ましくない。
その課題を解消するために、請求項3記載の発明品の保持具10の適切な部分で着脱可能にする手段を搭載する。
【0039】
請求項5は、
真上に向けた扇風機の送風機部101の首振りができるように、扇風機の支柱部102を、若しくは、扇風機の支柱部102と送風機部101との接合部104を、保持する保持具10である。
【0040】
扇風機支柱部保持部位35は、扇風機100全体の重心位置より、扇風機の送風機部101寄りの扇風機の支柱部102の部分を保持する。そのようにしなければ、扇風機支柱部保持部位35が保持している扇風機の支柱部102の部分を支点に、扇風機100が扇風機の送風機部101側に回転する問題が生じる。
【0041】
上記の課題解決手段として、請求項5の発明は、扇風機100を保持する位置を扇風機100の重心位置より扇風機の送風機部101寄りに特定することを特徴としている。
【0042】
請求項6は、
送風機部101の首振り時に、保持部位11と扇風機100とが可動可能に、即ち緩めに保持されていると、送風機部101の首振りの反作用として、扇風機の支柱部102及び基台部103が首振りの反対方向に回転する問題が生じる。
【0043】
扇風機の支柱部102及び基台部103が首振りの反対方向に回転する課題解決手段として、請求項6の発明は、扇風機の支柱部102と送風機部保持部位11との間との所定の固定度により扇風機100と保持具10とが一体化し、保持具10の転倒抵抗モーメントにより、扇風機100と保持具10の回転転倒を防ぐ。
所定の固定度を有する手段は、扇風機100と保持具10との接触する部分が、想定内の力以下では、ずれないようにするための、固定手段を備える。
固定手段の具体的事例としては、所定の静止摩擦力を生じる手段、所定の粘着力を生じる手段、所定のずれ防止力を有するマジックテープ(登録商標)、扇風機の支柱部102の回転を止める所定の支圧力を生じる突起物等の手段を搭載する。これらの手段は組み合わせても利用できる。
また、固定手段と免震手段とは組み合わせも利用できる。
【0044】
請求項5及び請求項6記載の発明品の保持具10が負担する外力は、保持具10が扇風機100の重心の近くの部分を保持するために、特許文献2記載の発明品の保持具10が負担する鉛直方向荷重より大きい鉛直方向荷重を負担する。
また、扇風機100の首振りの反作用を制動するために、保持具10に生じる転倒モーメントの負担も増加する。
以上の応力に耐えられるよう保持具10を設計しなくてはならない。例えば、保持具10の部材の断面性能を高めたり、材料強度を高めたり、衝撃力を緩衝したり、衝撃力や地震力等の外力を低減したりする方法等がある。
【0045】
請求項7及び請求項8は、
扇風機100と扇風機保持具10への衝撃力や地震力等の外力を低減する免震効果を持つ手段で、請求項1の発明の一部である。
そして、扇風機保持具10が扇風機100を保持した状態で、簡単に移動させることができる手段である。
【0046】
保持具のベース部位13が床と接する部分に、皿等の滑り摩擦係数を低減する滑動手段を搭載、若しくは、キャスター等の転がり摩擦を低減する旋回手段を搭載することを特徴としている。
【0047】
扇風機保持具10が扇風機100を保持した状態で移動させる具体的方法は、扇風機の基台部103を持ち上げ、扇風機100を押し引きする。
扇風機100を使用中は、保持具10が簡単に移動できないようにストッパー手段を備えることもできる。
そして、そのストッパー手段は、想定以上の外力を受ける時、自動的にストッパー機能を解除する手段を持つこともできる。
【0048】
請求項7及び請求項8記載の発明品の免震効果により、保持具10の部材の設計強度や断面性能を低減させることができる。そのため、想定する外力により生じる応力が比較的大きい請求項3、請求項4の発明の保持具への利用効果は大きい。
【0049】
しかし、請求項5及び請求項6記載の発明と、請求項8記載の発明との併用は、請求項5及び請求項6記載の発明の保持具10が扇風機100の首振りによる回転反力に抵抗する効果を低下させる可能性がある。
この課題解消のため、請求項6記載の発明には、ストッパー手段の搭載が望ましい。
【0050】
請求項9から請求項11は、
特許文献2記載の発明を、特許文献2記載の発明の改良発明である本願発明品に準用するものである。