特許第6851593号(P6851593)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6851593
(24)【登録日】2021年3月12日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】クラッキングエアゾール組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/39 20060101AFI20210322BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20210322BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   A61K8/39
   A61K8/02
   A61Q19/00
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-99095(P2017-99095)
(22)【出願日】2017年5月18日
(65)【公開番号】特開2018-193333(P2018-193333A)
(43)【公開日】2018年12月6日
【審査請求日】2019年12月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】593117730
【氏名又は名称】英昌化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】特許業務法人なじま特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 博昭
【審査官】 田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−335468(JP,A)
【文献】 特開2009−286734(JP,A)
【文献】 特開2010−235479(JP,A)
【文献】 特開2000−345146(JP,A)
【文献】 特開平11−100308(JP,A)
【文献】 国際公開第1991/001712(WO,A1)
【文献】 特開2010−265241(JP,A)
【文献】 特開2009−120525(JP,A)
【文献】 特開2008−031097(JP,A)
【文献】 特開2006−225274(JP,A)
【文献】 特開2003−335629(JP,A)
【文献】 特開2009−256224(JP,A)
【文献】 特開平04−007389(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/KOSMET(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両親媒性のエーテルアルコール類からなるクラッキングを発生するための溶剤と、界面活性剤と、増粘剤を含有し残部が水である原液と、噴射剤とからなり、
前記エーテルアルコール類は、エトキシジグリコール、オレイン酸エトキシジグリコール、コハク酸ビスエトキシジグリコール、ジエトキシジグリコール、ベヘン酸エトキシジグリコール、リン酸トリスエトキシジグリコール、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸ビスエトキシジグリコールから選択されるものであり、
原液は、溶剤:10〜30質量%、増粘剤:0.1〜1.0質量%を含有し、残部が0.1質量%以上の界面活性剤及び水であり、
原液:噴射剤の配合比が、1:0.5〜1:3(質量比)であり、
噴射物が噴射直後のシャーベット状態からクラッキングフォーム状態に変化することを特徴とするクラッキングエアゾール組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴射した噴射物がシャーベット状態からクラッキングフォーム状態に変化して、ベタツキ感がなく爽快な使用感が得られるクラッキングエアゾール組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、化粧用スプレーや防虫用スプレーや清掃用スプレー等として、従来から様々なスプレーが提供され使用に供されている。また、噴射物中において徐々に発泡が生じ、その発泡によって形成された泡沫がパチパチと音をたてて破泡するクラッキングフォーム状の噴射物が形成されるクラッキングエアゾール組成物も提案されており、特に化粧品の分野で多く使用されている(例えば、特許文献1や特許文献2を参照)。
【0003】
特許文献1に記載のクラッキングエアゾールの噴射物は、霧状や泡状に噴射された後、皮膚などの目的部位に付着するため、冷却感および爽快感が付与されるという効果がある。また、特許文献2に記載のクラッキングエアゾールの噴射物は、泡状に噴射された後、皮膚や頭髪などに付着するとともに、冷却感と破泡音による爽快感が付与されるという効果がある。
【0004】
特許文献1や特許文献2に記載のクラッキングエアゾール組成物においては、溶剤としてエタノールなどの低級アルコールを配合しており、また、従来からクラッキングを発生するための溶剤としてはエタノールが一般的であった。しかしながら、化粧品の場合は噴射物を直接に皮膚や頭皮に付着させるため、前記エタノールの影響で湿疹等を発生する人もいた。その結果、化粧品用のスプレーでは製品によってはアレルギー反応防止のためにエタノール成分を配合するのを禁止しているものもあり、エタノールなどの低級アルコールを配合しない新たなクラッキングエアゾール組成物の開発が要望されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−335468号公報
【特許文献2】特開2009−286734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記のような従来の問題点を解決して、溶剤としてエタノールなどの低級アルコールを配合しないため人に悪影響を及ぼすことがなく、また、噴射した噴射物がシャーベット状態からクラッキングフォーム状態に変化して、ベタツキ感がなく爽快な使用感が得られるクラッキングエアゾール組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた本発明のクラッキングエアゾール組成物は、両親媒性のエーテルアルコール類からなるクラッキングを発生するための溶剤と、界面活性剤と、増粘剤を含有し残部が水である原液と、噴射剤とからなり、前記エーテルアルコール類は、エトキシジグリコール、オレイン酸エトキシジグリコール、コハク酸ビスエトキシジグリコール、ジエトキシジグリコール、ベヘン酸エトキシジグリコール、リン酸トリスエトキシジグリコール、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸ビスエトキシジグリコールから選択されるものであり、原液は、溶剤:10〜30質量%、増粘剤:0.1〜1.0質量%を含有し、残部が0.1質量%以上の界面活性剤及び水であり、原液:噴射剤の配合比が、1:0.5〜1:3(質量比)であり、噴射物が噴射直後のシャーベット状態からクラッキングフォーム状態に変化することを特徴とするものである。
【0008】
【0009】
【0010】
【発明の効果】
【0011】
本発明では、両親媒性のエーテルアルコール類からなるクラッキングを発生するための溶剤と、界面活性剤と、増粘剤を含有し残部が水である原液と、噴射剤とからなるものとしたので、従来含有されていたエタノールがなく湿疹等を発生するおそれがなくなる。また、噴射物が噴射直後のシャーベット状態からクラッキングフォーム状態に変化するので、皮膚などの目的部位にしっかりと付着でき、また冷却感や破泡音による爽快感を付与することができる。
【0012】
また本発明では、溶剤が、エーテルアルコール類から選択される1または2種以上としたので、エタノールを使用する必要がなくなり、湿疹等を発生するおそれがなくなる。また、エーテルアルコール類のひとつであるエトキシジグリコールは保湿性に優れており、かつ有効成分の経皮吸収促進剤としても優れており、保湿効果の高い化粧品を提供することができる。
【0013】
また本発明では、原液は、溶剤:10〜30質量%、増粘剤:0.1〜1.0質量%を含有し、残部が0.1質量%以上の界面活性剤及び水としたので、容易にクラッキングエアゾール組成物を作成することができる。
【0014】
また本発明では、原液:噴射剤の配合比が、1:0.5〜1:3(質量比)としたので、原液と噴射剤とが分離することなくシャーベット状の噴射物を噴射することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を示す。
本発明のクラッキングエアゾール組成物は、乳液、保湿液、化粧水、日焼け止め料、整髪料、ヘアトニック、シェービングクリーム等の化粧品に適用可能なものである。
【0016】
本発明のクラッキングエアゾール組成物は、基本的には原液と噴射剤とからなるものであって、前記原液は少なくとも両親媒性のエーテルアルコール類からなるクラッキングを発生するための溶剤と、界面活性剤と、増粘剤を含有し、残部が水である。
また、本発明のクラッキングエアゾール組成物は、噴射物が噴射直後のシャーベット状態からクラッキングフォーム状態に変化するものである。従来は、シャーベット状態あるいはクラッキングフォーム状態のいずれか一方の状態を呈するものしか存在していなかったが、本発明ではシャーベット状態からクラッキングフォーム状態に変化して2態様を呈するエアゾール組成物を提供することができる。
【0017】
本発明に用いられる噴射剤は、通常のエアゾール組成物に用いられる噴射剤であれば特に限定されず、プロパンやブタンやこれらの混合物である液化石油ガス(以下、LPGと記す)、LPGとジメチルエーテル(以下、DMEと記す)の混合物等が挙げられる。特に、安定性の観点からLPGが好ましい。
なお、噴射剤としてDMEのみを使用した場合は、シャーベット状態からクラッキングフォーム状態に変化しないので好ましくない。
【0018】
本発明では、クラッキングを発生するための溶剤として両親媒性のエーテルアルコール類を用いる。従来、クラッキングを発生するための溶剤としてはエタノールが一般的であったのに対し、本発明ではエタノールの使用を禁止する化粧品等にも適用可能なクラッキングエアゾール組成物を提供することを目的に開発した結果、本件発明者はエタノールに替えてエーテルアルコール類を含有できることを見出した。
【0019】
即ち、両親媒性のエーテルアルコール類はクラッキングを発生するために必要な溶剤であるが、これを含有させると噴射物が噴射直後のシャーベット状態からクラッキングフォーム状態に変化することを究明した。従って、噴射物は噴射直後ではシャーベット状態にあって冷たい固形物の感触であるのが、数秒後には粘調液に変化し、この液体中において徐々に発泡が生じ、その発泡によって形成された泡沫がパチパチと音をたてて破泡するクラッキングフォーム状態となり、最終的には液体成分が皮膚に浸透していく。このように、本発明はシャーベット状態からクラッキングフォーム状態に変化する噴射物を形成できるという従来にない全く新しいタイプのエアゾール組成物を提供するものである。
【0020】
前記両親媒性のエーテルアルコール類としては、エトキシジグリコール、オレイン酸エトキシジグリコール、コハク酸ビスエトキシジグリコール、ジエトキシジグリコール、ベヘン酸エトキシジグリコール、リン酸トリスエトキシジグリコール、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸ビスエトキシジグリコールから選択される1または2種以上を用いることができる。
なお、エトキシジグリコールには保湿効果があるため、保湿を目的とする化粧品に配合するのが好ましい。
【0021】
前記溶剤の原液中における含有量は、10〜30質量%の範囲が好ましく、特に、12〜25質量%の範囲が好ましい。10質量%未満では噴射剤型がシャーベット状になりクラッキング性が劣るという問題があり、30質量%を超えるとベトツキ感が出て使用感に劣るという問題や生産コストが高くなるという問題がある。
【0022】
界面活性剤は、非イオン性のもので原液において乳化剤として機能するものである。HLBが7〜18の非イオン性界面活性剤であれば、通常の化粧料に用いられる何れのものも用いることができる。
具体的には、ポリオキシエチレンコレステロールエーテル、ポリオキシエチレンコレスタノールエーテル、ポリオキシエチレンフィトステロールエーテル、ポリオキシエチレンフィトスタノールエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、エチレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられ、これらを一種又は二種以上用いることができる。
【0023】
前記界面活性剤の原液中における含有量は、0.1〜2.0質量%の範囲が好ましい。0.1質量%未満では乳化力が不足するという問題があり、2.0質量%を超えるとベタツキ感等が発生するという問題がある。
【0024】
増粘剤は、水分の粘度を調整して化粧品の安定性を高める成分であり、水溶性のものである。
代表例としては、天然高分子では微生物由来のキサンタンガム、植物由来のマンナンやペクタン、半合成高分子ではセルロース系のカルボキシメチルセルロースナトリウムやビニル系のカルボキシポリマー、合成高分子ではポリビニルアルコールなどがある。
【0025】
前記増粘剤の原液中における含有量は、0.1〜1.0質量%の範囲が好ましい。0.1質量%未満では乳化安定性に欠けるという問題があり、1.0質量%を超えるとベタツキ感等が発生するという問題がある。
【0026】
残部は水である。この水としては、例えば、精製水、イオン交換水、生理食塩水、海洋深層水などがあげられる。
【0027】
前記原液:噴射剤の配合比は、1:0.5〜1:3(質量比)であることが好ましい。噴射剤がこの比率よりも少ない(原液の0.5倍未満である)と、噴射力が小さくて十分な噴射が難しく、かつ、クラッキング性が劣り、一方、噴射剤がこの比率よりも多い(原液の3倍よりも多い)と、原液と噴射剤が分離してしまうおそれがあるからである。
【0028】
その他、前記原液内に香料や着色剤や防腐剤等、必要に応じて任意に添加してもよいことは勿論である。
【実施例】
【0029】
(実施例)
表1に示すように、溶剤としてエトキシジグリコールと、界面活性剤(ニッコール社製PEN−4630とHCO−10)と、増粘剤としてヒドロキシエチルセルロースを含有し、残部が水である原液を作成した。この原液と噴射剤(LPG)を所定の比率で配合してエアゾール組成物を作成し、容器内に充填した。
手に噴射して形成した噴射物について、クラッキング性、使用感、シャーベット状態からクラッキングフォーム状態への変化の有無について評価した結果を表1に示すが、全て満足できることが確認できた。特に、噴射物が噴射直後ではシャーベット状態にあって冷たい固形物の感触であり、数秒後には粘調液に変化し、この液体中において徐々に発泡が生じ、その発泡によって形成された泡沫がパチパチと音をたてて破泡するクラッキングフォーム状態となる過程は、従来にない全く新しい感覚のフォーム状化粧品を提供するものであった。
【0030】
(比較例)
実施例と同じ成分を配合し、エトキシジグリコールの含有量が5質量%のもの(比較例1)、エトキシジグリコールの含有量が40質量%のもの(比較例2)、原液:噴射剤の配合比が質量比で、1:0.3のもの(比較例3)、原液:噴射剤の配合比が質量比で、1:4のもの(比較例4)についてエアゾール組成物を作成し、容器内に充填した。
手に噴射して形成した噴射物について、クラッキング性、使用感、シャーベット状態からクラッキングフォーム状態への変化の有無について評価した結果を表2に示すが、いずれの比較例も満足できるものでないことが確認できた。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】