(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6851604
(24)【登録日】2021年3月12日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】印刷用樹脂凸版の貼込装置
(51)【国際特許分類】
B41F 27/12 20060101AFI20210322BHJP
B41F 27/06 20060101ALI20210322BHJP
B41F 13/24 20060101ALI20210322BHJP
B41F 5/24 20060101ALI20210322BHJP
B41N 3/00 20060101ALI20210322BHJP
B41N 1/12 20060101ALI20210322BHJP
G01B 11/06 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
B41F27/12 Z
B41F27/06
B41F13/24
B41F5/24
B41N3/00
B41N1/12
G01B11/06 101Z
【請求項の数】12
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2019-116121(P2019-116121)
(22)【出願日】2019年6月24日
(65)【公開番号】特開2021-781(P2021-781A)
(43)【公開日】2021年1月7日
【審査請求日】2020年3月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】599040883
【氏名又は名称】総武機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114421
【弁理士】
【氏名又は名称】薬丸 誠一
(72)【発明者】
【氏名】大沢 伸
(72)【発明者】
【氏名】岡村 紘樹
【審査官】
上田 正樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−185699(JP,A)
【文献】
特開2003−154628(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/060884(WO,A1)
【文献】
国際公開第2010/146040(WO,A1)
【文献】
国際公開第2013/076526(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0168594(US,A1)
【文献】
独国特許出願公開第102009032529(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 27/00−27/14
B41N 1/00−99/00
G01B 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷用樹脂凸版を載せるテーブルと、円筒状のスリーブに挿入してスリーブを軸心回りに回転させるマンドレルとを備え、外周面にクッション・テープが貼り付けられたスリーブを回転させながらその上に印刷用樹脂凸版を貼り付けていく印刷用樹脂凸版の貼込装置において、
テーブルに載せた印刷用樹脂凸版の厚みを計測する版厚計測装置と、
マンドレルの回転軸方向に移動自在な左右位置決め装置と、
マンドレルと対向するように左右位置決め装置に支持され、スリーブの外周面に貼り付けられたクッション・テープの厚みを計測する反射型レーザー変位計と、
計測結果に基づいて印刷リピート長を算出する演算部とを備える
印刷用樹脂凸版の貼込装置。
【請求項2】
円筒状のスリーブに挿入してスリーブを軸心回りに回転させるマンドレルと、マンドレルの回転角度を検出するエンコーダとを備え、外周面にクッション・テープが貼り付けられたスリーブを回転させながらその上に印刷用樹脂凸版を貼り付けていく印刷用樹脂凸版の貼込装置において、
マンドレルの回転軸方向に移動自在な左右位置決め装置と、
マンドレルと対向するように左右位置決め装置に支持され、スリーブの外周面に貼り付けられたクッション・テープの厚み及び印刷用樹脂凸版の厚みを計測する共焦点変位計と、
計測結果をスリーブの外周面上の分布として出力する演算部とを備える
印刷用樹脂凸版の貼込装置。
【請求項3】
演算部は、計測結果に基づいて印刷リピート長を算出する
請求項2に記載の印刷用樹脂凸版の貼込装置。
【請求項4】
印刷用樹脂凸版を載せるテーブルと、印刷用樹脂凸版の表面部を撮像する撮像部と、円筒状のスリーブに挿入してスリーブを軸心回りに回転させるマンドレルと、マンドレルの回転角度を検出するエンコーダとを備え、外周面にクッション・テープが貼り付けられたスリーブを回転させながらその上に印刷用樹脂凸版を貼り付けていく印刷用樹脂凸版の貼込装置において、
テーブルに載せた印刷用樹脂凸版の厚みを計測する版厚計測装置と、
撮像部で撮像した印刷用樹脂凸版の回転方向の少なくとも2箇所に設けた同形状の特定画線部の輪郭を自動的に認識する幾何形状サーチ機能及び撮像部基準位置から該画線部に設定した点までの位置計測機能を有する画像処理手段と、
計測結果に基づいて印刷リピート長を算出する演算部とを備える
印刷用樹脂凸版の貼込装置。
【請求項5】
テーブルに載せた印刷用樹脂凸版に上方から当接して印刷用樹脂凸版をテーブル面に押し当てる押し当て部材を備える
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の印刷用樹脂凸版の貼込装置。
【請求項6】
版厚計測装置は、
追従ローラと、
追従ローラを印刷用樹脂凸版に押し当てて印刷用樹脂凸版の厚みに追従して可動する連動部材と、
追従ローラの変位を計測する変位センサと、
マンドレルの回転軸を含む鉛直面と押し当て部材との中間位置のテーブル上部に追従ローラを移動可能な昇降装置とを備える
請求項5に記載の印刷用樹脂凸版の貼込装置。
【請求項7】
エアシリンダを備える着脱機構と、
マンドレルと平行になるように着脱機構に回転自在に支持されるレイオンローラと、
電磁弁と、
電空レギュレータとを備え、
演算部は、スリーブ上の印刷用樹脂凸版の幅に合わせて自動的に空気圧を調整する
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の印刷用樹脂凸版の貼込装置。
【請求項8】
モータ、ボールねじ、ピストンロッド及び本体によって構成される電動アクチュエータを備える着脱機構と、
マンドレルと平行になるように着脱機構に回転自在に支持されるレイオンローラと、
モータの動作を制御する制御部とを備える
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の印刷用樹脂凸版の貼込装置。
【請求項9】
被印刷基材の幅、厚み及び印刷に適する張力を被印刷基材の銘柄別または種別ごとに更新可能に記録する記録部を備える
請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の印刷用樹脂凸版の貼込装置。
【請求項10】
印刷用樹脂凸版の被粘着面から曲げ中立面までの高さを更新可能に記録する記録部を備える
請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の印刷用樹脂凸版の貼込装置。
【請求項11】
演算部は、最適縮小率を算出する
請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の印刷用樹脂凸版の貼込装置。
【請求項12】
演算部は、適正張力値を算出する
請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載の印刷用樹脂凸版の貼込装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷の前準備段階として、フレキソ輪転印刷機の版胴に装着される円筒状のスリーブの外周面に印刷用樹脂凸版(刷版ともいう)を貼り付ける印刷用樹脂凸版の貼込装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図1に示すように、スリーブ式の多色フレキソ輪転印刷機1では、製版済みの板状の印刷用樹脂凸版5が円筒状表面に貼り付けられたスリーブ(以下、刷版スリーブという)20を印刷機の版胴2に挿入した状態で印刷が行われる。印刷用樹脂凸版5は、両面に粘着層を有しクッション層をもたせたクッション・テープ4をスリーブ3の外周面に貼り付けた上で、その上に貼り付けられる。
【0003】
図1において、I
mpで示す量は、印刷のために印刷用樹脂凸版5を圧胴7上の被印刷基材6に所定の圧力で押し込んだときに生じるクッション・テープ4及び印刷用樹脂凸版5の潰れ量で、印圧と呼ばれる。印刷工程において印圧I
mpを増減させると、クッション・テープ4及び印刷用樹脂凸版5の圧縮度合いが変化する。一方、印刷機制御部は、設定された印刷リピート長に従って回転を制御する。印刷リピート長とは、刷版スリーブ20の1回転分の印刷長さであって、印刷機制御部には、印刷時の張力負荷状態の被印刷基材6に印刷する長さを設定する。その結果、印圧I
mpを増減させても、刷版スリーブ20を1回転させる間に被印刷基材6を送りだす距離は、印刷リピート長の設定値になり、変わらない。
【0004】
そのため、刷版スリーブ20の版胴径D
pによる周長が印刷機制御部に設定する印刷リピート長と一致していなくては、印刷機内を走行する被印刷基材6に対して印刷用樹脂凸版5が速度差を有してしまう。印刷用樹脂凸版5上を被印刷基材6が滑るようなことが起きれば、例えば円形の絵柄が長円形になるような印刷の伸びが起きてしまう。そして、原稿より細長く印刷されてしまうと、絵柄形状、色合い、色の濃度が変わってしまう。このような現象はスラーと呼ばれ、一般に0.02mm以上長くなったスラーは印刷不良の一つである。
図1に示すように、無圧状態の仕立て上がり径D
po-aがD
p+2I
mpと等しい関係が成り立ち、πD
pなる印刷リピート長を印刷機制御部に設定し、印刷結果が原稿リピート長と一致すれば、正常な印刷を再現できる。印刷機制御部にπD
pなる印刷リピート長を設定したとしても、貼込装置において、
図2に示すように、無圧状態の仕立て上がり径D
po-aがD
p+2I
mpと等しくない状態で貼り込まれてしまうと、スラーが発生する。
【0005】
印刷用樹脂凸版5を貼り終えた刷版スリーブ20の外径には、幾何学的に理想的な円筒に対してばらつきをもった狂いが存在する。クッション・テープ4は、弾力性を発揮することで、仕立て上がり径の誤差を吸収したり、印刷時の衝撃を吸収して印刷用樹脂凸版5の微視的な変形に対して補助したりする。クッション・テープ4は、部分的に印圧がかかっても刷版上の小さな点であっても大きく潰すことなく、画像を再現するための補助的働きと、印刷オペレータが行う印圧の調整作業において許容範囲を広く確保する働きがある。クッション・テープ4の製造において、弾力性のあるテープの厚みを均一に生産するには高い製造技術を要し、クッション・テープ4の製造ロットが異なると、厚みが異なってしまう。一般に、クッション・テープ4は、厚みの±7%程度の範囲で収まるよう厚みの品質が管理されている。
【0006】
板状の印刷用樹脂凸版5は、一般に感光性樹脂を特殊な光によって選択的に感光して架橋反応を起こさせて硬化させ、光を当てない非架橋部分を現像液で洗い流して乾燥し、後露光することで現像する技法で凸部を生成したり、レーザーによって表面を描画したりして製版される。しかし、版厚に関しては、特許文献1に示すカッピング現象や、現像する工程での樹脂の膨潤特性や、乾燥ムラや、露光の光源の照射強度の経時的低下、さらには印刷用樹脂凸版の紫外線吸収のムラによる透過量のバラツキなどによって、版厚低下及び不均一が発生することから、印刷用樹脂凸版全面で均一な厚さにはならない。また、現像機器ごとに版厚の差が生じる。
【0007】
刷版スリーブに関する印刷品質の一つに、原稿の寸法どおりに印刷が再現できているかを確認する項目として印刷リピート長がある。印刷リピート長が原稿リピート長の許容範囲を超えた場合、現像前工程、現像工程、貼込装置での貼込み工程、印刷工程に対し、どこに問題があったのかを調査し、改善が図られる。
【0008】
図3に示すように、板状の印刷用樹脂凸版5がスリーブ表面のクッション・テープ4に円筒状に巻き付けられると、印刷用樹脂凸版5の外面は、ΔL
pで示すように容易に伸長し、内面は僅かに縮む。原稿の寸法どおりに印刷を再現するために、板状の印刷用樹脂凸版5を製版する際、この伸長分を予め加味して、刷版スリーブ20の回転方向(または天地方向)に対して原稿の寸法よりも画像を僅かに縮小する。このときの縮小する割合を縮小率という。
【0009】
縮小率は、印刷用樹脂凸版5の天地方向の伸長分のほかに、印刷工程における被印刷基材6の伸長分についても考慮する必要がある。印刷中は、連続した被印刷基材6に張力を作用させて引っ張ることで印刷機内を走行させ、連続的に印刷する。一方、印刷リピート長は、印刷後に被印刷基材6を張力解放状態で平坦にして評価される。特に被印刷基材6が伸びやすい軟包装材フィルムの場合、張力による伸長分を考慮して印刷リピート長が管理される。
【0010】
ここで、刷版スリーブ20における印刷リピート長と各外径と縮小率の関係について述べる。関係する各要素をつぎのように表す。
T:張力(印刷時に被印刷基材6を走行方向に引張る力)[N]
T
p:現刷版スリーブ20を用いて原稿リピート長A
rlを達成するための張力[N]
M
t:被印刷基材6の厚み[mm]
W:被印刷基材6の幅[mm]
E:被印刷基材6の引張弾性係数[MPa]
A
rl:原稿リピート長[mm]
L:原稿リピート長に縮小率を掛けた印刷用樹脂凸版5の平坦時の長さ[mm]
L=δ
pA
rl/100
A
r-2:天地方向に離れた2箇所の特定画線部A,B間の原稿上の距離[mm]
L
p-2:天地方向に離れた2箇所の特定画線部A,B間の平坦時の印刷用樹脂凸版上の距離[mm]
L
p-2=δ
pA
r-2/100
P
rl-r:印刷中の張力負荷状態での印刷リピート長[mm]
P
rl-a:印刷後の張力解放状態での印刷リピート長[mm]
I
mp:製版するために印刷リピート長の計算に用いた印圧[mm]
D
s:スリーブの外径[mm]
D
po-a:無圧状態の仕立て上がり径[mm]
D
po-a=D
s+2(C
t+P
t-ΔC
t-ΔP
t)
D
p:版胴径[mm]
D
p=D
s+2(C
t+P
t-ΔC
t-ΔP
t-I
mp)
D
ph:刷版スリーブ20における印刷用樹脂凸版5の曲げ中立面9の径[mm]
D
ph=D
s+2(C
t-ΔC
t+h)
C
t:クッション・テープ4の厚み(公称値)[mm]
P
t:印刷用樹脂凸版5の厚み(公称値)[mm]
ΔC
t:貼り込んだ状態でのクッション・テープ4の圧縮量[mm]
ΔP
t:印刷用樹脂凸版5の厚みの低下量[mm]
h:印刷用樹脂凸版5の被粘着面から曲げ中立面9までの高さ[mm]
θ:刷版スリーブ20上の2箇所の特定画線部A,Bがスリーブ軸心となす角度[°]
α:スリーブ3に貼り込んだ直線長さLの印刷用樹脂凸版5がスリーブ中心となす角度[°]
δ
p:既に印刷用樹脂凸版5に適用した縮小率[%]
δ
p=L/A
rl×100
δ
i:最適縮小率[%]
π:円周率(3.14159・・・)
【0011】
湾曲させた状態の円弧長さが平坦な長さと一致する面、すなわち曲げ中立面9を
図3に一点鎖線で示す。印刷用樹脂凸版5の被粘着面から曲げ中立面9までの高さhは、印刷用樹脂凸版5の銘柄によって異なる値になる。曲げ中立面9の高さhは事前に把握できる値である。
【0012】
フレキソ輪転印刷機では、運転を開始するにあたり、印刷機制御部に印刷リピート長P
rl-rを入力する。
図1に示すように、印刷機制御部では、印圧I
mpを受けて圧縮した版胴径D
pと被印刷基材6が同速になるように印刷リピート長の入力値に合わせて版胴の回転比を決定し、運転をはじめる。印刷工程において、印圧I
mpを増加させて、版面及びクッション・テープ4をより圧縮させた場合であっても、被印刷基材6に対する版胴2の回転比が変わらなければ、印刷リピート長は変わらない。
【0013】
ここで、版胴径D
pとは、印圧I
mpが負荷したときに無圧状態の仕立て上がり径D
po-aが圧縮され、印圧I
mp分だけ細くなることを想定した直径を意味する。印刷中の印刷リピート長P
rl-rは、この版胴径D
pに円周率を掛けた次式で表される。ただし、印刷機制御部に印刷リピート長をP
rl-rと入力していることが条件となる。
P
rl-r=πD
p=π{D
s+2(C
t+P
t-ΔC
t-ΔP
t-I
mp)} ・・・・・(1)
【0014】
被印刷基材6の中には引張弾性係数Eが伸びによって変わるものがあるなど、一般に伸びと張力Tとの関係は非線形である。しかし、印刷中の張力は、残留ひずみが現れない弾性限度内で決定される。したがって、被印刷基材6が張力によって伸ばされる量は、張力と正比例の関係にあるとして取り扱うことができる。印刷中の印刷リピート長P
rl-rと印刷後の張力解放状態での印刷リピート長P
rl-aとの関係は、式(2)で表される。また、無圧状態の仕立て上がり径D
po-aと印刷リピート長との関係は、式(3)で表される。ただし、印刷機制御部に印刷リピート長をP
rl-rと入力していることが条件となる。
P
rl-a=π{D
s+2(C
t+P
t-ΔC
t-ΔP
t-I
mp)}/{1+T/(M
t・W・E)} ・・・・・(2)
D
po-a=2I
mp+P
rl-a{1+T/(M
t・W・E)}/π ・・・・・(3)
【0015】
貼込み品質が原因でスラー現象が発生することがなく、印刷リピート長P
rl-aを原稿リピート長A
rlと同じ長さに再現するためには、被印刷基材6の張力Tによる伸長分、ならびに、クッション・テープ4及び印刷用樹脂凸版5の厚みに関する変動量ΔC
t及びΔP
tの実際の値を把握して、式(1)と式(2)により印刷リピート長を計算し、印刷機制御部にP
rl-rの値を入力するとともに、ΔC
t及びΔP
tの実際の値を考慮した縮小率で製版することと、貼り込み時にクッション・テープ4の圧縮量ΔC
tが所定の値になるようにクッション・テープ4への圧縮力を制御することが重要となる。
【0016】
図4に、刷版スリーブ20の断面を示す。印刷用樹脂凸版5が貼り込まれた状態では、クッション・テープ4が僅かに圧縮された状態になる。
図1において、圧縮量ΔC
tは、曲げ中立面9までの高さhと印刷用樹脂凸版5上の2箇所の特定画線部A,B間の距離L
p-2と刷版スリーブ20上での2箇所の特定画線部A,Bがなす角度θによって、次式で表される。
ΔC
t=0.5D
s+C
t-1.8δ
p・A
r-2/θ/π+h ・・・・・(4)
=0.5D
s+C
t-180L
p-2/θ/π+h ・・・・・(5)
【0017】
印刷機制御部に印刷リピート長をP
rl-rの値で入力して、印刷後の張力解放状態での印刷リピート長をP
rl-aにするための最適縮小率δ
iは、次式で表される。
δ
i=π{D
s+2(C
t-ΔC
t+h)}/P
rl-a×100 ・・・・・(6)
【0018】
図1に示すように、刷版スリーブ20上での2箇所の特定画線部A,Bがなす角度θは、
θ=L
p-2×360/{D
s+2(C
t-ΔC
t+h)}/π ・・・・・(7)
ここで、
図2に示すように、ΔCt=0と置いたときの回転角をθ
0で表すと、
θ
0=L
p-2×360/{D
s+2(C
t+h)}/π ・・・・・(8)
いま、クッション・テープ4を貼ったスリーブに特定画線部Aを起点としてマンドレルを角度θ
0だけ回し、印刷用樹脂凸版5を巻き付けて停止したときに、クッション・テープ4の圧縮量ΔC
tの影響を受けることから、ΔC
t>0の場合、特定画線部Bは、まだクッション・テープ4に接触して貼られるまでに僅かな距離を残した状態となるか、またはそれとは反対に、ΔC
t<0の場合、既に巻き付けられて貼られている状態となる。このときの角度θ
0で回転した位置から特定画線部Bまでの微小距離をΔL
p-Bで表すと(
図13参照)、次式が成り立つ。
ΔC
t=0.5{D
s+2(C
t+h)}ΔL
p-B/L
p-2 ・・・・・(9)
【0019】
原稿の長さどおりに印刷長さを再現でき、さらに、スラーの要因にならない刷版スリーブ20を仕立てるためには、前述のとおり、印刷用樹脂凸版5の厚みの低下量ΔP
tと、貼り込まれた状態でのクッション・テープ4の圧縮量ΔC
tを把握することが重要である。しかし、従前は、印刷用樹脂凸版5の厚みの低下量ΔP
tとクッション・テープ4の圧縮量ΔC
tを個別に把握し、活用することが検討されていなかった。また、従前は、これらを計測する手段を貼込装置に装備することが検討されなかった。
【0020】
従前より、貼込装置の一例として、レイオンローラを装備したものがある。しかし、レイオンローラの押し付け機構には、スリーブ上の印刷用樹脂凸版の合計幅が変わっても、クッション・テープの圧縮量ΔC
tを把握する手段が無いため、圧縮量ΔC
tが所定量になるような機能は無い。そのため、一つのスリーブに複数枚の印刷用樹脂凸版を貼り込むような場合、貼り込み順に応じてクッション・テープの圧縮量ΔC
tが異なり、最初に貼られた版は最後に貼られた版よりも印刷長さが僅かに短くなるといった不具合が発生することがあった。
【0021】
特許文献2には、刷版スリーブの表面が有する幾何学的に正しい版円筒面からの狂いをtopography dataとしてスキャンし、計測した刷版スリーブに対する適正な印圧を決定する際の参考データとして表示、記録する機能を有したスキャニング・ヘッド付きの貼込装置が印刷時の無駄を排除することを目的の一つとして記載されている。特許文献2に示すスキャニング・システムは、回転するフォロワ・ロールを刷版スリーブに接触させる構成になっている。しかし、その計測結果は、印刷機での最適印圧及びレジスタマーク位置合わせの設定、及び計測した刷版スリーブに対してスラーを発生させないための印刷リピート長を印刷機制御部に設定するために活用されるものであり、既に貼り込まれた刷版スリーブを印刷に使用することを前提とした印刷工程での改善を図るものである。このため、この貼込装置では、印刷用樹脂凸版の厚みの低下量ΔP
tとクッション・テープの圧縮量ΔC
tの合計値を把握できるが、これらを個別に把握することはできない。
【0022】
特許文献3及び特許文献4には、刷版表面が有する仕立て上がり径及びクッション・テープの厚みをカメラなどの非接触センサによりスキャンする貼込装置が、印刷時の無駄を排除することを目的の一つとして記載されている。しかし、これらの貼込装置では、印刷用樹脂凸版の厚みの低下量ΔP
tとクッション・テープの圧縮量ΔC
tの合計値を把握できるが、これらを個別に把握することはできない。
【0023】
特許文献5には、E
3-CMOSイメージセンサ技術などを搭載した2次元の反射式レーザー変位センサを用いて、クッション・テープが貼られる前の状態とクッション・テープが貼られた後の状態のいずれかまたは両方で、円筒外周面をスキャンすることで、スリーブ円筒面に異物付着や表面欠損などの異常が無く、実用可能な円筒面であるかの検査を行い、異常が無いことを確認してから印刷用樹脂凸版の貼り込みを行えるようにした貼込装置が記載されている。しかし、この貼込装置では、クッション・テープの厚みを把握できるが、印刷用樹脂凸版の厚みとクッション・テープの圧縮量ΔC
tを把握することはできない。
【0024】
このように、特許文献2ないし特許文献5に記載された貼込装置は、印刷用樹脂凸版が貼られた後の状態で圧縮されたクッション・テープの厚みと印刷用樹脂凸版だけの厚みを個別に計測するものではない。これらの先行技術は、印刷時の無駄を排除することを目的としているものの、印刷の前段階である現像前工程に対する情報の共有化を図り、原稿どおりの印刷リピート長を再現するための縮小率の最適化について検討し、現像前工程で活用できる情報を提供し支援するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】特開2004−90651号公報
【特許文献2】米国特許第8534194号明細書
【特許文献3】国際公開第2010/060884号
【特許文献4】国際公開第2010/146040号
【特許文献5】国際公開第2013/076526号
【特許文献6】国際公開第2017/110837号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
本発明の目的とするところは、スラー現象による影響を好適に排除でき、ひいては、印刷機において、高精度、高品質の印刷を可能とする印刷用樹脂凸版の貼込装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明に係る印刷用樹脂凸版の貼込装置は、
印刷用樹脂凸版を載せるテーブルと、円筒状のスリーブに挿入してスリーブを軸心回りに回転させるマンドレルとを備え、外周面にクッション・テープが貼り付けられたスリーブを回転させながらその上に印刷用樹脂凸版を貼り付けていく印刷用樹脂凸版の貼込装置において、
テーブルに載せた印刷用樹脂凸版の厚みを計測する版厚計測装置と、
マンドレルの回転軸方向に移動自在な左右位置決め装置と、
マンドレルと対向するように左右位置決め装置に支持され、スリーブの外周面に貼り付けられたクッション・テープの厚みを計測する反射型レーザー変位計と、
計測結果に基づいて印刷リピート長を算出する演算部とを備える
印刷用樹脂凸版の貼込装置である。
【0028】
また、別の本発明に係る印刷用樹脂凸版の貼込装置は、
円筒状のスリーブに挿入してスリーブを軸心回りに回転させるマンドレルと、マンドレルの回転角度を検出するエンコーダとを備え、外周面にクッション・テープが貼り付けられたスリーブを回転させながらその上に印刷用樹脂凸版を貼り付けていく印刷用樹脂凸版の貼込装置において、
マンドレルの回転軸方向に移動自在な左右位置決め装置と、
マンドレルと対向するように左右位置決め装置に支持され、スリーブの外周面に貼り付けられたクッション・テープの厚み及び印刷用樹脂凸版の厚みを計測する共焦点変位計と、
計測結果をスリーブの外周面上の分布として出力する演算部とを備える
印刷用樹脂凸版の貼込装置である。
【0029】
この場合、
演算部は、計測結果に基づいて印刷リピート長を算出する
との構成を採用することができる。
【0030】
また、さらに別の本発明に係る印刷用樹脂凸版の貼込装置は、
印刷用樹脂凸版を載せるテーブルと、印刷用樹脂凸版の表面部を撮像する撮像部と、円筒状のスリーブに挿入してスリーブを軸心回りに回転させるマンドレルと、マンドレルの回転角度を検出するエンコーダとを備え、外周面にクッション・テープが貼り付けられたスリーブを回転させながらその上に印刷用樹脂凸版を貼り付けていく印刷用樹脂凸版の貼込装置において、
テーブルに載せた印刷用樹脂凸版の厚みを計測する版厚計測装置と、
撮像部で撮像した印刷用樹脂凸版の回転方向の少なくとも2箇所に設けた同形状の特定画線部の輪郭を自動的に認識する幾何形状サーチ機能及び撮像部基準位置から該画線部に設定した点までの位置計測機能を有する画像処理手段と、
計測結果に基づいて印刷リピート長を算出する演算部とを備える
印刷用樹脂凸版の貼込装置である。
【0031】
ここで、これらの本発明に係る印刷用樹脂凸版の貼込装置の一態様として、
テーブルに載せた印刷用樹脂凸版に上方から当接して印刷用樹脂凸版をテーブル面に押し当てる押し当て部材を備える
との構成を採用することができる。
【0032】
この場合、
版厚計測装置は、
追従ローラと、
追従ローラを印刷用樹脂凸版に押し当てて印刷用樹脂凸版の厚みに追従して可動する連動部材と、
追従ローラの変位を計測する変位センサと、
マンドレルの回転軸を含む鉛直面と押し当て部材との中間位置のテーブル上部に追従ローラを移動可能な昇降装置とを備える
との構成を採用することができる。
【0033】
また、これらの本発明に係る印刷用樹脂凸版の貼込装置の他態様として、
エアシリンダを備える着脱機構と、
マンドレルと平行になるように着脱機構に回転自在に支持されるレイオンローラと、
電磁弁と、
電空レギュレータとを備え、
演算部は、スリーブ上の印刷用樹脂凸版の幅に合わせて自動的に空気圧を調整する
との構成を採用することができる。
【0034】
あるいは、これらの本発明に係る印刷用樹脂凸版の貼込装置の他態様として、
モータ、ボールねじ、ピストンロッド及び本体によって構成される電動アクチュエータを備える着脱機構と、
マンドレルと平行になるように着脱機構に回転自在に支持されるレイオンローラと、
モータの動作を制御する制御部とを備える
との構成を採用することができる。
【0035】
また、これらの本発明に係る印刷用樹脂凸版の貼込装置の別の態様として、
被印刷基材の幅、厚み及び印刷に適する張力を被印刷基材の銘柄別または種別ごとに更新可能に記録する記録部を備える
との構成を採用することができる。
【0036】
また、これらの本発明に係る印刷用樹脂凸版の貼込装置の別の態様として、
印刷用樹脂凸版の被粘着面から曲げ中立面までの高さを更新可能に記録する記録部を備える
との構成を採用することができる。
【0037】
また、これらの本発明に係る印刷用樹脂凸版の貼込装置のさらに別の態様として、
演算部は、最適縮小率を算出する
との構成を採用することができる。
【0038】
また、これらの本発明に係る印刷用樹脂凸版の貼込装置のさらに別の態様として、
演算部は、適正張力値を算出する
との構成を採用することができる。
【発明の効果】
【0039】
以上のとおり、本発明に係る印刷用樹脂凸版の貼込装置によれば、スラー現象による影響を好適に排除でき、ひいては、この印刷用樹脂凸版を使用する印刷機において、高精度、高品質の印刷が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】
図1は、印刷中の刷版スリーブの説明図である。
【
図2】
図2は、クッション・テープを圧縮させない状態で貼り込んだ刷版スリーブの説明図である。
【
図3】
図3(a)は、印刷用樹脂凸版を平坦にした状態の説明図、
図3(b)は、印刷用樹脂凸版を曲げた状態と曲げ中立面の説明図である。
【
図4】
図4は、印刷用樹脂凸版が貼り込まれた状態の刷版スリーブの説明図である。
【
図7】
図7は、版厚計測装置を主として表した貼込装置の要部拡大側面断面図である。
【
図8】
図8は、テーブルに対向して印刷用樹脂凸版の一部を挟む押し当て部材の説明図である。
【
図10】
図10は、反射光型変位計ユニットを主として表した貼込装置の要部拡大側面断面図である。
【
図11】
図11は、共焦点変位計を搭載した反射光型変位計ユニットを主として表した貼込装置の要部拡大正面図である。
【
図12】
図12は、貼込装置の動作を示すフローチャートである。
【
図13】
図13は、特定画線部を撮像したカメラ映像の例である。
【
図14】
図14は、クッション・テープと印刷用樹脂凸版の厚み計測結果を表すスリーブ外表面上の分布図である。
【
図15】
図15は、ある銘柄の被印刷基材に関する幅と厚みと張力との関係を表すグラフである。
【
図16】
図16は、スリーブに印刷用樹脂凸版を4列貼る場合の1列を貼り込んだ状態の説明図である。
【
図17】
図17は、スリーブに印刷用樹脂凸版を4列貼る場合の2列を貼り込んだ状態の説明図である。
【
図18】
図18は、スリーブに印刷用樹脂凸版を4列貼る場合の3列を貼り込んだ状態の説明図である。
【
図19】
図19は、スリーブに印刷用樹脂凸版を4列貼る場合の4列を貼り込んだ状態の説明図である。
【
図20】
図20は、電動アクチュエータを備えたレイオンローラ用着脱機構の概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明に係る印刷用樹脂凸版の貼込装置の一実施形態について図面を参酌しつつ説明する。
【0042】
図5ないし
図7に示すとおり、本実施形態に係る貼込装置8は、レイオンローラ10を装備した貼込装置である。エアシリンダ16で動作するレイオンローラの場合には、押し付け力をスリーブ3上の印刷用樹脂凸版5の合計幅に合わせて自動的に調整するよう、スリーブ3上の版幅を順に合計する演算部を備えるとともに、電空レギュレータ17を設けてエア圧を調整する。
【0043】
図5ないし
図7では、スリーブ3のほぼ全幅に対して一枚の印刷用樹脂凸版5が貼り込まれる状態が示される。そして、クッション・テープ4が貼られた状態のスリーブ3がマンドレル21に挿入された状態が示される。この状態から、テーブル11上に印刷用樹脂凸版5が載せられ、カメラ15で撮像された拡大画像によって貼り込むべき適正な位置にあるかを確認しながら印刷用樹脂凸版5が位置修正される。
【0044】
レイオンローラ10は、円筒体の外周にゴムなどの弾性体が巻き付けられる。レイオンローラ10は、作動して、位置修正し終わった印刷用樹脂凸版5をスリーブ外周上のクッション・テープ4に押し付ける。レイオンローラ10は、エアシリンダ16の作動により、スリーブ3外周と圧接する位置まで移動できるようになっている。補助テーブル29を手前に移動してスリーブ3との隙間を拡げた状態にしてから、レイオンローラ10を圧接させた状態のまま、モータ19に回転を指令すると、印刷用樹脂凸版5がスリーブ3の外周に巻き付けられる。このようにして貼り込み作業が行われる。カメラ15は、貼込装置8の左右方向に移動して位置決めできるよう、直線案内部材22とボールねじ23によって移動できる左右位置決め装置24に装着される。
【0045】
図8及び
図9に示すように、テーブル11は、先端部に吸引穴38が内在する溝37を備える。吸引穴38は、エアーチューブ36を介して図示しない吸引ポンプにつながっており、吸引穴38により、印刷用樹脂凸版5の下面を吸引して、テーブル11上に印刷用樹脂凸版5を平坦に保持することができる。
【0046】
テーブル11は、押し当て部材12を備える。移動する印刷用樹脂凸版5に対して損傷を与えることのないよう、押し当て部材12は、テーブル11の両端部に設けられている揺動部材40によって回転自在に支持される。揺動部材40は、ピン41を中心として保持部材39により揺動自在に支持される。吸引力が及ばない部分が印刷用樹脂凸版5にあった場合でも、押し当て部材12が印刷用樹脂凸版5の上から押し当てることができる。
【0047】
図5ないし
図7に戻り、貼込装置8は、版厚計測装置32を備える。版厚計測装置32は、追従ローラ27が印刷用樹脂凸版5に接触し、印刷用樹脂凸版5がスリーブ3の外周に巻き付けられて移動している最中に厚みを計測する。追従ローラ27は、連動部材26に回転自在に支持されており、印刷用樹脂凸版5の厚みに追従して上下に変位できる。追従ローラ27が変位すると、連動部材26が接触子31を介して変位センサ13に伝えることで、印刷用樹脂凸版5の厚みを計測する。
【0048】
追従ローラ27がテーブル11の先端付近まで移動して、印刷用樹脂凸版5に接触できるよう、連動部材26は、レイオンローラ10を遠巻きにした形状になっている。レイオンローラ10の押さえ力とテーブル11の吸引力によって平坦にされている印刷用樹脂凸版5の区間内において、追従ローラ27は、版表面に接触し、印刷用樹脂凸版5の自由な変形による計測誤差の影響を受けることなく正確に版厚を計測できる。計測が終わると、昇降装置25によって上方へ移動し、レイオンローラ10の着脱動作の障害にならないよう退避する。さらに、テーブル11が押し当て部材12を備えることにより、反りを有している印刷用樹脂凸版5がテーブル11の吸引穴38以外の箇所で浮き上がっている場合においても、印刷用樹脂凸版5を平坦に強制することができ、追従ローラ27での版厚計測においてより高い信頼性を確保できる。
【0049】
ここで、貼込装置8の特徴として、貼込装置8は、以下の機能A)〜F)を備える。
A)印刷用樹脂凸版5の厚み(P
t-ΔP
t)を計測する機能
B)マンドレル21の回転角度を検出するエンコーダ14
C)圧縮されたクッション・テープ4の厚み(C
t-ΔC
t)を計測する機能
D)カメラ15で捉えた印刷用樹脂凸版5の同形状の特定画線部A,Bの輪郭を自動的に認識する幾何形状サーチ機能とカメラ基準位置から特定画線部A,Bに設定した点までの位置計測機能を有する画像処理手段
E)以下の項目1)〜5)を演算する演算部
1)特定画線部A,Bがスリーブ軸心となす角度θ
0
2)印刷機に設定する印刷リピート長P
rl-r
3)印刷結果としての予測される印刷リピート長P
rl-a
4)最適縮小率δ
i
5)原稿リピート長を達成するための張力の値T
p
F)以下の項目1)〜2)を記録し更新できる記録手段
1)被印刷基材6の銘柄別または種別ごとの幅Wと厚みM
tと適正な張力T
2)印刷用樹脂凸版5の被粘着面から曲げ中立面9までの高さh
このことにより、貼込装置8は、刷版スリーブ20に仕立てる段階で、印刷用樹脂凸版5の厚み(P
t-ΔP
t)、貼り込まれたクッション・テープ4の厚み(C
t-ΔC
t)、及び、カメラ基準位置から特定画線部Bに設定した点までの微小距離ΔL
p-Bの計測を行う。
【0050】
印刷用樹脂凸版5の厚み(P
t-ΔP
t)、及び、カメラ基準位置から特定画線部Bに設定した点までの微小距離ΔL
p-B、及び、貼り込まれたクッション・テープ4の厚み(C
t-ΔC
t)を計測後、被印刷基材6の張力による伸長分を考慮した上で、印刷リピート長P
rl-aを演算する。そして、原稿リピート長A
rlを印刷で再現できる最適縮小率δ
iと、原稿リピート長を達成するための張力値T
pを演算する。
【0051】
刷版スリーブ20上に貼り込まれた印刷用樹脂凸版5の表面が有する幾何学的に正しい版円筒面からの狂いを計測する方法については、特許文献2、特許文献3、特許文献4に記載された手段がある。特許文献2に記載された手段では、刷版スリーブにフォロワ・ロールを接触させて刷版スリーブ外径を計測する構成を採っているため、フォロワ・ロールの幅が狭くないと計測されない画線凸部が残ってしまい、計測漏れが生じて正確性に問題がある。フォロワ・ロールは高い画線凸部と接触して計測するため、より低い画線凸部がフォロワ・ロールの下に同時に混在する状況では低い画線凸部と接触することができず、計測されない状態が生じる。また、特許文献3、特許文献4に記載されたカメラなどの非接触センサによりスキャンする方法では、装置の小型化が難しく、また、本発明の目的とする計算を処理する上で充分な精度が得られないという問題がある。
【0052】
より幅の狭い計測が可能なレーザー光を利用することで、前記の問題を克服して、印刷用樹脂凸版の表面が有する幾何学的に正しい版円筒面からの狂いを高精度に計測することができる。しかし、印刷用樹脂凸版は半透明であるため、赤色レーザー光を用いた一般的な反射型レーザー変位計では、半透明体の内部に光が入り沈み込み、版表面から反射される光だけを判別することが難しく、版表面を認識できない。赤色レーザー光は、波長が655nm周辺であり、光が半透明体の内部に沈み込んでしまう性質がある。
【0053】
印刷用樹脂凸版の表面をレーザー光で認識する方法を波長の特性に着目して実験した結果、赤色レーザー光よりも波長を短くした405nm程度の青色レーザー光、もしくはさらに短い波長帯域を有するレーザー光が有効であることを見出した。具体例として、青色レーザー光の反射型レーザー変位計もしくは共焦点変位計を用いることで、半透明体の内部に沈み込む光が混在するものの、版表面から反射される光が明瞭に識別でき、印刷用樹脂凸版の表面形状を非接触で検出できることを見出した。
【0054】
特許文献6に、代表的な共焦点変位計が説明されている。共焦点変位計には、光源として白色LEDを使用したものがあるが、高輝度発光できる波長帯域が狭く、半透明である印刷用樹脂凸版の表面を識別しづらい。赤と緑を同時発光する蛍光体に青色レーザーを照射することで、より広範囲な波長帯域で安定した高輝度発光を実現できる共焦点変位計であれば、405nmよりも短い波長帯域で充分な光量を確保でき、半透明である印刷用樹脂凸版の表面を識別できる。特許文献6に示す共焦点変位計は、印刷用樹脂凸版表面に焦点が合った波長の光だけがピンホールを通過することで、高精度な変位計測ができる。
【0055】
図10及び
図11に、反射光型変位計ユニット28の構成を示す。レイオンローラ10が作動するとき、反射光型変位計42は上側に退避し、厚み計測の際には、変位計測に適した位置まで降ろすよう昇降装置25によって反射光型変位計42が保持される。昇降装置25は、直線案内部材22とボールねじ23によってマンドレル回転軸方向に移動自在に支持されている左右位置決め装置24に保持されている。
【0056】
反射光型変位計42としては、反射型レーザー変位計か共焦点変位計47を選択できる。赤色レーザー光の反射型レーザー変位計を使用する場合は、クッション・テープの厚み(C
t-ΔC
t)を計測する目的に限定される。その場合は、印刷用樹脂凸版5の厚み(P
t-ΔP
t)を計測する版厚計測装置32を併用する必要がある。
【0057】
一方、反射光型変位計42として共焦点変位計47を使用する場合は、圧縮されたクッション・テープの厚み(C
t-ΔC
t)と、さらに、印刷用樹脂凸版5を加味した合計の厚み(C
t-ΔC
t)+(P
t-ΔP
t)を直接計測できる。すると、幾何学的に正しい版円筒面からの印刷用樹脂凸版5の凸面の狂いを刷版スリーブ20の全周にわたって検出できる。また、版厚計測装置32を併用せずとも、両計測値の差をとることで、印刷用樹脂凸版5の厚み(P
t-ΔP
t)を間接的に計測することができる。
【0058】
次に、印刷リピート長P
rl-a等を算出するまでの処理の流れを
図12を用いて説明する。まず、作業内容に関連する次に示す項目を貼込装置の制御部に入力する(S1)。
被印刷基材6の銘柄
クッション・テープ4の銘柄
印刷用樹脂凸版5の銘柄
スリーブ3に貼り込む印刷用樹脂凸版5の枚数と各版5の貼り込み基準座標
T:張力(印刷時に被印刷基材6を走行方向に引張る力)[N]
M
t:被印刷基材6の厚み[mm]
W:被印刷基材6の幅[mm]
E:被印刷基材6の引張弾性係数[MPa]
A
rl:原稿リピート長[mm]
A
r-2:天地方向に離れた2箇所の特定画線部A,B間の原稿上の距離[mm]
L
p-2:天地方向に離れた2箇所の特定画線部A,B間の平坦時の印刷用樹脂凸版5上の距離[mm]
D
s:スリーブ3の外径[mm]
C
t:クッション・テープ4の厚み(公称値)[mm]
P
t:印刷用樹脂凸版5の厚み(公称値)[mm]
h:印刷用樹脂凸版5の被粘着面から曲げ中立面9までの高さ[mm]
【0059】
次に、準備作業1から準備作業4までを済ませた後(S2〜S4)、貼り込み動作を開始する(S5〜S7)。貼り込み動作の途中で、
P
t-ΔP
t:印刷用樹脂凸版5の厚み
を計測する(S8)。また、反射光型変位計ユニット28を使用する場合(S10がYes)は、
C
t-ΔC
t:貼り込まれ圧縮されたクッション・テープ4の厚み
を計測する(S11)。
【0060】
クッション・テープ4の圧縮された厚み(Ct-ΔCt)は、
図4を用いて説明すると、次のように計測する。まず、スリーブ3の外表面にレーザーを放射して厚みゼロの基準として認識させる。次に、反射光型変位計42を右方向に移動し、貼り込まれた印刷用樹脂凸版5の端部直前で停止し、印刷用樹脂凸版5の下層に位置するクッション・テープ4の圧縮された厚み(C
t-ΔC
t)を計測する。このように、クッション・テープ4の圧縮された厚み(C
t-ΔC
t)の計測は、貼り込まれている印刷用樹脂凸版5の両端をスキャンし、印刷用樹脂凸版5からはみ出し始めているクッション・テープ4の厚さを計測する。
【0061】
反射光型変位計42として共焦点変位計47を使用する場合は、圧縮されたクッション・テープの厚みと、さらに、印刷用樹脂凸版の厚みも計測できる。そこで、共焦点変位計47を使用する場合は、(Ct-ΔCt)+(Pt-ΔPt)を計測する(
図12のS12)。
【0062】
他方、反射光型変位計ユニット28を使用しない場合(S10がNo)は、
ΔL
p-B:カメラ基準位置から特定画線部Bに設定した点までの距離
を計測し(S13〜S20)、式(9)からクッション・テープ4の圧縮量ΔC
tを算出する(S21)。
ΔC
t=0.5{D
s+2(C
t+h)}ΔL
p-B/L
p-2
【0063】
なお、カメラ15は、撮像素子としてCCD(電荷結合素子)を用いたデジタルカメラであり、画像をデジタル信号に変換して画像処理手段へ伝える。画像処理手段は、任意の画線部を予め特定しておくことで、撮像された画像の輪郭を自動的に認識する幾何形状サーチ機能とカメラ基準位置から該画線部に設定した点までの位置計測機能を有している。幾何形状サーチ機能は、画像のノイズを自動解析し、人がイメージするような輪郭を適切に抽出する。いずれも既存の技術で充分な幾何形状サーチと位置計測が行える。
【0064】
また、一般的に特定される画線部としては、
図13に示すレジスタマークがあり、多色印刷時の見当合わせに用いるマークである。丸に十字の線が入ったレジスタマークはトンボとも呼ばれ、1辺が7mm程度、直径4mm程度の円からなる大きさであり、線の太さが0.1mm程度で印刷されるよう凸版を構成している。その他に、マイクロ・ドットと呼ばれる、直径0.4mmから1.0mm程度の点が一般的に用いられている。通常はこれらのレジスタマークの中心位置を画像処理手段に登録しておき、マークの位置計測を行う。
【0065】
図13において、上下方向は、エンコーダ14が計測するスリーブ3の回転方向を表す。左右方向は、マンドレル21の回転軸方向を表す。寸法線で示すように、カメラの中心位置を基準としてマークの中心位置を計測する。ΔL
p-Bを計測する際は、上下方向のずれ量を計測する。
【0066】
印刷リピート長P
rl-a等を算出するまでの処理の流れの最終工程として、前記計測結果に基づいて、下記の計算を行う(
図12のS22)。
1)印刷機に設定する印刷リピート長:式(1)から
P
rl-r=π{D
s+2(C
t+P
t-ΔC
t-ΔP
t-I
mp)}
2)印刷後の張力解放状態で予想される印刷リピート長:式(2)から、被印刷基材6の張力による伸長分を考慮したうえで印刷リピート長P
rl-aの予測値は、
P
rl-a=π{D
s+2(C
t+P
t-ΔC
t-ΔP
t-I
mp)}/{1+T/(M
t・W・E)}
3)最適縮小率δ
i:式(6)から、原稿リピート長を印刷で再現できる最適縮小率δ
iは、
δ
i=π{D
s+2(C
t-ΔC
t+h)}/P
rl-a×100
4)原稿リピート長を達成するための張力値T
pは、式(2)においてP
rl-a=A
rlとおいた次式で求められる。
T
p=[π{D
s+2(C
t+P
t-ΔC
t-ΔP
t-I
mp)}-A
rl]×(M
t・W・E)/A
rl ・・・・・(10)
【0067】
反射光型変位計42によって検出したクッション・テープ4と印刷用樹脂凸版5の合計厚みの計測結果を、スリーブ3外表面上の分布形式で展開して表示した例を
図14に示す。縦軸は、エンコーダ14が計測するスリーブの回転角度を示す。横軸は、マンドレル21の回転軸方向に移動する左右位置決め装置24の位置を表している。
【0068】
図14では、わかりやすい例として、縦8分割、横5分割し、8×5の領域にてクッション・テープ4と印刷用樹脂凸版5の合計厚みの計測結果を表した例を採り上げている。分布図両端には圧縮されたクッション・テープ4の厚み計測結果を表示している。×印は未計測または画線部が存在しないエリアを示している。分布図の下には、印刷リピート長と縮小率の計算結果を表示している。このような画面でオペレータに情報を伝えることで、現像前工程から印刷工程まで的確な指示が行えるとともに、貼込み工程での品質検査結果となる。
【0069】
図15に、ある銘柄の被印刷基材6を例に取り、幅Wと厚みM
tと張力Tとの関係をグラフにして示す。一般に、印刷に適する張力Tは幅Wと厚みM
tの多次元多項式として次式に示すように表される。被印刷基材6の弾性特性は、各銘柄別によって異なる。実際には各銘柄別にデータベースを築いて利用することになる。
T=(K
nM
tn+・・・+K
4M
t4+K
3M
t3+K
2M
t2+K
1M
t)W[N]
ここで、K
1,K
2,K
3,K
4,・・・,K
nは銘柄固有の定数である。被印刷基材6の幅Wと厚みM
tと印刷に適する張力Tのデータを記録手段に被印刷基材6の銘柄別または種別ごとに記録し、更新することで、幅Wと厚みM
tから印刷に適する実用的な張力T、さらに実用的な印刷リピート長の計算値を表示することができる。
【0070】
ここで、貼込装置8による印刷用樹脂凸版5の貼込方法として、
図16ないし
図19に他の例を示す。スリーブ3上には、幅広のクッション・テープ4が貼られており、その上から印刷用樹脂凸版5を1列ずつ貼り込んでいく。レイオンローラ10は、
図16の例では、1/4枚分の幅に相当する力で押し付け、
図17の例では、2/4枚分の幅に相当する力で押し付け、
図18の例では、3/4枚分の幅に相当する力で押し付け、
図19の例では、1枚分の幅に相当する力で押し付ける。そうすると、クッション・テープ4は、各列同じ圧縮量となり、各列の印刷長さに差が生じることがなくなる。印刷用樹脂凸版5の幅は、貼り込み作業の指示情報から判明しており、スリーブ3上の印刷用樹脂凸版5が既に何列貼り込まれているのかを認識できる。これにより、制御機器が演算部に対して印刷用樹脂凸版5の合計幅に見合った空気圧を演算し、その結果を電空レギュレータ34に伝えて、電磁弁35を介してレイオンローラ用エアシリンダ16の押し付け力を自動的に調整するようになっている。
【0071】
図20に、他の実施形態として、電動アクチュエータ18を備えたレイオンローラ用着脱機構を示す。ピストンロッド45は中空円筒形状であり、図示しないボールねじがその内部に装着される。モータ46が回転すると、ボールねじによりピストンロッド45が電動アクチュエータ本体44内を直線的に移動する。電動アクチュエータ18は、ピストンロッド45を決められた長さまで押し出し、レイオンローラ10のゴムの潰れ量を所定の量になるまで押し付けることができる。そのため、印刷用樹脂凸版5の幅が変わっても、等しい押し潰し量で押し付けることができる。
【0072】
本実施形態に係る貼込装置8は以上の構成のとおりであり、本実施形態に係る貼込装置8によれば、以下の作用効果を奏する。
【0073】
貼込み工程において、印刷用樹脂凸版5の厚み(P
t-ΔP
t)と、貼込装置8で貼り込まれた後のクッション・テープ4の厚み(C
t-ΔC
t)をそれぞれ把握することにより、印刷張力による伸長分を考慮した印刷リピート長の予測値P
rl-aと、印刷機に設定すべき印刷リピート長P
rl-rと、原稿リピート長A
rlを印刷で再現できる最適縮小率δ
iを算出することができる。これにより、印刷用樹脂凸版5の厚み(P
t-ΔP
t)と貼り込まれたクッション・テープ4の厚み(C
t-ΔC
t)に内在する誤差の大きさと経時的傾向をそれぞれ個別に表示でき、計算値の整合性を持たせることができるようになるとともに、次回からの現像前工程に有効な情報として適正な縮小率を指示することができる。また、原稿リピート長を達成するための張力値T
pを演算することができる。
【0074】
また、版厚計測装置32によれば、平坦な状態で版厚だけを直接計測できるので、印刷用樹脂凸版5の銘柄別または現像機別の経時的変化傾向及び誤差の分布を考察できるという利点がある。しかし、版厚計測装置32が計測できる範囲が印刷用樹脂凸版5の回転方向の略半分に限定されるという短所は否めない。
【0075】
また、反射光型変位計ユニット28に共焦点変位計47を使用することにより、貼り込み完了した刷版スリーブ20の仕立て上がり状態を全周にわたってスキャンすることができ、版厚計測装置32では計測できなかった範囲について計測できるだけでなく、幾何学的に正しい版円筒面からの樹脂凸版凸面5の狂いを印刷用樹脂凸版5の全周にわたって検出できる。すると、最適な印圧と印刷機制御部に設定すべき印刷リピート長に関して、仕立て上がり状態を観察した結果から把握することが可能となり、信頼性を向上させることが可能となる。版厚計測装置32と共焦点変位計47を併用すると、クッション・テープ4の厚みと印刷用樹脂凸版5の厚みを個別に把握できることから、厚みに関して銘柄別または現像機別、または経時的変化傾向を最も整合性のある状態で考察することができるという点で重要である。
【0076】
印刷時には上記の方法で把握した印圧と印刷機制御部に設定すべき印刷リピート長を用いて印刷することで、印刷時の無駄を排除することができ、スラーのない印刷を行える。原稿リピート長との間に差がある場合は、式(10)から得られる張力を参考に調整して印刷することで暫定的な措置が取れるが、厚みの狂いΔP
tとΔC
tが計画と異なる傾向が続くようならば、式(6)で得られた最適縮小率を用いて製版することで恒久的な対策が図れる。
【0077】
また、レイオンローラ10の押し付け力もしくは押し付け変位とクッション・テープ4の圧縮量ΔC
tとの関係が計量的に明らかになり、レイオンローラ10の押し付けを制御することで、クッション・テープ4の圧縮量ΔC
tを所定の値に管理できる。複数枚の印刷用樹脂凸版5を一つのスリーブ3に貼り付ける場合であっても、それぞれのクッション・テープ4の圧縮量が同じになるように貼り付けることができ、貼込み工程での印刷リピート長を管理できるとともに、各版での印刷長さが同率な印刷が可能になる。
【0078】
また、貼込装置8において、版厚低下量ΔP
tとクッション・テープ4の圧縮量ΔC
tを個別に把握できるので、伸びやすい軟包装材フィルムを被印刷基材6にする場合であっても、印刷リピート長を原稿リピート長とよく一致するように印刷再現でき、かつ印刷機制御部に設定すべき印刷リピート長がわかることから、仕立て上がり径が要因となるスラー発生の懸念も払拭される。また、クッション・テープ4の圧縮量ΔC
tに関して、レイオンローラ用着脱機構にて目標値に近づけるよう制御することができるようになり、各版の印刷長さのバラツキ及び仕立て上がり径が要因となるスラーの影響を無くすことができる。
【0079】
以上により、板状の印刷用樹脂凸版5を使用するフレキソ輪転印刷機が、精度と品質のより高い印刷に適用できるようになる。また、現像前工程においては裏づけされた縮小率で製版が行え、印刷工程においては印刷の無駄を削減することができる。
【0080】
まとめると、本実施形態に係る貼込装置8によれば、貼込み工程において、印刷用樹脂凸版5の厚みを直接または間接的に計測するとともに、貼込装置8で貼り込まれた後のクッション・テープ4の厚みを把握し、被印刷基材6に対する印刷張力による伸長分を考慮した印刷リピート長の予測値と、印刷機制御部に設定すべき印刷リピート長と、原稿リピート長を印刷で再現できる最適縮小率を算出することができる。そして、印刷用樹脂凸版5の厚みと貼り込まれたクッション・テープ4の厚みに内在する誤差の大きさと経時的傾向を表示し、計算値の整合性を持たせるとともに、現像前工程に有効な情報として提供することができる。また、原稿リピート長を達成するための張力値を算出して提示することができる。さらに、貼込装置8でのクッション・テープ4の圧縮量と圧縮力の関係を計量的に維持管理できるようにすることで、貼込み工程での印刷リピート長を管理することができる。そして、印刷リピート長が原稿リピート長と一致しないと判明した場合には、問題の所在が現像前工程なのか、現像工程なのか、貼込み工程なのか、印刷工程なのかを明らかにするために有用な情報を提供することができる。さらに、印刷用樹脂凸版5を貼り終えた刷版スリーブ20の外径が有する幾何学的に理想的な円筒に対して狂いを計測できる手段を具備することにより、最適な印圧と印刷リピート長に関して、信頼性の高い情報を提示することができる。
【符号の説明】
【0081】
1 スリーブ式の輪転印刷機
2 版胴 3 スリーブ
4 クッション・テープ 5 印刷用樹脂凸版(刷版)
6 被印刷基材 7 圧胴
8 貼込装置 9 印刷用樹脂凸版の曲げ中立面
10 レイオンローラ 11 テーブル
12 押し当て部材 13 変位センサ
14 エンコーダ 15 カメラ
16 エアシリンダ 17 電空レギュレータ
18 電動アクチュエータ 19 モータ
20 刷版スリーブ 21 マンドレル
22 直線案内部材 23 ボールねじ
24 左右位置決め装置 25 昇降装置
26 連動部材 27 追従ローラ
28 反射光型変位計ユニット 29 補助テーブル
30 保持部材 31 接触子
32 版厚計測装置 33 インキ供給ローラ
34 圧縮空気源 35 電磁弁
36 エアーチューブ 37 溝
38 吸引穴 39 保持部材
40 揺動部材 41 ピン
42 反射光型変位計 43 光線
44 電動アクチュエータ本体 45 ピストンロッド
46 モータ 47 共焦点変位計
48 着脱機構 49 コントローラ