(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数のコテ先部は、前記第1および第2のコテ発熱部において前記熱電対の取付位置を中心点として点対称の位置に設けられる、請求項1〜4のいずれか一項に記載のヒータチップ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1Aに、本発明のヒータチップの要部の基本構成を示す。図示のように、本発明のコテ部2は、一対の接続端子部4L,4Rの間で延びる第1および第2のコテ発熱部6,8と、複数の加工ポイント(図示せず)とそれぞれ対向するように両コテ発熱部6,8に設けられる複数(たとえば4個)のコテ先部m
1,m
2,m
3,m
4と、両コテ発熱部6,8の長手方向の中心部にて両コテ発熱部6,8の間に延在する中間介在部5とを有し、熱電対9は中間介在部5の上に取り付けられる。両コテ発熱部6,8の間には、その対向する方向(長手方向と直交する横方向)において隣接する加工ポイントの間隔に応じた空きスペースSが設けられる。
【0019】
このヒータチップの通電中は、一方側の接続端子部4L→コテ部2(コテ発熱部6,8)→他方の接続端子部4Rの経路またはその逆向きの経路でヒータ電源(図示せず)からの電流Iが流れる。ここで、両コテ発熱部6,8の形状およびサイズが同じであるとすると、両コテ発熱部6,8には分岐電流I/2,I/2がそれぞれ流れる。両コテ発熱部6,8内で発生したジュール熱の一部はコテ先部m
1,m
2,m
3,m
4を介して複数の加工ポイントに同時に供給される。一方で、コテ発熱部6,8内で発生したジュール熱の他の一部が中心部の中間介在部5に集まって、この中間介在部5を介して熱電対9に伝わり、熱電対9よりコテ温度の測定値を表す電気信号が得られる。中間介在部5には、電流はほとんど流れず、熱だけが流れる。
【0020】
図1Bに、比較例として、コテ部2をコテ発熱部6,8に2分割しないで単体とする構成を示す。上記空きスペースSの形状および体積が各コテ発熱部6,8の形状および体積に等しいと仮定すると、この比較例の構成においてコテ部2内の各部に本発明のものと同一の電流密度を得ようとすれば、ヒータ電源より1.5倍の電流(1.5I)を供給しなくてはならない。この比較例においては、消費電力が多いことや、コテ部2のボリュームが大きいため急速発熱(昇温)/急速冷却を実現することが難しいことや、通電中のヒータチップより周囲に与える誘導磁界が大きいこと等の課題がある。さらには、上記空きスペースSを埋めた中間部(7)から熱電対9に流れる熱の影響により熱電対9とコテ先部m
1,m
2,m
3,m
4との間の熱の流れの感度が相対的に弱められるため、熱電対9の応答性ないし感度がよくない。本発明によれば、そのような比較例の課題が上手に解決される。
[本発明の好適な実施形態]
【0021】
以下、
図2〜
図10を参照して本発明の好適な実施形態を説明する。
【0022】
図2、
図3および
図4A,
図4Bに、本発明の第1の実施形態におけるヒータチップの構成を示す。
図2は、このヒータチップの外観構成を示す斜視図である。
図3は、このヒータチップの正面図、右側面図および下面図である。
図4Aおよび
図4Bは、
図3のA−A線およびB−B線についての断面図である。
【0023】
この実施形態におけるヒータチップ10は、たとえば4mm程度の厚さを有する硬い板状の高融点金属たとえば圧延加工タングステンまたは焼結タングステンからなり、たとえばワイヤ放電加工により図示のような正面視で略凹状の一体物(モノシリック体)に製作されている。
【0024】
このヒータチップ10は、通常使用形態の姿勢において最下端に位置する横長のコテ部12と、このコテ部12と一体的にその上部の左右両端部から上方に対称(または非対称)に延びる左右一対の接続端子部14L,14Rとを有している。
【0025】
コテ部12は、左右一対の接続端子部14L,14Rの間で平行にまっすぐ延びる棒状または板状の第1および第2のコテ発熱部16,18と、これらのコテ発熱部16,18の作用面(下面)16a,18aの左右両端部にそれぞれ設けられる複数個たとえば4個のコテ先部M
1,M
2,M
3,M
4と、両コテ発熱部16,18の長手方向(左右方向)の中心部にて両コテ発熱部16,18の間に延在する中間介在部20とを有している。この中間介在部20の上に突部22を介して熱電対24が取り付けられる。
【0026】
両コテ発熱部16,18は、縦方向において、それらの背面(上面)16b,18b付近が中間介在部20を介して最近接し、作用面(下面)16a,18a側に向かって両者の離間距離が次第に大きくなる形体を有し、側面視では両者合わさってハ字状の断面形状を有している。また、長手方向(左右方向)においては、縦方向のサイズが中心部で最も大きく、両端部に向かって次第に小さくなるような形状(正面視で二等辺三角形の形状)を有している。両コテ発熱部16,18の断面積も、長手方向(左右方向)の中心部が最も大きく、両端部にいくほど小さくなっている。中間介在部20は、この二等辺三角形の頂部付近に局在して設けられている。この構成においては、通電中に電流がほとんど流れず専らコテ発熱部から熱電対24への熱の伝達に寄与する中間介在部20のボリュームを可及的に小さくすることができる。
【0027】
接続端子部14L,14Rは、ボルト通し孔26L,26Rが形成されている幅広で平板状の端子部28L,28Rと、これらの端子部28L,28Rとコテ部12の両端部とを接続するコテ接続部30L,30Rとを有している。これらのコテ接続部30L,30Rは、側面視で逆さY字状の形体を有しており、端子部28L,28Rからコテ部12に向かってアーム状に平行に延びる主接続部32L,32Rと、この主接続部32L,32Rから端子部28L,28Rの板厚方向に分岐して延びて第1および第2のコテ発熱部16,18に接続する一対の分岐接続部34L/36L,34R/36Rとを有している。
【0028】
図3に示すように、端子部28L,28Rの厚みの寸法D
28は、コテ部12全体の幅方向の寸法D
12と略同じである。逆さY字状のコテ接続部30L,30Rにおいて、主接続部32L,32Rの厚みの寸法(板厚)D
32は端子部28L,28Rの厚みの寸法(板厚)D
28よりも格段に小さく(約1/3)、端子部28L,28Rと主接続部32L,32Rとの間には下に向かって板厚が次第に小さくなるテーパ部29が形成されている。また、分岐接続部34L/36L,34R/36Rの厚みの寸法D
34,D
36は、主接続部32L,32Rの厚みの寸法D
32よりもさらに小さい(約1/2〜2/3)。つまり、分岐接続部34L/36L,34R/36の断面積は、主接続部32L,32Rの断面積よりもさらに一段と小さい。
【0029】
この実施形態において、分岐接続部34L/36L,34R/36Rは、両コテ発熱部16,18の長手方向における中心部と略同一の断面形状を有しており(
図3の右側面図、
図4B)、実質的に両コテ発熱部16,18の一部つまり両端部をなしている。
【0030】
コテ部12において、4個のコテ先部M
1,M
2,M
3,M
4は、
図3(コテ部12の下面図)および
図4A(コテ部12の上面図)に示すように、中間介在部20の中心位置(熱電対24の取付位置)を基準(中心)点として点対象の位置であるコテ発熱部16,18の両端部(4箇所)にそれぞれ設けられている。つまり、熱電対24の取付位置と各コテ先部M
1,M
2,M
3,M
4との距離は実質的に同一または均等である。ヒータチップ10を通電すると、熱電対24とコテ発熱部16,18の両端部(コテ先部M
1,M
2,M
3,M
4)との間の4つのコテ部区間で実質的に同一または均一の熱伝達特性が得られるようになっている。
【0031】
なお、この実施形態におけるコテ先部M
1,M
2,M
3,M
4は、矩形の横断面積と平坦な先端面を有し、コテ発熱部16,18の作用面16a,18aから少しだけ(たとえば1mm程度)突出しているが、このようなコテ先部の形状・プロファイルは一例であり、任意の断面形状、突出形状、先端面形状、配置形態を採ることができる。別の実施例として、コテ発熱部16,18の平坦な作用面16a,18aをコテ先部として用いることも可能である。
【0032】
図5に、この実施形態における接合装置40の全体構成を示す。この接合装置40は、上述した構成を有するヒータチップ10と、このヒータチップ10を支持し、被加工物を接合する際にヒータチップ10の複数(4個)のコテ先部(M
1,M
2,M
3,M
4)を被加工物上の複数(4箇所)の加工ポイントに加圧接触させるヒータヘッド70と、ヒータチップ10に抵抗発熱用の電流を供給するヒータ電源42と、装置内の各部および全体の動作を制御する制御部56とを備えている。
【0033】
ヒータ電源42は、交流波形インバータ式の電源回路を用いている。この電源回路におけるインバータ44は、GTR(ジャイアント・トランジスタ)またはIGBT(絶縁ゲート・バイポーラ・トランジスタ)等からなる4つのトランジスタ・スイッチング素子46,48,50,52を有している。
【0034】
これら4つのスイッチング素子46〜52のうち、第1組(正極側)のスイッチング素子46,50はドライブ回路54を介して制御部56からの同相の駆動パルスG
1,G
3 により所定のインバータ周波数(たとえば4kHz)で同時にスイッチング(オン・オフ)制御され、第2組(負極側)のスイッチング素子48,52はドライブ回路54を介して制御部56からの同相(駆動パルスG
1,G
3 とは逆相)の駆動パルスG
2,G
4 により上記インバータ周波数で同時にスイッチング制御されるようになっている。
【0035】
インバータ44の入力端子(L
0 ,L
1)は三相整流回路58の出力端子に接続されている。三相整流回路58は、たとえば6個のダイオードを三相ブリッジ結線してなり、三相交流電源端子(R,S,T)より入力する商用周波数の三相交流電圧を全波整流して直流電圧に変換する。三相整流回路58より出力された直流電圧は、コンデンサ60で平滑されてからインバータ44の入力端子[L
0 ,L
1]に与えられる。
【0036】
インバータ44の出力端子(N
0 ,N
1)は、溶接トランス62の一次側コイルの両端にそれぞれ接続されている。溶接トランス62の二次側コイルの両端は、整流回路を介さずに二次側導体72L,72Rを介してヒータチップ10の接続端子部14L,14Rにそれぞれ接続されている。
【0037】
制御部56は、マイクロコンピュータを含んでおり、ヒータ電源42内の一切の制御たとえば通電制御(特にインバータ制御)や各種ヒート条件の設定ないし表示処理等を行うほか、ヒータヘッド70に対しても所要の制御を行う。
【0038】
このヒータ電源42では、ヒータチップ10のコテ部12に取り付けられている熱電対24より、ヒータチップ10のコテ部12の温度(より正確には、コテ先部M
1,M
2,M
3,M
4の温度に比例対応した温度)を表す電気信号(コテ温度測定信号)がケーブル35を介して制御部56に与えられる。電流フィードバック制御を行う場合は、一次側回路の導体にたとえばカレント・トランスからなる電流センサ64が取り付けられる。この電流センサ64の出力信号から電流測定回路66において一次電流または二次電流の測定値(たとえば実効値、平均値またはピーク値)が求められ、その電流測定信号が制御部56に与えられる。
【0039】
この接合装置40は、インバータ式ヒータ電源42の高速かつ精細な通電制御機能により、ヒータチップ10の有する急速発熱/急速冷却機能を最大限に発揮させることができる。
[樹脂熱カシメの接合加工に関する実施例]
【0040】
次に、
図6〜
図9Bを参照して、上記構成の接合装置40を用いて樹脂部材と異種材料の部材たとえば金属部材とを熱カシメで接合する一実施例を説明する。
【0041】
図6において、ヒータヘッド70は、ヒータ電源42(
図5)の出力端子に通じる一対の給電用導体72L,72Rの一側面にボルト74L,74Rでヒータチップ10の左右接続端子14L,14Rを物理的かつ電気的にそれぞれ結合しており、給電用導体72L,72Rを介してヒータチップ10を上下に移動させる昇降機構やワークWに向けて押圧する加圧機構(図示せず)を有している。給電用導体72L,72Rの間には両者を電気的に分離するための絶縁体76が挟まれている。
【0042】
この実施例におけるワークWは、板状の樹脂部材80の上に板状の金属部材82を熱カシメによって接合固定するものであり、熱カシメのために、金属部材82の周縁部に複数個(図示の例では8個)の貫通孔H
1〜H
8が形成されるとともに、樹脂部材80の上面には貫通孔H
1〜H
8とそれぞれ対応する位置(8箇所)にボスB
1〜B
8が一体的に形成されている。金属部材82を樹脂部材80の上に位置合わせして重ねると、図示のように、樹脂部材80のボスB
1〜B
8が金属部材82の貫通孔H
1〜H
8をそれぞれ貫通して突き出るようになっている。
【0043】
樹脂部材80は、図示のような単体の板体であってもよく、あるいはアッセンブリ(図示せず)の一部たとえば蓋体であってもよい。ボスB
1〜B
8のサイズは任意でよいが、携帯電子機器等に搭載される小型精密部品のワークWにあっては、ボスB
1〜B
8の口径がたとえば0.3mm以下のものもめずらしくない。ヒータチップ10においては、各コテ先部M
1,M
2,M
3,M
4の口径がボスB
1〜B
8の口径より一回り大きなサイズ(たとえば0.5mm)に選ばれる。
【0044】
このような小型精密部品のワークWに対する熱カシメでは、ヒータチップ10の各加工ポイント(熱カシメ部)に与える加熱の特性または機能に精細で再現性の高い性能が要求される。すなわち、加熱が足りないときは、ボスの軟化が不十分で破損することがあり、加熱が過大であるときは、ボスが溶けて糸引きやバリを起こしやすい。ワークW上に存在する複数のボスB
1〜B
8の一箇所でも熱カシメ加工に不良があれば、ワークW全体が不良品になる。
【0045】
この実施形態における接合装置40は、以下に詳しく述べるように、熱カシメ加工のタクトの大幅な向上を実現できるだけでなく、各加工ポイントに対して精細で信頼性および再現性の高い熱カシメ加工を施すことが可能であり、接合加工の歩留まりを向上させることもできる。
【0046】
なお、
図6において、ワークW上の加工ポイントB
1/H
1〜B
8/H
8の配置パターンと、ヒータチップ10におけるコテ先部M
1〜M
4の配置パターンとの間には所定の対応関係がある。すなわち、ヒータチップ10の4個のコテ先部(M
1,M
2,M
3,M
4)は、ワークWの一方(遠方側)の端部に設けられている4箇所の加工ポイント(B
1/H
1,B
2/H
2,B
3/H
3,B
4/H
4)とそれぞれ1対1で向き合える関係にあるとともに、ワークWの他方(手前側)の端部に設けられている4箇所の加工ポイントB
5/H
5,B
6/H
6,B
7/H
7,B
8/H
8ともそれぞれ1対1で向き合える関係に設定されている。
【0047】
ワークWは、たとえばXYテーブル(図示せず)上に固定されている。
図6および
図7の(a)に示すように、ワークWの4個一組の加工ポイント(B
1/H
1,B
2/H
2,B
3/H
3,B
4/H
4)がヒータチップ10のコテ先部(M
1,M
2,M
3,M
4)の真下に位置するように位置合わせが行われる。
【0048】
位置合わせの後に接合装置40(
図5)を起動させると、最初にヒータヘッド70が作動する。ヒータヘッド70は、ヒータチップ10を降ろして、
図7の(b)に示すようにコテ先部M
1,M
2,M
3,M
4の先端をワークWの4個の被カシメ部つまりボスB
1,B
2,B
3,B
4の頂部にそれぞれ当てる。次に、ヒータ電源42(
図5)が作動してヒータチップ10の通電を開始するとともに、ヒータヘッド70がヒータチップ10を通じてボスM
1,M
2,M
3,M
4に所定の圧力または荷重を加える。
【0049】
通電が開始されると、ヒータチップ10においては、左側の接続端子部14L→コテ発熱部16,18→右側の接続端子部14Rの経路またはその逆向きの経路でヒータ電源42からの電流Iが流れ、電流Iが流れる各部(特にコテ発熱部16,18内の各部)で電流Iの実効値の自乗に比例してジュール熱が発生する。この場合、ヒータチップ10の各部の材質は同じで電気抵抗率は一定であるから、上記経路上で断面積(電流Iの経路と直交する面積)の小さい箇所ほど、電流が集中して、ジュール熱が多く発生する。
【0050】
このヒータチップ10においては、コテ先部M
1,M
2,M
3,M
4が設けられているコテ発熱部16,18の両端部(分岐接続部34L/36L,34R/36も含まれる)付近の断面積が最も小さく、これらの部位でジュール熱が最も多く発生する。これにより、コテ発熱部16,18の両端部から直近のコテ先部M
1,M
2,M
3,M
4を介してボスB
1,B
2,B
3,B
4に熱が効率よく供給されるとともに、コテ発熱部16,18の中心部に位置している中間介在部20にも四方から熱が集まって中間介在部20上の熱電対24に吸収される。
【0051】
この実施例では、ヒータチップ10上で熱電対24はコテ先部M
1,M
2,M
3,M
4に対して点対象の中心点に位置しており、熱電対24によって検出されるコテ温度(測定温度)と各コテ先部M
1,M
2,M
3,M
4の実際の温度(加熱温度)との間に均一かつ高精度の対応関係が得られる。しかも、ハ字状の断面構造を有する両コテ発熱部16,18の長手方向の中心部(頂部付近)に中間介在部20が設けられ、この中間介在部20の上に熱電対24が取り付けられているので、
図8に矢印F
1,F
2,F
3,F
4で示すように、コテ発熱部16,18の両端部(4領域)からの熱が均等かつ最短の伝熱ルートでスムーズに熱電対24に集まるため、熱電対24の応答性が非常に良い。
【0052】
こうして、ワークW上では、樹脂部材80のボスB
1,B
2,B
3,B
4が、ヒータチップ10のコテ先部M
1,M
2,M
3,M
4より加熱と加圧を同時に受けて軟化し、
図7の(c)に示すように、各ボスB
1,B
2,B
3,B
4の先端部分が金属部材82の上で太く広がるように塑性変形する。
【0053】
制御部56は、熱電対24の出力信号(コテ温度測定値)をモニタし、コテ温度測定値が設定値に達したタイミングで(この時、各コテ先部M
1,M
2,M
3,M
4の温度(加熱温度)はほぼ均一に所定値に達している)、ヒータチップ10の通電を止める。すると、ヒータチップ10の各部で抵抗発熱が止み、それまで最も高温に発熱していた熱容量の小さいコテ発熱部16,18の両端部から熱容量の大きい比較的低温の端子部28L,28R側へ主接続部32L,32Rを介してコテ部の熱が瞬時に移動し、これによってコテ先部M
1,M
2,M
3,M
4が急速かつ均一に冷やされ、ひいてはボスB
1,B
2,B
3,B
4の塑性変形部[B
1],[B
2],[B
3],[B
4]も急速かつ均一に冷やされる。
【0054】
この急速かつ均一の冷却効果により、ヒータチップ10の通電を止めた後直ぐにヒータヘッド70がヒータチップ10を引き上げてよく、
図7の(d)に示すように、ボスB
1,B
2,B
3,B
4の塑性変形部[B
1],[B
2],[B
3],[B
4]のいずれからも糸引きを起こさずにコテ先部M
1,M
2,M
3,M
4を引き離すことができる。
【0055】
こうして、ワークWに対し、ヒータチップ10を用いる1回の加熱・加圧動作により、
図9Aに示すように4箇所の加工ポイントで熱カシメの加工を同時に行うことができる。
【0056】
なお、ヒータチップ10のコテ先部M
1,M
2,M
3,M
4を被カシメ部(ボス)B
1,B
2,B
3,B
4に加圧接触させたまま、ヒータチップ10の通電(オン・オフ)を複数回繰り返してから完全な通電の停止(終了)を行うことも可能であり、この場合も加熱動作は1回である。
【0057】
上記のようにして4個一組の加工ポイント(B
1/H
1,B
2/H
2,B
3/H
3,B
4/H
5)に対する熱カシメが済んだ後は、XYテーブルが作動して、ワークWの他の4個一組の加工ポイント(B
5/H
5,B
6/H
6,B
7/H
7,B
8/H
8)がヒータチップ10のコテ先部(M
1,M
2,M
3,M
4)の真下にそれぞれ位置するように、位置合わせが行われる。次いで、それら4個一組の加工ポイント(B
5/H
5,B
6/H
6,B
7/H
7,B
8/H
8)に対して、ヒータチップ10を用いる1回の加熱・加圧動作が上記と全く同じ手順および条件の下で行われる。この結果、2回のヒータチップ加熱・加圧動作により、
図9Bに示すように、樹脂部材80の上に金属部材82を接合固定する熱カシメ加工が終了する。
【0058】
上述したように、この実施形態においては、ワークWに対してヒータチップ10を用いる1回の加熱・加圧動作により複数(上記の例では4箇所)の加工ポイントで熱カシメの加工を同時に行うことにより、熱カシメ加工の生産タクトを大幅に向上させることができる。また、上記のように、ヒータチップ10に取り付けられる熱電対24の応答性および測定精度も優れており、複数の加工ポイントに対して急速加熱および急速冷却の熱カシメ加工を施すことができ、小型精密部品に対する樹脂熱カシメ加工の信頼性および再現性の向上もはかれる。
【0059】
なお、上述した実施例は樹脂部材に対する熱カシメに係るものであったが、この実施形態におけるヒータチップ10および接合装置40は他の材質の部材に対する熱カシメにも適用可能である。
[他の実施形態又は変形例]
【0060】
以下、
図10〜
図12を参照して、本発明のヒータチップに係る他の実施形態または変形例を説明する。
【0061】
図10に、本発明の第2の実施形態におけるヒータチップ10Pの構成を示す。このヒータチップ10Pは、上述した第1の実施形態におけるヒータチップ10と同様に、コテ部12を第1および第2のコテ発熱部16,18に二分割し、両コテ発熱部16,18の間に挟まりまたは跨って延在する中間介在部20を有し、この中間介在部20の上に熱電対24を取り付ける。
【0062】
ただし、この実施形態では、接続端子部14L,14R(端子部28L,28R、コテ接続部30L,30R)の板厚は上端から下端まで均一であり、両コテ発熱部16,18の側面または板面は接続端子部14L,14Rの板面と平行かつ面一である。また、両コテ発熱部16,18の離間距離は左右方向および上下方向のいずれの方向でも均一である。このため、中間介在部20のボリュームは上述した第1の実施形態のものより大きくなる。
【0063】
この第2の実施形態におけるヒータチップ10Pを用いても、1回の加熱・加圧動作により複数(たとえば4箇所)の加工ポイントで熱カシメの加工を同時に行うことが可能であり、熱カシメ加工の生産タクトを従来技術に比して大幅に向上させることができる。また、熱カシメ加工の信頼性および再現性の向上もはかれる。
【0064】
もっとも、熱電対24の応答性ひいてはヒータ電源42の温度制御機能等の面では、第2の実施形態のヒータチップ10Pよりも,上述した第1の実施形態のヒータチップ10の方が優位であることが実験で確認されている。
【0065】
図11および
図12に、上記実施形態の接合装置40およびヒータチップ10を用いて多数の導線J
1,J
2,‥‥をセラミック基板86上の多数の端子部材(配線導体)K
1,K
2,‥‥にリフローのハンダ付けで接合する一実施例を説明する。一般に、この種の端子部材Kの材質は銀または銀合金である。
【0066】
この場合、端子部材Kの表面には、あらかじめクリーム状のハンダまたはメッキのハンダ88が塗布される。各導線J
i(i=1,2, ‥‥)の先端部を各対応する端子部材K
iの上に載せ、
図11および
図12の(a)に示すようにヒータチップ10のコテ先部(M
1,M
2,M
3,M
4)の真下にワークW上の4個一組の加工ポイントたとえば(J
1/K
1,J
2/K
2,J
3/K
3,J
4/K
4)が位置するように位置合わせを行ってから、ヒータヘッド70(
図5)によりヒータチップ10を下ろす。
【0067】
そうすると、
図12の(b)に示すように、ヒータチップ10のコテ先部M
1,M
2,M
3,M
4が端子部材K
1,K
2,K
3,K
4上の導線J
1,J
2,J
3,J
4にそれぞれ適度な加圧力で接触する。この加圧状態の下で、ヒータ電源42(
図5)がオンしてヒータチップ10に電流Iを供給すると、ヒータチップ10の各部(特にコテ発熱部16,18の両端部が最も多く)に発熱し、コテ先部M
1,M
2,M
3,M
4を介して加工ポイントJ
1/K
1,J
2/K
2,J
3/K
3,J
4/K
4に熱を供給する。これによって、各導線J
1,J
2,J
3,J
4の絶縁被膜が熱で溶けて剥がれ、各導線J
1,J
2,J
3,J
4の周囲でハンダ88が速やかに溶ける。溶けたハンダ80は、
図12の(c)に示すように、各導線J
1,J
2,J
3,J
4の露出した導体の周面に沿って這い上がるように幾らか盛り上がる。
【0068】
制御部56は、熱電対24の出力信号(コテ温度測定値)をモニタし、各コテ先部M
1,M
2,M
3,M
4の温度(加熱温度)をオン・オフ制御方式またはフィードバック制御方式によって制御し、所定のタイミングでヒータチップ10の通電を完全に止める。そして、通電終了から一定時間(保持時間)経過後にヒータヘッド70が
図12の(d)に示すようにヒータチップ10を上昇させてコテ先部M
1,M
2,M
3,M
4を加工ポイントJ
1/K
1,J
2/K
2,J
3/K
3,J
4/K
4からそれぞれ引き離す。そうすると、ハンダ88が凝固して、加工ポイントJ
1/K
1,J
2/K
2,J
3/K
3,J
4/K
4がハンダ付けによって結合する。
【0069】
この実施例でも、ヒータチップ10の加熱動作において、各コテ先部M
1,M
2,M
3,M
4について高速かつ均一な昇温、安定した定温度制御および急速の冷却を行うことができるので、リフローハンダ付け加工のタクトおよび品質を向上させることができる。
【0070】
別の実施形態または変形例として、図示省略するが、ヒータチップ10のコテ部12において、コテ発熱部16,18の形状または断面積を長手方向で任意の変化させる構成、コテ発熱部16,18の中間部または中心部にコテ先部を設ける構成、第1および第2のコテ発熱部16,18の他に第3のコテ発熱部を備える構成等も可能である。