特許第6851612号(P6851612)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6851612
(24)【登録日】2021年3月12日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】農作業機
(51)【国際特許分類】
   A01B 33/02 20060101AFI20210322BHJP
   A01B 33/08 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   A01B33/02 B
   A01B33/08 G
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-163277(P2016-163277)
(22)【出願日】2016年8月24日
(65)【公開番号】特開2018-29511(P2018-29511A)
(43)【公開日】2018年3月1日
【審査請求日】2019年7月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】390010836
【氏名又は名称】小橋工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 忠治
(72)【発明者】
【氏名】末平 直土
【審査官】 吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−265006(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0229572(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 33/02
A01B 33/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1作業体と、
前記第1作業体に、折畳状態及び展開状態に切り替え可能に設けられる第2作業体と、を備え、
前記第1作業体は、第1爪軸と当該第1爪軸に設けられる第1爪とを含む第1作業部を有し、
前記第2作業体は、第2爪軸と当該第2爪軸に設けられる第2爪とを含む第2作業部を有し、
前記第1爪軸の軸心から前記第1爪の先端までの距離である第1回転半径は、前記第2爪軸の軸心から前記第2爪の先端までの距離である第2回転半径よりも長く、
前記展開状態にあるときには、前記第1作業部の回転領域の下端と前記第2作業部の回転領域の下端とが互いに揃う、農作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作業機に関する。特に、本発明は、互いに回転半径の異なる作業部を備えながら、作業後の耕深を揃えることができる農作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水平方向の軸回りに耕耘爪を配設する中央耕耘装置の横端部に、同様に水平方向の軸回りに耕耘爪を配設すると共に中央耕耘装置よりも浅い耕深の側部耕耘装置を設けてなる耕耘装置が開示されている(特許文献1)。
【0003】
従来の耕耘装置によると、側部耕耘装置の耕耘を、中央耕耘装置による耕耘の前工程に行う場合には、未耕土壌面を予め浅く耕耘して除草を行わせたのち、深耕耘を行うことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−282001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、中央耕耘装置の回転領域の下端と側部耕耘装置の回転領域の下端とが揃っていないため、耕深が揃わないという問題がある。
【0006】
本発明は、上記のような従来技術に伴う課題を解決しようとするものであって、その目的とするところは、互いに回転半径の異なる作業部を備えながら、作業後の耕深を揃えることができる農作業機を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態によれば、第1作業体と、前記第1作業体に、折畳状態及び展開状態に切り替え可能に設けられる第2作業体と、を備え、前記第1作業体は、第1爪軸と当該第1爪軸に設けられる第1爪とを含む第1作業部を有し、前記第2作業体は、第2爪軸と当該第2爪軸に設けられる第2爪とを含む第2作業部を有し、前記第1爪軸の軸心から前記第1爪の先端までの距離である第1回転半径と前記第2爪軸の軸心から前記第2爪の先端までの距離である第2回転半径とは、互いに異なり、前記展開状態にあるときには、前記第1作業部の回転領域の下端と前記第2作業部の回転領域との下端とが互いに揃う、農作業機が提供される。
【0008】
前記第1回転半径は、前記第2回転半径よりも長くてもよい。
【0009】
前記第1爪軸の回転速度と前記第2爪軸の回転速度とは、互いに異なってもよい。
【0010】
前記第1爪軸の回転速度は、前記第2爪軸の回転速度よりも低速であってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、互いに回転半径の異なる作業部を備えながら、作業後の耕深を揃えることができる農作業機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る農作業機の折畳状態を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る農作業機の展開状態を示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係る農作業機の回転半径を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。以下に示す実施形態は本発明の実施形態の一例であって、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。なお、本実施形態で参照する図面において、同一部分または同様の機能を有する部分には同一の符号または類似の符号(数字の後にA、Bなどを付しただけの符号)を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。左右に同様の機能を有する部分がある場合には、左にあるものには、「L」との接尾語を付し、右にあるものには、「R」との接尾語を付し、特に区別をつける必要がない場合、接尾語を付さない場合がある。また、図面の寸法比率は説明の都合上実際の比率とは異なったり、構成の一部が図面から省略されたりする場合がある。
【0014】
<実施形態>
図1及び図2を用いて、本発明の実施形態に係る農作業機の一部の構成及び作業内容についての説明をする。本発明の実施形態に係る農作業機は、耕耘作業機や代かき機のように、例えば、トラクタなどの走行機体の後部に連結され、作業爪を回転させることで土壌を耕す又は撹拌する農作業機に用いることができる。本実施形態は、中央作業体(第1作業体)の両側に左右の作業体(第2作業体)が折り畳み且つ展開可能な農作業機を例にして説明するが、本発明に係る農作業機は、中央作業体(第1作業体)の片側に作業体(第2作業体)が折り畳み且つ展開可能な農作業機であってもよい。
【0015】
[農作業機の構成]
農作業機1は、中央作業体(第1作業体)10、中央作業体10の両側に左作業体(第2作業体)20L及び右作業体(第2作業体)20Rを備えた3分割構造となっている。中央作業体10は、農作業機1の中央部に配置されている。左作業体20L及び右作業体20Rは、それぞれ中央作業体10に、折畳状態及び展開状態に切り替え可能に設けられる。
【0016】
中央作業体10は、入力軸13、伝動フレーム15及び16、ロータリ作業部(第1作業部)11を備える。
【0017】
トップマスト(図示せず)及びロアーリンク連結部(図示せず)は、中央作業体10の前方中央部及び前方左右2箇所にそれぞれ設けられている。トップマスト及び左右2箇所に設けられたロアーリンク連結部は、トラクタ(図示せず)のトップリンク及び左右2箇所に設けられたロアーリンク(3点リンク連結機構)にそれぞれ連結される。なお、農作業機1とトラクタとの連結は、トラクタの3点リンク機構に装着されるオートヒッチフレームを介してもよい。
【0018】
入力軸13は、前方に突出している。入力軸13には、トラクタのPTO(Power Take Off)軸から、ユニバーサルジョイント等を介して、動力が伝達される。入力軸13は、ギヤボックス内に内装してもよい。この場合には、ギヤボックスは中央作業体10の前方中央部に設けられる。
【0019】
伝動フレーム15及び16は、本体フレームを兼ね、左右両側に、水平方向に延設されている。伝動フレーム15及び16は、伝動シャフト(図示せず)を内装している。
【0020】
ロータリ作業部11は、ロータリ爪軸(第1爪軸)101及び複数の耕耘爪(第1爪)103を有する。複数の耕耘爪103は、ロータリ爪軸の軸周りに、着脱可能に取り付けられている。トラクタから入力軸13に伝達された動力は、伝動シャフトを回転させて、ロータリ爪軸101を回転駆動し、ロータリ作業部11を所定方向に回転させて耕耘作業を行う構成となっている。なお、ロータリ爪軸は、取付フランジや取付ホルダを含んでもよく、複数の耕耘爪103は、取付フランジまたは取付ホルダに着脱可能に取り付けられてもよい。また、ギヤボックスを設ける場合には、トラクタから入力軸13に伝達された動力は、ギヤボックス14で変速されて、伝動シャフトを回転させる。
【0021】
左作業体(第2作業体)20Lは、左代かき作業部(第2作業部)21Lを有し、右作業体(第2作業体)20Rは、右代かき作業部(第2作業部)21Rを有する。左代かき作業部21Lは、左代かき爪軸(第2爪軸)201Lと複数の代かき爪(第2爪)203Lを有する。同様に、右代かき作業部21Rは、右代かき爪軸(第2爪軸)201Rと複数の代かき爪(第2爪)203Rを有する。
【0022】
前述のように、トラクタ90から入力軸13に伝達された動力が、前述の伝動機構を介して中央作業体10のロータリ作業部11と共に、回転軸に設けられたクラッチ30を介して左作業体20L及び右作業体20Rに設けられた左右の代かき作業部21L及び21Rに伝達され、左右の代かき作業部21L及び21Rを所定方向に回転させるように構成されている。
【0023】
切替部23Lは、左作業体20Lを中央作業体10に対して回動させ、折畳状態と展開状態とを切り替える。同様に、切替部23Rは、右作業体20Rを中央作業体10に対して回動させ、折畳状態と展開状態とを切り替える。ここで、図1は、左作業体20L及び右作業体20Rの両方が折り畳まれた折畳状態である。他方、図2は、左作業体20L及び右作業体20Rの両方が開かれた展開状態である。
【0024】
農作業機1が展開状態(図2)にあるときには、ロータリ作業部11の回転領域の下端と左代かき作業部21L、右代かき作業部21Rの回転領域の下端とは互いに揃う。ここで、図3を用いて説明する。図3は、本発明の一実施形態に係る農作業機の回転半径を示す模式図である。ロータリ作業部11の回転領域は、ロータリ爪軸101の軸心O1から耕耘爪103の先端までの距離である半径(第1回転半径)r1で規定される領域である。すなわち、ロータリ作業部11の回転領域は、半径r1の円である。同様に、左右の代かき作業部の回転領域は、左右の代かき爪軸(201L及び201R)の軸心O2から代かき爪(203L及び203R)の先端までの距離である半径(第2回転半径)r2で規定される領域である。すなわち、左右の代かき作業部の回転領域は、半径r2の円である。この例では、r1はr2よりも長い。また、軸心O1と軸心O2とはズレており、両者は同一軸心上にない。
【0025】
図3に示すように、ロータリ作業部11の回転領域の下端E1と左右の代かき作業部(21L及び21R)の回転領域の下端E2L及びE2R(E2LとE2Rとを合わせてE2)は、互いに揃う。このようにロータリ作業部11の回転領域の下端E1と左右の代かき作業部(21L及び21R)の回転領域の下端E2とが互いに揃うことにより、農作業機1が展開状態(図2)にあるときに作業を行うと、作業後の耕深dを揃えることができるという効果を奏する。
【0026】
農作業機1が折畳状態(図1)にあるときには、中央作業体10が作業を行うだけで、左右の作業体20L及び20Rは作業を行わない。上述のとおり、中央作業体10のロータリ作業部11には、複数の耕耘爪103が設けられている。したがって、農作業機1が折畳状態(図1)にあるときには、中央作業体10がロータリ作業を行う。
【0027】
他方、農作業機1が展開状態(図2)にあるときには、中央作業体10に加えて、左右の作業体20L及び20Rも作業を行う。上述のとおり、左右の作業体20L及び20Rの代かき作業部21L及び21Rには、複数の代かき爪203L及び203Rが設けられている。そこで、農作業機1が展開状態(図2)にあるときは、中央作業体10に加えて、左右の作業体20L及び20Rも代かき作業を行う。
【0028】
ところで、一般的に、ロータリ作業を行う作業機で代かき作業を行うためには、ロータリ爪軸の回転速度をロータリ作業時に比べて速くしたり、同じ場所を複数回作業したりする必要がある。これは、耕耘爪103が代かき爪203L及び203Rほど土塊を叩かないといった爪の形状の違い、爪軸回転速度の違い(通常の使用態様ではロータリ爪軸の回転速度は代かき爪軸の回転速度よりも低速)といった違いによる。そこで、中央作業体10で代かき作業を行うときには、トラクタから農作業機へ動力を伝達する動力伝達軸の回転速度をトラクタ側で調整することになる。調整した結果、ロータリ爪軸の回転速度を代かき爪軸の回転速度よりは低速であるもののほぼ同じにすることは可能である。
【0029】
具体的な作業手順としては、まず、農作業機1を折畳状態(図1)にして、中央作業体10のみで、例えば耕深15cmでロータリ作業を行う。次に、農作業機1を展開状態(図2)にして、ロータリ作業によって耕耘した圃場を代かきする。この場合、耕深はロータリ作業時よりも浅い(例えば、12cm)。代かき作業時の耕深が、図3の耕深dである。このように、ロータリ作業部11の回転領域の下端E1と左右の代かき作業部(21L及び21R)の回転領域の下端E2とが互いに揃うことにより、農作業機1が展開状態(図2)にあるときに作業を行うと、作業後の耕深dを揃えることができるという効果を奏する。なお、ロータリ作業時の耕深と代かき作業時の耕深とが異なるのは、耕深をトラクタ側で上下位置決めすることにより調整するからである。
【0030】
また、本実施形態によれば、農作業機1の折畳状態(図1)で、高い負荷のかかるロータリ作業を行い、農作業機1の展開状態(図2)で、より負荷の低い代かき作業を行うことができるという効果を奏する。したがって、高負荷耕耘作業機(ロータリ作業機)と低負荷耕耘作業機(代かき作業機や表面砕土作業機)としての機能を1台の農作業機で実現することができるという効果を奏する。
【0031】
なお、本発明は上記の実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0032】
1:農作業機 10:中央作業体 20L:左作業体 20R:右作業体
11:ロータリ作業部 13:入力軸 15:伝動フレーム15
16:支持フレーム 21L:左代かき作業部 21R:右代かき作業部
101:ロータリ爪軸 103:耕耘爪 201L:左代かき爪軸
201R:右代かき爪軸 203L:左代かき爪 203R:右代かき爪
23L、23R:切替部
図1
図2
図3