(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6851615
(24)【登録日】2021年3月12日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】医療用スタンド装置
(51)【国際特許分類】
A61B 90/35 20160101AFI20210322BHJP
B25J 9/06 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
A61B90/35
B25J9/06 C
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-192836(P2016-192836)
(22)【出願日】2016年9月30日
(65)【公開番号】特開2018-51117(P2018-51117A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2019年8月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】390013033
【氏名又は名称】三鷹光器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】中村 勝之
【審査官】
北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−197912(JP,A)
【文献】
特開2004−267774(JP,A)
【文献】
特開2015−208814(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0083856(US,A1)
【文献】
米国特許第05528417(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0190131(US,A1)
【文献】
特許第4480703(JP,B2)
【文献】
特開2010−120439(JP,A)
【文献】
特開平07−184928(JP,A)
【文献】
特開2006−231484(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2017/0050314(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 90/25
A61B 90/35
A61B 90/50
B25J 9/06
G02B 21/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スタンド本体の一部に設けられた垂直な基端アームの下端と、下方に医療機器が支持された垂直な先端アームの下端とを、医療機器の重量を担う大径のメインアームで連結し、
基端アームと先端アームの上端同士をメインアームと機構的に平行でメインアームより小径のサブアームで連結して横方向に延びる平行リンク機構を構成し、メインアーム及びサブアームの先端アーム側がそれぞれ基端アーム側を中心に上下動自在な医療用スタンド装置であって、
前記メインアームが上部に長手方向に沿う凹部を形成した断面中空凹形状で、常に該凹部内にサブアームが収納されていることを特徴とする医療用スタンド装置。
【請求項2】
凹部の上部に長手方向に沿うカバーが取付けられていることを特徴とする請求項1記載の医療用スタンド装置。
【請求項3】
メインアームの閉断面内に内部空間を複数の空間に区画するリブが長手方向に沿って一体的に形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の医療用スタンド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医療用スタンド装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
手術顕微鏡やカメラなどの医療機器はフロアに設置されたスタンド装置に支持されて使用される。
【0003】
スタンド装置は医療機器の垂直状態を維持したまま前後・上下に移動できるように平行リンク機構を利用した構造になっている。
【0004】
上下方向での移動は、スタンド本体の一部に設けられた基端アームと、医療機器を支持した先端アームとを、上下2本のメインアームとサブアームで連結した平行リンク機構により行われる。基端アーム側が不動で、先端アーム側が医療機器と一緒に上下に移動する。平行リンク機構のため先端アームの垂直状態は維持され、医療機器の垂直状態も維持される。ドクターは医療機器の垂直状態が常に維持されるため観察や撮影を容易に行うことができる。
【0005】
メインアームとサブアームは両方とも金属パイプで形成されている。メインアームのパイプは大径で医療機器の重量をそれで支える。サブアームのパイプは小径で基端アーム側から先端アームにトルクを伝達して先端アームの姿勢を垂直に維持する働きをする(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献2】特許第4480703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような関連技術にあっては、メインアームとサブアームの2本のパイプが外から見えるため、圧迫感があり見栄えが良くなかった。サブアームをメインアームの内部に収納して外観的に1本に見えるようにした構造も提案されているが、サブアームが閉断面パイプ状のメインアーム内に収納されるため、サブアームの取付け作業が大変である。また取付け後にサブアームの取付け状態を確認する作業も困難であった。
【0008】
本発明は、このような関連技術に着目してなされたものであり、外観的に1本に見えて、それでいてサブアームのメインアームに対する取付作業が容易な医療用スタンド装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の技術的側面によれば、スタンド本体の一部に設けられた垂直な基端アームの下端と、下方に医療機器が支持された垂直な先端アームの下端とを、医療機器の重量を担う大径のメインアームで連結し、基端アームと先端アームの上端同士をメインアームと機構的に平行でメインアームより小径のサブアームで連結して横方向に延びる平行リンク機構を構成し、メインアーム及びサブアームの先端アーム側がそれぞれ基端アーム側を中心に上下動自在な医療用スタンド装置であって、前記メインアームが上部に長手方向に沿う凹部を形成した断面中空凹形状で、該凹部内にサブアームが収納されていることを特徴とする。
【0010】
本発明の第2の技術的側面によれば、凹部の上部に長手方向に沿うカバーが取付けられていることを特徴とする。
【0011】
本発明の第3の技術的側面によれば、メインアームの閉断面内に内部空間を複数の空間に区画するリブが長手方向に沿って一体的に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の第1の技術的側面によれば、サブアームがメインアームの上部から形成された凹部内に収納されているため、外観的に1本に見えて見栄えが良い。凹部は上部が開放されているので、サブアームの取付作業は上から行うことができ作業性が良い。サブアームのメンテナンス等の作業も容易に行うことができる。メインアームは断面中空凹形状のため単純なパイプ断面よりも剛性が高い。
【0013】
本発明の第2の技術的側面によれば、凹部の上部がカバーにより覆われるため、凹部内への埃や汚れの侵入を防ぐことができる。
【0014】
本発明の第3の技術的側面によれば、メインアームの閉断面内にリブが一体形成されているため、メインアームの剛性が更に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図4】
図1中矢示SA−SA線に沿うサブアームの断面図。
【
図6】平行リンク機構を上下に変形させた状態を示す機構図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1〜
図6は本発明の好適な実施形態を示す図である。以上及び以下において前後左右の方向性は
図1に示された通りである。
【0017】
スタンド装置1は手術室内で医療機器としての手術顕微鏡2を吊り下げて使用するための装置である。スタンド本体3には縦アーム4の途中部分が軸支点aを中心に前後傾動自在に軸支されている。この縦アーム4は鋳物製で上下に長い中空形状をしている。
【0018】
縦アーム4の上部には上アーム5とメインアーム6が取付けられる。上アーム5は鋳物製で、メインアーム6はアルミ合金製の押出成形品で、メインアーム6の後端を上アーム5の前端に差し込んだ状態で結合されている。上アーム5の前端には軸支点bが設定され、機構的にはその軸支点bよりも前側がメインアーム6で、後側が上アーム5である。上アーム5及びメインアーム6は全体として上側へゆるやかに湾曲している。
【0019】
縦アーム4の下側には後方に延びる下アーム7が設けられ、下アーム7の端部にはカウンタウェイトWが取付けられている。上アーム5の後端と下アーム7の途中部分は縦サブアーム8により連結されている。これにより縦アーム4と縦サブアーム8を含む縦方向の平行リンクが形成される。
【0020】
メインアーム6の軸支点bには基端アーム9の下端が軸支され、メインアーム6の先端には先端アーム10の下端が軸支されている。縦アーム4の上方内部には基端アーム9と一体化されて軸支点bを中心に一緒に回転する水平部材11が設けられている。また縦アーム4の下方内部には軸支点aに対応する位置にスタンド本体3に固定された不動の水平部材12が設けられている。これら上下の水平部材11、12の両端同士は上下に延びる2本のシャフト13により連結されている。
【0021】
上下の水平部材11、12と2本のシャフト13および縦アーム4の仮想リンクa−bにより縦アーム4の内部でも平行リンクが形成される。水平方向に固定された水平部材12に対して基端アーム9の主軸方向が固定されるため、縦アーム4が軸支点aを中心に前後に傾動されても基端アーム9は常に垂直が維持される。
【0022】
メインアーム6は
図4に示すように長手方向に沿う凹部14が形成された断面中空凹形状をしている。またその断面内には凹部14の底部付近とその対向位置を連結するハの字状のリブ15が一体形成され、断面を3つの空間に区画している。メインアーム6は断面中空凹形状にしたことによりすでに剛性が高まっているが、リブ15を追加したことにより剛性は更に高まる。
【0023】
基端アーム9及び先端アーム10はメインアーム6の両端部において凹部14の端末に臨まされている。そして基端アーム9の上端と先端アーム10の上端とを上側へゆるやかに湾曲したサブアーム16により連結している。サブアーム16は凹部14の上から挿入して両端が基端アーム9と先端アーム10に連結され、連結された状態で凹部14に内に位置する。サブアーム16が取付けられたメインアーム6の上部には長手方向に沿って概略逆U字状のカバー17が取付けられ、先端アーム10の上部には概略三角形のキャップ18が取付けられる。
【0024】
サブアーム16の連結により、メインアーム6と先端アーム10と基端アーム9を含む横方向の平行リンク機構Aが形成される。したがって、2つの平行リンク機構によりスタンド本体3に固定された水平部材12と基端アーム9との角度が常に一定に維持される。すなわち、基端アーム9の垂直状態が前述の構造により常に維持されるため、サブアーム16で連結されている先端アーム10も垂直が維持され、その下側に支持されている手術顕微鏡2の姿勢も常に垂直状態が維持される。
図6のようにメインアーム6を軸支点bを中心に上下に動かしても、或いは軸支点aを中心に縦アーム4全体を前後に傾けても、先端アーム10の垂直状態は常に維持される。
【0025】
図6のように手術顕微鏡2を上下に動かす際、メインアーム6とサブアーム16を含む平行リンク機構Aは上下方向で斜めに変形するため、メインアーム6とサブアーム16の間隔は変化する。両者の間隔は水平な時の幅Eが一番幅が広く、上下に変形させると幅eが狭くなる。メインアーム6を基準にすると、サブアーム16が凹部14内で相対的に上下移動することになるが、凹部14とカバー17が一緒に形成する内部空間はサブアーム16の上下移動を許容する上下サイズを有しているため、サブアーム16が凹部14の底部やカバー17と干渉することはない。
【0026】
この実施形態によれば、サブアーム16がメインアーム6の上部から形成された凹部14内に収納されているため、外観的に1本に見えて見栄えが良い。凹部14は上部が開放されているので、サブアーム16の取付作業は上から行うことができ作業性が良い。サブアーム16のメンテナンス等の作業も容易に行うことができる。メインアーム6は断面中空凹形状のため単純なパイプ断面よりも剛性が高い。凹部14の上部がカバー17により覆われるため、凹部14内への埃や汚れの侵入を防止できる。
【符号の説明】
【0027】
1 スタンド装置
2 手術顕微鏡(医療機器)
3 スタンド本体
6 メインアーム
9 基端アーム
10 先端アーム
14 凹部
15 リブ
16 サブアーム
A 平行リンク機構
W カウンタウェイト