(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6851621
(24)【登録日】2021年3月12日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】コイル固定型カートリッジ
(51)【国際特許分類】
H04R 11/08 20060101AFI20210322BHJP
G11B 3/46 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
H04R11/08
G11B3/46 Z
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-15294(P2017-15294)
(22)【出願日】2017年1月31日
(65)【公開番号】特開2018-125650(P2018-125650A)
(43)【公開日】2018年8月9日
【審査請求日】2019年12月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】511236198
【氏名又は名称】有限会社トップウイング
(74)【代理人】
【識別番号】100096002
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 弘之
(74)【代理人】
【識別番号】100091650
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 規之
(72)【発明者】
【氏名】目黒 弘
【審査官】
齊田 寛史
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭52−53404(JP,A)
【文献】
実公昭59−38799(JP,Y1)
【文献】
実開昭51−13306(JP,U)
【文献】
特開昭50−37403(JP,A)
【文献】
実開昭60−124196(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 11/08
G11B 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向を同じくしてカンチレバーと一体化され、このカンチレバーと共に振動可能に配置された略円柱状の磁石と、
この磁石の近傍に固定配置されたピックアップコイルを備え、
このピックアップコイルは導線をN回巻いたものよりなり、その巻回中央部よりグラウンド接続用の共通線を導出したことを特徴とするコイル固定型カートリッジ。
【請求項2】
上記ピックアップコイルの巻き線の中央にタップを設け、そこから上記共通線を導出することを特徴とする請求項1に記載のコイル固定型カートリッジ。
【請求項3】
一対の導線を重ねて巻回し、一方の導線の終端部と、他方の導線の始端部とを接続し、この接続部から上記共通線を導出することを特徴とする請求項1に記載のコイル固定型カートリッジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コイル固定型カートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
図6に示すように、従来のコイル固定型カートリッジ60は、カンチレバー20の根元に一体的に取り付けた円柱状の磁石18が、ピックアップコイル62の近傍に、例えば理想中心点Aを中心に振動可能に配置されている。
カンチレバー20の先端には、ダイヤ針22が固定されている。
【0003】
磁石18は、一方の端面にN極を、また他方の端面にS極を有しており、実線位置から点線位置への、カンチレバー20の振れに追動する磁石18の振れにより、ピックアップコイル62側に磁束変化が生じ、これが出力信号として両端部から取り出される(特許文献1及び2参照)。
【特許文献1】特開昭52−53404
【特許文献2】実公昭59−38799
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、オーディオの分野においては、ホット、コールド及びグラウンドの3本のケーブルを用いて信号のやり取りを行う所謂バランス型の伝送方式とすることが、ノイズの低減に有効であると認識されている。
しかしながら、従来のコイル固定型カートリッジ60はバランス型の構成に対応していないため、
図7に示すように、差動アンプ28との間にトランス32を設置し、その一次側コイル32a及び二次側コイル32bの中間点を取り出して接地する構成が採られている。
このため、装置構成が複雑化せざるを得なかった。
【0005】
この発明は、このような従来の問題を解決するために案出されたものであり、カートリッジ自体をバランス伝送方式に対応可能とする技術の実現を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、この発明に係るコイル固定型カートリッジは、軸方向を同じくしてカンチレバーと一体化され、このカンチレバーと共に振動可能に配置された略円柱状の磁石と、この磁石の近傍に固定配置されたピックアップコイルを備え、このピックアップコイルは導線をN回巻いたものよりなり、その巻回中央部より共通線を導出したことを特徴としている。
上記共通線は、例えば、ピックアップコイルの巻き線の中央にタップを設け、そこから導出される。
あるいは、一対の導線を重ねて巻回し、一方の導線の終端部と、他方の導線の始端部とのを接続し、この接続部から上記共通線を導出することもできる。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係るコイル固定型カートリッジの場合、ピックアップコイルの巻回中央部から共通線が導出されているため、これをグラウンドに接続することにより、カートリッジ単体でバランス型の伝送方式に対応可能となり、簡素な構成でありながらノイズの低減効果を十分に発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は、この発明に係る第1のコイル固定型カートリッジ10の内部構造を示すものであり、導線14をN回巻いた空芯の第1のピックアップコイル16と、円柱状の磁石18と、磁石18と一体化されたカンチレバー20とを備えている。
【0009】
磁石18とカンチレバー20とは、同軸方向に配置・固定されている。
また、カンチレバー20の先端には、ダイヤ針22が固定されている。
磁石18は、鋼ワイヤ等の弾性材(図示省略)により、振動自在に保持されている。
第1のピックアップコイル16の巻き線の中間部(1/2N回部分)にはタップ24が設けられており、そこに共通線26が接続されている。
【0010】
図2に示すように、この共通線26を接地することにより、第1のコイル固定型カートリッジ10自体をバランス伝送対応型とすることができる。
このため、従来のように差動アンプ28との間にバランス対応型のトランスを設けなくてもノイズを有効に低減することが可能となる。
また、このようにピックアップコイル16を差動アンプ28に直接に接続することにより、構成の簡素化を図ることができる。
図中の符号30は、トーンアームを示している。
【0011】
ただし、
図3に示すように、第1のコイル固定型カートリッジ10とバランス伝送対応型のトランス32を組み合わせて用いることもできる。
このように、第1のコイル固定型カートリッジ10と差動アンプ28との間に、一次側コイル32a及び二次側コイル32bの中間点を接地した構造のトランス32を介在させることにより、カートリッジ自体及びトランス32において、二重にノイズを除去できる利点が生じる。
【0012】
図4は、この発明に係る第2のコイル固定型カートリッジ50の使用例を示すものである。
この第2のコイル固定型カートリッジ50は、第2のピックアップコイル52を備える点に特徴があり、他の構成は第1のコイル固定型カートリッジ10と異ならない。
【0013】
図5は、第2のピックアップコイル52の構成を示す概念図である。図示の通り、第1の導線54と第2の導線56を重ねて(束ねて)空芯で巻回した構成を備えており、第1の導線54の終端部54aと第2の導線56の始端部56aとが接続されている。
そして、この接続点58からグランド接続用の共通線60が導出されている。
【0014】
このため、カートリッジ自体をバランス対応とすることができ、従来のように差動アンプ28との間にバランス対応型トランス32を設けなくても、ノイズを有効に低減することが可能となる。
また図示は省略したが、上記と同様、第2のコイル固定型カートリッジ50とバランス対応型トランス32を組み合わせて用いることもできる。
【0015】
図示の便宜上、上記においてはカートリッジ内に一つのピックアップコイルを設けた例を示したが、磁石18の軸を中心に所定の角度(例えば90度)の角度で2つのピックアップコイルを配置することにより、ステレオ対応のカートリッジとすることも当然に可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】この発明に係る第1のコイル固定型カートリッジの構成を示す概念図である。
【
図2】第1のコイル固定型カートリッジの使用例を示す回路図である。
【
図3】第1のコイル固定型カートリッジの他の使用例を示す回路図である。
【
図4】第2のコイル固定型カートリッジの使用例を示す回路図である。
【
図5】第2のピックアップコイルの構成を示す概念図である。
【
図6】従来のコイル固定型カートリッジの構成を示す概念図である。
【
図7】従来のコイル固定型カートリッジの使用例を示す回路図である。
【符号の説明】
【0017】
10 第1のコイル固定型カートリッジ
14 導線
16 第1のピックアップコイル
18 磁石
20 カンチレバー
22 ダイヤ針
24 タップ
26 共通線
28 差動アンプ
30 トーンアーム
32 バランス伝送対応型トランス
50 第2のコイル固定型カートリッジ
52 第2のピックアップコイル
54 第1の導線
54a 第1の導線の終端部
56 第2の導線
56a 第2の導線の始端部
58 第1の導線の終端部と第2の導線の始端部との接続点
60 共通線