(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記液状油が、炭酸ジカプリリル、パルミチン酸オクチル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、及びα−オレフィンオリゴマーからなる群から選択される少なくとも一種である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の固形状油性クレンジング化粧料。
前記液状油が炭酸ジカプリリルを含み、化粧料全量中における炭酸ジカプリリルの含有量が1〜20質量%である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の固形状油性クレンジング化粧料。
【背景技術】
【0002】
肌に付着した化粧料等の汚れを除去するために使用されるクレンジング化粧料は、大まかには以下の3つに分類される。
1.水性成分を主成分とし、必要に応じて界面活性剤を配合した水性クレンジング化粧料
2.水性成分、油性成分ならびに界面活性剤を配合した乳化クレンジング化粧料
3.油性成分を主成分とし、必要に応じて界面活性剤を配合した油性クレンジング化粧料
【0003】
一般的に、肌上の化粧料や汚れを除去する能力は、油性クレンジング化粧料、乳化クレンジング化粧料、水性クレンジング化粧料の順に優れている。
【0004】
近年、耐水性、耐油性に優れたメイクアップ化粧料が開発され、化粧持ちが著しく向上している。そのため、メイクアップ化粧料とのなじみが良く、汚れ落ちに優れた油性クレンジング化粧料が用いられることが多くなってきている。しかしながら、通常、油性クレンジング化粧料は液状であることから、使用中にタレ落ち等が生じ使用性に問題がある。
【0005】
そこで、タレ落ちを防止し、使用性の向上を図る目的で、固形化した油性クレンジング化粧料が開発されている(特許文献1〜3参照)。これらの油性クレンジング化粧料の特徴は、固形油の結晶中に液状油を封入していることにある。このような油性クレンジング化粧料を肌に伸ばすと、固形油の結晶が崩れ、封入された液状油が染み出してくる。染み出した液状油により洗浄が可能となる。しかしながら、従来の固形状油性クレンジング化粧料は、結晶が崩れにくく、使用感が悪いという特徴がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上のような状況に鑑み本発明の実施形態は、結晶が崩れやすく、良好な使用感を持つ固形状油性クレンジング化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態は、上記課題を解決するためになされたものであり、以下の態様を有する固形状油性クレンジング化粧料に関する:
(1)液状油と、固形油と、界面活性剤と、
N−カプリロイルリシン、ラウロイルリシン及び硫酸バリウムからなる群から選択される少なくとも一種の結晶崩壊助剤と、を含有する固形状油性クレンジング化粧料。
(2)前記液状油と前記固形油とのSP値の差が2(J/cm
3)
1/2以下である、上記(1)に記載の固形状油性クレンジング化粧料。
(3)前記固形油がカードハウス型の結晶構造を持つ、上記(1)又は(2)に記載の固形状油性クレンジング化粧料。
(4)前記液状油が、炭酸ジカプリリル、パルミチン酸オクチル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、及びα−オレフィンオリゴマーからなる群から選択される少なくとも一種である、上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の固形状油性クレンジング化粧料。
(5)前記液状油が炭酸ジカプリリルを含み、化粧料全量中における炭酸ジカプリリルの含有量が1〜20質量%である、上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の固形状油性クレンジング化粧料。
(6)化粧料全量中における各成分の含有量は、前記液状油が45〜90質量%、前記固形油が5〜20質量%、前記界面活性剤が4〜30質量%、前記結晶崩壊助剤が0.001〜3質量%である、上記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の固形状油性クレンジング化粧料。
【発明の効果】
【0009】
本実施形態によれば、結晶が崩れやすく、良好な使用感を持つ固形状油性クレンジング化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の実施の形態を説明する。
【0011】
(A)液状油
本実施形態で用いられる液状油は、常温(25℃)で流動性を有する油剤であり、例えば次のようなものが挙げられる。具体的には、炭酸ジカプリリル、パルミチン酸オクチル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、イソステアリン酸イソセチル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタエリトリット、オクタン酸セチル、トリ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセライド、アジピン酸ジイソブチル、セバシン酸2−ヘキシルデシル、リンゴ酸ジイソステアリル、イソプロピルミリステート、2−オクチルドデシルオレエート、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、ミリスチン酸2−ヘキシルデシル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、2−エチルヘキシルパルミテート、パルミチン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸2−ヘプチルウンデシル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸イソセチル、オレイン酸デシル、ドデシルオレエート、オレイン酸オレイル、乳酸ミリスチル、乳酸セチル、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、コハク酸2−エチルヘキシル、アジピン酸ジ2−ヘキシルデシル、アジピン酸ジ−2−ヘプチルウンデシル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、ラウリン酸へキシル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、コハク酸ジオクチル、フッ素変性エステル油、ジピバリン酸トリプロピレングリコール等のエステル油; アマニ油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、アボカド油、サザンカ油、ヒマシ油、サフラワー油、キョウニン油、シナモン油、ホホバ油、ブドウ油、ヒマワリ油、アルモンド油、ナタネ油、ゴマ油、小麦胚芽油、米胚芽油、米ヌカ油、綿実油、大豆油、落花生油、茶実油、月見草油、卵黄油、牛脚脂、肝油等の動植物油; α−オレフィンオリゴマー、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、流動イソパラフィン、流動パラフィン、合成スクワラン、植物性スクワラン、ポリブテン、水添ポリイソブテン等の炭化水素油; ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等の鎖状シリコーン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状シリコーン、アミノ変性シリコーン油、ポリエーテル変性シリコーン油、カルボキシ変性シリコーン油、アルキル変性シリコーン油、アンモニウム塩変性シリコーン油、フッ素変性シリコーン油等のシリコーン油; オレイン酸、トール油脂肪酸、イソステアリン酸等の高級脂肪酸; ラウリルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、ホホバアルコール等の高級アルコールなどが挙げられる。これらは、必要に応じて1種又は2種以上用いることができる。
【0012】
これらのうち好ましい液状油は、炭酸ジカプリリル、パルミチン酸オクチル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、及びα−オレフィンオリゴマーからなる群から選択される少なくとも1種である。
【0013】
一実施形態として、液状油は炭酸ジカプリリルを含んでもよい。すなわち、液状油は、炭酸ジカプリリル単独、又は炭酸ジカプリリルと他の液状油との組み合わせでもよい。例えば、液状油は、炭酸ジカプリリルと、パルミチン酸オクチル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、及びα−オレフィンオリゴマーからなる群から選択される少なくとも1種の液状油との組み合わせでもよい。炭酸ジカプリリルを用いる場合、化粧料全量中における炭酸ジカプリリルの含有量は、特に限定しないが、1〜20質量%であることが好ましく、より好ましくは3〜15質量%である。
【0014】
化粧料全量中における液状油の含有量は、特に限定しないが、好ましくは45〜90質量%、より好ましくは55〜85質量%である。
【0015】
(B)固形油
本実施形態で用いられる固形油は、常温(25℃)で流動性を有さない油剤であり、液状油を封入できる結晶構造を持つものであればよく、例えば次のようなものが挙げられる。具体的には、ポリエチレンワックス、エチレン・プロピレン共重合体、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス、オゾケライトワックス、セレシンワックス等の炭化水素が挙げられる。これらは、必要に応じて1種又は2種以上用いることができる。
【0016】
液状油を封入できる結晶構造としては、例えばカードハウス型の結晶構造がある。そのため、好ましい固形油としては、カードハウス型の結晶構造を持つものが挙げられ、具体的には、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、及びセレシンワックスなどが挙げられる。
【0017】
固形油の融点は、成型性と経時安定性の点から、60〜120℃であることが好ましく、より好ましい融点は70〜110℃である。ここで、融点は、JIS K0064の目視による方法に基づいて測定される。
【0018】
化粧料全量中における固形油の含有量は、特に限定しないが、好ましくは5〜20質量%であり、より好ましくは7質量%〜15質量%である。
【0019】
(C)界面活性剤
本実施形態で用いられる界面活性剤としては、ノニオン性界面活性剤が好ましく用いられ、より好ましくはHLB値が5〜13のノニオン性界面活性剤であり、更に好ましくはHLB値が7〜12.5のノニオン性界面活性剤である。ここで、HLB(親水性−親油性バランス)値はグリフィン法により求めることができる。
【0020】
使用されるノニオン性界面活性剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、脂肪酸ポリオキシエチレングリセリル、ポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーン等が挙げられる。これらは、必要に応じて1種又は2種以上用いることができる。これらのうち好ましい界面活性剤は、脂肪酸ポリオキシエチレングリセリルである。
【0021】
化粧料全量中における界面活性剤の含有量は、特に限定しないが、好ましくは4〜30質量%、さらに好ましくは7質量%〜20質量%である。
【0022】
(D)結晶崩壊助剤
本実施形態で用いられる結晶崩壊助剤は、N−カプリロイルリシン、ラウロイルリシン及び硫酸バリウムからなる群から選択される少なくとも一種である。これらは、固形油及び液状油に溶解せずかつ分散できる粉体であり、固形油が形成する結晶を崩しやすくする。
【0023】
結晶崩壊助剤としては、N−カプリロイルリシン(即ち、N
ε−カプリロイル−L−リジン)、ラウロイルリシン(即ち、N
ε−ラウロイル−L−リジン)を用いることが好ましい。N−カプリロイルリシン、ラウロイルリシンであれば、固形油の結晶を崩しやすくするという本来の作用だけでなく、アミノ酸由来の成分であるため、洗浄後の肌にしっとり感を付与することができる。
【0024】
化粧料全量中における結晶崩壊助剤の含有量は、特に限定しないが、好ましくは0.001〜3質量%、より好ましくは1〜3質量%であり、さらに好ましくは1.2〜3.0質量%である。
【0025】
(E)その他の成分
本実施形態に係る固形状油性クレンジング化粧料には、前記の成分以外に、本発明の目的を損なわない範囲で、化粧品、医薬部外品に配合される各種成分を任意成分として添加してもよい。例えば、医薬部外品、化粧品等に配合される各種成分として、有効成分、保湿剤(例えばヒト型セラミドなど)、増粘剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、色素、香料等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0026】
(F)固形状油性クレンジング化粧料
本実施形態に係る固形状油性クレンジング化粧料は、常温(25℃)、常圧(1気圧)で流動性のないクレンジング化粧料であり、その形状は、例えば、棒状、板状及び容器への流し込み成型したもの等を挙げることができ、特に限定されない。
【0027】
本実施形態に係る固形油性クレンジング化粧料において、固形油はカードハウス型などの結晶構造をとっており、その結晶中に液状油が封入されている。そのため、固形状油性クレンジング化粧料を肌に塗り、結晶構造を崩したとき、封入された液状油が固形油の結晶から染み出してくる。本実施形態では結晶崩壊助剤を添加しており、結晶崩壊助剤は、固形油及び液状油に溶解しない粉体であり、その少なくとも一部が固形油の結晶中に取り込まれている。そのため、結晶構造が崩れやすくなっており、従ってやわらかい製剤になり、塗布時に滑らかな使用感を得ることができる。
【0028】
また別の実施形態において、炭酸ジカプリリルを含む液状油(例えば、炭酸ジカプリリルと1種又は2種以上の他の液状油とを混合した液状油)と、結晶崩壊助剤とを組み合わせることが好ましい。炭酸ジカプリリルは軽い使用感を与える液状油で、固形油が崩れて液状油が染み出したときに、固形油の固形物感を軽減する特徴がある。固形油の固形物感を軽減する炭酸ジカプリリルの特性と、固形油を崩しやすくする結晶崩壊助剤の特性とが相まって、塗布時に更に滑らかで良好な使用感を得ることができる。
【0029】
本実施形態において、液状油と固形油は、両者のSP値(溶解度パラメーター:Solubility Parameter)の差ができるだけ小さいものを選択することが好ましい。
【0030】
SP値は物質間の相溶性の尺度であり、固形油と液状油とのSP値の差が小さいと、相溶性が良いので、冷却時に結晶が成長しにくくなる。結晶が成長しにくいため、結晶の粒子は小さくなる。小さな粒径の粒子の結晶ができると、小さな力で結晶を崩すことができる。小さな力で結晶を崩すことができるので、より滑らかな使用感を得ることができる。また結晶中の液状油の封入性もよくなるので、製品としての安定性及び成形性も良くなる。
【0031】
固形油と液状油とのSP値の差は、2(J/cm
3)
1/2以下であることが好ましく、より好ましくは1(J/cm
3)
1/2以下であり、更に好ましくは0.5(J/cm
3)
1/2以下であり、例えば、0.01〜2(J/cm
3)
1/2でもよく、0.01〜0.5(J/cm
3)
1/2でもよい。
【0032】
ここで、SP値はFedorsの推算法によって求められる。Fedorsの推算法の定義及び計算は、「R.F.fedors:Polym.Eng.Sci.,14〔2〕,147−154(1974)」に記載されている。Fedorsの推算法によれば、下記の計算式で各物質のSP値を求めることができる。固形油と液状油とのSP値の差は、固形油と液状油のそれぞれのSP値を求め、その差を算出することにより求められる。
σ=[ΣE
COH/ΣV]
1/2
式中、σ:溶解度パラメーター、E
COH:凝集エネルギー(J/mol)、V:モル分子容(cm
3/mol)を示す。
【0033】
本実施形態に係る固形状クレンジング化粧料は、液状油、固形油、界面活性剤、結晶崩壊助剤、及び必要に応じて上記任意成分を混合し、固形油の融点以上まで加熱溶解して溶液を調製し、得られた溶液を冷却することで、製造することができる。例えば、冷却に際し、溶液が固化する前に容器に充填することにより、容器への流し込み成型を行うことができる。
【0034】
このように固形油の融点以上まで加熱して溶解させることにより、全ての原料を均一に混合することができる。そのため、加熱溶解した溶液を冷却することにより、均一な結晶構造が得られる。結晶構造が均一であると、液状油の染み出し方も均一になるため、よりやわらかい良好な塗布感を得ることができる。また結晶中に液状油が均一に封入されているため、製品の安定性及び成形性も向上することができる。
【実施例】
【0035】
以下、実施例を示してより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0036】
実施例1〜11及び比較例1〜2:
下記表1の処方に従って固形状油性クレンジング化粧料を製造した。得られた固形状油性クレンジング化粧料について、官能試験、成形性試験、耐温性試験、硬度測定試験を行った。製造方法及び各試験方法は以下の通りである。
【0037】
(製造方法)
表1の成分(1)〜(4)を90℃で加熱溶解して均一に混合し、得られた溶液を容器に流し込み、冷却固化して固形状油性クレンジング化粧料を得た。
【0038】
(官能試験)
各実施例及び各比較例の固形状油性クレンジング化粧料を用いて、3名のパネラーにより官能試験を実施した。詳細には、固形状油性クレンジング化粧料を手の甲に乗せ、塗布した時の「崩れやすさ」、「なじみやすさ」、及び「しっとり感」について、以下の評価基準に従い、官能評価し、その平均点を総合評価とした。
評価基準
<崩れやすさ>
5点:非常に崩れやすい
4点:崩れやすい
3点:普通
2点:崩れにくい
1点:非常に崩れにくい
<なじみやすさ>
5点:非常になじみやすい
4点:なじみやすい
3点:普通
2点:なじみにくい
1点:非常になじみにくい
<しっとり感>
5点:とてもしっとり感がある
4点:しっとり感がある
3点:普通
2点:しっとり感がない
1点:まっとくしっとり感がない
【0039】
(成形性試験)
各実施例及び各比較例の固形状油性クレンジング化粧料を製造する際の容器として100gのプラスチック製ジャー容器を用いて、加熱溶解した溶液を当該容器に充填して静置し、6時間後に視覚判定することにより、下記の基準で評価を行った。
<評価基準>
◎:表面に凹凸がなく、目立った傷がない
○:表面に凹凸がないが、側面にわずかにひびが見られる
△:表面に僅かに凹凸が見られ、側面にひびが見られる
×:表面に明らかに凹凸が見られ、側面にひびが見られる
【0040】
(耐温性試験)
各実施例及び各比較例の固形状油性クレンジング化粧料を製造する際の容器として100gのプラスチック製ジャー容器を用いて、加熱溶解した溶液を当該容器に充填して密封し、恒温槽(50℃一定)に1ヶ月保存後、視覚判定及び実際の使用により、下記の基準で評価を行った。
<評価基準>
◎:外観の変化が全くなく、基剤臭や使用性の変化もない。
○:外観の変化はほとんどなく、基剤臭や使用性に若干の変化を感じる。
△:僅かに発汗等が認められ、基剤臭や使用性に変化を感じる。
×:明らかに発汗等が認められ、基剤臭や使用性に明らかな変化を感じる。
【0041】
(硬度測定試験)
各実施例及び各比較例の固形状油性クレンジング化粧料を製造する際の容器として100gのプラスチック製ジャー容器を用いて、加熱溶解した溶液を当該容器に充填し、固化させたものについて、不動工業社製のレオメーターを用いて硬度を測定した。25℃にて、直径15mmの円形プローブが、2cm/minの針入スピードで、表面から2.0cmの深さまで針入した際の最大荷重値(g)を計測し、その値を評価した。
【0042】
【表1】
【0043】
表1中の成分の詳細は以下の通りである。
・α−オレフィンオリゴマー:ノムコートHP-30V/日清オイリオグループ株式会社
・流動パラフィン:流動パラフィン No.70-S/三光化学工業株式会社
・ポリエチレンワックス:融点75〜90℃、PERFORMALENE 400 POLYETHYLENE/BAKER HUGHES
・パラフィンワックス:融点60〜65℃、精製パラフィンワックス/日興リカ株式会社
・セレシンワックス:融点61〜65℃、精製セレシンN/日興リカ株式会社
・マイクロクリスタリンワックス:融点60〜85℃、精製マイクロクリスタリンワックス/日興リカ株式会社
・脂肪酸ポリオキシエチレングリセリル:HLB10.6、GLYCEROX HE/クローダジャパン株式会社
・ソルビタン脂肪酸エステル:HLB9.6、レオドール TW−S106V/花王株式会社
【0044】
結果は表1に示す通りであり、ラウロイルリシン等の結晶崩壊助剤を配合しなかった比較例1、2の官能試験の総合評価と、結晶崩壊助剤を配合した実施例1〜10の官能試験の総合評価とを比較すると、実施例1〜10の方が官能試験の総合評価が優れていた。これは、ラウロイルリシンなどの結晶崩壊助剤を配合したことで、結晶構造が崩れやすくなり、官能試験の総合評価が上がったと考えられる。また実施例1〜10の中でも、実施例2、6、7、8、9の官能試験の総合評価が特に優れていた。実施例2については、ラウロイルリシンの配合量を更に増やしたことで、結晶構造がより崩れやすくなり、官能試験の総合評価が上がったと考えられる。実施例6、7については、炭酸ジカプリリルを配合したことで、固形油の固形物感が軽減され、官能試験の総合評価が上がったと考えられる。実施例7、8、9については、SP値の差が小さいため、小さな粒径の粒子の結晶ができ、結晶を崩しやすくなったために、官能試験の総合評価が上がったと考えられる。逆にSP値の差が大きい実施例10では、比較例1、2ほどではないが、官能試験の総合評価が下がっていた。これはSP値の差が大きいため、小さな粒径の粒子の結晶ができず、結晶が崩しにくくなったためと考えられる。なお、実施例6、7において、液状油における複数の油剤を組み合わせた場合のSP値の計算は、各原料のSP値に、液状油における各原料の配合比率を乗じることで行った。
【0045】
成形性試験においては、SP値の差が小さい実施例7、8、9の結果が特に優れており表面に凹凸がなく、目立った傷がなかった。逆にSP値の差が大きい実施例10では、表面に僅かに凹凸が見られ、側面にひびが見られた。
【0046】
耐温性試験の結果については、実施例1〜10、比較例1、2においてどれも安定的で、外観の変化が全くなく、基剤臭や使用性の変化もなかった。
【0047】
硬度測定試験の結果については、比較例1、2と実施例1〜10を比較したとき、実施例1〜10の方が、硬度の値が下がっていた。これは、結晶崩壊助剤を配合したことで、結晶が崩れやすくなり、硬度の値が下がったと考えられる。また実施例1〜10の中でも、実施例7、8、9が特に硬度の値が下がっていた。これは、SP値の差が小さいため、結晶の粒子径が小さくなったことが影響していると考えられる。
【0048】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これら実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその省略、置き換え、変更などは、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。