特許第6851636号(P6851636)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6851636組み込み式撮像システムを備える細胞培養インキュベータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6851636
(24)【登録日】2021年3月12日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】組み込み式撮像システムを備える細胞培養インキュベータ
(51)【国際特許分類】
   C12M 3/00 20060101AFI20210322BHJP
   G02B 21/34 20060101ALI20210322BHJP
   G02B 21/36 20060101ALI20210322BHJP
   G01N 21/17 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   C12M3/00 B
   G02B21/34
   G02B21/36
   G01N21/17 A
【請求項の数】24
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2018-502616(P2018-502616)
(86)(22)【出願日】2016年3月31日
(65)【公表番号】特表2018-516591(P2018-516591A)
(43)【公表日】2018年6月28日
(86)【国際出願番号】US2016025349
(87)【国際公開番号】WO2016161163
(87)【国際公開日】20161006
【審査請求日】2019年4月1日
(31)【優先権主張番号】62/141,187
(32)【優先日】2015年3月31日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517343966
【氏名又は名称】スライブ バイオサイエンス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【弁理士】
【氏名又は名称】大塩 竹志
(72)【発明者】
【氏名】ブランチャード, アラン
【審査官】 小倉 梢
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/010449(WO,A1)
【文献】 特開平02−171866(JP,A)
【文献】 特表2009−511998(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 3/00 − 3/10
C12M 1/00 − 1/42
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
WPIDS/WPIX(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の細胞培養容器内における細胞のインキュベーションのための内部チャンバを含むインキュベータキャビネットと、
第1の撮像場所を含むホログラフィックイメージャであって、前記1つ以上の細胞培養容器が前記第1の撮像場所にあるとき、前記内部チャンバ内の前記細胞を撮像するように構成されたホログラフィックイメージャと、
前記1つ以上の細胞培養容器を貯蔵するための前記内部チャンバ内の貯蔵場所と、
前記1つ以上の細胞培養容器を前記第1の撮像場所から前記貯蔵場所へ、又は前記貯蔵場所から前記第1の撮像場所へ移動させるための細胞培養容器移動デバイスと
前記細胞培養容器移動デバイスおよび前記イメージャを制御するためのデバイスコントローラであって、前記デバイスコントローラが、画像情報を処理し、環境条件が変更された場合、前記処理された画像情報に基づき制御信号を生成するように構成されており、前記コントローラが、分析のために培養中の細胞の画像の3次元スタックを取得するように構成されており、前記画像の3次元スタックにおける画像が、異なる焦点面にあり、前記コントローラが、異なる焦点面のサブ画像を合成することによって完全な画像を作成するように構成されている、デバイスコントローラと
を含む、細胞培養インキュベータ。
【請求項2】
前記コントローラが、パッシブオートフォーカスを使用して、機械的移動のない焦点面を選択するように構成されている、請求項1に記載のインキュベータ。
【請求項3】
前記コントローラが、懸濁細胞間の形状の相違を分析して、懸濁細胞の動きにより生じる焦点ぼけの影響を補償するように構成されている、請求項1又は2に記載のインキュベータ。
【請求項4】
前記コントローラが、干渉縞を記録して、数値的な再生アルゴリズムを用いて分析のための画像を再生するように構成されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載のインキュベータ。
【請求項5】
前記コントローラが、8ビット以上のグレースケール解像度を有する整数の2次元アレイとして干渉縞をデジタル化するように構成されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載のインキュベータ。
【請求項6】
第2の撮像場所を含む第2のイメージャを更に含み、前記第2のイメージャは、前記1つ以上の細胞培養容器が前記第2の撮像場所にあるとき、前記内部チャンバ内の前記細胞を撮像するように構成されており、任意選択的に、前記第2のイメージャは顕微鏡である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のインキュベータ。
【請求項7】
前記細胞培養容器移動デバイスは、前記1つ以上の細胞培養容器を前記第1の撮像場所から前記第2の撮像場所へ、又は前記第2の撮像場所から前記第1の撮像場所へ移動させるように構成されている、請求項6に記載のインキュベータ。
【請求項8】
1つ以上の細胞培養容器が前記第1の撮像場所から前記第2の撮像場所へ、又は前記第2の撮像場所から前記第1の撮像場所へ移動されると、前記第1の撮像場所における撮像領域と前記第2の撮像場所における撮像領域とが実質的に位置合わせされるように構成されている、請求項7に記載のインキュベータ。
【請求項9】
1つ以上の細胞培養容器内における細胞のインキュベーションのための内部チャンバを含むインキュベータキャビネットと、
前記内部チャンバ内の前記1つ以上の細胞培養容器を移動させるための細胞培養容器移動デバイスと、
前記1つ以上の細胞培養容器を貯蔵するための前記内部チャンバ内の貯蔵場所と、
位相差イメージャと、
第2のイメージャと
前記細胞培養容器移動デバイスおよび前記イメージャを制御するためのデバイスコントローラであって、前記デバイスコントローラが、画像情報を処理し、環境条件が変更された場合、前記処理された画像情報に基づき制御信号を生成するように構成されており、前記コントローラが、分析のために培養中の細胞の画像の3次元スタックを取得するように構成されており、前記画像の3次元スタックにおける画像が、異なる焦点面にあり、前記コントローラが、異なる焦点面のサブ画像を合成することによって完全な画像を作成するように構成されている、デバイスコントローラと
を含み、
前記位相差イメージャ及び前記第2のイメージャは、前記内部チャンバ内の前記細胞を撮像するように構成されている、細胞培養インキュベータ。
【請求項10】
前記コントローラが、8ビット以上のグレースケール解像度を有する整数の2次元アレイとして干渉縞をデジタル化するように構成されている、請求項9に記載のインキュベータ。
【請求項11】
前記位相差イメージャの撮像領域と前記第2のイメージャの撮像領域とは実質的に位置合わせされる、請求項9又は10に記載のインキュベータ。
【請求項12】
前記コントローラが、パッシブオートフォーカスを使用して、機械的移動のない焦点面を選択するように構成されている、請求項9〜11のいずれか一項に記載のインキュベータ。
【請求項13】
前記コントローラが、干渉縞を記録して、数値的な再生アルゴリズムを用いて分析のための画像を再生するように構成されている、請求項12に記載のインキュベータ。
【請求項14】
前記コントローラが、懸濁細胞間の形状の相違を分析して、懸濁細胞の動きにより生じる焦点ぼけの影響を補償するように構成されている、請求項9〜13のいずれか一項に記載のインキュベータ。
【請求項15】
前記細胞培養容器が、バーコードデータをコードするバーコードを含み、前記インキュベータが、前記バーコードを読み取るためのバーコードリーダを含み、前記コントローラが、前記バーコードデータを受信して、前記バーコードデータに少なくとも部分的に基づいてシステムプロトコールを選択して、対応する細胞培養容器における細胞に対して行われる操作を決定する、請求項4又は14に記載のインキュベータ。
【請求項16】
前記イメージャは、1つ又は複数の細胞にデジタルマーキングするように構成されている、請求項1〜15のいずれか一項に記載のインキュベータ。
【請求項17】
前記インキュベータは複数のワークステーションを含み、各ワークステーションは、1つ又は複数の細胞にデジタルマーキングするように構成されたイメージャを含む、請求項16に記載のインキュベータ。
【請求項18】
1つ以上の細胞培養容器内における細胞のインキュベーションのための内部チャンバを含むインキュベータキャビネットと、
第1の撮像場所を含む位相差イメージャであって、前記1つ以上の細胞培養容器が前記第1の撮像場所にあるとき、前記内部チャンバ内の前記細胞を撮像するように構成された位相差イメージャと、
前記1つ以上の細胞培養容器を貯蔵するための前記内部チャンバ内の貯蔵場所と、
前記1つ以上の細胞培養容器を前記第1の撮像場所から前記貯蔵場所へ、又は前記貯蔵場所から前記第1の撮像場所へ移動させるための細胞培養容器移動デバイスと
前記細胞培養容器移動デバイスおよび前記イメージャを制御するためのデバイスコントローラであって、前記デバイスコントローラが、画像情報を処理し、環境条件が変更された場合、前記処理された画像情報に基づき制御信号を生成するように構成されており、前記コントローラが、分析のために培養中の細胞の画像の3次元スタックを取得するように構成されており、前記画像の3次元スタックにおける画像が、異なる焦点面にあり、前記コントローラが、異なる焦点面のサブ画像を合成することによって完全な画像を作成するように構成されている、デバイスコントローラと
を含む、細胞培養インキュベータ。
【請求項19】
前記コントローラが、パッシブオートフォーカスを使用して、機械的移動のない焦点面を選択するように構成されている、請求項18に記載のインキュベータ。
【請求項20】
前記コントローラが、懸濁細胞間の形状の相違を分析して、懸濁細胞の動きにより生じる焦点ぼけの影響を補償するように構成されている、請求項18又は19に記載のインキュベータ。
【請求項21】
前記コントローラが、干渉縞を記録して、数値的な再生アルゴリズムを用いて分析のための画像を再生するように構成されている、請求項18〜20のいずれか一項に記載のインキュベータ。
【請求項22】
前記細胞培養容器が、バーコードデータをコードするバーコードを含み、前記インキュベータが、前記バーコードを読み取るためのバーコードリーダを含み、前記コントローラが、前記バーコードデータを受信して、前記バーコードデータに少なくとも部分的に基づいてシステムプロトコールを選択して、対応する細胞培養容器における細胞に対して行われる操作を決定する、請求項18〜21のいずれか一項に記載のインキュベータ。
【請求項23】
前記コントローラが、8ビット以上のグレースケール解像度を有する整数の2次元アレイとして干渉縞をデジタル化するように構成されている、請求項18〜22のいずれか一項に記載のインキュベータ。
【請求項24】
第2の撮像場所を含む第2のイメージャを更に含み、前記第2のイメージャは、前記1つ以上の細胞培養容器が前記第2の撮像場所にあるとき、前記内部チャンバ内の前記細胞を撮像するように構成されている、請求項18〜23のいずれか一項に記載のインキュベータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、米国特許法第119条(e)の下で、2015年3月31日に出願された「Cell Culture Incubators With Integrated Imaging Systems」という名称の米国特許仮出願第62/141,187号明細書の利益を主張し、この特許出願は、その内容全体が参照により本明細書中に組み込まれる。
【0002】
態様は、細胞培養インキュベータ及びこのようなインキュベータを使用するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
細胞培養は研究及び臨床的状況の両方において有用な手法である。しかしながら、現在入手可能な細胞インキュベータでの細胞培養物(例えば、長期培養物、組織標本、インビトロ受精標本等)の維持は、高度に訓練された要員及び厳重な無菌条件を要する困難なプロセスである。この高度の人の関与は、培養物に汚染物質を導入し、それにより培養の有効性が低下する可能性がある。更に、多くの場合、長期培養物の細胞増殖、生存率及び/又は健康を監視する必要があり、これを従来のインキュベータにおいて非侵襲的に且つ効果的に実施することは困難である。したがって、人の関与を最小限にした長期培養システムを提供する新たな種類の細胞培養インキュベータが必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書は、組み込み式撮像デバイスを有する細胞培養インキュベータを提供する。いくつかの実施形態では、細胞培養中、インキュベータ内の生物学的細胞又は組織を非侵襲的に定量化及び可視化することができるホログラフィック顕微鏡イメージャが本明細書中に記載される。いくつかの実施形態では、本明細書は、位相差イメージャ(例えば、位相差顕微鏡)を有する細胞培養インキュベータを提供する。
【0005】
本明細書は、1つ以上の細胞培養容器内における細胞のインキュベーションのための内部チャンバと、内部チャンバ内の細胞を撮像するように構成された1つ以上のイメージャ(例えば、ホログラフィックイメージャ)とを有するインキュベータキャビネットを含む細胞培養インキュベータに関する。いくつかの実施形態では、ホログラフィックイメージャは第1の撮像場所を含む。いくつかの実施形態では、内部チャンバは、1つ以上の細胞培養容器(例えば、フラスコ、懸濁培養フラスコ、スピナーフラスコ、プレート、ペトリ皿、及び袋)及び/又は他の物品(例えば、細胞操作に必要な使い捨て供給品などの1つ以上の供給品、例えば、ピペット先端部)を保持するように構成されている。いくつかの実施形態では、インキュベータは外部環境から内部チャンバへと開く外部扉を含み得る。いくつかの実施形態では、1つ以上の細胞培養容器を貯蔵するための貯蔵場所が内部チャンバ内に設けられている。いくつかの実施形態では、インキュベータは、1つ以上の細胞培養容器を第1の撮像場所から貯蔵場所へ、又は貯蔵場所から第1の撮像場所へ移動させるための細胞培養容器移動デバイスを含み得る。ある実施形態では、ホログラフィックイメージャはホログラフィック顕微鏡である。いくつかの実施形態では、細胞培養容器移動デバイスは1つ以上のロボット要素を含む。ある実施形態では、インキュベータは細胞培養容器移動デバイスのコントローラを更に含む。いくつかの実施形態では、コントローラはインキュベータキャビネットの外部に配置されている。ある実施形態では、コントローラはコンピュータを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の細胞培養容器は、ホログラフィックイメージャとの1つ以上の細胞培養容器の位置合わせを容易にするための1つ以上の基準マークを有する。
【0006】
いくつかの実施形態では、インキュベータは、第2の撮像場所を含む第2のイメージャを更に含み、第2のイメージャは、1つ以上の細胞培養容器が第2の撮像場所にあるとき、内部チャンバ内の細胞を撮像するように構成されている。いくつかの実施形態では、第2のイメージャは顕微鏡である。ある実施形態では、細胞培養容器移動デバイスは、1つ以上の細胞培養容器を第1の撮像場所から第2の撮像場所へ、又は第2の撮像場所から第1の撮像場所へ移動させるように構成されている。いくつかの実施形態では、1つ以上の細胞培養容器が第1の撮像場所から第2の撮像場所へ、又は第2の撮像場所から第1の撮像場所へ移動されると、第1の撮像場所における撮像領域と第2の撮像場所における撮像領域とが実質的に位置合わせされる。
【0007】
本明細書の態様は、1つ以上の細胞培養容器内における細胞のインキュベーションのための内部チャンバを有し、内部チャンバは、1つ以上の細胞培養容器を保持するように構成されたインキュベータキャビネットを含み、且つホログラフィックイメージャ及び第2のイメージャを更に含み、ホログラフィックイメージャ及び第2のイメージャは、1つ以上の細胞培養容器が撮像場所にあるとき、内部チャンバ内の細胞を撮像するように構成されている、細胞培養インキュベータに関する。いくつかの実施形態では、インキュベータは、内部チャンバ内の1つ以上の細胞培養容器を(例えば、2つのイメージャ間で)移動させるための細胞培養容器移動デバイスを含み得る。いくつかの実施形態では、1つ以上の細胞培養容器を貯蔵するための貯蔵場所が内部チャンバ内に設けられている。いくつかの実施形態では、ホログラフィックイメージャはホログラフィック顕微鏡である。いくつかの実施形態では、ホログラフィックイメージャの撮像領域と第2のイメージャの撮像領域とは実質的に位置合わせされる。いくつかの実施形態では、インキュベータは、1つ以上の細胞培養容器が維持され得る場所を更に含む。いくつかの実施形態では、細胞培養容器移動デバイスは、1つ以上の細胞培養容器を撮像場所、維持場所、及び貯蔵場所間で移動させるように構成されている。いくつかの実施形態では、インキュベータは細胞培養容器移動デバイスのコントローラを更に含む。ある実施形態では、コントローラはインキュベータキャビネットの外部に配置されている。いくつかの実施形態では、コントローラはコンピュータを含む。
【0008】
添付の図面は一定の縮尺率で描かれるものではない。図面では、種々の図に示されるそれぞれ同一の又はほぼ同一の構成要素は同じ番号で表される場合がある。明確化のため、全ての図の全ての構成要素に符号が付されるわけではない。ここで、例として、添付の図面を参照して本発明の種々の実施形態を記載する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】組み込み式撮像システムを有する自動細胞培養インキュベータの概略図である。
図2】コンピュータワークステーションを含む、組み込み式撮像システムを有する自動細胞培養インキュベータの概略図である。
図3】組み込み式撮像システム及び環境制御システムを有する自動細胞培養インキュベータの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
いくつかの態様によれば、本明細書は、組み込み式撮像デバイスを有する細胞培養インキュベータを提供する。特に、細胞培養中、自動インキュベータ内の生物学的細胞又は組織を非侵襲的に定量化及び可視化することができるホログラフィック顕微鏡イメージャが本明細書中に記載される。本明細書の特定の態様は、インキュベータ、並びに顕微鏡法による滅菌環境中の細胞の監視及び分析を可能にする制御された条件下で(例えば、無菌条件及び/又は滅菌条件下で)細胞を培養、操作及び/又は監視するための方法に関する。一部の態様では、インキュベータ及び方法は自動化された構成要素を含む。一部の態様では、インキュベータ及び方法は、長期の細胞培養(例えば、組換えタンパク質発現のために細胞を増殖及び維持するため、又は移植などの治療的用途のために細胞を増殖及び/若しくは分化するため)に有用である。いくつかの実施形態では、細胞培養物は、本明細書中に記載されるインキュベータ内の培養容器内で増殖させる。
【0011】
一態様によれば、細胞培養インキュベータは、撮像場所及び貯蔵場所を有するインキュベータキャビネットを含む。いくつかの実施形態では、撮像場所と貯蔵場所とは、インキュベータキャビネット内の2つの異なる場所である。インキュベータは、細胞培養容器を撮像場所と貯蔵場所との間で移動させる移動デバイスを含んでもよい。他の実施形態では、細胞培養容器が貯蔵場所において撮像されるように、撮像場所と貯蔵場所とは同一である。
【0012】
撮像場所は、イメージャが1つ以上の細胞を撮像する場所である。例えば、撮像場所は、光源の上方に及び/又は1つ以上の光学素子(例えば、レンズ、アパーチャ、ミラー、対物レンズ、及び光コレクタ)と垂直に位置合わせされて配置されてもよい。
【0013】
貯蔵場所は、複数の細胞培養容器を貯蔵するように構成してもよい。例えば、貯蔵場所は、1つ以上の貯蔵アレイ、ラック、棚、仕切り、分類棚、トレー、スロット、又は他の位置若しくは機構を含んでもよい。いくつかの実施形態では、貯蔵場所は細胞培養容器を水平に貯蔵するように構成されてもよい一方、他の実施形態では、貯蔵場所は細胞培養容器を垂直に貯蔵するように構成されてもよい。例えば、貯蔵場所は、互いに垂直に積み重ねられた細胞培養容器を受け入れるための複数のスロットを含んでもよい。貯蔵場所は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、100個、又は任意の他の個数の細胞培養容器を保持するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、貯蔵場所は、100個超の細胞培養容器を保持するように構成されてもよい。
【0014】
貯蔵場所は、1つ以上の細胞培養容器を確実に保持するか又は受け入れるように構成されてもよい。例えば、貯蔵場所の1つ以上の構成要素は、1つ以上の粘着的、磁気的、電気的及び/又は機械的構成要素(例えば、スナップ、締結具、ロック、止め金、ガスケット、Oリング、セプタ、ばね、及び他の係合部材)を有する1つ以上のロック機構を含んでもよい。いくつかの実施形態では、貯蔵場所及び/又は細胞培養容器は、1つ以上の溝若しくは凹部を含んでもよく、及び/又は成形プラスチック部品を含んでもよい。例えば、細胞培養容器は、貯蔵場所にある1つ以上の対応する溝、穴、又は凹部に挿入するための成形された1つ以上の突出特徴部(例えば、リム又はノブ)を含んでもよい。いくつかの場合、細胞培養容器は、貯蔵場所にある1つ以上の対応する突出特徴部に適合するように成形された1つ以上の溝、穴、又は凹部を含んでもよい。
【0015】
細胞培養インキュベータは、細胞を撮像するための1つ以上のイメージャを含んでもよい。いくつかの実施形態では、本明細書中に記載されるインキュベータキャビネットは、顕微鏡、又は細胞増殖、細胞の生存率若しくは他の側面を監視するための他のイメージャを備えて構成されている。いくつかの実施形態では、顕微鏡又はイメージャは、画像ベースの表現型スクリーニング又はアッセイなど、インキュベータキャビネット内で実施されるアッセイとともに使用される。ある実施形態では、イメージャは、1つ以上のレンズ、ファイバー、カメラ(例えば、電荷結合デバイスカメラ)、アパーチャ、ミラー、光源(例えば、レーザー又はランプ)、又は他の光学素子を含む。イメージャは顕微鏡であってもよい。いくつかの実施形態では、イメージャは明視野顕微鏡である。他の実施形態では、イメージャはホログラフィックイメージャ又は顕微鏡である。他の実施形態では、イメージャは位相差顕微鏡である。他の実施形態では、イメージャは蛍光イメージャ又は顕微鏡である。
【0016】
本明細書で使用する場合、蛍光イメージャは、細胞又は他の生物学的実体の表面内又は表面上のいずれかに存在する蛍光標識から放出される光を検出することができるイメージャであり、前記標識は、異なる特定の励起波長の光を吸収すると特定の波長の光を放出する。
【0017】
本明細書で使用する場合、「明視野顕微鏡」は、サンプルを照明し、サンプルによって吸収される光に基づいて画像を生成するイメージャである。任意の適切な明視野顕微鏡を、本明細書中に記載されるインキュベータと併せて使用してもよい。
【0018】
本明細書で使用する場合、「位相差顕微鏡」は、透明標本を通過する光の位相ずれを画像の明るさの変化に変換するイメージャである。位相ずれ自体を見ることはできないが、明るさの変化として示される場合には見えるようになる。任意の適切な位相差顕微鏡本明細書中に記載されるインキュベータと併せて使用してもよい。
【0019】
本明細書で使用する場合、「ホログラフィックイメージャ」は、電磁放射の強度及び位相情報(例えば、波面)の両方を測定することによって物体(例えば、サンプル)に関する情報を提供するイメージャである。例えば、ホログラフィック顕微鏡は、サンプルを通過後に伝送される光と、サンプルを透過する光のビームを基準ビームと組み合わせることにより得られる干渉縞(例えば、位相情報)との両方を測定する。
【0020】
ホログラフィックイメージャは、また、別個の基準ビームを妨げることなく、且つ実質的にコヒーレントな源と1つ又は複数の放射線検出器との間に任意の屈折又は反射光学素子を有して又は有さずに、1つ以上の放射線検出器により、撮像される物体によって直接回折又は散乱した、実質的にコヒーレントな源からの電磁放射のパターンを記録するデバイスであってもよい。
【0021】
いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットは1つのイメージャを含む。いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットは2つのイメージャを含む。いくつかの実施形態では、2つのイメージャは同一種類のイメージャ(例えば、2つのホログラフィックイメージャ、2つの位相差顕微鏡、又は2つの明視野顕微鏡)である。いくつかの実施形態では、第1のイメージャは明視野顕微鏡であり、第2のイメージャはホログラフィックイメージャである。いくつかの実施形態では、第1のイメージャは位相差顕微鏡であり、第2のイメージャはホログラフィックイメージャである。いくつかの実施形態では、第1のイメージャは位相差顕微鏡であり、第2のイメージャは明視野顕微鏡である。いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットは3つ以上のイメージャを含む。いくつかの実施形態では、細胞培養インキュベータは3つのイメージャを含む。いくつかの実施形態では、3つのイメージャを有する細胞培養インキュベータは、ホログラフィック顕微鏡、明視野顕微鏡、及び蛍光顕微鏡を含む。いくつかの実施形態では、3つのイメージャを有する細胞培養インキュベータは、ホログラフィック顕微鏡、位相差顕微鏡、及び蛍光顕微鏡を含む。
【0022】
本明細書で使用する場合、「撮像場所」は、イメージャが1つ以上の細胞を撮像する場所である。例えば、撮像場所は、光源の上方に及び/又は1つ以上の光学素子(例えば、レンズ、アパーチャ、ミラー、対物レンズ、及び光コレクタ)と垂直に位置合わせされて配置されてもよい。
【0023】
ホログラフィック顕微鏡法
いくつかの実施形態では、ホログラフィック顕微鏡法は、インキュベータ内(例えば、本明細書中に記載されるインキュベータの内部チャンバ内)における培養(例えば、長期培養)中、分析(例えば、細胞計数)のために細胞の画像(例えば、3次元顕微鏡画像の集合体)を取得するために使用される。いくつかの実施形態では、ホログラフィック画像は、物体から散乱した光源からの明視野を使用することにより生成され、それが記録及び再生される。いくつかの実施形態では、物体に関連する種々の特徴について再生像を分析することができる。いくつかの実施形態では、本明細書中に記載される方法は、細胞の非侵襲的な標識を用いない迅速な全域分析(full−field analysis)を可能にし、生細胞の高解像度多焦点の3次元表現をリアルタイムで生成するホログラフィ干渉測定法を含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、ホログラフィは、光を2つの等しいビーム、参照ビームと照明ビームとに分割するビームスプリッタを介してコヒーレント光ビームを照射することを含む。いくつかの実施形態では、参照ビームは、多くの場合、ミラーの使用により、観察される物体に接触することなく記録デバイスに直接照射するように方向転換される。いくつかの実施形態では、照明ビームも、照明ビームが物体を照明し、光を散乱させるように、ミラーを使用して方向付けされる。いくつかの実施形態では、散乱光の一部は、次いで記録デバイス上に反射される。いくつかの実施形態では、レーザーは一定の波長を有しており正確に制御できることから、レーザーが光源として一般に使用される。いくつかの実施形態では、明瞭な画像を得るために、ホログラフィック顕微鏡法は、多くの場合、あらゆる干渉を防止するためにレーザーの波長と異なる波長の暗い又は微弱な光において行われる。いくつかの実施形態では、2つのビームは記録デバイスに到達して、そこで互いに交差し、干渉する。いくつかの実施形態では、干渉縞は記録され、後に原画像を再生するために使用される。いくつかの実施形態では、生じる画像は、依然として存在するかのように様々な異なる角度から精査することができ、より深い分析及び情報の取得を可能にする。
【0025】
いくつかの実施形態では、本明細書中に記載されるインキュベータにおいて、デジタルホログラフィック顕微鏡法が使用される。いくつかの実施形態では、デジタルホログラフィック顕微鏡法による物体からの光波面情報がホログラムとしてデジタル記録され、ホログラムは、次いでコンピュータにより数値的な再生アルゴリズムを用いて分析される。いくつかの実施形態では、コンピュータアルゴリズムは従来の顕微鏡法の画像形成レンズを代替してもよい。物体の波面は物体ビームによる物体の照明によって生成される。いくつかの実施形態では、物体の波面を顕微鏡対物レンズが収集し、そこで2つの波面が互いに干渉し、ホログラムを生成する。次いで、デジタル記録されたホログラムはインターフェース(例えば、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、シリアル)を介してPCベースの数値的な再生アルゴリズムへ送られ、任意の面に物体の視認可能な画像を生成する。
【0026】
いくつかの実施形態では、デジタルホログラフィック顕微鏡画像を得るために特定の材料が利用される。いくつかの実施形態では、本明細書中に記載されるような照明源、一般にレーザーが使用される。いくつかの実施形態では、反射性の物体に対してマイケルソン干渉計が使用される。いくつかの実施形態では、透過性のある物体に対してマッハツェンダー干渉計が使用される。いくつかの実施形態では、干渉計は、参照及び物体強度比(reference and object intensity ratio)を制御するために、異なるアパーチャ、減衰器、及び偏光光学系を含むことができる。いくつかの実施形態では、画像は、その後、ホログラフィック干渉縞をデジタル化するデジタルカメラによって捕捉される。いくつかの実施形態では、画素サイズは画像解像度に影響するため、画素サイズは管理すべき重要なパラメータである。いくつかの実施形態では、干渉縞はカメラによってデジタル化され、その後、8ビット以上のグレースケール解像度を有する整数の2次元アレイとしてコンピュータに送信される。いくつかの実施形態では、コンピュータの再生アルゴリズムは、その後、画像の前処理及び後処理に加え、ホログラフィック画像を計算する。
【0027】
位相シフト画像
いくつかの実施形態では、明視野像の発生に加え、位相シフト画像が生じる。物体のトポグラフィー画像である位相シフト画像は、光学距離に関する情報を含む。いくつかの実施形態では、位相シフト画像は、明視野像を歪めることなく、生存生物学的細胞などの透明な物体に関する情報を提供する。いくつかの実施形態では、デジタルホログラフィック顕微鏡法は、歪みなく明視野画像及び位相差画像の両方を生成することを可能にする。また、デジタルホログラフィック顕微鏡法により、透明な物体の可視化及び定量化の両方を標識化なしで可能にする。いくつかの実施形態では、デジタルホログラフィック顕微鏡法による位相シフト画像はセグメント化し、数理形態学を用いた画像分析ソフトウェアによって分析することができる一方、生存未染色生物学的細胞の従来の位相差又は明視野像は、多くの場合、画像分析ソフトウェアによって効果的に分析することができない。
【0028】
いくつかの実施形態では、ホログラムは、全画像スタックの計算に関係する情報を全て含む。いくつかの実施形態では、物体の波面は種々の角度から記録されるため、物体の光学的特徴を特徴付けることができ、物体のトモグラフィー画像をレンダリングすることができる。完全な画像スタックから、パッシブオートフォーカス法を用いて焦点面を選択し、何らの垂直の機械的移動なしに迅速な表面の走査及び撮像を可能にすることができる。更に、異なる焦点面のサブ画像を合成することによって物体の全焦点画像を作成することができる。いくつかの実施形態では、従来の顕微鏡法において画像形成レンズにより発生する可能性のあるあらゆる光学収差をデジタル再生アルゴリズムが補正する。いくつかの実施形態では、デジタルホログラフィック顕微鏡法は、有利には、複雑なレンズのセットを必要とすることなく、むしろ安価な光学系のみを必要とし、良好な焦点画像を得るために半導体部品を使用し、従来の顕微鏡法のツールに比べて比較的低コストにする。
【0029】
用途
いくつかの実施形態では、ホログラフィック顕微鏡法を用いて、細胞、特に生細胞の複数のパラメータを同時に分析することができる。いくつかの実施形態では、ホログラフィック顕微鏡法を用いて、生細胞(例えば、薬物、電気又は熱刺激に関連する刺激による形態変化への応答)を分析し、細胞を分類し、細胞の健康を監視することができる。いくつかの実施形態では、デジタルホログラフィック顕微鏡法において細胞を計数し、細胞の標識化なしに細胞培養プレートから直接細胞生存率を測定する。他の実施形態では、アポトーシスプロセスに関連する屈折率変化をデジタルホログラフィック顕微鏡法により定量することができるため、イメージャを用いて種々の細胞タイプのアポトーシスを調べることができる。いくつかの実施形態では、デジタルホログラフィック顕微鏡法は細胞周期及び相変化に関する研究において用いられる。いくつかの実施形態では、他の非限定的な測定パラメータ(例えば、細胞体積及び屈折率)に加え、乾燥細胞集団(細胞によって誘起される位相シフトと相関し得る)を用いて、主要ポイントにおける細胞周期に関するより多くの情報を提供することができる。
【0030】
いくつかの実施形態では、この方法は、標識化又は染色なしで種々の細胞の形態を調べるためにも使用される。いくつかの実施形態では、デジタルホログラフィック顕微鏡法は細胞分化プロセスを調べるために使用することができ、種々のタイプの幹細胞間をそれらの異なる形態学的特徴によって識別するための情報を提供する。いくつかの実施形態では、デジタルホログラフィック顕微鏡法において標識化を必要としないことから、種々のプロセスをリアルタイムで調べることができる(例えば、細胞不均衡による神経細胞の変化)。いくつかの実施形態では、例えば、デジタルホログラフィック顕微鏡法の吸収及び位相シフト画像の使用によって細胞体積及び濃度を定量してもよい。いくつかの実施形態では、位相シフト画像を用いて、未染色の細胞計数を提供してもよい。いくつかの実施形態では、ホログラフィック顕微鏡法を用いて懸濁細胞を計数、監視及び分析してもよい。
【0031】
いくつかの実施形態では、画像取得間の時間間隔は画像記録センサの性能に影響される。いくつかの実施形態では、デジタルホログラフィック顕微鏡法は生細胞の経時的分析に用いられる。例えば、懸濁細胞間の形状の相違の分析を、デジタルホログラフィック画像を用いて監視し、懸濁液中における動きにより生じる焦点ぼけの影響を補償することができる。いくつかの実施形態では、表面との接触の直前及び直後に画像を取得することで、細胞形状の明瞭な画像を可能にする。いくつかの実施形態では、位相差画像及び細胞の積分屈折率を伴ういくつかの計算によって事象前及び事象後の細胞の厚みを特定することができる。位相差は異なる屈折率を有する画像の異なる部分に依存し、光が異なる遅延を伴ってサンプルの異なる領域を移動することとなる。位相差顕微鏡法などのいくつかの実施形態では、光の位相外れ成分が特定の領域を効果的に暗く及び明るくし、バックグラウンドに対する細胞のコントラストを増加させる。いくつかの実施形態では、デジタルホログラフィック顕微鏡法による経時的画像によって細胞分裂及び移動が調べられる。いくつかの実施形態では、デジタルホログラフィック顕微鏡法による静止画像又は経時的画像によって細胞死、即ちアポトーシスを調べてもよい。
【0032】
いくつかの実施形態では、デジタルホログラフィック顕微鏡法を、生組織内を含む細胞内の動きの標識化なしでの研究を含むがこれに限定されないトモグラフィーに使用することができる。
【0033】
いくつかの実施形態では、デジタルホログラフィック顕微鏡法は、標識化を伴わず、研究者が急速位相シフト画像(rapid phase shift images)を得ることを可能にし、研究者が特に細胞周期変化及び薬物の効果に関する細胞の微小且つ一過性の特性を研究することを可能にする。
【0034】
図を参照すると、図1は、ホログラフィック又は位相差イメージャ(102)を有する細胞培養インキュベータ(100)の1つの例証的実施形態を示す。細胞培養インキュベータは、1つ以上の細胞培養容器内の細胞のインキュベーションのための内部チャンバ(106)を有するインキュベータキャビネットを含む。内部チャンバは、貯蔵場所(101)において1つ以上の細胞培養容器を保持するように構成されている。インキュベータキャビネットは、開閉して、外部環境と内部チャンバとの間の連通を可能にする外部扉(105)を含む。いくつかの実施形態では、外部扉(105)は、開閉して、外部環境と内部チャンバ(106)との間の連通を可能にする。
【0035】
インキュベータキャビネットは、細胞が撮像され得る第1の撮像場所(104)を含む。細胞培養インキュベータは、第1の撮像場所104に配置された細胞培養容器の細胞を撮像するホログラフィックイメージャ又は位相差(102)を含む。一実施形態では、細胞培養インキュベータは、第1の撮像場所又は別の撮像場所にある細胞を撮像する第2のイメージャを含む。
【0036】
細胞培養インキュベータは、1つ以上の細胞培養容器を第1の撮像場所(104)と貯蔵場所(101)との間で移動させるための移動デバイス(103)を含む。いくつかの実施形態では、貯蔵場所は、撮像場所(104)へ回転させてもよい円形プラットフォーム上に取り付けられた「分類棚」又はネストを含む。第2のイメージャが存在する場合、移動デバイス(103)は、1つ以上の細胞培養容器を貯蔵場所(101)と異なる撮像場所との間で移動させるために使用され得る。
【0037】
図2は、ホログラフィック又は位相差イメージャ(202)及び外部のコンピュータステーション(208)を有する細胞培養インキュベータ(200)の別の例証的実施形態を示す。上述のように、細胞培養インキュベータは、1つ以上の細胞培養容器内の細胞のインキュベーションのための内部チャンバ(206)を有するインキュベータキャビネットを含み、内部チャンバ(206)は貯蔵場所(201)において1つ以上の細胞培養容器を保持するように構成されている。インキュベータキャビネットは、開閉して、外部環境と内部チャンバとの間の連通を可能にする外部扉(205)を含む。インキュベータキャビネットは、細胞が撮像され得る第1の撮像場所(204)を含む。移動デバイス(203)を使用して1つ以上の細胞培養容器を貯蔵場所(201)と第1の撮像場所(204)との間で往復移動させることにより、ホログラフィック又は位相差イメージャ(202)を用いて細胞を長期にわたり監視することができる(例えば、長期培養中)。ホログラフィック又は位相差イメージャ(202)を用いて細胞の画像を取得することができる。ホログラフィック又は位相差イメージャ(202)からの画像情報は、通信回線(209)を介して外部のコンピュータステーション(208)に伝送され得る。
【0038】
コンピュータ(207)にディスプレイが提供されており、例えば、ディスプレイ上に画像を描出することによってユーザが培養物を外部から監視することを可能にする。いくつかの場合、画像は、コンピュータ(207)により実施される画像処理及び分析技術を使用して自動的に保存、処理及び分析し、細胞増殖、成長、生存率、健康、分化状態、又は他のパラメータに関する定量的情報を生成することができる。この定量的情報を用いて長期培養物を評価することができ、細胞の健康又は他の所望の条件を確実とすることができる。この情報は、画像とともに、タイムスタンプ及びセンサ出力などの他の取得データとの相関を可能にする状態で保存することができる。保存は、データベース内又はファイルシステム内とすることができる。保存は、選択した画像又は取得した各画像の全履歴を含み得る。この例証的実施形態では、ホログラフィック又は位相差イメージャ(202)とコンピュータ(207)との間で画像情報を送信するための通信回線(209)が示されるが、固定通信回線を全ての場合に使用する必要はない。例えば、いくつかの実施形態では、ホログラフィック又は位相差イメージャ(202)とコンピュータ(207)との間において無線で(例えば、Bluetooth(登録商標)技術、WIFI、又は他の無線通信手段を使用して)情報を通信することができる。同様に、ホログラフィック又は位相差イメージャ(202)からの画像が分析又は観察されるコンピュータは、インキュベータに近接している必要はない。例えば、コンピュータは別の部屋、別の建物、又は離れた場所にあり得る。このような場合、情報は、無線ネットワーク、ローカルネットワーク、インターネット、又は他の適切な手段により、ホログラフィック又は位相差イメージャ(202)とコンピュータ(207)との間で送ることができる。
【0039】
図3は、ホログラフィック又は位相差イメージャ(302)と、制御及び監視ステーション(307)と、環境制御ステーション(308)とを有する細胞培養インキュベータ(300)の別の例証的実施形態を示す。上述のように、細胞培養インキュベータは、1つ以上の細胞培養容器内の細胞のインキュベーションのための内部チャンバ(306)を有するインキュベータキャビネットを含み、内部チャンバは貯蔵場所(301)において1つ以上の細胞培養容器を保持するように構成されている。インキュベータキャビネットは、開閉して、外部環境と内部チャンバとの間の連通を可能にする外部扉(305)を含む。インキュベータキャビネットは、細胞が撮像され得る第1の撮像場所(304)を含む。ここでは同じく、移動デバイス(303)を使用して1つ以上の細胞培養容器を貯蔵場所(301)と第1の撮像場所(304)との間で往復移動させることにより、ホログラフィック又は位相差イメージャ(302)を用いて細胞を長期にわたり監視することができる(例えば、長期培養中)。ホログラフィック又は位相差イメージャ(302)を用いて細胞の画像を取得することができる。ホログラフィック又は位相差イメージャ(302)からの画像情報は、通信回線(311)を介して外部の制御及び監視ステーション(307)に伝送され得る。
【0040】
細胞増殖の維持に関連する環境条件(これは、温度、CO、O、湿度、又は他の関連パラメータを含んでもよい)を測定するための1つ以上のセンサを含むセンサパネル(309)が提供される。センサと制御及び監視ステーション(307)との間で情報を移送するためのセンサ通信回線(310)が提供される。制御及び監視ステーションは、センサパネル309からの入カに応答して、環境制御ステーション(308)に対する1つ以上の制御出力を生成してもよいコントローラを含む。例えば、1つ以上の環境パラメータが所望の設定値外であるという信号をセンサパネルからコントローラが受信した場合、コントローラは適切な信号を環境制御ステーション(308)に送信することができ、これに応答して、環境制御ステーション(308)は適切な流体供給ライン(314〜316)の動作を制御し、適切なガス若しくは流体又は他の媒体を内部チャンバに導入し、環境条件を所望の状態に回復することができる。
【0041】
更に特定の例では、コントローラは、COレベルが所望の設定値未満(例えば、5%CO未満であるという信号をセンサパネルから受信してもよい。この信号に応答して、コントローラは適切な信号を環境制御ステーション(308)に送信することができ、これに応答して、環境制御ステーション(308)はCO供給ライン(314)の動作を制御することができる。CO供給ライン(314)は内部チャンバにCOを導入し、COを所望の設定値に回復することができる。別の例では、コントローラは、湿度レベルが所望の設定値未満(例えば、湿度80%未満)であるという信号をセンサパネルから受信してもよい。この信号に応答して、コントローラは環境制御ステーション(308)に適切な信号を送信することができ、これに応答して、環境制御ステーション(308)は水蒸気供給ライン(315)の動作を制御することができる。水蒸気供給ラインは内部チャンバに水蒸気を導入し、湿度を所望の設定値に回復することができる。別の例では、コントローラは、インキュベータ温度が所望の設定値を上回る又は下回る(例えば、37℃を上回る又は下回る)という信号をセンサパネルから受信してもよい。この信号に応答して、コントローラは、ヒータ制御ライン(312)を介してインキュベータのジャケットヒータに適切な信号を送信することができ、これに応答して、インキュベータのジャケットヒータはインキュベータ内の温度を上昇又は低下させるように適切に調整され、温度を所望の設定値に回復することができる。
【0042】
いくつかの実施形態では、ホログラフィック又は位相差イメージャ(302)を用いて細胞の画像を取得することができる。ホログラフィック又は位相差イメージャ(302)からの画像情報は、通信回線(311)を介して制御及び監視ステーション(307)に伝送され得る。制御及び監視ステーション(307)は、画像情報を処理し、処理された画像情報に基づいて適切な制御信号を生成するように構成されたコンピュータに取り付けることができる。このようにして、チャンバ内部の環境条件は、環境センサ(例えば、CO、湿度、又は温度センサ)からの情報だけではなく、又はその代わりに、環境条件を変更する必要を示す、自動インキュベータ内の細胞の撮像から得られた細胞増殖又は健康に関する情報に基づいて調整及び制御することができる。例えば、細胞は、周囲培地のpHが生理的に適切なレベル未満に低下すると、チャンバ内のCOレベルを調整する必要があることを示し得る、撮像によって検出することができる特徴の変化を呈する場合がある。特徴の変化は撮像によって検出することができ、環境制御ステーション(308)は動作して条件を回復することができる。
【0043】
細胞培養容器
本開示の態様は、インキュベータ、並びに制御された条件下で(例えば、無菌条件及び/又は滅菌条件下で)細胞を培養、操作及び/又は監視するための方法に関する。いくつかの実施形態では、細胞培養物は、本開示のインキュベータ内の培養容器内で増殖させる。本明細書で使用する場合、「細胞培養容器」は、ハウジングと、細胞を培養するための1つ以上のチャンバとを含むデバイスである。いくつかの実施形態では、ハウジングはフレームである。フレームは蓋に結合されていてもよい。1つ以上のチャンバは、1つ以上の膜を含む細胞培養培地を含んでもよい。いくつかの実施形態では、細胞培養容器は細胞の増殖を促進するための栄養素を含んでもよい。ある実施形態では、細胞培養容器は1つ以上の細胞又はその群を完全に密封してもよい。細胞培養容器のハウジングは、細胞培養容器とその周囲環境との間におけるガスの移動を可能にするための1つ以上の孔又は開口部を含んでもよい。ある実施形態では、細胞培養容器は、透明な又は光学的に透明な窓を含む。例えば、細胞培養容器のハウジングに結合された蓋は、例えば、顕微鏡又は他のイメージャによって細胞を観察するための光学的に透明な部分を含んでもよい。いくつかの実施形態では、細胞培養容器は、実質的に非反射性の1つ以上の部分を含む。
【0044】
細胞培養容器は、真核細胞又は原核細胞を含む異なる種類の細胞を培養するように構成されていてもよい。いくつかの実施形態では、細胞は、哺乳動物細胞(例えば、ヒト細胞、イヌ細胞、ウシ細胞、ヒツジ細胞、ネコ細胞、又はウサギ、マウス若しくはラット細胞などの齧歯類細胞)である。いくつかの実施形態では、細胞は、昆虫細胞、トリ細胞、微生物細胞(例えば、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、キラー酵母(Kluyveromyces lactis)若しくはメタノール資化酵母(Pichia pastoris)細胞などの酵母細胞、又は大腸菌(Escherichia coli)、枯草菌(Bacillus subtilis)、若しくはコリネバクテリウム細胞などの細菌細胞)、昆虫細胞(例えば、ショウジョウバエ細胞、又はSf9若しくはSf21細胞)、植物細胞(例えば、藻類細胞)、又は任意の他の種類の細胞である。
【0045】
いくつかの実施形態では、細胞培養容器は、特定の目的、例えば、細胞増殖、細胞分化、細胞を特定の検定条件に曝す等のために所望される1種以上の試薬を予めキット化してもよい。いくつかの実施形態では、予めキット化された細胞培養容器は、実験前に細胞培養において特定の実験を実施するために有用な(例えば、細胞増殖培地、増殖因子、選択剤、標識剤等)試薬を含む。予めキット化された細胞培養容器は、試薬の添加を必要としない細胞培養の準備が整った容器を提供することによって実験プロトコルを容易にしてもよい。例えば、自己細胞治療のために分化細胞の個体群を増殖する目的のため、細胞分化用の試薬が予めキット化された細胞培養容器に患者の前駆細胞を添加してもよい。予めキット化された細胞培養容器は、予めキット化された細胞培養容器内の試薬の推奨貯蔵パラメータによって決定される任意の適切な温度で貯蔵することができる。いくつかの実施形態では、予めキット化された細胞培養貯蔵容器は、使用前、約−80℃〜約37℃の温度で貯蔵されている。いくつかの実施形態では、予めキット化された細胞培養貯蔵容器は、使用前、約−80℃〜約−20℃の温度で貯蔵されている。いくつかの実施形態では、予めキット化された細胞培養貯蔵容器は、使用前、約−20℃〜約4℃の温度で貯蔵されている。いくつかの実施形態では、予めキット化された細胞培養貯蔵容器は、使用前、約4℃〜約37℃の温度で貯蔵されている。いくつかの実施形態では、予めキット化された細胞培養容器は使い捨てである。いくつかの実施形態では、予めキット化された細胞培養容器は再利用可能及び/又は再充填可能である。
【0046】
いくつかの実施形態では、細胞は、天然産物(例えば、タキソール、顔料、脂肪酸、バイオ燃料等)を生成するために培養される。いくつかの実施形態では、細胞を培養して組換え産物(例えば、抗体、ホルモン、増殖因子、又は他の治療用ペプチド若しくはタンパク質などの組換えタンパク質産物)を発現させる。いくつかの実施形態では、細胞は、対象の欠損した又は欠陥のある細胞、組織又は臓器機能を提供又は補完するために、対象(例えば、ヒト対象)への移植などの治療的使用のために増殖及び/又は分化される。
【0047】
いくつかの実施形態では、細胞は不死化細胞系である。細胞系の非限定的な例としては、ヒト細胞、例えば、HeLa細胞、前立腺癌細胞(例えば、DU145、PC3及び/又はLncap細胞)、乳癌細胞(例えば、MCF−7、MDA−MB−438、及び/又はT47D細胞)、急性骨髄性白血病細胞(例えば、THP−1細胞)、神経膠芽腫細胞(例えば、U87細胞)、神経芽腫細胞(例えば、SHSY5Y細胞)、骨癌細胞(例えば、Saos−2細胞)、及び慢性骨髄性白血病細胞(例えば、KBM−7細胞)が挙げられる。いくつかの実施形態では、細胞系としては、霊長類細胞系、齧歯類細胞系(例えば、ラット又はマウス細胞系)、イヌ細胞系、ネコ細胞系、ゼブラフィッシュ細胞系、アフリカツメガエル細胞系、植物細胞系、又は任意の他の細胞系が挙げられる。いくつかの実施形態では、細胞は、ヒト293細胞(例えば、293−T又はHEK293細胞)、マウス3T3細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、CML T1細胞、又はジャーカット細胞である。
【0048】
いくつかの実施形態では、細胞は、初代細胞、支持細胞、又は幹細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は対象(例えば、ヒト対象)から単離される。いくつかの実施形態では、細胞は、組織又は生検サンプルから単離された初代細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は造血細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、幹細胞、例えば、ES細胞、間葉系幹細胞、癌幹細胞等である。いくつかの実施形態では、細胞は、固形組織及び臓器が挙げられるがこれらに限定されない組織又は臓器(例えば、ヒト組織又は臓器)から単離される。いくつかの実施形態では、細胞は、胎盤、臍帯、骨髄、肝臓、臍帯血を含む血液、又は任意の他の適切な組織から単離することができる。いくつかの実施形態では、患者個体別の細胞は培養のために(例えば、細胞増殖及び任意選択的に分化のために)、及び後の同一患者又は異なる患者への再移植のために患者から単離される。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書中に開示されるインキュベータ内で増殖させた細胞は同種又は自家治療のために使用してもよい。いくつかの実施形態では、本明細書中に開示されるインキュベータ内で増殖させた細胞は、免疫療法(例えば、キメラ抗原受容体治療(CAR−T)、又はCRISPR/Cas修飾細胞の送達)を提供する目的で遺伝子操作、増殖及び患者に再導入してもよい。
【0049】
いくつかの実施形態では、初代細胞培養としては、上皮細胞(例えば、角膜上皮細胞、乳房上皮細胞等)、線維芽細胞、筋芽細胞(例えば、ヒト骨格筋芽細胞)、ケラチノサイト、内皮細胞(例えば、微小血管内皮細胞)、神経細胞、平滑筋細胞、造血細胞、胎盤細胞、又はこれらの2つ以上の組み合わせが挙げられる。
【0050】
いくつかの実施形態では、細胞は、組換え細胞(例えば、ハイブリドーマ細胞又は1種以上の組換え産物を発現する細胞)である。いくつかの実施形態では、細胞は1種以上のウイルスに感染している。
【0051】
初代細胞の単離
いくつかの実施形態では、細胞は、本明細書中に記載されるインキュベータ内における生体外培養のために組織又は生物学的サンプルから単離される。いくつかの実施形態では、細胞(例えば、白血球細胞)は血液から単離される。いくつかの実施形態では、細胞は、物理的破壊及び/又は酵素的破壊を用いて組織又は生物学的サンプルから剥離される。いくつかの実施形態では、コラゲナーゼ、トリプシン又はプロテイナーゼなどの1種以上の酵素を使用して細胞外マトリックスを消化する。いくつかの実施形態では、組織又は生物学的サンプルを(例えば、物理的破壊又は酵素的破壊あり又はなしで)培地に入れ、剥離して培地中で増殖させた細胞を更なる培養のために単離することができる。
【0052】
細胞培養
本明細書で使用する場合、細胞培養とは、制御された条件下で(例えば、生体外で)細胞を維持及び/又は増殖するための手順を意味する。いくつかの実施形態では、細胞は、細胞増殖及び複製を促進するための条件、組換え産物の発現を促進するための条件、(例えば、1種以上の組織特有の細胞タイプへの)分化を促進するための条件、又はこれらの2つ以上の組み合わせの下で培養される。
【0053】
いくつかの実施形態では、細胞培養容器は懸濁細胞の培養のために構成されている。いくつかの実施形態では、細胞培養容器は付着細胞の培養のために構成されている。いくつかの実施形態では、細胞培養容器は2D又は3D細胞培養のために構成されている。いくつかの実施形態では、細胞培養容器は、細胞増殖を支持するための1つ以上の表面又はマイクロキャリアを含む。いくつかの実施形態では、これらは、接着性を増加させ、且つ増殖及び分化のために必要な他のシグナルを与えるために細胞外マトリックス成分(例えば、コラーゲン、フィブリン及び/又はラミニン成分)で被覆されている。いくつかの実施形態では、細胞培養容器は、細胞増殖を支持するために、ポリアクリルアミド又はポリエチレングリコール(PEG)ゲルなどの1種以上の合成ヒドロゲルを含む。いくつかの実施形態では、細胞培養容器は、栄養素(例えば、例として特定の細菌又は酵母培養のためのゲル又は寒天)を埋め込んだ固体支持体を含む。いくつかの実施形態では、細胞培養容器は液体培地を含む。
【0054】
いくつかの実施形態では、細胞は任意の適切な培養培地のうちの1つで培養される。異なる範囲のpH、グルコース濃度、増殖因子、及び他のサプリメントを有する異なる培養培地を異なる細胞タイプ又は異なる用途に対して使用することができる。いくつかの実施形態では、特別仕様の細胞培養培地、又はDulbecco’s Modified Eagle Medium、Minimum Essential Medium、RPMI培地、HA若しくはHAT培地、若しくはLife Technologies若しくは他の商業的供給元から入手可能な他の培地などの市販の細胞培養培地を使用することができる。いくつかの実施形態では、細胞培養培地は、血清(例えば、ウシ胎仔血清、子ウシ血清、ウマ血清、ブタ血清、又は他の血清)を含む。いくつかの実施形態では、細胞培養培地は血清を含まない。いくつかの実施形態では、細胞培養培地はヒト血小板溶解物(hPL)を含む。いくつかの実施形態では、細胞培養培地は、1種以上の抗生物質(例えば、アクチノマイシンD、アンピシリン、カルベニシリン、セフォタキシム、ホスミドマイシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ペニシリン、ペニシリンストレプトマイシン、ポリミキシンB、ストレプトマイシン、テトラサイクリン、若しくは任意の他の適切な抗生物質、又はこれらの2つ以上の任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、細胞培養培地は、1種以上の塩類(例えば、平衡塩類、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム等)を含む。いくつかの実施形態では、細胞培養培地は炭酸水素ナトリウムを含む。いくつかの実施形態では、細胞培養培地は1種以上の緩衝剤(例えば、HEPES又は他の適切な緩衝剤)を含む。いくつかの実施形態では、1種以上のサプリメントが含まれる。サプリメントの非限定的な例としては、還元剤(例えば、2−メルカプトエタノール)、アミノ酸、コレステロールサプリメント、ビタミン、トランスフェリン、界面活性剤(例えば、非イオン界面活性剤)、CHOサプリメント、初代細胞サプリメント、酵母溶液、又はこれらの2つ以上の任意の組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、1種以上の増殖又は分化因子が細胞培養培地に添加される。増殖又は分化因子(例えば、WNT系タンパク質、BMP系タンパク質、IGF系タンパク質等)を個々に又は組み合わせて、例えば、特定系統への分化を引き起こす異なる因子を含む分化混合物(differentiation cocktail)として添加することができる。増殖又は分化因子及び液体培地の他の態様は、本明細書中に記載されるインキュベータの一部として組み込まれた自動液体ハンドラを用いて添加することができる。
【0055】
一部の態様では、本明細書中に記載されるインキュベータ及び方法は細胞増殖に適した温度及びガス混合物を提供及び維持する。細胞増殖条件は異なる細胞タイプで異なり、本明細書中に記載されるインキュベータは、異なる条件を維持するようにプログラムし得ることを理解すべきである。いくつかの実施形態では、哺乳動物細胞に対して約37℃及び5%COの条件が使用される。
【0056】
いくつかの実施形態では、本明細書中に記載されるデバイス及び方法は、培養培地を栄養物の枯渇、pH変化、温度変化、アポトーシス細胞又は壊死細胞の蓄積及び/又は細胞密度に関して監視又はアッセイするために使用される。いくつかの実施形態では、本明細書中に記載されるデバイス及び方法は、培養培地若しくは条件を修正若しくは変更するために、及び/又は適宜、細胞培養物を継代するために使用される。いくつかの実施形態では、これらの手順は自動化される。
【0057】
いくつかの実施形態(例えば、付着細胞培養に関する)では、培養培地を吸引によって直接除去し、新しい培地と交換することができる。いくつかの実施形態(例えば、非接着/懸濁培養に関する)では、培地交換は、細胞培養物を遠心分離し、古い培養培地を除去し、これを新しい培地と交換することを含み得る。いくつかの実施形態では、遠心分離機がインキュベータの内部チャンバ内に配置されている。いくつかの実施形態では、培養容器は連続的な培地交換を可能にする。いくつかの実施形態では、本明細書中に記載されるインキュベータは、細胞を支持するために培養培地の異なる態様を処理、交換、供給及び/又は維持するために使用され得る1つ以上の構成要素を含んでもよい。インキュベータは、廃棄培地を含むリザーバ及び/又は新しい培地を含むリザーバを含んでもよい。このようなリザーバは(例えば、一時貯蔵のために)インキュベータ内の冷蔵庫又はインキュベータの冷蔵区域内にあってもよい。いくつかの実施形態では、1つ以上のリザーバがインキュベータの外部に提供され、液体ハンドラユニット(例えば、吸引器を有する液体ハンドルユニット)又はインキュベータ内の一時リザーバから供給するか又は引くために、インキュベータの空間へ及びこの空間から配管が提供され、細胞フィーディング、培地交換、及び他の関連する要求を容易にする。懸濁細胞について、インキュベータ内に、廃棄培地から細胞を分離するためのデバイス(例えば、細胞分画を容易にするための1つ又は複数の遠心分離機)を提供し、本明細書中に記載されるインキュベータの一部として、自動化された培地交換を容易にしてもよい。いくつかの実施形態では、本明細書は、細胞培養の最適な増殖のために細胞培養条件を自動的に監視及び調整することが可能である、コンピュータに接続された細胞培養インキュベータを含むシステムを提供する。
【0058】
いくつかの実施形態では、細胞は本明細書中に記載されるインキュベータキャビネット内で継代される。いくつかの実施形態では、細胞培養物が分割され、細胞培養物のサブセットが更なる増殖のために新しい培養容器に移される。いくつかの実施形態(例えば、付着細胞培養に関する)では、新しい培養容器に移される前に(例えば、例として穏やかなかき取りを用いて機械的に、及び/又は例えばトリプシンEDTA若しくは1種以上の他の酵素を用いて酵素的に)表面から細胞が剥離される。いくつかの実施形態(例えば、懸濁細胞培養に関する)では、少量の細胞培養物が新しい培養容器に移される。
【0059】
いくつかの実施形態では、細胞培養物は、本明細書中のインキュベータのインキュベータキャビネット内で培養中に他の手法で操作される。例えば、細胞培養物は、例えば、本明細書中に記載されるインキュベータのインキュベータキャビネット内に残っている間に核酸(例えば、DNA又はRNA)をトランスフェクトしてもよく、又はウイルス感染に曝露させてもよい(例えば、組換えウイルス粒子を用いてDNA又はRNAを送達する)。
【0060】
増殖及び操作中における細胞培養物の汚染を防止するか又は最小限にするために無菌技術を使用し得ることを理解すべきである。いくつかの実施形態では、細胞培養のために使用される機器(例えば、ピペット、流体ハンドリングデバイス、操作デバイス、他の自動化又はロボットデバイス等)は適切な技術を用いて滅菌される。非限定的な技術としては、本明細書中に記載される熱曝露(例えば、高圧蒸気殺菌)、表面消毒(例えば、アルコール、漂白剤、又は他の消毒剤を用いる)、消毒ガス(例えば、オゾン、過酸化水素等)の照射及び/又は曝露が挙げられる。いくつかの実施形態では、培地は適切な技術を用いて滅菌される。非限定的な技術としては、熱曝露(例えば、高圧蒸気殺菌)、抗菌/抗ウイルス処理、ろ過及び/又は照射が挙げられる。
【0061】
いくつかの実施形態では、細胞培養の操作は無菌条件下、例えば、消毒され、空気をろ過して潜在的汚染物質を除去した(例えばインキュベータチャンバ内の)環境中で実施される。
【0062】
いくつかの実施形態では、細胞培養物は、GMP準拠培地又はGMP準拠液体ハンドリング機器を使用するものを含むGMP準拠条件下で増殖及び維持される。いくつかの場合、細胞培養物は、標準作業手順(SOP)とともに方法を実施することにより、GMP準拠条件下で増殖及び維持される。
【0063】
いくつかの実施形態では、細胞培養物は汚染を検出するために監視及び/又は評価され得る。いくつかの実施形態では、異なる種類の生体の細胞による汚染を検出することができる。いくつかの実施形態では、マイコプラズマ、細菌、酵母、又はウイルスによる哺乳動物細胞培養物の汚染は任意の適切な技術を用いて検出することができる。いくつかの実施形態では、細胞培養物の汚染は、汚染(例えば、細菌又は酵母による)の特徴であり、培養で増殖している細胞(例えば、哺乳動物細胞)の特徴ではないpH、濁度等などの1つ以上の培養特性の変化又は変化率についてアッセイすることによって検出することができる。いくつかの実施形態では、1種以上の分子検出アッセイ(例えば、PCR、ELISA、RNAラベリング、又は他の酵素学的手法)又は細胞ベースアッセイを用いて、汚染(例えば、マイコプラズマ、細菌、酵母、ウイルス、又は他の汚染)を検出することができる。
【0064】
いくつかの実施形態では、細胞培養物は、類似タイプの細胞による汚染(例えば、異なるヒト細胞又は異なる哺乳動物細胞によって汚染されたヒト細胞系)を検出するために監視及び/又は評価され得る。いくつかの実施形態では、細胞培養物及びその潜在的汚染は、DNAシーケンシング若しくはDNAフィンガープリント法(例えば、短鎖縦列反復配列−STR−フィンガープリント法)、アイソザイム分析、ヒトリンパ球抗原(HLA)判定、染色体分析、核型分析、細胞形態、又は他の手法を使用して評価することができる。
【0065】
いくつかの実施形態では、本明細書中に記載されるインキュベータ又は方法を使用して産生される細胞は、凍結され、それらを後の使用及び/又は輸送のために保存され得る。いくつかの実施形態では、細胞は増殖及び/又は分化後並びに凍結前に凍結保存組成物と混合される。凍結保存組成物を細胞培養容器に添加することができ、又は細胞を凍結保存組成物とともに細胞培養容器から凍結保存容器に移すことができる。凍結保存組成物に含まれ得る凍結保護物質の非限定的な例としては、DMSO、グリセロール、PEG、スクロース、トレハロース、及びデキストロースが挙げられる。いくつかの実施形態では、細胞培養物から単離された細胞の凍結を容易にするために、インキュベータの構成要素としてフリーザーが提供されてもよい。例えば、1つ以上のフリーザーが内部チャンバ内に配置されてもよく、及び/又はインキュベータキャビネットに(例えば、インキュベータキャビネットの壁内に)組み込まれてもよい。
【0066】
細胞培養インキュベータ
いくつかの実施形態では、本明細書は、インキュベータ、並びに制御された条件下で(例えば、無菌条件及び/又は滅菌条件下で)細胞を培養、操作及び/又は監視するための方法に関する。いくつかの実施形態では、細胞培養インキュベータは、1つ以上の細胞培養容器内の細胞のインキュベーションのための内部チャンバを有するインキュベータキャビネットを含んでいた。いくつかの場合、移動チャンバから内部チャンバへの内部扉に加えて、インキュベータは、外部環境から直接内部チャンバへと開く少なくとも1つの外部扉(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ以上の外部扉)を含み、例えば、インキュベータが動作していない時間、例えばインキュベータの保守中における内部チャンバへの代替的なアクセスを提供する。いくつかの実施形態では、インキュベータは、内部チャンバ内に、1つ以上の細胞培養容器を貯蔵するための貯蔵場所を含む。
【0067】
本明細書で使用する場合、「インキュベータキャビネット」は、1つ以上の細胞培養容器を保持するように構成された1つ以上のチャンバを含むハウジングである。いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットは移動チャンバ及び内部チャンバを含み、その1つ又は両方は、1つ以上の細胞培養容器を保持するように構成されている。いくつかの実施形態では、インキュベータは、1つ以上のガス源(例えば、ガスボンベ又はオゾン発生器)、(例えば、水、蒸留水、脱イオン水、細胞培養培地、空気、二酸化炭素、オゾン、及び酸素などの1種以上の液体又はガスを運ぶための)管類、エアフロー機構(例えば、弁、放出弁、ピンホール、ガス調整器、及び質量流量調整器)、圧力機構(例えば、ドライスクロールポンプ、回転ポンプ、運動量輸送ポンプ、拡散ポンプ、又はダイアフラムポンプなどのポンプ、吸引管、真空システム、及び送風機)、環境監視及び制御部(例えば、二酸化炭素、酸素、及びオゾンなどのガスの濃度を検出及び/又は制御するためのガスセンサ及び/又はモニタ、熱源又はヒートシンク、温度監視部及び制御部、湿度監視部、ガススクラバ、エアフィルタ、粒子状物質を計測するための計器、圧力計、及びフローメータ)、扉(例えば、開口部又はパネル)、窓(例えば、ガラス、プラスチック、複合材料、又はインキュベータ内部の領域を見るための他の実質的に透明な材料で作製された光学窓)、(例えば、1種以上のガス又は液体の導入又は除去を可能にするための)ポート、光源(例えば、ランプ、電球、レーザー、及びダイオード)、光学素子(例えば、顕微鏡対物レンズ、ミラー、レンズ、フィルタ、アパーチャ、波長板、窓、偏光子、ファイバー、ビームスプリッタ、及びビーム結合器)、撮像要素(例えば、カメラ、バーコードリーダ)、電気的要素(例えば、回路、ケーブル、電源コード、並びにバッテリー、発電機、及び直流又は交流電源などの電源)、コンピュータ、機械的要素(例えば、モータ、ホイール、ギヤ、ロボット要素、並びにアクチュエータ、例えば、空気式アクチュエータ、電磁アクチュエータ、カムを備えたモータ、圧電アクチュエータ、及びリードスクリューを備えたモータ)、並びに制御要素(例えば、スピンホイール、ボタン、キー、トグル、スイッチ、カーソル、スクリュー、ダイヤル、スクリーン、及びタッチスクリーン)などの1つ以上の他の要素を含んでもよい。いくつかの実施形態では、これらの他の要素の1つ以上はインキュベータの一部であるが、インキュベータキャビネットの外部にある。いくつかの実施形態では、これらの他の要素の1つ以上はインキュベータキャビネット内に含まれる。
【0068】
いくつかの実施形態では、本明細書中で記載されるインキュベータ又はインキュベータキャビネットは直方体様の形状である。いくつかの実施形態では、本明細書中で記載されるインキュベータ又はインキュベータキャビネットは、1ft〜16ftの範囲内の矩形設置面積を有する。いくつかの実施形態では、本明細書中で記載されるインキュベータ又はインキュベータキャビネットは、約1ft、2ft、3ft、4ft、5ft、6ft、7ft、8ft、9ft、10ft、11ft、12ft、13ft、14ft、15ft、又は16ft以下の矩形設置面積を有する。いくつかの実施形態では、本明細書中で記載されるインキュベータ又はインキュベータキャビネットは、1ft〜100ftの範囲内の総チャンバ体積を有する。いくつかの実施形態では、本明細書中で記載されるインキュベータ又はインキュベータキャビネットは、約1ft、5ft、10ft、25ft、50ft又は100ft以下のチャンバ体積を有する。いくつかの実施形態では、本明細書中で記載されるインキュベータ又はインキュベータキャビネットは、0.09m〜1.78mの範囲内の矩形設置面積を有する。いくつかの実施形態では、本明細書中で記載されるインキュベータ又はインキュベータキャビネットは、約0.1m、0.2m、0.3m、0.4m、0.5m、0.6m、0.7m、0.8m、0.9m、1.0m、1.1m、1.2m、1.3m、1.4m、1.5m、1.6m、又は1.7m以下の矩形設置面積を有する。いくつかの実施形態では、本明細書中で記載されるインキュベータ又はインキュベータキャビネットは、0.03m〜3mの範囲内の総チャンバ体積を有する。いくつかの実施形態では、本明細書中で記載されるインキュベータ又はインキュベータキャビネットは、約0.03m、0.1m、0.3m、1m,又は3m以下のチャンバ体積を有する。
【0069】
貯蔵場所
本明細書で使用する場合、「貯蔵場所」は、1つ以上の細胞培養容器が貯蔵される(例えば、インキュベータキャビネット内の)位置を意味する。例えば、1つ以上の細胞培養容器は貯蔵場所において貯蔵され、後に異なる位置(例えば、撮像場所)に移動されてもよい。貯蔵場所は、インキュベータの内部チャンバキャビネット内に配置されてもよい。貯蔵場所は、複数の細胞培養容器を貯蔵するように構成されてもよい。例えば、貯蔵場所は、1つ以上の貯蔵アレイ、ラック、棚、仕切り、分類棚、トレー、スロット、又は他の位置若しくは機構を含んでもよい。いくつかの実施形態では、貯蔵場所は細胞培養容器を水平に貯蔵するように構成されてもよい一方、他の実施形態では、貯蔵場所は細胞培養容器を垂直に貯蔵するように構成されてもよい。例えば、貯蔵場所は、互いに垂直に積み重ねられた細胞培養容器を受け入れるための複数のスロットを含んでもよい。貯蔵場所は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、100個、又は任意の他の個数の細胞培養容器を保持するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、貯蔵場所は、100個超の細胞培養容器を保持するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、貯蔵場所は、1つ以上の貯蔵アレイ、ラック、棚、仕切り、分類棚、トレー、スロット、又は他の位置若しくは機構を移動させるための機構を含んでもよい。例えば、貯蔵場所は、例えば、異なる位置に貯蔵された1つ以上の細胞培養容器へのアクセスを容易にするために、貯蔵ラックを内部チャンバ内の1つの位置から内部チャンバ内の別の位置へ移動させるための1つ以上のモータと、可動ステージ(例えば、xyステージ又はxyzステージ)とを含んでもよい。いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットは、1つ以上の細胞培養容器を移動させるための1つ以上の細胞培養容器移動デバイスを含んでもよい。
【0070】
貯蔵場所は、1つ以上の細胞培養容器を確実に保持するか又は受け入れるように構成されてもよい。例えば、貯蔵場所の1つ以上の構成要素は、1つ以上の粘着的、磁気的、電気的及び/又は機械的構成要素(例えば、スナップ、締結具、ロック、止め金、ガスケット、Oリング、セプタ、ばね、及び他の係合部材)を有する1つ以上のロック機構を含んでもよい。いくつかの実施形態では、貯蔵場所及び/又は細胞培養容器は1つ以上の溝又は凹部を含んでもよく、及び/又は成形プラスチック部品を含んでもよい。例えば、細胞培養容器は、貯蔵場所にある1つ以上の対応する溝、穴、又は凹部に挿入するための成形された1つ以上の突出特徴部(例えば、リム又はノブ)を含んでもよい。いくつかの場合、細胞培養容器は、貯蔵場所にある1つ以上の対応する突出特徴部に適合するように成形された1つ以上の溝、穴、又は凹部を含んでもよい。
【0071】
本明細書で使用する場合、「基準マーク」は、1つ以上の構成要素の位置合わせを容易にする特徴を意味する。いくつかの実施形態では、基準マークは、蛍光培地上の1つ以上の穴アパーチャ又は印刷された若しくはエンボス加工された蛍光材料を含んでもよい。他の実施形態では、基準マークは格子、線、又は記号を含んでもよい。いくつかの実施形態では、1つ以上の細胞培養容器は、1つ以上の細胞培養容器のイメージャとの位置合わせを容易にするための1つ以上の基準マークを含む。
【0072】
材料
いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットは単壁式である。いくつかの実施形態では、インキュベータは二重壁式である。いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットの二重壁間に絶縁材料が提供されており、インキュベータキャビネットからの熱損失を制御し、インキュベータキャビネット内の温度制御を容易にする。いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットの外壁は、薄板、例えば14〜20ゲージの冷間圧延鋼を含む。いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットの内壁(例えば、チャンバ表面)は電解研磨ステンレス鋼を含む。いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットの内壁(例えば、チャンバ表面)は、チタン、コバルト−クロム、タンタル、白金、ジルコニウム、ニオブ、ステンレス鋼、及びこれらの合金などの耐腐食性材料を含む。しかしながら、いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットのチャンバ表面は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの高分子材料、又はパリレンの商品名で知る高分子材料を含む。いくつかの実施形態では、チャンバ表面は、高分子表面コーティングに導入された銅又は銀又は抗微生物化合物など、抗微生物性を有してもよい。
【0073】
モニタリング機器
いくつかの実施形態では、インキュベータ内部の環境は制御システムによって制御される。制御システムは、インキュベータ内部(例えば、1つ以上の内部チャンバ内)の温度、湿度、二酸化炭素、酸素、及び他の気体成分(例えば、オゾン及び過酸化水素などの滅菌ガス)を制御するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、制御システムは、各内部チャンバ内の環境条件(例えば、温度、湿度、二酸化炭素、酸素及び他の気体成分)を別々に制御する。例えば、繊細な機械的、電子的及び光学的構成要素を保護するために、内部チャンバの湿度は、貯蔵場所を有する内部チャンバよりも低い水準に維持してもよい。いくつかの実施形態では、インキュベータは、既定のセンサを備えたモニタリングシステムが更に提供される。モニタリング機器の例としては、酸素モニタ、二酸化炭素モニタ、オゾンガス検出器、過酸化水素モニタ、及びマルチガスモニタが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、いくつかの実施形態では、インキュベータは、有利には、細胞増殖に関連する種々のパラメータに応答する複数のセンサを含む。これらのパラメータは、温度、空気純度、汚染物質レベル、pH、湿度、N、CO、O、及び光を含んでもよい。このモニタリングシステムにより、培養又は処理の継続時間にわたってセンサを使用し、インキュベータにおけるパラメータを測定することができる。いくつかの実施形態では、本明細書中の他の箇所に記載されるように、センサによって測定されたパラメータは、更なる処理のために、モニタリングシステムにより、回線を介して、コンピュータ制御されたモニタリング及び制御システムに送信される。
【0074】
いくつかの実施形態では、本明細書中に記載されるインキュベータとともに環境モニタリングシステムが使用され得る。いくつかの実施形態では、温度、空気の組成(例えば、CO濃度、O濃度等)、及び/又はシステムの湿度の測定値を提供する1つ以上のセンサをインキュベータと組み合わせることができる(例えば、インキュベータキャビネット内に取り付けることができる)。いくつかの実施形態では、1つ以上のこのようなセンサは、インキュベータの一部として組み込む(例えば、インキュベータの内部壁又は扉に取り付けられるか、内蔵されるか、又はそうでなければ接続される)ことができる。いくつかの場合、1つ以上のセンサは、インキュベータキャビネットの外部又は内部の任意の適切な位置に配置することができる(例えば、移動チャンバ及び/又は内部チャンバ内、例えば、内部壁及び/又は上部若しくは下部内部表面に取り付けられる)。
【0075】
いくつかの実施形態では、センサに接触するガス(例えば、キャビネット内のガス又は周囲空気)の濃度のリアルタイムの読取値をパーセント、百万分率、又は任意の他の標準単位で提供することができるガスセンサが提供される。本明細書中に記載される方法及びインキュベータで使用するためのガスセンサとしては、COセンサ、Oセンサ、Nセンサ、オゾンガス検出器、過酸化水素モニタ、マルチガスモニタ、及びCOセンサが挙げられる。このようなセンサは多くの商業的供給元から入手可能である。いくつかの場合、インキュベータの環境は、本明細書中に記載されるセンサによって提供される情報に基づいて調整又は制御してもよい。例えば、望ましい濃度よりも低いCOがインキュベータ内に存在することをCOセンサが表示すると、インキュベータ内のCOのレベルが増加されてもよい。
【0076】
いくつかの実施形態では、インキュベータ内の温度を制御する目的のため、1つ以上の加熱又は冷却要素をインキュベータ内に組み込むことができる(例えば、キャビネット若しくは扉の内部表面上、及び/又はキャビネットの壁及び/若しくは基部の1つ以上内に組み込まれる)。いくつかの実施形態では、加熱要素は、液体、例えば、細胞培養培地又は他の試薬を解凍するために使用することができる。いくつかの実施形態では、1つ以上の空気若しくは酸素源、カーボンフィルタ、及び/又は1つ以上の加湿若しくは脱湿システムがインキュベータに接続され、(例えば、インキュベータ内の又はインキュベータに取り付けられた1つ以上のセンサからの信号に応答して)インキュベータ内の酸素、二酸化炭素及び/又は湿度のレベルを制御するように構成されている。
【0077】
いくつかの実施形態では、インキュベータは1つ以上の光源(例えば、白熱電球、LED、UV又は他の光源)を含むことができる。これらはキャビネット内の領域を照明するためにインキュベータ内に配置され得る。いくつかの実施形態では、培養システムの動作は、インキュベータの内部若しくは外部に配置され得るカメラ又は他の感光デバイスを用いて監視される。いくつかの実施形態では、光源は殺菌光源である。例えば、UVランプを、本明細書に記載されるインキュベータの移動チャンバ及び/又は内部チャンバ内に配置してもよい。
【0078】
いくつかの実施形態では、インキュベータは透明な物体(例えば、窓)を含む。透明な物体は、インキュベータ内からの可視光又は他の光の波長を、インキュベータの外部に配置されたカメラ又は他の感光デバイスによって検出することを可能にする。いくつかの実施形態では、透明な物体の内部表面は、(例えば、インキュベータ内の湿潤空気により)内部表面に蓄積し、システムの監視を妨げる可能性のある結露の滴を防止又は除去するために、(例えば、キャビネットの内側から)拭くことができる。いくつかの実施形態では、表面はコントローラによって自動的に制御されるワイパにより拭くことができる。
【0079】

本明細書で使用する場合、「扉」は、開いているときに2つ以上の環境又は領域間の連通を可能にし、閉じているときに2つ以上の環境又は領域間の連通を防止する要素である。扉は、スライドドア、ポケットドア、スイングドア、ヒンジドア、回転ドア、ピボットドア、又はフォールディングドアなどの任意の種類のものであってもよい。扉は手動で、機械的に、又は電気的に動作してもよい。例えば、オペレータは扉若しくはその要素(例えば、ハンドル)を手動で把持し、引き、押し、及び/又はそうでなければ扉若しくはその要素(例えば、ハンドル)と物理的に相互作用することにより、又は機械的制御部(例えば、ボタン、トグル、スピンホイール、キー、スイッチ、カーソル、スクリュー、ダイヤル、スクリーン、又はタッチスクリーン)を操作することにより扉を開閉してもよい。ある実施形態では、扉は、コンピュータによる電気又はデジタル制御によって制御してもよい。扉は自動的に開く扉であってもよい。例えば、扉は、扉が開いているか閉じているかを検出し、及び/又は扉がいつ開閉するかを制御する圧力センサ、赤外線センサ、モーションセンサ又はリモートセンサなどのセンサを含んでもよい。扉は、機械的、空気的、電気的、又は他の手段によって開いてもよい。いくつかの実施形態では、1つ以上の扉は1つ以上のロック機構を含んでもよい。特定の環境では、1つ以上の扉は、1つ以上の扉が望ましくないとき(例えば、1つ以上のチャンバが外部環境に対して開かれているとき)に開くことを防止するために、1つ以上のインターロック(例えば、ピン、バー、若しくはロックなどの機械的インターロック、又はスイッチなどの電気的インターロック)を含んでもよい。
【0080】
シール
いくつかの実施形態では、インキュベータ(例えば、インキュベータキャビネットの内部チャンバ及び/又は移動チャンバ)は、(例えば、インキュベータの1つ以上のチャンバが滅菌された後)閉じられると密閉されて無菌性を保持する1つ以上の窓及び/又は扉を含む。いくつかの実施形態では、インキュベータの各シールは閾値レベルの圧力以下(例えば、1atm以下)で気密である。いくつかの実施形態では、所望のレベルの密閉性能を確保するためにガスケットが提供される。一般に、「ガスケット」は、一般に、圧縮されている最中の2つの物体間の漏れを防ぐために2つの物体間の空間を埋めるメカニカルシールと理解される。ガスケットは、一般に、ガスケットペーパー、ゴム、シリコーン、金属、コルク、フェルト、ネオプレン、ニトリルゴム、ガラス繊維、又はプラスチックポリマー(ポリクロロトリフルオロエチレンなど)などのシート材料を切断することによって作製される。多くの場合、ガスケットは、変形して、任意のわずかな不規則性を含むように設計されている空間を確実に埋めることができるように、ある程度の降伏を提供する材料から作製されることが望ましい。いくつかの実施形態では、ガスケットは、適切に機能させるためにシーラントを直接ガスケット表面に適用して使用することができる。いくつかの実施形態では、ガスケット材料は、二酸化炭素又はオゾンと反応しない独立気泡ネオプレンフォームであり得る。
【0081】
移動デバイス
本明細書で使用する場合、「1つ以上の物品を移動させるための移動デバイス」は、1つ以上の物品を第1の場所から第2の場所へ移動させることができるデバイスを意味する。いくつかの実施形態では、1つ以上の物品は1つ以上の細胞培養容器である。他の実施形態では、1つ以上の物品は1つ以上の細胞培養容器の維持に有用であり、ピペット、キャピラリー、液体(例えば、細胞培養培地)、栄養素、及び他の材料が挙げられるが、これらに限定されない。ある実施形態では、移動デバイスは、1つ以上の物品をインキュベータ内の複数の場所へ、又はインキュベータ内の複数の場所から移動させてもよい。例えば、1つ以上の細胞培養容器の維持のために、移動デバイスを使用してピペットを内部チャンバ内の維持場所に移動させてもよい。いくつかの実施形態では、インキュベータは、1つ以上の物品を移動させるための2つ以上の移動デバイス(例えば、チャンバ間及びチャンバ内で物品を移動させるための2つ以上の別個の移動デバイス)を含む。
【0082】
移動デバイスは、弁(例えば、電磁弁又は空気弁)、ギヤ、モータ(例えば、電気モータ又はステッピングモータ)、ステージ(例えば、xyステージ又はxyzステージ)、ピストン、ブレーキ、ケーブル、ボールスクリューアセンブリ、ラックアンドピニオン機構、グリッパ、アーム、ピボットポイント、ジョイント、並進要素、又は他の機械的若しくは電気的要素などの1つ以上の要素を含んでもよい。いくつかの実施形態では、移動デバイスは1つ以上のロボット要素を含んでもよい。例えば、移動デバイスは、1つ以上の物品(例えば、ピペット)を把持し、持ち上げ、押し、つかみ、摺動させ、回転させ、並進させ、放し、上げ、下げ、及び/又は傾けることが可能なロボットアームを含んでもよい。好適な実施形態では、移動デバイスは1つ以上のピペットを選択的に且つ解放可能に把持する。ある実施形態では、移動デバイスは、機械的グリッパに結合されたアームを含んでもよい。例えば、アームは、一端に又はその近傍に、ピペットを解放可能に把持するための機械的グリッパを含んでもよく、他端に又はその近傍においてインキュベータの表面又は要素に確実に結合されていてもよい。いくつかの実施形態では、ロボットアームは、機械的グリッパがアームに結合する箇所であるピボットポイントと、アームに沿ったアームの一部分のフレキシブルな回転及び並進を可能にするための1つ以上のピボット及び/又は並進ジョイントとを含む。このようにして、ロボットアームは、インキュベータ内の(例えば、内部チャンバ内の貯蔵アレイ内の)異なる水平位置及び垂直位置にある1つ以上の物品(例えば、ピペット)にアクセスしてもよい。
【0083】
本明細書で使用する場合、「細胞培養容器移動デバイス」は、1つ以上の細胞培養容器を第1の場所から第2の場所へ移動させることができるデバイスを意味する。ある実施形態では、移動デバイスは、1つ以上の物品をインキュベータ内の複数の場所へ、又はインキュベータ内の複数の場所から移動させてもよい。例えば、細胞培養容器移動デバイスを使用して細胞培養容器を移動チャンバから内部チャンバへ、及び/又は貯蔵場所から撮像場所へ移動させてもよい。いくつかの実施形態では、インキュベータは、1つ以上の物品を移動させるための2つ以上の移動デバイス(例えば、チャンバ間及びチャンバ内で物品を移動させるための別個の手段)を含む。細胞培養容器移動デバイスは、弁(例えば、電磁弁又は空気弁)、ギヤ、モータ(例えば、電気モータ又はステッピングモータ)、ステージ(例えば、xyステージ又はxyzステージ)、ピストン、ブレーキ、ケーブル、ボールスクリューアセンブリ、ラックアンドピニオン機構、グリッパ、アーム、ピボットポイント、ジョイント、並進要素、又は他の機械的若しくは電気的要素などの1つ以上の要素を含んでもよい。いくつかの実施形態では、細胞培養容器移動デバイスは1つ以上のロボット要素を含んでもよい。例えば、細胞培養容器移動デバイスは、1つ以上の細胞培養容器を把持し、持ち上げ、押し、つかみ、摺動させ、回転させ、並進させ、放し、上げ、下げ、及び/又は傾けることが可能なロボットアームを含んでもよい。好適な実施形態では、細胞培養容器移動デバイスは1つ以上の細胞培養容器を選択的に且つ解放可能に把持する。ある実施形態では、細胞培養容器移動デバイスは、機械的グリッパに結合されたアームを含んでもよい。例えば、アームは、一端に又はその近傍に、細胞培養容器を解放可能に把持するための機械的グリッパを含んでもよく、他端に又はその近傍においてインキュベータの表面又は要素に確実に結合されていてもよい。いくつかの実施形態では、ロボットアームは、機械的グリッパがアームに結合する箇所であるピボットポイントと、アームに沿ったアームの一部分のフレキシブルな回転及び並進を可能にするための1つ以上のピボット及び/又は並進ジョイントとを含む。このようにして、ロボットアームは、インキュベータ内の(例えば、内部チャンバ内の貯蔵アレイ内の)異なる水平位置及び垂直位置にある1つ以上の細胞培養容器にアクセスしてもよい。
【0084】
いくつかの実施形態では、移動デバイスはロボットアームを含む。いくつかの実施形態では、ロボットアームは、インキュベータキャビネット内にプラットフォームを含み、プラットフォームは、インキュベータキャビネットの内部表面(例えば、内壁、基部等)に沿って種々の方向に延びるレール又はコンベヤに沿って移動してもよい。いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットは、器具のスループットを増加するとともに、ロボットアームの1つが破損した場合に冗長性を提供するために、2つ以上(例えば、2つ、3つ、4つ、又は5つ、又はこれより多い)のロボットアームを備えて構成してもよい。
【0085】
いくつかの実施形態では、移動デバイスは、ロボットアームに接続されたグリッパアセンブリを更に含んでもよい。いくつかの実施形態では、グリッパアセンブリは、ロボットアームの端部又は端部の近くに取り付けられた1つ以上のグリッパを含み、各グリッパは、2つ以上(例えば、3つ、4つ、5つ、又はこれより多い)のグリッパフィンガーを含む。いくつかの実施形態では、ロボットアームの各グリッパフィンガーは、溝、摩擦プレート、ゴムパッド、又は他の把持面を有する。把持面は、フィンガーがキャビネット内の種々のタイプのコンテナ(例えば、培養容器)を把持し、移動するのを可能にすることができる。いくつかの実施形態では、ロボットアームが障害物に当たらずに安全に元の位置に戻る(例えば、静止若しくは保管構成及び/若しくは場所、又は動作座標系の起点に戻る)ことができる位置にあるかどうかを判定するために、ロボットアームは、グリッパアセンブリ、プラットフォームのいずれかに接続されたアブソリュートエンコーダ、又はグリッパアセンブリ、プラットフォームのそれぞれに対して別個のアブソリュートエンコーダを有してもよい。
【0086】
いくつかの実施形態では、特定の状況において、ロボットアームのリーチがインキュベータキャビネットのある領域に及ばないことが望ましい場合があるという理由から、ロボットアームは、代わりに、シャトル若しくはコンベヤベルトにコンテナを挿入するか、又はそれからコンテナを取り出すことによってこれらの場所に到達してもよい。シャトル又はコンベヤベルトは、例えば、インキュベータキャビネットの床若しくは軸(例えば、x軸、y軸)に沿って移動する他の表面上に配置されており、ロボットアームが到達することができない場所の少なくともいくつかへのアクセスを提供する。
【0087】
いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットは、外部アッセイ又は実験室自動化システムとともに使用されるように設計されている。例えば、いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットは、グリッパアームがインキュベータキャビネットの外部を旋回することを可能にするほど十分に大きい開口部を有する扉を有してもよく、グリッパアームは、培養容器又は他のコンテナ若しくは構成要素を実験室自動化システムの輸送ラインとインキュベータキャビネットとの間で輸送するため、又は外部アッセイ構成要素をインキュベータキャビネットとインキュベータキャビネットとの間で輸送するためのフィンガーの十分なリーチを有する。
【0088】
いくつかの実施形態では、ロボットアームは、とりわけ培養容器を運ぶように設計されており、この場合、ロボットアームの動きは、このような容器の急激な動き若しくは加速、又は容器からサンプルが溢れる原因となり得る他の動きを妨げるように制御される。いくつかの実施形態では、ロボットアームは、とりわけ培養容器を運ぶように設計されており、この場合、ロボットアームの動きは、このような容器の、新たに播種された細胞を培養容器の特定の領域に集める/集中させるような動きを妨げるように制御される。
【0089】
いくつかの実施形態では、ロボットアームは容器又は他のコンテナをインキュベータキャビネット内の特定の場所間で移動することから、ロボットアーム又はインキュベータの他の構成要素は、容器又は他のコンテナがどこに位置しているかを正確に追跡するように設計され得る。いくつかの場合、ロボットアームが使用され得るインキュベータキャビネット内に、例えば、インキュベータキャビネットの他の構成要素又はインキュベータキャビネットの壁が配置されており、したがって、ロボットアームの特定の動きが制限され得る領域がある可能性がある。これらの場合、アームの種々のモータのそれぞれ(例えば、xモータ、シータモータ、及びzモータ)に対してホーミング機構を使用し、ロボットアームを起動した後、又はロボットアームが別の物体と衝突した場合には動作を再開する前にロボットアームを既知の位置に適切に配置することができる。
【0090】
いくつかの実施形態では、無停電電源装置(「UPS」)がインキュベータキャビネットに若しくはインキュベータキャビネット内に取り付けられており、又はインキュベータキャビネットに収容されており、種々の自動化及びサンプル情報の保存、及び進行中の任意の輸送又は移動プロセス(例えば、ロボットアームによって運ばれているコンテナ又は容器のその目的地への輸送)の完了を含む、インキュベータの動作の正常停止を可能にする。オペレータは、インキュベータを無許可で開くことに対して、可聴信号、視覚信号、電子信号(例えば、電子メール又はテキストメッセージ)によって又は何らかの他の手法で警告を受けてもよい。いくつかの実施形態では、インキュベータの1つ以上の扉が開いている場合(例えば、外部扉又は内部扉などのインキュベータキャビネット扉が開いている場合)に検出するために、センサ又は他の特徴が提供される。このような特徴は、無菌性を脅かす、産生を損なう、アッセイ又は実験を妥協すること等となり得る、インキュベータ(例えば、インキュベータキャビネット)の予定外又は無許可の開放をオペレータが常に把握するか又は警告を受けることを可能にすることから有用である。いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネット内における1つ以上のデバイス(例えば、信号を検出し、この信号を使用してデバイスの位置を特定することができるセンサを有するデバイス)の位置を特定するために使用され得る高周波ビーコン又は他の信号源がインキュベータ内(例えば、インキュベータキャビネット内)に配置されている。いくつかの実施形態では、デバイスは信号源を有することができ、センサはインキュベータキャビネットのチャンバのうちの1つ以上の内部に配置することができる(例えば、内部チャンバの内部表面に配置される)。
【0091】
いくつかの実施形態では、光信号又はレーザー(例えば、レーザー信号のグリッド)を使用して、インキュベータキャビネット内の1つ以上のデバイス又は構成要素の位置を特定することができる。このような情報は、例えば、有線又は無線で外部のコンピュータ又は監視ステーションに通信することができる。この情報を用いて、インキュベータキャビネット内の移動デバイス、例えばロボットアームの動作を制御し、移動デバイスがインキュベータキャビネット内のデバイス又は物品を適切に把持、操作、又は操縦することができるようにし得る。
【0092】
いくつかの実施形態では、コンテナ又は容器がインキュベータキャビネット内に運ばれる前、ユーザは、インキュベータキャビネット内に挿入されている特定のコンテナ、容器、原料、又は細胞に基づいて自動化システムプロトコルを選択することができる。インキュベータ及び/又は1つ以上のインキュベータ構成要素、並びに増殖される細胞に関する関連情報は、データシステムに入力することができる。例えば、バーコード(例えば、1次元又は2次元バーコード)などの1つ以上の識別子をコンテナ又は容器に配置することができ、コンテナの種類、コンテナの内容物、どのようなアッセイ又は操作がコンテナ内のサンプルに対して実施されるかなどの他の重要な情報を明記することができる。いくつかの実施形態では、インキュベータシステム及び/又は細胞に関する情報を1つ以上のバーコードに、別個のデータシステムに、又はこれらの組み合わせに収容することができる。ユーザは、また、容器若しくは他のコンテナの次元(例えば、高さ、直径)を特定する情報を入力してもよく、又はシステム自体が容器又は他のコンテナの高さを判定し、測定することができる。この情報を使用して、分析モジュールが、容器内で増殖させた細胞に対してアッセイ若しくは他の操作を実施する準備が整ったとき、又はアッセイ若しくは操作の実施を完了したときなど、ロボットアームは特定のコンテナを移動するように要求されてもよい。
【0093】
コンピュータ及び制御装置
本明細書中に記載されるインキュベータは、コンピュータ、プロセッサ、マイクロコントローラ、又は他のコントローラの指示でともに動作してもよいセンサ、環境制御システム、ロボット等を含むいくつかの構成要素を含む。構成要素は、例えば、移動デバイス(例えば、ロボットアーム)、液体ハンドリングデバイス、培養容器又は他の構成要素をインキュベータキャビネットに又はインキュベータキャビネットから送達するための送達システム、インキュベータキャビネットの温度及び他の環境態様を制御するための環境制御システム、扉動作システム、撮像又は検出システム、及び細胞培養アッセイシステムを含んでもよい。
【0094】
いくつかの場合、細胞培養インキュベータ及び/又は細胞培養インキュベータ内に設けられるか、又は細胞培養インキュベータに接続する構成要素の制御動作などの動作は、ハードウェア、ソフトウェア、又はこれらの組み合わせを用いて実施してもよい。ソフトウェアで実施する場合、ソフトウェアコードは、単一構成要素内に設けられるか複数の構成要素に分配されるかを問わず、任意の適切なプロセッサ又はプロセッサの集合体において実行され得る。このようなプロセッサは、集積回路として実装されてもよく、集積回路構成要素内に1つ以上のプロセッサを有する。プロセッサは回路を用いて任意の適切なフォーマットで実装してもよい。
【0095】
コンピュータは、ラックマウント式コンピュータ、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、又はタブレットコンピュータなどの多くの形態のうちのいずれかにおいて具現化してもよい。加えて、コンピュータは、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、スマートフォン、又はインキュベータ自体を含む任意の他の適切なポータブル、モバイル又は固定電子デバイスを含む、一般にコンピュータとは考えられないが適切な処理性能を備えるデバイス内に組み込まれてもよい。
【0096】
いくつかの場合、コンピュータは、1つ以上の入カデバイス及び出力デバイスを有してもよい。これらのデバイスは、とりわけ、ユーザインタフェースを提示するために使用され得る。ユーザインタフェースを提供するために使用され得る出力デバイスの例としては、出力を視覚的に提示するためのプリンタ又はディスプレイスクリーン、及び出力を聴覚的に提示するためのスピーカ又は他の音声発生デバイスが挙げられる。ユーザインタフェースに使用され得る入力デバイスの例としては、キーボード、及びマウスなどのポインティングデバイス、タッチパッド、及びディジタイジングタブレットが挙げられる。他の例では、コンピュータは入カ情報を、音声認識を通じて、又は他の可聴フォーマットで、可視ジェスチャを通じて、触覚入カによって(例えば、振動、触覚及び/又は他の力を含む)、又はこれらの任意の組み合わせで受信してもよい。
【0097】
1つ以上のコンピュータは、エンタープライズネットワーク若しくはインターネットなどのローカルエリアネットワーク又はワイドエリアネットワークを含む任意の適切な形態の1つ以上のネットワークによって相互接続してもよい。このようなネットワークは任意の適切な技術に基づいてもよく、任意の適切なプロトコルに従って動作してもよく、無線ネットワーク、有線ネットワーク、又は光ファイバネットワークを含んでもよい。
【0098】
本明細書中に概説した種々の方法又はプロセスは、種々のオベレーティングシステム又はプラットフォームの任意の1つを用いる1つ以上のプロセッサで実行可能なソフトウェアとしてコード化してもよい。このようなソフトウェアは、多くの適切なプログラミング言語及び/又はプログラミング若しくはスクリプトツールのいずれかを使用して記述されてもよく、実行可能な機械語コード、又はフレームワーク若しくは仮想マシンにおいて実行される中間コードとしてコンパイルされてもよい。
【0099】
本明細書中に記載される方法又はプロセスを制御するための1つ以上のアルゴリズムは、1つ以上のコンピュータ又は他のプロセッサ上で実行されると、本明細書中に記載される種々の方法又はプロセスを実施する方法を実施する1つ以上のプログラムをエンコードした、可読ストレージ媒体(又は複数の可読媒体)(例えば、コンピュータメモリ、1つ以上のフロッピー(登録商標)ディスク、コンパクトディスク(CD)、光ディスク、デジタルビデオディスク(DVD)、磁気テープ、フラッシュメモリ、フィールドプログラマブルゲートアレイ若しくは他の半導体デバイスにおける回路構成、又は他の有形ストレージ媒体)として具現化してもよい。
【0100】
いくつかの実施形態では、コンピュータ可読ストレージ媒体は、コンピュータ実行可能命令を非一時的な形態で提供するほど十分な時間にわたって情報を保持してもよい。1つ又は複数のこのようなコンピュータ可読ストレージ媒体は、媒体上に記憶された1つ又は複数のプログラムを1つ以上の異なるコンピュータ又は他のプロセッサにロードして、本明細書中に記載される方法又はプロセスの種々の態様を実施することができるように可搬式とすることができる。本明細書で使用する場合、用語「コンピュータ可読ストレージ媒体」は、製造物(例えば、製品)又はマシンとみなされ得るコンピュータ可読媒体のみを含む。或いは又は加えて、本明細書中に記載される方法又はプロセスは、伝播信号など、コンピュータ可読ストレージ媒体以外のコンピュータ可読媒体として具現化してもよい。
【0101】
本明細書中において用語「プログラム」又は「ソフトウェア」は、本明細書中に記載される方法又はプロセスの種々の態様を実施するために、コンピュータ又は他のプロセッサをプログラムするために用いられ得る任意の種類のコード又は実行可能命令のセットを指す一般的な意味で使用される。加えて、本実施形態の一態様によれば、実行されると本明細書中に記載される方法又はプロセスを実施する1つ以上のプログラムは1つのコンピュータ又はプロセッサに常駐している必要はなく、いくつかの異なるコンピュータ又はプロセッサ間にモジュラー形式で分散され、種々の手続き又は演算を実施してもよいことを理解すべきである。
【0102】
実行可能命令は、1つ以上のコンピュータ又は他のデバイスによって実行されるプログラムモジュールなどの多くの形態であってもよい。概して、プログラムモジュールは、特定のタスクを実施するか又は抽象データ型を実装するルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造等を含む。通常、種々の実施形態では、プログラムモジュールの機能は必要に応じて組み合わせても分散させてもよい。
【0103】
また、データ構造は、コンピュータ可読媒体に任意の適切な形態で格納してもよい。データストレージの非限定的な例としては、構造化ストレージ、非構造化ストレージ、ローカルストレージ、分散ストレージ、短期ストレージ及び/又は長期ストレージが挙げられる。データを通信するために使用され得るプロトコルの非限定的な例としては、専用プロトコル及び/又は業界標準プロトコル(例えば、HTTP、HTML、XML、JSON、SQL、ウェブサービス、テキスト、スプレッドシート等、又はこれらの任意の組み合わせ)が挙げられる。説明の簡略化のため、データ構造はデータ構造内の位置を通じて関連付けられたフィールドを有するように示される場合がある。このような関係は、同様に、フィールド間の関係を伝えるコンピュータ可読媒体中の位置をフィールドのストレージに割り当てることによって達成してもよい。しかしながら、ポインタ、タグ、又はデータ要素間の関係を確立する他の機構の使用によるものを含む任意の適切な機構を使用して、データ構造のフィールド内の情報間の関係を確立してもよい。
【0104】
いくつかの実施形態では、インキュベータの動作に関連する情報(例えば、温度、湿度、ガス組成、画像、細胞培養条件等、又はこれらの任意の組み合わせ)は、インキュベータに関連付けられた1つ以上のセンサ(例えば、インキュベータキャビネット内に位置するか、又はインキュベータ内ではあるがインキュベータキャビネットの外部に位置する)から取得することができ、細胞培養インキュベーション中の状況に関する情報を提供するためにコンピュータ可読媒体内に保存することができる。いくつかの実施形態では、可読媒体はデータベースを含む。いくつかの実施形態では、前記データベースは、1つのインキュベータからのデータを含む。いくつかの実施形態では、前記データベースは、複数のインキュベータからのデータを含む。いくつかの実施形態では、データは改ざんが防止される状態で保存される。いくつかの実施形態では、器具(例えば、インキュベータ)によって生成された全てのデータは保存される。いくつかの実施形態では、データのサブセットが保存される。
【0105】
いくつかの実施形態では、構成要素(例えば、コンピュータ)は、インキュベータ内で実施される種々のプロセスを制御する。例えば、コンピュータは制御機器(例えば、マニピュレータ、イメージャ、流体ハンドリングシステム等)に指示してもよい。いくつかの実施形態では、コンピュータは、細胞培養の撮像、細胞のピッキング、細胞の除去(例えば、細胞凝集体の除去)、細胞培養条件の監視、細胞培養条件の調整、インキュベータ内の細胞培養容器の動きの追跡、及び/又は前述のプロセスのいずれかのスケジューリングを制御する。
【0106】
細胞アッセイ
ある実施形態では、本明細書中に記載されるインキュベータは、インキュベータキャビネット内、又はインキュベータキャビネットに動作的に接続されたチャンバ、例えばインキュベータの一部である別個のアッセイチャンバ内において1種以上のアッセイを実施することを可能にするように構成されている。いくつかの実施形態では、本明細書中に記載されるインキュベータは、細胞計数アッセイ、複製標識化(replication labeling)アッセイ、細胞膜統合性アッセイ、細胞ATPに基づく生存率アッセイ、ミトコンドリアレダクターゼ活性アッセイ、カスパーゼ活性アッセイ、アネキシンV染色アッセイ、DNA含有量アッセイ、DNA分解アッセイ、核断片化アッセイ、又はこれらの組み合わせの実施を可能にするように構成されている。他の例示的なアッセイとしては、BrdU、EdU、又はH3−チミジン組み込みアッセイ、ヘキスト染色、DAPI、アクチノマイシンD、7−アミノアクチノマイシンD、又はヨウ化プロピジウムなどの核酸染色を使用するDNA含有量アッセイ、AlamarBlue、MTT、XTT及びCellTitre Gloなどの細胞代謝アッセイ、核断片化アッセイ、細胞質ヒストン関連DNA断片化アッセイ、PARP切断アッセイ、及びTUNEL染色アッセイが挙げられる。
【0107】
いくつかの実施形態では、本明細書中に記載されるインキュベータは、細胞のデジタル識別及びマーキングを可能にするように構成されている。例えば、1つ又は複数の細胞を本明細書中に記載されるインキュベータ内で培養し、蛍光顕微鏡法により撮像し、(例えば、インキュベータに接続された、画像ソフトウェアを有するコンピュータにより)対象(例えば、蛍光に適した細胞)の1つ又は複数の細胞(例えば、細胞集団)をデジタルマーキングしてもよい。マーキングした細胞の位置はコンピュータのメモリに記憶し、後の時点でアクセスすることができる。細胞集団のデジタルマーキングにより、マーキングした細胞を観察又は操作することを可能にしてもよい。後の観察及び/又は操作は、細胞がデジタルマーキングされた場所と同一の場所(例えば、撮像場所)で、又は細胞がデジタルマーキングされた場所から離れた場所(例えば、撮像場所ではない操作場所)で実施してもよい。いくつかの場合、1つ又は複数の細胞のデジタルマーキングは、1つ以上の基準マークによるイメージャに対する、前記細胞を収容している細胞培養容器の位置合わせによって容易にしてもよい。いくつかの実施形態では、本明細書中に記載されるインキュベータは複数のワークステーション(例えば、1つ、又は2つ、又は3つ、又は4つ、又は5つ、又はこれより多いワークステーション)を含み、各ワークステーションは細胞のデジタル識別及びマーキングを可能にするように構成されている。
【0108】
ある実施形態では、本明細書中に記載されるインキュベータは、インキュベータキャビネット内の高スループットスクリーニング(HTS)を可能にするように構成されている。いくつかの実施形態では、HTSは、1日あたり100,000個以下の化合物の試験を意味する。いくつかの実施形態では、スクリーニングアッセイはマルチウェル形式、例えば、96ウェル、384ウェル形式、又は1,536ウェル形式で実施してもよく、自動化プロトコルを使用して実施され得る。このような高スループットアッセイでは、1日で数千個の異なる化合物又は組成物をスクリーニングすることが可能である。特に、マイクロタイタープレートの各ウェルを使用して、選択した試験化合物に対して別個のアッセイを実施することができる。或いは、濃度又はインキュベーションの時間効果が観察される場合、複数のウェルが1種の化合物の試験サンプルを含むことができる。1日あたり多くのプレートをアッセイすることが可能であり、アッセイを使用して、約6,000個、20,000個、50,000個まで、又は100,000個超の異なる化合物のアッセイスクリーニングが可能である。通常、本明細書中に開示されるアッセイのHTS実施は自動化の使用を伴う。いくつかの実施形態では、化合物、細胞及び/又は試薬添加、混合、インキュベーション、及び最終的に読み取り又は検出のために、1つ以上のロボットアームを含む組み込み式ロボットシステムがアッセイマイクロプレートを複数のアッセイステーション間で移動させる。一部の態様では、HTSアッセイは、多くのプレートを同時に調製、インキュベーション及び分析することを含み、データ収集プロセスを更に高速化してもよい。
【0109】
いくつかの実施形態では、アッセイは、試験細胞、対象細胞、及び1つ以上の試験化合物、例えば、10個、100個、1000個、10,000個以上の試験化合物を含むことができる。細胞及び試験薬は、細胞に対する試験化合物の効果を評価するのに適した状態で1つ以上の容器内に配置することができる。これらのアッセイは、本明細書中に記載される1つ以上のインキュベータの1つ以上のインキュベータキャビネット内で実施することができる。通常、容器は適切な組織培地を含み、試験化合物は組織培地中に存在し、本明細書中に記載されるインキュベータのインキュベータキャビネット内の培地に自動化形式で送達されてもよい。特定の細胞タイプの培養に適した培地を使用のために選択することができる。いくつかの実施形態では、培地は血清又は組織抽出物を含まないか又は実質的に含まないが、他の実施形態では、このような成分は存在する。いくつかの実施形態では、細胞はプラスチック又はガラス表面上で培養される。
【0110】
本発明のいくつかの実施形態を本明細書中に記載及び図示してきたが、当業者であれば、機能を実施し且つ/若しくは結果を得るための種々の他の手段及び/若しくは構造、並びに/又は本明細書中に記載される利点の1つ以上を容易に想定するであろう。このような変形形態及び/又は修正形態は、それぞれ本発明の範囲内と考えられる。より一般には、当業者であれば、本明細書中に記載される全てのパラメータ、寸法、材料及び構成は例示的なものであり、実際のパラメータ、寸法、材料及び/又は構成は本発明の教示が用いられる1つ又は複数の特定の用途に依存することを容易に理解するであろう。当業者であれば、単なる通常の実験を用いて、本明細書中に記載される本発明の特定の実施形態の多くの均等物を理解し、又は確認することができるであろう。したがって、前述の実施形態は単に例として提示され、添付の特許請求の範囲及びその均等物の範囲内において、具体的に記載及び特許請求される以外の手法で本発明を実施してもよいと理解すべきである。本発明は、本明細書中に記載されるそれぞれ個々の特徴、システム、物品、材料及び/又は方法を対象とする。加えて、2つ以上のこのような特徴、システム、物品、材料及び/又は方法の任意の組み合わせは、このような特徴、システム、物品、材料及び/又は方法が相互に矛盾しない場合、本発明の範囲内に含まれる。
【0111】
本明細書において、不定冠詞「1つの(a)」及び「1つの(an)」は、本明細書及び特許請求の範囲で使用する場合、特に明確に指示のない限り、「少なくとも1つの」を意味するものと理解すべきである。
【0112】
本明細書において、「及び/又は」という語句は、本明細書及び特許請求の範囲で使用する場合、結合した要素、例えば、ある場合には接続的に存在し、他の場合には分離的に存在する要素の「いずれか又は両方」を意味するものと理解すべきである。特に明確に指示のない限り、具体的に特定される要素に関連する又は関連しないに関わらず「及び/又は」節によって具体的に特定される要素以外の他の要素が任意選択的に存在してもよい。したがって、非限定的な例として、「含む」などのオープンエンドの語とともに使用される場合における「A及び/又はB」への言及は、一実施形態では、AはあるがBはなく(任意選択的にB以外の要素を含む)、別の実施形態では、BはあるがAはなく(任意選択的にA以外の要素を含む)、更に別の実施形態では、A及びBの両方(任意選択的に他の要素を含む)等を意味し得る。
【0113】
本明細書の明細書及び特許請求の範囲で使用する場合、「又は」は、上で定義した「及び/又は」と同一の意味を有するものと理解すべきである。例えば、リスト内の物品を分ける場合、「又は」又は「及び/又は」は、包含的、例えば、要素の数又はリストの少なくとも1つを含むだけでなく、2つ以上及び任意選択的に追加のリストにない物品も含むものと解釈される。「〜のうちの1つのみ」又は「〜のうちのちょうど1つ」などの明確に指示された用語のみ、又は特許請求の範囲で使用される場合の「からなる」は、要素の数又はリストのうちのちょうど1つの要素を含むことを意味する。概して、用語「又は」は、本明細書で使用する場合、「いずれか」、「〜のうちの1つ」、「〜のうちの1つのみ」、又は「〜のうちのちょうど1つ」などの排他的な用語に続く場合、排他的な選択肢(例えば、「1つ又はその他であり両方ではない」)を示すものと単に解釈される。「実質的に〜のみからなる」は、特許請求の範囲で使用される場合、特許法の分野で使用されるその通常の意味を有する。
【0114】
本明細書において、1つ以上の要素のリストに関する「少なくとも1つの」という語句は、本明細書及び特許請求の範囲で使用する場合、要素のリスト内の要素の任意の1つ以上から選択される少なくとも1つの要素を意味するものと理解すべきであるが、要素のリスト内に具体的に列挙された各要素の少なくとも1つを必ずしも含まず、要素のリスト内の要素の任意の組み合わせを排除しない。この定義は、また、具体的に明記された要素に関連する又は関連しないに関わらず、語句「少なくとも1つの」が指す要素のリスト内に具体的に明記される要素以外の要素が任意選択的に存在し得ることを可能にする。したがって、非限定的な例として、「A及びBの少なくとも1つ」(又は均等に「A又はBの少なくとも1つ」、又は均等に「A及び/又はBの少なくとも1つ」)は、一実施形態では、少なくとも1つ、任意選択的に2つ以上のAを含み、Bが存在せず(及び任意選択的にB以外の要素を含む)、別の実施形態では、少なくとも1つ、任意選択的に2つ以上のBを含み、Aが存在せず(及び任意選択的にA以外の要素を含む)、更に別の実施形態では、少なくとも1つ、任意選択的に2つ以上のAを含み、且つ少なくとも1つ、任意選択的に2つ以上のBを含む(及び任意選択的に他の要素を含む)等を意味し得る。
【0115】
特許請求の範囲及び上記明細書では、「含む」、「包含する」、「担持する」、「有する」、「含有する」、「伴う」、「保持する」等などの全ての移行句は、オープンエンド、例えば、含むが限定されないことを意味するものと理解されるべきである。米国特許庁米国特許審査便覧第2111.03節の記載のように、移行句「〜からなる」及び「実質的に〜のみからなる」のみがそれぞれクローズド又はセミクローズド移行句である。
【0116】
特許請求の範囲における、クレーム要素を修飾するための「第1の」、「第2の」、「第3の」等などの順序を表す用語の使用は、それ自体が1つのクレーム要素の別の要素に対するいかなる優先順位若しくは順位、又は方法の行為が実施される時間的順序を暗示的に意味するものではなく、クレーム要素を区別するために、特定の名称を有する1つのクレーム要素を、(順序を表す用語の使用以外には)同じ名称を有する別の要素と区別するためのラベルとして単に使用される。
【0117】
特に明確に指示のない限り、2つ以上の工程又は行為を含む、本明細書中で特許請求される任意の方法において、方法の工程又は行為の順序は、方法の工程又は行為が列挙される順序に必ずしも限定されないことも理解すべきである。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
1つ以上の細胞培養容器内における細胞のインキュベーションのための内部チャンバを含むインキュベータキャビネットと、
第1の撮像場所を含むホログラフィックイメージャであって、前記1つ以上の細胞培養容器が前記第1の撮像場所にあるとき、前記内部チャンバ内の前記細胞を撮像するように構成されたホログラフィックイメージャと、
前記1つ以上の細胞培養容器を貯蔵するための前記内部チャンバ内の貯蔵場所と、
前記1つ以上の細胞培養容器を前記第1の撮像場所から前記貯蔵場所へ、又は前記貯蔵場所から前記第1の撮像場所へ移動させるための細胞培養容器移動デバイスと
を含む、細胞培養インキュベータ。
(項目2)
前記ホログラフィックイメージャはホログラフィック顕微鏡である、項目1に記載のインキュベータ。
(項目3)
前記細胞培養容器移動デバイスは1つ以上のロボット要素を含む、項目1又は2に記載のインキュベータ。
(項目4)
前記細胞培養容器移動デバイスのコントローラを更に含む、項目1〜3のいずれか一項に記載のインキュベータ。
(項目5)
前記コントローラは前記インキュベータキャビネットの外部に配置されている、項目4に記載のインキュベータ。
(項目6)
前記コントローラはコンピュータを含む、項目4又は5に記載のインキュベータ。
(項目7)
前記1つ以上の細胞培養容器は、前記ホログラフィックイメージャとの前記1つ以上の細胞培養容器の位置合わせを容易にするための1つ以上の基準マークを含む、項目1〜6のいずれか一項に記載のインキュベータ。
(項目8)
第2の撮像場所を含む第2のイメージャを更に含み、前記第2のイメージャは、前記1つ以上の細胞培養容器が前記第2の撮像場所にあるとき、前記内部チャンバ内の前記細胞を撮像するように構成されている、項目1〜7のいずれか一項に記載のインキュベータ。
(項目9)
前記第2のイメージャは顕微鏡である、項目8に記載のインキュベータ。
(項目10)
前記細胞培養容器移動デバイスは、前記1つ以上の細胞培養容器を前記第1の撮像場所から前記第2の撮像場所へ、又は前記第2の撮像場所から前記第1の撮像場所へ移動させるように構成されている、項目8又は9に記載のインキュベータ。
(項目11)
1つ以上の細胞培養容器が前記第1の撮像場所から前記第2の撮像場所へ、又は前記第2の撮像場所から前記第1の撮像場所へ移動されると、前記第1の撮像場所における撮像領域と前記第2の撮像場所における撮像領域とが実質的に位置合わせされるように構成されている、項目10に記載のインキュベータ。
(項目12)
1つ以上の細胞培養容器内における細胞のインキュベーションのための内部チャンバを含むインキュベータキャビネットと、
前記内部チャンバ内の前記1つ以上の細胞培養容器を移動させるための細胞培養容器移動デバイスと、
前記1つ以上の細胞培養容器を貯蔵するための前記内部チャンバ内の貯蔵場所と、
位相差イメージャと、
第2のイメージャと
を含み、
前記位相差イメージャ及び前記第2のイメージャは、前記内部チャンバ内の前記細胞を撮像するように構成されている、細胞培養インキュベータ。
(項目13)
前記位相差イメージャは位相差顕微鏡である、項目12に記載のインキュベータ。
(項目14)
前記位相差イメージャの撮像領域と前記第2のイメージャの撮像領域とは実質的に位置合わせされる、項目12又は13に記載のインキュベータ。
(項目15)
1つ以上の細胞培養容器が維持され得る維持場所を更に含む、項目12〜14のいずれか一項に記載のインキュベータ。
(項目16)
前記細胞培養容器移動デバイスは、前記1つ以上の細胞培養容器を前記内部チャンバ内の場所間で移動させるように構成されている、項目15に記載のインキュベータ。
(項目17)
前記細胞培養容器移動デバイスのコントローラを更に含む、項目12〜16のいずれか一項に記載のインキュベータ。
(項目18)
前記コントローラは前記インキュベータキャビネットの外部に配置されている、項目17に記載のインキュベータ。
(項目19)
前記コントローラはコンピュータを含む、項目17又は18に記載のインキュベータ。
(項目20)
前記イメージャは、1つ又は複数の細胞にデジタルマーキングするように構成されている、項目1〜20のいずれか一項に記載のインキュベータ。
(項目21)
前記インキュベータは複数のワークステーションを含み、各ワークステーションは、1つ又は複数の細胞にデジタルマーキングするように構成されたイメージャを含む、項目20に記載のインキュベータ。
(項目22)
1つ以上の細胞培養容器内における細胞のインキュベーションのための内部チャンバを含むインキュベータキャビネットと、
第1の撮像場所を含む位相差イメージャであって、前記1つ以上の細胞培養容器が前記第1の撮像場所にあるとき、前記内部チャンバ内の前記細胞を撮像するように構成された位相差イメージャと、
前記1つ以上の細胞培養容器を貯蔵するための前記内部チャンバ内の貯蔵場所と、
前記1つ以上の細胞培養容器を前記第1の撮像場所から前記貯蔵場所へ、又は前記貯蔵場所から前記第1の撮像場所へ移動させるための細胞培養容器移動デバイスと
を含む、細胞培養インキュベータ。
(項目23)
前記位相差イメージャは位相差顕微鏡である、項目22に記載のインキュベータ。
(項目24)
前記細胞培養容器移動デバイスは1つ以上のロボット要素を含む、項目22又は23に記載のインキュベータ。
(項目25)
前記細胞培養容器移動デバイスのコントローラを更に含む、項目22〜24のいずれか一項に記載のインキュベータ。
(項目26)
前記コントローラは前記インキュベータキャビネットの外部に配置されている、項目25に記載のインキュベータ。
(項目27)
前記コントローラはコンピュータを含む、項目25又は26に記載のインキュベータ。
(項目28)
前記1つ以上の細胞培養容器は、前記位相差イメージャとの前記1つ以上の細胞培養容器の位置合わせを容易にするための1つ以上の基準マークを含む、項目22〜27のいずれか一項に記載のインキュベータ。
(項目29)
第2の撮像場所を含む第2のイメージャを更に含み、前記第2のイメージャは、前記1つ以上の細胞培養容器が前記第2の撮像場所にあるとき、前記内部チャンバ内の前記細胞を撮像するように構成されている、項目22〜28のいずれか一項に記載のインキュベータ。
図1
図2
図3