特許第6851637号(P6851637)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6851637組み込み式細胞操作システムを備える細胞培養インキュベータ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6851637
(24)【登録日】2021年3月12日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】組み込み式細胞操作システムを備える細胞培養インキュベータ
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20210322BHJP
   C12M 3/00 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   C12M1/00 A
   C12M3/00 A
   C12M3/00 B
【請求項の数】20
【全頁数】46
(21)【出願番号】特願2018-502617(P2018-502617)
(86)(22)【出願日】2016年3月31日
(65)【公表番号】特表2018-510659(P2018-510659A)
(43)【公表日】2018年4月19日
(86)【国際出願番号】US2016025356
(87)【国際公開番号】WO2016161169
(87)【国際公開日】20161006
【審査請求日】2019年4月1日
(31)【優先権主張番号】62/141,191
(32)【優先日】2015年3月31日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517343966
【氏名又は名称】スライブ バイオサイエンス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【弁理士】
【氏名又は名称】大塩 竹志
(72)【発明者】
【氏名】ブランチャード, アラン
【審査官】 小倉 梢
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/010449(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/089908(WO,A1)
【文献】 特表2009−511998(JP,A)
【文献】 特開2013−009618(JP,A)
【文献】 特開2010−273603(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00 − 1/42
C12M 3/00 − 3/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
WPIDS/WPIX(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の細胞培養容器内の細胞のインキュベーションのための内部チャンバを含むインキュベータキャビネットと、
外部環境から前記内部チャンバへと開く扉と、
前記内部チャンバ内の前記細胞を撮像するように構成されたイメージャと、
前記内部チャンバ内の前記1つ以上の細胞培養容器内の前記細胞を操作するためのマニピュレータであって、前記マニピュレータが、1つ以上の細胞スクレーパを含み、各細胞スクレーパが、マニピュレータ基部に接続可能な近位領域と、かき取り端を含む遠位領域とから延びる長尺状部材を含むハンドル部、前記近位領域から前記遠位領域へと延びるチャネル、および少なくとも1種の細胞または細胞培養培地を前記細胞培養容器に対して輸送するための、前記チャネルに接続された前記かき取り端における開口部を含む、マニピュレータと、
前記1つ以上の細胞培養容器を前記内部チャンバ内の場所間で移動させるための細胞培養容器移動デバイスと
を含む、細胞培養インキュベータ。
【請求項2】
前記イメージャはホログラフィック顕微鏡であるか、又は明視野顕微鏡であるか、又は蛍光顕微鏡である、
請求項1に記載のインキュベータ。
【請求項3】
前記1つ以上の細胞培養容器は、前記イメージャ及び前記マニピュレータに対する前記1つ以上の細胞培養容器の位置合わせを容易にするための基準マークを含む、請求項1又は2に記載のインキュベータ。
【請求項4】
撮像場所を更に含み、前記撮像場所は基準マークを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のインキュベータ。
【請求項5】
前記細胞を操作するための前記マニピュレータは細胞ピッカーをさらに含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のインキュベータ。
【請求項6】
前記マニピュレータを制御するためのコントローラを更に含み、任意選択的に、前記コントローラは前記インキュベータキャビネットの外部に配置されている、請求項1〜5のいずれか一項に記載のインキュベータ。
【請求項7】
前記コントローラはコンピュータを含む、請求項6に記載のインキュベータ。
【請求項8】
1つ以上の細胞培養容器内の細胞のインキュベーションのための内部チャンバを含むインキュベータキャビネットと、
前記内部チャンバへと開く扉と、
ホログラフィックイメージャ及び第1の撮像場所であって、前記ホログラフィックイメージャは、前記1つ以上の細胞培養容器が前記第1の撮像場所にあるとき、前記内部チャンバ内の前記細胞を撮像するように構成されている、ホログラフィックイメージャ及び第1の撮像場所と、
第2のイメージャ及び第2の撮像場所であって、前記イメージャは、前記1つ以上の細胞培養容器が前記第2の撮像場所にあるとき、前記内部チャンバ内の前記細胞を撮像するように構成されている、第2のイメージャ及び第2の撮像場所と、
前記第1の撮像場所及び/又は前記第2の撮像場所において前記1つ以上の細胞培養容器内の前記細胞を操作するためのマニピュレータであって、前記マニピュレータが、1つ以上の細胞スクレーパを含み、各細胞スクレーパが、マニピュレータ基部に接続可能な近位領域と、かき取り端を含む遠位領域とから延びる長尺状部材を含むハンドル部、前記近位領域から前記遠位領域へと延びるチャネル、および少なくとも1種の細胞または細胞培養培地を前記細胞培養容器に対して輸送するための、前記チャネルに接続された前記かき取り端における開口部を含む、マニピュレータと、
前記1つ以上の細胞培養容器を前記第1の撮像場所から前記第2の撮像場所へ、又は前記第2の撮像場所から前記第1の撮像場所へ移動させるための細胞培養容器移動デバイスと
を含む、細胞培養インキュベータ。
【請求項9】
前記ホログラフィックイメージャはホログラフィック顕微鏡である、請求項8に記載のインキュベータ。
【請求項10】
前記第2のイメージャは明視野顕微鏡又は蛍光顕微鏡である、請求項8又は9に記載のインキュベータ。
【請求項11】
細胞スクレーパは1つ以上の相互接続部品を含み、及び/又は、
任意選択的に、各細胞スクレーパはハンドルを含み、前記ハンドルは、かき取り端アセンブリを前記ハンドルに交換可能に接続するためのインターフェースを有する
請求項1または8に記載のインキュベータ。
【請求項12】
コントローラを更に含み、前記コントローラは、前記細胞スクレーパのかき取り端と細胞培養容器の前記表面との間の接触圧力を調整するために前記マニピュレータを制御するように構成されている、請求項11に記載のインキュベータ。
【請求項13】
前記細胞スクレーパに接続されたセンサ(例えば、ひずみゲージセンサ)を更に含み、前記センサは、コントローラに対し、前記細胞スクレーパのかき取り端と細胞培養容器の前記表面との間において検出された圧力に関する情報を与える信号を提供し、前記コントローラは、前記検出された圧力に応答して、前記マニピュレータに制御信号を送信して前記細胞スクレーパのかき取り端と細胞培養容器の前記表面との間の前記圧力を増加又は減少させるように構成されている、請求項12に記載のインキュベータ。
【請求項14】
各細胞スクレーパは前記マニピュレータから容易に取り外し可能であり、及び/又は、
各細胞スクレーパは、かき取り機能及び液体ハンドリング機能を実施するように構成されており、及び/又は、
各細胞スクレーパはかき取り端を含み、前記かき取り端は、細胞培養容器との接触時、限定可能な範囲のかき取り端のたわみを可能にするように構成されており、及び/又は、
各細胞スクレーパは、ポリマーから形成された1つ以上の構成要素を含
請求項11〜13のいずれか一項に記載のインキュベータ。
【請求項15】
前記コントローラは前記インキュベータキャビネットの外部に配置されている、請求項12に記載のインキュベータ。
【請求項16】
前記コントローラは前記インキュベータキャビネットの内部にあるか、又は前記インキュベータキャビネットに内蔵されている、請求項12に記載のインキュベータ。
【請求項17】
少なくとも1つの細胞スクレーパを有する第2のマニピュレータを更に含む、請求11〜16のいずれか一項に記載のインキュベータ。
【請求項18】
前記1つ以上の細胞培養容器を撮像場所から操作場所へ、又は操作場所から撮像場所へ移動させるように構成されており、前記1つ以上の細胞培養容器は実質的に位置合わせされている、請求項1〜17のいずれか一項に記載のインキュベータ。
【請求項19】
前記細胞培養容器移動デバイスは、前記内部チャンバ内において、1つ以上の細胞培養容器を撮像場所と操作場所との間で、及び/又は操作場所と撮像場所との間で取り出すように構成されている、請求項1〜18のいずれか一項に記載のインキュベータ。
【請求項20】
前記1つ以上の細胞培養容器は、前記イメージャ及び前記マニピュレータに対する前記1つ以上の細胞培養容器の位置合わせを容易にするための基準マークを含む、請求項1〜19のいずれか一項に記載のインキュベータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、米国特許法第119条(e)の下で、2015年3月31日に出願された「Cell Culture Incubators With Integrated Cell Manipulation Systems」という名称の米国特許仮出願第62/141,191号明細書の利益を主張し、この特許出願は、その内容全体が参照により本明細書中に組み込まれる。
【0002】
態様は、細胞培養インキュベータ及びこのようなインキュベータを使用するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
細胞培養は、研究及び臨床的状況の両方において有用な手法である。例えば、哺乳動物細胞の培養は、多くの場合、クローン細胞系、組織標本、インビトロ受精標本を確立するために、又は幹細胞の個体群を増殖させるために実施される。しかしながら、現在入手可能な細胞インキュベータでの細胞培養の維持は、高度に訓練された要員及び厳重な無菌条件を要する困難なプロセスである。例えば、付着細胞を適切な程度のコンフルエンスで継代するには、付着細胞をそれらが繁殖及び接着している細胞培養容器から解離しなければならない。通常、このプロセスは、細胞培養容器を制御された環境(例えば、インキュベータ)から細胞培養フードに取り出し、細胞を手動で継代することを伴う。この高度な人の介入は、汚染物質を培養物に導入するか又は細胞を損傷し、それにより培養の有効性及び繰り返し性が低下する可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在入手可能な細胞培養インキュベータは、生産的な長期の細胞培養にいくつかの障壁を課すものである。例えば、多くの現在入手可能な細胞インキュベータでは、細胞を操作するためにインキュベータから培養プレートを取り出す必要がある。一般に、培養物は、取り出し時、非無菌状態及び/又は物理的環境の変動(例えば、温度、湿度等又はこれらの任意の組み合わせの変化)に曝されることから、細胞培養プレートをインキュベータから取り出すことで培養物が汚染される危険性が増す。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書は、例えば、1つ以上の細胞スクレーパを有する組み込み式操作デバイスを備える細胞培養システムを提供する。この細胞培養システムは、汚染物質、外部環境及び/又はインキュベータ環境の変動に対する培養物の曝露を、細胞培養の維持(例えば、細胞の継代)のためにインキュベータから培養容器を取り出す必要を排除することによって低減することができる。
【0006】
したがって、いくつかの態様では、本明細書は、1つ以上の細胞培養容器内の細胞のインキュベーションのための内部チャンバを含むインキュベータキャビネットと(例えば、内部チャンバは、1つ以上の細胞培養容器を保持するように構成されている)と、外部環境から内部チャンバへと開く外部扉と、(例えば、1つ以上の細胞培養容器が撮像場所にあるときに)内部チャンバ内の細胞を撮像するように構成されたイメージャ(例えば、イメージャ及び撮像場所)と、内部チャンバ内の1つ以上の細胞培養容器内の細胞を操作する(例えば、付着細胞を細胞培養容器から解離する、細胞培養容器を洗浄する)ための、1つ以上の細胞スクレーパを有するマニピュレータ(例えば、マニピュレータ及び操作場所)と、1つ以上の細胞培養容器を前記内部チャンバ内の場所間で(例えば、撮像場所から操作場所へ又は操作場所から撮像場所へ)移動させるための細胞培養容器移動デバイスとを含む、細胞培養インキュベータを提供する。
【0007】
いくつかの実施形態では、マニピュレータは1つ以上の細胞スクレーパを含む。いくつかの実施形態では、各細胞スクレーパはハンドル部を含み、ハンドル部は、マニピュレータ基部に取付可能又は接続可能な近位領域と、かき取り端を含む遠位領域とから延びる長尺状部材を含む。いくつかの実施形態では、各細胞スクレーパは、かき取り端を含む連続する構造体(例えば、成形構造体)を含む。いくつかの実施形態では、各細胞スクレーパは1つ以上の相互接続部品を含む。いくつかの実施形態では、各細胞スクレーパはハンドルを含み、ハンドルは、かき取り端アセンブリをハンドルに交換可能に接続するためのインターフェースを有する。したがって、いくつかの実施形態では、スクレーパハンドルから取り外し可能又は解放可能な使い捨てスクレーパ端が提供される。いくつかの実施形態では、各細胞スクレーパはスクレーパ端を含み、スクレーパ端は、細胞培養容器の表面と接触可能であり、表面に接着している細胞を、細胞を実質的に殺すことなくかき取るように構成されている。いくつかの実施形態では、インキュベータはコントローラを更に含み、コントローラは、細胞スクレーパのかき取り端と細胞培養容器の表面との間の接触圧力を調整するためにマニピュレータを制御するように構成されている。いくつかの実施形態では、インキュベータは、細胞スクレーパに接続されたセンサ(例えば、ひずみゲージセンサ)を更に含み、センサは、コントローラに対し、細胞スクレーパのかき取り端と細胞培養容器の表面との間において検出された圧力に関する情報を与える信号を提供し、コントローラは、検出された圧力に応答して、マニピュレータに制御信号を送信して細胞スクレーパのかき取り端と細胞培養容器の表面との間の圧力を増加又は減少させるように構成されている。いくつかの実施形態では、各細胞スクレーパはマニピュレータから容易に取り外し可能である。いくつかの実施形態では、各細胞スクレーパは、かき取り機能及び液体ハンドリング機能を実施するように構成されている。いくつかの実施形態では、各細胞スクレーパはかき取り端を含み、かき取り端は、細胞培養容器との接触時、限定可能な範囲のかき取り端のたわみを可能にするように構成されている。いくつかの実施形態では、各細胞スクレーパは、ポリマーから形成された1つ以上の構成要素を含む。いくつかの実施形態では、各細胞スクレーパは、細胞及び/又は細胞培養培地を吸引するように構成された開口部を更に含み、開口部はかき取り端に極めて近接して配置されている。
【0008】
いくつかの実施形態では、細胞スクレーパは使い捨てである。いくつかの実施形態では、細胞スクレーパは、かき取り機能及び液体ハンドリング機能を実施するように構成されている。いくつかの実施形態では、細胞スクレーパは、細胞培養容器との接触時、限定可能な範囲のかき取り端のたわみを可能にするように構成されたかき取り端を含む。いくつかの実施形態では、かき取り端はポリマーから形成されている。いくつかの実施形態では、この端は、細胞のより大きい個体群(例えば、健康な幹細胞コロニー)から特定の細胞(例えば、分化前の細胞)を切除するように構成された幾何学的形状を含む。いくつかの実施形態では、かき取り端は、細胞及び又は細胞培養培地を輸送する(例えば、吸引するか、堆積させるか、又は吸引し且つ堆積させる)ように構成された開口部(例えば、オリフィス)を更に含み、開口部(例えば、オリフィス)はかき取りブレードに極めて近接して配置されている。
【0009】
いくつかの実施形態では、開口部(例えば、オリフィス)である。いくつかの実施形態では、開口部は、細胞及び/又は細胞培養培地を輸送する(例えば、吸引するか、堆積させるか、又は吸引し且つ堆積させる)ために構成されており、チャネルの一部を形成している(例えば、チャネルに接続されている)。いくつかの実施形態では、チャネルは細胞スクレーパに組み込まれている(例えば、細胞スクレーパハンドル及び/又はかき取りブレードの内側又は外側に沿って延びている)。いくつかの実施形態では、インキュベータは1つ以上の更なるマニピュレータを更に含み、1つ以上の更なるマニピュレータのそれぞれは、少なくとも1つの細胞スクレーパを有する。いくつかの実施形態では、(例えば、1つ以上のマニピュレータの)少なくとも1つの細胞スクレーパは、少なくとも2個、3個、4個、5個、10個、15個、20個、50個、100個、200個、300個、500個、又は1000個以下の細胞スクレーパである。
【0010】
いくつかの実施形態では、細胞培養インキュベータは、細胞を操作するためのマニピュレータのコントローラを更に含む。いくつかの実施形態では、マニピュレータのコントローラは、かき取り端と、細胞が接着している細胞培養容器の表面との間の接触力を定量化し、調整するように構成されている。いくつかの実施形態では、コントローラは、インキュベータキャビネットの外部に配置されている。いくつかの実施形態では、コントローラは、インキュベータキャビネットの内部にあるか、又はインキュベータキャビネットに内蔵されている。いくつかの実施形態では、コントローラはコンピュータを含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネット内にイメージャが提供されている。いくつかの実施形態では、イメージャは、かき取られるべき又はかき取られる細胞を撮像する一方、マニピュレータによる細胞の選択的なかき取りを可能にするように構成されている。いくつかの実施形態では、イメージャはホログラフィック顕微鏡である。いくつかの実施形態では、イメージャは明視野顕微鏡である。いくつかの実施形態では、イメージャは蛍光顕微鏡である。いくつかの実施形態では、イメージャは位相差顕微鏡である。いくつかの実施形態では、細胞培養インキュベータは、第2のイメージャ、又は第2のイメージャ及び第3のイメージャを更に含む。いくつかの実施形態では、3つのイメージャを有する細胞培養インキュベータは、ホログラフィック顕微鏡、明視野顕微鏡、及び蛍光顕微鏡を含む。いくつかの実施形態では、3つのイメージャを有する細胞培養インキュベータは、位相差顕微鏡、ホログラフィック顕微鏡、及び蛍光顕微鏡を含む。いくつかの実施形態では、イメージャを使用して細胞を分析し、かき取られるべき領域を自動的に決定する。他の実施形態では、かき取られるべき領域の自動選択はオペレータによって修正される。他の実施形態では、オペレータは、かき取られるべき領域を、イメージャによって取得した複数の画像から手動で選択する。
【0012】
いくつかの実施形態では、1つ以上の細胞培養容器は、フラスコ、懸濁培養フラスコ、スピナーフラスコ、プレート、ペトリ皿及び/又はバッグである。いくつかの実施形態では、1つ以上の細胞培養容器は、イメージャ及びマニピュレータに対する1つ以上の細胞培養容器の位置合わせを容易にするための基準マークを含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、細胞を操作するためのマニピュレータは細胞ピッカーである。いくつかの実施形態では、細胞培養インキュベータは、細胞を操作するためのマニピュレータのコントローラを更に含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の細胞培養容器が撮像場所から操作場所へ、又は操作場所から撮像場所へ移動されるとき、1つ以上の細胞培養容器は実質的に位置合わせされている。
【0014】
一部の態様では、本明細書は、1つ以上の細胞培養容器内の細胞のインキュベーションのための内部チャンバを含むインキュベータキャビネットであって、内部チャンバは、1つ以上の細胞培養容器を保持するように構成されている、インキュベータキャビネットと、内部チャンバへと開く扉と、第1の撮像場所を含むホログラフィックイメージャであって、ホログラフィックイメージャは、1つ以上の細胞培養容器が第1の撮像場所にあるとき、内部チャンバ内の細胞を撮像するように構成されている、ホログラフィックイメージャと、第2の撮像場所を含む第2のイメージャであって、イメージャは、1つ以上の細胞培養容器が第2の撮像場所にあるとき、内部チャンバ内の細胞を撮像するように構成されている、第2のイメージャと、第2の撮像場所において1つ以上の細胞培養容器内の細胞を操作するためのマニピュレータと、1つ以上の細胞培養容器を第1の撮像場所から第2の撮像場所へ、又は第2の撮像場所から第1の撮像場所へ移動させるための細胞培養容器移動デバイスとを含む、細胞培養インキュベータを提供する。
【0015】
いくつかの実施形態では、ホログラフィックイメージャはホログラフィック顕微鏡である。いくつかの実施形態では、第2のイメージャは明視野顕微鏡である。いくつかの実施形態では、第2のイメージャは蛍光顕微鏡である。いくつかの実施形態では、細胞培養インキュベータは第3のイメージャを更に含む。いくつかの実施形態では、細胞培養インキュベータは3つのイメージャを含む。いくつかの実施形態では、3つのイメージャを有する細胞培養インキュベータは、ホログラフィック顕微鏡、明視野顕微鏡、及び蛍光顕微鏡を含む。
【0016】
添付の図面は一定の縮尺率で描かれるものではない。図面では、種々の図に示されるそれぞれ同一の又はほぼ同一の構成要素は同じ番号で表される場合がある。明確化のため、全ての図の全ての構成要素に符号が付されるわけではない。ここで、例として、添付の図面を参照して本発明の種々の実施形態を記載する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】イメージャ及びマニピュレータを有する細胞培養インキュベータの例証的実施形態の概略図である。
図2A】細胞培養インキュベータの例証的実施形態の概略図である。図2Aは、第2のイメージャを有する細胞培養インキュベータの概略図を示す。図2Bは、細胞培養インキュベータの概略図を示し、撮像場所及び操作場所は同位置である。
図2B】細胞培養インキュベータの例証的実施形態の概略図である。図2Aは、第2のイメージャを有する細胞培養インキュベータの概略図を示す。図2Bは、細胞培養インキュベータの概略図を示し、撮像場所及び操作場所は同位置である。
図3】細胞培養インキュベータの更なる構成要素を示す概略図である。
図4-1】細胞培養インキュベータの例証的実施形態の概略図である。図4Aは、細胞スクレーパを含むマニピュレータを有する細胞培養インキュベータの概略図を示す。図4Bは、複数の細胞スクレーパを含むマニピュレータの概略図を示す。図4Cは、それぞれのマニピュレータが細胞スクレーパを含む、2つのマニピュレータの概略図である。図4Dは、細胞スクレーパを含むマニピュレータのx軸、y軸及びz軸に沿った可動域の概略図である。
図4-2】細胞培養インキュベータの例証的実施形態の概略図である。図4Aは、細胞スクレーパを含むマニピュレータを有する細胞培養インキュベータの概略図を示す。図4Bは、複数の細胞スクレーパを含むマニピュレータの概略図を示す。図4Cは、それぞれのマニピュレータが細胞スクレーパを含む、2つのマニピュレータの概略図である。図4Dは、細胞スクレーパを含むマニピュレータのx軸、y軸及びz軸に沿った可動域の概略図である。
図5】細胞スクレーパの例証的実施形態の概略図である。図5Aは、スクレーパブレードを含む、近位端及び遠位端を有する細胞スクレーパの概略図を示す。図5Bは、(例えば、細胞及び/又は細胞培養培地を吸引するための)開口部及びチャネルを含むスクレーパブレードを有する細胞スクレーパの概略図を示す。
図6】細胞スクレーパの例証的実施形態の概略図である。図6Aは、スクレーパブレードを含む、近位端及び遠位端を有する細胞スクレーパの側面概略図を示す。図6Bは、開口部及び(例えば、細胞及び/又は細胞培養培地を吸引するためのチャネル)を含むスクレーパブレードを有する細胞スクレーパの側面概略図を示す。
図7】細胞スクレーパの例証的実施形態の概略図である。図7Aは、スクレーパブレードを含む、近位端及び遠位端を有する細胞スクレーパの側面概略図を示す。図7Bは、開口部及び(例えば、細胞及び/又は細胞培養培地を吸引するためのチャネル)を含むスクレーパブレードを有する細胞スクレーパの側面概略図を示す。
図8】細胞スクレーパの例証的実施形態の概略図である。図8Aは、スクレーパブレードを含む、近位端及び遠位端を有する細胞スクレーパの後部(例えば、近位から遠位への)概略図を示す。図8Bは、(例えば、細胞及び/又は細胞培養培地を吸引するための)開口部及びチャネルを含むスクレーパブレードを有する細胞スクレーパの後部(例えば、近位から遠位への)概略図を示す。
図9】細胞スクレーパの例証的実施形態の概略図である。図9Aは、スクレーパブレードを含む、近位端及び遠位端を有する細胞スクレーパの概略図を示す。図9Bは、(例えば、細胞及び/又は細胞培養培地を吸引するための)開口部及びチャネルを含むスクレーパブレードを有する細胞スクレーパの概略図を示す。
図10】細胞スクレーパの例証的実施形態の概略図である。図10Aは、スクレーパブレードを含む、近位端及び遠位端を有する細胞スクレーパの概略図を示す。図10Bは、(例えば、細胞及び/又は細胞培養培地を吸引するための)開口部及びチャネルを含むスクレーパブレードを有する細胞スクレーパの概略図を示す。
図11】スクレーパブレードを含む、近位端及び遠位端を有する細胞スクレーパの概略図を示す。
図12】(例えば、細胞及び/又は細胞培養培地を吸引するための)開口部及びチャネルを含むスクレーパブレードを有する細胞スクレーパの概略図を示す。
図13】スクレーパブレードを含む、近位端及び遠位端を有する細胞スクレーパの例証的実施形態の概略図である。
図14】細胞スクレーパを含むマニピュレータのx軸、y軸及びz軸に沿った可動域の表示を有する、細胞スクレーパを含むマニピュレータの概略図である。
図15】細胞スクレーパの例証的実施形態の概略図である。図15Bは、スクレーパブレードの正面概略図を示す。図15Cは、スクレーパブレードの側面概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
現在使用されている細胞培養インキュベータは細胞培養の成功の障壁となっている。例えば、多くの細胞培養インキュベータでは、細胞培養容器の取り出し、及びその後の培養した細胞を撮像及び操作するための手動ハンドリングを必要とする。インキュベータによって提供される保護環境から培養した細胞を取り出すことで潜在的汚染物質及び環境変化への培養物の曝露が増し、細胞増殖を阻害する可能性がある。一部の場合、インキュベータからの培養の取り出しによって実験室要員がインキュベータ内で培養されている病原菌に曝露する。更に、人のオペレータによる培養物の手動ハンドリングにより、不適当な滅菌手法などの人的エラーによって汚染が導入される可能性が生じる。本明細書は、組み込み式のマニピュレータデバイスを有する細胞培養インキュベータ(例えば、細胞スクレーパを含むインキュベータ)を提供する。
【0019】
一部の態様では、本明細書は、1つ以上の細胞培養容器内の細胞のインキュベーションのための内部チャンバを含むインキュベータキャビネットであって、内部チャンバは、1つ以上の細胞培養容器を保持するように構成されている、インキュベータキャビネットと、外部環境から内部チャンバへと開く外部扉と、イメージャ及び撮像場所であって、イメージャは、1つ以上の細胞培養容器が撮像場所にあるとき、内部チャンバ内の細胞を撮像するように構成されている、イメージャ及び撮像場所と、内部チャンバ内の1つ以上の細胞培養容器内の細胞を操作するためのマニピュレータ及び操作場所と、1つ以上の細胞培養容器を撮像場所から操作場所へ、又は操作場所から撮像場所へ移動させるための細胞培養容器移動デバイスとを有する、細胞培養インキュベータに関する。いくつかの実施形態では、マニピュレータは1つ以上の細胞スクレーパを含む。
【0020】
本明細書で使用する場合、「インキュベータキャビネット」は、1つ以上の細胞培養容器を保持するように構成された1つ以上のチャンバを含むハウジングである。いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットは移動チャンバ及び内部チャンバを含み、その1つ又は両方は、1つ以上の細胞培養容器を保持するように構成されている。いくつかの実施形態では、インキュベータは、1つ以上のガス源(例えば、圧縮ガスシリンダ又はオゾン発生器)、(例えば、水、蒸留水、脱イオン水、細胞培養培地、空気、二酸化炭素、オゾン、及び酸素などの1種以上の液体又はガスを運ぶための)管類、エアフロー機構(例えば、弁、放出弁、ピンホール、ガス調整器、及び質量流量調整器)、圧力機構(例えば、ドライスクロールポンプ、回転ポンプ、運動量輸送ポンプ、拡散ポンプ、又はダイアフラムポンプなどのポンプ、吸引管、真空システム、及び送風機)、環境監視及び制御部(例えば、二酸化炭素、酸素、及びオゾンなどのガスの濃度を検出し且つ/又は制御するためのガスセンサ及び/又はモニタ、熱源又はヒートシンク、温度監視部及び制御部、湿度監視部、ガススクラバ、エアフィルタ、粒子状物質を計測するための計器、圧力計、及びフローメータ)、扉(例えば、開口部又はパネル)、窓(例えば、ガラス、プラスチック、複合材料、又はインキュベータキャビネット内部の領域を見るための他の実質的に透明な材料で作製された光学窓)、(例えば、1種以上のガス又は液体の導入又は除去を可能にするための)ポート、光源(例えば、ランプ、電球、レーザー、及びダイオード)、光学素子(例えば、顕微鏡対物レンズ、ミラー、レンズ、フィルタ、アパーチャ、波長板、窓、偏光子、ファイバー、ビームスプリッタ、及びビーム結合器)、撮像要素(例えば、バーコードリーダ、カメラ等)、電気的要素(例えば、回路、ケーブル、電源コード、並びにバッテリー、発電機、及び直流又は交流電源などの電源)、コンピュータ、機械的要素(例えば、モータ、ホイール、ギヤ、ロボット要素、並びにアクチュエータ、例えば、空気式アクチュエータ、電磁アクチュエータ、カムを備えたモータ、圧電アクチュエータ、及びリードスクリューを備えたモータ)、並びに制御要素(例えば、スピンホイール、ボタン、キー、トグル、スイッチ、カーソル、スクリュー、ダイヤル、スクリーン、及びタッチスクリーン)などの1つ以上の他の要素を含んでもよい。いくつかの実施形態では、これらの他の要素の1つ以上はインキュベータの一部であるが、インキュベータキャビネットの外部にある。いくつかの実施形態では、これらの他の要素の1つ以上はインキュベータキャビネット内に含まれる。
【0021】
本明細書で使用する場合、「内部チャンバ」は、インキュベータキャビネット内に配置されたチャンバである。内部チャンバは、1つ以上の窓(例えば、ガラス、プラスチック、複合材料、又はインキュベータキャビネット内部の領域を見るための他の実質的に透明な材料で作製された光学窓)を含んでもよい。内部チャンバは、(例えば、内部チャンバへの又は内部チャンバからの物品の移動を可能にするための)少なくとも1つの扉を含んでもよい。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの扉は内部チャンバと移動チャンバとの間に配置されてもよい。ある実施形態では、インターロックにより、望ましくないとき(例えば、インキュベータキャビネットの一部分が周囲環境へと開いているとき、汚染物質が内部チャンバに入ることができないように)に扉が開くことを防止してもよい。内部チャンバは任意の適切な大きさ及び幾何学的形状のものであってもよい。いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットは2つ以上の内部チャンバを含んでもよい。他の実施形態では、内部チャンバは、内部チャンバの異なる領域を画定するために1つ以上の隔壁を含んでもよい。1つ以上の内部チャンバ又はその隔壁は異なる環境条件を有してもよい。内部チャンバ内部の環境(例えば、気圧、ガス含有量、温度、光、及び湿度)は、1つ以上の計器、モニタ、センサ、制御部、ポンプ、弁、アパーチャ及び/又は光源によって測定及び/又は制御されてもよい。いくつかの実施形態では、内部チャンバは、例えば1つ以上の窓又は扉の周りに気密シール又はハ一メチックシールを有してもよい。特定の実施形態では、グリースなどのシーラント及び/又はOリング、ガスケット、セプタ、KF、LF、QF、クイックカップリングなどの機械的要素、又は他の封止機構を使用して、1つ以上の気密シールを確立してもよい。いくつかの実施形態では、溝、凹部、突起及び/又は成形プラスチック要素により、1つ以上の気密シールの確立を容易にしてもよい。
【0022】
内部チャンバは任意の有用な材料で作製してもよい。いくつかの実施形態では、内部チャンバは、1種以上のプラスチック、ポリマー、金属、又はガラスを含んでもよい。
【0023】
本明細書で使用する場合、「扉」は、開いているときに2つ以上の環境又は領域間の連通を可能にし、閉じているときに2つ以上の環境又は領域間の連通を防止する要素である。扉は、スライドドア、ポケットドア、スイングドア、ヒンジドア、回転ドア、ピボットドア、又はフォールディングドアなどの任意の種類のものであってもよい。扉は手動で、機械的に、又は電気的に動作してもよい。例えば、オペレータは扉若しくはその要素(例えば、ハンドル)を手動で把持し、引き、押し、及び/又はそうでなければ扉若しくはその要素(例えば、ハンドル)と物理的に相互作用することにより、又は機械的制御部(例えば、ボタン、トグル、スピンホイール、キー、スイッチ、カーソル、スクリュー、ダイヤル、スクリーン、又はタッチスクリーン)を操作することにより扉を開閉してもよい。ある実施形態では、扉は、コンピュータなどによる電気又はデジタル制御によって制御してもよい。扉は自動的に開く扉であってもよい。例えば、扉は、扉が開いているか閉じているかを検出し、及び/又は扉がいつ開閉するかを制御する、圧力センサ、赤外線センサ、モーションセンサ又はリモートセンサなどのセンサを含んでもよい。扉は、機械的、空気的、電気的、又は他の手段によって開いてもよい。いくつかの実施形態では、1つ以上の扉は1つ以上のロック機構を含んでもよい。特定の環境では、1つ以上の扉は、1つ以上の扉が望ましくないとき(例えば、1つ以上のチャンバが外部環境に対して開かれているとき)に開くことを防止するために、1つ以上のインターロック(例えば、ピン、バー、若しくはロックなどの機械的インターロック、又はスイッチなどの電気的インターロック)を含んでもよい。
【0024】
1つ以上の物品を移動するための移動デバイスを使用して、移動チャンバと内部チャンバとの間で物品を移動してもよい。いくつかの実施形態では、移動デバイスは、コンベヤベルト又は物品を操作するための他の類似のデバイスを含む。移動デバイスによって移動させることができる物品の非限定的な例としては、細胞培養容器、ピペット、コンテナ、シリンジ、並びに細胞の培養で用いられる他の材料及び器具が挙げられる。いくつかの実施形態では、2つ以上の移動デバイスが含まれてもよい。いくつかの実施形態では、移動チャンバ及び/又は内部チャンバ内に1つ以上の移動デバイスが配置されている。いくつかの実施形態では、移動デバイスは1つ以上のロボット要素を含んでもよい。例えば、移動デバイスは、1つ以上の物品(例えば、ピペット)を把持し、持ち上げ、押し、つかみ、摺動させ、回転させ、並進させ、放し、上げ、下げ、及び/又は傾けることが可能な1つ以上のロボットアームを含む含んでもよい。
【0025】
いくつかの実施形態では、移動デバイスは細胞培養容器移動デバイスである。本明細書で使用する場合、「細胞培養容器移動デバイス」は、1つ以上の細胞培養容器を第1の場所から第2の場所へ移動することができるデバイスを意味する。いくつかの実施形態では、移動デバイスは内部チャンバ内に固定されている。ある実施形態では、移動デバイスは、1つ以上の物品をインキュベータキャビネット内の複数の場所へ、又はインキュベータキャビネット内の複数の場所から移動してもよい。例えば、細胞培養容器移動デバイスを使用して、細胞培養容器を移動チャンバから内部チャンバへ、及び/又は貯蔵場所から撮像場所へ移動させてもよい。いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットは、1つ以上の物品を移動するための2つ以上の移動デバイス(例えば、チャンバ間及びチャンバ内で物品を移動するための別個の手段)を含む。細胞培養容器移動デバイスは、弁(例えば、電磁弁又は空気弁)、ギヤ、モータ(例えば、電気モータ又はステッピングモータ)、ステージ(例えば、xyステージ又はxyzステージ)、ピストン、ブレーキ、ケーブル、ボールスクリューアセンブリ、ラックアンドピニオン機構、グリッパ、アーム、ピボットポイント、ジョイント、並進要素、又は他の機械的若しくは電気的要素などの1つ以上の要素を含んでもよい。いくつかの実施形態では、細胞培養容器移動デバイスは1つ以上のロボット要素を含んでもよい。例えば、細胞培養容器移動デバイスは、1つ以上の細胞培養容器を把持し、持ち上げ、押し、つかみ、摺動させ、回転させ、並進させ、放し、上げ、下げ、及び/又は傾けることが可能なロボットアームを含んでもよい。いくつかの場合、細胞培養容器移動デバイスは、1つ以上の細胞培養容器を選択的に且つ解放可能に把持する。ある実施形態では、細胞培養容器移動デバイスは、機械的グリッパに結合されたアームを含んでもよい。例えば、アームは、一端に又はその近傍に、細胞培養容器を解放可能に把持するための機械的グリッパを含んでもよく、他端に又はその近傍においてインキュベータの表面又は要素に確実に結合されていてもよい。いくつかの実施形態では、ロボットアームは、機械的グリッパがアームに結合する箇所であるピボットポイントと、アームに沿ったアームの一部分のフレキシブルな回転及び並進を可能にするための1つ以上のピボット及び/又は並進ジョイントとを含む。このようにして、ロボットアームは、インキュベータキャビネット内の(例えば、内部チャンバ内の貯蔵アレイ内の)異なる水平位置及び垂直位置にある1つ以上の細胞培養容器にアクセスしてもよい。
【0026】
いくつかの実施形態では、細胞培養容器移動デバイスは自動移動デバイスである。例えば、自動移動デバイスはロボットアームであってもよく、ロボットアームは、インキュベータの内部チャンバ内の貯蔵場所からインキュベータの内部チャンバ内の撮像場所へ細胞培養容器を移動するようにプログラムされたコンピュータによって制御される。いくつかの実施形態では、細胞培養容器移動デバイスは手動で操作される。例えば、細胞培養容器をインキュベータの内部チャンバ内の貯蔵場所からインキュベータの内部チャンバ内の撮像場所へ移動するために、インキュベータの内部チャンバ内に配置されたロボットアームは、インキュベータの内部チャンバの外部の位置からユーザが制御するジョイスティックによって操作されてもよい。
【0027】
本明細書で使用する場合、「細胞培養容器」は、ハウジングと、細胞を培養するための1つ以上のチャンバとを含むデバイスである。いくつかの実施形態では、ハウジングはフレームである。フレームは蓋に結合されていてもよい。1つ以上のチャンバは、1つ以上の膜を含む細胞培養培地を含んでもよい。いくつかの実施形態では、細胞培養容器は細胞の増殖を促進するための栄養素を含んでもよい。ある実施形態では、細胞培養容器は1つ以上の細胞又はその群を完全に密封してもよい。細胞培養容器のハウジングは、細胞培養容器とその周囲環境との間におけるガスの移動を可能にするための1つ以上の孔又は開口部を含んでもよい。細胞培養容器の非限定的な例としては、フラスコ、懸濁培養フラスコ、スピナーフラスコ、プレート、ペトリ皿及び/又はバッグが挙げられる。ある実施形態では、細胞培養容器は、透明な又は光学的に透明な窓を含む。例えば、細胞培養容器のハウジングに結合された蓋は、例えば、顕微鏡又は他のイメージャで細胞を観察するための光学的に透明な部分を含んでもよい。いくつかの実施形態では、細胞培養容器は、実質的に非反射性の1つ以上の部分を含む。いくつかの実施形態では、細胞培養容器にはバーコードが付されている。したがって、いくつかの実施形態では、インキュベータはバーコードリーダを含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、細胞培養容器は、特定の目的、例えば、細胞増殖、細胞分化、細胞を特定の検定条件に曝す等のために所望される1種以上の試薬を予めキット化してもよい。いくつかの実施形態では、予めキット化された細胞培養容器は、実験前に細胞培養において特定の実験を実施するのに有用な試薬(例えば、細胞増殖培地、増殖因子、選択剤、標識剤等)を含む。予めキット化された細胞培養容器は、試薬の添加を必要としない細胞培養の準備が整った容器を提供することによって実験プロトコルを容易にしてもよい。例えば、自己細胞治療のために分化細胞の個体群を増殖する目的のため、細胞分化用の試薬が予めキット化された細胞培養容器に患者の前駆細胞を添加してもよい。予めキット化された細胞培養容器は、予めキット化された細胞培養容器内の試薬の推奨貯蔵パラメータによって決定される任意の適切な温度で貯蔵することができる。いくつかの実施形態では、予めキット化された細胞培養貯蔵容器は、使用前、約−80℃〜約37℃の温度で貯蔵されている。いくつかの実施形態では、予めキット化された細胞培養貯蔵容器は、使用前、約−80℃〜約−20℃の温度で貯蔵されている。いくつかの実施形態では、予めキット化された細胞培養貯蔵容器は、使用前、約−20℃〜約4℃の温度で貯蔵されている。いくつかの実施形態では、予めキット化された細胞培養貯蔵容器は、使用前、約4℃〜約37℃の温度で貯蔵されている。いくつかの実施形態では、予めキット化された細胞培養容器は使い捨てである。いくつかの実施形態では、予めキット化された細胞培養容器は再利用可能及び/又は再充填可能である。
【0029】
本明細書で使用する場合、「貯蔵場所」は、1つ以上の細胞培養容器が貯蔵される(例えば、インキュベータキャビネット内の)場所を意味する。例えば、1つ以上の細胞培養容器は貯蔵場所において貯蔵され、後に異なる場所(例えば、撮像場所)に移動させてもよい。貯蔵場所は、インキュベータの内部チャンバキャビネット内に配置されてもよい。貯蔵場所は、複数の細胞培養容器を貯蔵するように構成されてもよい。例えば、貯蔵場所は、1つ以上の貯蔵アレイ、ラック、棚、仕切り、分類棚、トレー、スロット、又は他の位置若しくは機構を含んでもよい。いくつかの実施形態では、貯蔵場所は細胞培養容器を水平に貯蔵するように構成されてもよい一方、他の実施形態では、貯蔵場所は細胞培養容器を垂直に貯蔵するように構成されてもよい。例えば、貯蔵場所は、互いに垂直に積み重ねられた細胞培養容器を受け入れるための複数のスロットを含んでもよい。貯蔵場所は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、100個、又は任意の他の個数の細胞培養容器を保持するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、貯蔵場所は、100個超の細胞培養容器を保持するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、貯蔵場所は、1つ以上の貯蔵アレイ、ラック、棚、仕切り、分類棚、トレー、スロット、又は他の位置若しくは機構を移動するための機構を含んでもよい。例えば、貯蔵場所は、貯蔵ラックを内部チャンバ内の1つの位置から内部チャンバ内の別の位置へ移動して、例えば、異なる位置に貯蔵された1つ以上の細胞培養容器へのアクセスを容易にするための1つ以上のモータと、可動ステージ(例えば、xyステージ又はxyzステージ)とを含んでもよい。いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットは、1つ以上の細胞培養容器を移動するための1つ以上の細胞培養容器移動デバイスを含んでもよい。
【0030】
貯蔵場所は、1つ以上の細胞培養容器を確実に保持するか又は受け入れるように構成されてもよい。例えば、貯蔵場所の1つ以上の構成要素は、1つ以上の粘着的、磁気的、電気的及び/又は機械的構成要素(例えば、スナップ、締結具、ロック、止め金、ガスケット、Oリング、セプタ、ばね、及び他の係合部材)を有する1つ以上のロック機構を含んでもよい。いくつかの実施形態では、貯蔵場所及び/又は細胞培養容器は、1つ以上の溝若しくは凹部を含んでもよく、及び/又は成形プラスチック部品を含んでもよい。例えば、細胞培養容器は、貯蔵場所にある1つ以上の対応する溝、穴、又は凹部に挿入するための成形された1つ以上の突出特徴部(例えば、リム又はノブ)を含んでもよい。いくつかの場合、細胞培養容器は、貯蔵場所にある1つ以上の対応する突出特徴部に適合するように成形された1つ以上の溝、穴、又は凹部を含んでもよい。
【0031】
本明細書で使用する場合、「イメージャ」は、光(例えば、送信光又は散乱光)、色、形態、又は要素の数などの他の検出可能なパラメータ、又はこれらの組み合わせを測定するための撮像デバイスを意味する。イメージャは撮像デバイスとも呼ばれる場合がある。ある実施形態では、イメージャは、1つ以上のレンズ、ファイバー、カメラ(例えば、電荷結合デバイスカメラ又はCMOSカメラ)、アパーチャ、ミラー、光源(例えば、レーザー又はランプ)、又は他の光学素子を含む。イメージャは顕微鏡であってもよい。いくつかの実施形態では、イメージャは明視野顕微鏡である。他の実施形態では、イメージャはホログラフィックイメージャ又は顕微鏡である。他の実施形態では、イメージャは蛍光イメージャ又は顕微鏡である。他の実施形態では、イメージャは位相差顕微鏡である。
【0032】
本明細書で使用する場合、「蛍光顕微鏡」は、細胞又は他の生物学的実体の表面内及び/又は表面上のいずれかに存在する蛍光標識から放出される光を検出することができる撮像デバイスを意味し、前記標識は、異なる波長の光の吸収に応答して特定の波長の光を放出する。
【0033】
本明細書で使用する場合、「明視野顕微鏡」は、サンプルを照明し、サンプルによって吸収される光に基づいて画像を生成するイメージャである。任意の適切な明視野顕微鏡を、本明細書中に記載されるインキュベータキャビネットと併せて使用してもよい。
【0034】
本明細書で使用する場合、「位相差顕微鏡」は、透明標本を通過する光の位相ずれを画像の明るさの変化に変換するイメージャである。位相ずれ自体を見ることはできないが、明るさの変化として示される場合には見えるようになる。任意の適切な位相差顕微鏡本明細書中に記載されるインキュベータと併せて使用してもよい。
【0035】
本明細書で使用する場合、「ホログラフィックイメージャ」は、電磁放射の強度及び位相情報(例えば、波面)の両方を測定することによって物体(例えば、サンプル)に関する情報を提供するイメージャである。例えば、ホログラフィック顕微鏡は、サンプルを通過後に伝送される光と、サンプルを透過する光のビームを基準ビームと組み合わせることにより得られる干渉縞(例えば、位相情報)との両方を測定する。
【0036】
ホログラフィックイメージャは、また、別個の基準ビームを妨げることなく、且つ実質的にコヒーレントな源と1つ又は複数の放射線検出器との間に任意の屈折又は反射光学素子を有して又は有さずに、1つ以上の放射線検出器により、撮像される物体によって直接回折又は散乱した、実質的にコヒーレントな源からの電磁放射のパターンを記録するデバイスであってもよい。
【0037】
いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットは1つのイメージャを含む。いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットは2つのイメージャを含む。いくつかの実施形態では、2つのイメージャは同一種類のイメージャ(例えば、2つのホログラフィックイメージャ、又は2つの明視野顕微鏡、又は2つの位相差顕微鏡)である。いくつかの実施形態では、第1のイメージャは明視野顕微鏡であり、第2のイメージャはホログラフィックイメージャである。いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットは2つを超えるイメージャを含む。いくつかの実施形態では、細胞培養インキュベータは3つのイメージャを含む。いくつかの実施形態では、3つのイメージャを有する細胞培養インキュベータは、ホログラフィック顕微鏡、明視野顕微鏡、及び蛍光顕微鏡を含む。いくつかの実施形態では、3つのイメージャを有する細胞培養インキュベータは、位相差顕微鏡、ホログラフィック顕微鏡、及び蛍光顕微鏡を含む。
【0038】
本明細書で使用する場合、「撮像場所」は、イメージャが1つ以上の細胞を撮像する場所である。例えば、撮像場所は、光源の上方に及び/又は1つ以上の光学素子(例えば、レンズ、アパーチャ、ミラー、対物レンズ、及び光コレクタ)と垂直に位置合わせされて配置されてもよい。
【0039】
本明細書で使用する場合、「基準マーク」は、1つ以上の構成要素の位置合わせを容易にする特徴を意味する。いくつかの実施形態では、基準マークは、蛍光培地上の1つ以上の穴アパーチャ又は印刷された若しくはエンボス加工された蛍光材料を含んでもよい。他の実施形態では、基準マークは格子、線、又は記号を含んでもよい。いくつかの実施形態では、1つ以上の細胞培養容器は、1つ以上の細胞培養容器のイメージャとの位置合わせを容易にするための1つ以上の基準マークを含む。いくつかの実施形態では、基準マークは、移動デバイス及びロボットデバイスを含む可動部品と関連付けてもよい。
【0040】
いくつかの実施形態では、細胞培養容器はイメージャと実質的に位置合わせされている。いくつかの実施形態では、細胞培養容器は少なくとも1つの基準マークの使用によってイメージャと実質的に位置合わせされている。本明細書で使用する場合、「実質的に位置合わせされている」という用語は、1つ以上の要素が互いに実質的に重なっており、同一であり、及び/又は列で並んでいることを意味する。1つ以上の位置(例えば、撮像場所)における1つ以上の細胞培養容器の実質的な位置合わせにより、細胞培養容器の重なった画像の取得を可能にすることによってサンプルの分析を容易にしてもよい。例えば、細胞培養容器は第1の撮像場所において第1のイメージャにより撮像されてもよく、その後、第2の撮像場所において第2のイメージャにより撮像されてもよい。各イメージャの撮像領域が実質的に位置合わせされている場合、第1のイメージャによって記録された画像と第2のイメージャによって記録された画像とを分析のために組み合わせ(「つなぎ合わせ」)てもよい。1つ以上の細胞培養容器上にある1つ以上の基準マークによって実質的な位置合わせを容易にしてもよい。いくつかの場合、1つ以上の撮像場所又は他の場所(例えば、操作場所又は維持場所)にある1つ以上の基準マークによって実質的な位置合わせを容易にしてもよい。
【0041】
本明細書で使用する場合、「細胞を操作するためのマニピュレータ」は、内部チャンバ内で細胞を操作するためのデバイスを意味する。マニピュレータは、1つ以上の針、キャピラリー、ピペット及び/又はマイクロマニピュレータを含んでもよい。いくつかの実施形態では、マニピュレータは1つ以上の細胞スクレーパを含む。本明細書で使用する場合、「細胞スクレーパ」は、表面から細胞をかき取るのに好適なかき取り端を含むデバイスを意味する。いくつかの実施形態では、細胞スクレーパはハンドル部を含み、ハンドル部は、マニピュレータ基部に取付可能又は接続可能な近位領域と、かき取り端を含む遠位領域とから延びる長尺状部材を含む。いくつかの実施形態では、細胞スクレーパはかき取り端を含む連続する構造体(例えば、成形構造体)である。しかしながら、いくつかの実施形態では、細胞スクレーパは1つ以上の相互接続部品を含む。例えば、いくつかの実施形態では、細胞スクレーパはハンドルを含み、ハンドルは、かき取り端又はかき取り端アセンブリをハンドルに交換可能に接続するか又は取り付けるためのインターフェースを有する。いくつかの実施形態では、かき取り端は細胞培養容器の表面又は他の表面と接触可能な細胞スクレーパの一部分であり、表面を清掃するために、及び/又は表面に接着している細胞を、例えば細胞を機械的に溶解することで細胞を実質的に殺すことなくかき取るために、表面から物質をかき取るように適切に構成されている。いくつかの実施形態では、かき取り端又はかき取り端アセンブリは、細胞培養物間の交差汚染を防止するために使い捨てであることが望ましい。したがって、いくつかの実施形態では、かき取り端又はかき取り端アセンブリは使い捨てである。
【0042】
いくつかの実施形態では、かき取り端は、ブレード、ワイパ、又はそうでなければ、端(例えば、斜端)を含む実質的に平坦な表面を含み、端は、細胞培養容器の表面に沿って押したとき又は引いたときに細胞培養容器の表面から細胞を除去するように構成されている。いくつかの実施形態では、かき取り端は、ポリマー、若しくはポリマー(例えば、プラスチック、シリコーン)、ガラス、金属、又は任意の他の適切な材料の組み合わせから作製することができる。しかしながら、いくつかの実施形態では、かき取り端は、接触時、限定可能な範囲のかき取り端のたわみを可能にする機械的/材料特性を含み、これにより、細胞培養容器表面/付着細胞との接触角度の精密な制御を可能にする。いくつかの実施形態では、細胞スクレーパの端はポリマーから形成されている。かき取り端を形成するために使用されるポリマーの例としては、シリコーン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル(PVC)、及びナイロンが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、ブレードは、細胞のより大きい個体群(例えば、健康な幹細胞コロニー)から特定の細胞(例えば、分化前の細胞)を切除するように構成された幾何学的形状を含む。
【0043】
ある実施形態では、細胞スクレーパは、かき取り機能及び液体ハンドリング機能を実施するように構成されている。例えば、いくつかの実施形態では、スクレーパは開口部(例えば、オリフィス)を更に含む。開口部は、ピペットヘッド又は他の流体移送デバイス(例えば、ポンプ、真空チャンバ)への付随するポートとともに、かき取り端(例えば、ブレード)に極めて近接しており、したがって、細胞材料を同時にかき取ること及び吸引することを可能にする。このような構成は、いくつかの実施形態では、細胞洗浄又はコロニーピッキング(例えば、幹細胞分離に関連して)の場合において有用である。
【0044】
いくつかの実施形態では、細胞及び/又は細胞培養培地を輸送する(例えば、吸引するか、堆積させるか、又は吸引し且つ堆積させる)ように構成された開口部(例えば、オリフィス)はチャネルの一部を形成する。本明細書で使用する場合、「チャネル」は、1つの場所から別の場所への物体(例えば、細胞培養培地、細胞)の輸送を可能にするように設計された、部分的に囲まれた導管(例えば、円筒状、管状、又は直方体通路)を意味する。いくつかの実施形態では、チャネルは細胞スクレーパに組み込まれている(例えば、細胞スクレーパハンドル及び/又はかき取りブレードの内側又は外側に沿って延びている)。例えば、いくつかの実施形態では、細胞スクレーパは、開口部を含むチャネルを含むように構成された中空ハンドルを含み、開口部は、細胞スクレーパのかき取りブレード(例えば、かき取り端)内又は上に配置されている。中空スクレーパハンドルの内部(例えば、スクレーパハンドルキャビティ内)にあるチャネルは、ハンドルキャビティ内の体積の約0.1%〜ハンドル内の体積の約99%の範囲の体積を有することができる。例えば、チャネルは、中空スクレーパハンドルの壁に直接接続された又は取り付けられた(例えば、内壁又は外壁に沿って延びる)別個のキャピラリーチューブ又は中空針(例えば、28ゲージ〜10ゲージのゲージを有する針)であり得る。いくつかの実施形態では、中空スクレーパハンドル内の体積全体がチャネルを形成する。例えば、いくつかの実施形態では、細胞スクレーパは、中空ハンドルと、ハンドルの中空内部(例えば、チャネル)に通じる開口部を有するスクレーパブレードとを含む。いくつかの実施形態では、凝集した細胞の混合又は分離を促進するためのメッシュ、グリル、スクリーン、又は星形の構造体などの内部構造体が、細胞スクレーパハンドル及び/又はかき取りブレードのチャネルに組み込まれている。任意の特定の理論により拘束されることを望むものではないが、開口部及びチャネルを含む細胞スクレーパは、細胞かき取り機能及び液体ハンドリング機能を同時に実施することができる(例えば、細胞を粉砕すると同時に、粉砕された細胞及び細胞培養培地などのデブリを除去する)。
【0045】
いくつかの実施形態では、マニピュレータは少なくとも1つの細胞スクレーパを含む。例えば、マニピュレータは、約1〜約100個、約10〜約100個、約20〜約1000個、又は約50〜約500個の細胞スクレーパを含んでもよい。いくつかの実施形態では、マニピュレータは、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個、24個、48個、96個、384個又は1536個の細胞スクレーパを含む。いくつかの実施形態では、図4Bに示すように、複数の細胞スクレーパを有するマニピュレータは、細胞スクレーパの「群」を有すると称される。いくつかの実施形態では、マニピュレータは1つの細胞スクレーパを含む。いくつかの実施形態では、インキュベータは複数のマニピュレータを含んでもよく、それぞれのマニピュレータは少なくとも1つの細胞スクレーパを有する(例えば、図4Cに示されるように)。
【0046】
いくつかの実施形態では、細胞スクレーパは、付着細胞を細胞培養容器の表面(又は複数の表面)から解離するのに有用である。例えば、細胞スクレーパは、培養容器に対する付着細胞のタンパク質結合を手動で機械的に剥離するために用いてもよい。場合により、かき取りによる機械的解離は、トリプシン又はACCUTASE(登録商標)などの酵素の使用によって補助される。しかしながら、ある実施形態では、解離の主な手段として酵素を使用するには、酵素に細胞を比較的長く曝露して基質からの十分な細胞の剥離を確実とすることが必要であるという主な理由から、細胞解離の好適な方法は細胞のかき取りである。いくつかの実施形態では、かき取りは増殖中の幹細胞の継代に好適な方法である。
【0047】
マニピュレータは細胞ピッカーを含んでもよい。細胞を操作するためのマニピュレータは、第1の場所に存在する所望の細胞又はその群を所定の基準に基づいて検出し、この所望の細胞又はその群を第1の場所から第2の場所へ移動することにより動作してもよい。細胞ピッカーは、所望の又は所望でない(例えば、分化前の細胞排除(weeding))細胞又はその群を手動又は自動分析に基づいて検出、ピッキング及び/又は移動してもよい。いくつかの実施形態では、イメージャによって生成される情報を分析し、所望の又は所望でない細胞を検出してもよい。細胞ピッカーは、その後、所望の又は所望でない細胞を第2の場所に移動させてもよい。例えば、イメージャが細胞培養容器内又は細胞培養容器上の細胞を撮像場所において撮像してもよく、画像を使用して所望の又は所望でない細胞又はその群を同定する。細胞ピッカーは、その後、例えば、1つ又は複数の各所望の細胞に針、キャピラリー、ピペット、又はマイクロマニピュレータで接触し、細胞培養容器又は内部チャンバ内の別の場所内又は別の場所上において1つ又は複数の細胞のその第1の場所から第2の場所への移動を実施することにより、所望の又は所望でない細胞を移動させてもよい。いくつかの実施形態では、細胞の第1の場所は細胞培養容器内であっても細胞培養容器上であってもよい。特定の実施形態では、細胞ピッカーは、細胞培養容器内又は細胞培養容器上の第1の場所から同じ細胞培養容器上の第2の場所へ細胞を移動させる。他の実施形態では、細胞ピッカーは、第1の細胞培養容器内又は第1の細胞培養容器上の第1の場所から第2の細胞培養容器内又は第2の細胞培養容器上の第2の場所へ細胞を移動させる。特定の他の実施形態では、細胞ピッカーは、細胞培養容器内又は細胞培養容器上の第1の場所から細胞培養容器内又は細胞培養容器上ではない内部チャンバ内の第2の場所へ細胞を移動させる。
【0048】
いくつかの実施形態では、マニピュレータは少なくとも1つの微小電極を含む。本明細書で使用する場合、用語「微小電極」は、細胞に電気刺激を送達するために使用される電気伝導体を意味する。例えば、微小電極は、遺伝物質を電気穿孔法によって細胞内に送達するために使用され得る。いくつかの実施形態では、マニピュレータは少なくとも1つのマイクロインジェクタを含む。一般に、マイクロインジェクタはガラスマイクロピペットであり、ガラスマイクロピペットは引かれて、鋭利な中空構造体を形成する。鋭利な中空構造体は細胞の膜に穿孔することが可能であり、細胞内に遺伝物質を導入するための導管として機能する。
【0049】
いくつかの実施形態では、マニピュレータは手動で操作される。例えば、インキュベータキャビネットの内部チャンバ内に配置された細胞ピッカーを有するマニピュレータは、インキュベータの内部チャンバキャビネットの外部に配置された、ユーザ管理の(user−directed)ジョイスティックに電子的に接続され、これにより制御されてもよい。いくつかの実施形態では、ユーザ管理のジョイスティックはディスプレイデバイスに接続されている。いくつかの実施形態では、ディスプレイデバイスは、インキュベータの内部チャンバキャビネット内において撮像デバイスにより捕捉された画像を示す。
【0050】
いくつかの実施形態では、マニピュレータは自動である。例えば、インキュベータキャビネットの内部チャンバ内のマニピュレータはインキュベータキャビネット外部のコントローラに電子的に接続されてもよく、コントローラは、マニピュレータに指示するコンピュータに電子的に接続されている。いくつかの実施形態では、コントローラはハードウェアと接続する。ハードウェアは、かき取り端と、細胞が接着している細胞培養容器の表面との間の接触力を定量化し、調整するように構成されている。例えば、マニピュレータ又は細胞スクレーパは、センサ(例えば、圧力センサ)を更に含んでもよい。センサは、検出された圧力に関する情報を与える信号をコントローラに提供し、これに応答して、コントローラが(例えば、マニピュレータに)、細胞スクレーパのかき取り端(例えば、ブレード)にマニピュレータが作用する圧力を増加又は低下させるための信号を送信する。いくつかの実施形態では、コントローラはソフトウェア及び/又はハードウェアを含む。ソフトウェア及び/又はハードウェアは、スクレーパ先端部/ブレードの360°以下の回転のプログラミングのために構成されており、したがって、培養容器のウェルの幾何学的形状を問わず、スクレーパブレードとかき取られる細胞との間に一定の迎角が維持されるように、x軸、y軸及びz軸における直線運動と協調するかき取り動作のプログラミングを可能にする。いくつかの実施形態では、コントローラは1つ以上の構成要素又はハードウェアと接続する。1つ以上の構成要素又はハードウェアは、例えば、撮像により、細胞の凝集塊の位置特定及び判定を可能にするように構成され、したがって、マニピュレータで制御される細胞スクレーパによる後のかき取り/吸引を可能にする。
【0051】
細胞を操作するためのマニピュレータの1つ以上の要素は、操作前に、例えば、滅菌組成物又は方法(例えば、エタノール又はオゾンガス、紫外線、過酸化水素)を使用して滅菌されてもよい。
【0052】
本明細書で使用する場合、「操作場所」は、細胞を操作するためのマニピュレータ(例えば、細胞ピッカー)によって細胞が操作される場所を意味する。ある実施形態では、操作場所は撮像場所と同一であってもよい。
【0053】
一態様によれば、細胞培養インキュベータは、撮像場所及び操作場所を有するインキュベータキャビネットを含む。細胞培養容器の細胞は、撮像場所においてイメージャにより撮像され、操作場所においてマニピュレータにより操作される。いくつかの実施形態では、撮像場所及び操作場所は、インキュベータキャビネット内の2つの異なる位置である。細胞培養インキュベータは、細胞培養容器を撮像場所と貯蔵場所との間で移動する移動デバイスを含んでもよい。他の実施形態では、培養容器の細胞が操作場所において撮像されるように、撮像場所及び操作場所は同じである。
【0054】
いくつかの実施形態では、イメージャはマニピュレータとともに使用してもよい。例えば、イメージャが細胞培養容器内又は細胞培養容器上の細胞を撮像場所において撮像してもよく、画像を使用して所望の細胞又はその群を同定する。撮像場所に常駐していてもしていなくてもよい細胞ピッカーは、その後、所望の又は所望でない細胞を移動してもよい。移動は、例えば、1つ又は複数の各所望の細胞に針、キャピラリー、ピペット又はマイクロマニピュレータで接触し、1つ又は複数の細胞の、その第1の場所から細胞培養容器又は内部チャンバ内の別の場所内又は別の場所上の第2の場所への移動を実施することによる。いくつかの実施形態では、細胞ピッカーは、細胞培養容器内又は細胞培養容器上の第1の場所から同じ細胞培養容器上の第2の場所へ細胞を移動させる。他の実施形態では、細胞ピッカーは、第1の細胞培養容器内又は第1の細胞培養容器上の第1の場所から第2の細胞培養容器内又は第2の細胞培養容器上の第2の場所へ細胞を移動させる。特定の他の実施形態では、細胞ピッカーは、細胞培養容器内又は細胞培養容器上の第1の場所から細胞培養容器内又は細胞培養容器上ではない内部チャンバ内の第2の場所へ細胞を移動させる。
【0055】
いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネット内の1つの場所が撮像場所及び操作場所として機能してもよい。一実施形態では、細胞はそれらがマニピュレータによって操作される際に撮像される。いくつかの実施形態では、撮像場所及び撮像場所は、インキュベータキャビネット内の別個の場所にあってもよい。
【0056】
いくつかの実施形態では、マニピュレータはセンサを含む。センサは、その位置を報告し、センサが細胞培養容器の底部に接触したときを判定することを可能にする。いくつかの実施形態では、繰り返し性及び精度を達成するために、イメージャを使用してマニピュレータを案内してもよい。いくつかの実施形態では、マニピュレータの伸展性(例えば、弾力性)を用いて、非常に厳しい機械的精度の必要性を緩和してもよい。
【0057】
図を参照すると、図1は、細胞培養インキュベータの1つの例証的実施形態を示す。細胞培養インキュベータは、1つ以上の細胞培養容器内の細胞のインキュベーションのための内部チャンバ(100)を有するインキュベータキャビネットを含む。インキュベータキャビネットは、開閉して外部環境とインキュベータキャビネットとの間の連通を可能にする外部扉(101)を含む。いくつかの実施形態では、外部扉は開閉して外部環境と内部チャンバとの間の連通を可能にする。内部チャンバは1つ以上の細胞培養容器を保持するように構成されている。1つ以上の細胞培養容器は貯蔵場所(102)に貯蔵される。いくつかの実施形態では、貯蔵場所は自立構造である。例えば、貯蔵場所は、培養容器の充填及び除去のためにインキュベータの内部チャンバから取り出すことができる試験管又は培養フラスコラックであってもよい。いくつかの実施形態では、貯蔵場所は内部チャンバの表面に固定されている。例えば、貯蔵場所は、内部チャンバの壁又は床に接続されていることでインキュベータキャビネットから取り外すことができない一連のラック又は棚であってもよい。
【0058】
いくつかの実施形態では、細胞培養インキュベータは、1つ以上の細胞培養容器を移動するための細胞培養容器移動デバイス(103)を含む。細胞培養移動デバイスは、インキュベータの内部チャンバの任意の適切な表面に固定されていてもよい。例えば、細胞培養容器移動デバイスは内部チャンバの頂部又は天井に固定されていてもよい。或いは、細胞培養容器移動デバイスは内部チャンバの側壁に固定されていてもよい。いくつかの実施形態では、細胞培養容器移動デバイスは内部チャンバの壁に固定されていない。例えば、細胞培養容器移動デバイスは車輪付き三脚、又は内部チャンバ内を移動することができる他の可動式構造体上に載置されていてもよい。
【0059】
いくつかの実施形態では、移動デバイスは、1つ以上の細胞培養容器を貯蔵場所(102)から撮像場所(105)又は操作場所(107)へ移動させる。移動デバイス(103)は、また、1つ以上の細胞培養容器を撮像場所(105)から操作場所(107)へ、又は操作場所(107)から撮像場所(105)へ移動させることができる。撮像又は操作が完了すると、移動デバイス(103)は1つ以上の細胞培養容器を撮像場所(105)又は操作場所(107)から貯蔵場所(102)へ移動させる。
【0060】
いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットは第1の撮像場所(105)及び操作場所(107)を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の撮像場所は、イメージャに対向する内部チャンバの表面上にある。いくつかの実施形態では、撮像場所はプラットフォームであり、プラットフォームは、自立しているか、又は内部チャンバの表面に固定されているかのいずれかである。いくつかの実施形態では、プラットフォームは可動である。例えば、可動プラットフォームは、プラットフォームがイメージャに対して左、右、前方、後方、上又は下に移動することを可能にする2つ以上のロッドに固定されていてもよい。いくつかの実施形態では、可動プラットフォームは電動式である。
【0061】
いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットは、容器が第1の撮像場所(105)にあるときに細胞培養容器の細胞を撮像する第1のイメージャ(104)を含む。いくつかの実施形態では、第1のイメージャは明視野顕微鏡である。いくつかの実施形態では、第1のイメージャはホログラフィック顕微鏡である。いくつかの実施形態では、第1のイメージャは位相差顕微鏡である。
【0062】
いくつかの実施形態では、マニピュレータ(106)は、容器が操作場所(107)にあるときに細胞培養容器の細胞を操作する。いくつかの実施形態では、マニピュレータは、一連の針、キャピラリー、ピペット及び/又はマイクロマニピュレータを有する。例えば、マニピュレータは細胞ピッカーを含んでもよい。いくつかの実施形態では、マニピュレータは1つ以上の細胞ピッカーを含む。いくつかの実施形態では、マニピュレータは細胞スクレーパを含んでもよい。いくつかの実施形態では、マニピュレータは1つ以上の細胞スクレーパを含む。概して、本明細書中に記載するように、操作場所は撮像場所と多くの特徴を共有する。
【0063】
図2Aは、細胞培養インキュベータの1つの例証的実施形態を示す。いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットは第2のイメージャ(108)を有する。第2の撮像場所は操作場所(107)に又は操作場所(107)の近傍にあってもよい。いくつかの実施形態では、第2の撮像場所及び操作場所(107)は同じ場所である。いくつかの実施形態では、細胞がマニピュレータ(106)によって操作されている最中に第2のイメージャ(108)が細胞培養容器の細胞を撮像する。いくつかの実施形態では、第2のイメージャは明視野顕微鏡である。いくつかの実施形態では、第2のイメージャはホログラフィック顕微鏡である。いくつかの実施形態では、第1のイメージャは位相差顕微鏡である。
【0064】
図2Bは、細胞培養インキュベータの1つの例証的実施形態を示す。いくつかの実施形態では、細胞培養インキュベータは、同じ場所(105)である撮像場所及び操作場所を有する。
【0065】
図3は、細胞培養インキュベータの更なる構成要素の例証的実施形態を示す。更なる構成要素は、図1図2A又は図2Bに記載されていないインキュベータの任意の構成要素である。いくつかの実施形態では、細胞培養インキュベータは、バーコードが付された細胞培養容器(109)を含む。したがって、いくつかの実施形態では、細胞培養インキュベータは、インキュベータの内部チャンバキャビネット内に配置されたバーコード走査器(110)を有する。いくつかの実施形態では、バーコードリーダはコンピュータ(111)と通信し、バーコードが走査された細胞培養容器に関する情報を中継する。いくつかの場合、バーコード走査器は内部チャンバの任意の表面に固定されていてもよい。例えば、バーコード走査器は内部チャンバの壁に、撮像場所(105)に極めて近接して固定することができる。
【0066】
いくつかの実施形態では、細胞培養インキュベータは、内部チャンバ内の環境条件を測定する少なくとも1つのプローブ及び/又は少なくとも1つのセンサ(113)を含む。環境条件を測定するためのプローブの例としては、温度プローブ、圧力プローブ、二酸化炭素(CO)センサ、酸素(O)センサ、及び相対湿度センサが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのプローブ及び/又は少なくとも1つのセンサは器具ハウジング(112)内に位置する。少なくとも1つのプローブ及び/又は少なくとも1つのセンサはコントローラ(114)に接続されている。いくつかの実施形態では、コントローラ(114)はコンピュータ(111)と通信する。加えて、コントローラ(114)は流体分与システム(115)と通信してもよい。例えば、COセンサが内部チャンバ内の低COレベルを示す場合、コントローラ(114)は、内部チャンバのCOレベルを増加させるために、内部チャンバ内にCOガスを注入するように流体分与システム(116)に指示してもよい。
【0067】
図4は、細胞培養インキュベータの例証的実施形態の概略図を示す。いくつかの実施形態では、図4Aに示すように、マニピュレータ(106)は1つ以上の細胞スクレーパ(116)を含む。いくつかの実施形態では、図4Bに示すように、マニピュレータ(106)は複数の細胞スクレーパを含む(例えば、細胞スクレーパ(117)の群)。いくつかの実施形態では、図4Cに示すように、インキュベータは2つのマニピュレータ(106及び106)を含み、各マニピュレータは細胞スクレーパ(116)を含む。いくつかの実施形態では、マニピュレータ(106)はコントローラ(図3の物体(114))によって制御され、コントローラは、細胞スクレーパ(116)のスクレーパ先端部/ブレードの360°以下の回転のプログラミングのために構成されており、したがって、例えば、培養容器のウェルの幾何学的形状を問わずスクレーパブレードとかき取られる細胞との間に一定の迎角が維持されるように、x軸、y軸及びz軸における直線運動と協調するかき取り動作のプログラミングを可能にする。
【0068】
図5は、細胞スクレーパの例証的実施形態の概略図を示す。いくつかの実施形態では、図5A図5Bに示すように、細胞スクレーパは近位端(118)及び遠位端(119)を含む。いくつかの実施形態では、図5A図5Bに示すように、細胞スクレーパの遠位端は、かき取りブレード(例えば、かき取り端)(120)を含む。いくつかの実施形態では、図5Bに示すように、細胞スクレーパは、輸送(例えば、細胞及び/又は細胞培養培地の吸引)のために構成された開口部(例えば、オリフィス)(121)を含む。いくつかの実施形態では、図5Bに示すように、細胞スクレーパは、チャネル(122)に通じる開口部を含む。いくつかの実施形態では、チャネルは細胞スクレーパに組み込まれている(例えば、細胞スクレーパハンドル及び/又はかき取りブレードの内側又は外側に沿って延びている)。
【0069】
図6は、細胞スクレーパの例証的実施形態の概略図を示す。いくつかの実施形態では、図6A図6Bに示すように、細胞スクレーパは近位端(118)及び遠位端(119)を含む。いくつかの実施形態では、図6A図6Bに示すように、細胞スクレーパの遠位端は、かき取りブレード(例えば、かき取り端)(120)を含む。いくつかの実施形態では、図6Bに示すように、細胞スクレーパは、細胞及び/又は細胞培養培地を輸送する(例えば、吸引するか、堆積させるか、又は吸引し且つ堆積させる)ために構成された開口部(例えば、オリフィス)(121)を含む。いくつかの実施形態では、図6Bに示すように、スクレーパは、チャネル(122)に通じる開口部を含む。いくつかの実施形態では、チャネルは細胞スクレーパの壁に固定されている。
【0070】
図7は、細胞スクレーパの例証的実施形態の概略図を示す。いくつかの実施形態では、図7A図7Bに示すように、細胞スクレーパは近位端(118)及び遠位端(119)を含む。いくつかの実施形態では、図7A図7Bに示すように、細胞スクレーパの遠位端はかき取りブレード(例えば、かき取り端)(120)を含む。いくつかの実施形態では、かき取り端はスクレーパハンドルに対して角度を成して配置されている。いくつかの実施形態では、図7Bに示すように、細胞スクレーパは、細胞及び/又は細胞培養培地を輸送する(例えば、吸引するか、堆積させるか、又は吸引し且つ堆積させる)ために構成された開口部(例えば、オリフィス)(121)を含む。いくつかの実施形態では、図7Bに示すように、細胞スクレーパはチャネル(122)に通じる開口部を更に含む。
【0071】
図8は、細胞スクレーパの例証的実施形態の概略図を示す。いくつかの実施形態では、図8A図8Bに示すように、細胞スクレーパは近位端(118)及び遠位端(119)を含む。いくつかの実施形態では、図8A図8Bに示すように、細胞スクレーパの遠位端はかき取りブレード(例えば、かき取り端)(120)を含む。いくつかの実施形態では、かき取り端はスクレーパハンドルに対して角度を成して配置されている。いくつかの実施形態では、図8Bに示すように、細胞スクレーパは、細胞及び/又は細胞培養培地を輸送する(例えば、吸引するか、堆積させるか、又は吸引し且つ堆積させる)ために構成された開口部(例えば、オリフィス)(121)を含む。いくつかの実施形態では、図8Bに示すように、細胞スクレーパは、チャネル(122)に通じる開口部を含む。いくつかの実施形態では、図8Bに示すように、チャネルの壁は細胞スクレーパの内壁によって形成されている。
【0072】
図9は、細胞スクレーパの例証的実施形態の概略図を示す。いくつかの実施形態では、図9A図9Bに示すように、細胞スクレーパは近位端(118)及び遠位端(119)を含む。いくつかの実施形態では、図9A図9Bに示すように、細胞スクレーパの遠位端はかき取りブレード(例えば、かき取り端)(120)を含む。いくつかの実施形態では、かき取り端はスクレーパハンドルに対して角度を成して配置されている。いくつかの実施形態では、図9Bに示すように、細胞スクレーパは、細胞及び/又は細胞培養培地を輸送する(例えば、吸引するか、堆積させるか、又は吸引し且つ堆積させる)ために構成された開口部(例えば、オリフィス)(121)を含む。いくつかの実施形態では、図9Bに示すように、開口部はチャネル(122)を更に含む。いくつかの実施形態では、図9Bに示すように、チャネルの壁は細胞スクレーパの内壁によって形成されている。
【0073】
図10は、細胞スクレーパの例証的実施形態の概略図を示す。いくつかの実施形態では、図10A図10Bに示すように、細胞スクレーパは近位端(118)及び遠位端(119)を含む。いくつかの実施形態では、図10A図10Bに示すように、細胞スクレーパの遠位端はかき取りブレード(例えば、かき取り端)(120)を含む。いくつかの実施形態では、かき取り端はスクレーパハンドルに対して角度を成して配置されている。いくつかの実施形態では、図10Bに示すように、細胞スクレーパは、細胞及び/又は細胞培養培地を輸送する(例えば、吸引するか、堆積させるか、又は吸引し且つ堆積させる)ために構成された開口部(例えば、オリフィス)(121)を含む。いくつかの実施形態では、図10Bに示すように、細胞スクレーパは、チャネル(122)に通じる開口部を含む。いくつかの実施形態では、図10Bに示すように、チャネルの壁は細胞スクレーパの内壁によって形成されている。
【0074】
図11は、細胞スクレーパの例証的実施形態の概略図を示す。いくつかの実施形態では、細胞スクレーパは近位端(118)及び遠位端(119)を含む。いくつかの実施形態では、細胞スクレーパの遠位端はかき取りブレード(例えば、かき取り端)(120)を含む。いくつかの実施形態では、かき取り端は複数の突起を含む。
【0075】
図12は、細胞スクレーパの例証的実施形態の概略図を示す。いくつかの実施形態では、細胞スクレーパは近位端(118)及び遠位端(119)を含む。いくつかの実施形態では、細胞スクレーパの遠位端はかき取りブレード(例えば、かき取り端)(120)を含む。いくつかの実施形態では、かき取り端は複数の突起を含む。いくつかの実施形態では、細胞スクレーパは、細胞及び/又は細胞培養培地を輸送する(例えば、吸引するか、堆積させるか、又は吸引し且つ堆積させる)ために構成された開口部(例えば、オリフィス)(121)を含む。いくつかの実施形態では、細胞スクレーパは、チャネル(図示せず)に通じる開口部を含む。いくつかの実施形態ではチャネルの壁は細胞スクレーパの内壁によって形成されている。
【0076】
図13は、細胞スクレーパの例証的実施形態の概略図を示す。いくつかの実施形態では、図13A図13Cに示すように、細胞スクレーパは近位端(118)及び遠位端(119)を含む。いくつかの実施形態では、図13A図13Cに示すように、細胞スクレーパの遠位端はかき取りブレード(例えば、かき取り端)(120)を含む。いくつかの実施形態では、かき取り端はスクレーパハンドルに対して角度を成して配置されている。
【0077】
図14は、細胞スクレーパ(116)を含むマニピュレータ(106)の概略図を示す。いくつかの実施形態では、マニピュレータ(106)はコントローラ(図示せず)によって制御され、コントローラは、細胞スクレーパ(116)のスクレーパ先端部/ブレードの360°以下の回転振動又は直線振動のプログラミングのために構成されており、したがって、例えば、培養容器のウェルの幾何学的形状を問わず、スクレーパブレードとかき取られる細胞との間に一定の迎角が維持されるように、x軸、y軸における直線運動及びz軸の周りの回転運動と協調するかき取り動作のプログラミングを可能にする。
【0078】
図15は、細胞スクレーパ(116)の例証的実施形態の概略図を示す。いくつかの実施形態では、図15B図15Cに示すように、細胞スクレーパの遠位端はかき取りブレード(例えば、かき取り端)(120)を含む。
【0079】
自動化された細胞培養
本明細書は、インキュベータ並びに制御された条件下で(例えば、無菌条件及び/又は滅菌条件下で)細胞を培養、操作及び/又は監視するための方法に関する。一部の態様では、インキュベータ及び方法は自動化された構成要素を含む。一部の態様では、インキュベータ及び方法は、長期の細胞培養(例えば、組換えタンパク質発現のために細胞を増殖及び維持するため、又は移植などの治療的用途のために細胞を増殖及び/又は分化するため)に有用である。いくつかの実施形態では、細胞培養物は、本明細書中に記載されるインキュベータ内の培養容器内で増殖させる。
【0080】
培養容器
細胞培養容器は、真核細胞又は原核細胞を含む異なる種類の細胞を培養するように構成されていてもよい。いくつかの実施形態では、細胞は、哺乳動物細胞(例えば、ヒト細胞、イヌ細胞、ウシ細胞、ヒツジ細胞、ネコ細胞、又はウサギ、マウス若しくはラット細胞などの齧歯類細胞)である。いくつかの実施形態では、細胞は、昆虫細胞、トリ細胞、微生物細胞(例えば、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、キラー酵母(Kluyveromyces lactis)若しくはメタノール資化酵母(Pichia pastoris)細胞などの酵母細胞、又は大腸菌(Escherichia coli)、枯草菌(Bacillus subtilis)、若しくはコリネバクテリウム細胞などの細菌細胞)、昆虫細胞(例えば、ショウジョウバエ細胞、又はSf9若しくはSf21細胞)、植物細胞(例えば、藻類細胞)、又は任意の他の種類の細胞である。
【0081】
いくつかの実施形態では、細胞は、天然産物(例えば、タキソール、顔料、脂肪酸、バイオ燃料等)を生成するために培養される。いくつかの実施形態では、細胞を培養して組換え産物(例えば、抗体、ホルモン、増殖因子、又は他の治療用ペプチド若しくはタンパク質などの組換えタンパク質産物)を発現させる。いくつかの実施形態では、細胞は、対象の欠損した又は欠陥のある細胞、組織又は臓器機能を提供又は補完するために、対象(例えば、ヒト対象)への移植などの治療的使用のために増殖及び/又は分化される。
【0082】
いくつかの実施形態では、細胞は不死化細胞系である。細胞系の非限定的な例としては、ヒト細胞、例えば、HeLa細胞、前立腺癌細胞(例えば、DU145、PC3及び/又はLncap細胞)、乳癌細胞(例えば、MCF−7、MDA−MB−438、及び/又はT47D細胞)、急性骨髄性白血病細胞(例えば、THP−1細胞)、神経膠芽腫細胞(例えば、U87細胞)、神経芽腫細胞(例えば、SHSY5Y細胞)、骨癌細胞(例えば、Saos−2細胞)、及び慢性骨髄性白血病細胞(例えば、KBM−7細胞)が挙げられる。いくつかの実施形態では、細胞系としては、霊長類細胞系、齧歯類細胞系(例えば、ラット又はマウス細胞系)、イヌ細胞系、ネコ細胞系、ゼブラフィッシュ細胞系、アフリカツメガエル細胞系、植物細胞系、又は任意の他の細胞が挙げられる。いくつかの実施形態では、細胞は、ヒト293細胞(例えば、293−T又はHEK293細胞)、マウス3T3細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、CML T1細胞、又はジャーカット細胞である。
【0083】
いくつかの実施形態では、細胞は、初代細胞、支持細胞、又は幹細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は対象(例えば、ヒト対象)から単離される。いくつかの実施形態では、細胞は、組織又は生検サンプルから単離された初代細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は造血細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、幹細胞、例えば、ES細胞、間葉系幹細胞、癌幹細胞等である。いくつかの実施形態では、細胞は、固形組織及び臓器が挙げられるがこれらに限定されない組織又は臓器(例えば、ヒト組織又は臓器)から単離される。いくつかの実施形態では、細胞は、胎盤、臍帯、骨髄、肝臓、臍帯血を含む血液、又は任意の他の適切な組織から単離することができる。いくつかの実施形態では、患者個体別の細胞は培養のために(例えば、細胞増殖及び任意選択的に分化のために)、及び後の同一患者又は異なる患者への再移植のために患者から単離される。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書中に記載されるインキュベータ内で増殖させた細胞は同種又は自家治療のために使用してもよい。いくつかの実施形態では、本明細書中に開示されるインキュベータ内で増殖させた細胞は、免疫療法(例えば、キメラ抗原受容体治療(CAR−T)、又はCRISPR/Cas修飾細胞の送達)を提供する目的で遺伝子操作、増殖及び患者に再導入してもよい。
【0084】
いくつかの実施形態では、初代細胞培養としては、上皮細胞(例えば、角膜上皮細胞、乳房上皮細胞等)、線維芽細胞、筋芽細胞(例えば、ヒト骨格筋芽細胞)、ケラチノサイト、内皮細胞(例えば、微小血管内皮細胞)、神経細胞、平滑筋細胞、造血細胞、胎盤細胞、又はこれらの2つ以上の組み合わせが挙げられる。
【0085】
いくつかの実施形態では、細胞は、組換え細胞(例えば、ハイブリドーマ細胞又は1種以上の組換え産物を発現する細胞)である。いくつかの実施形態では、細胞は1種以上のウイルスに感染している。
【0086】
初代細胞の単離
いくつかの実施形態では、細胞は、本明細書中に記載されるインキュベータ内における生体外培養のために組織又は生物学的サンプルから単離される。いくつかの実施形態では、細胞(例えば、白血球細胞)は血液から単離される。いくつかの実施形態では、細胞は、物理的破壊及び/又は酵素的破壊を用いて組織又は生物学的サンプルから剥離される。いくつかの実施形態では、コラゲナーゼ、トリプシン又はプロテイナーゼなどの1種以上の酵素を使用して細胞外マトリックスを消化する。いくつかの実施形態では、組織又は生物学的サンプルを(例えば、物理的破壊又は酵素的破壊あり又はなしで)培地に入れ、剥離して培地中で増殖させた細胞を更なる培養のために単離することができる。
【0087】
細胞培養
本明細書で使用する場合、細胞培養とは、制御された条件下で(例えば、生体外で)細胞を維持及び/又は増殖するための手順を意味する。いくつかの実施形態では、細胞は、細胞増殖及び複製を促進するための条件、組換え産物の発現を促進するための条件、(例えば、1種以上の組織特有の細胞タイプへの)分化を促進するための条件、又はこれらの2つ以上の組み合わせの下で培養される。
【0088】
いくつかの実施形態では、細胞培養容器は懸濁細胞の培養のために構成されている。いくつかの実施形態では、細胞培養容器は付着細胞の培養のために構成されている。いくつかの実施形態では、細胞培養容器は2D又は3D細胞培養のために構成されている。いくつかの実施形態では、細胞培養容器は、細胞増殖を支持するための1つ以上の表面又はマイクロキャリアを含む。いくつかの実施形態では、これらは、接着性を増加させ、且つ増殖及び分化のために必要な他のシグナルを与えるために細胞外マトリックス成分(例えば、コラーゲン、フィブリン及び/又はラミニン成分)で被覆されている。いくつかの実施形態では、細胞培養容器は、細胞増殖を支持するために、ポリアクリルアミド又はポリエチレングリコール(PEG)ゲルなどの1種以上の合成ヒドロゲルを含む。いくつかの実施形態では、細胞培養容器は、栄養素(例えば、例として特定の細菌又は酵母培養のためのゲル又は寒天)を埋め込んだ固体支持体を含む。いくつかの実施形態では、細胞培養容器は液体培地を含む。
【0089】
いくつかの実施形態では、細胞は任意の適切な培養培地のうちの1つで培養される。異なる範囲のpH、グルコース濃度、増殖因子、及び他のサプリメントを有する異なる培養培地を異なる細胞タイプ又は異なる用途に対して使用することができる。いくつかの実施形態では、特別仕様の細胞培養培地、又はDulbecco’s Modified Eagle Medium、Minimum Essential Medium、RPMI培地、HA若しくはHAT培地、若しくはLife Technologies若しくは他の商業的供給元から入手可能な他の培地などの市販の細胞培養培地を使用することができる。いくつかの実施形態では、細胞培養培地は、血清(例えば、ウシ胎仔血清、子ウシ血清、ウマ血清、ブタ血清、又は他の血清)を含む。いくつかの実施形態では、細胞培養培地は血清を含まない。いくつかの実施形態では、細胞培養培地はヒト血小板溶解物(hPL)を含む。いくつかの実施形態では、細胞培養培地は、1種以上の抗生物質(例えば、アクチノマイシンD、アンピシリン、カルベニシリン、セフォタキシム、ホスミドマイシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ペニシリン、ペニシリンストレプトマイシン、ポリミキシンB、ストレプトマイシン、テトラサイクリン、若しくは任意の他の適切な抗生物質、又はこれらの2つ以上の任意の組み合わせ)を含む。いくつかの実施形態では、細胞培養培地は、1種以上の塩類(例えば、平衡塩類、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム等)を含む。いくつかの実施形態では、細胞培養培地は炭酸水素ナトリウムを含む。いくつかの実施形態では、細胞培養培地は1種以上の緩衝剤(例えば、HEPES又は他の適切な緩衝剤)を含む。いくつかの実施形態では、1種以上のサプリメントが含まれる。サプリメントの非限定的な例としては、還元剤(例えば、2−メルカプトエタノール)、アミノ酸、コレステロールサプリメント、ビタミン、トランスフェリン、界面活性剤(例えば、非イオン界面活性剤)、CHOサプリメント、初代細胞サプリメント、酵母溶液、又はこれらの2つ以上の任意の組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、1種以上の増殖又は分化因子が細胞培養培地に添加される。増殖又は分化因子(例えば、WNT系タンパク質、BMP系タンパク質、IGF系タンパク質等)を個々に又は組み合わせて、例えば、特定系統への分化を引き起こす異なる因子を含む分化混合物(differentiation cocktail)として添加することができる。増殖又は分化因子及び液体培地の他の態様は、インキュベータ内に組み込まれた自動液体ハンドラを用いて添加することができる。
【0090】
一部の態様では、本明細書中に記載されるデバイス及び方法は細胞増殖に適した温度及びガス混合物を提供及び維持する。細胞増殖条件は異なる細胞タイプで異なり、本明細書中に記載されるデバイスは、異なる条件を維持するようにプログラムすることができることを理解すべきである。いくつかの実施形態では、哺乳動物細胞に対して約37℃及び5%COの条件が使用される。
【0091】
いくつかの実施形態では、本明細書中に記載されるデバイス及び方法は、培養培地を栄養物の枯渇、pH変化、温度変化、アポトーシス細胞又は壊死細胞の蓄積及び/又は細胞密度に関して監視又はアッセイするために使用される。例えば、マニピュレータ(106)は、培養培地を監視するセンサを含んでもよい。いくつかの実施形態では、本明細書中に記載されるデバイス及び方法は、培養培地若しくは条件を修正若しくは変更するために、及び/又は適宜、細胞を継代するために使用される。いくつかの実施形態では、デバイス及び方法は自動化される(例えば、図3に示すように、コントローラ(114)及び/又はコンピュータ(111)によって制御される)。
【0092】
いくつかの実施形態(例えば、付着細胞培養に関する)では、培養培地を吸引によって直接除去し、新しい培地と交換することができる。いくつかの実施形態(例えば、非接着/懸濁培養に関する)では、培地交換は、細胞培養物を遠心分離し、古い培養培地を除去し、これを新しい培地と交換することを含み得る。いくつかの実施形態では、遠心分離機がインキュベータの内部チャンバ内に配置されている。いくつかの実施形態では、培養容器は連続的な培地交換を可能にする。いくつかの実施形態では、本明細書中に記載されるインキュベータは、細胞を支持するために培養培地の異なる態様を処理、交換、供給及び/又は維持するために使用され得る1つ以上の構成要素を含んでもよい。インキュベータは、廃棄培地を含むリザーバ及び/又は新しい培地を含むリザーバを含んでもよい。このようなリザーバは(例えば、一時貯蔵のために)インキュベータ内の冷蔵庫又はインキュベータの冷蔵区域内にあってもよい。いくつかの実施形態では、1つ以上のリザーバがインキュベータの外部に提供され、液体ハンドラユニット(例えば、吸引器を有する液体ハンドルユニット)又はインキュベータ内の一時リザーバから供給するか又は引くために、インキュベータの空間へ及びこの空間から配管が提供され、細胞フィーディング、培地交換、及び他の関連する要求を容易にする。懸濁細胞について、インキュベータ内に、廃棄培地から細胞を分離するためのデバイス(例えば、細胞分画を容易にするための1つ又は複数の遠心分離機)を提供し、本明細書中に記載されるインキュベータの一部として、自動化された培地交換を容易にしてもよい。いくつかの実施形態では、本明細書は、細胞培養の最適な増殖のために細胞培養条件を自動的に監視及び調整することが可能である、コンピュータに接続された細胞培養インキュベータを含むシステムを提供する。
【0093】
いくつかの実施形態では、細胞は本明細書中に記載されるインキュベータ内で継代される。いくつかの実施形態では、細胞培養物が分割され、細胞培養物のサブセットが更なる増殖のために新しい培養容器に移される。いくつかの実施形態(例えば、付着細胞培養に関する)では、新しい培養容器に移される前に(例えば、例として穏やかなかき取りを用いて機械的に、及び/又は例えばトリプシンEDTA若しくは1種以上の他の酵素を用いて酵素的に)表面から細胞が剥離される。いくつかの実施形態(例えば、懸濁細胞培養に関する)では、少量の細胞培養物が新しい培養容器に移される。
【0094】
いくつかの実施形態では、細胞培養物は、本明細書中に記載されるインキュベータ及び容器内で培養中、他の手法で操作される。例えば、細胞培養物は、核酸(例えば、DNA又はRNA)をトランスフェクトしてもよく、又はウイルス感染に曝露させてもよい(例えば、組換えウイルス粒子を用いてDNA又はRNAを送達する)。
【0095】
増殖及び操作中における細胞培養物の汚染を防止するか又は最小限にするために無菌技術が使用され得る。いくつかの実施形態では、細胞培養のために使用される機器(例えば、ピペット、流体ハンドリングデバイス、操作デバイス、他の自動化又はロボットデバイス等)は適切な技術を用いて滅菌される。非限定的な技術としては、本明細書中に記載される熱曝露(例えば、高圧蒸気殺菌)、表面消毒(例えば、アルコール、漂白剤、又は他の消毒剤を用いる)、消毒ガス(例えば、オゾン、過酸化水素等)の照射及び/又は曝露が挙げられる。いくつかの実施形態では、培地は適切な技術を用いて滅菌される。非限定的な技術としては、熱曝露(例えば、高圧蒸気殺菌)、抗菌/抗ウイルス処理、ろ過及び/又は照射が挙げられる。
【0096】
いくつかの実施形態では、細胞培養の操作は無菌条件下、例えば、消毒され、空気をろ過して潜在的汚染物質を除去した(例えばインキュベータチャンバ内の)環境中で実施される。
【0097】
いくつかの実施形態では、細胞培養物は、GMP準拠培地又はGMP準拠液体ハンドリング機器を使用すること、及び方法を標準作業手順(SOP)とともに実施することを含むGMP準拠条件下で増殖及び維持される。
【0098】
いくつかの実施形態では、細胞培養物は汚染を検出するために監視及び/又は評価され得る。いくつかの実施形態では、異なる種類の生体の細胞による汚染を検出することができる。いくつかの実施形態では、マイコプラズマ、細菌、酵母、又はウイルスによる哺乳動物細胞培養物の汚染は任意の適切な技術を用いて検出することができる。いくつかの実施形態では、細胞培養物の汚染は、汚染(例えば、細菌又は酵母による)の特徴であり、培養で増殖している細胞(例えば、哺乳動物細胞)の特徴ではないpH、濁度等などの1つ以上の培養特性の変化又は変化率についてアッセイすることによって検出することができる。いくつかの実施形態では、1種以上の分子検出アッセイ(例えば、PCR、ELISA、RNAラベリング、又は他の酵素学的手法)又は細胞ベースアッセイを用いて、汚染(例えば、マイコプラズマ、細菌、酵母、ウイルス、又は他の汚染)を検出することができる。
【0099】
いくつかの実施形態では、細胞培養物は、類似タイプの細胞による汚染(例えば、異なるヒト細胞又は異なる哺乳動物細胞によって汚染されたヒト細胞系)を検出するために監視及び/又は評価され得る。いくつかの実施形態では、細胞培養物及びその潜在的汚染は、DNAシーケンシング若しくはDNAフィンガープリント法(例えば、短鎖縦列反復配列−STR−フィンガープリント法)、アイソザイム分析、ヒトリンパ球抗原(HLA)判定、染色体分析、核型分析、細胞形態、又は他の手法を使用して評価することができる。
【0100】
いくつかの実施形態では、本明細書中に記載されるデバイス及び方法を使用して産生される細胞は、凍結され、それらを後の使用及び/又は輸送のために保存され得る。いくつかの実施形態では、細胞は増殖及び/又は分化後並びに凍結前に凍結保存組成物と混合される。凍結保存組成物を細胞培養容器に添加することができ、又は細胞を凍結保存組成物とともに細胞培養容器から凍結保存容器に移すことができる。凍結保存組成物に含まれ得る凍結保護物質の非限定的な例としては、DMSO、グリセロール、PEG、スクロース、トレハロース、及びデキストロースが挙げられる。いくつかの実施形態では、細胞培養物から単離された細胞の凍結を容易にするためにインキュベータ内に又はインキュベータに近接してフリーザーが存在してもよい。
【0101】
細胞培養インキュベータ
本明細書は、インキュベータ及び制御された条件下で(例えば、無菌条件及び/又は滅菌条件下で)細胞を培養、操作及び/又は監視するための方法に関する。いくつかの実施形態では、本明細書中に記載される細胞培養インキュベータは、1つ以上の細胞培養容器内の細胞のインキュベーションのための内部チャンバを画定するインキュベータキャビネットを含み、内部チャンバは、1つ以上の細胞培養容器を保持するように構成されている。いくつかの場合、移動チャンバから内部チャンバへの内部扉に加えて、インキュベータは、外部環境から直接内部チャンバへと開く少なくとも1つの外部扉(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ以上の外部扉)を含み、例えば、インキュベータが動作していない時間、例えばインキュベータの保守中における内部チャンバへの代替的なアクセスを提供する。いくつかの実施形態では、インキュベータは、内部チャンバ内に、1つ以上の細胞培養容器を貯蔵するための貯蔵場所を含む。いくつかの実施形態では、インキュベータ内に、1つ以上の細胞培養容器を第1の撮像場所から貯蔵場所へ、及び/又は貯蔵場所から第1の撮像場所へ移動するための細胞培養容器移動デバイスが提供される。
【0102】
いくつかの実施形態では、本明細書中で記載されるインキュベータ又はインキュベータキャビネットは直方体様の形状である。いくつかの実施形態では、本明細書中で記載されるインキュベータ又はインキュベータキャビネットは、1ft〜16ftの範囲内の矩形設置面積を有する。いくつかの実施形態では、本明細書中で記載されるインキュベータ又はインキュベータキャビネットは、約1ft、2ft、3ft、4ft、5ft、6ft、7ft、8ft、9ft、10ft、11ft、12ft、13ft、14ft、15ft、又は16ft以下の矩形設置面積を有する。いくつかの実施形態では、本明細書中で記載されるインキュベータ又はインキュベータキャビネットは、1ft〜100ftの範囲内の総チャンバ体積を有する。いくつかの実施形態では、本明細書中で記載されるインキュベータ又はインキュベータキャビネットは、約1ft、5ft、10ft、25ft、50ft又は100ft以下のチャンバ体積を有する。いくつかの実施形態では、本明細書中で記載されるインキュベータ又はインキュベータキャビネットは、0.09m〜1.78mの範囲内の矩形設置面積を有する。いくつかの実施形態では、本明細書中で記載されるインキュベータ又はインキュベータキャビネットは、約0.1m、0.2m、0.3m、0.4m、0.5m、0.6m、0.7m、0.8m、0.9m、1.0m、1.1m、1.2m、1.3m、1.4m、1.5m、1.6m、又は1.7m以下の矩形設置面積を有する。いくつかの実施形態では、本明細書中で記載されるインキュベータ又はインキュベータキャビネットは、0.03m〜3mの範囲内の総チャンバ体積を有する。いくつかの実施形態では、本明細書中で記載されるインキュベータ又はインキュベータキャビネットは、約0.03m、0.1m、0.3m、1m,又は3m以下のチャンバ体積を有する。
【0103】
材料
いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットは単壁式である。いくつかの実施形態では、インキュベータは二重壁式である。いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットの二重壁間に絶縁材料が提供されており、キャビネットからの熱損失を制御し、キャビネット内の温度制御を容易にする。いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットの外壁は、薄板、例えば14〜20ゲージの冷間圧延鋼を含む。いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットの内壁(例えば、チャンバ表面)は電解研磨ステンレス鋼を含む。いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットの内壁(例えば、チャンバ表面)は、チタン、コバルト−クロム、タンタル、白金、ジルコニウム、ニオブ、ステンレス鋼、及びこれらの合金などの耐腐食性材料を含む。しかしながら、いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットのチャンバ表面は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの高分子材料、又はパリレンの商品名で知る高分子材料を含む。いくつかの実施形態では、チャンバ表面は、高分子表面コーティングに導入された銅又は銀又は抗微生物化合物など、抗微生物性を有してもよい。
【0104】
モニタリング機器
いくつかの実施形態では、インキュベータ内部の環境は制御システムによって制御される。制御システムは、インキュベータ内部(例えば、1つ以上の内部チャンバ内)の温度、湿度、二酸化炭素、酸素、及び他の気体成分(例えば、オゾン及び過酸化水素などの滅菌ガス)を制御するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、制御システムは、各内部チャンバ内の環境条件(例えば、温度、湿度、二酸化炭素、酸素及び他の気体成分)を別々に制御する。例えば、繊細な機械的、電子的及び光学的構成要素を保護するために、内部チャンバの湿度は、貯蔵場所を有する内部チャンバよりも低い水準に維持してもよい。いくつかの実施形態では、インキュベータは、既定のセンサを備えたモニタリングシステムが更に提供される。モニタリング機器の例としては、酸素モニタ、二酸化炭素モニタ、オゾンガス検出器、過酸化水素モニタ、及びマルチガスモニタが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、いくつかの実施形態では、インキュベータは、有利には、細胞増殖に関連する種々のパラメータに応答する複数のセンサを含む。これらのパラメータは、温度、空気純度、汚染物質レベル、pH、湿度、N、CO、O、及び光を含んでもよい。このモニタリングシステムにより、培養又は処理の継続時間にわたってセンサを使用し、インキュベータにおけるパラメータを測定することができる。いくつかの実施形態では、本明細書中で記載されるように、センサによって測定されたパラメータは、更なる処理のために、モニタリングシステムにより、回線を介して、コンピュータ制御されたモニタリング及び制御システムに送信される。
【0105】
いくつかの実施形態では、本明細書中に記載されるインキュベータとともに環境モニタリングシステムが使用され得る。いくつかの実施形態では、温度、空気の組成(例えば、CO濃度、O濃度等)、及び/又はシステムの湿度の測定値を提供する1つ以上のセンサをインキュベータと組み合わせることができる(例えば、インキュベータキャビネット内に取り付けることができる)。いくつかの実施形態では、1つ以上のこのようなセンサは、インキュベータの一部として組み込む(例えば、インキュベータの内部壁又は扉に取り付けられるか、内蔵されるか、又はそうでなければ接続される)ことができる。いくつかの場合、1つ以上のセンサは、インキュベータキャビネットの外部又は内部の任意の適切な位置に配置することができる(例えば、移動チャンバ及び/又は内部チャンバ内、例えば、内部壁及び/又は上部若しくは下部内部表面に取り付けられる)。
【0106】
いくつかの実施形態では、センサに接触するガス(例えば、キャビネット内のガス又は周囲空気)の濃度のリアルタイムの読取値をパーセント、百万分率、又は任意の他の標準単位で提供することができるガスセンサが提供される。本明細書中に記載される方法及びインキュベータで使用するためのガスセンサとしては、COセンサ、Oセンサ、Nセンサ、オゾンガス検出器、過酸化水素モニタ、マルチガスモニタ、及びCOセンサが挙げられる。このようなセンサは多くの商業的供給元から入手可能である。いくつかの場合、インキュベータの環境は、本明細書中に記載されるセンサによって提供される情報に基づいて調整又は制御してもよい。例えば、望ましい濃度よりも低いCOがインキュベータ内に存在することをCOセンサが表示すると、インキュベータ内のCOのレベルが増加されてもよい。
【0107】
いくつかの実施形態では、インキュベータ内の温度を制御する目的のため、1つ以上の加熱又は冷却要素をインキュベータ内に組み込むことができる(例えば、キャビネット若しくは扉の内部表面上、及び/又はキャビネットの壁及び/若しくは基部の1つ以上内に組み込まれる)。いくつかの実施形態では、加熱要素は、液体、例えば、細胞培養培地又は他の試薬を解凍するために使用することができる。
【0108】
いくつかの実施形態では、1つ以上の空気若しくは酸素源、カーボンフィルタ、及び/又は1つ以上の加湿若しくは脱湿システムがインキュベータに接続され、(例えば、インキュベータ内の又はインキュベータに取り付けられた1つ以上のセンサからの信号に応答して)インキュベータ内の酸素、二酸化炭素及び/又は湿度のレベルを制御するように構成されている。いくつかの実施形態では、1つ以上のコントローラがセンサ及び他のシステムに取り付けられており、インキュベータの内部環境を制御する。
【0109】
いくつかの実施形態では、インキュベータは1つ以上の光源(例えば、白熱電球、LED、UV又は他の光源)を含むことができる。これらはキャビネット内の領域を照明するためにインキュベータ内に配置され得る。いくつかの実施形態では、培養システムの動作は、インキュベータの内部若しくは外部に配置され得るカメラ又は他の感光デバイスを用いて監視される。いくつかの実施形態では、光源は殺菌光源である。例えば、UVランプをインキュベータの移動チャンバ及び/又は内部チャンバ内に配置してもよい。
【0110】
いくつかの実施形態では、インキュベータは透明な物体(例えば、窓)を含む。透明な物体は、インキュベータ内からの可視光又は他の光の波長を、インキュベータの外部に配置されたカメラ又は他の感光デバイスによって検出することを可能にする。いくつかの実施形態では、透明な物体の内部表面は、(例えば、インキュベータ内の湿潤空気により)内部表面に蓄積し、システムの監視を妨げる可能性のある結露の滴を防止又は除去するために、(例えば、キャビネットの内側から)拭くことができる。いくつかの実施形態では、表面はコントローラによって自動的に制御されるワイパにより拭くことができる。
【0111】
シール
いくつかの実施形態では、培養キャビネットは、インキュベータキャビネットが滅菌された後に閉じられると密閉されて無菌性を保持する窓、扉、又は開口部を含む。いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットの各シールは閾値レベルの圧力以下(例えば、1atm以下)で気密である。いくつかの実施形態では、所望のレベルの密閉性能を確保するためにガスケットが提供される。一般に、「ガスケット」は、一般に、圧縮されている最中の2つの物体間の漏れを防ぐために2つの物体間の空間を埋めるメカニカルシールと理解される。ガスケットは、一般に、ガスケットペーパー、ゴム、シリコーン、金属、コルク、フェルト、ネオプレン、ニトリルゴム、ガラス繊維、又はプラスチックポリマー(ポリクロロトリフルオロエチレンなど)などのシート材料を切断することによって作製される。多くの場合、ガスケットは、変形して、任意のわずかな不規則性を含むように設計されている空間を確実に埋めることができるように、ある程度の降伏を提供する材料から作製されることが望ましい。いくつかの実施形態では、ガスケットは、適切に機能させるためにシーラントを直接ガスケット表面に適用して使用することができる。いくつかの実施形態では、ガスケット材料は、二酸化炭素又はオゾンと反応しない独立気泡ネオプレンフォームを含み得る。
【0112】
移動デバイス
本明細書中に開示されるインキュベータは、通常、1つ以上の物品を、例えば、インキュベータ内の第1の場所から第2の場所へ移動させるための1つ以上の移動デバイスを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の物品は1つ以上の細胞培養容器である。他の実施形態では、1つ以上の物品は1つ以上の細胞培養容器の維持に有用であり、ピペット、キャピラリー、液体(例えば、細胞培養培地)、栄養素、及び他の材料が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、移動デバイスはロボットアームを含む。いくつかの実施形態では、ロボットアームは、インキュベータキャビネット内にプラットフォームを含み、プラットフォームは、インキュベータキャビネットの内部表面(例えば、内壁、基部等)に沿って種々の方向に延びるレール又はコンベヤに沿って移動してもよい。いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットは、器具のスループットを増加するとともに、ロボットアームの1つが破損した場合に冗長性を提供するために、2つ以上(例えば、2つ、3つ、4つ、又は5つ、又はこれより多い)のロボットアームを備えて構成してもよい。
【0113】
いくつかの実施形態では、移動デバイスは、ロボットアームに接続されたグリッパアセンブリを更に含む。いくつかの実施形態では、グリッパアセンブリは、ロボットアームの端部に取り付けられた1つ以上のグリッパを含み、各グリッパは、2つ以上(例えば、3つ、4つ、5つ、又はこれより多い)のグリッパフィンガーを有する。いくつかの実施形態では、ロボットアーム上の各グリッパフィンガーは、溝、摩擦プレート、ゴムパッド、又は他の把持面を有する。把持面は、フィンガーがキャビネット内の種々のタイプのコンテナ(例えば、培養容器)を把持し、移動するのを可能にすることができる。いくつかの実施形態では、ロボットアームが障害物に当たらずに安全に元の位置に戻る(例えば、静止若しくは保管構成及び/若しくは場所、又は動作座標系の起点に戻る)ことができる位置にあるかどうかを判定するために、ロボットアームは、グリッパアセンブリ若しくはプラットフォームのいずれかに接続されたアブソリュートエンコーダ、又はグリッパアセンブリ及び/若しくはプラットフォームのそれぞれに対して別個のアブソリュートエンコーダを有してもよい。
【0114】
いくつかの実施形態では、特定の状況において、ロボットアームのリーチがインキュベータキャビネットのある領域に及ばないことが望ましい場合があるという理由から、ロボットアームは、代わりに、シャトル若しくはコンベヤベルトにコンテナを挿入するか、又はそれからコンテナを取り出すことによってこれらの場所に到達してもよい。シャトル又はコンベヤベルトは、例えば、インキュベータキャビネットの床若しくは軸(例えば、x軸、y軸)に沿って移動する他の表面上に配置されており、ロボットアームが到達することができない場所の少なくともいくつかへのアクセスを提供する。
【0115】
いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットは、外部アッセイ又は実験室自動化システムとともに使用されるように設計されている。例えば、いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットは、グリッパアームがインキュベータキャビネットの外部を旋回することを可能にするほど十分に大きい開口部を有する扉を有してもよく、グリッパアームは、培養容器又は他のコンテナ若しくは構成要素を実験室自動化システムの輸送ラインからインキュベータキャビネット内に輸送するため、又は外部アッセイ構成要素をインキュベータキャビネット内へ、及び/又はインキュベータキャビネット外へ輸送するためのフィンガーの十分なリーチを有する。
【0116】
いくつかの実施形態では、ロボットアームは、とりわけ培養容器を運ぶように設計されており、この場合、ロボットアームの動きは、このような容器の急激な動き若しくは加速、又は容器からサンプルが溢れる原因となり得る他の動きを妨げるように制御される。いくつかの実施形態では、ロボットアームは、とりわけ培養容器を運ぶように設計されており、この場合、ロボットアームの動きは、このような容器の、新たに播種された細胞を培養容器の特定の領域に集める/集中させるような動きを妨げるように制御される。
【0117】
いくつかの実施形態では、ロボットアームは容器又は他のコンテナをインキュベータキャビネット内の特定の場所間で移動することから、ロボットアーム又はインキュベータの他の構成要素は、容器又は他のコンテナがどこに位置しているかを正確に追跡するように設計され得る。いくつかの場合、ロボットアームが使用され得るインキュベータキャビネット内に、例えば、インキュベータキャビネットの他の構成要素又はインキュベータキャビネットの壁が配置されており、したがって、ロボットアームの特定の動きが制限され得る領域がある可能性がある。これらの場合、アームの種々のモータのそれぞれ(例えば、xモータ、シータモータ、及びzモータ)に対してホーミング機構を使用し、ロボットアームを起動した後、又はロボットアームが別の物体と衝突した場合には動作を再開する前にロボットアームを既知の位置に適切に配置することができる。
【0118】
いくつかの実施形態では、無停電電源装置(「UPS」)がインキュベータキャビネットに若しくはインキュベータキャビネット内に取り付けられており、又はインキュベータキャビネットに収容されており、種々の自動化及びサンプル情報の保存、及び進行中の任意の輸送又は移動プロセス(例えば、ロボットアームによって運ばれているコンテナ又は容器のその目的地への輸送)の完了を含む、インキュベータの動作の正常停止を可能にする。オペレータは、インキュベータを無許可で開くことに対して、可聴信号、視覚信号、電子信号(例えば、電子メール又はテキストメッセージ)によって又は何らかの他の手法で警告を受けてもよい。
【0119】
いくつかの実施形態では、インキュベータの1つ以上の扉が開いている場合(例えば、外部扉又は内部扉などのインキュベータキャビネット扉が開いている場合)に検出するために、センサ又は他の特徴が提供される。このような特徴は、無菌性を脅かす、産生を損なう、アッセイ又は実験を妥協すること等となり得る、インキュベータ(例えば、インキュベータキャビネット)の予定外又は無許可の開放をオペレータが常に把握するか又は警告を受けることを可能にすることから有用である。
【0120】
いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネット内における1つ以上のデバイス(例えば、信号を検出し、この信号を使用してデバイスの位置を特定することができるセンサを有するデバイス)の位置を特定するために使用され得る高周波ビーコン又は他の信号源がインキュベータ内(例えば、インキュベータキャビネット内)に配置されている。いくつかの実施形態では、デバイスは信号源を有することができ、センサはインキュベータキャビネットのチャンバのうちの1つ以上の内部に配置することができる(例えば、内部チャンバの内部表面に配置される)。
【0121】
いくつかの実施形態では、光信号又はレーザー(例えば、レーザー信号のグリッド)を使用して、インキュベータキャビネット内の1つ以上のデバイス又は構成要素の位置を特定することができる。このような情報は、例えば、有線又は無線で外部のコンピュータ又は監視ステーションに通信することができる。この情報を用いて、インキュベータキャビネット内の移動デバイス、例えばロボットアームの動作を制御し、移動デバイスがインキュベータキャビネット内のデバイス又は物品を適切に把持、操作、又は操縦することができるようにし得る。
【0122】
いくつかの実施形態では、コンテナ又は容器がインキュベータキャビネット内に運ばれる前、ユーザは、インキュベータキャビネット内に挿入されている特定のコンテナ、容器、原料、又は細胞に基づいて自動化システムプロトコルを選択することができる。インキュベータ及び/又は1つ以上のインキュベータ構成要素、並びに増殖される細胞に関する関連情報は、データシステムに入力することができる。例えば、バーコード(例えば、1次元又は2次元バーコード)などの1つ以上の識別子をコンテナ又は容器に配置することができ、コンテナの種類、コンテナの内容物、どのようなアッセイ又は操作がコンテナ内のサンプルに対して実施されるかなどの他の重要な情報を明記することができる。いくつかの実施形態では、インキュベータシステム及び/又は細胞に関する情報を1つ以上のバーコードに、別個のデータシステムに、又はこれらの組み合わせに収容することができる。ユーザは、また、容器若しくは他のコンテナの次元(例えば、高さ、直径)を特定する情報を入力してもよく、又はシステム自体を、容器又は他のコンテナの高さ若しくは他の寸法を判定するように構成することができる。この情報を使用して、分析モジュールが、容器内で増殖させた細胞に対してアッセイ若しくは他の操作を実施する準備が整ったとき、又はアッセイ若しくは操作の実施を完了したときなど、ロボットアームは特定のコンテナを移動するように要求されてもよい。
【0123】
コンピュータ及び制御装置
本明細書中に記載されるインキュベータは、コンピュータ、プロセッサ、マイクロコントローラ、又は他のコントローラの指示でともに動作してもよいセンサ、環境制御システム、ロボット等を含むいくつかの構成要素を含む。構成要素は、例えば、移動デバイス(例えば、ロボットアーム)、液体ハンドリングデバイス、培養容器又は他の構成要素をインキュベータキャビネットに又はインキュベータキャビネットから送達するための送達システム、インキュベータキャビネットの温度及び他の環境態様を制御するための環境制御システム、扉動作システム、撮像又は検出システム、及び細胞培養アッセイシステムを含んでもよい。
【0124】
いくつかの場合、細胞培養インキュベータ及び/又は細胞培養インキュベータ内に設けられるか、又は細胞培養インキュベータに接続する構成要素の制御動作などの動作は、ハードウェア、ソフトウェア、又はこれらの組み合わせを用いて実施してもよい。ソフトウェアで実施する場合、ソフトウェアコードは、単一構成要素内に設けられるか複数の構成要素に分配されるかを問わず、任意の適切なプロセッサ又はプロセッサの集合体において実行され得る。このようなプロセッサは、集積回路として実装されてもよく、集積回路構成要素内に1つ以上のプロセッサを有する。プロセッサは回路を用いて任意の適切なフォーマットで実装してもよい。
【0125】
コンピュータは、ラックマウント式コンピュータ、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、又はタブレットコンピュータなどの多くの形態のうちのいずれかにおいて具現化してもよい。加えて、コンピュータは、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、スマートフォン、又はインキュベータ自体を含む任意の他の適切なポータブル、モバイル又は固定電子デバイスを含む、一般にコンピュータとは考えられないが適切な処理性能を備えるデバイス内に組み込まれてもよい。
【0126】
いくつかの場合、コンピュータは、1つ以上の入カデバイス及び出力デバイスを有してもよい。これらのデバイスは、とりわけ、ユーザインタフェースを提示するために使用され得る。ユーザインタフェースを提供するために使用され得る出力デバイスの例としては、出力を視覚的に提示するためのプリンタ又はディスプレイスクリーン、及び出力を聴覚的に提示するためのスピーカ又は他の音声発生デバイスが挙げられる。ユーザインタフェースに使用され得る入力デバイスの例としては、キーボード、及びマウスなどのポインティングデバイス、タッチパッド、及びディジタイジングタブレットが挙げられる。他の例では、コンピュータは入カ情報を、音声認識を通じて、又は他の可聴フォーマットで、可視ジェスチャを通じて、触覚入カによって(例えば、振動、触覚及び/又は他の力を含む)、又はこれらの任意の組み合わせで受信してもよい。
【0127】
1つ以上のコンピュータは、エンタープライズネットワーク若しくはインターネットなどのローカルエリアネットワーク又はワイドエリアネットワークを含む任意の適切な形態の1つ以上のネットワークによって相互接続してもよい。このようなネットワークは任意の適切な技術に基づいてもよく、任意の適切なプロトコルに従って動作してもよく、無線ネットワーク、有線ネットワーク、又は光ファイバネットワークを含んでもよい。
【0128】
本明細書中に概説した種々の方法又はプロセスは、種々のオベレーティングシステム又はプラットフォームの任意の1つを用いる1つ以上のプロセッサで実行可能なソフトウェアとしてコード化してもよい。このようなソフトウェアは、多くの適切なプログラミング言語及び/又はプログラミング若しくはスクリプトツールのいずれかを使用して記述されてもよく、実行可能な機械語コード、又はフレームワーク若しくは仮想マシンにおいて実行される中間コードとしてコンパイルされてもよい。
【0129】
本明細書中に記載される方法又はプロセスを制御するための1つ以上のアルゴリズムは、1つ以上のコンピュータ又は他のプロセッサ上で実行されると、本明細書中に記載される種々の方法又はプロセスを実施する方法を実施する1つ以上のプログラムをエンコードした、可読ストレージ媒体(又は複数の可読媒体)(例えば、コンピュータメモリ、1つ以上のフロッピー(登録商標)ディスク、コンパクトディスク(CD)、光ディスク、デジタルビデオディスク(DVD)、磁気テープ、フラッシュメモリ、フィールドプログラマブルゲートアレイ若しくは他の半導体デバイスにおける回路構成、又は他の有形ストレージ媒体)として具現化してもよい。
【0130】
いくつかの実施形態では、コンピュータ可読ストレージ媒体は、コンピュータ実行可能命令を非一時的な形態で提供するほど十分な時間にわたって情報を保持してもよい。1つ又は複数のこのようなコンピュータ可読ストレージ媒体は、媒体上に記憶された1つ又は複数のプログラムを1つ以上の異なるコンピュータ又は他のプロセッサにロードして、本明細書中に記載される方法又はプロセスの種々の態様を実施することができるように可搬式とすることができる。本明細書で使用する場合、用語「コンピュータ可読ストレージ媒体」は、製造物(例えば、製品)又はマシンとみなされ得るコンピュータ可読媒体のみを含む。或いは又は加えて、本明細書中に記載される方法又はプロセスは、伝播信号など、コンピュータ可読ストレージ媒体以外のコンピュータ可読媒体として具現化してもよい。
【0131】
本明細書中において用語「プログラム」又は「ソフトウェア」は、本明細書中に記載される方法又はプロセスの種々の態様を実施するために、コンピュータ又は他のプロセッサをプログラムするために用いられ得る任意の種類のコード又は実行可能命令のセットを指す一般的な意味で使用される。加えて、本実施形態の一態様によれば、実行されると本明細書中に記載される方法又はプロセスを実施する1つ以上のプログラムは1つのコンピュータ又はプロセッサに常駐している必要はなく、いくつかの異なるコンピュータ又はプロセッサ間にモジュラー形式で分散され、種々の手続き又は演算を実施してもよいことを理解すべきである。
【0132】
実行可能命令は、1つ以上のコンピュータ又は他のデバイスによって実行されるプログラムモジュールなどの多くの形態であってもよい。概して、プログラムモジュールは、特定のタスクを実施するか又は抽象データ型を実装するルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造等を含む。通常、種々の実施形態では、プログラムモジュールの機能は必要に応じて組み合わせても分散させてもよい。
【0133】
また、データ構造は、コンピュータ可読媒体に任意の適切な形態で格納してもよい。データストレージの非限定的な例としては、構造化ストレージ、非構造化ストレージ、ローカルストレージ、分散ストレージ、短期ストレージ及び/又は長期ストレージが挙げられる。データを通信するために使用され得るプロトコルの非限定的な例としては、専用プロトコル及び/又は業界標準プロトコル(例えば、HTTP、HTML、XML、JSON、SQL、ウェブサービス、テキスト、スプレッドシート等、又はこれらの任意の組み合わせ)が挙げられる。説明の簡略化のため、データ構造はデータ構造内の位置を通じて関連付けられたフィールドを有するように示される場合がある。このような関係は、同様に、フィールド間の関係を伝えるコンピュータ可読媒体中の位置をフィールドのストレージに割り当てることによって達成してもよい。しかしながら、ポインタ、タグ、又はデータ要素間の関係を確立する他の機構の使用によるものを含む任意の適切な機構を使用して、データ構造のフィールド内の情報間の関係を確立してもよい。
【0134】
いくつかの実施形態では、インキュベータの動作に関連する情報(例えば、温度、湿度、ガス組成、画像、細胞培養条件等、又はこれらの任意の組み合わせ)は、インキュベータに関連付けられた1つ以上のセンサ(例えば、インキュベータキャビネット内に位置するか、又はインキュベータ内ではあるがインキュベータキャビネットの外部に位置する)から取得することができ、細胞培養インキュベーション中の状況に関する情報を提供するためにコンピュータ可読媒体内に保存することができる。いくつかの実施形態では、可読媒体はデータベースを含む。いくつかの実施形態では、前記データベースは、1つのインキュベータからのデータを含む。いくつかの実施形態では、前記データベースは、複数のインキュベータからのデータを含む。いくつかの実施形態では、データは改ざんが防止される状態で保存される。いくつかの実施形態では、器具(例えば、インキュベータ)によって生成された全てのデータは保存される。いくつかの実施形態では、データのサブセットが保存される。
【0135】
いくつかの実施形態では、構成要素(例えば、コンピュータ)は、インキュベータ内で実施される種々のプロセスを制御する。例えば、コンピュータは制御機器(例えば、マニピュレータ、イメージャ、流体ハンドリングシステム等)に指示してもよい。いくつかの実施形態では、コンピュータは、細胞培養の撮像、細胞のピッキング、細胞の除去(例えば、細胞凝集体の除去)、細胞培養条件の監視、細胞培養条件の調整、インキュベータ内の細胞培養容器の動きの追跡、及び/又は前述のプロセスのいずれかのスケジューリングを制御する。
【0136】
細胞アッセイ
いくつかの実施形態では、本明細書中に記載されるインキュベータキャビネットは、顕微鏡若しくは他のイメージャ、又は細胞増殖、細胞の生存率若しくは他の態様を監視するための他のデバイスを備えて構成されている。いくつかの実施形態では、顕微鏡又はイメージャは、画像ベースの表現型スクリーニング又はアッセイなど、インキュベータキャビネット内で実施されるアッセイとともに使用される。
【0137】
ある実施形態では、本明細書中に記載されるインキュベータは、インキュベータキャビネット内、又はインキュベータキャビネットに動作的に接続されたチャンバ、例えばインキュベータの一部である別個のアッセイチャンバ内において1種以上のアッセイを実施することを可能にするように構成されている。いくつかの実施形態では、本明細書中に記載されるインキュベータは、細胞計数アッセイ、複製標識化(replication labeling)アッセイ、細胞膜統合性アッセイ、細胞ATPに基づく生存率アッセイ、ミトコンドリアレダクターゼ活性アッセイ、カスパーゼ活性アッセイ、アネキシンV染色アッセイ、DNA含有量アッセイ、DNA分解アッセイ、核断片化アッセイ、又はこれらの組み合わせの実施を可能にするように構成されている。他の例示的なアッセイとしては、BrdU、EdU、又はH3−チミジン組み込みアッセイ、ヘキスト染色、DAPI、アクチノマイシンD、7−アミノアクチノマイシンD、又はヨウ化プロピジウムなどの核酸染色を使用するDNA含有量アッセイ、AlamarBlue、MTT、XTT及びCellTitre Gloなどの細胞代謝アッセイ、核断片化アッセイ、細胞質ヒストン関連DNA断片化アッセイ、PARP切断アッセイ、及びTUNEL染色アッセイが挙げられる。
【0138】
処理及び実験的介入
ある実施形態では、本明細書中に記載されるインキュベータは、インキュベータキャビネット内の高スループットスクリーニング(HTS)を可能にするように構成されている。いくつかの実施形態では、HTSは、1日あたり例えば100,000個までの化合物の試験を意味する。いくつかの実施形態では、スクリーニングアッセイはマルチウェル形式、例えば、96ウェル、384ウェル形式、又は1,536ウェル形式で実施してもよく、自動化プロトコルを使用して実施され得る。このような高スループットアッセイでは、1日で数千個の異なる化合物又は組成物をスクリーニングすることが可能である。特に、マイクロタイタープレートの各ウェルを使用して、選択した試験化合物に対して別個のアッセイを実施することができる。或いは、濃度又はインキュベーションの時間効果が観察される場合、複数のウェルが1種の化合物の試験サンプルを含むことができる。1日あたり多くのプレートをアッセイすることが可能であり、アッセイを使用して、約6,000個、20,000個、50,000個まで、又は100,000個超の異なる化合物のアッセイスクリーニングが可能である。通常、本明細書中に記載されるアッセイのHTS実施は自動化の使用を伴う。いくつかの実施形態では、化合物、細胞及び/又は試薬添加、混合、インキュベーション、及び最終的に読み取り又は検出のために、1つ以上のロボットアームを含む組み込み式ロボットシステムがアッセイマイクロプレートを複数のアッセイステーション間で移動させる。一部の態様では、HTSアッセイは、多くのプレートを同時に調製、インキュベーション及び分析することを含み、データ収集プロセスを更に高速化してもよい。
【0139】
いくつかの実施形態では、アッセイは、試験細胞、対象細胞、及び1つ以上の試験化合物、例えば、10個、100個、1000個、10,000個以上の試験化合物を含むことができる。細胞及び試験薬は、細胞に対する試験化合物の効果を評価するのに適した状態で1つ以上の容器内に配置することができる。これらのアッセイは、本明細書中に記載される1つ以上のインキュベータの1つ以上のインキュベータキャビネット内で実施することができる。通常、容器は適切な組織培地を含み、試験化合物は組織培地中に存在し、本明細書中に記載されるインキュベータのインキュベータキャビネット内の培地に自動化形式で送達されてもよい。特定の細胞タイプの培養に適した培地を使用のために選択することができる。いくつかの実施形態では、培地は血清又は組織抽出物を含まないか又は実質的に含まないが、他の実施形態では、このような成分は存在する。いくつかの実施形態では、細胞はプラスチック又はガラス表面上で培養される。
【0140】
上記態様及び実施形態は任意の適切な組み合わせで用いてもよく、本発明はこの点で限定されない。
【0141】
本発明の態様は、特定の例証的実施形態及び図を参照して本明細書中に記載されていることを理解すべきである。本明細書中に記載される例証的実施形態は本発明の全ての態様を必ずしも示すことを意図せず、むしろ、いくつかの例証的実施形態を説明するために使用される。したがって、本発明の態様は、例証的実施形態に鑑みて狭く解釈されるものではない。加えて、本発明の態様は単独で又は本発明の他の態様との任意の適切な組み合わせにおいて使用してもよいと理解すべきである。
【0142】
本発明の少なくとも一実施形態のいくつかの態様をこのように記載したが、当業者には種々の変更形態、修正形態及び改良形態が容易に想到されることは理解すべきである。このような変更形態、修正形態及び改良形態は本開示の一部であり、本発明の趣旨及び範囲内であるものとする。したがって、前述の記載及び図面は単なる例である。
【0143】
本発明のいくつかの実施形態を本明細書中に記載及び図示してきたが、当業者であれば、機能を実施し且つ/若しくは結果を得るための種々の他の手段及び/若しくは構造、並びに/又は本明細書中に記載される利点の1つ以上を容易に想定するであろう。このような変形形態及び/又は修正形態は、それぞれ本発明の範囲内と考えられる。より一般には、当業者であれば、本明細書中に記載される全てのパラメータ、寸法、材料及び構成は例示的なものであり、実際のパラメータ、寸法、材料及び/又は構成は本発明の教示が用いられる1つ又は複数の特定の用途に依存することを容易に理解するであろう。当業者であれば、単なる通常の実験を用いて、本明細書中に記載される本発明の特定の実施形態の多くの均等物を理解し、又は確認することができるであろう。したがって、前述の実施形態は単に例として提示され、添付の特許請求の範囲及びその均等物の範囲内において、具体的に記載及び特許請求される以外の手法で本発明を実施してもよいと理解すべきである。本発明は、本明細書中に記載されるそれぞれ個々の特徴、システム、物品、材料及び/又は方法を対象とする。加えて、2つ以上のこのような特徴、システム、物品、材料及び/又は方法の任意の組み合わせは、このような特徴、システム、物品、材料及び/又は方法が相互に矛盾しない場合、本発明の範囲内に含まれる。
【0144】
本明細書において、不定冠詞「1つの(a)」及び「1つの(an)」は、本明細書及び特許請求の範囲で使用する場合、特に明確に指示のない限り、「少なくとも1つの」を意味するものと理解すべきである。
【0145】
本明細書において、「及び/又は」という語句は、本明細書及び特許請求の範囲で使用する場合、結合した要素、例えば、ある場合には接続的に存在し、他の場合には分離的に存在する要素の「いずれか又は両方」を意味するものと理解すべきである。特に明確に指示のない限り、具体的に特定される要素に関連する又は関連しないに関わらず「及び/又は」節によって具体的に特定される要素以外の他の要素が任意選択的に存在してもよい。したがって、非限定的な例として、「含む」などのオープンエンドの語とともに使用される場合における「A及び/又はB」への言及は、一実施形態では、AはあるがBはなく(任意選択的にB以外の要素を含む)、別の実施形態では、BはあるがAはなく(任意選択的にA以外の要素を含む)、更に別の実施形態では、A及びBの両方(任意選択的に他の要素を含む)等を意味し得る。
【0146】
本明細書の明細書及び特許請求の範囲で使用する場合、「又は」は、上で定義した「及び/又は」と同一の意味を有するものと理解すべきである。例えば、リスト内の物品を分ける場合、「又は」又は「及び/又は」は、包含的、例えば、要素の数又はリストの少なくとも1つを含むだけでなく、2つ以上及び任意選択的に追加のリストにない物品も含むものと解釈される。「〜のうちの1つのみ」又は「〜のうちのちょうど1つ」などの明確に指示された用語のみ、又は特許請求の範囲で使用される場合の「からなる」は、要素の数又はリストのうちのちょうど1つの要素を含むことを意味する。概して、用語「又は」は、本明細書で使用する場合、「いずれか」、「〜のうちの1つ」、「〜のうちの1つのみ」、又は「〜のうちのちょうど1つ」などの排他的な用語に続く場合、排他的な選択肢(例えば、「1つ又はその他であり両方ではない」)を示すものと単に解釈される。「実質的に〜のみからなる」は、特許請求の範囲で使用される場合、特許法の分野で使用されるその通常の意味を有する。
【0147】
本明細書において、1つ以上の要素のリストに関する「少なくとも1つの」という語句は、本明細書及び特許請求の範囲で使用する場合、要素のリスト内の要素の任意の1つ以上から選択される少なくとも1つの要素を意味するものと理解すべきであるが、要素のリスト内に具体的に列挙された各要素の少なくとも1つを必ずしも含まず、要素のリスト内の要素の任意の組み合わせを排除しない。この定義は、また、具体的に明記された要素に関連する又は関連しないに関わらず、語句「少なくとも1つの」が指す要素のリスト内に具体的に明記される要素以外の要素が任意選択的に存在し得ることを可能にする。したがって、非限定的な例として、「A及びBの少なくとも1つ」(又は均等に「A又はBの少なくとも1つ」、又は均等に「A及び/又はBの少なくとも1つ」)は、一実施形態では、少なくとも1つ、任意選択的に2つ以上のAを含み、Bが存在せず(及び任意選択的にB以外の要素を含む)、別の実施形態では、少なくとも1つ、任意選択的に2つ以上のBを含み、Aが存在せず(及び任意選択的にA以外の要素を含む)、更に別の実施形態では、少なくとも1つ、任意選択的に2つ以上のAを含み、且つ少なくとも1つ、任意選択的に2つ以上のBを含む(及び任意選択的に他の要素を含む)等を意味し得る。
【0148】
特許請求の範囲及び上記明細書では、「含む」、「包含する」、「担持する」、「有する」、「含有する」、「伴う」、「保持する」等などの全ての移行句は、オープンエンド、例えば、含むが限定されないことを意味するものと理解されるべきである。米国特許庁米国特許審査便覧第2111.03節の記載のように、移行句「〜からなる」及び「実質的に〜のみからなる」のみがそれぞれクローズド又はセミクローズド移行句である。
【0149】
特許請求の範囲における、クレーム要素を修飾するための「第1の」、「第2の」、「第3の」等などの順序を表す用語の使用は、それ自体が1つのクレーム要素の別の要素に対するいかなる優先順位若しくは順位、又は方法の行為が実施される時間的順序を暗示的に意味するものではなく、クレーム要素を区別するために、特定の名称を有する1つのクレーム要素を、(順序を表す用語の使用以外には)同じ名称を有する別の要素と区別するためのラベルとして単に使用される。
【0150】
特に明確に指示のない限り、2つ以上の工程又は行為を含む、本明細書中で特許請求される任意の方法において、方法の工程又は行為の順序は、方法の工程又は行為が列挙される順序に必ずしも限定されないことも理解すべきである。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
1つ以上の細胞培養容器内の細胞のインキュベーションのための内部チャンバを含むインキュベータキャビネットと、
外部環境から前記内部チャンバへと開く扉と、
前記内部チャンバ内の前記細胞を撮像するように構成されたイメージャと、
前記内部チャンバ内の前記1つ以上の細胞培養容器内の前記細胞を操作するためのマニピュレータと、
前記1つ以上の細胞培養容器を前記内部チャンバ内の場所間で移動させるための細胞培養容器移動デバイスと
を含む、細胞培養インキュベータ。
(項目2)
前記イメージャはホログラフィック顕微鏡である、項目1に記載のインキュベータ。
(項目3)
前記イメージャは明視野顕微鏡である、項目1に記載のインキュベータ。
(項目4)
前記イメージャは蛍光顕微鏡である、項目1に記載のインキュベータ。
(項目5)
前記1つ以上の細胞培養容器は、前記イメージャ及び前記マニピュレータに対する前記1つ以上の細胞培養容器の位置合わせを容易にするための基準マークを含む、項目1〜4のいずれか一項に記載のインキュベータ。
(項目6)
撮像場所を更に含み、前記撮像場所は基準マークを含む、項目1〜5のいずれか一項に記載のインキュベータ。
(項目7)
前記細胞を操作するための前記マニピュレータは細胞ピッカーである、項目1〜6のいずれか一項に記載のインキュベータ。
(項目8)
前記マニピュレータを制御するためのコントローラを更に含む、項目1〜7のいずれか一項に記載のインキュベータ。
(項目9)
前記コントローラは前記インキュベータキャビネットの外部に配置されている、項目8に記載のインキュベータ。
(項目10)
前記コントローラはコンピュータを含む、項目9に記載のインキュベータ。
(項目11)
1つ以上の細胞培養容器内の細胞のインキュベーションのための内部チャンバを含むインキュベータキャビネットと、
前記内部チャンバへと開く扉と、
ホログラフィックイメージャ及び第1の撮像場所であって、前記ホログラフィックイメージャは、前記1つ以上の細胞培養容器が前記第1の撮像場所にあるとき、前記内部チャンバ内の前記細胞を撮像するように構成されている、ホログラフィックイメージャ及び第1の撮像場所と、
第2のイメージャ及び第2の撮像場所であって、前記イメージャは、前記1つ以上の細胞培養容器が前記第2の撮像場所にあるとき、前記内部チャンバ内の前記細胞を撮像するように構成されている、第2のイメージャ及び第2の撮像場所と、
前記第1の撮像場所及び/又は前記第2の撮像場所において前記1つ以上の細胞培養容器内の前記細胞を操作するためのマニピュレータと、
前記1つ以上の細胞培養容器を前記第1の撮像場所から前記第2の撮像場所へ、又は前記第2の撮像場所から前記第1の撮像場所へ移動させるための細胞培養容器移動デバイスと
を含む、細胞培養インキュベータ。
(項目12)
前記ホログラフィックイメージャはホログラフィック顕微鏡である、項目11に記載のインキュベータ。
(項目13)
前記第2のイメージャは明視野顕微鏡又は蛍光顕微鏡である、項目11又は12に記載のインキュベータ。
(項目14)
前記マニピュレータは1つ以上の細胞スクレーパを含む、項目1に記載のインキュベータ。
(項目15)
各細胞スクレーパはハンドル部を含み、前記ハンドル部は、マニピュレータ基部に取付可能又は接続可能な近位領域と、かき取り端を含む遠位領域とから延びる長尺状部材を含む、項目14に記載のインキュベータ。
(項目16)
各細胞スクレーパは、かき取り端を含む連続する構造体(例えば、成形構造体)を含む、項目14又は15に記載のインキュベータ。
(項目17)
各細胞スクレーパは1つ以上の相互接続部品を含む、項目14〜16のいずれか一項に記載のインキュベータ。
(項目18)
各細胞スクレーパはハンドルを含み、前記ハンドルは、かき取り端アセンブリを前記ハンドルに交換可能に接続するためのインターフェースを有する、項目14〜17のいずれか一項に記載のインキュベータ。
(項目19)
各細胞スクレーパはスクレーパ端を含み、前記スクレーパ端は、細胞培養容器の表面と接触可能であり、且つ前記表面に接着している細胞を、前記細胞を実質的に殺すことなくかき取るように構成されている、項目14〜18のいずれか一項に記載のインキュベータ。
(項目20)
コントローラを更に含み、前記コントローラは、前記細胞スクレーパのかき取り端と細胞培養容器の前記表面との間の接触圧力を調整するために前記マニピュレータを制御するように構成されている、項目14〜19のいずれか一項に記載のインキュベータ。
(項目21)
前記細胞スクレーパに接続されたセンサ(例えば、ひずみゲージセンサ)を更に含み、前記センサは、コントローラに対し、前記細胞スクレーパのかき取り端と細胞培養容器の前記表面との間において検出された圧力に関する情報を与える信号を提供し、前記コントローラは、前記検出された圧力に応答して、前記マニピュレータに制御信号を送信して前記細胞スクレーパのかき取り端と細胞培養容器の前記表面との間の前記圧力を増加又は減少させるように構成されている、項目20に記載のインキュベータ。
(項目22)
各細胞スクレーパは前記マニピュレータから容易に取り外し可能である、項目14〜21のいずれか一項に記載のインキュベータ。
(項目23)
各細胞スクレーパは、かき取り機能及び液体ハンドリング機能を実施するように構成されている、項目14〜22のいずれか一項に記載のインキュベータ。
(項目24)
各細胞スクレーパはかき取り端を含み、前記かき取り端は、細胞培養容器との接触時、限定可能な範囲のかき取り端のたわみを可能にするように構成されている、項目14〜23のいずれか一項に記載のインキュベータ。
(項目25)
各細胞スクレーパは、ポリマーから形成された1つ以上の構成要素を含む、項目14〜24のいずれか一項に記載のインキュベータ。
(項目26)
前記細胞スクレーパは、細胞及び又は細胞培養培地を吸引するように構成された開口部を更に含み、前記開口部はかき取り端に極めて近接して配置されている、項目25に記載のインキュベータ。
(項目27)
前記コントローラは前記インキュベータキャビネットの外部に配置されている、項目20に記載のインキュベータ。
(項目28)
前記コントローラは前記インキュベータキャビネットの内部にあるか、又は前記インキュベータキャビネットに内蔵されている、項目20に記載のインキュベータ。
(項目29)
少なくとも1つの細胞スクレーパを有する第2のマニピュレータを更に含む、項目1又は14〜28のいずれか一項に記載のインキュベータ。
(項目30)
前記1つ以上の細胞培養容器を撮像場所から操作場所へ、又は操作場所から撮像場所へ移動させるように構成されており、前記1つ以上の細胞培養容器は実質的に位置合わせされている、項目1〜29のいずれか一項に記載のインキュベータ。
(項目31)
前記細胞培養容器移動デバイスは、前記内部チャンバ内において、1つ以上の細胞培養容器を撮像場所と操作場所との間で、及び/又は操作場所と撮像場所との間で取り出すように構成されている、項目1〜30のいずれか一項に記載のインキュベータ。
(項目32)
前記1つ以上の細胞培養容器は、前記イメージャ及び前記マニピュレータに対する前記1つ以上の細胞培養容器の位置合わせを容易にするための基準マークを含む、項目1〜31のいずれか一項に記載のインキュベータ。
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図14
図15A
図15B
図15C