【文献】
Annals of Oncology,2000年,Vol. 11, Issue 9,p. 1191-1194
【文献】
PNAS,2013年,Vol. 110, No. 27,p. 11199-11204
【文献】
Clin Pharmacokinet.,2013年,Vol. 52, No. 11,p. 981-994
【文献】
Journal of Medical Chemistry,2011年,Vol. 54,p. 4548-4558
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
必要としている被検者におけるプラチナ薬剤誘発性神経毒性を減少させるための、有効投与量の選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤を含む組成物であって、前記組成物は、オキサリプラチンであるプラチナ薬剤と組み合わせて投与されることを特徴とし、
前記被検者が、大腸癌または肝癌を有し、前記選択的OCT2阻害剤が、ブフロメジル、ブフロメジル塩、ドルテグラビル、及びドルテグラビル塩からなる群から選択される、組成物。
前記選択的OCT2阻害剤がブフロメジルまたはブフロメジル塩であり、ブフロメジルまたはブフロメジル塩の前記投与量が、少なくとも0.43mg/l、0.86mg/l、1.29mg/l、1.72mg/lまたは2.15mg/lの、プラチナ投与期間中のその血漿レベルをもたらす、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
前記大腸癌または肝癌が、有機カチオントランスポーター1(OCT1)または有機カチオントランスポーター3(OCT3)のうち少なくとも一方を発現する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
治療有効量のオキサリプラチンであるプラチナ薬剤;選択的OCT2阻害剤、及び大腸癌または肝癌を有する被検者の治療における使用のための指示書を含み、前記選択的OCT2阻害剤が、ブフロメジルもしくはブフロメジル塩、またはドルテグラビルもしくはドルテグラビル塩である、必要としている被検者におけるプラチナ薬剤誘発性神経毒性を減少させるためのキット。
必要としている被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性を減少させるための、有効投与量の選択的OCT2阻害剤を含む組成物であって、前記組成物は、シスプラチンであるプラチナ薬剤と組み合わせて投与されることを特徴とし、
前記毒性が腎毒性、耳毒性または末梢神経障害であり、
前記被検者が大腸癌または肝癌を有し、前記選択的OCT2阻害剤が、ブフロメジルもしくはブフロメジル塩、またはドルテグラビル、及びドルテグラビル塩からなる群から選択される、組成物。
【発明を実施するための形態】
【0073】
以下の説明は、当業者が様々な実施形態を作製及び使用することを可能にするために提供する。具体的な装置、技術、及び用途の記載は例としてのみ提供する。本明細書に記載の実施例への様々な変更が当業者には容易に明らかであり、本明細書で定義した一般原理は、様々な実施形態の精神及び範囲から逸脱することなく他の実施例及び用途に適用され得る。したがって、様々な実施形態は、本明細書に記載して示した例に限定することを意図しておらず、請求項に合致する範囲が認められるべきである。
【0074】
特許出願及び刊行物をはじめとする本明細書で引用するすべての参考文献は、その全体を参照によりここに援用する。
【0075】
プラチナ薬剤誘発性毒性の減少方法
本開示の一態様において、OCT2を発現する細胞にプラチナ薬剤を与えるステップ;及び細胞内へのOCT2媒介プラチナ薬剤取込みを減少させるOCT2阻害剤を与えるステップを含み、OCT2阻害剤が細胞におけるプラチナ薬剤誘発性毒性を減少させる、OCT2を発現する細胞におけるプラチナ薬剤誘発性毒性の減少方法を提供する。
【0076】
別の態様において、本開示は、OCT2を発現する細胞を有する被検者にプラチナ薬剤を与えるステップ、及び被検者にOCT2阻害剤を与えるステップを含み、OCT2阻害剤がOCT2を発現する細胞内へのOCT2媒介プラチナ薬剤取込みを減少させ、それによって被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性を減少させる、被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性の減少方法を提供する。別の態様において、本開示は、OCT2を発現する細胞を有する被検者にOCT2阻害剤を与えるステップを含み、被検者がプラチナ薬剤を与えられているか与えられることになり、OCT2阻害剤がOCT2を発現する細胞内へのOCT2媒介プラチナ薬剤取込みを減少させ、それによって被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性を減少させる、被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性の減少方法を提供する。いくつかの実施形態において、被検者はヒトである。他の実施形態において、被検者は非ヒト動物である。
【0077】
別の態様において、本開示は、オキサリプラチンであるプラチナ薬剤を必要としている被検者に投与すること;及び有効投与量の選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤を必要としている被検者に投与することを含み、必要としている被検者が癌を有する、必要としている被検者におけるプラチナ薬剤誘発性神経毒性の減少方法を提供する。いくつかの実施形態において、選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤はブフロメジルでない。いくつかの実施形態において、この方法は、癌がOCT1またはOCT3の少なくとも一方を発現するかどうか判定するステップをさらに含む。いくつかの実施形態において、癌はOCT1またはOCT3の少なくとも一方を発現する。
【0078】
別の態様において、本開示は、シスプラチンであるプラチナ薬剤を必要としている被検者に投与すること;及び有効投与量の選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤を必要としている被検者に投与することを含み、毒性が腎毒性、耳毒性または末梢神経障害であり、必要としている被検者が癌を有する、必要としている被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性の減少方法を提供する。いくつかの実施形態において、選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤はブフロメジルでない。いくつかの実施形態において、この方法は、癌がOCT1またはOCT3の少なくとも一方を発現するかどうか判定するステップをさらに含む。いくつかの実施形態において、癌はOCT1またはOCT3の少なくとも一方を発現する。
【0079】
別の態様において、本開示は、必要としている被検者において、ブフロメジルまたはブフロメジル塩である選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤のIC
50の2〜5倍である、ブフロメジルまたはブフロメジル塩である選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤の血漿レベルを達成するための有効投与量を決定すること;オキサリプラチン及びシスプラチンからなる群から選択されるプラチナ薬剤を必要としている被検者に投与すること;ならびに有効投与量のブフロメジルまたはブフロメジル塩である選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤を必要としている被検者に投与することを含み、毒性が腎毒性、耳毒性または末梢神経障害であり、必要としている被検者が癌を有する、必要としている被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性の減少方法を提供する。いくつかの実施形態において、この方法は、癌がOCT1またはOCT3の少なくとも一方を発現するかどうか判定するステップをさらに含む。いくつかの実施形態において、癌はOCT1またはOCT3の少なくとも一方を発現する。
【0080】
別の態様において、本開示は、ブフロメジル、ブフロメジル塩、ドルテグラビル、及びドルテグラビル塩からなる群から選択される選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤を必要としている被検者に投与することを含み、必要としている被検者が、有機カチオントランスポーター1(OCT1)または有機カチオントランスポーター3(OCT3)のうち少なくとも一方を発現する癌を有し、必要としている被検者が、プラチナ薬剤、例えばシスプラチンまたはオキサリプラチンなどを投与されているか投与されることになる、必要としている被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性の減少方法を提供する。いくつかの実施形態において、この方法は、癌がOCT1またはOCT3の少なくとも一方を発現するかどうか判定するステップをさらに含む。いくつかの実施形態において、プラチナ薬剤はオキサリプラチンであり、プラチナ薬剤誘発性毒性は神経毒性である。いくつかの実施形態において、プラチナ薬剤はシスプラチンであり、プラチナ薬剤誘発性毒性は神経毒性、腎毒性または耳毒性である。
【0081】
いくつかの実施形態において、投与されるプラチナ薬剤の治療有効量は、被検者においてプラチナ薬剤誘発性毒性を引き起こすと知られている。いくつかの実施形態において、選択的OCT2阻害剤の投与量は、必要としている被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性を、選択的OCT2阻害剤の投与がない以外は同じ治療プロトコールで治療される被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性と比較して、少なくとも10%減少させるのに有効である。
【0082】
プラチナ薬剤誘発性毒性
本開示の方法はプラチナ薬剤誘発性毒性の減少をもたらす。プラチナ薬剤誘発性毒性はプラチナ薬剤での癌の治療の副作用である。被検者に投与した場合、プラチナ薬剤は典型的に腫瘍細胞において治療的抗癌活性を有するが、健康な細胞に対して望ましくない毒性作用を有し得る。この望ましくないプラチナ薬剤誘発性毒性は、少なくとも部分的には、OCT2を介した健康な細胞内へのプラチナ薬剤の輸送によって媒介される。
【0083】
細胞におけるプラチナ薬剤誘発性毒性は、一般に細胞に対する細胞傷害作用の形態をとる。細胞におけるプラチナ薬剤誘発性毒性の減少は、当業者にとって公知の任意の関連する技術またはアッセイによって測定され得る。例えば、細胞における毒性は、細胞傷害性化合物の一般的な効果である細胞膜完全性の低下を評価することによってアッセイされ得る。そのようなアッセイの1つのLDHアッセイは、通常であれば細胞内に隔離されている乳酸脱水素酵素の細胞からの放出を測定する。細胞におけるプラチナ薬剤誘発性毒性の減少は、関連するアッセイによって測定して任意の量の減少が生じる場合に生じる。例えば、細胞における毒性は、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%減少され得る。
【0084】
被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性は被検者の異なる生理系における毒性として発現し得る。被検者における毒性は、被検者にOCT2阻害剤及びプラチナ薬剤が与えられる期間の前及びその全体にわたって、被検者の全身健康状態のパラメータを評価することによって監視することができる。こうした全身健康状態のパラメータとしては、例えば、体重、脱毛、歩行、皮膚状態、ならびに食欲の喪失及び他の胃腸の問題が挙げられ得る。毒性は、同じプラチナ薬剤治療を受けている被検者群の中の毒性の有病率または頻度を測定することによっても評価され得る。毒性の減少は、経時的にそのような被検者群における毒性の有病率または頻度を比較することによって評価され得る。
【0085】
プラチナ薬剤誘発性毒性は、腎毒性、神経毒性、血液毒性、または耳毒性として発現し得る。腎毒性は、クレアチニンクリアランス、血清クレアチニンレベル、または血中尿素窒素レベルを測定する血液検査で監視され得る。クレアチニンクリアランスの減少、血清クレアチニンレベルの増加、及び血中尿素窒素レベルの増加が腎機能の不良を示す。神経毒性は、神経毒性症状、例えば四肢の弱さまたは麻痺、記憶、視力、または知性の喪失、制御不能な強迫的行動、妄想、頭痛、認知的及び行動的問題ならびに性機能不全などを評価することによって監視され得る。プラチナ薬剤誘発性毒性が神経毒性であるいくつかの実施形態において、神経毒性は末梢神経障害である。いくつかの実施形態において、末梢神経障害はグレード3またはグレード4末梢神経障害である。耳毒性としては、高周波数聴力損失及び耳鳴によって特徴づけられる蝸牛毒性が挙げられ得る。耳毒性は聴性脳幹反応を測定することによって分析され得る。化学療法誘発性血液毒性は複数の機序が関与する複合症状である。しかし、当該技術分野において、神経毒性の減少は血液毒性も減少し得ることが知られている。例えば、プラチナ誘導体での化学療法誘発性神経損傷(神経毒性)は、骨髄における危険な病変を発生させ、造血再生を損なうことが知られている。したがって、神経細胞を保護する薬剤を用いて、造血細胞を損傷から間接的に防護することが可能である。
【0086】
被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性の減少は、関連するアッセイまたは試験によって測定して任意の量の減少が生じる場合に生じる。いくつかの実施形態において、一群の被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性の有病率は、OCT2阻害剤を与えられていない一群の被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性の有病率と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%減少される。
【0087】
プラチナ薬剤誘発性神経毒性
本開示の方法はプラチナ薬剤誘発性神経毒性の減少をもたらす。本開示の方法は、プラチナ薬剤誘発性神経毒性の発症の遅延をもたらす。いくつかの実施形態において、神経毒性はグレード0(正常)、1、2、3、または4である。いくつかの実施形態において、遅延はグレード3以上の発症のものである。いくつかの実施形態において、遅延はグレード2以上の発症のものである。いくつかの実施形態において、神経毒性は運動ニューロンまたは感覚ニューロンへの損傷である。いくつかの実施形態において、神経毒性は運動ニューロンへの損傷である。いくつかの実施形態において、神経毒性は感覚ニューロンへの損傷である。いくつかの実施形態において、損傷はDRGへのものである。
【0088】
プラチナ薬剤誘発性毒性が神経毒性であるいくつかの実施形態において、神経毒性は末梢神経毒性である。いくつかの実施形態において、末梢神経毒性はグレード3またはグレード4末梢神経障害である。いくつかの実施形態において、末梢神経毒性はグレード2末梢神経障害である。
【0089】
神経毒性は、下表に示すNCI−CTCAE(米国国立癌研究所−有害事象共通用語規準)によって評価することができる。いくつかの実施形態において、神経毒性は、米国国立癌研究所−共通毒性規準(NCI−CTC)知覚性スケール、米国国立癌研究所−共通毒性規準(NCI−CTC)運動性スケール、総合神経障害スコア臨床版(TNSc)及び欧州癌研究治療機関CIPN限定自己報告アンケート調査(EORTC QOL−CIPN20)から選択される方法によって評価される。
【表A-1】
【表A-2】
【0090】
末梢神経障害において、症状は、麻痺もしくはひりひりする感覚から刺すような感覚(錯感覚)、または筋力低下に及び得る。体の部位が異常に敏感になり、その結果、接触の強度が誇張されるか歪められて感じる場合がある(アロディニア)。そのような場合では、通常であれば痛みを引き起さない刺激に反応して痛みが生じ得る。重度の症状としては、灼熱痛(特に夜)、筋肉消耗、麻痺、または臓器もしくは腺機能障害が挙げられ得る。内臓に伸びる神経への損傷により、消化、発汗、性機能、及び排尿が損なわれ得る。最も極端な場合では、呼吸が困難となり得るか、または臓器不全が生じ得る。
【0091】
いくつかの実施形態において、神経毒性は、感覚神経活動電位、感覚神経伝導速度、冷痛閾値、温痛閾値、機械的疼痛閾値、冷知覚閾値、温知覚閾値、機械的触覚閾値、振動知覚閾値、電流知覚閾値、刺針感度、深部腱反射及び握力から選択される測定値によって評価される。これらの方法は、Griffith, K. et. al., Support Care Cancer 2014, 22(5): 1161−1169及びChong, PS. and Cros, DP, Technology literature review: quantitative sensory testing, Muscle & nerve [0148−639X] Chong, Peter Siao Tick yr:2004 vol:29 issue:5 pg:734−747に記載されている。
【0092】
プラチナ薬剤誘発性毒性が神経毒性であるいくつかの実施形態において、神経毒性は慢性末梢神経障害である。ある場合において、慢性末梢神経障害では、症状は約2、3、4、6、7、8、9、10、11または12か月以上の間生じるであろう。いくつかの実施形態において、神経毒性は慢性神経毒性である。いくつかの実施形態において、神経毒性は急性症候群一過性神経毒性である。いくつかの実施形態において、神経毒性は最初の治療の1時間〜7日後に生じる。いくつかの実施形態において、神経毒性は最初の治療の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23時間後に生じる。いくつかの実施形態において、神経毒性は最初の治療の1、2、3、4、5、6、または7日後に生じる。いくつかの実施形態において、神経毒性は、被検者が少なくとも500mg/m
2の蓄積投与量で治療を完了した後に生じる。いくつかの実施形態において、神経毒性は、被検者が少なくとも500、600、700、または800mg/m
2の蓄積投与量で治療を完了した後に生じる。
【0093】
末梢神経障害は軸索への損傷に起因するものもあれば、軸索を被覆及び絶縁する脂肪タンパク質である髄鞘への損傷に起因するものもある。末梢神経障害は軸索損傷及び脱髄の両方の組合せによっても引き起こされ得る。電気診断検査は、関与している損傷の種類を医療提供者が判定するのに役立ち得る。
【0094】
いくつかの実施形態において、神経毒性は背根神経節への損傷である。背根神経節(または脊髄神経節)(後根神経節としても知られる)は、脊髄神経の後根における神経細胞体のクラスター(神経節)である。背根神経節は感覚(求心性)ニューロンの細胞体を含有する。
【0095】
末梢神経障害の形態
オキサリプラチンは、「低温誘発性の末梢部または口周囲の錯感覚及び咽喉頭異常感覚によって特徴づけられるニューロミオトニア様急性一過性症候群、ならびにほとんどの場合、靴下手袋型分布の純粋な感覚軸索神経障害である慢性形態という末梢神経障害の2つの臨床的に異なる形態を誘発する。」(Argyriou, A., et. al., Cancer January 2013, 438−444)。シスプラチンは主に慢性末梢神経障害を誘発する。慢性末梢神経障害の形態はオキサリプラチン及びシスプラチンで類似している。
【0096】
急性OXAIPNは、オキサリプラチンの点滴の直後に生じる一過性末梢神経過剰興奮症候群である。この形態の神経障害は一般に低い全蓄積投与量で生じ、低温刺激への曝露によって引き起こされ得るか、または悪化し得る。患者は一般に手及び足、ならびに喉頭及び顎の錯感覚及び異常感覚を経験する。これらの症状は曝露から数時間以内に生じる傾向にあり、時間の経過で、特にその後数時間及び数日の間に可逆的である。
【0097】
慢性OXAIPNは主に四肢において生じ、シスプラチン誘発性神経障害のものに類似した症状を伴う。慢性OXAIPNの発症は蓄積オキサリプラチン投与量と相関があると報告されている。数サイクルのオキサリプラチンベースの治療の後で、感覚の喪失、異常感覚、さらには機能障害までもが進行的に発症し得る。これらの作用はたいてい時間の経過で可逆的であるが、数か月継続する場合もあり、これらの苦痛な症状は化学療法スケジュールを妨害することが多いので、オキサリプラチンベースの治療の継続に大きな影響を及ぼしている。
【0098】
プラチナ薬剤の提供
本開示の方法のいくつかの態様において、OCT2を発現する細胞にプラチナ薬剤を与えるか、またはOCT2を発現する細胞を含む被検者にプラチナ薬剤を与える。プラチナ薬剤は、プラチナ(II)または(IV)中心、2つの置換または非置換シス−アミン及び2つの脱離基を含有する任意の化合物であり得る。いくつかの実施形態において、プラチナ薬剤はオキサリプラチンである。いくつかの実施形態において、プラチナ薬剤はシスプラチンである。いくつかの実施形態において、プラチナ薬剤はテトラプラチンである。
【0099】
OCT2を発現する細胞(複数可)としては、例えば、腎細胞、ニューロン細胞、感覚ニューロン細胞、耳細胞、または血液細胞が挙げられ得る。細胞におけるOCT2発現は、細胞中のoct2遺伝子の転写を測定するアッセイ、細胞中のOCT2タンパク質の存在を測定するアッセイ、及び様々な細胞型についてのそのような測定値を含む公開されたデータの分析をはじめとする、当業者が有用であると考える任意の方法によって評価され得る。
【0100】
プラチナ薬剤は、研究室または医療現場において細胞または被検者に薬物を投与するために一般に行われる任意の方法によって、OCT2を発現する細胞に、またはOCT2を発現する細胞を含む被検者に与えられ得る。例えば、細胞はプラチナ薬剤と共にインキュベートされ得るか、または被検者に薬物を投与するために用いられるのと同じ方法によって細胞にプラチナ薬剤が与えられ得る。プラチナ薬剤は、例えば、経腸、静脈内、筋肉内、腹腔内、経口、または腸管外で被検者に与えられ得る。
【0101】
いくつかの実施形態において、1回の治療期間の間に被検者に与えられるプラチナ薬剤の量は、標準的な臨床診療の下で与えられるものよりも多い。例えば、標準的な臨床診療の下で与えられるオキサリプラチンの典型的な投与量は、治療サイクル当たり60〜130mg/m
2である。いくつかの実施形態において、治療の全過程にわたって被検者に与えられるプラチナ薬剤の蓄積量は、標準的な臨床診療の下で与えられるものよりも多い。例えば、標準的な臨床診療の下での治療の全過程にわたるオキサリパラチン(oxalipalatin)の典型的な蓄積投与量は、780〜850mg/m
2、または稀な場合では、>1000mg/m
2である。いくつかの実施形態において、標準的な臨床診療下よりも高い頻度でプラチナ薬剤を与える。例えば、標準的な臨床診療の下で、典型的には、6か月にわたる8〜12サイクルの間、2または3週間ごとにオキサリプラチンを被検者に与える。
【0102】
OCT2阻害剤の提供
本開示の方法のいくつかの態様において、OCT2を発現する細胞内へのOCT2媒介プラチナ薬剤取込みを減少させるOCT2阻害剤を提供する。OCT2を発現する細胞内へのOCT2媒介プラチナ薬剤取込みは、当業者が適切だと考える任意の方法によって測定され得る。例えば、下記の実施例1及び2に記載の方法が用いられ得る。いくつかの実施形態において、OCT2を発現する細胞内へのOCT2媒介プラチナ薬剤取込みは、OCT2阻害剤の不在下での細胞内へのOCT2媒介プラチナ薬剤取込みと比較して、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%阻害される。
【0103】
本開示の方法のいくつかの態様において、被検者にOCT2阻害剤を与える。いくつかの実施形態において、OCT2阻害剤はブフロメジルまたはブフロメジル塩である。他の実施形態において、OCT2阻害剤はイミダゾールを含む。いくつかの実施形態において、OCT2阻害剤はミコナゾールまたはその塩である。いくつかの実施形態において、OCT2阻害剤はドルテグラビルまたはその塩である。
【0104】
OCT2阻害剤は、例えば、経腸、静脈内、筋肉内、腹腔内、経口、または腸管外で被検者に与えられ得る。与えられるOCT2阻害剤の量は様々であるが、典型的にはプラチナ薬剤誘発性毒性を減少させるのに過不足のないものである。いくつかの実施形態において、被検者に与えられるOCT2阻害剤の量は治療有効投与量未満である。OCT2阻害剤に関して、治療有効投与量は、プラチナ薬剤誘発性毒性の減少以外の所望の治療的または予防的結果を達成するのに有効な投与量である。例えば、ブフロメジルは典型的には跛行または末梢動脈疾患の症状を治療するために用いられる。したがって、例えば、いくつかの実施形態において、被検者に与えられるOCT2阻害剤の量は、跛行の治療に対して治療的に有効な可能性のあるものよりも少ない投与量である。いくつかの実施形態において、被検者に与えられるOCT2阻害剤の量は1日当たり10mg〜2000mgである。OCT2阻害剤がブフロメジルまたはブフロメジル塩であるいくつかの実施形態において、被検者に与えられるブフロメジルまたはブフロメジル塩の量は1日当たり150mg〜900mgである。OCT2阻害剤がミコナゾールまたはミコナゾール塩であるいくつかの実施形態において、被検者に与えられるミコナゾールまたはミコナゾール塩の量は1日当たり最大2000mgである。OCT2阻害剤がドルテグラビルまたはドルテグラビル塩であるいくつかの実施形態において、被検者に与えられるドルテグラビルまたはドルテグラビル塩の量は1日当たり10mg〜200mgである。
【0105】
プラチナ薬剤及びOCT2阻害剤は、任意の順序で、または任意の量でオーバーラップさせて被検者に与えられ得る。いくつかの実施形態において、プラチナ薬剤及びOCT2阻害剤を同時に与える。いくつかの実施形態において、OCT2阻害剤をプラチナ薬剤の前に被検者に与える。いくつかの実施形態において、OCT2阻害剤をプラチナ薬剤の後で被検者に与える。薬物動態は、異なる投与手順及び/または異なる製剤を用いて調整することができる。例えば、プラチナ薬剤誘発性毒性を減少させる目的で、プラチナ薬剤点滴の間に、ミコナゾール、ドルテグラビル、及びブフロメジルをはじめとするOCT2阻害剤の望ましい血漿濃度を維持するために、点滴ポンプまたは類似の方法を用いるゆっくりとした静脈内点滴を用いることができる。
【0106】
OCT2阻害剤がイミダゾールを含む本開示の実施形態において、OCT2阻害剤は特定の特徴及び機能的性質を有し得る。いくつかの実施形態において、OCT2阻害剤は、少なくとも1のC
max,u/IC
50またはC
max/IC
50,appを有する。いくつかの実施形態において、OCT2阻害剤は、少なくとも3のC
max,u/IC
50またはC
max/IC
50,appを有する。C
max及びC
max,uは、それぞれ薬物の最大全血漿濃度及び最大遊離血漿濃度を表す。IC
50は、タンパク質不含アッセイバッファー中でインビトロにて評価した50%阻害濃度を表す。IC
50,appは、血清またはアルブミンなどの血清結合性タンパク質(複数可)を含有するアッセイバッファー中でインビトロにて評価した50%阻害濃度を表す。
【0107】
いくつかの実施形態において、OCT2阻害剤はその臨床濃度では細胞にとって毒性でない。細胞へのOCT2阻害剤の毒性は、当業者にとって公知の任意の方法によって測定可能な、細胞に対する任意の細胞傷害作用のことをいう。いくつかの実施形態において、OCT2阻害剤は、OCT2阻害剤の不在下における臨床濃度のプラチナ薬剤の抗癌活性と比較して、20%を超えて臨床濃度のプラチナ薬剤の抗癌活性を減少させない。抗癌活性は、癌細胞に対するプラチナ薬剤の化学療法効果のことをいう。プラチナ薬剤は典型的に癌細胞DNA中で架橋を生じさせ、アポトーシス及び細胞成長阻害につながる。抗癌活性は、例えば、癌細胞に対する細胞傷害性アッセイによって測定され得る。
【0108】
いくつかの実施形態において、OCT2阻害剤は、OCT2阻害剤の不在下におけるOCT2以外のトランスポーターを介した臨床濃度のプラチナ薬剤の取込みと比較して、20%を超えてOCT2以外のトランスポーターを介した細胞内への臨床濃度のプラチナ薬剤の取込みを減少させない。いくつかの実施形態において、OCT2阻害剤は、OCT2阻害剤の不在下における臨床濃度のプラチナ薬剤の流出と比較して、20%を超えて臨床濃度のプラチナ薬剤の流出を減少させない。OCT2以外のトランスポーターを介した細胞へのプラチナ薬剤の取込み及びプラチナ薬剤の流出は、例えば実施例3及び4に記載のインビトロトランスポーターアッセイをはじめとする、当業者が好適だと考える任意のアッセイによって測定され得る。「臨床濃度」は、薬物が臨床的に意味のある範囲で投与される場合の薬物の血漿または血清濃度のことをいい、薬物の最大耐量(MTD)未満である。
【0109】
いくつかの実施形態において、OCT2阻害剤は2時間を超える平均半減期を有する。半減期は、物質、例えば薬物または他の分子などがその薬理学的、生理学的、または放射線学的活性の半分を失うのにかかる時間のことをいう。半減期は、物質の血漿濃度が半分まで低下するのにかかる時間も表す。
【0110】
癌の治療方法及びプラチナ薬剤治療の効率の増加方法
一態様において、本開示は、癌を有する被検者に治療有効量のプラチナ薬剤を与えるステップ;及び被検者に有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤を与えるステップを含み、被検者が、OCT2阻害剤によって阻害されないプラチナ薬剤取込みトランスポーターを発現する癌細胞を含み、それによって被検者の癌を治療する、被検者における癌の治療方法を提供する。いくつかの実施形態において、癌は、オキサリプラチン及び/またはシスプラチンなどのプラチナ薬剤をはじめとする、標準的な治療プロトコールにおけるプラチナ薬剤での治療が可能である/プラチナ薬剤で治療されることが多いと当業者に知られている種類の癌である。いくつかの実施形態において、OCT2阻害剤はブフロメジルまたはブフロメジル塩である。他の実施形態において、OCT2阻害剤はイミダゾールを含む。いくつかの実施形態において、OCT2阻害剤はミコナゾールまたはその塩である。いくつかの実施形態において、OCT2阻害剤はドルテグラビルまたはその塩である。いくつかの実施形態において、被検者はヒトである。他の実施形態において、被検者は非ヒト動物である。いくつかの実施形態において、被検者は癌を有し、プラチナ薬剤、例えばオキサリプラチンまたはシスプラチンなどの投与を含む癌治療を受けているか、または受けることになる。いくつかの実施形態において、OCT2阻害剤はブフロメジルまたはブフロメジル塩でない。
【0111】
別の態様において、本開示は、治療有効量のオキサリプラチンであるプラチナ薬剤を必要としている被検者に投与すること;及び有効投与量の選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤を必要としている被検者に投与することを含む、必要としている被検者における癌の治療方法を提供する。いくつかの実施形態において、選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤はブフロメジルでない。いくつかの実施形態において、この方法は、癌がOCT1またはOCT3の少なくとも一方を発現するかどうか判定するステップをさらに含む。いくつかの実施形態において、癌はOCT1またはOCT3の少なくとも一方を発現する。
【0112】
別の態様において、本開示は、治療有効量のシスプラチンであるプラチナ薬剤を必要としている被検者に投与すること;及び有効投与量の選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤を必要としている被検者に投与することを含む、必要としている被検者における癌の治療方法を提供する。いくつかの実施形態において、選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤はブフロメジルでない。いくつかの実施形態において、この方法は、癌がOCT1またはOCT3の少なくとも一方を発現するかどうか判定するステップをさらに含む。いくつかの実施形態において、癌はOCT1またはOCT3の少なくとも一方を発現する。
【0113】
別の態様において、本開示は、必要としている被検者において、ブフロメジルまたはブフロメジル塩である選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤のIC
50の2〜5倍である、ブフロメジルまたはブフロメジル塩である選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤の血漿レベルを達成するための有効投与量を決定すること;オキサリプラチン及びシスプラチンからなる群から選択される治療有効量のプラチナ薬剤を必要としている被検者に投与すること;ならびに有効投与量のブフロメジルまたはブフロメジル塩である選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤を必要としている被検者に投与することを含む、必要としている被検者における癌の治療方法を提供する。いくつかの実施形態において、この方法は、癌がOCT1またはOCT3の少なくとも一方を発現するかどうか判定するステップをさらに含む。いくつかの実施形態において、癌はOCT1またはOCT3の少なくとも一方を発現する。
【0114】
癌の治療は、臨床病理の経過中の治療されている被検者または細胞の自然な経過を変化させようとする試みにおける臨床的介入のことをいう。治療の望ましい効果としては、疾患進行速度の減少、病状の改善または緩和、及び寛解または予後の改善が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、限定はしないが、癌細胞の増殖の減少(もしくは破壊)、疾患に起因する症状の減少、疾患を患っているものの生活の質の増加、疾患を治療するのに必要とされる他の医薬品の投与量の減少、及び/または被検者の生存期間の延長をはじめとして、癌に関連する1つ以上の症状が緩和または解消された場合に、個体の「治療」が成功する。
【0115】
別の態様において、本開示は、癌を有する被検者に治療有効量のプラチナ薬剤を与えるステップ;及び被検者にOCT2阻害剤を与えるステップを含み、被検者が、OCT2阻害剤によって阻害されないプラチナ薬剤取込みトランスポーターを発現する癌細胞を含み、これによってプラチナ薬剤治療の効力を増加させる、被検者におけるプラチナ薬剤治療の効力の増加方法を提供する。いくつかの実施形態において、OCT2阻害剤はブフロメジルまたはブフロメジル塩である。他の実施形態において、OCT2阻害剤はイミダゾールを含む。いくつかの実施形態において、OCT2阻害剤はミコナゾールまたはその塩である。いくつかの実施形態において、OCT2阻害剤はドルテグラビルまたはその塩である。
【0116】
プラチナ薬剤治療の効力は、被検者において所望の化学療法効果をもたらすプラチナ薬剤治療の能力のことをいう。効力は典型的に、患者が疾患を抱えて生きているが悪化はしていない治療の間または後の時間の長さである無憎悪生存期間(PFS)によって、または診断の日もしくは疾患の治療の開始のいずれかからの、疾患を有する患者がまだ生存している時間の長さである全生存期間(OS)によって評価される。
【0117】
プラチナ薬剤及びOCT2阻害剤は、任意の順序で、または任意の量でオーバーラップさせて被検者に与えられ得る。いくつかの実施形態において、プラチナ薬剤及びOCT2阻害剤を同時に与える。いくつかの実施形態において、OCT2阻害剤をプラチナ薬剤の前に被検者に与える。いくつかの実施形態において、OCT2阻害剤をプラチナ薬剤の後で被検者に与える。薬物動態は、異なる投与手順及び/または異なる製剤を用いて調整することができる。例えば、被検者における癌を治療する目的で、または被検者におけるプラチナ薬剤治療の効力を増加させる目的で、プラチナ薬剤点滴の間に、ミコナゾール、ドルテグラビル、及びブフロメジルをはじめとするOCT2阻害剤の望ましい血漿濃度を維持するために、点滴ポンプまたは類似の方法を用いるゆっくりとした静脈内点滴を用いることができる。
【0118】
OCT2阻害剤は、例えば、経腸、静脈内、筋肉内、腹腔内、経口、または腸管外で被検者に与えられ得る。与えられるOCT2阻害剤の量は様々であるが、典型的には被検者におけるプラチナ薬剤治療の効力を増加せるのに過不足のないものである。いくつかの実施形態において、被検者に与えられるOCT2阻害剤の量は治療有効投与量未満である。OCT2阻害剤に関して、治療有効投与量は、癌の治療または被検者におけるプラチナ薬剤治療の効力の増加以外の所望の治療的または予防的結果を達成するのに有効な投与量である。例えば、ブフロメジルは典型的には跛行または末梢動脈疾患の症状を治療するために用いられる。したがって、例えば、いくつかの実施形態において、被検者に与えられるOCT2阻害剤の量は、跛行の治療に対して治療的に有効な可能性のあるものよりも少ない投与量である。いくつかの実施形態において、被検者に与えられるOCT2阻害剤の量は1日当たり10mg〜2000mgである。
【0119】
プラチナ薬剤は、平面四角形プラチナ(II)または(IV)中心、2つの置換または非置換シス−アミン及び2つの脱離基を含有する任意の化合物であり得る。いくつかの実施形態において、プラチナ薬剤はオキサリプラチンである。いくつかの実施形態において、プラチナ薬剤はシスプラチンである。いくつかの実施形態において、プラチナ薬剤はテトラプラチンである。プラチナ薬剤は、例えば、経腸、静脈内、筋肉内、腹腔内、経口、または腸管外で被検者に与えられ得る。
【0120】
プラチナ薬剤の治療有効量は、所望の治療的または予防的結果を達成するのに有効な薬物の量のことをいう。典型的には、被検者にプラチナ薬剤を与えた際の所望の治療的結果は、被検者における癌細胞への毒性である。いくつかの実施形態において、1回の治療期間の間に被検者に与えられるプラチナ薬剤の量は、標準的な臨床診療の下で与えられるものよりも多い。例えば、標準的な臨床診療の下で与えられるオキサリプラチンの典型的な投与量は、治療サイクル当たり60〜130mg/m
2である。いくつかの実施形態において、治療の全過程にわたって被検者に与えられるプラチナ薬剤の蓄積量は、標準的な臨床診療の下で与えられるものよりも多い。例えば、標準的な臨床診療の下での治療の全過程にわたるオキサリプラチンの典型的な蓄積投与量は、780〜850mg/m
2、または稀な場合では、>1000mg/m
2である。いくつかの実施形態において、標準的な臨床診療下よりも高い頻度でプラチナ薬剤を与える。例えば、標準的な臨床診療の下で、典型的には、6か月にわたる8〜12サイクルの間、2または3週間ごとにオキサリプラチンを被検者に与える。
【0121】
いくつかの実施形態において、この方法は、プラチナ薬剤に加えて、治療有効量の1つ以上の追加の化学療法剤を被検者に与えるステップをさらに含む。1つ以上の追加の化学療法剤は、例えば、5−フルオロウラシル、ベバシズマブ、カペセタビン(capecetabine)、ゲムシタビン、イリノテカン、及びロイコボリンであり得る。
【0122】
癌の種類
癌を治療するための及びプラチナ薬剤治療の効力を増加させるための本開示の方法は、プラチナ薬剤治療に反応する任意の種類の癌を有する被検者において用いられ得る。例えば、癌は、膵腺癌、膨大部及び膨大部周囲癌、肝細胞癌、肛門腺癌、虫垂癌、結腸癌または直腸癌、上皮性卵巣癌、ファロピウス管癌、原発性腹膜癌、食道または食道胃接合部癌、胃癌、小腸癌、精巣癌、胆管癌、膵腺癌、原発不明癌、慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫、AIDS関連B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、胃MALTリンパ腫、非胃MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、菌状息肉症/セザリー症候群、脾辺縁帯リンパ腫、末梢T細胞リンパ腫、原発性皮膚B細胞リンパ腫、原発性皮膚未分化大細胞リンパ腫(ALCL)、肺癌、肝癌、及び胆嚢癌であり得る。
【0123】
いくつかの実施形態において、癌は、膵腺癌、膨大部及び膨大部周囲癌、肝細胞癌、肛門腺癌、虫垂癌、結腸癌もしくは直腸癌、上皮性卵巣癌、ファロピウス管癌、原発性腹膜癌、食道もしくは食道胃接合部癌、胃癌、小腸癌、精巣癌、胆管癌、膵腺癌、原発不明癌、慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫、AIDS関連B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、胃MALTリンパ腫、非胃MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、菌状息肉症/セザリー症候群、脾辺縁帯リンパ腫、末梢T細胞リンパ腫、原発性皮膚B細胞リンパ腫、原発性皮膚未分化大細胞リンパ腫(ALCL)、肺癌、肝癌、頭頸部癌、前立腺癌、または平滑筋癌、または胆嚢癌であり得る。
【0124】
ある実施形態において、癌は結腸癌または直腸癌である。ある実施形態において、癌は肝癌である。ある実施形態において、癌は肺癌である。ある実施形態において、癌は卵巣癌である。ある実施形態において、癌は頭頸部癌である。ある実施形態において、癌は前立腺癌である。ある実施形態において、癌はリンパ腫である。ある実施形態において、癌は平滑筋癌である。
【0125】
いくつかの実施形態において、癌はオキサリプラチンで治療可能である。いくつかの実施形態において、癌はシスプラチンで治療可能である。
【0126】
いくつかの実施形態において、癌を治療するための及びプラチナ薬剤治療の効力を増加させるための本開示の方法は、有機カチオントランスポーター1(OCT1)または有機カチオントランスポーター3(OCT3)のうち少なくとも一方を発現する癌を有する被検者において用いられ得る。いくつかの実施形態において、癌はOCT1を発現する。いくつかの実施形態において、癌はOCT3を発現する。いくつかの実施形態において、癌はOCT1及びOCT3を発現する。
【0127】
プラチナ薬剤取込みトランスポーター
癌を治療するための及びプラチナ薬剤治療の効率を増加させるための本開示の方法において、被検者は、OCT2阻害剤によって阻害されないプラチナ薬剤取込みトランスポーターを発現する癌細胞を含む。いくつかの実施形態において、この方法は、癌細胞がOCT2阻害剤によって阻害されないプラチナ薬剤取込みトランスポーターを発現するかどうか判定するステップをさらに含む。プラチナ薬剤取込みトランスポーターがOCT2阻害剤によって阻害されるか否かは、当業者にとって公知のアッセイによって判定され得る。癌細胞がOCT2阻害剤によって阻害されないプラチナ薬剤取込みトランスポーターを発現するかどうか判定するステップは、様々な癌細胞型からの公開された遺伝子及び/またはタンパク質発現データを精査することによっても行われ得る。いくつかの実施形態において、OCT2阻害剤によって阻害されないプラチナ薬剤取込みトランスポーターは、有機カチオントランスポーター1(OCT1)取込みトランスポーターである。いくつかの実施形態において、OCT2阻害剤によって阻害されないプラチナ薬剤取込みトランスポーターは、有機カチオントランスポーター3(OCT3)取込みトランスポーターである。いくつかの実施形態において、OCT2阻害剤によって阻害されないプラチナ薬剤取込みトランスポーターは、銅トランスポーターI(CTR1)取込みトランスポーターである。
【0128】
効力の予測方法
一態様において、本開示は、少なくとも1つの癌細胞を含むサンプルを取得するステップ;及び癌細胞が有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤によって阻害されないプラチナ薬剤取込みトランスポーターを発現するかどうか判定するステップを含む、癌を有する被検者におけるプラチナ薬剤及びOCT2阻害剤療法の効力の予測方法を提供するが、ここで、プラチナ薬剤及びOCT2阻害剤療法は、癌細胞がOCT2阻害剤によって阻害されないプラチナ薬剤取込みトランスポーターを発現する被検者において有効な可能性があるものである。
【0129】
別の態様において、本開示は、少なくとも1つの癌細胞を含むサンプルを取得するステップ;及び癌細胞が有機カチオントランスポーター2(OCT2)を発現するかどうか判定するステップを含む、癌を有する被検者におけるプラチナ薬剤及びOCT2阻害剤療法の効力の予測方法を提供するが、ここで、プラチナ薬剤及びOCT2阻害剤療法は、癌細胞が主にOCT2を発現する被検者において有効である可能性がないものである。
【0130】
別の態様において、本開示は、癌が選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤によって阻害されないプラチナ薬剤取込みトランスポーターを発現するかどうか判定することを含む、癌を有する被検者におけるプラチナ薬剤及びOCT2阻害剤療法の効力の予測方法を提供するが、ここで、プラチナ薬剤及び選択的OCT2阻害剤療法は、癌細胞が選択的OCT2阻害剤によって阻害されないプラチナ薬剤取込みトランスポーターを発現する被検者において有効な可能性があるものである。いくつかの実施形態において、取込みトランスポーターはOCT1またはOCT3である。
【0131】
別の態様において、本開示は、癌細胞が有機カチオントランスポーター2(OCT2)を発現するかどうか判定することを含む、癌を有する被検者におけるプラチナ薬剤及びOCT2阻害剤療法の効力の予測方法を提供するが、ここで、プラチナ薬剤及び選択的OCT2阻害剤療法は、癌が主にOCT2を発現する被検者において有効である可能性がないものである。いくつかの実施形態において、取込みトランスポーターはOCT1またはOCT3である。
【0132】
プラチナ薬剤及び選択的OCT2阻害剤療法の効力の予測は、プラチナ薬剤及び選択的OCT2阻害剤療法が被検者において所望の化学療法効果をもたらす可能性のことをいう。効力は典型的に、患者が疾患を抱えて生きているが悪化はしていない治療の間または後の時間の長さである無憎悪生存期間(PFS)によって、または診断の日もしくは疾患の治療の開始のいずれかからの、疾患を有する患者がまだ生存している時間の長さである全生存期間(OS)によって評価される。
【0133】
本明細書に開示したような効力の予測方法は、任意の種類の癌を有する被検者において用いられ得る。いくつかの実施形態において、プラチナ薬剤はオキサリプラチンである。いくつかの実施形態において、プラチナ薬剤はシスプラチンである。いくつかの実施形態において、プラチナ薬剤はテトラプラチンである。いくつかの実施形態において、選択的OCT2阻害剤療法はブフロメジルまたはブフロメジル塩を投与することを含む。いくつかの実施形態において、選択的OCT2阻害剤療法はイミダゾールを含むOCT2阻害剤を投与することを含む。いくつかの実施形態において、選択的OCT2阻害剤療法はミコナゾールまたはその塩を投与することを含む。いくつかの実施形態において、OCT2阻害剤療法はドルテグラビルまたはドルテグラビル塩を投与することを含む。
【0134】
サンプルの取得
本明細書に記載したような効力の予測方法は、少なくとも1つの癌細胞を含むサンプルを取得するステップを含む。サンプルは、生検、吸引、手術、または被検者からの体液、例えば血液、脳脊髄液、羊水、腹腔液もしくは間質液などのサンプリングをはじめとする、当該技術分野において公知の任意の方法によって取得され得る。典型的には、サンプルは疾患組織または臓器から取得される。例えば、顕微鏡下でサンプルを分析することによって、またはサンプル中の特定の癌マーカーの発現もしくは存在を検出することによって、少なくとも1つの癌細胞が検出され得る。
【0135】
判定ステップ
一態様において、本明細書に記載したような効力の予測方法は、癌細胞がOCT2阻害剤によって阻害されないプラチナ薬剤取込みトランスポーターを発現するかどうか判定するステップを含む。癌細胞がOCT2阻害剤によって阻害されないプラチナ薬剤取込みトランスポーターを発現するかどうかの判定は、細胞内の特定のプラチナ薬剤取込みトランスポーターの存在またはその発現を検出するための当業者にとって公知の任意のアッセイを伴い得る。癌細胞がOCT2阻害剤によって阻害されないプラチナ薬剤取込みトランスポーターを発現するかどうか判定するステップは、様々な癌細胞型からの公開された遺伝子及び/またはタンパク質発現データを精査することによっても行われ得る。いくつかの実施形態において、OCT2阻害剤によって阻害されないプラチナ薬剤取込みトランスポーターは、有機カチオントランスポーター1(OCT1)取込みトランスポーターである。いくつかの実施形態において、OCT2阻害剤によって阻害されないプラチナ薬剤取込みトランスポーターは、有機カチオントランスポーター3(OCT3)取込みトランスポーターである。いくつかの実施形態において、OCT2阻害剤によって阻害されないプラチナ薬剤取込みトランスポーターは、銅トランスポーターI(CTR1)取込みトランスポーターである。
【0136】
一態様において、本明細書に記載したような効力の予測方法は、癌細胞がOCT2を発現するかどうか判定するステップを含む。癌細胞がOCT2を発現するかどうかの判定は、細胞内のOCT2の存在またはその発現を検出するための当業者にとって公知の任意のアッセイを伴い得る。癌細胞がOCT2を発現するかどうか判定するステップは、様々な癌細胞型からの公開された遺伝子及び/またはタンパク質発現データを精査することによっても行われ得る。
【0137】
プラチナ薬剤誘発性毒性を減少させるための化合物のスクリーニング
プラチナ保護剤、組成物及び/またはレジメンの理想的な特性としては、(i)プラチナ関連毒性の発症の最大限の減少、予防、緩和、及び/または遅延(及びそのような毒性に起因する関連した治療の中断、遅延、または投与量変更);(ii)抗腫瘍活性への干渉がないこと及びプラチナ療法の細胞傷害作用に対する腫瘍脱感作がないこと;(iii)医学的に許容可能な安全性プロファイル;(iv)プラチナ関連毒性を減少、予防、緩和、及び/または遅延させるための生化学的及び薬理学的機序の利用;ならびに(v)主要なプラチナ治療の投与量、頻度、及び/または継続時間を増加させることによる化学療法指数の増加が挙げられる。
【0138】
本明細書で用いる場合、選択的OCT2阻害剤は、5μM以下の、ヒト血清または4%ウシ血清アルブミンを含有するアッセイ溶液中での20μMのオキサリプラチンのOCT2媒介輸送に対するIC
50を有し、OCT−1、OCT−3、及びMATE−1によって媒介される、ヒト血清または4%ウシ血清アルブミンを含有するアッセイ溶液中での20μMのオキサリプラチン輸送に対する選択的OCT2阻害剤のIC
50よりも少なくとも10倍小さい、ヒト血清または4%ウシ血清アルブミンを含有するアッセイ溶液中での20μMのオキサリプラチンのOCT2媒介輸送に対するIC
50を有する。
【0139】
いくつかの実施形態において、選択的OCT2阻害剤は、2、3、または4μM以下の、ヒト血清または4%ウシ血清アルブミンを含有するアッセイ溶液中での20μMのオキサリプラチンのOCT2媒介輸送に対するIC
50を有する。
【0140】
いくつかの実施形態において、選択的OCT2阻害剤は、OCT−1、OCT−3、及びMATE−1によって媒介される、ヒト血清または4%ウシ血清アルブミンを含有するアッセイ溶液中での20μMのオキサリプラチン輸送に対する選択的OCT2阻害剤のIC
50よりも少なくとも15、20、25倍小さい、ヒト血清または4%ウシ血清アルブミンを含有するアッセイ溶液中での20μMのオキサリプラチンのOCT2媒介輸送に対するIC
50を有する。
【0141】
いくつかの実施形態において、選択的OCT2阻害剤は以下の追加の基準の1つ以上を有する。
1)標準的または現在の使用の下でのC
maxがOCT2のIC
50の2倍であること;及び
2)最大許容血漿濃度(MTC)がOCT2のIC
50の15倍、または計算によるOCT2のIC
90の4倍を超えて高いこと。
【0142】
いくつかの実施形態において、別の基準は、選択的OCT2阻害剤がプラチナ薬剤の効力を減少させないことである。
【0143】
プラチナ保護剤が、活性であるがそれ以外では毒性のプラチナ薬剤、組成物、及び/またはレジメンの治療指数を増加させることができる場合、腫瘍反応率を増加させること、腫瘍進行までの期間、及び全患者生存期間を増加させることによって、被検者にとって非常に有益となり得る。OXA−IPNの予防には完全または部分的な予防が含まれる。部分的な予防が得られる場合、薬物の存在下で何らかの臨床的改善を観察するのに十分であるべきである。長期毒性がDRGにおけるプラチナレベルに関係している場合、予防は、腫瘍におけるOXAの取込みを一定に維持しながらDRGにおけるプラチナ取込みを減少させることも意味し得る。予防の成功を判断する別の方法は、腫瘍とDRGとの間の取込みの比(腫瘍/DRG)を改善し、薬物の不在下で測定したその元の値を超える比を維持することである。
【0144】
OCTはオキサリプラチンの取込みに関与するトランスポーターであり、OCT2はDRG及び腎細胞内へのオキサリプラチンの取込みを担う一方で、OCT1は主に腫瘍細胞内へのオキサリプラチンの取込みを担う。比OCT2/OCT1取込み比を計算することによるDRG/腫瘍と呼ぶ遮断の比を規定することができ、これはスクリーニングに有用である。
【0145】
細胞におけるオキサリプラチンのOCT2媒介取込みを遮断するが、OCT1媒介取込みは遮断しない(そのため、選択的OCT2阻害剤である)化合物を見つけるために、多くの一連の化合物をスクリーニングした。好ましくは、試験した化合物は、OCT2/OCT1結合比の観点で表されるそれらのDRG/腫瘍比について調べた。
【0146】
OCT2トランスポーターの詳細はBelzerによる文献(Belzer, M., et. al, J Pharmacol Exp Ther. 2013 Aug; 346(2): 300−310)に記載されている。実際に、OCT2は複数の結合部位を有することが知られており、そのため、OCT2トランスポーターの阻害剤は基質依存的であることが知られている。精選された基質に対する複数の阻害剤の効果を比較することによってBelzerの所見を試験した。Belzerの結果と一致して、OCT2媒介輸送に対する化合物の阻害効力は、調査されているOCT2基質に依存して著しく異なる。したがって、当業者は、オキサリプラチンが基質として用いられていない限り、公開されているOCT2阻害値に依拠するべきではない。
【0147】
プラチナ薬剤
プラチナ薬剤は、プラチナ(II)または(IV)中心、2つの置換または非置換シス−アミン及び2つの脱離基を含有する化合物である。これらは、DNA中の求核性基に結合する高反応性荷電プラチナ錯体を形成し、アポトーシス及び細胞成長阻害をもたらす鎖内及び鎖間DNA架橋を誘導する。一般に用いられるプラチナ薬剤としては、シスプラチン(構造:平面四角形プラチナ(II)中心、2つのシス−アミン及び2つの塩化物基を含有)、カルボプラチン(構造:平面四角形プラチナ(II)中心、2つのシス−アミン及び二座配位ジカルボキシレートを含有)、ならびにオキサリプラチン(構造:平面四角形プラチナ(II)中心、二座配位子1,2−ジアミノシクロヘキサン及び二座配位オキサレート基)が挙げられる。別のプラチナ薬剤としては、リポプラチン、ネダプラチン、エプタプラチン(ヘプタプラチン)、ピコプラチン、サトラプラチン、テトラプラチン、イプロプラチン、ロバプラチン、及びトリプラチンが挙げられる。
【0148】
プラチナ薬剤の構造としては例えば以下が挙げられる。
【化1】
【0149】
これらのプラチナ薬剤のいくつかは様々な世界市場に出回っている薬物である。他のものはヒト臨床試験が現在行われている薬物候補である。いくつかの実施形態において、プラチナ薬剤は、臨床試験において投与したところ、毒性が忍容不能レベルという結果となったものである。例えば、テトラプラチン(オルマプラチン)は、忍容不能レベルの神経毒性のためにヒト臨床試験に失敗した。そのような薬物での抗癌療法は、本明細書に開示の方法から大きな恩恵を受けるであろう。
【0150】
いくつかの実施形態において、オキサリプラチンは粉末または溶液として提供される。オキサリプラチンは静脈内点滴または注入として投与され得る。オキサリプラチンは民間の供給元から入手することができる(Ranbaxy Limited, Mumbai, India; Accord Healthcare Limited, Durham, NC; Actavis, Parsippany−Troy Hills, NJ;及びHospira, San Jose, CA)。
【0151】
いくつかの実施形態において、シスプラチンは溶液として提供される。シスプラチンは静脈内点滴として投与され得る。シスプラチンは民間の供給元から入手することができる(Accord Healthcare Limited, Durham, NC; Hospira, San Jose, CA;及びSandoz, Holzkirchen, Upper Bavaria, Germany)。
【0152】
トランスポーターによるプラチナ薬剤の取込みは、典型的に薬物の代謝産物の取込みを伴う。プラチナ薬剤は代謝されてから、これらの代謝産物が細胞内に輸送される。例えば、OCT2は、シスプラチンそのものを輸送するよりも効率的にシスプラチンアナログ(複数可)を輸送し得る。
【0153】
OCT2阻害剤
いくつかの実施形態において、選択的OCT2阻害剤はブフロメジルまたはブフロメジル塩である。ブフロメジルの構造は以下である。
【化2】
そのIUPAC名は4−ピロリジン−1−イル−1−(2,4,6−トリメトキシフェニル)ブタン−1−オンである。いくつかの実施形態において、ブフロメジルは溶液として提供される。ブフロメジルは経口または静脈内投与され得る。ブフロメジルは民間の供給元から入手することができる(Loftyl(商標), Abbott, Chicago, IL)。
【0154】
ブフロメジルは血管作動性薬であり、跛行または末梢動脈疾患の症状を治療するために用いられてきた。ブフロメジルの標準治療は、患者1人につき経口により1日300mg、最大で1日600mg;または1日最大200mgの静脈内ボーラスである。MTC(最大許容濃度)は10mg/lである。
【0155】
いくつかの実施形態において、OCT2阻害剤はイミダゾールを含む。イミダゾールは式(CH)2N(NH)CHを有する有機化合物であり、平面複素環(5員環)であり、水溶性である。イミダゾールはアゾール抗真菌薬のクラスの一部である。これらには、例えば、ビホナゾール、ブトコナゾール、クロトリマゾール、エコナゾール、フェンチコナゾール、イソコナゾール、ケトコナゾール、ルリコナゾール、ミコナゾール、オモコナゾール、オキシコナゾール、セルタコナゾール、スルコナゾール、チオコナゾール、イミダゾール抗生物質(ニトロイミダゾール)、例えば6−アミノPA824、アザニダゾール、ベンズニダゾール、ジメトリダゾール、メガゾール、メトロニダゾール、ニモラゾール、オルニダゾール、チニダゾールなど、及びイミダゾール鎮静剤、ミダゾラムが含まれる。いくつかの実施形態において、選択的OCT2阻害剤はイミダゾールの塩である。
【0156】
いくつかの実施形態において、イミダゾールは以下の構造を含有する。
【化3】
【0157】
いくつかの実施形態において、イミダゾールは以下の構造を含有する。
【化4】
【0158】
いくつかの実施形態において、選択的OCT2阻害剤はドルテグラビルまたはドルテグラビルの塩である。ドルテグラビルの構造は以下である。
【化5】
いくつかの実施形態において、ドルテグラビル(Trivicay(商標), Viiv Healthcare, UK)は錠剤として提供される。ドルテグラビルは経口投与され得る。ドルテグラビルは民間の供給元から入手することができる(Trivicay(商標), Viiv Healthcare, UK)。
【0159】
選択的OCT2阻害剤の有効投与量
選択的OCT2阻害剤の有効投与量は、細胞内へのプラチナ薬剤のOCT2輸送を十分に減少させることのできる選択的OCT2阻害剤の量のことをいう。いくつかの実施形態において、選択的OCT2阻害剤の量は、細胞内へのプラチナ薬剤の輸送を完全に遮断するか、または細胞内へのプラチナ薬剤の輸送の99、98、97、96、95、94、93、92、91、90、85、80、75、または70%を遮断することができる。いくつかの実施形態において、判定のための基質であるプラチナ薬剤はオキサリプラチンである。測定は、OCT2を発現する細胞及びOCT2発現がない細胞(対照細胞)内のプラチナ蓄積を比較することによって行う。100%遮断は、OCT2細胞及び対照細胞中のプラチナ量が同じであることを意味する。
【0160】
いくつかの実施形態において、選択的OCT2阻害剤の投与量は、上記必要としている被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性を、選択的OCT2阻害剤の投与がない以外は同じ治療プロトコールで治療される被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性と比較して、少なくとも10%減少させるのに有効である。
【0161】
いくつかの実施形態において、選択的OCT2阻害剤の投与量は、上記必要としている被検者におけるプラチナ薬剤誘発性神経毒性を最小限にするのに有効である。
【0162】
いくつかの実施形態において、選択的OCT2阻害剤の投与量は、少なくとも100mg/m
2の蓄積投与量で治療された患者において、米国国立癌研究所−共通毒性規準(NCI−CTC)知覚性スケール、米国国立癌研究所−共通毒性規準(NCI−CTC)運動性スケール、総合神経障害スコア臨床版(TNSc)及び欧州癌研究治療機関CIPN限定自己報告アンケート調査(EORTC QOL−CIPN20)からなる群から選択される方法によって評価したグレード3以上のプラチナ薬剤誘発性神経毒性を予防するのに有効である。いくつかの実施形態において、蓄積投与量は、少なくとも100mg/m
2、200mg/m
2、300mg/m
2、400mg/m
2または500mg/m
2である。いくつかの実施形態において、選択的OCT2阻害剤の投与量は、グレード2以上のプラチナ薬剤誘発性神経毒性を予防するのに有効である。いくつかの実施形態において、予防は、神経毒性の発症の遅延または次のグレードへの昇級の遅延である。
【0163】
いくつかの実施形態において、選択的OCT2阻害剤の投与量は、少なくとも30mg/週/m
2のプラチナ薬剤投与量強度で治療された患者において、米国国立癌研究所−共通毒性規準(NCI−CTC)知覚性スケール、米国国立癌研究所−共通毒性規準(NCI−CTC)運動性スケール、総合神経障害スコア臨床版(TNSc)及び欧州癌研究治療機関CIPN限定自己報告アンケート調査(EORTC QOL−CIPN20)から選択される方法によって評価したグレード3以上のプラチナ薬剤誘発性神経毒性を予防するのに有効である。いくつかの実施形態において、プラチナ薬剤投与量強度は、少なくとも30mg/週/m
2、40mg/週/m
2、50mg/週/m
2または60mg/週/m
2である。いくつかの実施形態において、プラチナ薬剤投与量強度は、少なくとも30mg/週/m
2〜50mg/週/m
2である。いくつかの実施形態において、選択的OCT2阻害剤の投与量は、グレード2以上のプラチナ薬剤誘発性神経毒性を予防するのに有効である。いくつかの実施形態において、予防は、神経毒性の発症の遅延または次のグレードへの昇級の遅延である。
【0164】
いくつかの実施形態において、選択的OCT2阻害剤の投与量は、少なくとも80mg/m
2のプラチナ薬剤投与量で治療された患者において、米国国立癌研究所−共通毒性規準(NCI−CTC)知覚性スケール、米国国立癌研究所−共通毒性規準(NCI−CTC)運動性スケール、総合神経障害スコア臨床版(TNSc)及び欧州癌研究治療機関CIPN限定自己報告アンケート調査(EORTC QOL−CIPN20)から選択される方法によって評価したグレード3以上のプラチナ薬剤誘発性神経毒性を予防するのに有効である。いくつかの実施形態において、プラチナ薬剤投与量は、少なくとも80mg/m
2、90mg/m
2、100mg/m
2、110mg/m
2、120mg/m
2、130mg/m
2、または140mg/m
2である。いくつかの実施形態において、選択的OCT2阻害剤の投与量は、グレード2以上のプラチナ薬剤誘発性神経毒性を予防するのに有効である。いくつかの実施形態において、予防は、神経毒性の発症の遅延または次のグレードへの昇級の遅延である。
【0165】
予防は、本明細書で用いる場合、病態もしくは疾患の発症の回避または病態もしくは疾患の1つ以上の症状の減少をはじめとする、病態または疾患を患うリスクのある被検者に恩恵をもたらす任意の処置をいうことができる。あるグレードのプラチナ薬剤誘発性神経毒性の予防に関しては、被検者にとっての次のグレードへの昇級または進行が回避される。
【0166】
いくつかの実施形態において、選択的OCT2阻害剤は、神経毒性を減少させるのに有効な投与量で投与される。神経毒性は、冷たい物への接触に対する敏感性、冷たい液体の飲み込みの困難、喉の不快感、及び筋痙攣をもたらし得る。いくつかの実施形態において、神経毒性はグレード0、1、2、3、または4である。いくつかの実施形態において、神経毒性は運動ニューロンまたは感覚ニューロンへの損傷である。いくつかの実施形態において、選択的OCT2阻害剤は、背根神経節(DRG)への損傷を最小限にするのに有効な投与量で投与される。
【0167】
いくつかの実施形態において、神経毒性は神経伝導を測定することによって評価される。いくつかの実施形態において、神経伝導検査は橈骨、背側腓腹、腓腹及び尺骨神経の1つにおいて行われる。これらの方法は、Velasco, R., et. al, J Neurol Neurosyrg Psychiatry 2014; 85:392−398で説明されている。
【0168】
いくつかの実施形態において、神経伝導検査は感覚神経活動電位(SNAP)の測定を含む。いくつかの実施形態において、神経状態検査は神経伝導速度(NCV)の測定を含む。いくつかの実施形態において、神経毒性は低温に対する感度を測定することによって評価される。いくつかの実施形態において、神経毒性は機械的刺激に対する感度を測定することによって評価される。
【0169】
いくつかの実施形態において、神経毒性は、熱知覚閾値、機械的触覚閾値、振動知覚閾値、電流知覚閾値、刺針感度、深部腱反射及び握力から選択される試験方法によって評価される。これらの方法は、Griffith, K. et. al., Support Care Cancer 2014, 22(5): 1161−1169で説明されている。
【0170】
いくつかの実施形態において、神経毒性は米国国立癌研究所−共通毒性規準(NCI−CTC)知覚性スケールによって評価される。いくつかの実施形態において、神経毒性は総合神経障害スコア臨床版(TNSc)によって評価される。いくつかの実施形態において、神経毒性は欧州癌研究治療機関CIPN限定自己報告アンケート調査(EORTC QOL−CIPN20)によって評価される。これらの方法は、Kauto et al. “Oxaliplatin and National Cancer Institute−Common Toxicity Criteria in the Assessment of Chemotherapy−induced Peripheral Neuropathy” Anticancer Research 31: 3493−3496 (2011);及びCavaletti, G., et. al., European Journal of Cancer 46 (2010) 479−494で説明されている。
【0171】
臨床状況下での選択的OCT2阻害剤の時間−濃度プロファイル
臨床的に、オキサリプラチン及びシスプラチンをはじめとするプラチナ系抗癌剤は、治療サイクルにおいてある時間(典型的には2〜4時間、
図A中のT
PD)にわたって静脈内点滴によって投与されるが、この間にプラチナ薬剤は高血漿レベルに達し、末梢神経障害及び腎毒性をはじめとする有害作用を引き起こす可能性が高い。したがって、プラチナ薬剤投与の間(T
PD)、望ましい保護作用を得ると同時に、OCT2阻害剤そのものの有害作用を最小限にするために、選択的OCT2阻害剤の血漿レベルが、2つの所定のレベル(
図33中のC
L及びC
H)の間に維持されることが重要である。この治療濃度域を
図A中に斜線部として示す。このような薬物動態プロファイルの別の表現方法は、OCT2阻害剤の血漿レベルがC
LとC
Hとの間に維持される予防時間(T
prev)を定義することによるものであり、T
prevは
図Aに示すようにプラチナ薬剤投与の時間(T
PD)全体を包含するべきである。T
prevの外側では、有害作用をはじめとする他の薬理学的作用を最小限にするために、阻害剤レベルを可能な限り低く維持することが望ましい。そのような望ましい時間−血漿レベルプロファイルは、一般に実施されている薬物投与技術、例えば経口、静脈内注入、静脈内点滴、またはこれらの組合せなどを適用することによって、及び持続放出のように選択的OCT2阻害剤の製剤を最適化することによって達成することができる。
【0172】
薬物の治療効果は主に蓄積血漿曝露量(一般に曲線下面積/AUCと呼ばれる、典型的には12〜24時間の時間で積分した薬物血漿レベル)[Benet, L. and Hoener, B., Clin Pharmacol Ther 2002;71:115−21]によって発揮されるが、プラチナ薬剤誘発性毒性に対する選択的OCT2阻害剤の最適な保護作用を引き出すための上記のアプローチは、ほとんどの他の治療介入とは対照的であることに留意することが重要である。
【0173】
選択的OCT2阻害剤の望ましい血漿濃度範囲は以下のように決定することができる。C
Lは、100%ヒト血清または生理的レベルの血清アルブミンを含有するアッセイバッファー中で測定される、阻害剤のインビトロOCT2 IC
50値に基づいて決定することができる。プラチナ薬剤投与の間のOCT2阻害のレベルに応じて、C
Lは、インビボにおけるプラチナ薬剤のOCT2媒介輸送の推定による50%減少に相当するインビトロOCT2 IC
50値以上の値に設定され得る。より好ましくは、C
LはインビトロOCT2 IC
50値の2倍または4倍に設定され得るが、これらはそれぞれ推定による70%及び90%のOCT2阻害に相当する。例えば、IC
50値が1.4±0.2uM(表4)と測定されたブフロメジルについて、C
Lは、1.4uM(0.43mg/l)、またはより好ましくは、より大きな保護作用を引き出すために2.8uM(0.86mg/l)もしくは5.6uM(1.72mg/l)に設定され得る。ドルテグラビルの場合、測定されたIC
50値は3.4±1.0uM(表4)であり、そのため、C
Lは、IC
50値の1倍(3.4uMもしくは1.4mg/l)、2倍(6.8uMもしくは2.8mg/l)または4倍(13.6uMもしくは5.6mg/l)に設定され得る。
【0174】
C
Hは、選択的OCT2阻害剤の臨床及び前臨床毒性検査に基づいて決定することができ、例えば臨床最大耐量(MTD)の下での薬物のC
maxなどである。例えば、ブフロメジルの過量投与は致死性の心毒性及び神経毒性につながり得ることが文書で十分に立証されており[European Medicines Agency 2012, Bucolo 2012]、欧州及び多くの他の国での販売中止の一因となった。重篤な毒性は10mg/l(32.5uM)を超えるブフロメジル血漿レベルに関連することが文書で報告されている[European Medicines Agency 2012, Bourguignon 2012]。したがって、C
Hを10mg/l以下に設定することによって、ブフロメジル血漿濃度を確実に毒性誘発レベル未満に留めることが不可欠である。ドルテグラビルの場合、サルにおける前臨床14週間毒性研究で、NOAEL(無有害作用量)投与量では、雌における平均血漿C
maxが23.5mg/l(54.8uM)である[PMDA 2012]ことが報告されており、そのため、C
Hはこの値以下に設定することができる。
【0175】
選択的OCT2阻害剤の投与量調整
薬物の血漿レベルは、限定はしないが、体重、性別、年齢ならびに主要な薬物排泄臓器の機能、例えば腎機能及び肝機能などをはじめとする多くの因子の影響を受ける[FDA, Guidance for Industry: Population Pharmacokinetics, 1999]。したがって、同じ薬物投与量及び投与経路の下での被検者において、薬物血漿レベルの大きなばらつきが見られることが多い。そのような個体間のばらつきは、選択的OCT2阻害剤の保護作用に影響を与え得るだけでなく、より重要なことに、阻害剤が安全レベルC
Hを超えたままの場合に重篤な有害作用につながる恐れがある。このことは、高血漿曝露量が重度の毒性及び死亡の原因であると報告されているので、ブフロメジルなどの薬物で特に重要である[European Medicines Agency, Procedure number: EMEA/H/A−107/1293(http://www.ema.europa.eu/docs/en_GB/document_library/Referrals_document/Buflomedil_107/WC500128578.pdf) 2012; Bucolo, C., et. al., pharmacoepidemiology and drug safety 2012; 21: 1190−1196]。投与量調整の必要性を実証するために、本発明者らは、定速静脈内(IV)点滴(3時間にわたって150mg/時)によって450mgのブフロメジルを投与した2つの被検者群において薬物動態シミュレーションを行った。シミュレーションに用いた薬物動態パラメータは、(体重、年齢及び身長が)異なる2つの患者群からのものであり、平均ブフロメジルクリアランスにおいて有意差を示した(A群の292ml/分に対してB群の99.5ml/分)[Gundert−Remy, U., et. al., Eur J Clin Pharmacol (1981) 20: 459−463; Bourguignon, L., et. al., Fundam Clin Pharmacol. 2012 Apr;26(2):279−85]。
図34に示すように、A群の被検者のブフロメジルの血漿レベルはC
L及びC
Hによって定義される望ましい範囲内であるにもかかわらず、腎クリアランスが低下した高齢者(平均年齢82歳)であるB群の被検者では、同じ投与量でブフロメジルのレベルが危険なほどに高くなる(>10mg/l)。PKシミュレーションは、A群の被検者とほぼ同等のブフロメジルの血漿レベルを達成するために、B群の被検者に対するほぼ70%の投与量減少も示唆している。PKシミュレーションは、定速でのブフロメジルのIV点滴が時間経過に伴う血漿レベルのゆっくりとした変化をもたらすことも実証している。投与の間で選択的OCT2阻害剤のより安定した血漿レベルを達成するために、IVボーラス注入及びIV点滴の組合せ、または可変速IV点滴の使用、または[Shargel, L., et. al, Applied Biopharmaceutics and Pharmacokinetics, 6
th, 2012]に記載されている他の方法の使用が適用され得る。
【0176】
個体に対して薬物投与量を調整するために多くのアプローチを用いることができる[Klotz, U., J Clin Chem Clin Biochem. 1983 Nov;21(11):649−58; Jelliffe, R., Ther Drug Monit. 2000 Jun;22(3):325−9]。例えば、臨床的アプローチは被検者に低いまたは通常の投与量を適用し、その後、血漿薬物レベルを測定することを伴い得るが、これを必要に応じてその被検者に対する投与量調整の指針とするために用いることができる。別の例として、投与量調整は、母集団薬物動態解析[FDA, Guidance for Industry: Population Pharmacokinetics, 1999]を指針とすることもでき、これは、薬物レベルのばらつきに関連する測定可能な因子を特定するために一般に実施されている。そのような因子としては、体重、体表面積、身長、年齢、性別、アルコール使用、喫煙、生活様式、腎機能(一般にクレアチニンクリアランス検査によって評価される)、肝機能(一般にインドシアニングリーンクリアランス検査によって評価される)、遺伝子多型及び併用薬が挙げられるが、これらに限定されない。
【0177】
OCT2阻害剤濃度の薬物動態プロファイル
本開示は、最大許容血漿濃度(MTC)未満、かつ、ヒト血清または4%ウシ血清アルブミンを含有するアッセイバッファー中で評価した20μMのオキサリプラチンのOCT2媒介輸送についてのIC
50値の1倍、2倍、3倍、4倍を超えるプラチナ薬剤投与期間中の血漿濃度をもたらす投与量で、選択的OCT2阻害剤が投与される、開示の方法を提供する。
【0178】
いくつかの実施形態において、被検者に投与されるブフロメジルまたはブフロメジル塩の投与量は、体重、体表面積、身長、年齢、性別、アルコール使用、タバコ使用、生活様式、腎機能、肝機能、遺伝子多型及び併用薬をはじめとする被検者の因子の少なくとも1つに基づいて調節される。いくつかの実施形態において、ブフロメジルまたはブフロメジル塩の投与量は、少なくとも0.43mg/l、0.86mg/l、1.29mg/l、1.72mg/lまたは2.15mg/lのプラチナ投与期間中の血漿レベルをもたらす。いくつかの実施形態において、ブフロメジルまたはブフロメジル塩の投与量は、少なくとも50、75、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、525、550、575、または600mgである。いくつかの実施形態において、ブフロメジルまたはブフロメジル塩の投与量は少なくとも100mg、200mg、400mgまたは600mgである。いくつかの実施形態において、ブフロメジルまたはブフロメジル塩の投与量は少なくとも300mg、450mg、600mg、800mgまたは1000mgである。いくつかの実施形態において、ブフロメジルまたはブフロメジル塩の投与量は少なくとも1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、8mg/kgまたは10mg/kgである。
【0179】
いくつかの実施形態において、ドルテグラビルまたはドルテグラビル塩の投与量は、少なくとも1.4mg/l、2.8mg/l、4.2mg/l、5.6mg/lまたは7.0mg/lのプラチナ投与期間中の血漿レベルをもたらす。いくつかの実施形態において、ドルテグラビルまたはドルテグラビル塩の投与量は少なくとも50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mgまたは400mgである。いくつかの実施形態において、ドルテグラビルまたはドルテグラビル塩の投与量は少なくとも50mg、75mg、100mg、150mg、200mgまたは300mgである。いくつかの実施形態において、ドルテグラビルまたはドルテグラビル塩の投与量は少なくとも1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kgまたは6mg/kgである。
【0180】
いくつかの実施形態において、投与量調整は、個々の薬物の開発として本明細書に記載したデータチャートを参照した上記のような被検者の特性に基づく。
【0181】
医薬組成物
一態様において、本開示は、プラチナ薬剤、OCT2阻害剤、及び医薬品として許容可能な担体を含有する医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態において、OCT2阻害剤はブフロメジルまたはブフロメジル塩である。他の実施形態において、OCT2阻害剤はイミダゾールを含む。いくつかの実施形態において、OCT2阻害剤はミコナゾールまたはその塩である。いくつかの実施形態において、OCT2阻害剤はドルテグラビルまたはその塩である。いくつかの実施形態において、プラチナ薬剤はオキサリプラチンまたはシスプラチンである。いくつかの実施形態において、プラチナ薬剤はオキサリプラチンである。いくつかの実施形態において、プラチナ薬剤はシスプラチンである。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、静脈内投与のために製剤化されており、オキサリプラチンであるプラチナ薬剤、ブフロメジル、ブフロメジル塩、ドルテグラビル、及びドルテグラビル塩からなる群から選択される選択的OCT2阻害剤、ならびに医薬品として許容可能な担体を含む。
【0182】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、静脈内投与のために製剤化されており、オキサリプラチンまたはシスプラチンであるプラチナ薬剤、ブフロメジル、ブフロメジル塩、ドルテグラビル、及びドルテグラビル塩からなる群から選択される選択的OCT2阻害剤、ならびに医薬品として許容可能な担体を含む。
【0183】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、静脈内投与のために製剤化されており、オキサリプラチンまたはシスプラチンであるプラチナ薬剤、ブフロメジルまたはブフロメジル塩である選択的OCT2阻害剤、ならびに医薬品として許容可能な担体を含む。
【0184】
いくつかの実施形態において、プラチナ薬剤はオキサリプラチンである。いくつかの実施形態において、プラチナ薬剤はシスプラチンである。いくつかの実施形態において、プラチナ薬剤はテトラプラチンである。いくつかの実施形態において、プラチナ薬剤の量は、プラチナ薬剤を含む標準的な医薬組成物中に存在するものよりも多い。例えば、オキサリプラチンを含む標準的な医薬組成物は、一般に水で再構成する粉末として次の強度:50mg/バイアル、100mg/バイアル、または200mg/バイアルで投与される。シスプラチンを含む標準的な医薬組成物は、一般に200mg/200mlを含有する大きなバイアル中の即注入可能な1mg/ml溶液として提供される。テトラプラチンは承認薬ではないが、注入量は同様の製剤でシスプラチン(5mg/kg)と同様であると予想される。
【0185】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、プラチナ薬剤に加えて、治療有効量の1つ以上の追加の化学療法剤をさらに含む。追加の化学療法剤は、例えば、5−フルオロウラシル、ベバシズマブ、カペセタビン(capecetabine)、ゲムシタビン、イリノテカン、またはロイコボリンであり得る。
【0186】
任意の医薬品として許容可能な担体が用いられ得る。いくつかの実施形態において、本開示の組成物は、例えば、医薬品用途に適した調製物への活性化合物の加工を容易にする添加物及び助剤を含む1つ以上の生理学的に許容可能な担体を用いて従来の方法で製剤化される。好適な医薬品として許容可能な担体としては、限定はしないが、生理食塩水、バッファー水溶液、注射用水、デキストロース溶液、溶媒及び/または分散媒が挙げられる。こうした担体の使用は当該技術分野において公知である。担体は無菌であることが好ましい。いくつかの実施形態において、担体は、製造及び保管の条件下で安定であり、例えば、限定はしないがパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、またはチメロサールを用いて、微生物、例えば細菌及び真菌などの汚染作用を防ぐように保存される。
【0187】
医薬品として許容可能な担体として機能することのできる材料及び溶液の例としては、限定はしないが、(1)糖、例えばラクトース、グルコース及びスクロースなど;(2)デンプン、例えばトウモロコシデンプン及びジャガイモデンプンなど;(3)セルロース、及びその誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及び酢酸セルロースなど;(4)粉末状トラガカント;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)添加物、例えばカカオバター及び座薬ワックスなど;(9)油、例えばピーナツ油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油及び大豆油;(10)グリコール、例えばプロピレングリコールなど;(11)ポリオール、例えばグリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコールなど;(12)エステル、例えばエチルオレエート及びエチルラウレートなど;(13)寒天;(14)緩衝剤、例えば水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムなど;(15)アルギン酸;(16)発熱性物質不含水;(17)等張食塩水;(18)リンガー液;(19)エチルアルコール;(20)pH緩衝液;(21)ポリエステル、ポリカーボネート及び/またはポリ無水物;ならびに(22)医薬製剤に用いられる他の非毒性の相溶性物質が挙げられる。
【0188】
本開示の組成物の適切な製剤は選択された投与経路に依存し得る。本明細書に記載の医薬組成物の概要は、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Nineteenth Ed (Easton, Pa.: Mack Publishing Company, 1995); Hoover, John E., Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, Pa. 1975; Liberman, H. A. and Lachman, L., Eds., Pharmaceutical Dosage Forms, Marcel Decker, New York, N.Y., 1980;及びPharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, Seventh Ed. (Lippincott Williams & Wilkins 1999)に見出される。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、経腸、静脈内、筋肉内、腹腔内、経口、または腸管外投与のために製剤化される。いくつかの実施形態において、医薬組成物は静脈内投与のために製剤化される。ある実施形態において、複数の組成物が提供され、異なる投与経路のために製剤化される。
【0189】
製品
本開示は、オキサリプラチンまたはシスプラチンであるプラチナ薬剤;選択的OCT2阻害剤;及び使用のための指示書を含むキットに関する。キットは、例えばプラチナ薬剤誘発性神経毒性を減少させる;癌を治療する;または癌の治療に対する患者コンプライアンスを増加させる使用のための指示書をさらに含み得る。使用のための指示書は一般に書面による指示書であるが、指示書を含む電子記憶媒体(例えば磁気ディスケットまたは光ディスク)も許容可能である。
【0190】
本開示は、オキサリプラチンであるプラチナ薬剤;選択的OCT2阻害剤;及び使用のための指示書を含むキットに関する。いくつかの実施形態において、本開示は、オキサリプラチンであるプラチナ薬剤;ブフロメジル、ブフロメジル塩、ドルテグラビル、及びドルテグラビル塩からなる群から選択される選択的OCT2阻害剤;ならびに使用のための指示書を含むキットに関する。キットは、例えばプラチナ薬剤誘発性神経毒性を減少させる;癌を治療する;または癌の治療に対する患者コンプライアンスを増加させる使用のための指示書をさらに含み得る。使用のための指示書は一般に書面による指示書であるが、指示書を含む電子記憶媒体(例えば磁気ディスケットまたは光ディスク)も許容可能である。
【0191】
本開示は、シスプラチンであるプラチナ薬剤;選択的OCT2阻害剤;及び使用のための指示書を含むキットに関する。いくつかの実施形態において、本開示は、シスプラチンであるプラチナ薬剤;ブフロメジル、ブフロメジル塩、ドルテグラビル、及びドルテグラビル塩からなる群から選択される選択的OCT2阻害剤;ならびに使用のための指示書を含むキットに関する。キットは、例えばプラチナ薬剤誘発性神経毒性を減少させる;癌を治療する;または癌の治療に対する患者コンプライアンスを増加させる使用のための指示書をさらに含み得る。使用のための指示書は一般に書面による指示書であるが、指示書を含む電子記憶媒体(例えば磁気ディスケットまたは光ディスク)も許容可能である。
【0192】
本開示は、オキサリプラチンまたはシスプラチンであるプラチナ薬剤;ブフロメジル及びブフロメジル塩からなる群から選択される選択的OCT2阻害剤;ならびに使用のための指示書を含むキットに関する。キットは、例えばプラチナ薬剤誘発性神経毒性を減少させる;癌を治療する;または癌の治療に対する患者コンプライアンスを増加させる使用のための指示書をさらに含み得る。使用のための指示書は一般に書面による指示書であるが、指示書を含む電子記憶媒体(例えば磁気ディスケットまたは光ディスク)も許容可能である。
【0193】
いくつかの実施形態において、キットは、プラチナ薬剤に加えて、治療有効量の1つ以上の追加の癌化学療法剤をさらに含む。いくつかの実施形態において、1つ以上の追加の化学療法剤は、5−フルオロウラシル、ベバシズマブ、カペセタビン(capecetabine)、ゲムシタビン、イリノテカン、及びロイコボリンからなる群から選択される。
【0194】
本開示は、オキサリプラチンまたはシスプラチンであるプラチナ薬剤を含む1つ以上の容器;ならびにブフロメジル、ブフロメジル塩、ドルテグラビル、及びドルテグラビル塩からなる群から選択される選択的OCT2阻害剤を含む1つ以上の容器を含む医薬品キットにも関する。任意により、そのような容器(複数可)に、医薬品の製造、使用または販売を規制する政府機関によって規定された形態の通知を添付することができ、その通知はヒト投与に向けた製造、使用または販売についての機関による承認を表す。各構成要素(2つ以上の構成要素がある場合)は別々の容器に入れることができるか、または交差反応性及び貯蔵寿命が許せば、いくつかの構成要素を1つの容器にまとめることができる。キットは、単位剤形、バルクパッケージ(例えば複数回投与パッケージ)または亜単位投与量であり得る。キットは、複数の単位投与量の化合物及び使用のための指示書も含み、薬局(例えば病院薬局及び調剤薬局)での保管及び使用に十分な量で包装され得る。ある実施形態において、複数の剤形が提供され、異なる投与経路のために製剤化される。
【0195】
本明細書に記載の方法における使用に好適な包装の単位投与量の組成物を含む製品も開示する。好適な包装は当該技術分野において公知であり、例えば、バイアル、容器、アンプル、ボトル、ジャー、フレキシブル包装などが挙げられる。製品はさらに滅菌及び/または密封され得る。ある実施形態において、複数の組成物が提供され、異なる投与経路のために製剤化される。
【0196】
投与が併用のための2つ以上の活性剤を伴う場合、一般に、薬剤は、関係している薬剤のそれぞれにとっての処方される最も好適な投与レジームに応じて、別々にまたは単一剤形に製剤化され得る。
【0197】
指示書は、必要としている被検者に対する選択的OCT2阻害剤の望ましい投与量を決定するための指示書を含むことができる。例えば、指示書は、限定はしないが、体重、体表面積、身長、年齢、性別、アルコール使用、タバコ使用、生活様式、腎機能、肝機能、遺伝子多型及び併用薬をはじめとする被検者の少なくとも1つの因子に基づいて投与量を決定することを含むことができる。いくつかの実施形態において、指示書は、上記被検者におけるOCT2阻害剤の血漿レベルを監視することによって投与量を決定することを含む。
【0198】
プラチナ薬剤の投与及びOCT2
いくつかの実施形態において、本方法は、薬物の投与の前に、必要としている被検者において、ブフロメジルまたはブフロメジル塩である選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤のIC
50の2〜5倍である、ブフロメジルまたはブフロメジル塩である選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤の血漿レベルを達成するための有効投与量を決定するステップを含む。
【0199】
いくつかの実施形態において、選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤の血漿レベルを達成するための有効投与量を決定するステップは、予備投与量の選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤を投与することによって行われる。予備投与量は通常または低い投与量である。したがって、血漿レベルは投与される特定の被検者について決定することができる。
【0200】
いくつかの実施形態において、選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤の血漿レベルを達成するための有効投与量を決定するステップは、被検者特性に基づく参照データチャートによって決定される。被検者特性は個体に特有のものであり、体重、腎機能、肝機能、及び体表面積を挙げることができる。被検者特性に基づく参照データチャートは、FDAのガイドライン[FDA, Guidance for Industry: Population Pharmacokinetics, 1999]によって作成することができる。
【0201】
いくつかの実施形態において、プラチナ薬剤及び選択的OCT2阻害剤を同時に投与する。いくつかの実施形態において、選択的OCT2阻害剤をプラチナ薬剤の前に投与する。いくつかの実施形態において、選択的OCT2阻害剤をプラチナ薬剤の後に投与する。
【0202】
いくつかの実施形態において、選択的OCT2阻害剤は2つ以上の投与経路を介して投与される。いくつかの実施形態において、プラチナ薬剤及び選択的OCT2阻害剤は同じ投与経路を介して投与される。
【0203】
いくつかの実施形態において、選択的OCT2阻害剤は静脈内点滴によって投与される。いくつかの実施形態において、選択的OCT2阻害剤は静脈内注入及び静脈内点滴によって投与される。いくつかの実施形態において、静脈内点滴は少なくとも1時間にわたり、例えば、少なくとも1、2、3、4、5または6時間などである。いくつかの実施形態において、静脈内点滴の速度は一定である。いくつかの実施形態において、静脈内点滴の速度は一定でない。
【0204】
いくつかの実施形態において、必要としている被検者に投与される選択的OCT2阻害剤の量は、選択的OCT2阻害剤のOCT2 IC
50の少なくとも1〜5倍である。
【0205】
いくつかの実施形態において、必要としている被検者に投与される選択的OCT2阻害剤の量は1日当たり50mg〜600mgである。
【0206】
いくつかの実施形態において、1回の治療期間の間に被検者に投与されるプラチナ薬剤の量は、標準的な臨床診療の下で投与されるものよりも多い。
【0207】
いくつかの実施形態において、必要としている被検者に治療の全過程にわたって投与されるプラチナ薬剤の蓄積量は、標準的な臨床診療の下で投与されるものよりも多い。
【0208】
いくつかの実施形態において、標準的な臨床診療下よりも高い頻度でプラチナ薬剤を投与する。
【0209】
患者コンプライアンスの向上
本開示は患者コンプライアンスの向上方法を提供する。いくつかの実施形態において、被検者へのプラチナ薬剤の投与は痛みをもたらすであろう。いくつかの実施形態において、投与されるプラチナ薬剤の治療有効量は、被検者においてプラチナ薬剤誘発性毒性を引き起こすと知られている。本組成物は被検者の痛みを減少させるのに有用であるので、本組成物を用いる方法は患者コンプライアンスの増加を達成することができる。
【0210】
いくつかの実施形態において、本開示は、治療有効量のオキサリプラチンであるプラチナ薬剤を必要としている被検者に投与すること;及び上記必要としている被検者におけるプラチナ薬剤誘発性神経毒性を減少させるのに有効な投与量で、選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤を必要としている被検者に投与し、それによって、上記被検者が少なくとも500mg/m
2の蓄積投与量で治療を完了することを含む、必要としている被検者における癌の治療に対する患者コンプライアンスの増加方法を提供する。いくつかの実施形態において、被検者は少なくとも500、600、700、または800mg/m
2の蓄積投与量で治療を完了する。いくつかの実施形態において、被検者は少なくとも500〜800mg/m
2の蓄積投与量で治療を完了する。いくつかの実施形態において、選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤はブフロメジルでない。いくつかの実施形態において、この方法は、癌がOCT1またはOCT3の少なくとも一方を発現するかどうか判定するステップをさらに含む。いくつかの実施形態において、癌はOCT1またはOCT3の少なくとも一方を発現する。
【0211】
いくつかの実施形態において、本開示は、治療有効量のシスプラチンであるプラチナ薬剤を必要としている被検者に投与すること;及び上記必要としている被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性を減少させるのに有効な投与量で、選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤を必要としている被検者に投与し、それによって、上記被検者が少なくとも100mg/m
2の蓄積投与量で治療を完了することを含む、必要としている被検者における癌の治療に対する患者コンプライアンスの増加方法を提供する。いくつかの実施形態において、被検者は、100mg/m
2、200mg/m
2、300mg/m
2、400mg/m
2、500mg/m
2または600mg/m
2の蓄積投与量で治療を完了する。いくつかの実施形態において、被検者は少なくとも100mg/m
2の蓄積投与量で治療を完了する。いくつかの実施形態において、被検者は少なくとも300mg/m
2の蓄積投与量で治療を完了する。いくつかの実施形態において、被検者は少なくとも100〜300mg/m
2の蓄積投与量で治療を完了する。いくつかの実施形態において、選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤はブフロメジルでない。いくつかの実施形態において、この方法は、癌がOCT1またはOCT3の少なくとも一方を発現するかどうか判定するステップをさらに含む。いくつかの実施形態において、癌はOCT1またはOCT3の少なくとも一方を発現する。
【0212】
いくつかの実施形態において、本開示は、必要としている被検者において、ブフロメジルまたはブフロメジル塩である選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤のIC
50の2〜5倍である、ブフロメジルまたはブフロメジル塩である選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤の血漿レベルを達成するための有効投与量を決定すること;オキサリプラチン及びシスプラチンからなる群から選択される治療有効量のプラチナ薬剤を必要としている被検者に投与すること;ならびに上記必要としている被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性を減少させるのに有効な投与量で、ブフロメジルまたはブフロメジル塩である選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤を必要としている被検者に投与し、それによって、上記被検者が少なくとも100mg/m
2の蓄積投与量で治療を完了することを含む、必要としている被検者における癌の治療に対する患者コンプライアンスの増加方法を提供する。いくつかの実施形態において、被検者は少なくとも200、300、400、500、600、700、または800mg/m
2の蓄積投与量で治療を完了する。いくつかの実施形態において、被検者は少なくとも500〜800mg/m
2の蓄積投与量で治療を完了する。いくつかの実施形態において、被検者は少なくとも100mg/m
2の蓄積投与量で治療を完了する。いくつかの実施形態において、被検者は少なくとも300mg/m
2の蓄積投与量で治療を完了する。いくつかの実施形態において、被検者は少なくとも100〜300mg/m
2の蓄積投与量で治療を完了する。いくつかの実施形態において、この方法は、癌がOCT1またはOCT3の少なくとも一方を発現するかどうか判定するステップをさらに含む。いくつかの実施形態において、癌はOCT1またはOCT3の少なくとも一方を発現する。
【0213】
選択的OCT2阻害剤への曝露の不必要な継続を避けるためのCIPNに対する保護の中間評価
プラチナ薬剤(例えばオキサリプラチン及びシスプラチン)に起因するCIPN及び神経細胞の損傷または死の予防において、固有の毒性を有し得るブフロメジル及びドルテグラビルなどの保護剤の最大曝露量を制限することが重要である。これらの毒性は、選択的OCT2阻害剤の血漿レベルが
図33中のC
Hとして定義される安全レベルを超えた場合、特に繰り返し超過した場合に最もよく明らかとなる。これらの毒性を制限するために、選択的OCT2阻害剤の血漿レベルを監視して決してC
Hを超えないようにするか、またはある中間の時点でプラチナ薬剤(例えばオキサリプラチンまたはシスプラチン)毒性の減少に有効でないと分かった場合に阻害剤での治療を中断することが重要である。患者は数か月にわたって多くのサイクル(典型的には、オキサリプラチンで10〜12、シスプラチンで4〜8)の治療を必要とするので、高血漿レベルの選択的OCT2阻害剤(例えばブフロメジル及びドルテグラビル)への不必要な曝露を避けることが重要である。
【0214】
幸運にも、予防療法がオキサリプラチン及びシスプラチンによって引き起こされる末梢神経障害を軽減するかどうか推定するために用いることのできる、認知されており、十分に実証された中間の客観的尺度が存在し、Velasco(Velasco R, Bruna J, Briani C, et al. J Neurol Neurosurg Psychiatry 2014;85:392−398.)に記載されている方法を用いる。こうした評価を行う中間の時点は、プラチナ薬剤(例えばオキサリプラチン)治療のわずか3または4サイクル後である。これらの尺度に保護が見られなければ、選択的OCT2阻害剤、例えばブフロメジルまたはドルテグラビルなどを継続しても効果がない。この方法はVelasco 2014に記載されているような方法を用いるであろう。Velascoは、中間フォローアップで得られた3つの変数、すなわち、急性症状の数(OR 1.9;CI95% 1.2〜3.2;p=0.012)ならびに橈骨神経(OR 41.4;CI95% 4.98〜343.1;p=0.001)及び背側腓腹神経(OR 24.96;CI95% 2.6〜239.4;p=0.005)における感覚神経活動電位振幅のベースライン値からの30%を超える減少が、独立して重度のOXA−IPNを発症するリスクと関連することを見出した。そのため、3、4または6回のプラチナ薬剤(例えばオキサリプラチン)サイクルの後でこれらのパラメータに顕著な悪化があった場合(選択的OCT2阻害剤で治療されているにもかかわらず)、不必要で潜在的に有害な薬剤へのさらなる曝露を避けるために、中間の時点で選択的OCT2阻害剤(例えばブフロメジルまたはドルテグラビル)の投与を中断する。同様のアプローチを、典型的に250〜350mg/m2の投与後に末梢神経障害を引き起こすシスプラチンに適用することができる(Argyriou, et. al., Critical Reviews in Oncology/Hematology 82(2012)51−77)。
【0215】
本開示は、OCT2阻害剤の投与後にプラチナ薬剤誘発性毒性を評価する開示の方法を提供する。いくつかの実施形態において、本開示は、プラチナ薬剤の投与前に被検者の感覚神経活動電位または感覚神経伝導のベースラインを確立することによってプラチナ薬剤誘発性毒性を評価する開示の方法を提供する。いくつかの実施形態において、プラチナ薬剤誘発性毒性は治療の中間点付近で評価される。いくつかの実施形態において、プラチナ薬剤誘発性毒性は200mg/m
2の蓄積投与量での治療後に評価される。いくつかの実施形態において、プラチナ薬剤誘発性毒性は、200mg/m
2、300mg/m
2、400mg/m
2、500mg/m
2、600mg/m
2、700mg/m
2または800mg/m
2の蓄積投与量での治療後に評価される。
【0216】
医療での使用
本明細書に記載するように、選択的OCT2阻害剤は、必要としている被検者の癌の治療における使用についての本明細書の教示に従って、及び本明細書で教示した方法について記載したような変形形態に関して用いられ得るが、このOCT2阻害剤はオキサリプラチン及びシスプラチンからなる群から選択されるプラチナ薬剤との併用のためのものである。
【0217】
癌の治療のための医薬品の調製における選択的OCT2阻害剤の使用も、本明細書で提供した教示に基づいて、及び本明細書で教示した方法について記載したような変形形態に関して企図されるが、この医薬品はオキサリプラチン及びシスプラチンからなる群から選択されるプラチナ薬剤との併用のためのものである。
【0218】
癌の治療のための医薬品の調製におけるオキサリプラチン及びシスプラチンからなる群から選択されるプラチナ薬剤の使用も、本明細書で提供した教示に基づいて、及び本明細書で教示した方法について記載したような変形形態に関して企図されるが、この医薬品は選択的OCT2阻害剤との併用のためのものである。
【0219】
上記の使用のある実施形態において、OCT2阻害剤は、プラチナ薬剤誘発性毒性を減少させることができる投与量での投与のためのものである。ある実施形態において、OCT2阻害剤は、1日当たりX〜Ymg/kgの投与量での投与のためのものである。
【0220】
例示的実施形態
実施形態I−1:一実施形態において、本開示は、
有機カチオントランスポーター2(OCT2)を発現する細胞にプラチナ薬剤を与えること;及び
細胞内へのOCT2媒介プラチナ薬剤取込みを減少させるOCT2阻害剤を与えること
を含み、
OCT2阻害剤がブフロメジルまたはブフロメジル塩であり、細胞におけるプラチナ薬剤誘発性毒性を減少させる、OCT2を発現する細胞におけるプラチナ薬剤誘発性毒性の減少方法を提供する。
【0221】
実施形態I−2:一実施形態において、本開示は、
有機カチオントランスポーター2(OCT2)を発現する細胞にプラチナ薬剤を与えること;及び
細胞内へのOCT2媒介プラチナ薬剤取込みを減少させるOCT2阻害剤を与えること
を含み、
OCT2阻害剤がドルテグラビルまたはドルテグラビル塩であり、細胞におけるプラチナ薬剤誘発性毒性を減少させる、OCT2を発現する細胞におけるプラチナ薬剤誘発性毒性の減少方法を提供する。
【0222】
実施形態I−3:一実施形態において、本開示は、
有機カチオントランスポーター2(OCT2)を発現する細胞にプラチナ薬剤を与えること;及び
細胞内へのOCT2媒介プラチナ薬剤取込みを減少させるOCT2阻害剤を与えること
を含み、
OCT2阻害剤がイミダゾールを含み、細胞におけるプラチナ薬剤誘発性毒性を減少させる、OCT2を発現する細胞におけるプラチナ薬剤誘発性毒性の減少方法を提供する。
【0223】
実施形態I−4:実施形態I−3のさらなる実施形態において、OCT2阻害剤はミコナゾールまたはその塩である。
【0224】
実施形態I−5:実施形態I−1〜I−4のいずれかのさらなる実施形態において、プラチナ薬剤及びOCT2阻害剤は同時に与えられる。
【0225】
実施形態I−6:実施形態I−1〜I−4のいずれかのさらなる実施形態において、OCT2阻害剤はプラチナ薬剤の前に与えられる。
【0226】
実施形態I−7:実施形態I−1〜I−4のいずれかのさらなる実施形態において、OCT2阻害剤はプラチナ薬剤の後に与えられる。
【0227】
実施形態I−8:実施形態I−1〜I−7のいずれかのさらなる実施形態において、OCT2を発現する細胞は、腎細胞、ニューロン細胞、耳細胞、及び血液細胞からなる群から選択される細胞である。
【0228】
実施形態I−9:実施形態I−8のさらなる実施形態において、細胞は感覚ニューロン細胞である。
【0229】
実施形態I−10:実施形態I−8のさらなる実施形態において、細胞は腎細胞である。
【0230】
実施形態I−11:実施形態I−1〜I−10のいずれかのさらなる実施形態において、プラチナ薬剤はオキサリプラチンである。
【0231】
実施形態I−12:実施形態I−1〜I−10のいずれかのさらなる実施形態において、プラチナ薬剤はシスプラチンである。
【0232】
実施形態I−13:実施形態I−1〜I−10のいずれかのさらなる実施形態において、プラチナ薬剤はテトラプラチンである。
【0233】
実施形態I−14:実施形態I−1〜I−13のいずれかのさらなる実施形態において、OCT2を発現する細胞内へのOCT2媒介プラチナ薬剤取込みは、OCT2阻害剤の不在下での細胞内へのOCT2媒介プラチナ薬剤取込みと比較して、少なくとも50%、少なくとも70%または少なくとも90%阻害される。
【0234】
実施形態I−15:一実施形態において、本開示は、
有機カチオントランスポーター2(OCT2)を発現する細胞を含む被検者にプラチナ薬剤を与えること;及び
被検者にOCT2阻害剤を与えること
を含み、
OCT2阻害剤がブフロメジルまたはブフロメジル塩であり、OCT2を発現する細胞内へのOCT2媒介プラチナ薬剤取込みを減少させ、それによって被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性を減少させる、被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性の減少方法を提供する。
【0235】
実施形態I−16:一実施形態において、本開示は、
有機カチオントランスポーター2(OCT2)を発現する細胞を含む被検者にプラチナ薬剤を与えること;及び
被検者にOCT2阻害剤を与えること
を含み、
OCT2阻害剤がドルテグラビルまたはドルテグラビル塩であり、OCT2を発現する細胞内へのOCT2媒介プラチナ薬剤取込みを減少させ、それによって被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性を減少させる、被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性の減少方法を提供する。
【0236】
実施形態I−17:一実施形態において、本開示は、
有機カチオントランスポーター2(OCT2)を発現する細胞を含む被検者にプラチナ薬剤を与えること;及び
被検者にOCT2阻害剤を与えること
を含み、
OCT2阻害剤がイミダゾールを含み、OCT2を発現する細胞内へのOCT2媒介プラチナ薬剤取込みを減少させ、それによって被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性を減少させる、被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性の減少方法を提供する。
【0237】
実施形態I−18:実施形態I−17のさらなる実施形態において、OCT2阻害剤はミコナゾールまたはその塩である。
【0238】
実施形態I−19:一実施形態において、本開示は、
OCT2を発現する細胞を含む被検者にOCT2阻害剤を与えること;
を含み、
OCT2阻害剤がブフロメジルまたはブフロメジル塩であり、被検者がプラチナ薬剤を与えられているか与えられることになり、OCT2阻害剤がOCT2を発現する細胞内へのOCT2媒介プラチナ薬剤取込みを減少させ、それによって被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性を減少させる、被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性の減少方法を提供する。
【0239】
実施形態I−20:一実施形態において、本開示は、
OCT2を発現する細胞を含む被検者にOCT2阻害剤を与えること;
を含み、
OCT2阻害剤がドルテグラビルまたはドルテグラビル塩であり、被検者がプラチナ薬剤を与えられているか与えられることになり、OCT2阻害剤がOCT2を発現する細胞内へのOCT2媒介プラチナ薬剤取込みを減少させ、それによって被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性を減少させる、被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性の減少方法を提供する。
【0240】
実施形態I−21:一実施形態において、本開示は、
OCT2を発現する細胞を含む被検者にOCT2阻害剤を与えること;
を含み、
OCT2阻害剤がイミダゾールを含み、被検者がプラチナ薬剤を与えられているか与えられることになり、OCT2阻害剤がOCT2を発現する細胞内へのOCT2媒介プラチナ薬剤取込みを減少させ、それによって被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性を減少させる、被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性の減少方法を提供する。
【0241】
実施形態I−22:実施形態I−21のさらなる実施形態において、OCT2阻害剤はミコナゾールまたはその塩である。
【0242】
実施形態I−23:実施形態I−15〜I−22のいずれかのさらなる実施形態において、プラチナ薬剤及びOCT2阻害剤は同時に与えられる。
【0243】
実施形態I−24:実施形態I−15〜I−22のいずれかのさらなる実施形態において、OCT2阻害剤はプラチナ薬剤の前に与えられる。
【0244】
実施形態I−25:実施形態I−15〜I−22のいずれかのさらなる実施形態において、OCT2阻害剤はプラチナ薬剤の後に与えられる。
【0245】
実施形態I−26:実施形態I−15〜I−25のいずれかのさらなる実施形態において、プラチナ薬剤はオキサリプラチンである。
【0246】
実施形態I−27:実施形態I−15〜I−25のいずれかのさらなる実施形態において、プラチナ薬剤はシスプラチンである。
【0247】
実施形態I−28:実施形態I−15〜I−25のいずれかのさらなる実施形態において、プラチナ薬剤はテトラプラチンである。
【0248】
実施形態I−29:実施形態I−15〜I−28のいずれかのさらなる実施形態において、被検者に与えられるOCT2阻害剤の量は治療有効投与量未満である。
【0249】
実施形態I−30:実施形態I−15〜I−29のいずれかのさらなる実施形態において、被検者に与えられるOCT2阻害剤の量は1日当たり10mg〜2000mgである。
【0250】
実施形態I−31:実施形態I−15〜I−30のいずれかのさらなる実施形態において、1回の治療期間の間に被検者に与えられるプラチナ薬剤の量は標準的な臨床診療の下で与えられるものよりも多い。
【0251】
実施形態I−32:実施形態I−15〜I−31のいずれかのさらなる実施形態において、治療の全過程にわたって被検者に与えられるプラチナ薬剤の蓄積量は、標準的な臨床診療の下で与えられるものよりも多い。
【0252】
実施形態I−33:実施形態I−15〜I−32のいずれかのさらなる実施形態において、標準的な臨床診療下よりも高い頻度でプラチナ薬剤を与える。
【0253】
実施形態I−34:実施形態I−15〜I−33のいずれかのさらなる実施形態において、プラチナ薬剤誘発性毒性は、腎毒性、神経毒性、血液毒性、及び耳毒性からなる群から選択される。
【0254】
実施形態I−35:実施形態I−34のさらなる実施形態において、プラチナ薬剤誘発性毒性は神経毒性である。
【0255】
実施形態I−36:実施形態I−35のさらなる実施形態において、神経毒性は末梢神経障害である。
【0256】
実施形態I−37:実施形態I−36のさらなる実施形態において、末梢神経障害はグレード3またはグレード4末梢神経障害である。
【0257】
実施形態I−38:実施形態I−34のさらなる実施形態において、プラチナ薬剤誘発性毒性は腎毒性である。
【0258】
実施形態I−39:実施形態I−15〜I−38のいずれかのさらなる実施形態において、被検者はヒトまたは非ヒト動物である。
【0259】
実施形態I−40:実施形態I−15〜I−39のいずれかのさらなる実施形態において、OCT2阻害剤は、経腸、静脈内、筋肉内、腹腔内、経口、または腸管外で与えられる。
【0260】
実施形態I−41:実施形態I−15〜I−40のいずれかのさらなる実施形態において、一群の被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性の有病率は、OCT2阻害剤を与えられていない一群の被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性の有病率と比較して、少なくとも10%減少される。
【0261】
実施形態I−42:一実施形態において、本開示は、
癌を有する被検者に治療有効量のプラチナ薬剤を与えること;及び
被検者に有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤を与えること
を含み、
被検者が、OCT2阻害剤によって阻害されていないプラチナ薬剤取込みトランスポーターを発現する癌細胞を含み、
OCT2阻害剤がブフロメジルまたはブフロメジル塩であり、
それによって被検者の癌を治療する、被検者における癌の治療方法を提供する。
【0262】
実施形態I−43:一実施形態において、本開示は、
癌を有する被検者に治療有効量のプラチナ薬剤を与えること;及び
被検者に有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤を与えること
を含み、
被検者が、OCT2阻害剤によって阻害されていないプラチナ薬剤取込みトランスポーターを発現する癌細胞を含み、
OCT2阻害剤がドルテグラビルまたはドルテグラビル塩であり、
それによって被検者の癌を治療する、被検者における癌の治療方法を提供する。
【0263】
実施形態I−44:一実施形態において、本開示は、
癌を有する被検者に治療有効量のプラチナ薬剤を与えること;及び
被検者に有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤を与えること
を含み、
被検者が、OCT2阻害剤によって阻害されていないプラチナ薬剤取込みトランスポーターを発現する癌細胞を含み、
OCT2阻害剤がイミダゾールを含み、
それによって被検者の癌を治療する、被検者における癌の治療方法を提供する。
【0264】
実施形態I−45:実施形態I−44のさらなる実施形態において、OCT2阻害剤はミコナゾールまたはその塩である。
【0265】
実施形態I−46:一実施形態において、本開示は、
癌を有する被検者に治療有効量のプラチナ薬剤を与えること;及び
被検者にOCT2阻害剤を与えること
を含み、
被検者が、OCT2阻害剤によって阻害されないプラチナ薬剤取込みトランスポーターを発現する癌細胞を含み、
OCT2阻害剤がブフロメジルまたはブフロメジル塩であり、
それによってプラチナ薬剤治療の効力を増加させる、被検者におけるプラチナ薬剤治療の効力の増加方法を提供する。
【0266】
実施形態I−47:一実施形態において、本開示は、
癌を有する被検者に治療有効量のプラチナ薬剤を与えること;及び
被検者にOCT2阻害剤を与えること
を含み、
被検者が、OCT2阻害剤によって阻害されないプラチナ薬剤取込みトランスポーターを発現する癌細胞を含み、
OCT2阻害剤がドルテグラビルまたはドルテグラビル塩であり、
それによってプラチナ薬剤治療の効力を増加させる、被検者におけるプラチナ薬剤治療の効力の増加方法を提供する。
【0267】
実施形態I−48:一実施形態において、本開示は、
癌を有する被検者に治療有効量のプラチナ薬剤を与えること;及び
被検者にOCT2阻害剤を与えること
を含み、
被検者が、OCT2阻害剤によって阻害されないプラチナ薬剤取込みトランスポーターを発現する癌細胞を含み、
OCT2阻害剤がイミダゾールを含み、
それによってプラチナ薬剤治療の効力を増加させる、被検者におけるプラチナ薬剤治療の効力の増加方法を提供する。
【0268】
実施形態I−49:実施形態I−48のさらなる実施形態において、OCT2阻害剤はミコナゾールまたはその塩である。
【0269】
実施形態I−50:実施形態I−42〜I−49のいずれかのさらなる実施形態において、プラチナ薬剤及びOCT2阻害剤は同時に与えられる。
【0270】
実施形態I−51:実施形態I−42〜I−49のいずれかのさらなる実施形態において、OCT2阻害剤はプラチナ薬剤の前に与えられる。
【0271】
実施形態I−52:実施形態I−42〜I−49のいずれかのさらなる実施形態において、OCT2阻害剤はプラチナ薬剤の後に与えられる。
【0272】
実施形態I−53:実施形態I−42〜I−52のいずれかのさらなる実施形態において、プラチナ薬剤はオキサリプラチンである。
【0273】
実施形態I−54:実施形態I−42〜I−52のいずれかのさらなる実施形態において、プラチナ薬剤はシスプラチンである。
【0274】
実施形態I−55:実施形態I−42〜I−52のいずれかのさらなる実施形態において、プラチナ薬剤はテトラプラチンである。
【0275】
実施形態I−56:実施形態I−42〜I−54のいずれかのさらなる実施形態において、被検者に与えられるOCT2阻害剤の量は治療有効投与量未満である。
【0276】
実施形態I−57:実施形態I−42〜I−56のいずれかのさらなる実施形態において、被検者に与えられるOCT2阻害剤の量は1日当たり10mg〜2000mgである。
【0277】
実施形態I−58:実施形態I−42〜I−57のいずれかのさらなる実施形態において、1回の治療期間の間に被検者に与えられるプラチナ薬剤の量は標準的な臨床診療の下で与えられるものよりも多い。
【0278】
実施形態I−59:実施形態I−42〜I−58のいずれかのさらなる実施形態において、治療の全過程にわたって被検者に与えられるプラチナ薬剤の蓄積量は、標準的な臨床診療の下で与えられるものよりも多い。
【0279】
実施形態I−60:実施形態I−42〜I−59のいずれかのさらなる実施形態において、標準的な臨床診療下よりも高い頻度でプラチナ薬剤を与える。
【0280】
実施形態I−61:実施形態I−42〜I−60のいずれかのさらなる実施形態において、癌は、膵腺癌、膨大部及び膨大部周囲癌、肛門腺癌、虫垂癌、肝細胞癌、結腸癌または直腸癌、上皮性卵巣癌、ファロピウス管癌、原発性腹膜癌、食道または食道胃接合部癌、胃癌、小腸癌、精巣癌、胆管癌、膵腺癌、原発不明癌、慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫、AIDS関連B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、胃MALTリンパ腫、非胃MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、菌状息肉症/セザリー症候群、脾辺縁帯リンパ腫、末梢T細胞リンパ腫、原発性皮膚B細胞リンパ腫、原発性皮膚未分化大細胞リンパ腫(ALCL)、肺癌、肝癌、ならびに胆嚢癌からなる群から選択される。
【0281】
実施形態I−62:実施形態I−61のさらなる実施形態において、癌は結腸癌または直腸癌である。
【0282】
実施形態I−63:実施形態I−61のさらなる実施形態において、癌は肝癌である。
【0283】
実施形態I−64:実施形態I−61のさらなる実施形態において、癌は肺癌である。
【0284】
実施形態I−65:実施形態I−42〜I−64のいずれかのさらなる実施形態において、OCT2阻害剤によって阻害されないプラチナ薬剤取込みトランスポーターは、有機カチオントランスポーター1(OCT1)取込みトランスポーターである。
【0285】
実施形態I−66:実施形態I−42〜I−64のいずれかのさらなる実施形態において、OCT2阻害剤によって阻害されないプラチナ薬剤取込みトランスポーターは、有機カチオントランスポーター3(OCT3)取込みトランスポーターである。
【0286】
実施形態I−67:実施形態I−42〜I−64のいずれかのさらなる実施形態において、OCT2阻害剤によって阻害されないプラチナ薬剤取込みトランスポーターは、銅トランスポーターI(CTR1)取込みトランスポーターである。
【0287】
実施形態I−68:実施形態I−42〜I−67のいずれかのさらなる実施形態において、この方法は、癌細胞がOCT2阻害剤によって阻害されないプラチナ薬剤取込みトランスポーターを発現するかどうか判定するステップをさらに含む。
【0288】
実施形態I−69:実施形態I−42〜I−68のいずれかのさらなる実施形態において、プラチナ薬剤に加えて、治療有効量の1つ以上の追加の化学療法剤を被検者に与えることをさらに含む。
【0289】
実施形態I−70:実施形態I−69のさらなる実施形態において、1つ以上の追加の化学療法剤は、5−フルオロウラシル、ベバシズマブ、カペセタビン(capecetabine)、ゲムシタビン、イリノテカン、及びロイコボリンからなる群から選択される。
【0290】
実施形態I−71:実施形態I−42〜I−70のいずれかのさらなる実施形態において、被検者はヒトまたは非ヒト動物である。
【0291】
実施形態I−72:実施形態I−42〜I−71のいずれかのさらなる実施形態において、OCT2阻害剤は、経腸、静脈内、筋肉内、腹腔内、経口、または腸管外で与えられる。
【0292】
実施形態I−73:一実施形態において、本開示は、
プラチナ薬剤、
ブフロメジルまたはブフロメジル塩であるOCT2阻害剤、及び
医薬品として許容可能な担体
を含む医薬組成物を提供する。
【0293】
実施形態I−74:一実施形態において、本開示は、
プラチナ薬剤、
ドルテグラビルまたはドルテグラビル塩であるOCT2阻害剤、及び
医薬品として許容可能な担体
を含む医薬組成物を提供する。
【0294】
実施形態I−75:一実施形態において、本開示は、
プラチナ薬剤、
イミダゾールを含むOCT2阻害剤、及び
医薬品として許容可能な担体
を含む医薬組成物を提供する。
【0295】
実施形態I−76:実施形態I−75のさらなる実施形態において、OCT2阻害剤はミコナゾールまたはその塩である。
【0296】
実施形態I−77:実施形態I−73〜I−76のいずれかのさらなる実施形態において、プラチナ薬剤の量は、プラチナ薬剤を含む標準的な医薬組成物中に存在するものよりも多い。
【0297】
実施形態I−78:実施形態I−73〜I−77のいずれかのさらなる実施形態において、プラチナ薬剤に加えて、治療有効量の1つ以上の追加の化学療法剤をさらに含む。
【0298】
実施形態I−79:実施形態I−78のさらなる実施形態において、1つ以上の追加の化学療法剤は、5−フルオロウラシル、ベバシズマブ、カペセタビン(capecetabine)、ゲムシタビン、イリノテカン、及びロイコボリンからなる群から選択される。
【0299】
実施形態I−80:実施形態I−73〜I−79のいずれかのさらなる実施形態において、プラチナ薬剤はオキサリプラチンである。
【0300】
実施形態I−81:実施形態I−73〜I−79のいずれかのさらなる実施形態において、プラチナ薬剤はシスプラチンである。
【0301】
実施形態I−82:実施形態I−73〜I−79のいずれかのさらなる実施形態において、プラチナ薬剤はテトラプラチンである。
【0302】
実施形態I−83:実施形態I−3、I−17、I−21、I−44、またはI−48のいずれかのさらなる実施形態において、OCT2阻害剤は、少なくとも1のC
max,u/IC
50またはC
max/IC
50,appを有する。
【0303】
実施形態I−84:実施形態I−3、I−17、I−21、I−44、またはI−48のいずれかのさらなる実施形態において、OCT2阻害剤は、少なくとも3のC
max,u/IC
50またはC
max/IC
50,appを有する。
【0304】
実施形態I−85:実施形態I−3、I−17、I−21、I−44、I−48、I−83、またはI−84のいずれかのさらなる実施形態において、OCT2阻害剤はその臨床濃度では細胞にとって毒性でない。
【0305】
実施形態I−86:実施形態I−3、I−17、I−21、I−44、I−48、またはI−83〜I−85のいずれかのさらなる実施形態において、OCT2阻害剤は、OCT2阻害剤の不在下における臨床濃度のプラチナ薬剤の抗癌活性と比較して、20%を超えて臨床濃度のプラチナ薬剤の抗癌活性を減少させない。
【0306】
実施形態I−87:実施形態I−3、I−17、I−21、I−44、I−48、またはI−83〜I−86のいずれかのさらなる実施形態において、OCT2阻害剤は、OCT2阻害剤の不在下における他のトランスポーターを介した臨床濃度のプラチナ薬剤の取込みと比較して、20%を超えて他のトランスポーターを介した細胞内への臨床濃度のプラチナ薬剤の取込みを減少させない。
【0307】
実施形態I−88:実施形態I−3、I−17、I−21、I−44、I−48、またはI−83〜I−87のいずれかのさらなる実施形態において、OCT2阻害剤は、OCT2阻害剤の不在下における臨床濃度のプラチナ薬剤の流出と比較して、20%を超えて臨床濃度のプラチナ薬剤の流出を減少させない。
【0308】
実施形態I−89:実施形態I−3、I−17、I−21、I−44、I−48、またはI−83〜I−88のいずれかのさらなる実施形態において、OCT2阻害剤は2時間を超える平均半減期を有する。
【0309】
実施形態I−90:実施形態I−75のさらなる実施形態において、OCT2阻害剤は、少なくとも1のC
max,u/IC
50またはC
max/IC
50,appを有する。
【0310】
実施形態I−91:実施形態I−75のさらなる実施形態において、OCT2阻害剤は、少なくとも3のC
max,u/IC
50またはC
max/IC
50,appを有する。
【0311】
実施形態I−92:実施形態I−75、I−90、またはI−91のいずれかのさらなる実施形態において、OCT2阻害剤はその臨床濃度では細胞にとって毒性でない。
【0312】
実施形態I−93:実施形態I−75またはI−90〜I−92のいずれかのさらなる実施形態において、OCT2阻害剤は、OCT2阻害剤の不在下における臨床濃度のプラチナ薬剤の抗癌活性と比較して、20%を超えて臨床濃度のプラチナ薬剤の抗癌活性を減少させない。
【0313】
実施形態I−94:実施形態I−75またはI−90〜I−93のいずれかのさらなる実施形態において、OCT2阻害剤は、OCT2阻害剤の不在下における他のトランスポーターを介した臨床濃度のプラチナ薬剤の取込みと比較して、20%を超えて他のトランスポーターを介した細胞内への臨床濃度のプラチナ薬剤の取込みを減少させない。
【0314】
実施形態I−95:実施形態I−75またはI−90〜I−94のいずれかのさらなる実施形態において、OCT2阻害剤は、OCT2阻害剤の不在下における臨床濃度のプラチナ薬剤の流出と比較して、20%を超えて臨床濃度のプラチナ薬剤の流出を減少させない。
【0315】
実施形態I−96:実施形態I−75またはI−90〜I−95のいずれかのさらなる実施形態において、OCT2阻害剤は2時間を超える平均半減期を有する。
【0316】
実施形態I−97:一実施形態において、本開示は、
少なくとも1つの癌細胞を含むサンプルを取得すること;及び
癌細胞が有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤によって阻害されないプラチナ薬剤取込みトランスポーターを発現するかどうか判定すること
を含む、癌を有する被検者におけるプラチナ薬剤及びOCT2阻害剤療法の効力の予測方法を提供するが、
ここで、プラチナ薬剤及びOCT2阻害剤療法は、癌細胞がOCT2阻害剤によって阻害されないプラチナ薬剤取込みトランスポーターを発現する被検者において有効な可能性があるものである。
【0317】
実施形態I−98:一実施形態において、本開示は、
少なくとも1つの癌細胞を含むサンプルを取得すること;及び
癌細胞が有機カチオントランスポーター2(OCT2)を発現するかどうか判定すること
を含む、癌を有する被検者におけるプラチナ薬剤及びOCT2阻害剤療法の効力の予測方法を提供するが、
ここで、プラチナ薬剤及びOCT2阻害剤療法は、癌細胞が主にOCT2を発現する被検者において有効である可能性がないものである。
【0318】
実施形態I−99:実施形態I−97またはI−98のいずれかのさらなる実施形態において、プラチナ薬剤はオキサリプラチンである。
【0319】
実施形態I−100:実施形態I−97またはI−98のいずれかのさらなる実施形態において、プラチナ薬剤はシスプラチンである。
【0320】
実施形態I−101:実施形態I−97またはI−98のいずれかのさらなる実施形態において、プラチナ薬剤はテトラプラチンである。
【0321】
実施形態I−102:実施形態I−97またはI−98のいずれかのさらなる実施形態において、OCT2阻害剤療法はブフロメジルまたはブフロメジル塩を投与することを含む。
【0322】
実施形態I−103:実施形態I−97またはI−98のいずれかのさらなる実施形態において、OCT2阻害剤療法はドルテグラビルまたはドルテグラビル塩を投与することを含む。
【0323】
実施形態I−104:実施形態I−97またはI−98のいずれかのさらなる実施形態において、OCT2阻害剤療法はイミダゾールを含むOCT2阻害剤を投与することを含む。
【0324】
実施形態I−105:実施形態I−104のさらなる実施形態において、OCT2阻害剤療法はミコナゾールまたはその塩を含むOCT2阻害剤を投与することを含む。
【0325】
オキサリプラチン及び神経毒性の例示的実施形態
実施形態II−1:一実施形態において、本開示は、
オキサリプラチンであるプラチナ薬剤を必要としている被検者に投与すること;及び
有効投与量の選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤を必要としている被検者に投与すること
を含み、
必要としている被検者が癌を有する、必要としている被検者におけるプラチナ薬剤誘発性神経毒性の減少方法を提供する。
【0326】
実施形態II−2:一実施形態において、本開示は、
治療有効量のオキサリプラチンであるプラチナ薬剤を必要としている被検者に投与すること;及び
有効投与量の選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤を必要としている被検者に投与すること
を含む、必要としている被検者における癌の治療方法を提供する。
【0327】
実施形態II−3:一実施形態において、本開示は、
治療有効量のオキサリプラチンであるプラチナ薬剤を必要としている被検者に投与すること;及び
上記必要としている被検者におけるプラチナ薬剤誘発性神経毒性を減少させるのに有効な投与量で、選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤を必要としている被検者に投与し、それによって、被検者が少なくとも500mg/m
2の蓄積投与量で治療を完了すること
を含む、必要としている被検者における癌の治療に対する患者コンプライアンスの増加方法を提供する。
【0328】
実施形態II−4:投与されるプラチナ薬剤の治療有効量が被検者においてプラチナ薬剤誘発性神経毒性を引き起こすと知られている、実施形態II−2または3の方法。
【0329】
実施形態II−5:神経毒性が末梢神経毒性である、実施形態II−1または3〜4のいずれかの方法。
【0330】
実施形態II−6:神経毒性が感覚ニューロンへの損傷である、実施形態II−1または3〜4のいずれかの方法。
【0331】
実施形態II−7:神経毒性が運動ニューロンへの損傷である、実施形態II−1または3〜4のいずれかの方法。
【0332】
実施形態II−7a:神経毒性が慢性神経毒性である、実施形態II−1〜7のいずれかの方法。
【0333】
実施形態II−7b:神経毒性が急性症候群一過性神経毒性である、実施形態II−1〜7のいずれかの方法。
【0334】
実施形態II−7c:神経毒性が最初の治療の1時間〜7日後に生じる、実施形態II−1〜7のいずれかの方法。
【0335】
実施形態II−7d:被検者が少なくとも500mg/m
2の蓄積投与量で治療を完了した後に神経毒性が生じる、実施形態II−1〜7のいずれかの方法。
【0336】
実施形態II−8:神経毒性が背根神経節(DRG)への損傷である、実施形態II−1または3〜4のいずれかの方法。
【0337】
実施形態II−9:選択的OCT2阻害剤の投与量が上記必要としている被検者におけるプラチナ薬剤誘発性神経毒性を最小限にするのに有効である、実施形態II−1〜8のいずれかの方法。
【0338】
実施形態II−10:少なくとも100mg/m
2の蓄積投与量で治療された患者において、選択的OCT2阻害剤の投与量が、米国国立癌研究所−共通毒性規準(NCI−CTC)知覚性スケール、米国国立癌研究所−共通毒性規準(NCI−CTC)運動性スケール、総合神経障害スコア臨床版(TNSc)及び欧州癌研究治療機関CIPN限定自己報告アンケート調査(EORTC QOL−CIPN20)から選択される方法によって評価したグレード3以上のプラチナ薬剤誘発性神経毒性を予防するのに有効である、実施形態II−1〜8のいずれかの方法。
【0339】
実施形態II−11:少なくとも30mg/週/m
2のプラチナ薬剤投与量強度で治療された患者において、選択的OCT2阻害剤の投与量が、米国国立癌研究所−共通毒性規準(NCI−CTC)知覚性スケール、米国国立癌研究所−共通毒性規準(NCI−CTC)運動性スケール、総合神経障害スコア臨床版(TNSc)及び欧州癌研究治療機関CIPN限定自己報告アンケート調査(EORTC QOL−CIPN20)から選択される方法によって評価したグレード3以上のプラチナ薬剤誘発性神経毒性を予防するのに有効である、実施形態II−1〜8のいずれかの方法。
【0340】
実施形態II−12:少なくとも80mg/m
2のプラチナ薬剤投与量で治療された患者において、選択的OCT2阻害剤の投与量が、米国国立癌研究所−共通毒性規準(NCI−CTC)知覚性スケール、米国国立癌研究所−共通毒性規準(NCI−CTC)運動性スケール、総合神経障害スコア臨床版(TNSc)及び欧州癌研究治療機関CIPN限定自己報告アンケート調査(EORTC QOL−CIPN20)から選択される方法によって評価したグレード3以上のプラチナ薬剤誘発性神経毒性を予防するのに有効である、実施形態II−1〜8のいずれかの方法。
【0341】
実施形態II−13:プラチナ薬剤の投与後に被検者におけるプラチナ薬剤誘発性神経毒性を評価することをさらに含む、実施形態II−1〜12のいずれかの方法。
【0342】
実施形態II−14:神経毒性が、米国国立癌研究所−共通毒性規準(NCI−CTC)知覚性スケール、米国国立癌研究所−共通毒性規準(NCI−CTC)運動性スケール、総合神経障害スコア臨床版(TNSc)及び欧州癌研究治療機関CIPN限定自己報告アンケート調査(EORTC QOL−CIPN20)から選択される方法によって評価される、実施形態II−13の方法。
【0343】
実施形態II−15:神経毒性が感覚神経活動電位、感覚神経伝導速度、冷痛閾値、温痛閾値、機械的疼痛閾値、冷知覚閾値、温知覚閾値、機械的触覚閾値、振動知覚閾値、電流知覚閾値、刺針感度、深部腱反射及び握力から選択される測定値によって評価される、実施形態II−13の方法。
【0344】
実施形態II−16:神経毒性が、橈骨、背側腓腹、腓腹及び尺骨神経の1つにおける感覚神経活動電位を測定することによって評価される、実施形態II−13の方法。
【0345】
実施形態II−17:プラチナ薬剤の投与前に被検者のベースラインを確立することをさらに含む、実施形態II−13〜16のいずれかの方法。
【0346】
実施形態II−18:プラチナ薬剤誘発性神経毒性が治療の中間点付近で評価される、実施形態II−13〜16のいずれかの方法。
【0347】
実施形態II−19:プラチナ薬剤誘発性神経毒性が200mg/m
2の蓄積投与量での治療後に評価される、実施形態II−13〜16のいずれかの方法。
【0348】
実施形態II−20:選択的OCT2阻害剤が、ブフロメジル、ブフロメジル塩、ドルテグラビル、及びドルテグラビル塩からなる群から選択される、実施形態II−1〜8のいずれかの方法。
【0349】
実施形態II−21:選択的OCT2阻害剤がブフロメジル、またはブフロメジル塩である、実施形態II−20の方法。
【0350】
実施形態II−22:被検者に投与されるブフロメジルまたはブフロメジル塩の投与量が、上記被検者の因子である、体重、体表面積、身長、年齢、性別、アルコール使用、タバコ使用、生活様式、腎機能、肝機能、遺伝子多型及び併用薬の少なくとも1つに基づいて調節される、実施形態II−21の方法。
【0351】
実施形態II−23:ブフロメジルまたはブフロメジル塩の投与量が、少なくとも0.43mg/l、0.86mg/l、1.29mg/l、1.72mg/lまたは2.15mg/lの、プラチナ投与期間中の血漿レベルをもたらす、実施形態II−21または22の方法。
【0352】
実施形態II−24:ブフロメジルまたはブフロメジル塩の投与量が少なくとも100mg、200mg、300mg、400mg、500mgまたは600mgである、実施形態II−21〜23のいずれかの方法。
【0353】
実施形態II−25:ブフロメジルまたはブフロメジル塩の投与量が少なくとも1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、8mg/kgまたは10mg/kgである、実施形態II−21〜24のいずれかの方法。
【0354】
実施形態II−26:選択的OCT2阻害剤がドルテグラビルまたはドルテグラビル塩である、実施形態II−20の方法。
【0355】
実施形態II−27:ドルテグラビルまたはドルテグラビル塩の投与量が、少なくとも1.4mg/l、2.8mg/l、4.2mg/l、5.6mg/lまたは7.0mg/lの、プラチナ投与期間中の血漿レベルをもたらす、実施形態II−26の方法。
【0356】
実施形態II−28:ドルテグラビルまたはドルテグラビル塩の投与量が少なくとも50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mgまたは400mgである、実施形態II−26または27の方法。
【0357】
実施形態II−29:ドルテグラビルまたはドルテグラビル塩の投与量が少なくとも1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kgまたは6mg/kgである、実施形態II−26〜28のいずれかの方法。
【0358】
実施形態II−30:選択的OCT2阻害剤がプラチナ薬剤の効力を減少させない、実施形態II−1〜29のいずれかの方法。
【0359】
実施形態II−31:最大許容血漿濃度(MTC)未満、かつ、ヒト血清または4%ウシ血清アルブミンを含有するアッセイバッファー中で評価した20μMのオキサリプラチンのOCT2媒介輸送についてのIC
50値の1倍、2倍、3倍、4倍を超えるプラチナ薬剤投与期間中の血漿濃度をもたらす投与量で、選択的OCT2阻害剤が投与される、実施形態II−1〜30のいずれかの方法。
【0360】
実施形態II−32:選択的OCT2阻害剤が、2μM以下の、ヒト血清または4%ウシ血清アルブミンを含有するアッセイ溶液中での20μMのオキサリプラチンのOCT2媒介輸送に対するIC
50を有する、実施形態II−1〜19、30または31のいずれかの方法。
【0361】
実施形態II−33:選択的OCT2阻害剤が、OCT1−、OCT−3、及びMATE−1によって媒介される、ヒト血清または4%ウシ血清アルブミンを含有するアッセイ溶液中での20μMのオキサリプラチン輸送に対する選択的OCT2阻害剤のIC
50よりも少なくとも15倍小さい、ヒト血清または4%ウシ血清アルブミンを含有するアッセイ溶液中での20μMのオキサリプラチンのOCT2媒介輸送に対するIC
50を有する、実施形態II−32の方法。
【0362】
実施形態II−34:必要としている被検者が、有機カチオントランスポーター1(OCT1)または有機カチオントランスポーター3(OCT3)のうち少なくとも一方を発現する癌を有する、実施形態II−1〜33のいずれかの方法。
【0363】
実施形態II−35:選択的OCT2阻害剤がブフロメジル、またはブフロメジル塩である、実施形態II−1〜25または30〜34のいずれかの方法。
【0364】
実施形態II−36:選択的OCT2阻害剤がドルテグラビル、またはドルテグラビル塩である、実施形態II−1〜20または26〜34のいずれかの方法。
【0365】
実施形態II−37:プラチナ薬剤及び選択的OCT2阻害剤が同時に投与される、実施形態II−1〜36のいずれかの方法。
【0366】
実施形態II−38:選択的OCT2阻害剤がプラチナ薬剤の前に投与される、実施形態II−1〜36のいずれかの方法。
【0367】
実施形態II−39:選択的OCT2阻害剤がプラチナ薬剤の後に投与される、実施形態II−1〜36のいずれかの方法。
【0368】
実施形態II−40:1回の治療期間の間に被検者に投与されるプラチナ薬剤の量が標準的な臨床診療の下で投与されるものよりも多い、実施形態II−1〜39のいずれかの方法。
【0369】
実施形態II−41:必要としている被検者に治療の全過程にわたって投与されるプラチナ薬剤の蓄積量が、標準的な臨床診療の下で投与されるものよりも多い、実施形態II−1〜40のいずれかの方法。
【0370】
実施形態II−42:標準的な臨床診療下よりも高い頻度でプラチナ薬剤が投与される、実施形態II−1〜41のいずれかの方法。
【0371】
実施形態II−43:神経毒性が末梢神経障害である、実施形態II−1または3〜42のいずれかの方法。
【0372】
実施形態II−44:末梢神経障害がグレード3またはグレード4末梢神経障害である、実施形態II−43の方法。
【0373】
実施形態II−45:必要としている被検者がヒトまたは非ヒト動物である、実施形態II−1〜44のいずれかの方法。
【0374】
実施形態II−46:選択的OCT2阻害剤が、経腸、静脈内、筋肉内、腹腔内、経口、または腸管外投与される、実施形態II−1〜45のいずれかの方法。
【0375】
実施形態II−47:選択的OCT2阻害剤が2つ以上の投与経路を介して投与される、実施形態II−1〜46のいずれかの方法。
【0376】
実施形態II−48:プラチナ薬剤及び選択的OCT2阻害剤が同じ投与経路を介して投与される、実施形態II−1〜46のいずれかの方法。
【0377】
実施形態II−49:選択的OCT2阻害剤が静脈内点滴によって投与される、実施形態II−1〜45のいずれかの方法。
【0378】
実施形態II−50:選択的OCT2阻害剤が静脈内注入及び静脈内点滴によって投与される、実施形態II−1〜45のいずれかの方法。
【0379】
実施形態II−51:静脈内点滴が少なくとも1時間にわたる、実施形態II−49または50の方法。
【0380】
実施形態II−52:静脈内点滴の速度が一定である、実施形態II−49または50の方法。
【0381】
実施形態II−53:静脈内点滴の速度が一定でない、実施形態II−49または50の方法。
【0382】
実施形態II−54:癌がOCT1を発現する、実施形態II−1〜53のいずれかの方法。
【0383】
実施形態II−55:癌がOCT3を発現する、実施形態II−1〜54のいずれかの方法。
【0384】
実施形態II−56:癌がOCT1及びOCT3を発現する、実施形態II−1〜55のいずれかの方法。
【0385】
実施形態II−57:癌が、膵腺癌、膨大部及び膨大部周囲癌、肛門腺癌、虫垂癌、肝細胞癌、結腸癌または直腸癌、上皮性卵巣癌、ファロピウス管癌、原発性腹膜癌、食道または食道胃接合部癌、胃癌、小腸癌、精巣癌、胆管癌、膵腺癌、原発不明癌、慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫、AIDS関連B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、胃MALTリンパ腫、非胃MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、菌状息肉症/セザリー症候群、脾辺縁帯リンパ腫、末梢T細胞リンパ腫、原発性皮膚B細胞リンパ腫、原発性皮膚未分化大細胞リンパ腫(ALCL)、肺癌、肝癌、頭頸部癌、前立腺癌、平滑筋癌ならびに胆嚢癌からなる群から選択される、実施形態II−1〜56のいずれか1つの方法。
【0386】
実施形態II−58:癌が卵巣癌である、実施形態II−57の方法。
【0387】
実施形態II−59:癌が頭頸部癌である、実施形態II−57の方法。
【0388】
実施形態II−60:癌が前立腺癌である、実施形態II−57の方法。
【0389】
実施形態II−61:癌がリンパ腫である、実施形態II−57の方法。
【0390】
実施形態II−62:癌が平滑筋癌である、実施形態II−57の方法。
【0391】
実施形態II−63:癌が結腸癌または直腸癌である、実施形態II−57の方法。
【0392】
実施形態II−64:癌が肝癌である、実施形態II−57の方法。
【0393】
実施形態II−65:癌が肺癌である、実施形態II−57の方法。
【0394】
実施形態II−66:プラチナ薬剤に加えて、治療有効量の1つ以上の追加の癌化学療法剤を必要としている被検者に投与することをさらに含む、実施形態II−1〜65のいずれかの方法。
【0395】
実施形態II−67:1つ以上の追加の化学療法剤が5−フルオロウラシル、ベバシズマブ、カペセタビン(capecetabine)、ゲムシタビン、イリノテカン、及びロイコボリンからなる群から選択される、実施形態II−66の方法。
【0396】
実施形態II−68:オキサリプラチンであるプラチナ薬剤、
ブフロメジル、ブフロメジル塩、ドルテグラビル、及びドルテグラビル塩からなる群から選択される選択的OCT2阻害剤、ならびに
医薬品として許容可能な担体
を含む、静脈内投与のために製剤化された医薬組成物。
【0397】
実施形態II−69:選択的OCT2阻害剤がブフロメジル、またはブフロメジル塩である、実施形態II−68の医薬組成物。
【0398】
実施形態II−70:OCT2阻害剤がドルテグラビル、またはドルテグラビル塩である、実施形態II−68の医薬組成物。
【0399】
実施形態II−71:プラチナ薬剤の量が、プラチナ薬剤を含む標準的な医薬組成物中に存在するものよりも多い、実施形態II−68〜70のいずれかの医薬組成物。
【0400】
実施形態II−72:プラチナ薬剤に加えて、治療有効量の1つ以上の追加の癌化学療法剤をさらに含む、実施形態II−68〜71のいずれかの医薬組成物。
【0401】
実施形態II−73:1つ以上の追加の化学療法剤が5−フルオロウラシル、ベバシズマブ、カペセタビン(capecetabine)、ゲムシタビン、イリノテカン、及びロイコボリンからなる群から選択される、実施形態II−72の医薬組成物。
【0402】
実施形態II−74:治療有効量のオキサリプラチンであるプラチナ薬剤;選択的OCT2阻害剤及び使用のための指示書を含むキット。
【0403】
実施形態II−75:必要としている被検者に対する選択的OCT2阻害剤の望ましい投与量を決定するための指示書をさらに含む、実施形態II−74のキット。
【0404】
実施形態II−76:投与量が、体重、体表面積、身長、年齢、性別、アルコール使用、タバコ使用、生活様式、腎機能、肝機能、遺伝子多型及び併用薬から選択される上記被検者の少なくとも1つの因子に基づいて決定される、実施形態II−75のキット。
【0405】
実施形態II−77:投与量が、上記被検者におけるOCT2阻害剤の血漿レベルを監視することによって決定される、実施形態II−75のキット。
【0406】
実施形態II−78:選択的OCT2阻害剤がブフロメジルまたはブフロメジル塩である、実施形態II−74〜77のいずれか1つのキット。
【0407】
実施形態II−79:ブフロメジルまたはブフロメジル塩が300mg、450mg、600mg、800mgまたは1000mgよりも多い量で存在する、実施形態II−78のキット。
【0408】
実施形態II−80:選択的OCT2阻害剤がドルテグラビルまたはドルテグラビル塩である、実施形態II−74〜77のいずれかのキット。
【0409】
実施形態II−81:ドルテグラビルまたはドルテグラビル塩が50mg、75mg、100mg、150mg、200mgまたは300mgよりも多い量で存在する、実施形態II−80のキット。
【0410】
実施形態II−82:キットがプラチナ薬剤誘発性神経毒性を減少させる用途のために意図されていることが指示書に明記されている、実施形態II−74〜81のいずれかのキット。
【0411】
実施形態II−83:キットが癌を治療する用途のために意図されていることが指示書に明記されている、実施形態II−74〜80のキット。
【0412】
実施形態II−84:プラチナ薬剤に加えて、治療有効量の1つ以上の追加の癌化学療法剤をさらに含む、実施形態II−74〜83のいずれかのキット。
【0413】
実施形態II−85:1つ以上の追加の化学療法剤が5−フルオロウラシル、ベバシズマブ、カペセタビン(capecetabine)、ゲムシタビン、イリノテカン、及びロイコボリンからなる群から選択される、実施形態II−84のキット。
【0414】
シスプラチン及び毒性の例示的実施形態
実施形態III−1:一実施形態において、本開示は、
シスプラチンであるプラチナ薬剤を必要としている被検者に投与すること;及び
有効投与量の選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤を必要としている被検者に投与すること
を含み、
毒性が腎毒性、耳毒性または末梢神経障害であり、
必要としている被検者が癌を有する、必要としている被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性の減少方法を提供する。
【0415】
実施形態III−2:一実施形態において、本開示は、
治療有効量のシスプラチンであるプラチナ薬剤を必要としている被検者に投与すること;及び
有効投与量の選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤を必要としている被検者に投与すること
を含む、必要としている被検者における癌の治療方法を提供する。
【0416】
実施形態III−3:一実施形態において、本開示は、
治療有効量のシスプラチンであるプラチナ薬剤を必要としている被検者に投与すること;及び
上記必要としている被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性を減少させるのに有効な投与量で、選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤を必要としている被検者に投与し、それによって、上記被検者が少なくとも100mg/m
2の蓄積投与量で治療を完了すること
を含む、必要としている被検者における癌の治療に対する患者コンプライアンスの増加方法を提供する。
【0417】
実施形態III−4:投与されるプラチナ薬剤の治療有効量が被検者においてプラチナ薬剤誘発性神経毒性を引き起こすと知られている、実施形態III−2または3の方法。
【0418】
実施形態III−5:神経毒性が末梢神経毒性である、実施形態III−4の方法。
【0419】
実施形態III−6:神経毒性が感覚ニューロンへの損傷である、実施形態III−4の方法。
【0420】
実施形態III−7:神経毒性が運動ニューロンへの損傷である、実施形態III−4の方法。
【0421】
実施形態III−7a:神経毒性が慢性神経毒性である、実施形態III−1〜7のいずれかの方法。
【0422】
実施形態III−7b:神経毒性が急性症候群一過性神経毒性である、実施形態III−1〜7のいずれかの方法。
【0423】
実施形態III−7c:神経毒性が最初の治療の1時間〜7日後に生じる、実施形態III−1〜7のいずれかの方法。
【0424】
実施形態III−7d:被検者が少なくとも500mg/m
2の蓄積投与量で治療を完了した後に神経毒性が生じる、実施形態III−1〜7のいずれかの方法。
【0425】
実施形態III−8:神経毒性が背根神経節(DRG)への損傷である、実施形態III−4の方法。
【0426】
実施形態III−9:選択的OCT2阻害剤の投与量が上記必要としている被検者におけるプラチナ薬剤誘発性神経毒性を最小限にするのに有効である、実施形態III−1〜8のいずれかの方法。
【0427】
実施形態III−10:少なくとも100mg/m
2の蓄積投与量で治療された患者において、選択的OCT2阻害剤の投与量が、米国国立癌研究所−共通毒性規準(NCI−CTC)知覚性スケール、米国国立癌研究所−共通毒性規準(NCI−CTC)運動性スケール、総合神経障害スコア臨床版(TNSc)及び欧州癌研究治療機関CIPN限定自己報告アンケート調査(EORTC QOL−CIPN20)から選択される方法によって評価したグレード3以上のプラチナ薬剤誘発性神経毒性を予防するのに有効である、実施形態III−1〜8のいずれかの方法。
【0428】
実施形態III−11:少なくとも30mg/週/m
2のプラチナ薬剤投与量強度で治療された患者において、選択的OCT2阻害剤の投与量が、米国国立癌研究所−共通毒性規準(NCI−CTC)知覚性スケール、米国国立癌研究所−共通毒性規準(NCI−CTC)運動性スケール、総合神経障害スコア臨床版(TNSc)及び欧州癌研究治療機関CIPN限定自己報告アンケート調査(EORTC QOL−CIPN20)から選択される方法によって評価したグレード3以上のプラチナ薬剤誘発性神経毒性を予防するのに有効である、実施形態III−1〜8のいずれかの方法。
【0429】
実施形態III−12:少なくとも80mg/m
2のプラチナ薬剤投与量で治療された患者において、選択的OCT2阻害剤の投与量が、米国国立癌研究所−共通毒性規準(NCI−CTC)知覚性スケール、米国国立癌研究所−共通毒性規準(NCI−CTC)運動性スケール、総合神経障害スコア臨床版(TNSc)及び欧州癌研究治療機関CIPN限定自己報告アンケート調査(EORTC QOL−CIPN20)から選択される方法によって評価したグレード3以上のプラチナ薬剤誘発性神経毒性を予防するのに有効である、実施形態III−1〜8のいずれかの方法。
【0430】
実施形態III−13:プラチナ薬剤の投与後に被検者におけるプラチナ薬剤誘発性神経毒性を評価することをさらに含む、実施形態III−1〜12のいずれかの方法。
【0431】
実施形態III−14:神経毒性が、米国国立癌研究所−共通毒性規準(NCI−CTC)知覚性スケール、米国国立癌研究所−共通毒性規準(NCI−CTC)運動性スケール、総合神経障害スコア臨床版(TNSc)及び欧州癌研究治療機関CIPN限定自己報告アンケート調査(EORTC QOL−CIPN20)から選択される方法によって評価される、実施形態III−13の方法。
【0432】
実施形態III−15:神経毒性が感覚神経活動電位、感覚神経伝導速度、冷痛閾値、温痛閾値、機械的疼痛閾値、冷知覚閾値、温知覚閾値、機械的触覚閾値、振動知覚閾値、電流知覚閾値、刺針感度、深部腱反射及び握力から選択される測定値によって評価される、実施形態III−13の方法。
【0433】
実施形態III−16:神経毒性が、橈骨、背側腓腹、腓腹及び尺骨神経の1つにおける感覚神経活動電位を測定することによって評価される、実施形態III−13の方法。
【0434】
実施形態III−17:プラチナ薬剤の投与前に被検者のベースラインを確立することをさらに含む、実施形態III−13〜16のいずれかの方法。
【0435】
実施形態III−18:プラチナ薬剤誘発性神経毒性が治療の中間点付近で評価される、実施形態III−13〜16のいずれかの方法。
【0436】
実施形態III−19:プラチナ薬剤誘発性神経毒性が200mg/m
2の蓄積投与量での治療後に評価される、実施形態III−13〜16のいずれかの方法。
【0437】
実施形態III−20:毒性が腎毒性である、実施形態III−1の方法。
【0438】
実施形態III−21:選択的OCT2阻害剤が、ブフロメジル、ブフロメジル塩、ドルテグラビル、及びドルテグラビル塩からなる群から選択される、実施形態III−1〜8のいずれかの方法。
【0439】
実施形態III−22:選択的OCT2阻害剤がブフロメジル、またはブフロメジル塩である、実施形態III−21の方法。
【0440】
実施形態III−23:被検者に投与されるブフロメジルまたはブフロメジル塩の投与量が、上記被検者の因子である、体重、体表面積、身長、年齢、性別、アルコール使用、タバコ使用、生活様式、腎機能、肝機能、遺伝子多型及び併用薬の少なくとも1つに基づいて調節される、実施形態III−22の方法。
【0441】
実施形態III−24:ブフロメジルまたはブフロメジル塩の投与量が、少なくとも0.43mg/l、0.86mg/l、1.29mg/l、1.72mg/lまたは2.15mg/lのプラチナ投与期間中の血漿レベルをもたらす、実施形態III−22または23の方法。
【0442】
実施形態III−25:ブフロメジルまたはブフロメジル塩の投与量が少なくとも100mg、200mg、300mg、400mg、500mgまたは600mgである、実施形態III−22〜24のいずれかの方法。
【0443】
実施形態III−26:ブフロメジルまたはブフロメジル塩の投与量が少なくとも1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、8mg/kgまたは10mg/kgである、実施形態III−22〜25のいずれかの方法。
【0444】
実施形態III−27:選択的OCT2阻害剤がドルテグラビルまたはドルテグラビル塩である、実施形態III−21の方法。
【0445】
実施形態III−28:ドルテグラビルまたはドルテグラビル塩の投与量が、少なくとも1.4mg/l、2.8mg/l、4.2mg/l、5.6mg/lまたは7.0mg/lのプラチナ投与期間中の血漿レベルをもたらす、実施形態III−27の方法。
【0446】
実施形態III−29:ドルテグラビルまたはドルテグラビル塩の投与量が少なくとも50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mgまたは400mgである、実施形態III−27または28の方法。
【0447】
実施形態III−30:ドルテグラビルまたはドルテグラビル塩の投与量が少なくとも1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kgまたは6mg/kgである、実施形態III−27〜29のいずれかの方法。
【0448】
実施形態III−31:選択的OCT2阻害剤がプラチナ薬剤の効力を減少させない、実施形態III−1〜30のいずれかの方法。
【0449】
実施形態III−32:最大許容血漿濃度(MTC)未満、かつ、ヒト血清または4%ウシ血清アルブミンを含有するアッセイバッファー中で評価した20μMのオキサリプラチンのOCT2媒介輸送についてのIC
50値の1倍、2倍、3倍、4倍を超えるプラチナ薬剤投与期間中の血漿濃度をもたらす投与量で、選択的OCT2阻害剤が投与される、実施形態III−1〜31のいずれかの方法。
【0450】
実施形態III−33:選択的OCT2阻害剤が、5μM以下の、ヒト血清または4%ウシ血清アルブミンを含有するアッセイ溶液中での20μMのオキサリプラチンのOCT2媒介輸送に対するIC
50を有する、実施形態III−1〜19、31または32のいずれかの方法。
【0451】
実施形態III−34:選択的OCT2阻害剤が、OCT1−、OCT−3、またはMATE−1の1つ以上によって媒介される、ヒト血清または4%ウシ血清アルブミンを含有するアッセイ溶液中での20μMのオキサリプラチン輸送に対する選択的OCT2阻害剤のIC
50よりも少なくとも10倍小さい、ヒト血清または4%ウシ血清アルブミンを含有するアッセイ溶液中での20μMのオキサリプラチンのOCT2媒介輸送に対するIC
50を有する、実施形態III−33の方法。
【0452】
実施形態III−35:必要としている被検者が、有機カチオントランスポーター1(OCT1)または有機カチオントランスポーター3(OCT3)のうち少なくとも一方を発現する癌を有する、実施形態III−1〜34のいずれかの方法。
【0453】
実施形態III−36:選択的OCT2阻害剤がブフロメジル、またはブフロメジル塩である、実施形態III−1〜26または31〜35のいずれかの方法。
【0454】
実施形態III−37:選択的OCT2阻害剤がドルテグラビル、またはドルテグラビル塩である、実施形態III−1〜20または27〜35のいずれかの方法。
【0455】
実施形態III−38:プラチナ薬剤及び選択的OCT2阻害剤が同時に投与される、実施形態III−1〜37のいずれかの方法。
【0456】
実施形態III−39:選択的OCT2阻害剤がプラチナ薬剤の前に投与される、実施形態III−1〜37のいずれかの方法。
【0457】
実施形態III−40:選択的OCT2阻害剤がプラチナ薬剤の後に投与される、実施形態III−1〜37のいずれかの方法。
【0458】
実施形態III−41:1回の治療期間の間に被検者に投与されるプラチナ薬剤の量が標準的な臨床診療の下で投与されるものよりも多い、実施形態III−1〜40のいずれかの方法。
【0459】
実施形態III−42:必要としている被検者に治療の全過程にわたって投与されるプラチナ薬剤の蓄積量が、標準的な臨床診療の下で投与されるものよりも多い、実施形態III−1〜41のいずれかの方法。
【0460】
実施形態III−43:標準的な臨床診療下よりも高い頻度でプラチナ薬剤が投与される、実施形態III−1〜42のいずれかの方法。
【0461】
実施形態III−44:神経毒性が末梢神経障害である、実施形態III−1または3〜43のいずれかの方法。
【0462】
実施形態III−45:末梢神経障害がグレード3またはグレード4末梢神経障害である、実施形態III−44の方法。
【0463】
実施形態III−46:必要としている被検者がヒトまたは非ヒト動物である、実施形態III−1〜45のいずれかの方法。
【0464】
実施形態III−47:選択的OCT2阻害剤が、経腸、静脈内、筋肉内、腹腔内、経口、または腸管外投与される、実施形態III−1〜46のいずれかの方法。
【0465】
実施形態III−48:選択的OCT2阻害剤が2つ以上の投与経路を介して投与される、実施形態III−1〜47のいずれかの方法。
【0466】
実施形態III−49:プラチナ薬剤及び選択的OCT2阻害剤が同じ投与経路を介して投与される、実施形態III−1〜47のいずれかの方法。
【0467】
実施形態III−50:選択的OCT2阻害剤が静脈内点滴によって投与される、実施形態III−1〜47のいずれかの方法。
【0468】
実施形態III−51:選択的OCT2阻害剤が静脈内注入及び静脈内点滴によって投与される、実施形態III−1〜47のいずれかの方法。
【0469】
実施形態III−52:静脈内点滴が少なくとも1時間にわたる、実施形態III−50または51の方法。
【0470】
実施形態III−53:静脈内点滴の速度が一定である、実施形態III−50または51の方法。
【0471】
実施形態III−54:静脈内点滴の速度が一定でない、実施形態III−50または51の方法。
【0472】
実施形態III−55:癌がOCT1を発現する、実施形態III−1〜54のいずれかの方法。
【0473】
実施形態III−56:癌がOCT3を発現する、実施形態III−1〜55のいずれかの方法。
【0474】
実施形態III−57:癌がOCT1及びOCT3を発現する、実施形態III−1〜56のいずれかの方法。
【0475】
実施形態III−58:癌が、膵腺癌、膨大部及び膨大部周囲癌、肛門腺癌、虫垂癌、肝細胞癌、結腸癌または直腸癌、上皮性卵巣癌、ファロピウス管癌、原発性腹膜癌、食道または食道胃接合部癌、胃癌、小腸癌、精巣癌、胆管癌、膵腺癌、原発不明癌、慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫、AIDS関連B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、胃MALTリンパ腫、非胃MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、菌状息肉症/セザリー症候群、脾辺縁帯リンパ腫、末梢T細胞リンパ腫、原発性皮膚B細胞リンパ腫、原発性皮膚未分化大細胞リンパ腫(ALCL)、肺癌、肝癌、頭頸部癌、前立腺癌、平滑筋癌ならびに胆嚢癌からなる群から選択される、実施形態III−1〜57のいずれか1つの方法。
【0476】
実施形態III−59:癌が卵巣癌である、実施形態III−58の方法。
【0477】
実施形態III−60:癌が頭頸部癌である、実施形態III−58の方法。
【0478】
実施形態III−61:癌が前立腺癌である、実施形態III−58の方法。
【0479】
実施形態III−62:癌がリンパ腫である、実施形態III−58の方法。
【0480】
実施形態III−63:癌が平滑筋癌である、実施形態III−58の方法。
【0481】
実施形態III−64:癌が結腸癌または直腸癌である、実施形態III−58の方法。
【0482】
実施形態III−65:癌が肝癌である、実施形態III−58の方法。
【0483】
実施形態III−66:癌が肺癌である、実施形態III−58の方法。
【0484】
実施形態III−67:プラチナ薬剤に加えて、治療有効量の1つ以上の追加の癌化学療法剤を必要としている被検者に投与することをさらに含む、実施形態III−1〜66のいずれかの方法。
【0485】
実施形態III−68:1つ以上の追加の化学療法剤が5−フルオロウラシル、ベバシズマブ、カペセタビン(capecetabine)、ゲムシタビン、イリノテカン、及びロイコボリンからなる群から選択される、実施形態III−67の方法。
【0486】
実施形態III−69:シスプラチンであるプラチナ薬剤、
ブフロメジル、ブフロメジル塩、ドルテグラビル、及びドルテグラビル塩からなる群から選択される選択的OCT2阻害剤、ならびに
医薬品として許容可能な担体
を含む、静脈内投与のために製剤化された医薬組成物。
【0487】
実施形態III−70:選択的OCT2阻害剤がブフロメジル、またはブフロメジル塩である、実施形態III−69の医薬組成物。
【0488】
実施形態III−71:OCT2阻害剤がドルテグラビル、またはドルテグラビル塩である、実施形態III−69の医薬組成物。
【0489】
実施形態III−72:プラチナ薬剤の量が、プラチナ薬剤を含む標準的な医薬組成物中に存在するものよりも多い、実施形態III−69〜71のいずれかの医薬組成物。
【0490】
実施形態III−73:プラチナ薬剤に加えて、治療有効量の1つ以上の追加の癌化学療法剤をさらに含む、実施形態III−69〜72のいずれかの医薬組成物。
【0491】
実施形態III−74:1つ以上の追加の化学療法剤が5−フルオロウラシル、ベバシズマブ、カペセタビン(capecetabine)、ゲムシタビン、イリノテカン、及びロイコボリンからなる群から選択される、実施形態III−73の医薬組成物。
【0492】
実施形態III−75:治療有効量のシスプラチンであるプラチナ薬剤;選択的OCT2阻害剤及び使用のための指示書を含むキット。
【0493】
実施形態III−76:必要としている被検者に対する選択的OCT2阻害剤の望ましい投与量を決定するための指示書をさらに含む、実施形態III−75のキット。
【0494】
実施形態III−77:投与量が、体重、体表面積、身長、年齢、性別、アルコール使用、タバコ使用、生活様式、腎機能、肝機能、遺伝子多型及び併用薬から選択される上記被検者の少なくとも1つの因子に基づいて決定される、実施形態III−76のキット。
【0495】
実施形態III−78:投与量が、上記被検者におけるOCT2阻害剤の血漿レベルを監視することによって決定される、実施形態III−76のキット。
【0496】
実施形態III−79:選択的OCT2阻害剤がブフロメジルまたはブフロメジル塩である、実施形態III−75〜78のいずれか1つのキット。
【0497】
実施形態III−80:ブフロメジルまたはブフロメジル塩が300mg、450mg、600mg、800mgまたは1000mgよりも多い量で存在する、実施形態III−79のキット。
【0498】
実施形態III−81:選択的OCT2阻害剤がドルテグラビルまたはドルテグラビル塩である、実施形態III−75〜78のいずれかのキット。
【0499】
実施形態III−82:ドルテグラビルまたはドルテグラビル塩が50mg、75mg、100mg、150mg、200mgまたは300mgよりも多い量で存在する、実施形態III−81のキット。
【0500】
実施形態III−83:キットがプラチナ薬剤誘発性神経毒性を減少させる用途のために意図されていることが指示書に明記されている、実施形態III−75〜82のいずれかのキット。
【0501】
実施形態III−84:キットが癌を治療する用途のために意図されていることが指示書に明記されている、実施形態75〜83のいずれかのキット。
【0502】
実施形態III−85:プラチナ薬剤に加えて、治療有効量の1つ以上の追加の癌化学療法剤をさらに含む、実施形態III−75〜84のいずれかのキット。
【0503】
実施形態III−86:1つ以上の追加の化学療法剤が5−フルオロウラシル、ベバシズマブ、カペセタビン(capecetabine)、ゲムシタビン、イリノテカン、及びロイコボリンからなる群から選択される、実施形態III−85のキット。
【0504】
決定ステップを含む方法の例示的実施形態
実施形態IV−1:一実施形態において、本開示は、
必要としている被検者において、ブフロメジルまたはブフロメジル塩である選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤のIC
50の2〜5倍である、ブフロメジルまたはブフロメジル塩である選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤の血漿レベルを達成するための有効投与量を決定すること;
オキサリプラチン及びシスプラチンからなる群から選択されるプラチナ薬剤を必要としている被検者に投与すること;ならびに
有効投与量のブフロメジルまたはブフロメジル塩である選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤を必要としている被検者に投与すること
を含み、
毒性が腎毒性、耳毒性または末梢神経障害であり、
必要としている被検者が癌を有する、必要としている被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性の減少方法を提供する。
【0505】
実施形態IV−2:一実施形態において、本開示は、
必要としている被検者において、ブフロメジルまたはブフロメジル塩である選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤のIC
50の2〜5倍である、ブフロメジルまたはブフロメジル塩である選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤の血漿レベルを達成するための有効投与量を決定すること;
オキサリプラチン及びシスプラチンからなる群から選択される治療有効量のプラチナ薬剤を必要としている被検者に投与すること;ならびに
有効投与量のブフロメジルまたはブフロメジル塩である選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤を必要としている被検者に投与すること
を含む、必要としている被検者における癌の治療方法を提供する。
【0506】
実施形態IV−3:一実施形態において、本開示は、
必要としている被検者において、ブフロメジルまたはブフロメジル塩である選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤のIC
50の2〜5倍である、ブフロメジルまたはブフロメジル塩である選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤の血漿レベルを達成するための有効投与量を決定すること;
オキサリプラチン及びシスプラチンからなる群から選択される治療有効量のプラチナ薬剤を必要としている被検者に投与すること;ならびに
必要としている被検者におけるプラチナ薬剤誘発性毒性を減少させるのに有効な投与量で、ブフロメジルまたはブフロメジル塩である選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤を必要としている被検者に投与し、それによって、上記被検者が少なくとも100mg/m
2の蓄積投与量で治療を完了すること
を含む、必要としている被検者における癌の治療に対する患者コンプライアンスの増加方法を提供する。
【0507】
実施形態IV−4:選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤の血漿レベルを達成するための有効投与量を決定するステップが、予備投与量の選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤を投与することによって行われる、実施形態IV−1〜3のいずれか1つの方法。
【0508】
実施形態IV−5:選択的有機カチオントランスポーター2(OCT2)阻害剤の血漿レベルを達成するための有効投与量を決定するステップが、被検者特性に基づく参照データチャートによって決定される、実施形態IV−1〜3のいずれか1つの方法。
【0509】
実施形態IV−6:投与されるプラチナ薬剤の治療有効量が被検者においてプラチナ薬剤誘発性神経毒性を引き起こすと知られている、実施形態IV−2または3〜5のいずれか1つの方法。
【0510】
実施形態IV−7:神経毒性が末梢神経毒性である、実施形態IV−6の方法。
【0511】
実施形態IV−8:神経毒性が感覚ニューロンへの損傷である、実施形態IV−6の方法。
【0512】
実施形態IV−9:神経毒性が運動ニューロンへの損傷である、実施形態IV−6の方法。
【0513】
実施形態IV−9a:神経毒性が慢性神経毒性である、実施形態IV−1〜9のいずれかの方法。
【0514】
実施形態IV−9b:神経毒性が急性症候群一過性神経毒性である、実施形態IV−1〜9のいずれかの方法。
【0515】
実施形態IV−9c:神経毒性が最初の治療の1時間〜7日後に生じる、実施形態IV−1〜9のいずれかの方法。
【0516】
実施形態IV−9d:被検者が少なくとも500mg/m
2の蓄積投与量で治療を完了した後に神経毒性が生じる、実施形態II−1〜9のいずれかの方法。
【0517】
実施形態IV−10:神経毒性が背根神経節(DRG)への損傷である、実施形態IV−6の方法。
【0518】
実施形態IV−11:選択的OCT2阻害剤の投与量が必要としている被検者におけるプラチナ薬剤誘発性神経毒性を最小限にするのに有効である、実施形態IV−1〜10のいずれかの方法。
【0519】
実施形態IV−12:少なくとも100mg/m
2の蓄積投与量で治療された患者において、選択的OCT2阻害剤の投与量が、米国国立癌研究所−共通毒性規準(NCI−CTC)知覚性スケール、米国国立癌研究所−共通毒性規準(NCI−CTC)運動性スケール、総合神経障害スコア臨床版(TNSc)及び欧州癌研究治療機関CIPN限定自己報告アンケート調査(EORTC QOL−CIPN20)から選択される方法によって評価したグレード3以上のプラチナ薬剤誘発性神経毒性を予防するのに有効である、実施形態IV−1〜10のいずれかの方法。
【0520】
実施形態IV−13:少なくとも30mg/週/m
2のプラチナ薬剤投与量強度で治療された患者において、選択的OCT2阻害剤の投与量が、米国国立癌研究所−共通毒性規準(NCI−CTC)知覚性スケール、米国国立癌研究所−共通毒性規準(NCI−CTC)運動性スケール、総合神経障害スコア臨床版(TNSc)及び欧州癌研究治療機関CIPN限定自己報告アンケート調査(EORTC QOL−CIPN20)から選択される方法によって評価したグレード3以上のプラチナ薬剤誘発性神経毒性を予防するのに有効である、実施形態IV−1〜10のいずれかの方法。
【0521】
実施形態IV−14:少なくとも80mg/m
2のプラチナ薬剤投与量で治療された患者において、選択的OCT2阻害剤の投与量が、米国国立癌研究所−共通毒性規準(NCI−CTC)知覚性スケール、米国国立癌研究所−共通毒性規準(NCI−CTC)運動性スケール、総合神経障害スコア臨床版(TNSc)及び欧州癌研究治療機関CIPN限定自己報告アンケート調査(EORTC QOL−CIPN20)から選択される方法によって評価したグレード3以上のプラチナ薬剤誘発性神経毒性を予防するのに有効である、実施形態IV−1〜10のいずれかの方法。
【0522】
実施形態IV−15:プラチナ薬剤の投与後に被検者におけるプラチナ薬剤誘発性神経毒性を評価することをさらに含む、実施形態IV−1〜14のいずれかの方法。
【0523】
実施形態IV−16:神経毒性が、米国国立癌研究所−共通毒性規準(NCI−CTC)知覚性スケール、米国国立癌研究所−共通毒性規準(NCI−CTC)運動性スケール、総合神経障害スコア臨床版(TNSc)及び欧州癌研究治療機関CIPN限定自己報告アンケート調査(EORTC QOL−CIPN20)から選択される方法によって評価される、実施形態IV−15の方法。
【0524】
実施形態IV−17:神経毒性が感覚神経活動電位、感覚神経伝導速度、冷痛閾値、温痛閾値、機械的疼痛閾値、冷知覚閾値、温知覚閾値、機械的触覚閾値、振動知覚閾値、電流知覚閾値、刺針感度、深部腱反射及び握力から選択される測定値によって評価される、実施形態IV−15の方法。
【0525】
実施形態IV−18:神経毒性が、橈骨、背側腓腹、腓腹及び尺骨神経の1つにおける感覚神経活動電位を測定することによって評価される、実施形態IV−15の方法。
【0526】
実施形態IV−19:プラチナ薬剤の投与前に被検者のベースラインを確立することをさらに含む、実施形態IV−15〜18のいずれかの方法。
【0527】
実施形態IV−20:プラチナ薬剤誘発性神経毒性が治療の中間点付近で評価される、実施形態IV−15〜18のいずれかの方法。
【0528】
実施形態IV−21:プラチナ薬剤誘発性神経毒性が200mg/m
2の蓄積投与量での治療後に評価される、実施形態IV−15〜18のいずれかの方法。
【0529】
実施形態IV−22:毒性が腎毒性である、実施形態IV−1の方法。
【0530】
実施形態IV−23:被検者に投与されるブフロメジルまたはブフロメジル塩の投与量が、上記被検者の因子である、体重、体表面積、身長、年齢、性別、アルコール使用、タバコ使用、生活様式、腎機能、肝機能、遺伝子多型及び併用薬の少なくとも1つに基づいて調節される、実施形態IV−1〜22のいずれかの方法。
【0531】
実施形態IV−24:ブフロメジルまたはブフロメジル塩の投与量が、少なくとも0.43mg/l、0.86mg/l、1.29mg/l、1.72mg/lまたは2.15mg/lのプラチナ投与期間中の血漿レベルをもたらす、実施形態IV−1〜23のいずれかの方法。
【0532】
実施形態IV−25:ブフロメジルまたはブフロメジル塩の投与量が少なくとも100mg、200mg、300mg、400mg、500mgまたは600mgである、実施形態IV−1〜24のいずれかの方法。
【0533】
実施形態IV−26:ブフロメジルまたはブフロメジル塩の投与量が少なくとも1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、8mg/kgまたは10mg/kgである、実施形態IV−1〜25のいずれかの方法。
【0534】
実施形態IV−27:選択的OCT2阻害剤がプラチナ薬剤の効力を減少させない、実施形態IV−1〜26のいずれかの方法。
【0535】
実施形態IV−28:最大許容血漿濃度(MTC)未満、かつ、ヒト血清または4%ウシ血清アルブミンを含有するアッセイバッファー中で評価した20μMのオキサリプラチンのOCT2媒介輸送についてのIC
50値の1倍、2倍、3倍、4倍を超えるプラチナ薬剤投与期間中の血漿濃度をもたらす投与量で、選択的OCT2阻害剤が投与される、実施形態IV−1〜27のいずれかの方法。
【0536】
実施形態IV−29:選択的OCT2阻害剤が、5μM以下の、ヒト血清または4%ウシ血清アルブミンを含有するアッセイ溶液中での20μMのオキサリプラチンのOCT2媒介輸送に対するIC
50を有する、実施形態IV−1〜28のいずれかの方法。
【0537】
実施形態IV−30:選択的OCT2阻害剤が、OCT1−、OCT−3、またはMATE−1の1つ以上によって媒介される、ヒト血清または4%ウシ血清アルブミンを含有するアッセイ溶液中での20μMのオキサリプラチン輸送に対する選択的OCT2阻害剤のIC
50よりも少なくとも10倍小さい、ヒト血清または4%ウシ血清アルブミンを含有するアッセイ溶液中での20μMのオキサリプラチンのOCT2媒介輸送に対するIC
50を有する、実施形態IV−29の方法。
【0538】
実施形態IV−31:必要としている被検者が、有機カチオントランスポーター1(OCT1)または有機カチオントランスポーター3(OCT3)のうち少なくとも一方を発現する癌を有する、実施形態IV−1〜30のいずれかの方法。
【0539】
実施形態IV−32:プラチナ薬剤及び選択的OCT2阻害剤が同時に投与される、実施形態IV−1〜31のいずれかの方法。
【0540】
実施形態IV−33:選択的OCT2阻害剤がプラチナ薬剤の前に投与される、実施形態IV−1〜31のいずれかの方法。
【0541】
実施形態IV−34:選択的OCT2阻害剤がプラチナ薬剤の後に投与される、実施形態IV−1〜31のいずれかの方法。
【0542】
実施形態IV−35:1回の治療期間の間に被検者に投与されるプラチナ薬剤の量が標準的な臨床診療の下で投与されるものよりも多い、実施形態IV−1〜34のいずれかの方法。
【0543】
実施形態IV−36:必要としている被検者に治療の全過程にわたって投与されるプラチナ薬剤の蓄積量が、標準的な臨床診療の下で投与されるものよりも多い、実施形態IV−1〜35のいずれかの方法。
【0544】
実施形態IV−37:標準的な臨床診療下よりも高い頻度でプラチナ薬剤が投与される、実施形態IV−1〜36のいずれかの方法。
【0545】
実施形態IV−38:神経毒性が末梢神経障害である、実施形態IV−1または3〜37のいずれかの方法。
【0546】
実施形態IV−39:末梢神経障害がグレード3またはグレード4末梢神経障害である、実施形態IV−38の方法。
【0547】
実施形態IV−40:必要としている被検者がヒトまたは非ヒト動物である、実施形態IV−1〜39のいずれかの方法。
【0548】
実施形態IV−41:選択的OCT2阻害剤が、経腸、静脈内、筋肉内、腹腔内、経口、または腸管外投与される、実施形態IV−1〜40のいずれかの方法。
【0549】
実施形態IV−42:選択的OCT2阻害剤が2つ以上の投与経路を介して投与される、実施形態IV−1〜41のいずれかの方法。
【0550】
実施形態IV−43:プラチナ薬剤及び選択的OCT2阻害剤が同じ投与経路を介して投与される、実施形態IV−1〜42のいずれかの方法。
【0551】
実施形態IV−44:選択的OCT2阻害剤が静脈内点滴によって投与される、実施形態IV−1〜43のいずれかの方法。
【0552】
実施形態IV−45:選択的OCT2阻害剤が静脈内注入及び静脈内点滴によって投与される、実施形態IV−1〜43のいずれかの方法。
【0553】
実施形態IV−46:静脈内点滴が少なくとも1時間にわたる、実施形態IV−44または45の方法。
【0554】
実施形態IV−47:静脈内点滴の速度が一定である、実施形態IV−44または45の方法。
【0555】
実施形態IV−48:静脈内点滴の速度が一定でない、実施形態IV−44または45の方法。
【0556】
実施形態IV−49:癌がOCT1を発現する、実施形態IV−1〜48のいずれかの方法。
【0557】
実施形態IV−50:癌がOCT3を発現する、実施形態IV−1〜49のいずれかの方法。
【0558】
実施形態IV−51:癌がOCT1及びOCT3を発現する、実施形態IV−1〜50のいずれかの方法。
【0559】
実施形態IV−52:癌が、膵腺癌、膨大部及び膨大部周囲癌、肛門腺癌、虫垂癌、肝細胞癌、結腸癌または直腸癌、上皮性卵巣癌、ファロピウス管癌、原発性腹膜癌、食道または食道胃接合部癌、胃癌、小腸癌、精巣癌、胆管癌、膵腺癌、原発不明癌、慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫、AIDS関連B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、胃MALTリンパ腫、非胃MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、菌状息肉症/セザリー症候群、脾辺縁帯リンパ腫、末梢T細胞リンパ腫、原発性皮膚B細胞リンパ腫、原発性皮膚未分化大細胞リンパ腫(ALCL)、肺癌、肝癌、頭頸部癌、前立腺癌、平滑筋癌ならびに胆嚢癌からなる群から選択される、実施形態IV−1〜51のいずれか1つの方法。
【0560】
実施形態IV−53:癌が卵巣癌である、実施形態IV−52の方法。
【0561】
実施形態IV−54:癌が頭頸部癌である、実施形態IV−52の方法。
【0562】
実施形態IV−55:癌が前立腺癌である、実施形態IV−52の方法。
【0563】
実施形態IV−56:癌がリンパ腫である、実施形態IV−52の方法。
【0564】
実施形態IV−57:癌が平滑筋癌である、実施形態IV−52の方法。
【0565】
実施形態IV−58:癌が結腸癌または直腸癌である、実施形態IV−52の方法。
【0566】
実施形態IV−59:癌が肝癌である、実施形態IV−52の方法。
【0567】
実施形態IV−60:癌が肺癌である、実施形態IV−52の方法。
【0568】
実施形態IV−61:プラチナ薬剤に加えて、治療有効量の1つ以上の追加の癌化学療法剤を必要としている被検者に投与することをさらに含む、実施形態IV−1〜60のいずれかの方法。
【0569】
実施形態IV−62:1つ以上の追加の化学療法剤が5−フルオロウラシル、ベバシズマブ、カペセタビン(capecetabine)、ゲムシタビン、イリノテカン、及びロイコボリンからなる群から選択される、実施形態IV−61の方法。
【0570】
実施形態IV−63:オキサリプラチンまたはシスプラチンであるプラチナ薬剤、
ブフロメジル及びブフロメジル塩からなる群から選択される選択的OCT2阻害剤、ならびに
医薬品として許容可能な担体
を含む、静脈内投与のために製剤化された医薬組成物。
【0571】
実施形態IV−64:プラチナ薬剤の量が、プラチナ薬剤を含む標準的な医薬組成物中に存在するものよりも多い、実施形態IV−63の医薬組成物。
【0572】
実施形態IV−65:プラチナ薬剤に加えて、治療有効量の1つ以上の追加の癌化学療法剤をさらに含む、実施形態IV−63または64の医薬組成物。
【0573】
実施形態IV−66:1つ以上の追加の化学療法剤が5−フルオロウラシル、ベバシズマブ、カペセタビン(capecetabine)、ゲムシタビン、イリノテカン、及びロイコボリンからなる群から選択される、実施形態IV−65の医薬組成物。
【0574】
実施形態IV−67:治療有効量のオキサリプラチンまたはシスプラチンであるプラチナ薬剤;選択的OCT2阻害剤及び使用のための指示書を含むキット。
【0575】
実施形態IV−68:必要としている被検者に対する選択的OCT2阻害剤の望ましい投与量を決定するための指示書をさらに含む、実施形態IV−67のキット。
【0576】
実施形態IV−69:投与量が、体重、体表面積、身長、年齢、性別、アルコール使用、タバコ使用、生活様式、腎機能、肝機能、遺伝子多型及び併用薬から選択される上記被検者の少なくとも1つの因子に基づいて決定される、実施形態IV−67または68のキット。
【0577】
実施形態IV−70:投与量が、上記被検者におけるOCT2阻害剤の血漿レベルを監視することによって決定される、実施形態IV−67〜69のいずれかのキット。
【0578】
実施形態IV−71:ブフロメジルまたはブフロメジル塩が300mg、450mg、600mg、800mgまたは1000mgよりも多い量で存在する、実施形態IV−67〜70のいずれかのキット。
【0579】
実施形態IV−72:キットがプラチナ薬剤誘発性神経毒性を減少させる用途のために意図されていることが指示書に明記されている、実施形態IV−67〜71のいずれかのキット。
【0580】
実施形態IV−73:キットが癌を治療する用途のために意図されていることが指示書に明記されている、実施形態IV−67〜72のキット。
【0581】
実施形態IV−74:プラチナ薬剤に加えて、治療有効量の1つ以上の追加の癌化学療法剤をさらに含む、実施形態IV−67〜73のいずれかのキット。
【0582】
実施形態IV−75:1つ以上の追加の化学療法剤が5−フルオロウラシル、ベバシズマブ、カペセタビン(capecetabine)、ゲムシタビン、イリノテカン、及びロイコボリンからなる群から選択される、実施形態IV−74のキット。
【0583】
例示的実施形態−治療に用いるための選択的OCT2阻害剤
実施形態V−1:一実施形態において、本開示は、必要としている被検者における癌の治療に用いるための選択的OCT2阻害剤を提供するが、OCT2阻害剤はオキサリプラチンであるプラチナ薬剤との併用のためのものである。
【0584】
実施形態V−2:プラチナ薬剤誘発性毒性を減少させることができる投与量での投与のための、実施形態V−1に記載の選択的OCT2阻害剤。
【0585】
実施形態V−3:一実施形態において、本開示は、必要としている被検者における癌の治療に用いるための選択的OCT2阻害剤を提供するが、OCT2阻害剤はシスプラチンであるプラチナ薬剤との併用のためのものである。
【0586】
実施形態V−4:プラチナ薬剤誘発性毒性を減少させることができる投与量での投与のための、実施形態V−3に記載の選択的OCT2阻害剤。
【0587】
実施形態V−5:一実施形態において、本開示は、必要としている被検者における癌の治療に用いるためのブフロメジルまたはブフロメジル塩である選択的OCT2阻害剤を提供するが、OCT2阻害剤はオキサリプラチンまたはシスプラチンであるプラチナ薬剤との併用のためのものである。
【0588】
実施形態V−6:プラチナ薬剤誘発性毒性を減少させることができる投与量での投与のための、実施形態V−5に記載の選択的OCT2阻害剤。
【0589】
実施形態V−7:一実施形態において、本開示は、必要としている被検者におけるプラチナ薬剤毒性の減少に用いるための選択的OCT2阻害剤を提供するが、OCT2阻害剤はオキサリプラチンであるプラチナ薬剤との併用のためのものである。
【0590】
実施形態V−8:一実施形態において、本開示は、必要としている被検者におけるプラチナ薬剤毒性の減少に用いるための選択的OCT2阻害剤を提供するが、OCT2阻害剤はシスプラチンであるプラチナ薬剤との併用のためのものである。
【0591】
実施形態V−9:一実施形態において、本開示は、必要としている被検者におけるプラチナ薬剤毒性の減少に用いるためのブフロメジルまたはブフロメジル塩である選択的OCT2阻害剤を提供するが、OCT2阻害剤はオキサリプラチンまたはシスプラチンであるプラチナ薬剤との併用のためのものである。
【0592】
実施形態V−10:一実施形態において、本開示は、必要としている被検者の癌の治療における患者コンプライアンスの増加に用いるための選択的OCT2阻害剤を提供するが、OCT2阻害剤はオキサリプラチンであるプラチナ薬剤との併用のためのものである。
【0593】
実施形態V−11:一実施形態において、本開示は、必要としている被検者の癌の治療における患者コンプライアンスの増加に用いるための選択的OCT2阻害剤を提供するが、OCT2阻害剤はシスプラチンであるプラチナ薬剤との併用のためのものである。
【0594】
実施形態V−12:一実施形態において、本開示は、必要としている被検者の癌の治療における患者コンプライアンスの増加に用いるためのブフロメジルまたはブフロメジル塩である選択的OCT2阻害剤を提供するが、OCT2阻害剤はオキサリプラチンまたはシスプラチンであるプラチナ薬剤との併用のためのものである。
【0595】
例示的実施形態−選択的OCT2阻害剤の使用
実施形態VI−1:一実施形態において、本開示は、癌の治療のための医薬品の調製における選択的OCT2阻害剤の使用を提供するが、医薬品はオキサリプラチンであるプラチナ薬剤との併用のためのものである。
【0596】
実施形態VI−2:OCT2阻害剤が、プラチナ薬剤誘発性毒性を減少させることができる投与量での投与のためのものである、実施形態VI−1に記載の使用。
【0597】
実施形態VI−3:一実施形態において、本開示は、癌の治療のための医薬品の調製における選択的OCT2阻害剤の使用を提供するが、医薬品はシスプラチンであるプラチナ薬剤との併用のためのものである。
【0598】
実施形態VI−4:OCT2阻害剤が、プラチナ薬剤誘発性毒性を減少させることができる投与量での投与のためのものである、実施形態VI−3に記載の使用。
【0599】
実施形態VI−5:一実施形態において、本開示は、癌の治療のための医薬品の調製におけるブフロメジルまたはブフロメジル塩である選択的OCT2阻害剤の使用を提供するが、医薬品はオキサリプラチンまたはシスプラチンであるプラチナ薬剤との併用のためのものである。
【0600】
実施形態VI−6:OCT2阻害剤が、プラチナ薬剤誘発性毒性を減少させることができる投与量での投与のためのものである、実施形態VI−5に記載の使用。
【0601】
実施形態VI−7:一実施形態において、本開示は、プラチナ薬剤毒性を減少させるための医薬品の調製における選択的OCT2阻害剤の使用を提供するが、医薬品はオキサリプラチンであるプラチナ薬剤との併用のためのものである。
【0602】
実施形態VI−8:一実施形態において、本開示は、プラチナ薬剤毒性を減少させるための医薬品の調製における選択的OCT2阻害剤の使用を提供するが、医薬品はシスプラチンであるプラチナ薬剤との併用のためのものである。
【0603】
実施形態VI−9:一実施形態において、本開示は、プラチナ薬剤毒性を減少させるための医薬品の調製におけるブフロメジルまたはブフロメジル塩である選択的OCT2阻害剤の使用を提供するが、医薬品はオキサリプラチンまたはシスプラチンであるプラチナ薬剤との併用のためのものである。
【0604】
実施形態VI−10:一実施形態において、本開示は、癌の治療における患者コンプライアンスを増加させるための医薬品の調製における選択的OCT2阻害剤の使用を提供するが、医薬品はオキサリプラチンであるプラチナ薬剤との併用のためのものである。
【0605】
実施形態VI−11:一実施形態において、本開示は、癌の治療における患者コンプライアンスを増加させるための医薬品の調製における選択的OCT2阻害剤の使用を提供するが、医薬品はシスプラチンであるプラチナ薬剤との併用のためのものである。
【0606】
実施形態VI−12:一実施形態において、本開示は、癌の治療における患者コンプライアンスを増加させるための医薬品の調製におけるブフロメジルまたはブフロメジル塩である選択的OCT2阻害剤の使用を提供するが、医薬品はオキサリプラチンまたはシスプラチンであるプラチナ薬剤との併用のためのものである。
【0607】
本発明のある特徴は、明瞭化のために別個の実施形態との関連で記載されるが、単一の実施形態において組み合わせて提供されてもよいと理解される。反対に、本発明の様々な特徴は、簡潔のために、単一の実施形態との関連で記載されるが、別々にまたは任意の好適な部分的組合せで提供されてもよい。
【0608】
実施形態V−1〜V−6及びVI−1〜VI−6は、実施形態I−1〜I−105;II−1〜II−85;III−1〜III−86;またはIV−1〜IV−75のいずれかと組み合わせて用いることができると理解される。
【実施例】
【0609】
以下の実施例は例示にすぎず、決して本開示のいかなる態様も限定することを意図していない。
【0610】
実施例A−オキサリプラチン誘発性末梢神経障害のBalb/cマウスモデルにおけるOPV−3003の保護作用の評価のためのプロトコール
この実施例のプロトコールは、Renn, C.L.; Carozzi, V.A.; Rhee, P.; Gallop, D.; Dorsey, S.G.; Cavaletti, G., Multimodal assessment of painful peripheral neuropathy induced by chronic oxaliplatin−based chemotherapy in mice. Mol Pain, 2011, 7, 29;及びBoehmerle, W., et. al., Scientific Reports 4:6370, p1−9, 2014で説明されている。
【0611】
目的
目的は、オキサリプラチン(OHP)での慢性治療を施したBalb/cマウスにおけるOPV−3003の神経保護作用を評価することである。
【0612】
動物
雄Balb/cマウス、入荷時20グラム(Envigo, Italy)
【0613】
飼育及び取扱い
動物の世話及び飼育は、国内の(D.L. n. 26/2014)及び国際間の(EEC Council Directive 86/609, OJ L 358, 1, Dec.12, 1987; Guide for the Care and Use of Laboratory Animals, U.S. National Research Council, 1996)法律及び政策に従う施設のガイドラインに準拠した。
【0614】
薬物
オキサリプラチン(OHP)、3.5mg/kg、静脈内、週2回で4週間。
【0615】
OPV−3003(OPV)、OHP投与の15分前に30mg/kg腹腔内、及びOHPと共に15mg/kg静脈内共投与、週2回で4週間。
【0616】
実験プロトコール
ランダム化
1群:未治療(N=12)
2群:OPV(N=12)
3群:OHP(N=12)
4群:OHP+OPV(n=12)
動物の総数:48
図18中のフローチャートに示すように
【0617】
− ベースライン、治療の終了時及びフォローアップ期間の終了時に、神経伝導速度及び行動試験をすべての動物で実施する。
【0618】
− 最初及び最後のiv投与の15分後、血清サンプルを薬物動態解析のために収集する。
【0619】
− 最初のiv投与の24時間後、コールドプレートテストを実施する。
【0620】
− 治療の終了時及びフォローアップ期間の終了時に、坐骨神経、尾神経、L4−L5 DRG及び皮膚生検を4つの動物群で収集する。
【0621】
− 体重は週2回測定し、死亡及び臨床徴候は毎日監視する。
【0622】
実験計画
第1段階:薬物治療
【0623】
OHP及びOPVを4週間投与する。OHP及びOPVを共投与する群では、OHP及びOPVの静脈内共投与の15分前にOPVを腹腔内注入する。
【0624】
最後の薬物投与の4日後に、各群中4匹を屠殺する。
【0625】
第2段階:フォローアップ期間
【0626】
最後の投与の後、4及び8週間動物を観察する。4週間のフォローアップの後、NCVの分析を実施して動物を屠殺するか、またはさらに4週間動物を観察するか決定する。
【0627】
評価及び時期
神経伝導速度
ベースライン、薬物治療の終了時ならびにフォローアップの4及び8週間後に、尾及び指NCVを評価する。感覚/運動及び感覚神経伝導速度(NCV)は、筋電図検査装置(Myto2 ABN Neuro, Firenze, Italy)を用いることによって、それぞれ尾及び指神経を刺激して測定する。尾NCVは、2つの記録針電極を尾根部に、2つの刺激針電極を記録点の3.5cm遠位に配置することによって測定する。指NCVは、正の記録電極を大腿に、負の記録電極を距骨の近くに、そして、正及び負の刺激電極をそれぞれ指神経に近い第4趾の近く及び足裏に配置することによって測定する。
【0628】
刺激の強度、継続時間及び周波数は、最適の結果が得られるように設定する。
【0629】
すべての神経生理学的測定は、温度制御室(22+/−2℃)において標準条件下で実施する。
【0630】
行動試験
プランターテスト、ダイナミックプランターエステシオメータテスト及びコールドプレートテストを用いて、痛みの知覚における変化及び薬物治療によるその変遷を判定する。これらの行動試験は、ベースライン、薬物治療の終了時及びフォローアップの4及び8週間後に実施する。
【0631】
プランターテスト(モデル37370; Ugo Basile Biological Instruments, Comerio, Italy)を用いて、後足の裏の熱痛覚閾値を評価する。赤外線光源をガラスの床の下に置き、マウスの後足の中央の下に配置する。位置決めが完了したら、熱源を作動させ、光電池が熱源を自動的に遮断し、引っ込めるまでの時間(引っ込め潜時)が記録された。動物が自発的に足を引っ込めなかった場合に熱傷を引き起こすのを回避するため、30秒の上限カットオフがあり、その後では熱は自動的に停止された。
【0632】
機械的痛覚閾値は、一次関数的に増加する機械的力を発生させるダイナミックエステシオメータテスト(モデル37450; Ugo Basile Biological Instruments, Comerio, Italy)を用いて評価する。
【0633】
各時点で、馴化期間後に、先が尖った金属フィラメント(0.5mm直径)を後足の足底表面に当て、漸増する断続的な圧力を15秒のうちに15gまで達するように加える。明らかな自発的に後足を引っ込める反応を誘発する圧力が自動的に記録され、機械的痛覚閾値指数を表すものとみなす。結果は動物が耐えた最大圧力(グラムで表される)を表す。30秒の上限カットオフがあり、その後では機械的刺激は自動的に停止された。
【0634】
コールドプレートテストは、プレキシグラスシリンダー及び温度を調節可能なサーモスタットプレートで構成された装置(35100−ホット/コールドプレート、Ugo Basile instruments)を用いて実施する。移動及び歩行が自由な+4℃に設定したプレート上に動物を載せる。2人の盲検化した実験者が同時に、5分間の試験中の痛みのサイン(例えば、跳ぶ、舐める、不安が増加するなど)の数を測定する。
【0635】
DRG、坐骨及び尾神経の形態解析
左坐骨神経、尾神経、L4−L5 DRGを採取し、形態解析のために処理する。パラホルムアルデヒド4%/グルタルアルデヒド2%中(DRG)またはグルタルアルデヒド3%中(末梢神経)において、組織を室温で3時間固定し、OsO
4中で後固定してエポキシ樹脂包埋する。トルイジンブルーで染色した1μm厚の準薄片で形態解析を行う。各動物について少なくとも2つの組織ブロックを薄切し、その後、光学顕微鏡で検査する。
【0636】
DRG及び神経の形態計測解析
採取したDRGを、トルイジンブルー染色した1μm厚の準薄片での形態計測検査に用いる。DRGをコンピュータ支援画像解析器(ImageJ NIHソフトウェア)で解析し、ランダムに選択された切片で、少なくとも300DRGニューロン/マウスについて、DRG感覚ニューロンの細胞体、核及び核小体のサイズを測定する。
【0637】
有髄線維の形態計測解析では、顕微鏡写真撮影装置(Nikon Eclipse E200; Leica Microsystems GmbH, Wetzlar, Germany)によって60倍の倍率で切片を観察し、QWin自動画像解析器(Leica Microsystems GmbH)を用いて形態計測解析を実施した。すべての検体から収集したランダムに選択された切片において、解析空間中の評価可能なすべての有髄線維を計数し、少なくとも500有髄線維/神経で有髄線維の外径(全)及び内径(軸索)を測定する。軸索径及び全線維径の両方から、線維分布のヒストグラムが計算され、2つの直径の間の比であるg比(有髄化度の十分に確立された尺度[Boehmerle 2014])が、個々の軸索径及び線維径の組それぞれについて自動的に計算される。
【0638】
実施例1
以下の実施例は、OCT2トランスポーターを介したオキサリプラチン細胞内取込みの阻害剤の同定に関する。
オキサリプラチンは、特に大腸癌において、最も積極的に用いられている腫瘍化学療法薬の1つである。しかし、その抗腫瘍効果に加えて、オキサリプラチンは、末梢神経障害、耳毒性及び腎毒性をはじめとする有害作用に関連付けられてきた。これらの毒性の正確な機序はよく理解されていないままであるが、OCT2媒介細胞蓄積が原因であり得ることが提唱されている[1]。OCT2発現細胞におけるオキサリプラチン取込みに対する処方薬のライブラリーをスクリーニングし、OCT2媒介オキサリプラチン細胞内取込みの阻害剤としての複数の薬物を同定した。
【0639】
材料及び方法
ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中に維持したメイディン・ダービー・イヌ腎臓II型(MDCK−II)細胞を、形質移入の24時間前に、96ウェルPCF多孔質メンブレンインサートにウェル当たり60±10Kで播種した。完全にコンフルエントなMDCK細胞単層を、試験しようするヒトトランスポーターをコードするcDNAプラスミドまたはGFP対照のいずれかで形質移入した。48時間後に、様々な濃度の試験薬と混合したプローブ基質と共に細胞を37℃で5または30分間インキュベーションすることによって、輸送アッセイを開始した。その後、細胞を氷冷PBSで洗浄し、50:50のアセトニトリル:H2Oで溶解した。基質の細胞内含有量をLC/MS/MSまたはMicroBeta放射測定プレートリーダーによって定量した。
【0640】
15種の薬物を選抜し、それらの5及び50μMでのOCT2媒介オキサリプラチン取込みを阻害する効力について評価して、推定IC
50値を得た(表1)。
【表1】
【0641】
様々な細胞株において発現したヒトOCT2に対して、異なるOCT2基質を用いて多くの処方薬がスクリーニングされてきた。例えば、OCT2基質としてASP
+を用いて、Giacominiのグループ[2]は244種の処方薬をOCT2阻害剤として同定しており、その中のいくつかは表1に記載されている。しかし、個々の阻害剤が他の基質、例えばメトホルミン及びオキサリプラチンなどのOCT2媒介輸送を減少させる程度は大きくばらついており、これはおそらく、これらの基質がOCT2の異なる結合部位と相互作用するということに起因する[3]。したがって、OCT2媒介ASP
+取込みの阻害効力とオキサリプラチン及びメトホルミンのOCT2媒介取込みの阻害効力との間に直接的な相関関係は存在しない。例えば、Giacominiのグループによってクロルフェネシンカルバメート及びイマチニブはOCT2媒介ASP
+取込みの強力な阻害剤であると示されたが、OCT2で媒介されるメトホルミン及びオキサリプラチンの取込みの阻害剤としての効力は、それぞれ100分の1及び30分の1未満である。別の例では、ミコナゾールはASP
+及びオキサリプラチンのOCT2輸送に対して同様の効力を示したが、OCT2媒介メトホルミン輸送の阻害においてはおよそ70分の1の効力である(表1)。
【0642】
メトホルミンはより一般に用いられるOCT2に対するプローブ基質である。OCT2を介したメトホルミン輸送の阻害も、OCT2媒介オキサリプラチン取込みに対する薬物の効果を予測するものではなかった。出願人らはメトホルミンのOCT2媒介輸送について70種の化合物をスクリーニングした。例えば、ミコナゾール、エルロチニブ、ペンタミジン、エピナスチン、エキセメストラン(exemestrane)、チオトロピウム及びプロパンセリンは、オキサリプラチンのOCT2媒介輸送の阻害においてメトホルミンの場合の10倍を超える効力を示した(表1)。例えば、ロイプロリド及びミコナゾールは、メトホルミン輸送において約39倍の差(IC
50=3.62及び141.60μM)を示したが、オキサリプラチン取込みの阻害においては同様の効力(それぞれIC
50=1.57及び1.55μM)を示した。
【0643】
このデータから、OCT2媒介オキサリプラチン輸送に対する薬物の阻害効力を判定するためには、オキサリプラチンがOCT2基質として用いられなければならないことが示された。したがって、以前に報告されたオキサリプラチン以外の基質を用いたインビトロOCT2アッセイに基づく研究[2,3]は、化合物がOCT2媒介オキサリプラチン輸送を阻害するかどうか判定するのに用いることができない。
【0644】
オキサリプラチンをOCT2基質として用いて、ブフロメジルをはじめとして複数の薬物をOCT2媒介オキサリプラチン輸送の強力な阻害剤(IC
50<2μM)として同定した。インビボ条件下では、血清タンパク質への阻害剤の非特異的結合が血漿中でのそれらの見掛けの阻害効力に影響を与え得る。IC
50,appで表される血漿中でのそれらの効力をさらに確認するために、100%ヒト血清、または薬物のタンパク質結合の観点では血清にほぼ相当する4%ウシ血清アルブミン(BSA)を含有するHBSSのいずれかにおいて、一連の濃度のこれらの薬物をOCT2で媒介される20μMまたは100μMのオキサリプラチン輸送に対して試験した。薬物の一部の回帰IC
50値及び見掛けの血清IC
50,app値を表2に示す。
【表2】
【0645】
実施例2
以下の実施例は、OCT2媒介オキサリプラチン取込みの臨床的に意味のある阻害剤の同定に関する。
FDAは、インビトロモデルで得られたデータを用いることによって、薬物が臨床においてトランスポーター阻害剤となる可能性があるかどうか予測するガイダンスを公開している[4]。C
max,uは薬物の最大遊離非結合血漿濃度を表す。C
max,u及びタンパク質不含バッファー中で評価したインビトロIC
50の間の比が<0.1であれば、薬物はインビボでトランスポーターを阻害する可能性がない。このように、インビトロモデルの特性がインビボ有効性を予測するために用いられ得る。
【0646】
したがって、上記のインビトロ法を用いて同定した適格な阻害剤で、これらの薬物の公開されている臨床薬物動態データを用いて臨床的にOCT2媒介オキサリプラチン細胞内取込みへの潜在的効果について調査した。このデータを用いて、7つの化合物で>0.1のCmax,u/IC
50比が算出された(表2)。これらの薬物はブフロメジル、ミコナゾール、エルロチニブ、プロパンセリン、エピナスチン、ペンタミジン、ドルテグラビル、及びシメチジンである。それらの中で、ペンタミジン、ブフロメジル及びエルロチニブが最も高いC
max,u/IC
50比を有しており(>1)、最大臨床血漿濃度で、これらの薬物はインビボで50%を超えてOCT2媒介オキサリプラチン細胞内取込みを阻害し得ることを示唆していた。しかし、ペンタミジンの臨床投与量は患者の25%近くで腎毒性を引き起こすおそれがあり、そのため、プラチナ薬剤毒性を減少させるにはあまり望ましくないOCT2阻害剤であり得る。
【0647】
他の薬物について、それらの低い(<1)C
max,u/IC
50比は、これらの薬物が、インビボで>50%のOCT2媒介オキサリプラチン取込みを達成するために、それらの通常の臨床投与量よりもはるかに高い投与量で投与される必要があり得ることを示唆している。例えば、チオトロピウム及びエピナスチンは、IC
50がそれぞれ0.12μM及び0.19μMと測定され、非常に強力なOCT2阻害剤と証明された点眼剤である。しかし、それらの全身/血漿レベルも非常に低く(表2)、そのため、それらの承認された臨床投与量で投与した場合、眼以外の臓器におけるそれらのOCT2活性への阻害作用はおそらく最小限となる。あるいは、それらの製剤及び/または投与経路を変更することでそれらの血漿曝露量が増加し得るが、これにより、低い血漿曝露量では観察されなかった予想外の全身毒性を誘発し得る。
【0648】
さらに、別の方法を用いて、臨床において潜在的にOCT2媒介オキサリプラチン細胞内取込みに影響を及ぼすことのできる化合物を同定した。C
max,u/IC
50比の代わりに、C
max/IC
50,app比を用いたが、ここで、C
maxは薬物の全血漿濃度を表し、IC
50,appは、100%血清、または生理的濃度の血清結合性タンパク質、例えばアルブミンなどを含有するアッセイバッファー中でインビトロにて測定した見掛けの50%阻害定数を表す。このアプローチは、高度にタンパク質に結合した(>90%)化合物のインビボトランスポーター阻害作用をより正確に予測できると実証されたものである[17]。
【0649】
C
max/IC
50,app比を用いることで、ブフロメジル及びエルロチニブは、OCT2媒介オキサリプラチン細胞内取込みの臨床的に意味のある阻害剤の可能性があることがさらに実証された。さらに、2つの高度に血清タンパク質に結合した薬物であるミコナゾール及びドルテグラビルは、1未満のC
max,u/IC
50(表2)を有していたが、高いC
max/IC
50,app比(それぞれ4.52及び3.23、表2)のために、インビボでOCT2媒介オキサリプラチン細胞内取込みのより高い阻害を示し得ることが実証された。
【0650】
C
max,u/IC
50またはC
max/IC
50,app比に注目することに加えて、OCT2媒介オキサリプラチン取込みを阻害する場合に最大限の臨床効果を有する阻害剤を発見するために、他の薬物動態(PK)パラメータを考慮に入れることも重要である。
【表3】
【0651】
臨床腫瘍学において、オキサリプラチンは典型的に静脈内点滴によって数時間かけて投与される。
図1Aに示すように、オキサリプラチンの血漿濃度は2時間の点滴の開始後から3時間の間高いままである。薬物の効力及び毒性は典型的にはその血漿濃度と密接に関係しているので、オキサリプラチンはこの期間中に毒性を誘発する可能性が高い。したがって、OCT2媒介細胞内取込みに起因するオキサリプラチン毒性を最大限に減少させるために、少なくともこの期間中はOCT2媒介オキサリプラチン取込みの阻害剤を十分な血漿濃度に維持すべきである。ミコナゾールの場合、IVボーラス投与した600mg(
図1B)は高い最大血漿濃度を有するが、その血漿濃度は0.4時間の半減期(初期相)で急速に低下し、結果として3時間で5倍近い減少となる。そのような半減期が短いPKプロファイルは、ミコナゾールを長時間にわたって点滴しない限り、またはシスプラチン/オキサリプラチンの投与がより短くない限り、臨床現場においてOCT2媒介オキサリプラチン取込みの阻害(ひいては毒性の阻害)を持続させるには理想的でない場合がある。例えば、シスプラチン及びオキサリプラチンの両方をボーラスによって、またはより短い点滴時間で投与することが可能である。ミコナゾールIV注入と対照的に、ブフロメジル、ドルテグラビル及びエルロチニブ経口投与は長い半減期を有し(表3)、それらの血漿濃度はより長い時間望ましい濃度に維持することができることを意味する(
図1C、
図1D及び
図1E)。ブフロメジル600mg徐放性錠剤qd(
図1C(2))は、プラチナ誘導体の2時間の点滴、特にオキサリプラチン点滴からの保護に特によく適合しているように思われる。
【0652】
実施例3
以下の実施例は、オキサリプラチン運搬に関与する他の主要なトランスポーターに優先するOCT2に対する阻害選択性に関する。
OCT2に加えて、オキサリプラチンは他の取込みトランスポーター、主にOCT1及びOCT3とも相互作用すると考えられる。MATE1及びMATE2Kをはじめとする流出トランスポーターもオキサリプラチンの細胞蓄積を制御するのに関与している。出願人らは、OCT1、OCT2、OCT3ならびにMATE1及びMATE2Kをはじめとするトランスポーターによるオキサリプラチンの輸送性を確認した(
図2)。
【0653】
これらのトランスポーターは、オキサリプラチン効力及び毒性の調節において異なる役割を有する。例えば、OCT1及びOCT3は、腫瘍細胞におけるオキサリプラチン効力に関連付けられている。しかし、MATE1及びMATE2Kは、腎臓におけるオキサリプラチン及びシスプラチンの毒性を減少させると考えられている。したがって、オキサリプラチン効力に影響を及ぼさない、及び/またはオキサリプラチン腎毒性を悪化させないように、OCT2を特異的に阻害する薬物を得ることが重要である。
【0654】
ブフロメジルを例として用いて、オキサリプラチントランスポーターとの相互作用における選択性が重要であることを実証した。エルロチニブ及びシメチジンは、臨床試験でプラチナ薬剤誘発性毒性から患者を保護する能力について試験済みの2つのOCT2阻害剤であり、これを比較として用いた。上記と同様のインビトロトランスポーター法を用いて、OCT1、OCT2、OCT3、MATE1及びMATE2Kに対するこれらの薬物のIC
50を求めた。表4に、これらのトランスポーターによって媒介されるオキサリプラチン(100%ヒト血清中20μMまたは4%BSAを含有するHBSS中100μM)輸送に対する、ブフロメジル、エルロチニブ、シメチジン、ミコナゾール、及びドルテグラビルの測定または推定の血清見掛けIC
50,app値を記載する。
【0655】
ブフロメジルは、効力がOCT1、OCT3、MATE1及びMATE2Kよりも少なくとも20倍高く、オキサリプラチンの輸送におけるOCT2の選択的阻害剤であると実証された(
図3A、表4)。ドルテグラビルも、効力がOCT1、OCT3及びMATE1よりも少なくとも10倍高く、オキサリプラチンの輸送におけるOCT2の強力な選択的阻害剤であると実証された(
図3D、表4)。ミコナゾールは、効力がOCT1、OCT3、MATE1及びMATE2Kよりも少なくとも2倍高く、オキサリプラチンの輸送におけるOCT2の強力な阻害剤であると実証された(
図3C、表4)。エルロチニブもOCT2に加えてOCT1を抑制する効力があると実証された(
図3B、表4)。シメチジンは、OCT2の阻害剤ではあるが、MATE1によるオキサリプラチン輸送の阻害がより優先されると示された(表3)。これらのデータは、エルロチニブ及びシメチジンと比較して、ブフロメジル、ミコナゾール及びドルテグラビルの方が、OCT2媒介オキサリプラチン輸送の選択性が高い阻害剤であるので、より優れた薬剤であることを示唆していた。特に、ブフロメジル及びドルテグラビルは、OCT2と他の関連するトランスポーター(OCT1、OCT3、MATE1)との間で10倍を超える選択性を示した。
【0656】
ブフロメジル及びドルテグラビルと比較して、ミコナゾールはOCT2とOCT1との間で低い(<2×)選択性を有し、OCT1発現腫瘍、例えば結腸癌及び肝癌などにおいて他の2つの薬物よりもオキサリプラチン効力を妨げる可能性が高いことを示唆している。それでも、ミクロナゾール(micronazole)はOCT2と他の関連するトランスポーター(OCT3、MATE1及びMATE2K)との間で高い選択性(>10×)を有するので、OCT1が治療効力において最小限の役割しか果たさない場合(例えば、化学療法薬がOCT2基質であるがOCT1基質ではない場合、及び/または腫瘍が低いレベルでOCT1を発現する場合)には依然として有望な候補であり得る。
【0657】
同じ方法を用いてイミダゾール及び他の薬物のトランスポーター阻害選択性を判定することができる。
【0658】
ブフロメジルは本発明者らによって初めてOCT2媒介オキサリプラチン輸送の強力かつ選択性のある阻害剤であると発見されたにもかかわらず、
図15Aは、メトホルミンを基質として用いた場合、ブフロメジルがOCT2とMATE1との間で阻害選択性を有しないことを示す。この結果は、OCT2媒介オキサリプラチン毒性を最小限にするための適切な薬物をスクリーニングするためには、トランスポーター基質としてオキサリプラチンを用いることが極めて重要であることをさらに実証している。
【0659】
対照的に、シスプラチンをトランスポーター基質として用いて、ブフロメジルのOCT2及びMATE1阻害効力についてさらに評価した。
図15Bは、OCT2またはMATE1で媒介されるオキサリプラチン及びシスプラチンの輸送に対して、ブフロメジルがほぼ同一のIC
50を有することを示す。この結果は、シスプラチン及びオキサリプラチンが同じトランスポーター結合部位と相互作用し、実証されたような基質に全くまたはほとんど依存しない(オキサリプラチン対シスプラチン)ブフロメジル効力及び選択性がもたらされ得ることを示唆している。
【表4-1】
【表4-2】
【0660】
実施例4
以下の実施例は、取込み及び流出トランスポーターを共発現する細胞におけるブフロメジルによる細胞内オキサリプラチン蓄積の阻害に関する。
【0661】
ほとんどの自然発生細胞において、取込みトランスポーターは流出トランスポーターと共存する。基質の正味細胞内蓄積を決めるのは取込みトランスポーターと流出トランスポーターとの間の相互作用である。1つの例は腎臓における近位尿細管上皮細胞で、そこでは、基底側に発現されるトランスポーター、主にOCT2は、頂端側に発現されるMATE1及びMATE2Kと共同して働く[5]。どの程度ブフロメジルがオキサリプラチンの正味細胞内含有量に影響を与えることができるのか測定するために、OCT2及びMATE1をそれぞれ40及び10ng/μLのcDNAプラスミド濃度で同時に形質移入して発現させることによって、多重トランスポーター細胞系を構築した。4% BSA HBSS中で、様々な濃度のブフロメジルと混合したオキサリプラチン100μMを90分間細胞に投与した。実験の最後に、オキサリプラチンの細胞内含有量をLC/MS/MSで定量した。OCT2を単一発現した細胞またはGFPモックも対照として用いた。
【0662】
図4に示すように、OCT2発現細胞の細胞内含有量はGFPモック対照を発現する細胞よりも有意に高く、OCT2がオキサリプラチン腎毒性を増強し得ることを示唆していた。しかし、MATE1及びOCT2を両方発現する細胞では、OCT2のみと比較してオキサリプラチンの細胞含有量が顕著に減少されており、MATE1がオキサリプラチン攻撃から尿細管細胞を保護する役割を果たすことを示唆していた。ブフロメジル及びエルロチニブは両方ともMATE1よりもOCT2に対して強力な阻害剤であるので(表4)、OCT2及びMATE1を共発現する細胞においてオキサリプラチンの細胞蓄積を減少させており、オキサリプラチンによって誘発される腎毒性を減少させる可能性も秘めているはずであることを示唆している。これは、OCT2よりもMATE1に対して強力な阻害剤のシメチジンと対照的であり、こちらは、MATE1の優先的阻害によって尿細管細胞におけるオキサリプラチン蓄積を増加させ得るため、オキサリプラチン誘発性腎毒性を悪化させる可能性がある。
【0663】
実施例5
以下の実施例は、ブフロメジルはOCT2媒介取込みを阻害することによってオキサリプラチンの細胞傷害性を減少させるという発見に関する。
【0664】
これまでの研究では、ブフロメジルがオキサリプラチンのOCT2媒介取込みの強力な阻害剤であることを実証した。ここでは、OCT2、MATE1及びMATE2Kを過剰発現するインビトロMDCK(イヌ近位上皮細胞)モデルで、ブフロメジルでのオキサリプラチン細胞傷害性の減少を試験した。
【0665】
材料及び方法
完全にコンフルエントなMDCK−II細胞単層に、OCT2、MATE1、及びMATE−2Kをコードするプラスミドをそれぞれ40、15、及び5ng/μlの濃度で含有するDNA混合物を形質移入することによって、OCT2(SLC22A2)、MATE1(SLC47A1)、及びMATE2−K(SLC47A2)の三重トランスポーターモデルを作製した。OCT2は基底側細胞膜上に発現され、MATE1及びMATE2−Kは細胞の頂端側で発現された。MATE1/MATE2K流出トランスポーターの作用を実証するために、同様のレベルのOCT2を発現するモデルも用いた。フェニルレッドを含まず10%ウシ胎児血清を含むダルベッコ改変イーグル培地からなる完全培地中で、5%CO2−95%空気の雰囲気下、37℃にて、これらの系を培養した。頂端側培地は25mMの2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)でpH6.7に調整した。
【0666】
処理中、3〜1000μMの範囲の様々な濃度のブフロメジルで基底側及び頂端側の両方を処理し、オキサリプラチンは基底側のみに添加し、100μMに固定した。細胞を阻害剤と共にまたは無しで30分間プレインキュベーションし、その後、オキサリプラチンをさらに4時間共投与した。培地を除去した後、薬物不含培地を両側に加えた。24時間のインキュベーション後、培地を収集し、LDH細胞傷害性アッセイキット(G−Biosciences, St. Louis, MO;またはBiochain, Newark, CA)を用いて、製造業者の指示に従い、培地中の乳酸脱水素酵素(LDH)活性を測定した。培地中のLDH活性を測定することによって細胞傷害性を評価した。
【0667】
さらに、OCT2阻害剤の濃度を薬物の臨床C
maxに近い濃度に固定し、1〜1000μMの範囲の様々な濃度のオキサリプラチンと共投与した。ブフロメジルは3μ及び6μMで試験した。ドルテグラビルは10μMで試験した。これまでの研究においてオキサリプラチンのOCT2取込みを阻害する効力が優れていたため、競合阻害物質の1つにエルロチニブを選択した。別の競合阻害物質としてシメチジンも試験したが、その理由は、広く知られている非選択的OCT2阻害剤であり、腎毒性及び神経毒性をはじめとするプラチナ誘発性毒性の減少についてインビトロ及びインビボ両方で研究されているためである。上記と同じ手順を用いて細胞傷害性を試験した。加えて、シスプラチンがOCT2トランスポーターの基質として報告されていた。したがって、シスプラチンもこの三重モデルにおいて6μMのブフロメジルと共にまたは無しで100、300及び1000μMで試験した。別の同様の実験で、MATE1及びMATE2Kトランスポーターを含む及び含まないOCT2発現細胞においてオキサリプラチン細胞傷害性を評価したところ、これらの流出トランスポーターの保護的役割が実証された。
【0668】
結果及び考察
図5及び6は、OCT2を発現する細胞において、ブフロメジル及びドルテグラビルがオキサリプラチン誘発性細胞傷害性を効果的に減少したことを示す。100μMのオキサリプラチンを異なる濃度のブフロメジルと共に適用した場合、ブフロメジルはオキサリプラチン誘発性細胞傷害性を投与量依存的に減少させ、臨床的に意味のあるIC
50値は6μMであった(
図5)。
【0669】
オキサリプラチン細胞傷害性EC
50値を求めるために、一定濃度のブフロメジル、ブフロメジル、シメチジンまたはエルロチニブの存在下及び不在下において、様々な濃度のオキサリプラチンで細胞を処理した。
図6A〜Bは、オキサリプラチン処理単独と比較して、3μM及び6μMのブフロメジルとの共処理が、OCT2、MATE1及びMATE2Kを発現する細胞におけるオキサリプラチン細胞傷害性を大幅に減少させ、EC
50値がそれぞれ4.5倍及び10倍増加したことを示し、臨床的に意味のある濃度のブフロメジルがOCT2発現細胞におけるオキサリプラチン誘発性毒性を顕著に緩和することができることを示唆している。同様に、10μMのドルテグラビルは、MATE1及びMATE2Kを有する及び有しない、OCT2を発現する細胞におけるオキサリプラチン細胞傷害性を大幅に減少させ(
図6C〜D)、EC
50値がそれぞれ17.3倍及び27.4倍増加した。
【0670】
エルロチニブはオキサリプラチンを添加しなくてもそれ自身で細胞傷害性を示した(
図6B)。6μMのエルロチニブの存在下で高濃度オキサリプラチン(>100μM)の毒性の減少が観察されたが、そのEC
50値は曖昧なフィッティングのために得ることができなかった。ブフロメジル及びドルテグラビルと対照的に、6μMのシメチジンは、三重トランスポーターモデルにおいてオキサリプラチン細胞傷害性を減少しなかったが、その理由はおそらくOCT2ではなくMATE1及びMATE2Kの強力な阻害剤であるためである。全体として、ブフロメジル及びドルテグラビルは、エルロチニブ及びシメチジンと比較して、OCT2発現細胞におけるオキサリプラチン細胞傷害性の減少において優れた効果を示した。
【0671】
三重トランスポーターモデルは、基底側/血漿側にはOCT2が、頂端側/尿細管側にはMATE1及びMATE2−Kが豊富に発現されている尿細管細胞におけるプラチナ薬剤の動態及び毒性を模擬するのに特に有用であるということに留意すべきである。したがって、これらの研究は特に、オキサリプラチンに関連する腎毒性を減少させるために、OCT2媒介オキサリプラチン輸送の選択的阻害剤、例えばブフロメジルなどを用いることができると示唆している。
【0672】
さらに、
図7は、ブフロメジルが、OCT2、MATE1及びMATE2Kを発現する細胞におけるシスプラチン誘発性細胞傷害性を減少させることができることも示唆している。シスプラチン誘発性毒性は、30μM処理(データは図示せず)以降で投与量−反応関係を示した。100、300、及び1000μMという3つの濃度のシスプラチンを比較した。シスプラチン単独と比較して、6μMのブフロメジルは1mMのシスプラチンの細胞傷害性を有意に減少させており、シスプラチン誘発性腎毒性を減少させるためにブフロメジルを用いることができることを示唆していた。
【0673】
図16は、MATE1及びMATE2KがOCT2発現細胞におけるオキサリプラチオン(oxaliplation)細胞傷害性の減少に有効であったことを示す。MATE1及びMATE2Kの存在は、オキサリプラチン細胞傷害性のEC50を3倍増加させただけでなく、細胞損傷の最大レベルも減少させた。これらの結果は、実施例4及び
図4で示したオキサリプラチン蓄積研究と一致しており、MATEトランスポーターは、オキサリプラチン及びシスプラチンによって誘発される毒性に対して、臓器、特に腎臓を保護するという仮説をさらに実証した。
【0674】
実施例6
以下の実施例は、腫瘍細胞株における化学療法剤のインビトロ抗腫瘍効果に対するブフロメジル、ドルテグラビル及び他の薬物の影響に関する。
【0675】
ブフロメジル及びドルテグラビルがオキサリプラチン、シスプラチン及びオキサリプラチンとともに用いられる化学療法薬の抗腫瘍効果を損ない得るかどうか評価するために、腫瘍細胞株において細胞傷害性アッセイを実施した。
【0676】
材料及び方法
HT−29及びHepG2細胞の抗増殖研究
ブフロメジル、ドルテグラビル、シメチジンまたはエルロチニブと共投与された場合のオキサリプラチンの効力を調べるために、HT−29(大腸癌細胞株)及びHepG2(肝癌細胞株)細胞を選択した。96ウェルプレートにおいてスルホローダミンB(SRB)アッセイによって効力を測定した。HT−29細胞及びHepG2細胞を、5%CO2−95%空気の雰囲気下、37℃で、それぞれ10%ウシ胎児血清を含むマッコイ5A及びイーグルMEM培地中に維持した。播種密度は両細胞株とも3000細胞/ウェルとした。一晩のインキュベーション後、3μMもしくは6μMのブフロメジル、3μM〜9μMのドルテガビル(dolutegavir)、3μMもしくは6μMのエルロチニブ、または6μMのシメチジンを細胞に添加して30分間プレインキュベーションし、その後、0.1〜100μMの範囲の様々な濃度のオキサリプラチンを培養培地に添加してさらに72時間インキュベーションした。
【0677】
結果及び考察
抗増殖研究によって試験したところ、エルロチニブを除いて、ブフロメジル、ドルテグラビル及びシメチジンは、HT−29(ヒト大腸腺癌)及びHepG2(ヒト肝癌)細胞においてオキサリプラチンの効力を維持した:抗増殖研究で、3または6μMのブフロメジル、3μMまたは6μMまたは9μMのドルテグラビルは、オキサリプラチン単独での処理と比較して、HT−29においてオキサリプラチン抗増殖IC
50値に影響を与えないことが示された(
図8)。対照的に、6μMのエルロチニブはオキサリプラチンIC
50を8.4倍に変化させており、エルロチニブがHT−29細胞においてオキサリプラチンの細胞傷害性を減少させ得ることを示唆していた(
図8A)。ブフロメジル(6μM)、エルロチニブ(3μM)、またはシメチジン(6μM)とのオキサリプラチンの共投与を並べて比較することも行った。オキサリプラチンを伴うエルロチニブの処理のみがオキサリプラチンの効力を顕著に減少させた(
図9)。さらに、同じ結果がHepG2細胞で得られており、オキサリプラチン単独での処理と比較して、エルロチニブ及びオキサリプラチンを共投与した場合、IC
50値は10倍に変化した(
図10)。理論に縛られることを望むものではないが、HT−29及びHepG2細胞は両方とも高レベルのOCT1を発現するという仮説が立てられる。したがって、オキサリプラチン効力は、強力なOCT1阻害剤であるエルロチニブによって減少した。
【0678】
以前の研究で、ブフロメジル及びドルテグラビルがOCT1でもOCT3でもなくOCT2の強力な阻害剤であると示されたことに注目すべきである。そのため、ブフロメジルまたはドルテグラビルを共投与した場合でもオキサリプラチンの効力は同じままであった。シメチジンは、オキサリプラチンと共投与した場合にオキサリプラチン効力を減少させていないが、OCT2に対するその弱い阻害作用のために、OCT2によって媒介される細胞傷害性を効果的に減少させていない可能性がある。全体として、データは、ブフロメジル及びドルテグラビルは、HT−29及びHepG2細胞におけるOCT1またはOCT3の弱いまたは無視できるほどの阻害のために、これらの癌細胞に対するオキサリプラチンの抗増殖効力に影響を与えなかったことを示唆していた。
【0679】
シスプラチンもOCTの基質として報告されている。したがって、これらの阻害剤がHT−29におけるシスプラチンの効力を減少させるかどうか試験した。3つの阻害剤のいずれもHT−29細胞におけるシスプラチン抗増殖効力を減少させなかった(
図11)。興味深いことに、エルロチニブは、おそらく腫瘍細胞におけるOCT1媒介オキサリプラチン取込みを阻害することによって、オキサリプラチンの効力を減少させ得ると以前に示された。これらの結果は、OCT1媒介シスプラチン輸送がHT−29細胞におけるシスプラチン蓄積の重要な機序でない可能性があることを示唆していた。そのため、エルロチニブはHT−29細胞におけるシスプラチン細胞傷害性に対して無視できるほどの影響しか及ぼさない。
【0680】
オキサリプラチン及びシスプラチンに加えて、大腸癌及び肝細胞癌をはじめとする様々な腫瘍の治療において一般にオキサリプラチンと併用される2つの化学療法薬である5−FU及びゲムシタビンに干渉する可能性について、ブフロメジルを試験した。この場合も、
図12及び13に示すように、ブフロメジル及びドルテグラビルは、HT−29細胞において5−FU及びゲムシタビンの抗腫瘍効果に影響を与えておらず、ブフロメジル及びドルテグラビルの共投与が5−FU及びゲムシタビンの効力を減少させないであろうことを示唆していた。
【0681】
実施例7
以下の実施例はプラチナ誘発性神経障害に関する。
【0682】
当該技術分野において公知の一般的な方法論を用いて、厳選した神経障害マウスモデルにおいてプラチナ薬剤による様々な毒性の誘発後のブフロメジルの活性を評価する。他の方法も利用可能である。これらの方法を修正したものも同様に利用可能である。
【0683】
材料及び方法
全身毒性の評価
ベースライン、各薬物投与の前及び8週目まで毎週マウスの体重を測定する。さらに、脱毛、立毛、全体的な歩行の弱さ、後足及び尾の皮膚の状態、ならびに胃腸障害の徴候の観察をはじめとする全身健康状態の評価のために、マウスの検査も毎日行った。
【0684】
行動試験を実施する前のベースラインならびに1、3、6、及び8週目に、赤外温度計(モデルIRT303HACCP, National Product, MD)を用いて耳腔内温度を測定する。ベースラインならびに1、3、及び6週目に、各薬物治療群からの2匹のマウスにおいて、イソフルランまたは等価物での簡単な麻酔の後、直腸プローブ(Thermalert TH−5及びTCAT−1Aコントローラ, Physitemp Instruments, Inc.)を用いて深部体温を測定する。
【0685】
シスプラチン及びオキサリプラチンの腎毒性は、3週間の薬物治療の終了時に収集したサンプル中の血中尿素窒素(BUN)レベルによって評価する。正常なマウスBUN値(the University of MinnesotaのResearch Animal Resources−http://www.ahc.umn.edu/rar/refvalues.htmlからの正常参考実験値によれば8〜33mg/dL;正常な未治療C57BL/6マウスについて報告された値)に基づいて、BUNレベル>40mg/dLを腎毒性発症の指標として用いた。
【0686】
行動試験
試験の順番は、必ず最もストレスの少ない試験が最初に行われ、ある試験による次の試験への影響が最小限となるように設計する。2週間の馴化の後、研究に入る前に試験手順に慣れさせるために、特定の訓練プロトコールで1週間にわたってマウスを5回訓練した。フォンフレイ及び足放射熱試験では、試験を開始する前にマウスを20分間装置内で自由に走らせる。尾浸漬試験では、各マウスを部分的に巻かれた湿った紙タオルで1分間ゆるく包み、この練習1回分を3〜4回繰り返す。握力試験では、3〜4回握力計のトラピーズを5分間引くように各マウスを誘導する。コールドプレート装置では訓練を行わない。すべての行動試験は、ベースライン、1及び3週目の各薬物治療サイクルの完了後、ならびに6及び8週目のフォローアップ評価で、4〜6匹の実験用マウスの群で行う。すべての行動試験は、室温(25℃)で0900時〜1600時の間に、薬物治療条件に対して盲検化されている1人の実験者によって行われる。
【0687】
活動の監視
ベースライン、1、2、3週目の薬物治療中、ならびに6、8、及び10週目の治療後に、VersaMax動物活動監視装置(AccuScanモデルRXYZCM−16, Columbus, OH)を用いて歩行活動の監視を行う。6匹のマウスの活動を6つの個別のオープンチャンバー内で同時に評価する。ウッドチップを敷いたプレキシガラスの箱(42×42×30cm)でできたオープンチャンバー内で、20分間の行動記録の前にマウスを5分間自由に走らせる。VersaMax監視装置には、赤外センサーが周囲に沿って2.54cmごとに(各面に沿って16個の赤外ビーム)、床から2.5cm上に配置されている。VersaMax監視装置は21種の行動カテゴリーにおける情報を収集するが、移動距離を1分間隔で収集し、10個の2分間ブロックに分割し、平均して群平均±SEMとして提示する。
【0688】
握力試験
上述したように握力計(Stoelting, Wood Dale, Il)を用いて握力を測定する。握力計は、デジタルディスプレイを備える力変換器及びトラピーズを備える金属プレートからなる。各マウスをプレート上に載せ、トラピーズを掴んでいることができなくなり握りを離すまで力を増加させながらその尾を引く。測定器は達成されたピーク引張力をデジタル的に捕捉して表示する。筋力はディスプレイに示されるピーク重さ(g)として定義する。値は3回の試験の平均として個別に求め、群平均±SEMとして提示する。
【0689】
コールドプレートアッセイ
1℃間隔で−5℃〜4℃の範囲の温度を用いて、マウスにおける冷痛覚過敏の閾値を調べる。所定時間中に足を上げる回数を数えると、優れた再現性が得られる。予備投与研究において、オキサリプラチン治療マウスは−5℃〜−3℃で著しい冷痛覚過敏を発症した。正確な温度を確実に読み取るために、温度センサーを金属プレートの表面上に直接に設置する(TECA, Chicago, IL)。各コールド試験セッションでは、マウスを試験室に連れてきて、上蓋を備えた8cmW×14cmD×14cmHの透明プレキシガラス隔壁内に囲われた低温金属表面上に個別に載せる前に、10分間馴化させた。足上げ計数の正確性を確保するために、各コールドプレート試験セッションはビデオカムコーダー(Sony DCR−PC1000)を用いて録画し、ビデオをスローモーションで再生する。いずれかの後足の急な持ち上げまたは跳躍の総数を冷痛覚過敏に対する反応として計数する。歩行に関連する運動はすべての四肢の協調運動を伴うので明確であり、これらは除外すべきである。マウスは、低温表面への繰り返し曝露によってもたらされ得るあらゆる可能性のある麻酔作用または組織損傷作用を回避するために、所与の試験日に1回のみ試験する。組織損傷を防止するために5分の最大カットオフ時間を用いる。3回の別々の試験をベースラインで3つの別々の日に行い、1、3、6、及び8週目の薬物治療の最中及び後における2回の別々の試験を平均して、足上げの平均回数として提示する。
【0690】
フォンフレイフィラメントアッセイ
機械的アロディニアの評価では、フォンフレイフィラメント原理を用いたUgo Basileダイナミックプランターエステシオメータ(Stoelting, Wood Dale, Il)を用いる。どこにいても足に接触可能な金網床の上の透明プラスチック箱の下にマウスを置く。マウスが落ち着いてほとんど動かなくなるまで馴化及び探索行動を最大2時間観察する。その後、作業者は接触刺激装置を各マウスの後足の下に配置し、後足の標的部位の下に較正済みの金属フィラメントを位置決めする。スタートキーを押すと、装置の動電アクチュエータが金属フィラメント(0.5mmの直径)を上昇させる。フィラメントは足底表面に接触し、後足を引っ込めて停止シグナルが作動するまで10秒間隔で0から5gまでの連続的な鉛直力を印加する。測定器は、足の引っ込めを誘発する重さ強度閾値(g)を自動的に記録する。5分間の間隔をあけて各後足を交互に4回試験する。歩行または体重移動に関連する足の動きは引っ込め反応として数えない。各マウスの両後足での8回の試験の足引っ込め閾値を平均して平均±SEMとして記録する。
【0691】
放射熱アッセイ
熱痛覚過敏の評価では、プランターUgo Basile装置(Stoelting, Wood Dale, Il)を用いてハーグリーブス試験[16]を行った。マウスは、上蓋としてプラスチック箱を上に備えた高架ガラス表面上のこの装置内で自由に動くことができる。マウスが落ち着いて動かなくなるまで試験の前に2時間の馴化期間を与える。高強度の較正した赤外光源を各マウスの後足の足底表面上に垂直に当てる。後足の裏の温度が上昇するとマウスは足を動かし、足の位置が変わることで反射光が変化してタイマーを停止させる。各試験で足を引っ込めるまでの潜時が自動的に記録される。15秒以内にマウスが後足を引っ込めない場合、組織損傷を防止するために試験を終了して15秒と記録する。5分間の間隔をあけて各後足を交互に4回試験する。各マウスの両後足での8回の試験の足引っ込め潜時を平均して平均±SEMとして記録する。
【0692】
尾浸漬アッセイ
尾熱痛覚過敏の評価では、修正を加えて上述したように尾浸漬試験を行った。各試験セッションで、試験室にマウスを連れてきて、1匹ずつ個別に3〜4回湿った紙タオル中で1分間尾を浸漬せずに馴化させる。次に、各マウスをわずかに湿った紙タオル中に素早くかつ優しく包み、調査者の手で最小限に拘束して保定して尾の先端から3分の1を水浴中に浸漬させる。水浴は50.5℃±0.5℃に事前に設定し、温度は独立した別の温度センサーで確認する。マウスが落ち着き、尾が弛緩してはじめて次のステップである尾の浸漬を行う。マウスが興奮し出したら、包みを解いて試験プロトコールをやり直す。少なくとも30分間隔てた3回の試験中に力強いテールフリックまでの潜時を記録し、3回の試験を平均して平均±SEMとして提示する。カットオフ時間を20秒に設定し、その後では行動反応にかかわらずマウスを取り出した。
【0693】
マウスにおけるオキサリプラチンの神経毒性を予防または治療するためのブフロメジルの使用
上記のように及びTa et al 2009[18]に記載されている完全な方法論を用いて、どの程度ブフロメジルがマウスのオキサリプラチン誘発性末梢神経障害モデルにおける神経毒性を予防または治療するか測定する。
【0694】
雄の野生型マウスにおけるオキサリプラチン(40または5mg/kg)の単回IP投与に関連する熱感度をコールドプレートテストによって評価する。オキサリプラチンを与える120及び24時間前に、−4、4、または30℃の温度に5分間曝露した場合の足を上げる及び舐める回数を各マウスについて取得し、ベースラインイベントの回数を測定する。オキサリプラチンの投与の24または48時間後に同じ温度に曝露した場合の、ベースライン値と比較した足を上げるまたは足を舐める回数の変化率としてデータを記録する。フォンフレイヘア試験によって機械的アロディニアを測定する。メッシュプラットフォーム上及び100×60mm円筒管中でマウスを馴化させておいた後、剛性フォンフレイヘアフィラメント(IITC Life Science)が後肢の足引っ込めを誘発するのに必要な力を、オキサリプラチンを与える120及び24時間前に各マウスについて評価してベースラインイベントを測定する。各マウスで試験を繰り返して左足から右足へと交互に行う間に5分間の間隔をあけて、各後足について3回足引っ込めを評価する。オキサリプラチンの投与の前及び後の足引っ込めを引き起こすのに必要な力(グラム)の変化率としてもデータを記録する。次の実験では、オキサリプラチン(5mg/kg)の投与の前に、いくつかの投与量でのブフロメジルのIV注入を行う。あるいは、ブフロメジルを経口投与することもできる。他の実験において、予防特性が観察され得るように、実際にブフロメジルをオキサリプラチンの投与の24時間前に投与する。
【0695】
実施例8
以下の実施例は、Oct1/2(−/−)マウスにおけるオキサリプラチンの神経毒性を予防または治療するためのブフロメジルの使用に関する。
【0696】
実施例7に上記した材料及び方法を用いて、野生型及びOct1/2(−/−)マウスの両方のマウスのオキサリプラチン誘発性末梢神経障害モデルにおいて、ブフロメジルが神経毒性を予防または治療するかどうかを測定するが、その完全な方法論は[18]に記載されている。
【0697】
雄の野生型マウス及び同齢の雄のOct1/2(−/−)マウスにおけるオキサリプラチン(40または5mg/kg)の単回IP投与に関連する熱感度をコールドプレートテストによって評価する。オキサリプラチンを与える120及び24時間前に、−4、4、または30℃の温度に5分間曝露した場合の足を上げる及び舐める回数を各マウスについて取得し、ベースラインイベントの回数を測定する。オキサリプラチンの投与の24または48時間後に同じ温度に曝露した場合の、ベースライン値と比較した足を上げるまたは足を舐める回数の変化率としてデータを記録する。フォンフレイヘア試験によって機械的アロディニアを測定する。メッシュプラットフォーム上及び100×60mm円筒管中でマウスを馴化させておいた後、剛性フォンフレイヘアフィラメント(IITC Life Science)が後肢の足引っ込めを誘発するのに必要な力を、オキサリプラチンを与える120及び24時間前に各マウスについて評価してベースラインイベントを測定する。各マウスで試験を繰り返して左足から右足へと交互に行う間に5分間の間隔をあけて、各後足について3回足引っ込めを評価する。オキサリプラチンの投与の前及び後の足引っ込めを引き起こすのに必要な力(グラム)の変化率としてもデータを記録する。次の実験では、オキサリプラチン(5mg/kg)の投与の前に、いくつかの投与量でのブフロメジルのIV注入を行う。あるいは、ブフロメジルを経口投与することもできる。他の実験において、予防特性が観察され得るように、実際にブフロメジルをオキサリプラチンの投与の24時間前に投与する。
【0698】
実施例9
以下の実施例は、シスプラチン腎毒性に対して保護するためのブフロメジルの使用に関する。
【0699】
PBS、シスプラチン(11mg/kg)、ブフロメジル(測定しようとする投与量)+シスプラチン(11mg/kg)またはブフロメジル(5.5mg/kg)単独で雄のウィスターラットを全身的(IV)に治療した。治療の72時間後、血液を収集して血清BUN(血中尿素窒素)及び血清クレアチニン値を分析する。
【0700】
血清BUN値はシスプラチン治療で増加するが、シスプラチンと併せたブフロメジルの共投与はBUN値を低下させることが予想される。血清クレアチニン値もシスプラチン治療で顕著に増加するはずであるが、シスプラチンとのブフロメジル共投与ではクレアチニンレベルが低下するはずである。ブフロメジル治療単独では、血清クレアチニン値は対照PBS治療値と比較して顕著に変化しないはずである。
【0701】
実施例10
以下の実施例は、経鼓膜ラットモデルにおけるオキサリプラチン及びシスプラチンの両方に対して耳毒性を予防するためのブフロメジルの使用に関する。
【0702】
プラチナ薬剤は耳毒性を引き起こす。聴性脳幹反応(ABR)が、シスプラチンまたはオキサリプラチン投与の前(治療前ABR)及びシスプラチン投与の72時間後(治療後ABR)に測定されている。異なる治療条件の下で観察される聴性脳幹反応(ABR)閾値シフト(dB)の棒グラフが他者によって示されており、これは、閾値の20〜35dBのシフトによって立証されるようにシスプラチンが聴力損失を引き起こすことを示している。ブフロメジル治療によってすべての試験した周波数でこうした閾値シフトが消失し得ることが予想される。ブフロメジル単独での治療はABR閾値に影響を及ぼさないはずである。
【0703】
プラチナ薬剤の抗癌効果を損ない得る懸念を限定するために、ブフロメジルを経鼓膜投与することができる。薬物の経鼓膜投与は、聴力損失を予防するための薬物の局所適用による使用である。この薬物投与経路は、薬物が体循環中に入り、副作用をもたらすか、または薬物−薬物相互作用を引き起こす可能性を減少させる。経鼓膜経路を介した薬物送達の容易さは、外来診療で個人に容易に実施することができることを意味する。鼓膜における換気チューブの使用は、オキサリパチン(oxalipatin)での化学療法レジメンを施す前の小児におけるブフロメジルのより偶発的な投与を可能にするであろう。
【0704】
ウィスターラットで治療前ABRを行い、その後、溶媒または経鼓膜ブフロメジル(測定しようとする濃度の溶液)で前治療し、続いてシスプラチン(11mg/kg、IP)またはオキサリプラチンを30分間にわたって点滴する。72時間後に治療後ABRを行う。
【0705】
経鼓膜ブフロメジルは、溶媒で前治療した群において試験した3つの周波数すべてで、ラットモデルにおけるシスプラチン及びオキサリプラチン誘発性聴力損失を解消することが予想される。走査型電子顕微鏡写真でコルチ器の3列の外有毛細胞の形態解析を行い、実質的な外有毛細胞損傷を検出する。この損傷はブフロメジルの経鼓膜投与によって解消されるはずである。
【0706】
実施例11
以下の実施例は、骨肉腫細胞におけるシスプラチンの腎毒性の減少及びシスプラチン活性の保持の両方が、結腸癌及び肝癌由来の細胞株をはじめとする他の細胞株にも当てはまることを示す異種移植片に関する。
【0707】
材料及び方法
7週齢の雄フィッシャーラット及び雄ウィスターラットを、生理食塩水注入対照群(生理食塩水)、軽いエーテル麻酔の下、ボーラス注入(測定しようとする投与量mg/kg)及びマイクロシリンジポンプを用いた連続点滴によって頚静脈を介してブフロメジルを静脈内(IV)注入するブフロメジル単独群(ブフロメジル単独)、腫瘍を有するラットについては1.75mg/kgのシスプラチンまたは腫瘍のないラットについては7mg/kgのシスプラチンを腹腔内(IP)注入するシスプラチン単独群(シスプラチン単独)、ならびにブフロメジル注入の直前にシスプラチン注入する併用治療群(シスプラチン・ブフロメジル)の4群(1群に3〜5匹のラット)に分ける。腫瘍を有する動物及び腫瘍のない動物に対するシスプラチンの投与量は、予備実験の結果に基づいた、SOSN2骨肉腫に対する中等度の抗腫瘍効果及び顕著な腎毒性を示す投与量である。結腸癌についてはHT−29及び肝細胞癌については選択した肝癌細胞株(完全な総説についての参考文献[1]を参照)をはじめとする、様々な細胞株に効果を発揮するのにどれだけの投与量のシスプラチンが必要とされるか判定するために、同様の研究を行うことができる。
【0708】
動物は、気候及び光制御環境中で水及び餌を自由摂取として飼育する。雄フィッシャーラットの背部にSOSN2腫瘍ブロック(約10mm3)を皮下接種する。あるいは、結腸癌または肝癌の細胞株を接種する。腫瘍サイズが約300mm
3に達したら、薬物治療(シスプラチン;1.75mg/kg、IP、ブフロメジルはプロトコールに従う)を実施する。腫瘍サイズは以下のように毎日16日間測定する。
腫瘍サイズ(mm
3)=1/2×長軸×(短径)
2
【0709】
腫瘍のない雄ウィスターラットをシスプラチン(7mg/kg)及びブフロメジル(プロトコールの指示に従う)で治療し、血液サンプル(400ml)を軽麻酔下で尾静脈から毎日収集し、5日目に深いエーテル麻酔下での頚椎脱臼によってラットを屠殺する。実験の最終日に尿を24時間収集する。クレアチニン及び血中尿窒素(BUN)を本発明者らの研究所内で市販のキットを用いて測定し、他の生化学的分析も実施する。
【0710】
ブフロメジル血清濃度の測定
100マイクロリットルの血清サンプル、25mlの内部標準ラニチジン(100mg/ml)、及び100mlのNaOH(5N)を混合して、ブフロメジルを3mlの塩化メチレンで抽出し、100mlの移動相(5%アセトニトリル/0.002Mトリエチルアミン及び0.025%酢酸)に溶解して、高速液体クロマトグラフィーを用いて228nmで測定した。10%ウシ胎児血清(Sigma)及び600mg/mlカナマイシン硫酸塩(Meiji Seika Co., Tokyo, Japan)を補添したRPMI−1640培地(Sigma)中で、5%CO2の雰囲気下、37℃にて細胞を培養する。96ウェルプレート上に細胞(2.5〜5103細胞/100ml/ウェル)を播種し、24時間後、ブフロメジル(0.5、1mM)またはNAC(3mM)の存在下または不在下において様々な濃度のシスプラチンで48時間処理する。処理後に、Cell Counting Kit−8を用いて製造業者の指示に従い、ミトコンドリアデヒドロゲナーゼの活性の減少に基づいた細胞生存率を測定する。
【0711】
シスプラチンの細胞内取込み
シスプラチン取込みの測定のために、100mm培養皿中のコンフルエントに成長している細胞を、ブフロメジル(1mM)と共にまたは無しでシスプラチン(500mM)を含有する培地で2時間インキュベーションする。処理後、細胞をリン酸緩衝生理食塩水で2回素早く洗浄してから、0.5NのNaOHによって可溶化し、細胞のタンパク質含有量をDCプロテインアッセイキット(Bio−Rad Laboratories, Richmond, CA, U.S.A.)で測定する。NaOHで可溶化した細胞液を脱イオンMilli−Q水(Millipore, Billerica, MA, U.S.A.)で5倍に希釈する。プラチナ元素濃度をモデルAA−6800原子吸光分光光度計(Shimadzu Corporation, Kyoto, Japan)でフレーム原子吸光分析法によって測定する。原子化されたプラチナの吸光度を0.5nmのスリット幅で14mA及び265.9nmの波長にて測定する。5秒の読取り時間で積分した吸光度を記録する。標準曲線は0.5〜50mg/mlの範囲にわたって直線である。すべての測定を3回実施する。細胞内プラチナレベルはプラチナ(mg)/タンパク質(mg)として表す。プラチナキレートを用いた質量分析をはじめとする他の技術も同様に、プラチナ濃度を測定するために用いられ得る。
【0712】
インビボ実験
他者[14]によって記載された実験において、ラットへのIP注入(3.5mg/kg)後のシスプラチンの血清濃度から半減期が24時間という結果が得られたが、シスプラチンは腎臓に48時間蓄積した。ラットにおけるこの急速なクリアランスゆえに、IVボーラス注入及び4時間の連続点滴によって、シスプラチン注入後のブフロメジルの高い血清濃度が維持されるはずである。ブフロメジルの血清濃度は、この注入プロトコールを用いて適切なレベルに4時間維持することができる。
【0713】
初めに、このブフロメジル投与量がシスプラチンの抗腫瘍効果に影響を及ぼすかどうか調べる。典型的には、シスプラチンは腫瘍成長を顕著に阻害し、治療の16日後において、シスプラチン単独群の腫瘍塊は対照群のものの3分の1である。対照群またはシスプラチンとの併用において、ブフロメジルは腫瘍成長にほとんど影響を及ぼさないはずであると予想する。
【0714】
次に、腎毒性投与量のシスプラチン(7mg/kg、IP)を非腫瘍ラットに投与し、腎機能へのブフロメジルの効果を調べる。シスプラチンを投与した後、腎臓重量は典型的に顕著に増加し、この増加はブフロメジルの添加によって抑制されるはずであるが、ブフロメジルは単独で投与した場合には腎臓重量に影響を及ぼさないはずである。血清クレアチニン及びBUNレベルは、シスプラチン注入の3日目の後に顕著に増加するはずであり、ブフロメジル共投与はこれらのバイオマーカーの増加を顕著に阻害するはずである。結果として、ラットはシスプラチンでの治療の5日後に重篤な腎損傷を被ると予想され、ブフロメジルとの併用治療は損傷を明らかに減少させるはずである。
【0715】
組織病理において、シスプラチン治療群における尿細管の上皮細胞の壊死性及びアポトーシス性変化を分析すべきであり、損傷の程度及び範囲はブフロメジルの併用によって減少するはずである。
【0716】
実施例12
以下の実施例は、ブフロメジルの存在下または不在下でオキサリプラチンによって治療した腫瘍を有するマウスにおける神経毒性の評価に関する。ドルテグラビルまたはミコナゾールもしくは任意の他のイミダゾール誘導体でも同様の実験が行われ得る。
【0717】
マウスモデルの使用
いくつかの研究で、ラットモデルを用いてオキサリプラチン誘発性末梢神経毒性の神経生理学的、行動的及び病理学的特徴が調査されており(Authier N, et al. Neurotherapeutics. 2009; 6:620−629)、オキサリプラチン誘発性疼痛研究のほとんどは薬物の単回注入の後に行われてきた。ラットはオキサリプラチンの単回投与の後で著しい低温及び機械的アロディニアを発症したが、こうしたモデルは臨床診療において経験される慢性神経毒性を表すものではない(Joseph EK, Levine JD. J Pain. 2009;10:534−541)。Cavalettiら(Eur J Cancer. 2001;37:2457−2463)は、ラットにおける慢性オキサリプラチン治療が、背根神経節(DRG)ニューロンの萎縮を誘発し、末梢感覚神経伝導速度(NCV)を低下させることを実証した。さらに、慢性オキサリプラチン治療は、薬物治療が終了した後3週間持続した機械的アロディニアと共に低温及び高温過敏症を誘発した(Ling B et al.Pain. 2007;128:225−234)。オキサリプラチン誘発性神経毒性を研究するためのラットモデルの使用は非常に参考になる。しかし、ラットに腫瘍を移植することは困難であるので、オキサリプラチンの抗癌特性のほとんどの研究はマウスを用いている。したがって、オキサリプラチンの抗癌活性を評価するために用いられた同じ実験パラダイムにおける末梢神経毒性の調査に対して、ラットモデルの有効性は限定的である。
【0718】
高度神経障害マウスモデルの使用はヒトにおいて観察される病理をよりよく表している
最近、オキサリプラチン誘発性疼痛のいくつかのマウスモデルが、オキサリプラチンの急性単回投与または慢性反復投与を用いて開発された(Gauchan P et al.Neurosci Lett.2009;458:93−95)。これらの研究は、オキサリプラチン治療後の機械的及び低温アロディニアの発症を実証したが、末梢神経毒性の特性評価は限定的であった。これらの限界に対処して、オキサリプラチンのスケジュールで治療したBALB/cマウスにおいて実施した様々な研究で、慢性治療によって誘発される末梢及び中枢神経系イベントのより完全な特性評価を得ることを目的として、疼痛性神経障害の発症を誘発することができた(Renn, C.L.et al., Mol Pain, 2011, 7, 29)。
【0719】
以下の実験は、オキサリプラチンの抗腫瘍特性を維持しながら神経毒性を減少させることを目的に、腫瘍を有するマウスにおいて、ブフロメジルまたは他のOCT−2阻害剤の存在下及び不在下の両方で行うことができる。
【0720】
全身外観及び体重の変化
この研究で用いるオキサリプラチン誘発性疼痛性末梢神経障害のモデルを作製するために、マウスにオキサリプラチンの尾静脈注入(3.5mg/kg)を週2回(3または4日隔てて)4週間行う。対照群は薬物または溶媒注入を受けない未治療マウスである。この研究の期間は21日、好ましくは30日であり、この間、マウスはオキサリプラチンを受けた後で継続的にアロディニアを発症する。オキサリプラチンは一般にマウスにおいて忍容性が良好である。薬物投与日にマウスの体重を測定するが、研究の経過とともに、オキサリプラチン治療マウスは、未治療マウスと比較して体重が顕著に減少し、研究の完了までに約15%に達することになるであろう。
【0721】
神経病理学的解析
最後のオキサリプラチン投与の4日後に、神経伝導速度(NCV)及び活動電位振幅を尾及び指神経において測定する。慢性オキサリプラチン治療は、未治療群と比較して、活動電位振幅の顕著な低下を伴って尾NCVの顕著な低下を引き起こすはずである。
【0722】
DRG及び坐骨神経の形態解析
オキサリプラチン後における末梢ニューロンの機能の異常がDRG細胞体及び坐骨神経の軸索の構造変化を伴うかどうか判定するために、4週目における最後の薬物投与の2日後に、未治療及びオキサリプラチン治療マウス由来のL4−L5 DRG及び坐骨神経の薄片を光学顕微鏡レベル及び電子顕微鏡レベルで検査する。オキサリプラチン治療動物と未治療動物との間の差に特に注目する。光学顕微鏡による坐骨神経の検査によって、未治療動物と比較したオキサリプラチン治療マウスの坐骨神経における有髄線維の状態がはっきりと観察されるであろう。
【0723】
ラットモデルにおけるこれまでの研究では、プラチナ誘導化合物がDRGニューロン細胞体の縮小を誘発することが実証された(Carozzi VA et al, Exp Neurol. 2010;226:301−309)。オキサリプラチンはマウスモデルにおいてDRGニューロンの核小体に変化をもたらすことが発見されたので、ラットにおいて見られたのと同様の細胞体縮小の証拠のために、形態計測解析を実施して、オキサリプラチン治療(3.5mg/kg/iv、週2回、4週間)及び未治療対照マウス由来のDRGニューロンの細胞体を調べた。形態計測解析によって、オキサリプラチン治療マウス由来のDRGニューロンは、未治療マウス(黒色の棒)由来のDRGニューロンと比較して、核では違うが細胞体及び核小体の面積(mm2)が有意に減少したことが明らかとなった。したがって、オキサリプラチン毒性からの保護の可能性を実証するために、ブフロメジル、ドルテグラビル及びミコナゾールのようなOCT2阻害剤の存在下及び不在下の両方において、形態解析が推奨される。
【0724】
オキサリプラチンで治療した腫瘍を有するマウスモデルにおける抗腫瘍活性を維持しながらのブフロメジルによる神経毒性の減少
前述の実施例で示したように、ブフロメジルは、いくつかのマウスモデルにおいてオキサリプラチンによって誘発される神経毒性を明らかに減少させた。ここでの趣旨は、そのような神経毒性の減少が、結腸及び肝臓異種移植片マウスモデルの両方においてオキサリプラチンの抗腫瘍活性を損なわないことを実証することである。
【0725】
特にこの実験については4週齢の雄BALB/cヌードマウスを用いる。マウスは特殊な無病原体条件下で飼育し、餌及び水を自由摂取として供給する。動物を1週間検疫した後、HT−29のようなヒト大腸腫瘍細胞株またはHepG2(ヒト肝癌)細胞を皮下移植するが、その体積はおよそ8mm3である。
【0726】
抗腫瘍活性を評価するために、平均腫瘍体積が約150〜200mm3に達した時点でマウスを腫瘍体積に応じて群分けする(0日目)。各群は7〜9匹のマウスからなっていた。
【0727】
腫瘍直径を21日目まで週2回測定し、腫瘍体積を0.5×長さ×幅2として推定する。相対腫瘍体積(RTV)を、次の式:RTV=(測定日の腫瘍体積)/(0日目の腫瘍体積)を用いて計算する。15日目に、腫瘍成長阻害率(TGI)を、次の式:TGI=[1−(治療群の平均腫瘍体積)/(対照群の平均腫瘍体積)]×100を用いて計算する。体重変化(BWC;%)を[(15日目の体重)−(0日目の体重)]/(0日目の体重)×100(%)として計算する。RTVが4(21日目の終了時点での対照腫瘍のサイズの50%に相当する)となるまでの期間の差を示す成長遅延期間(GDP)を、これまでに報告されている手順に従って求める(Balin−Gauthier D,et al, Cancer Chemother Pharmacol 7: 709−718, 2006)。
【0728】
毒性は20%以上の体重減少または中毒死と定義する。腫瘍を有するマウスでのマウスのオキサリプラチン誘発性末梢神経障害モデルにおいて、ブフロメジルが神経毒性を予防または治療するかどうかを、実施例7及び8に上記した材料及び方法を用いて測定する。神経毒性は、この実施例の初めに記載した、DRG及びニューロンの形態解析、神経病理学的解析、体重の測定、ならびに全身外観を含む実験方法のいずれかによって測定することもできる。
【0729】
より具体的には、神経毒性は、コールドプレートテストを用いて、腫瘍を有するマウスにおけるオキサリプラチン(40または5mg/kg)の単回IP投与に関連する熱感度によって評価され得る。オキサリプラチンを与える120及び24時間前に、−4、4、または30℃の温度に5分間曝露した場合の足を上げる及び舐める回数を各マウスについて取得し、ベースラインイベントの回数を測定する。動物をオキサリプラチンの投与の24または48時間後に同じ温度に曝露した場合の、ベースライン値と比較した足を上げるまたは足を舐める回数の変化率としてデータを記録する。フォンフレイヘア試験によって機械的アロディニアを測定する。メッシュプラットフォーム上及び100×60mm円筒管中でマウスを馴化させておいた後、剛性フォンフレイヘアフィラメント(IITC Life Science)が後肢の足引っ込めを誘発するのに必要な力を、オキサリプラチンを与える120及び24時間前に各マウスについて評価してベースラインイベントを測定する。各マウスで試験を繰り返して左足から右足へと交互に行う間に5分間の間隔をあけて、各後足について3回足引っ込めを評価する。オキサリプラチンの投与の前及び後の足引っ込めを引き起こすのに必要な力(グラム)の変化率としてもデータを記録する。次の実験では、オキサリプラチン(5mg/kg)の投与の前に、いくつかの投与量でのブフロメジルのIV注入を行う。あるいは、ブフロメジルを経口投与することもできる。他の実験において、予防特性が観察され得るように、実際にブフロメジルをオキサリプラチンの投与の24時間前に投与する。神経毒性の評価は腫瘍減少の評価と並行して実施するので、オキサリプラチンを添加する前に実施する測定に加えて、24、48、72時間ならびに7、14及び21日目にそのような評価を実施することが推奨される。最初の治療の後、腫瘍体積は21日目まで継続的に週2回測定する。
【0730】
オキサリプラチンの投与は、結腸及び肝臓異種移植片モデルの両方に対して顕著な抗腫瘍活性を示すことが予想される。何匹かのマウスが神経毒性への影響とは関係なくオキサリプラチン曝露で死亡し得ることも予想される。最後に、ブフロメジルの不在下で測定した結腸及び肝臓腫瘍細胞の両方の腫瘍体積及び体重の変化を測定することによって観察されるオキサリプラチンの抗腫瘍活性は、ブフロメジルの存在下におけるオキサリプラチンの抗腫瘍活性と同様になるが、優先的に、上記の実施例及びこの実施例の初めで定義したような神経毒性の測定可能な減少を伴うことが予想される。
【0731】
実施例13
以下の実施例は、Balb/Cマウスにおける静脈内(IV)及び腹腔内(IP)投与を介したブフロメジル血漿濃度の測定に関する。
【0732】
実験
被験物のブフロメジルを2mg/mL(IV用)または4mg/ml(IP用)で5%グルコース製剤中に調製した。7〜8週齢の雄マウスを6日間馴化させた。3匹のマウスに静脈内注入を介して10mg/kgのブフロメジルを投与した。腹腔内注入で、3匹のマウスに20mg/kgのブフロメジルを投与し、3匹のマウスに40mg/kgのブフロメジルを投与した。血液を0.083、0.5、及び1時間の時点でヘパリンチューブ中に収集した。4℃において4000rpmでの血液の遠心分離によって血漿を得た。
【0733】
血漿サンプル分析のために、サンプルを解凍してよく混合した後、タンパク質沈降を用いて、5:95(v/v)のメタノール:アセトニトリルの有機溶液を含有する内部標準(ベラパミル)によって20μLアリコートを処理した。激しいボルテックス及び4000rpmでの冷凍遠心分離の後、各サンプルからの50μLの抽出液を70μLの0.1%ギ酸水溶液で再構成した。較正標準は、最初に70%アセトニトリルで2mg/mLブフロメジル原液を段階希釈し、その後、ブランク血漿中にその溶液を加えることによって調製した。較正曲線は血漿サンプルと同様にして求めた。ブフロメジルの検出のために、LC−MS/MSによってポジティブエレクトロスプレーイオン化を用いて多重反応モニタリング(MRM)モードの下で最終抽出液を分析した。線形回帰によってフィッティングした標準曲線を用いて、Analyst1.5.2ソフトウェア(AB Sciex)を用いてマトリックス中のアナライトを定量した。
【0734】
結果
マウス血漿中のブフロメジル濃度を測定する生物学的分析法の確立に成功した。定量下限(LLOQ)は0.5ng/mLであった。ブフロメジル血漿レベルを
図17Aに示す。結果は、各群のマウスにおける平均ブフロメジル血漿濃度がIV/IP投与の10分後で2mg/lより高いままであったことを示す。結果はさらに、IP投与の推定生物学的利用能が40〜60%であることを示唆している。
【0735】
実施例15
以下の実施例は、Balb/Cマウスにおける経口(PO)、静脈内(IV)及び腹腔内(IP)投与を介したドルテグラビル血漿濃度の測定に関する。
【0736】
実験
被験物のドルテグラビルを1mg/mLでDMSO:3%マンニトール含有50mM N−メチルグルカミン製剤(1:19v/v)中に調製した。6〜7週齢の雄マウスをCharles Riverから入手し、3〜5日間馴化させた。マウスの体重を測定し、個別に識別した(尾に印をつけた)。経口(PO)群のマウス(n=3)を一晩絶食させ、10mg/kgのドルテグラビルを強制経口投与した。第2群のマウス(n=3)に4mg/kgのドルテグラビルを静脈内(IV)注入した。第3群のマウス(n=3)に4mg/kgのドルテグラビルを腹腔内(IP)注入した。投与の10分、0.5時間、1時間後、約120μLの血液サンプルを眼窩静脈叢採血によってIV及びIPマウスから収集した。投与の1時間、2時間、4時間後、約120μLの血液サンプルを眼窩静脈叢採血によってPOマウスから収集した。4000rpm、4℃、10分間の血液サンプルの遠心分離によって血漿を採取し、ドライアイス中で保存した。
【0737】
分析のために、必要に応じて血漿サンプルを較正範囲に希釈した。5:95(v/v)のメタノール:アセトニトリルの有機溶液を含有する100μLの内部標準(ベラパミル)で各血漿サンプルの20μLのアリコートを処理した。激しいボルテックス及び4000rpmでの冷凍遠心分離の後、各サンプルからの50μLの上清を注入プレートに移し、70μLの0.1%ギ酸水溶液で再構成した。較正標準は、最初に70%アセトニトリルで2mg/mLドルテグラビル原液を段階希釈し、その後、ブランク血漿中にその溶液を加えることによって調製した。較正曲線は未知サンプルと同様にして求めた。ドルテグラビルの検出のために、LC−MS/MSによってポジティブエレクトロスプレーイオン化を用いて多重反応モニタリング(MRM)モードの下で最終抽出液を分析した。線形回帰によってフィッティングした標準曲線を用いて、Analyst1.6.2ソフトウェア(AB Sciex)を用いてマトリックス中のアナライトを定量した。
【0738】
結果
ドルテグラビル血漿レベルを
図17Bに示す。結果は、投与経路がマウスにおけるドルテグラビル血漿曝露量に顕著に影響を及ぼしたことを実証している。
【0739】
実施例14
以下の実施例は、オキサリプラチンでの慢性治療を施したBalb/cマウスにおける、IV及びIP注入を介して投与したブフロメジルの神経保護作用の評価に関する。
【0740】
概要
研究の最初に、48匹の雄Balb/cマウスを4つの実験群にランダム化した:1つの群は未治療のままとし(CTRL、n=12)、1つの群はブフロメジルで治療し(BFMD、n=12)、1つの群はオキサリプラチンで治療し(OXA、n=12)、1つの群はオキサリプラチン及びブフロメジルで併用治療した(OXA+BFMD、n=12)。
【0741】
ベースライン(薬物治療前)及び治療の最後に、尾神経伝導検査(NCS)、行動試験(ダイナミック及びコールドプレート)、組織病理検査を実施した。治療の最後に血清サンプルを収集した。
【0742】
この研究で、DRG神経損傷(
図19〜20)、坐骨神経損傷(
図21)、機械的アロディニア(
図22)、低温アロディニア(
図23)、ならびに尾神経活動電位(
図24)及び神経伝導速度(
図25)の減少によって立証されるように、オキサリプラチンで繰り返し治療したマウスの群において、オキサリプラチンが末梢神経障害を誘発したことが示された。ブフロメジルは、OXAのみの群と比較してOXA+BFMD群におけるOXAIPNを減少させるのに有効であった。特に、DRG神経の形態検査及び形態計測評価は、BFMDがOXAIPNの特徴であるOXA誘発性DRGニューロン損傷をほぼ完全に予防したことを示していた。行動試験及びNCS試験もブフロメジルがOXAIPNを減少させるのに有効であることを実証していた。
【0743】
ブフロメジル及びオキサリプラチンの血漿レベル分析によって、ブフロメジルはOCT2媒介オキサリプラチン輸送を有意に阻害すると予想された有効レベルであり、オキサリプラチン血漿レベルはブフロメジルによる影響を受けなかったことが確認された。これらの結果はすべて、この研究においてブフロメジルが、少なくともDRGにおける神経損傷を最小限にすることによって、DRGにおけるOCT2媒介オキサリプラチン蓄積を解消し、ひいては、OXAIPNの急性(低温アロディニア)ならびに慢性(機械的アロディニア及びNCS)形態の両方を緩和するのに有効であり得ることを示唆していた。
【0744】
研究目的
ブフロメジルは本発明者らによってOCT2媒介OXA輸送の強力な特異的阻害剤として発見された(実施例1);そのため、この研究の目的は、確立されたOXAIPNモデル(Renn CL., Mol Pain, 2011, 7, 29)において、ブフロメジルによるOCT2媒介OXA輸送の阻害がOXA誘発性神経障害の重症度を減少させることができるかどうか検証することであった。
【0745】
材料及び方法
動物は入荷直後に身体検査(健康診断)を行った。
【0746】
動物の世話及び飼育は、国内の(D.L. n. 26/2014)及び国際間の(EEC Council Directive 86/609, OJ L 358, 1, Dec.12, 1987; Guide for the Care and Use of Laboratory Animals, U.S. National Research Council, 1996)法律及び政策に従う施設のガイドラインに準拠した。
【0747】
研究デザイン
研究デザインを
図18に示す。
【表5】
【0748】
OXAは尾静脈を介して(iv)投与した。腹腔内ブフロメジル(ip)はOXA及びBFMDの静脈内(iv)共投与の15分前に注入した。
【0749】
投与量選択の正当化
ブフロメジルの投与量及び投与経路は、実施例13から得られたデータに基づいて、オキサリプラチン投与の間に1.72mg/lを超える目標ブフロメジアル(buflomedial)血漿濃度を達成するように決定した。そのような濃度では、ブフロメジルは実施例1からのインビトロデータに基づくと>90%のOCT2阻害を達成すると推定される。オキサリプラチンの投与量はこれまでの実験及び文献データ(Renn CL., Mol Pain, 2011, 7, 29)に基づいて選択した。
【表6-1】
【表6-2】
【0750】
試験方法
神経伝導速度
筋電図検査装置(Myto2 ABN Neuro, Firenze, Italy)を用いて尾及び指神経で神経伝導速度(NCV)を評価することによって、薬物の慢性投与後における末梢神経障害の発症を評価した。尾NCVは、2つの記録針電極を尾根部に、2つの刺激針電極を記録点の3.5cm遠位に配置することによって測定した。同様に、指NCVは、記録電極を距骨の近くに、そして、刺激電極を指神経に近い第4趾の近くに配置することによって測定した。刺激の強度、継続時間及び周波数は、最適の結果が得られるように設定した。すべての神経生理学的測定は、バイタルサインを継続的に監視しながら、手順全体にわたって温度制御室(22+/−2℃)において標準条件下で、かつ、動物にイソフルラン麻酔を施して実施した。
【0751】
行動試験:ダイナミックプランターエステシオメータテスト
ダイナミックプランターエステシオメータテストを用いて、機械的疼痛の知覚における変化及び薬物治療によるその変遷を測定した。試験を実施する3日前にマウスを装置に慣れさせておき、1時間の馴化期間の後、試験を実施した。一次関数的に増加する機械的力を発生させるダイナミックエステシオメータテスト(モデル37450; Ugo Basile Biological Instruments, Comerio, Italy)を用いて、機械的痛覚閾値を評価した。各時点で、馴化期間後に、サーボ制御機械的刺激(先が尖った金属フィラメント、0.5mm直径)を後足の足底表面に当て、漸増する断続的な圧力を15秒のうちに15gまで達するように加えた。明らかな自発的に後足を引っ込める反応を誘発する圧力が自動的に記録され、機械的痛覚閾値指数を表すものとみなした。機械的閾値は常に2分ごとにそれぞれの側を交互に3回評価して平均値を求めた。結果は動物が耐えた最大圧力(グラムで表される)を表す。30秒の上限カットオフがあり、その後では機械的刺激は自動的に停止された。
【0752】
行動試験:コールドプレートテスト
コールドプレートテストを用いて、低温関連疼痛の知覚における変化及び薬物治療によるその変遷を測定した。コールドプレートテストは、プレキシグラスシリンダー及び温度を調節可能なサーモスタットプレートで構成された装置(35100−ホット/コールドプレート、Ugo Basile instruments)を用いて実施した。移動及び歩行が自由な+4℃に設定したプレート上にマウスを載せた。2人の盲検化した実験者が同時に、5分間の試験中の痛みのサイン(例えば、跳ぶ、舐める、など)の数を測定する。
【0753】
DRG及び坐骨神経の神経病理学的解析
調査者はこれらの解析の神経及びDRG条件に対して盲検化されていた。最後のオキサリプラチン投与の4日後に各群から3匹の動物を屠殺した。光学及び電子顕微鏡解析のために、左坐骨神経及びL4−L5 DRGを採取して以前に報告したプロトコールに従って処理し、樹脂包埋して薄切した。光学顕微鏡解析では、1μm準薄片をトルイジンブルーで染色し、Nikon Eclipse E200光学顕微鏡(Nikon, Firenze, Italy)を用いて検査した。電子顕微鏡解析では、酢酸ウラニル及びクエン酸鉛で対比染色した超薄片(80nm)をPhilips CM 10透過型電子顕微鏡で検査した(Philips, Eindhoven, Netherlands)。
【0754】
DRGニューロンの形態計測解析
調査者はこれらの実験における組織の実験条件に対して盲検化されていた。トルイジンブルーで染色した1ミクロン厚の準薄片を対照(n=3)及びオキサリプラチン治療マウス(n=3)由来のDRGの形態計測検査に用いた。(Renn et al. Molecular Pain 2011, 7:29)。同じ細胞体の重複を避けるために、50μmの間隔をあけた切片の薄切面に核小体が含まれていた細胞のみを考慮し、コンピュータ支援画像解析器(ImageJ NIH)で解析して、マウス1匹につき少なくとも300DRGニューロンの細胞体及び核小体のサイズを測定した。
【0755】
坐骨神経組織像の解析:G比の測定
行動解析及び電気生理学的解析の完了後、動物を屠殺し、坐骨神経を解剖して固定し、ミエリンを染色して準薄片に切断した。光学顕微鏡検査を実施して神経全体の画像を取り込み、そして、軸索径及びミエリン厚20を評価するために、この画像で半自動ソフトウェアベースの神経形態計測を行った。
【0756】
統計学的評価
体重、NCV、感覚電位振幅及び行動試験の差は、分散分析(ANOVA)及びテューキー・クレーマー事後検定(有意水準はp<0.05に設定)を用いて統計学的に評価した。
【0757】
データ取得
すべての調査のデータは、可能な場合は常に、試験施設/現場の目的に向けて専用に設計されたソフトウェアパッケージを用いてオンラインで記録した。オンライン記録が不可能であった場合には手書きの生データシートを用いた。データは後で手作業によりコンピュータに入力しており、生データシートは保管してある。
【0758】
結果
死亡
最初の投与の後に2匹(BFMD及びOXA+BFMD群)が死亡し、最後の投与の後に1匹(OXA+BFMD群)が死亡した。
【0759】
臨床所見
試験化合物の投与は忍容性が良好であった。
【0760】
体重
体重は研究を通して変化した。治療中、すべての治療群は未治療動物と比較した場合に体重に有意差を示さなかった。
【0761】
形態計測及び組織病理学的解析
形態計測解析によって、オキサリプラチン治療マウス(OXA、濃灰色)由来のDRGニューロンは、未治療マウス(CTRL、淡灰色の棒)由来のDRGニューロンと比較して、細胞体(
図19A)及び核小体(
図19B)の面積(μm
2)が有意に減少したことが明らかとなった。さらに、BFMDの存在は細胞体及び核小体の両方についてDRGを明らかに保護しており、OXAでの4週間の治療の後でCTRL群との差を示さなかった(OXA+BFMD、黒色の棒)。
【0762】
4週目における最後の薬物投与の2日後に、未治療マウス、BFMD治療有りまたは無しのオキサリプラチン治療マウス由来のL4−L5 DRG及び坐骨神経の薄片を光学顕微鏡レベル及び電子顕微鏡レベルで検査した(
図20)。(
図20:OXA)にはっきりと示されるように、オキサリプラチン後における末梢ニューロンの機能の異常はDRG細胞体の構造変化を伴っていた。光学顕微鏡検査によって、オキサリプラチン治療マウス由来のDRGニューロンは、未治療DRGニューロンと比較して、核小体が複数あり、偏心性核小体を有する細胞体の発生率が高いことが明らかとなった。すべての実験群において、ニューロン及び衛星細胞の細胞質は正常であるように見えた。OXAの存在下または不在下のBFMD群は明らかに対照と同様に見えるので、OXAでの治療中のBFMDの保護特性がさらに立証される。
【0763】
つまり、OXAでの治療中のBFMDの存在は、細胞形態計測及び組織病理検査の両方で観察されたようにDRGを明らかに保護する。
【0764】
坐骨神経の神経病理学的解析
神経細胞髄鞘形成の変化を評価するために、本発明者らは神経線維のg比を計算した(g比は、軸索の直径と有髄線維の外径との間の数値的比率で表示され、したがって、プラチナ神経毒性に関連する坐骨神経の髄鞘形成不全(Boehmerle, W., et al. Sci. Rep. 4, 6370)はg比の増加を引き起こす)。
図21に示すように、軽度の髄鞘形成不全は、G比の小さいが統計的には有意な増加として現れ、CTRLと比較してOXA群において明らかであった。BFMDでの治療はそのような損傷を最小限にしており、OXA群と比較したOXA+BFMD群のG比の低下として示された。このデータにより、OXAに起因する神経損傷に対するBFMDの保護作用がさらに確証された。
【0765】
ダイナミックエステシオメータテスト
ベースライン及び研究の終了時でのダイナミックエステシオメータテストの結果(
図22)を
図Oで報告する。治療の終了時では、OXA単独で治療した群のみ機械的アロディニアの発症を示し、CTRL、BFMD及びOXA+BFMDと比較して引っ込めまでの潜時が減少した(p<0.001)。
【0766】
コールドプレートテスト
ベースライン、3回目の注入後及び研究の終了時(8回の注入)でのコールドプレートテストの結果を
図23で報告する。3回目の注入後、OXA単独で治療した群のみが、CTRL及びすべての治療群と比較して痛みのサインの有意な増加を示した(p<0.001)。治療の終了時には、OXA単独で治療した群またはBFMDを共投与した群の両方が、CTRL及びBFMDと比較して痛みのサインの有意な増加を示した(p<0.001)。併用治療群は、OXA単独と比較して痛みのサインの有意な減少を示した(p<0.05)。
【0767】
神経生理学的結果
オキサリプラチンの投与は、対照マウスと比較して尾神経伝導速度の有意な低下を誘発し、OXA+BFMDで治療した群は、CTRL及びBFMD群と比較して低下を示したが、OXA単独と比較した場合には小さいが統計的には有意な増加を示した(
図24)。OXA群のみ尾振幅の有意な減少を示したが(CTRLと比較してp<0.01)(
図25)、CTRL、BFMD及びOXA+BFMD群の間では統計的に有意な差はなかった。
【0768】
血漿レベル
OXA及びBFMDの両方の血漿レベルを研究の終了時に測定した。BFMDの血漿レベルは一貫して期待されるレベル(1.72mg/l)よりも高かった(
図26A)。
図26Aに示すように、インビボにおいてBFMDとOXAとの間で薬物動態学的相互作用は観察されず、そのため、BFMD及びOXAの存在下でのBFMDの両方のレベルは顕著なほどに同等である。さらに、OXAの血漿レベルはBFMDの存在に影響されないように思われる(
図26B)。
【0769】
実施例16
以下の実施例は、オキサリプラチンの単回投与によって引き起こされる急性末梢神経障害に対するドルテグラビル(DTG)及びクロルフェネシン(CTC)の効果の評価及び比較に関する。
【0770】
目的
この研究の目的は、オキサリプラチン(OXA)での急性治療を施したBalb/cマウスにおけるドルテグラビル及びクロルフェネシンカルバメートの効果を評価することである。ドルテグラビル及びクロルフェネシンは両方とも公知のOCT2阻害剤である。しかし、本発明者らの実験において、ドルテグラビルは選択的OCT2阻害剤であるが、一方で、クロルフェネシンは、非プラチナ化合物ASP+のOCT2媒介輸送の非常に強力な阻害剤と報告されているにもかかわらず、OCT2媒介オキサリプラチン輸送を阻害しないことをすでに立証した(実施例1)。実施例15からの知見に基づいて、ドルテグラビルはDRGにおけるオキサリプラチン取込みを遮断するはずであるが、クルロフェネシン(Chrlophenesin)はしないはずであると予想される。したがって、急性的に誘発された末梢神経障害において、ドルテグラビル及びクロルフェネシス(Chlorphenesis)で雄Balb/cマウスの保護がどの程度異なり得るのか観察することが本発明者らの目的である。
【0771】
研究デザイン
研究の最初に、30匹の雄Balb/cマウスを6つの実験群にランダム化した(
図27):1つの群は未治療のままとし(CTRL、n=5)、1つの群はオキサリプラチンiv3.5mg/kgで治療し(OXA、n=5)、1つの群はドルテグラビル4mg/kg ipで治療し(DTG、n=5)、1つの群はクロルフェネシン4mg/kg ipで治療し(CPC、n=5)、1つの群はオキサリプラチン3.5mg/kg iv及びOXA投与の60分前のip投与によるドルテグラビルで併用治療し(OXA+BFMD、n=12)、最後の群はクロルフェネシン4mg/kg ip、オキサリプラチン3.5mg/kg及びOXA投与の60分前のip投与によるドルテグラビルで治療した(OXA+CPC)。
【0772】
この研究に用いたドルテグラビルの投与量及び投与経路は、実施例14のPK研究に基づいて、DTG血漿レベルがOCT2を顕著に(>90%)遮断するのに十分となるように決定した。
【0773】
ベースライン及び治療の終了時に、行動試験(ダイナミック及びコールドプレート)ならびに血清収集を実施した。行動試験はOXA単独で治療した動物におけるアロディニアの発症を立証していた。
【0774】
薬物投与量及び製剤
オキサリプラチン(OXA)、3.5mg/kg
a、静脈内、グルコセート5%中に溶解
【0775】
ドルテグラビ(Dolutegravi)(DTG)、4mg/kg
b、腹腔内、50mMのN−メチルグルカミンの3%マンニトール水溶液で希釈したDMSO溶液(1/19v/v)として製剤化
【0776】
クロルフェネシンカルバメート(CPC)、4mg/kg
c、静脈内、グルコセート5%中に溶解
【0777】
薬物治療
OXA溶媒、OXA、CPC、DTG、DTG+OXA及びCPC+OXAを1回投与した。OXA及びDTGを共投与した群では、OXAの投与の1時間前にDTGを腹腔内注入した。OXA及びCPCを共投与した群では、CPCをOXAと静脈内共投与した。実施例15に記載した方法を用いて、機械的アロディニア及び冷知覚閾値(ダイナミックテスト及びコールドプレートテスト)をそれぞれ治療の24及び48時間後に実施した。
【0778】
血漿サンプル収集
オキサリプラチンのiv投与の15分後、各群から薬物動態解析のために血清サンプルを収集した。
【0779】
結果
図28Aは、3.5mg/kgのオキサリプラチンの単回注入が、CTRL群、ならびにDTG単独及びOXA+DTGと比較して、OXA群において機械的疼痛閾値(MPT)の有意な減少によって立証される機械的アロディニアを誘発したことを示す。CTRL、DRG及びOXA+DTG群の間では統計的に有意な差はなく、DTGがオキサリプラチンによって急性的に誘発される機械的過敏症のほぼ完全な軽減に有効であったことを示唆している。対照的に、
図28Bに示すように、CPCはそのような効果を有しないことが示されたが、これは、DRGにおけるOCT2媒介プラチナ取込みに対して保護しない化合物で予想される結果であった。
【0780】
同様に、コールドプレートアッセイ結果は、OXAに追加されたDTG(
図29)が低温アロディニアから動物を保護することをはっきりと示す。
【0781】
これらの結果は、DTGが予想通り、両タイプのアロディニアに対して保護作用を有しており、そのため、急性及び慢性両方のCIPN、より具体的にはOXA−IPNの副作用を最小限にするために用いることができたことをはっきりと示す。
【0782】
実施例16
以下の実施例は、ブフロメジルの経口投与有り及び無しとした、8サイクルのオキサリプラチンで治療したマウスにおけるOXAIPNと相関があるオキサリプラチン蓄積に関する。
【0783】
研究デザイン
この研究のデザインは、ブフロメジルをオキサリプラチン投与の2時間前に強制経口投与(PO)、80mg/kgで投与したことを除いて、実施例15に記載したものと同じであった。
【0784】
8サイクルの治療の終了時に、コールドプレートテスト、ダイナミックテスト及びNCSテストをすべてのマウスで行った。以下の方法を用いて、OXA及びOXA+BFMD群それぞれの3匹のマウスのDRG、坐骨神経及び腎臓におけるプラチナ含有量を測定した。
【0785】
プラチナ蓄積測定
最後の薬物投与の24時間後に屠殺した3匹/群から収集した凍結坐骨神経、DRG、腎臓、及び血漿検体で組織全プラチナ濃度を測定した。各組織について、対照標準組織での較正を作成した。すべての凍結試験サンプル及び標準試料を消化プロセスのために特殊なHNO
3:HCl溶液(1:3)で処理した。消化後に得られたサンプルを「原子吸光」(Analyst 600 Perkin Elmer, Monza, Italy)によって分析し、プラチナ組織濃度を適宜計算した。
【0786】
結果
実施例15で提示した結果と同様に、80mg/kgの経口投与されたブフロメジルは、行動試験(機械的疼痛閾値及びコールドプレートテスト)(
図30)ならびに神経伝導速度測定(
図31)の両方に基づくと、OXAIPNに対する保護作用を示した。さらに、ブフロメジル治療の結果、DRGにおけるオキサリプラチン蓄積が有意に減少したが(
図32A)、OCT2を高いレベルで発現していない可能性のある坐骨神経ではそのような減少は見られなかった。この結果は、ブフロメジルが、OCT2を介したオキサリプラチン蓄積を減少させることによってオキサリプラチン誘発性DRG損傷を保護し得ることをさらに裏付けている。興味深いことに、ブフロメジルは腎臓におけるオキサリプラチン蓄積も減少させており、この研究において、ブフロメジルが腎臓のOCT2を遮断することができたことを示唆している。この結果は、前述の実施例で示したものと併せて、ブフロメジル及び他の選択的OCT2阻害剤、例えばドルテグラビルなどが、腎臓におけるシスプラチン蓄積を減少させることによって、シスプラチン誘発性腎毒性に対して保護する役割を有する可能性が非常に高いことをさらに示唆している。
参考文献:
1. Sprowl JA, Ciarimboli G, Lancaster CS et al, Proc Natl Acad Sci U S A. 2013;110(27):11199−204
2. Kido Y, Matsson P, Giacomini KM. J Med Chem 2011;54(13):4548−58
3. Belzer M, Morales M, Jagadish B et al. J Pharmacol Exp Ther 2013;346(2):300−10
4. Guidance for Industry Drug Interaction Studies−Study Design, Data Analysis, Implications for Dosing, and Labeling Recommendations] www.fda.gov/downloads/drugs/guidancecomplianceregulatoryinformation/guidances/ucm292362.pdfで入手可能
5. Zhang Y, Warren MS, Zhang X et al. Drug Metab Dispos. 2015;43(4):485−9.
6. H. Ehrsson, et. al, Medical Oncology, vol. 19, no. 4, 261−265, 2002
7. Sung JP, Grendahl JG, Levine HB, West J Med 126:5−13, Jan 1977
8. Mikamo, H., et. al., International Journal of Antimicrobial Agents 9 (1998) 207−211
9. Molinaro, M., et. al., ]Journal of Clinical Pharmacy and Therapeutics (1994) 19, 111−115
10. Hidalgo, M., Bloedow, D., Seminars in Oncology, Vol 30, No 3, Suppl 7 (June), 2003: pp 25−33
11. Heise et al. BMC Cancer 2012, 12:109
12. Yonesawa A, InuiK−I, Biochem Pharmacology (2011) 81; 563−568.
13. Ta et al., Mol Pain (2009) Feb 26, 5−9.
14. Katsuda et al., Biol Pharm Bull (2010) 33, 1867−71
15. Min et. al., ANTIMICROBIAL AGENTS AND CHEMOTHERAPY, Jan. 2010, p. 254−258
16. K.M. Hargreaves et al Pain 32: 77−88, 1988.
17. Jahic, M., Baik, J., et. al., 13
th European ISSX meeting, Glasgow, 2015, P164.
18. Ta et al. Mol Pain (2009) Feb 26, 5−9.
19. Carozzi, V.A., et al., Neurophysiological and neuropathological characterization of new murine models of chemotherapy−induced chronic peripheral neuropathies. Exp Neurol, 2010. 226(2): p. 301−9.
20. Cavaletti G. Chemotherapy−induced peripheral neurotoxicity (CIPN): what we need and what we know. J Peripher Nerv Syst. 2014 Jun;19(2):66−76.
22. Renn CL, Carozzi VA, Rhee P, Gallop D, Dorsey SG, Cavaletti G. Multimodal assessment of painful peripheral neuropathy induced by chronic oxaliplatin−based chemotherapy in mice. Mol Pain. 2011 Apr 26;7:29
追加参考文献
Griffith, K.A., et al. Support Care Cancer. 2014 May; 22(5): 1161−1169
Jensen, T.S. Lancet Neural. 2014; 13: 924−35
Argyriou, A.A., et al. Critical Reviews in Oncology/Hematology. 82 (2012) 51−77
Boehmerle, W., et al. Sci. Rep. 4, 6370
Avan, A., et al. The Oncologist. 2015; 20: 411−432
Argyriou, A.A., Toxics. 2015, 3, 187−197
Zhang J., et al. British Journal of Clinical Pharmacology. 2015; 80:3, 502−514
Bourguinon, L., et al. Fundamental & Clinical Pharmacology. 26 (2012) 279−285
Gunder−Remy, U., et al. European Journal of Clinical Pharmacology (1981) 20: 459−463
Velasco, R., et al. J Neurol Neurosurg Psychiatry 2014; 85: 392−398
Yao, X., et al. The American Journal of the Medical Sciences. 2007; 334(2): 115−124
Miller, R.P., et al. Toxins 2010, 2, 2490−2518
Karasawa, T., et al. Toxicology Letters 237 (2015) 219−227
Sada, H., et al. Journal of Pharmacological Sciences 118, 547−551 (2012)
Seretny, M., et al. PAIN 115 (2014) 2461−2470
Kawashiri, T., et al. European Journal of Pain 15 (2011) 344−350
Cavaletti, G., et al. Annals of Oncology 24: 454−462, 2013
Wolf, S.L., et al. Support Care Cancer. 2012 March; 20(3): 625−632
Langer, Thorsten., et al. Trends in Pharmacological Sciences August 2013, Vol.34, No. 8
Barbas, K., et al. Veterinary and Comparative Oncology, 6, 1, 1−18
Gauchan, P., et al. Bio. Pharm. Bull. 32 (4) 732−734 (2009)
Ushio, S., et al. European Journal of Cancer 48 (2012) 1407−1413
Authier, N., et al. Neurotherapeutics, Vol. 6, No. 4, 2009
Han, Y., et al. Frontiers in Pharmacology. 18, December 2013; Vol. 4; 156
Saif, M., et al. Therapeutics and Clinical Risk Management 2005: 1(4) 249−258
Miltenburg, N.C., et al. Cancer Treatment Reviews. 40 (2014) 872−882
Cavaletti, G., et al. European Journal of Cancer 46 (2010) 479−494
Karasawa, K., Steyger, P., Toxicology Letters 237 (2015) 219−227
Holmes, J., et. al., Toxicological Sciences 46, 342−351 (1998)
Hershman, D. et. al.,, and American Society of Clinical Oncology (ASCO), J of Clinical Oncology, v32:18 (2014) 1941−1970,
Wolfgang, B., et. al, Scientific Reports 4:6370 1−9 (2014)
Argyriou, A., et. al., Cancer January 2013, 438−444
Albers, JW, et. al., Cochrane Database Syst Rev (2) 2011 Feb 16, CD005228. doi: 10.1002/14651858.CD005228.pub3
Kautio AL, et. al., .Anticancer Res 29:2601−2606 (2009)
Kautio AL, et. al., J Pain Symptom Manage 35:31−39 (2008)
Kottschade et al. Support Care Cancer. 2011 Nov;19(11):1769−77
Pace A, , et. al., J Clin Oncol 21:927−931 (2003)
Werling, L., Experimental neurology (2007) 207:2 pg:248 −257
Sprowl, JA., et. al., Proc Natl Acad Sci U S A. 2013 Jul 2;110(27):11199−204
Hellberg et al., Laryngoscope 125: E320−325 (2015)
Burger H., Drug Resist Updat. 2011 Feb;14(1):22−34
Harrach, S., Ciarimboli, G., Front. Pharmacol., v6:86 1−7 (2015)
Tashima, J Carcinog Mutagen 2015, 6:4
Li and Shu Molecular and Cellular Therapies 2014, 2:15
Nakanishi, T.,CANCER GENOMICS & PROTEOMICS 4: 241−254 (2007)