特許第6851650号(P6851650)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6851650ゼラチン系またはペクチン系抗微生物性表面コーティング材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6851650
(24)【登録日】2021年3月12日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】ゼラチン系またはペクチン系抗微生物性表面コーティング材料
(51)【国際特許分類】
   C09D 189/00 20060101AFI20210322BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20210322BHJP
   A01N 59/14 20060101ALI20210322BHJP
   C09D 5/14 20060101ALI20210322BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20210322BHJP
【FI】
   C09D189/00
   A01P3/00
   A01N59/14
   C09D5/14
   C09D7/61
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2019-506384(P2019-506384)
(86)(22)【出願日】2017年7月14日
(65)【公表番号】特表2019-524949(P2019-524949A)
(43)【公表日】2019年9月5日
(86)【国際出願番号】TR2017050321
(87)【国際公開番号】WO2018063118
(87)【国際公開日】20180405
【審査請求日】2019年5月10日
(31)【優先権主張番号】2016/10999
(32)【優先日】2016年8月5日
(33)【優先権主張国】TR
(73)【特許権者】
【識別番号】512081166
【氏名又は名称】イェディテペ・ウニヴェルシテシ
【氏名又は名称原語表記】YEDITEPE UNIVERSITESI
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】フィクレッティン・シャヒン
(72)【発明者】
【氏名】ゼイネプ・イイギュンドードゥ
(72)【発明者】
【氏名】オカン・デミル
(72)【発明者】
【氏名】メルヴェ・ギュレリム
(72)【発明者】
【氏名】サネム・アルグン
【審査官】 上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/016034(WO,A1)
【文献】 英国特許出願公告第00881728(GB,A)
【文献】 国際公開第2014/168595(WO,A1)
【文献】 特表2012−504445(JP,A)
【文献】 特開平08−133911(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/085434(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/038080(WO,A1)
【文献】 特表2015−515451(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
A01N
A01P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホウ酸、五ホウ酸ナトリウムまたは八ホウ酸二ナトリウムを含むことを特徴とする、ペクチン系抗微生物性表面コーティング材料であって、
前記ペクチン系抗微生物性表面コーティング材料がフィルム状であり、1070g〜2170gの平均引張強度を有し、
前記ホウ酸、五ホウ酸ナトリウムおよび八ホウ酸二ナトリウムが、SEM画像で前記ペクチン系抗微生物性表面コーティング材料において完全に分散している、前記ペクチン系抗微生物性表面コーティング材料
【請求項2】
ホウ酸、五ホウ酸ナトリウムまたは八ホウ酸二ナトリウムを含むことを特徴とする、ゼラチン系抗微生物性表面コーティング材料であって、
前記ゼラチン系抗微生物性表面コーティング材料がフィルム状であり、11375g〜17172gの平均引張強度を有し、
前記ホウ酸、五ホウ酸ナトリウムおよび八ホウ酸二ナトリウムが、SEM画像で前記ゼラチン系抗微生物性表面コーティング材料において完全に分散している、前記ゼラチン系抗微生物性表面コーティング材料
【請求項3】
5質量%〜15質量%のホウ酸を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の抗微生物性表面コーティング材料。
【請求項4】
5質量%〜15質量%の五ホウ酸ナトリウムを含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の抗微生物性表面コーティング材料。
【請求項5】
5質量%〜15質量%の八ホウ酸二ナトリウムを含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の抗微生物性表面コーティング材料。
【請求項6】
大腸菌、黄色ブドウ球菌、緑膿菌細菌に対する抗菌特性を有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の抗微生物性表面コーティング材料。
【請求項7】
カンジダ・アルビカンス酵母に対する抗カンジダ特性を有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の抗微生物性表面コーティング材料。
【請求項8】
クロコウジカビ真菌に対する抗真菌特性を有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の抗微生物性表面コーティング材料。
【請求項9】
衛生を必要とする包装産業で用いられることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の抗微生物性表面コーティング材料
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゼラチン系またはペクチン系抗微生物性表面コーティング材料に関する。
【背景技術】
【0002】
食品包装の主な目的は、食品が消費者に到達するまでの酸素、光、微生物による汚染、化学的および物理的劣化等の要因から食品を保護することである。食品包装は、食品と外部環境との間のバリアとしてはたらく。食品包装は、食品の品質および安全性を確保し、保存可能期間(shelf life)を長くし、食品の無駄を最小限に抑え、食品に添加される保存料を低減する上でも重要な役割を果たす[1]。
【0003】
品質の低下または食品の安全性の問題を引き起こす最も重要な化学反応および生化学反応は、酵素的および非酵素的褐変反応、油の加水分解、油の酸化、タンパク質の変性、オリゴ糖および多糖類の加水分解、ならびにいくつかの色素の変性である。化学反応に加えて、細菌、酵母および真菌によって引き起こされる微生物分解が、食品の品質および安全性に影響を与える別の重要な要因である。
【0004】
食品の劣化は製造段階の間に起こり得るが、輸送および保管の間に起こることもある。これにより、品質の低下および食品の安全性の問題が生じる。食品の保存可能期間は食品製造における全ての段階に関連するが、なかでも包装段階は、これらの段階のうち最も重要な段階である。食品製品の保存可能期間を決定する際には、まず第1に微生物に関する信頼性を評価し、次いで化学的および官能的品質要因を評価する。包装されているにもかかわらず外部要因の影響を受け得る製品も存在する。外部環境におけるいくつかのパラメータを制御することにより、製品の保存可能期間を長くすることができる[1、2]。
【0005】
従来の食品包装方法の例として、ガラス、紙、ボール紙、木材、アルミニウム、缶、プラスチックおよびプラスチック系包装材料を挙げることができる。プラスチックは、その様々な利点により最も好ましい種類の包装である。プラスチックは、安価かつ軽量であり、加工が容易であり、透明で且つ種々の色で製造することができ、使用目的に応じて非常に硬く又は柔軟にすることができ、低温または高温に対する耐性があり、種々のレベルのガス透過性を有し、油および溶媒に対する耐性があり、一般に不活性であるという特性を有することにより、包装材料として用いるのに広く好まれている。これらの利点に加えて、プラスチックが自然の中で何年にもわたって分解しないままであるという事実は最も重大な欠点である[3]。
【0006】
食品製造技術における革新と並行して、食品包装技術も連続的な発展を示している。なかでも、生分解性包装、アクティブ・パッケージング、スマート・パッケージングおよびナノテクノロジーを用いて製造された包装システムは、最も重要な革新的包装システムである。この種の包装システムを開発する最も重要な理由の1つは、食品の分解を遅らせることにより、日々増加している人口に食品を供給する際の食品の無駄を最小限に抑えることである[1]。
【0007】
抗微生物性アクティブ・パッケージングプロセスは新しい技術の1つであり、1以上の抗微生物性化合物を包装材料に一体化させて、保存可能期間の全体にわたって包装材料から食品製品の表面にこの化合物が放出されることにより食品を損傷から保護することを可能にするものである。抗微生物剤を放出する包装は、食品の損傷を引き起こす微生物を不活性化し、損傷を防止して食品製品の保存可能期間を長くする包装システムである。抗微生物活性を有する包装により微生物の増殖速度または生細胞の数が減少し、それにより遅滞期(lag period)が長くなる[4]。包装材料には種々の有機および無機の抗微生物剤が用いられる。食品包装に用いられる抗微生物剤は安全で且つ食品または包装の規制に従う必要がある。
【0008】
石油化学プラスチック包装の使用に起因する固形廃棄物の環境問題を解決するために、生体高分子系の新しい包装システムを開発することが求められている。都市化、食品ポーションの小型化、調理済み食品の消費量の増大、および包装材料が自然の中で一定期間の後に分解するという事実により、包装ごみに由来する環境問題の低減が可能になっている。生分解性ポリマーは、環境に優しく、自然の中で分解し且つ再生可能であるので、有望な技術であると考えられている[2、5]。
【0009】
アクティブ・パッケージングシステムは、様々な活性成分を包装材料に加えることにより、または機能性ポリマーを用いることにより、バリア機能に加えて種々の機能的特徴を包装に与えることによって得られる。アクティブ・パッケージングに対して、所望の移動特性または安定性を満たすために活性な含有量がコーティング材料に加えられる。制御された放出システムにおいて、活性な含有量は、それが移動して抗酸化特性、抗微生物特性または栄養補給特性(nutraceutical properties)を示すことができるようにポリマーマトリックスに加えられる[2、5]。
【0010】
抗微生物性包装はアクティブ・パッケージングの一種である。食品の微生物負荷および食品病原体により引き起こされ得る汚染を低減するために、抗微生物性活性剤を包装材料に直接加えることができる一方で、食品包装を完全に抗微生物性ポリマーから形成することもできる。抗微生物性アクティブ・パッケージングシステムは、微生物の増殖速度および数を低減すること並びに遅滞期を長くすることによって抗微生物活性を可能にする[6、7]。
【0011】
ゼラチンは、食品産業において種々の食品製品のテクスチャ(textural)特性およびレオロジー特性を向上させるのに用いられる添加剤である。ゼラチンは一般に、ゲル化、凝縮、フィルム形成、水結合(water binding)、増粘、テクスチャ化(texturizing)および安定化のために用いられる。冷凍食品製品において、ゼラチンは、水および糖類の結晶化を防止することによりこれらの食品製品の構造および食感の劣化を防止する。アイスクリームに用いられるゼラチンは、その水結合する特徴により水相の分離を防止し、さらに製品の濃度を増加させ、製造中の泡の形成を制御するのに用いられる。ゼラチンは、そのゲル化特性およびフィルム形成特性のためにコーティング材料としても用いられる。さらに、ゼラチンは、マイクロカプセル化用途における壁材として用いられ、アロマカプセル化(aroma encapsulation)はこの一例である。近年、ゼラチンは、食品コーティング用途においてキャリアとしても用いられている。
【0012】
ペクチンは、食品製品において、そのゲル化特性、増粘特性、乳化(emulgator)特性および安定化特性により、フルーツジュース、ジャム、ゼリー、マーマレード、フルーツキャンディおよび乳製品に広く用いられている。ペクチンは、薬品産業において下痢に対して使用されるいくつかの薬品組成物にも用いられている。
【0013】
文献で入手可能な研究の中で、Muriel−Galetらは、オレガノ精油およびシトラールを用いることにより抗微生物性EVOH(エチレンビニルアルコール)フィルムを開発し、このフィルムを、コロナ処理したPP(ポリプロピレン)フィルムの表面にコーティングした[8]。開発された材料から袋が製造され、食べられる状態のサラダ混合物の包装に用いられる。保存可能期間の間、特に初期において、製品における細菌、酵母および真菌の負荷が低減し、保存可能期間が長くなったことが見出された。
【0014】
Cerisueloらは同様に、抗微生物剤としてカルバクロールを用いてPP/EVOH/PP包装材料を開発し、プラスチック缶に入れたサケの上側フィルムとしてこの活性フィルムを使用し、カルバクロールにより魚の保存可能期間が長くなることを提示した[9]。カルバクロールは、その抗微生物特性により可食性フィルムの添加剤として用いられ、鶏肉、ハムおよびソーセージ等の種々の肉製品の保存可能期間を長くすることができる[10、11]。チモールもまた、カルバクロールと同様に高い抗微生物特性を有するので、プラスチック・フィルムおよび可食性フィルムの活性物質として用いることができる[12]。Suppakulらは、微生物に対するバジルの揮発性油の影響、ならびに食品添加物および抗微生物性包装にそれを使用する潜在的機会に関する情報を蓄積した[13]。Suppakulらは、リナロールおよびメチルカビコール(これらはバジルの油成分である)をLDPEに一体化させて、これをチーズに用いた[14]。彼らは、彼らが開発したフィルムが高い抗微生物活性を有し、チーズの官能特性を変化させないことを開示した。
【0015】
また、ペクチンフィルム材料にパパイヤ・ピューレおよびシンナムアルデヒドを加えることにより、大腸菌、サルモネラ菌、リステリア菌および黄色ブドウ球菌に対する抗菌活性が得られる[15]。さらに、銀ナノ粒子および銀ナノクレイを加えることにより大腸菌およびリステリア菌に対して[16]、オレガノ精油およびラベンダー精油を加えることにより大腸菌および黄色ブドウ球菌に対して[17]、酸化亜鉛ナノ粒子を加えることにより大腸菌、リステリア菌に対して[18]、抗菌活性が達成された。
【0016】
ホウ素化合物の抗微生物特性に関する研究が文献に存在する。Baileyら(1980年)は、彼らが行った実験によりホウ酸が腸内細菌に対して抗菌活性を有することを証明した。ホウ素を含有する抗菌剤がグラム陰性(G(−))菌に対して試験され、有効であることが観察された[19]。別の研究は、ホウ酸エステルが広域にわたる抗菌活性を有することを示した[20]。
【0017】
Reynoldら(2007年)は、2つの異なるホウ素を含む脂溶性2,4−ジアミノ−6−メチルピリミジン抗葉酸化合物が細菌の鳥型結核菌およびラクトバチルス・カゼイに対して適度なレベルの抗菌活性を有することを示した[21]。
【0018】
Qinらによる研究は、0.1%の四ホウ酸カリウムがペニシリウム・エクスパンサム(Penicillium expansium)のミセル成長を抑制する最低濃度であることを示した[22]。
【0019】
Qinら(2010年)は、彼らの他の研究において、1%の四ホウ酸カリウムが灰色カビ病を引き起こす灰色カビ病菌(またはボトリティス・シネレア)の増殖を制御し得ることを示した[23]。
【0020】
中国特許文献CN104559075には、高温耐熱性のホウ素含有鮮度保持ポリエステルフィルムで形成された包装材料が開示されている。
【0021】
カナダ特許文献CA2735531には、食品包装に用いられる有機ホウ素化合物が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】Mustafa Uecuencue、「食品包装技術(Gida Ambalajlama Teknolojisi)」、Meta Press、イズミル、2007年
【非特許文献2】S.D.F. MihindukulasuriyaおよびL.T. Tim、「食品包装におけるナノテクノロジー開発:総説(Nanotechnology Development in Food Packaging: A Review)」、Trends in Food Science & Technology、第40巻、149〜167頁、2014年
【非特許文献3】B. LuijsterburgおよびH. Goossens、「プラスチック包装廃棄物の評価:材料の起源、方法、特性(Assessment of plastic packaging waste: Material origin, methods, properties)」、Resources, Conservation and Recycling、2014年、第85巻、88〜97頁
【非特許文献4】Han, J. H.、2003年、「抗微生物性食品包装(Antimicrobial food packaging)」、Ahvenainen R.編、「新規の食品包装技術(Novel food packaging techniques)」、CRC Press、50〜70頁
【非特許文献5】Gordon L. Robertson、「食品包装の原理および実践(Food Packaging Principles and Practice)」、Taylor & Francis、2006年
【非特許文献6】P.PrasadおよびA. Kochhar、「食品産業におけるアクティブ・パッケージング:総説(Active Packaging in Food Industry: A Review)」、IOSR Journal of Environmental Science, Toxicology and Food Technology、第8巻、2319〜2402頁、2014年
【非特許文献7】L.J. Bastarrachea、D.E. Wong、M.J. Roman、Z. LinおよびJ.M. Goddard、「総説 アクティブ・パッケージング・コーティング(Review Active Packaging Coatings)」、Coatings、第5巻、771〜791頁、2015年
【非特許文献8】Muriel-Galet, V.、Cerisuelo, J.P.、Lopez-Carballo G.、Aucejo S.、Gavara R.、Hernandez-Munoz, P.、2013年、「包装されたサラダの保存可能期間を向上させるための、オレガノ精油およびシトラールを用いたEVOH被覆PPフィルムの評価(Evaluation of EVOH-coated PP films with oregano essential oil and citral to improve the shelf-life of packaged salad)」、Food Control、第30巻、137〜143頁
【非特許文献9】Cerisuelo, J. P.、Bermudez, J.M.、Aucejo S.、Catala R.、Gavara R.、Hernandez-Munoz P.、2013年、「サーモンのためのPP/EVOH/PPアクティブ・パッケージからの抗微生物剤の放出の説明およびモデル化(Describing and modeling the release of an antimicrobial agent from an active PP/EVOH/PP package for salmon)」、J. of Food Engineering、第116巻、352〜361頁
【非特許文献10】Cerisuelo, J. P.、Bermudez, J.M.、Aucejo S.、Catala R.、Gavara R.、Hernandez-Munoz P.、2013年、「サーモンのためのPP/EVOH/PPアクティブ・パッケージからの抗微生物剤の放出の説明およびモデル化(Describing and modeling the release of an antimicrobial agent from an active PP/EVOH/PP package for salmon)」、J. of Food Engineering、第116巻、352〜361頁
【非特許文献11】Ravishankar, S.、Jaroni, D.、Zhu, L.、Olsen, C.、McHugh, T.、Friedman, M.、2012年、「カルバロールおよびシンナムアルデヒドを含有するペクチン系のリンゴ、ニンジンおよびハイビスカスの可食性フィルムを用いたハムおよびボローニャソーセージにおけるリステリア菌の不活性化(Inactivation of Listeria monocytogenes on Ham and Bologna Using Pectin-Based Apple, Carrot, and Hibiscus Edible Films Containing Carvacrol and Cinnamaldehyde)」、J. Food Science、第77巻、第7号、M377〜382頁
【非特許文献12】Galotto, M.J.、Valenzuela, X.、Rodriguez, F.、Bruna, J.、Guarda, A.、2012年、「新鮮なアトランティックサーモン(Salmo Salar L.)の保存可能期間のための新規の抗微生物性アクティブ・パッケージングの有効性の評価(Evaluation of the Effectiveness of a New Antimicrobial Active Packaging for Fresh Atlantic Salmon (Salmo Salar L.) Shelf Life)」、Packag. Technol. Sci.、第25巻、363〜372頁
【非特許文献13】Suppakul, P.、Miltz, J.、Sonneveld, K.、Bigger, S. W.、2003年、「バジルの抗微生物特性および食品包装におけるその可能な用途(Antimicrobial properties of basil and its possible application in food packaging)」、Journal of Agricultural and Food Chemistry、第51巻、3197〜3207頁
【非特許文献14】Suppakul, P.、Sonneveld K.、Bigger, S. W.、Miltz, J.、2008年、「バジルの主成分を含有するポリエチレン系抗微生物性フィルムの有効性(Efficacy of polyethylene-based antimicrobial films containing principal constituents of basil)」、LWT Food Science and Technology、第41巻、779〜788頁
【非特許文献15】A.C.K. Bierhalz、M.A. da SilvaおよびT.G. Kieckbusch、「食品包装用途のためのアルギン酸塩/ペクチンフィルムからのナタマイシンの放出(Natamycin Release from Alginate/Pectin Films for Food Packaging Applications)」、Journal of Food Engineering、第110巻、18〜25頁、2012年
【非特許文献16】P.J. Espitia、R.J. Avena-Bustillos、W.X. Du, R.F. Teofilo、N.F.F SoaresおよびT.H. McHugh、「食品保存のためのアサイーおよびペクチンをベースとする可食性フィルムの最適な抗微生物性配合および物理的機械的特性(Optimal Antimicrobial Formulation and Physical-Mechanical Properties of Edible Films Based on Acai and Pectin for Food Preservation)」、Food Packaging and Shelf Life、第2巻、38〜49頁、2014年
【非特許文献17】C.G. Otoni、M.R. de Moura、F.A. Aouada、G.P. Camilloto、R.S. Cruz、M.V. Lorevice、N.F.F. SoaresおよびL.H.C. Mattoso、「ペクチン/パパイヤ・ピューレ/シンナムアルデヒドのナノエマルジョン可食性複合フィルムの抗微生物特性および物理的機械的特性(Antimicrobial and Physical-Mechanical Properties of Pectin/Papaya Puree/Cinnamaldehyde Nanoemulsion Edible Edible Composite Films)」、Food Hydrocolloids、第41巻、188〜194頁、2014年
【非特許文献18】J.F. Martucci、L.B. Gende、L.M. NeiraおよびR.A. Ruseckaite、「生物起源のゼラチンフィルムの抗酸化性添加剤および抗微生物性添加剤としてのオレガノ精油およびラベンダー精油(Oregano and Lavender Essential Oils as Antioxidant and Antimicrobial Additives of Biogenic Gelatin Films)」、Industrial Crops and Products、第71巻、205〜213頁、2015年
【非特許文献19】Bailey P. J.、G. Cousins、G. A. Snow、White A.J.、1980年、「ホウ素含有抗菌剤:様々な培養条件下での細菌の増殖および形態への影響(Boron-Containing Antibacterial Agents: Effects on Growth and Morphology of Bacteria Under Various Culture Conditions)」、Antimicrobial Agents and Chemotherapy、第17巻、549〜553頁
【非特許文献20】Benkovic S.J.、S.J. BakerおよびAlley M.R.、2005年、「細菌性細胞の増殖および細菌性メチルトランスフェラーゼ(CcrMおよびMenH)の阻害剤としてのボリン酸エステルの同定(Identification of borinic esters as inhibitors of bacterial cell growth and bacterial methyltransferases, CcrM and MenH)」、Journal of Medicinal Chemistry、第48巻、7468〜7476頁
【非特許文献21】Reynolds, R.C.、Campbell S.R.、Fairchild R.G.、Kisliuk R.L.、Micca P.L.、Queener S.F.、Riordan J.M.、SedwickW.D.、Waud W.R.、Leung A.K.W.、Dixon R.W.、Suling W.J.、BorhaniD.W.、2007年、「ホウ素を含有する非古典的な新規の抗葉酸剤:合成ならびに予備的な生物学的および構造的評価(Novel boron-containing, nonclassical antifolates: Synthesis and preliminary biological and structural evaluation)」、Journal of Medicinal Chemistry、第50巻、3283〜3289頁
【非特許文献22】Qin G.、S. Tian、Z. Chan、Li B.、2007年、「ペニシリウム・エクスパンサムの病原性における抗酸化タンパク質および加水分解酵素の重要な役割(Crucial role of antioxidant proteins and hydrolytic enzymes in pathogenicity of Penicillium expansum)」、Molecular & Cellular Proteomics、第6巻、425〜438頁
【非特許文献23】Qin G.、Y. Zong、Q. Chen、D. Hua、Tian S.、2010年、「食用ブドウにおける灰色カビ病菌に対するホウ素の抑制効果およびその可能な作用機序(Inhibitory effect of boron against Botrytis cinerea on Tablo grapes and its possible mechanisms of action)」、International Journal of Food Microbiology、第138巻、145〜150頁
【非特許文献24】Lalitha, M. K.、Vellore, T.N.、2005年、「抗微生物感受性試験に関するマニュアル(Manual on antimicrobial susceptibility testing)」、URL:http://www.ijmm.org/documents/Antimicrobial.doc
【発明の概要】
【0023】
本発明の目的は、ホウ素化合物をゼラチン系またはペクチン系材料と共に用いることにより抗微生物性表面コーティング材料を得ることである。
【0024】
本発明の別の目的は、抗真菌性表面コーティング材料を提供することである。
【0025】
本発明の更なる目的は、抗カンジダ性表面コーティング材料を提供することである。
【0026】
本発明の別の目的は、抗菌性表面コーティング材料を提供することである。
【0027】
本発明の別の目的は、生分解または生物学的汚染を防止する表面コーティング材料を提供することである。
【0028】
本発明の別の目的は、製造が容易で低コストの表面コーティング材料を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、ペトリ皿におけるホウ素含有フィルムの配置を示す図である。
図2図2は、真菌クロコウジカビにおける15%ホウ素化合物ドープゼラチンフィルムの抗真菌活性を示す図である。
図3図3は、カンジダ・アルビカンス酵母における10%ホウ素化合物ドープゼラチンフィルムの抗真菌活性を示す図である。
図4図4は、緑膿菌細菌における5%ホウ素化合物ドープゼラチンフィルムの抗菌活性を示す図である。
図5図5は、黄色ブドウ球菌細菌における10%ホウ素化合物ドープゼラチンフィルムの抗菌活性を示す図である。
図6図6は、黄色ブドウ球菌細菌における10%ホウ素化合物ドープペクチンフィルムの抗菌活性を示す図である。
図7図7は、真菌クロコウジカビにおける10%ホウ素化合物ドープペクチンフィルムの抗真菌活性を示す図である。
図8図8は、緑膿菌細菌における15%ホウ素化合物ドープペクチンフィルムの抗菌活性を示す図である。
図9図9は、添加剤を含有しないペクチン系フィルムのSEM図である。
図10図10は、15%のホウ酸を含有するペクチン系フィルムのSEM図である。
図11図11は、10%の八ホウ酸二ナトリウムを含有するペクチン系フィルムのSEM図である。
図12図12は、5%の五ホウ酸ナトリウムを含有するペクチン系フィルムのSEM図である。
図13図13は、添加剤を含有しないゼラチン系フィルムのSEM図である。
図14図14は、10%のホウ酸を含有するゼラチン系フィルムのSEM図である。
図15図15は、5%の八ホウ酸二ナトリウムを含有するゼラチン系フィルムのSEM図である。
図16図16は、15%の五ホウ酸ナトリウムを含有するゼラチン系フィルムのSEM図である。
図17図17は、ペクチン+ホウ素誘導体を含むゲル溶液の粘度を剪断速度の変化に従って示す図である。
図18図18は、ゼラチン+ホウ素誘導体を含むゲル溶液の粘度を剪断速度の変化に従って示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の範囲内において、抗微生物性表面コーティング材料として用いられるフィルムストリップは、ホウ素化合物をゼラチン系またはペクチン系化学物質と組み合わせることにより製造される。
【0031】
本発明の目的を満たすように開発された「ゼラチン系またはペクチン系抗微生物性表面コーティング材料」を添付の図面に示す。
【0032】
ホウ素化合物を用いて抗微生物性コーティング材料を得る方法について実施した実験的研究は以下のとおりである。
【0033】
実験的研究
フィルムの製造
溶媒キャスティング法(solvent casting method)によりゼラチン系フィルムおよび低メトキシルペクチン系フィルムを調製した。
【0034】
ゼラチンフィルムを調製するために、3gのグリセロール(可塑剤として用いられる)および10gの粉末ゼラチンを、50℃で30分間、700rpmで撹拌しながら97mLの再蒸留水(ddw)に溶解させた。同時に、5質量%〜15質量%のホウ素化合物(ホウ酸または八ホウ酸二ナトリウムまたは五ホウ酸ナトリウム)を20mLのddwに溶解させ、ゼラチン溶液に滴下した。得られた溶液を30分間撹拌して平坦な表面に注ぎ、溶媒が蒸発するまで室温で48時間放置した。種々のホウ素化合物について種々の濃度でこの方法を繰り返した。
【0035】
ペクチン系フィルムを調製するために、3gのグリセロールおよび2gのペクチンを、60℃で30分間、700rpmで撹拌しながら70mLのddwに溶解させた。同時に、5質量%〜15質量%のホウ素化合物(ホウ酸また八ホウ酸二ナトリウムまたは五ホウ酸ナトリウム)を15mLのddwに溶解させ、ペクチン溶液に滴下した。15mLのddwに0.025gを溶解させて別途得た溶液を、ペクチン−ホウ素化合物溶液に滴下した。得られた溶液を10分間撹拌して平坦な表面に注ぎ、溶媒が蒸発するまで室温で72時間放置した。種々のホウ素化合物について種々の濃度でこの方法を繰り返した。これらの手順の結果、抗微生物性フィルム試料が得られた。
【0036】
本発明の製品を得るために実施した実験的研究において、特に且つ好ましくは、ホウ酸(BA)、八ホウ酸二ナトリウム(DO)および五ホウ酸ナトリウム(SP)をホウ素化合物として用いた。
【0037】
特性解析研究および試験
開発した表面の特性解析
本発明のホウ素ドープ抗微生物性ゼラチン系フィルムおよびホウ素ドープ抗微生物性ペクチン系フィルムの表面の表面特性解析を行った。開発したフィルム表面のレオロジー特性、機械的特性および形態学的特性を対照群と比較して検討した。
【0038】
抗微生物性試験
改良ディスク拡散法
試験する各微生物におけるホウ素化合物の抗微生物活性を測定するために、NCCLS標準ディスク拡散法[24]を改良して使用した。10cfu/mlの細菌、10cfu/mlの酵母および10spor/mlの真菌を含む100μlの溶液を、新しい培養物を用いて調製し、散布法(spreading method)により普通寒天培地(Nutrient Agar)(NA)、サブロー・デキストロース寒天培地(Sabouraud Dextrose Agar)(SDA)およびポテト・デキストロース寒天培地(Potato Dextrose Agar)(PDA)のそれぞれに接種した。グラム陽性細菌の中の黄色ブドウ球菌、グラム性細菌の中の大腸菌および緑膿菌、酵母の中のカンジダ・アルビカンス、ならびに真菌の中のクロコウジカビに対して抗微生物活性試験を行った。開発したフィルム表面および対照群を1×1cmのサイズに切断し、接種したペトリ皿の中に置いた。ペトリ皿におけるホウ素含有フィルム材料の配置を図1に示す。接種され且つ改良ディスク拡散法が適用されたペトリ皿を、細菌については24時間、酵母については48時間、36±1℃で培養し、真菌については25±1℃で72時間培養した。改良ディスク拡散法を用いて試験した微生物に対する抗微生物活性は、阻止域(inhibition zone)(微生物が増殖しない領域)を測定することにより評価した。試験したホウ素含有フィルム表面の抗微生物活性試験結果を表1にまとめ、全ての試験は少なくとも2回繰り返した。
【0039】
実験結果
抗微生物性試験結果
試験したホウ素化合物の抗微生物活性試験結果を表1にまとめている。全ての試験は少なくとも2回繰り返した。
【0040】
【表1】
【0041】
形態学的特性の測定
SEM装置(EVO 40シリーズ、Carl Zeiss、独国)を用いることにより、開発したゼラチン系またはペクチン系ホウ素ドープ食品フィルム包装の形態学的特性を測定した。SEM画像の結果、ホウ素化合物がフィルムにおいて完全に分散していることが観察された。SEM画像サンプルを図9図15に示す。
【0042】
機械的特性の測定
フィルムの引張強度はそのフィルムの機械的強度を示す。生体高分子フィルムの機械的特性は、包装材料としての使用を可能にするのに非常に重要である。ホウ素誘導体をドープすることによりフィルムの機械的特性が変化し得るので、製造したフィルムを物理的特性解析試験にかけた。本発明のフィルム試料の引張強度を表2および表3にそれぞれ示す。得られた結果は、ホウ素誘導体をドープしていない陰性対照試料が他の試料と比較してより低い抵抗力(resistance)を有することを示している。
【0043】
ゼラチン系フィルムの引張強度は、種々の割合で加えた種々のホウ素誘導体の影響下で8626〜17845gの範囲で変化している。10%の八ホウ酸二ナトリウムを含むゼラチンフィルム試料が最も高い抵抗力(17845g)を有することがわかる。全ての結果を考慮すると、八ホウ酸二ナトリウムはゼラチンフィルムの抵抗力に対してポジティブなかたちで著しい影響を及ぼすことがわかる。ホウ酸濃度の増加によりゼラチンフィルムの抵抗力は増大するが、五ホウ酸ナトリウムおよび八ホウ酸二ナトリウムの濃度が10%を超えるとフィルムの抵抗力にポジティブな影響を示さなかった。これは、ホウ素誘導体は濃度があるレベルを超えると分子および分枝鎖(chains)の間で高度に蓄積し、それにより架橋の形成を妨げるという事実に起因するものであると考えられる。ホウ酸の分子量は使用される他のホウ素誘導体よりも小さいので、ホウ酸を含有するフィルムにおいて同様の影響は観察され得ないと考えられる。さらに、八ホウ酸二ナトリウムおよび五ホウ酸ナトリウムはホウ酸よりもイオン電荷が大きいので、ある濃度を超えると、ゼラチン・マトリックスを強固にする水素結合のひずみを引き起こした可能性がある。
【0044】
一方、ペクチンフィルム試料の引張強度は963〜2170gの範囲で変化している。最も大きい引張強度は五ホウ酸ナトリウムを15%の濃度で加えることにより得られたが、八ホウ酸二ナトリウムおよびホウ酸の濃度が10%を超えるとフィルムの抵抗力にポジティブな影響を示さなかった。ペクチン系フィルムの引張強度の変化はホウ素とペクチン多糖類との間の架橋の形成に起因したと考えられる。
【0045】
【表2】
【0046】
【表3】
【0047】
分子配列が集中する(converge)につれてフィルム表面はより薄くなる傾向にある。したがって、ホウ素の添加はゼラチン系またはペクチン系フィルム表面の厚みに影響を及ぼす。ペクチンに内在するRG−IIとホウ素との相互作用により、フィルムはより薄くなる。したがって、ホウ素含有フィルムは対照群よりも薄い。異なるホウ素化合物が異なる程度で生体高分子の架橋に影響を及ぼすので、各試料において異なる厚みが得られる。ホウ素化合物の添加はゼラチンフィルムの厚みには重大な影響を及ぼさない。ホウ素化合物をドープしたゼラチン系およびペクチン系フィルム試料の厚みを表4および表5に示す。
【0048】
【表4】
【0049】
【表5】
【0050】
レオロジー特性の測定
ゼラチンは熱可逆性ゲル化機構を有するので、ゲル化および溶融温度に対するホウ素化合物の影響はレオロジー試験によって調べられる。ホウ素化合物はゲル化および溶融温度を著しく変化させず、またはゲルの構造を変形させないことが観察される。ゼラチンゲルの溶融温度(T)およびゲル化温度(T)の変化を表6に示す。
【0051】
3つの異なるホウ素誘導体を異なる濃度で含有するペクチン系またはゼラチン系ゲル溶液の粘度を剪断速度の変化に従って示すグラフを図17および図18に示す。全てのゼラチン試料およびペクチン試料は剪断減粘挙動を示した。15%(w/w)のホウ酸を含有するペクチン試料は最も低い粘度値を有する一方で、10%(w/w)の八ホウ酸二ナトリウムを含有するペクチン試料は最も高い粘度値を有する。ゼラチン系フィルムにおいて、八ホウ酸二ナトリウムを加えたゼラチン溶液は最も高い粘度値を有する。ホウ酸を加えることによりゼラチンの粘度が低下した。
【0052】
【表6】
【0053】
産業的用途
本発明は、ゼラチン系またはペクチン系抗微生物性表面コーティング材料に関する。表面コーティング材料は、フィルム形状で得られ、産業的用途において包装材料として用いられる。コーティング材料として用いられるこの包装は、衛生を必要とする全ての分野において、特に食品産業において用いることができる。食品包装において、食品および外部環境または消費者に接触する表面は、人間の健康に有害でないように抗菌性、抗真菌性および抗カンジダ性の表面である。本発明により、食品包装の表面および内側の両方に存在する全ての種類の病原性因子(細菌、真菌およびウイルス)に対して有効であり、かつ人間の健康または食品の品質に害を及ぼさないコーティング材料が開発される。
【0054】
本発明の表面コーティング材料は、食品産業に加えて、薬品および化粧品産業においても用いられる。薬品産業においてピルまたはタブレットのコーティング材料としてこれを用いることは、果物または同様の食品製品にこれを用いることに代わる別の使用分野である。
【0055】
この表面コーティング材料は、固体粉末または液状溶液の形状であり得る。これは、噴霧または浸漬法によって溶液として果物および野菜に適用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18