特許第6851659号(P6851659)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6851659
(24)【登録日】2021年3月12日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】ログ材
(51)【国際特許分類】
   E04B 2/70 20060101AFI20210322BHJP
【FI】
   E04B2/70
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2020-53120(P2020-53120)
(22)【出願日】2020年3月24日
(65)【公開番号】特開2020-165295(P2020-165295A)
(43)【公開日】2020年10月8日
【審査請求日】2020年7月10日
(31)【優先権主張番号】特願2019-62982(P2019-62982)
(32)【優先日】2019年3月28日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592190969
【氏名又は名称】株式会社アールシーコア
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(72)【発明者】
【氏名】原田 喜秀
(72)【発明者】
【氏名】岡部 正昭
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 貴子
(72)【発明者】
【氏名】井谷 真由美
(72)【発明者】
【氏名】平 峻一郎
【審査官】 兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−242470(JP,A)
【文献】 特許第6353595(JP,B1)
【文献】 実開平07−013917(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3018230(JP,U)
【文献】 特開2009−030419(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3215048(JP,U)
【文献】 特開2011−132693(JP,A)
【文献】 米国特許第6094876(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 2/70
E04C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ログハウス用のログ材において、
第1の部分と第2の部分とを有する長尺な本体部と、前記第1の部分と前記第2の部分との間に設けられて前記本体部の長手方向と交差して延在する溝部を有して他のログ材と嵌合可能な嵌合部と、一対の段部であって、前記本体部の前記第1の部分または前記第2の部分と前記嵌合部との間にそれぞれ設けられて前記嵌合部を挟んで平行に対向するとともに、前記溝部が延在する方向である幅方向の互いに対して反対方向にそれぞれずれて設けられており、第1のシール材がそれぞれ巻き回されて取り付けられた、一対の段部とを備え、
前記本体部は、前記長手方向に延在する凸部が設けられた第1の面と、前記長手方向に延在する凹部を有する第2の面とを背中合わせに有し、
前記段部は、前記第1の面に沿って有する第3の面と前記第2の面に沿って有する第4の面との第1の間隔が、前記本体部の前記第1の面と前記第2の面との第2の間隔よりも小さく、前記第1の間隔と前記第2の間隔との差は、前記第1のシール材の2つ分の厚さよりも小さく、
前記本体部は、前記段部に隣接する角部が前記第1の面及び前記第2の面に対して垂直な方向にそれぞれ延在する水路面及びガイド面で直角に切り取られた形状の排水路であって、前記水路面は前記本体部の前記長手方向に沿って延びる面であり、前記ガイド面は前記本体部の前記幅方向に沿って延びる面である、排水路前記第1の部分及び前記第2の部分のそれぞれに、平面視で前記嵌合部を挟んで対角に有し、前記水路面と前記水路面に対して背中合わせに位置する前記第1の部分または前記第2の部分の側面との間隔は、前記ガイド面と前記ガイド面に対向する前記第2の部分または前記第1の部分の端面との間隔よりも小さいことを特徴とする、ログ材。
【請求項2】
請求項1に記載のログ材において、前記長手方向に延在する前記凸部は、前記段部に到達しないで終端することを特徴とする、ログ材。
【請求項3】
請求項1または2に記載のログ材において、前記第1の面と前記第3の面とを同一面内に有することを特徴とする、ログ材。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のログ材において、前記水路面を前記段部の側面と同一面内に有することを特徴とする、ログ材。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のログ材において、前記第1の面と前記第2の面との間が円柱状に膨らんだ膨張部を有することを特徴とする、ログ材。
【請求項6】
請求項5に記載のログ材において、前記膨張部の前記嵌合部側の端部は、前記本体部の前記長手方向と前記幅方向とに対して45度傾斜した平坦な傾斜面を有することを特徴とする、ログ材。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のログ材において、他の前記ログ材と嵌合したときに、前記嵌合部は、それぞれ前記第1のシール材が巻き回された4つの前記段部が上から見て矩形の4辺を構成して配列されて互いに密着することにより、4つの前記段部で囲まれた矩形の空間が密閉されることを特徴とする、ログ材。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載のログ材において、他の前記ログ材と嵌合したときに、前記第1のシール材は、前記幅方向の一端で他の前記ログ材の前記本体部の端面に密着するとともに、前記幅方向の他端で他の前記ログ材の前記段部の端面に密着することを特徴とする、ログ材。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載のログ材において、前記嵌合部は、縁部に第2のシール材が配置されたことを特徴とする、ログ材。
【請求項10】
請求項9に記載のログ材において、他の前記ログ材と嵌合したときに、前記第2のシール材は、前記幅方向の両端で他の前記ログ材の一対の前記段部の端面にそれぞれ密着することを特徴とする、ログ材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ログハウス用のログ材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ログハウス用のログ材であって、他のログ材と嵌合するためのノッチ部にシール材を設けることにより防水するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この種のログ材では、ノッチ部を上下方向に貫通する水抜き孔や、ログ材の長手方向に沿ってログ材の上面に排水用の溝を形成することにより排水性を向上させたログ材が提案されている(例えば、特許文献2参照)。また、防水テープの端部を外側に露出させてコーキング処理を施したログ材が提案されている(例えば、特許文献3及び4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭49−043409号公報
【特許文献2】実用新案登録第3215048号公報
【特許文献3】特許第6353595号公報
【特許文献4】特開2019−039289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の技術によるログ材では、ノッチ部の防水が困難であり、ノッチ部で重ねてログ材を交互に積み重ねたときに、ノッチ部どうしの隙間から雨水が侵入し易いため、ログ材が腐朽し易かった。
【0005】
また、排水性を向上させるべく、ログ材を上下方向に貫通する水抜き孔や、ログ材の長手方向に沿ってログ材の上面に排水用の溝を形成することは、ログ材の形状が複雑になってしまうために加工性が悪かった。
【0006】
さらに、防水テープの端部を外側に露出させてコーキング処理を施して耐水性を向上させる方法では、ログ材どうしが嵌合する位置で防水テープを折り曲げて調整する作業やコーキング処理が必要となり、防水テープやコーキング材が外部に露出するため、施工性が悪い上にログ壁の美観を損ねるといった問題があった。
【0007】
さらにまた、従来のいずれの方法であっても、ノッチ部におけるログ材の収縮により、隙間が生じてしまうといった問題があった。
【0008】
本発明の目的は、上述した従来の技術が有する課題を解消し、ノッチ部における防水性を向上させることのできるログ材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ログハウス用のログ材において、長尺な本体部と、前記本体部の長手方向と交差して延在する溝部を有する他のログ材と嵌合可能な嵌合部と、前記本体部と前記嵌合部との間に設けられてシール材を取り付け可能な段部とを備え、前記本体部は、前記長手方向に延在する凸部が設けられた第1の面と、前記長手方向に延在する凹部を有する第2の面とを背中合わせに有し、前記段部は、前記第1の面に沿って有する第3の面と、前記第2の面に沿って有する第4の面との間隔が、前記第1の面と前記第2の面との間隔よりも小さいことを特徴とする。
【0010】
この場合において、前記長手方向に延在する前記凸部は、前記段部に到達しないで終端していてもよい。前記第1の面と前記第3の面とは同一面内に有していてもよい。前記本体部は、前記段部に沿って隣接する角部が前記第1の面及び前記第2の面に対して垂直な方向に延在する2つの面で直角に切り取られた形状を有し、前記2つの面の一方が前記段部の側面と同一面内に有していてもよい。前記第1の面と前記第2の面との間が円柱状に膨らんだ膨張部を有していてもよい。前記膨張部の前記嵌合部側の端部は、前記本体部の長手方向と前記溝部が延在する方向とに対して45度傾斜した平坦な傾斜面を有していてもよい。前記ログ材は、前記嵌合部を挟んで平行に対向する一対の前記段部を備え、前記嵌合部は、矩形の上面を有し、一対の前記段部は、前記嵌合部を中心に点対称に互いに対して幅方向にずれており、他の前記ログ材の前記段部が差し込まれるための切欠部を有していてもよい。他の前記ログ材と嵌合したときに、前記嵌合部は、4つの前記段部で囲まれた矩形の空間が密閉されていてもよい。前記段部は、第1のシール材が配置されていてもよい。他の前記ログ材と嵌合したときに、前記第1のシール材は、前記幅方向の一端で他の前記ログ材の前記本体部の端面に密着するとともに、前記幅方向の他端で他の前記ログ材の前記段部の端面に密着していてもよい。前記嵌合部は、縁部に第2のシール材が配置されていてもよい。他の前記ログ材と嵌合したときに、前記第2のシール材は、前記幅方向の両端で他の前記ログ材の一対の前記段部の端面にそれぞれ密着していてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、ノッチ部における防水性を向上させることのできるログ材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態のログ材の上面図を示す。
図2】第1実施形態のログ材の側面図を示す。
図3図1におけるログ材のA−A断面図を示す。
図4】第1実施形態の2本のログ材を組んだときの上面図を示す。
図5】第1実施形態の上下に隣接する2本のログ材のノッチ部の断面図を示す。
図6図4の拡大図を示す。
図7】第1実施形態のノッチ部の拡大斜視図を示す。
図8】第2実施形態のログ材の断面図を示す。
図9】第2実施形態のログ材の上面図を示す。
図10】第2実施形態の2本のログ材を組んだときの上面図を示す。
図11】第2実施形態のノッチ部の斜視図を示す。
図12】変形例のログ材の上面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態のログ材の上面図を示し、図2は、ログ材の側面図を示し、図3は、図1におけるログ材のA−A断面図を示す。
ログ材100は、図1に示すように、本体部10と、ノッチ部(嵌合部)20と、一対の段部30a,30bとを有している。このログ材100は、同じ構造の複数のログ材100を積み重ねることにより、ログハウスの外壁となるログ壁等を構築するための建築材料である。ログ材100は、ノッチ部20を有することにより、先に積まれたログ材100に対して、ノッチ部20どうしが垂直に交差して次のログ材100を積み重ねて、上方から見て垂直に交差した壁を構築することができる。
【0014】
本体部10は、長尺形状を有している。段部30の第1の側面31に沿って隣接する角部10cには、第1の面10a及び第2の面10b(図2参照)に対して垂直な方向に延在する水路面13及びガイド面14を有している。水路面13は、排水路15を画定し、ガイド面14は、ログ材100,100の位置決めを行う。これら水路面15とガイド面14とからなる角部10cは、本体部10が直角に切り取られた形状を有し、水路面13を段部30の第1の側面31と同一面内に有している。
【0015】
本体部10は、図2に示すように、ログ材100の長手方向Lに延在する凸部11が設けられた第1の面10aと、ログ材100の長手方向Lに延在する凹部12を有する第2の面10bとを背中合わせに有している。凸部11は、本体部10上を長手方向Lに延在し、段部30の手前で終端する。
【0016】
凸部11は、サネであり、図3に示すように、第1の面10aから突出した台形形状を有しており、頂部には第1の面10aに対して略平行な頂面11aを有している。頂面11aの幅方向Wの両端は、頂部から第1の面10aに近づくほど、長手方向に垂直な幅方向Wに広がって傾斜した側面を有している。凸部11の側面は、図示せぬシール材が長手方向Lに沿って取り付けられている。
【0017】
凹部12は、本体部10が台形形状に切り取られている。凹部12は、別のログ材100の凸部11を受けて嵌合してサネ構造を構成する。凹部12は、凹部12の底面12aから第2の面10bに近づくほど、幅方向Wに広がって傾斜した側面を有している。
【0018】
ノッチ部20は、図1に示すように、本体部10の長手方向Lと交差して延在する溝部21を有して他のログ材100のノッチ部20と嵌合可能に設けられている。このノッチ部20は、上方から見たときに本体部10よりも幅方向Wに小さい。また、ノッチ部20は、図2に示すように、側方から見たときに本体部10の第1の面10aと第2の面10bとの間隔D2の半分よりも小さな寸法を有している。ノッチ部20は、段部30と隣接する位置に破線で示すシール材22が巻き回されている。
【0019】
段部30は、本体部10とノッチ部20との間に設けられてシール材32を取り付け可能であり、破線で示すシール材32が設けられている。この段部30は、図1に示すように、上方から見たときに幅方向Wに本体部10よりも小さく、かつ、ノッチ部20よりも大きい。
【0020】
シール材22及びシール材32は、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエンゴム)等のゴム発泡体である。これらシール材22,32としては、例えば、厚さ10mmで幅10mmの矩形断面を有するEPDM等のゴム発泡体である。
【0021】
段部30は、本体部10の第1の面10aに垂直である。また、段部30は、長手方向Lに延在するノッチ部20の一方の側面23と段部30の一方の第2の側面34とを同一面内に有している。
【0022】
段部30の上面である第3の面35は、図2に示すように、本体部10の上面である第1の面10aと同一面内にある。一方、段部30の下面である第4の面36は、2本のログ材100,100が積み重ねられたときに重なる位置にある2つのシール材32,32の厚さの合計分よりもわずかに小さい距離だけ、本体部10の下面である第2の面10bから内側に平行にずれている。ここで、凹部12の底面12aは、下の段に積まれた別のログ材100の凸部11が収まるのに十分な高さだけ第2の面10bから内側に平行にずれて位置しているが、シール材32の厚さによっては、段部30の第4の面36は凹部12の底面12aと同一面内になく、本体部10の第2の面10bに対して凹部12の底面12aよりも近い位置にある。なお、段部30の第4の面36は、シール材32の厚さによっては凹部12の底面12aと同一面内にあってもよい。
【0023】
段部30の高さは、側方から見たときに本体部10の高さよりも小さく、かつ、ノッチ部20の高さよりも大きい。段部30は、図3に示すように、本体部10の第1の面10aに沿って有する第3の面35と、本体部10の第2の面10bに沿って形成された第4の面36との間隔D1が、本体部10の第1の面10aと第2の面10bとの間隔D2よりも小さい。
【0024】
段部30の長手方向Lに垂直な断面は、本体部10の長手方向Lに垂直な断面よりも小さく、かつ、ノッチ部20の長手方向Lに垂直な断面よりも大きく、全体的に矩形形状を有している。この段部30は、本体部10の凹部12と連通してへこんだ断面形状を有し、第4の面36に平行な底面36aを有している。段部30の底面36aは、本体部10の凹部12の底面12aと同一面内に有しており、段部30の底面36aの幅方向Wの両端は、本体部10の凹部12の側壁と同一面内に有している。これにより、段部30の断面の中心C2は本体部10の断面及びノッチ部20の断面の中心C1に対して幅方向Wにずれている。より具体的には、図1に示すように、ノッチ部20を挟んだ一対の段部30a,30bの各々は、幅方向Wに対してそれぞれ反対方向にずれている。
【0025】
段部30には、図3に示すように、破線で示すシール材32が巻き回されている。このシール材32は、第4の面36と底面36aとの境界で内側に折り曲げられることにより底面36aに沿って取り付けられている。シール材32は、段部30の第4の面36と本体部10の第2の面10bとの間隔の半分の長さよりも若干厚いため、ログ材100を別のログ材100の上に同じ向きで重ね上げたときに、一方のログ材100の段部30の第3の面35と他方のログ材100の段部30の第4の面36との間に挟まったシール材32,32は少し圧縮されて密着し、隙間がない。これにより、ノッチ部20は、段部30に巻かれたシール材32とノッチ部20に巻かれたシール材22とにより防水される。
【0026】
以下、本実施形態のログ材100をノッチ部20で交差して他のログ材100と積み重ねたときの状態について説明する。
図4は、2本のログ材を組んだときの上面図を示し、図5は、上下に隣接する2本のログ材のノッチ部の断面図を示し、図6は、図4の拡大図を示し、図7は、ノッチ部の拡大斜視図を示す。
【0027】
本実施形態のノッチ部20は、図1に示すように、矩形の上面を有している。ノッチ部20を挟んで平行に位置する一対の段部30a,30bは、ノッチ部20の上面の4つの頂点の対角線の交点C3を中心に点対称にずれており、一対の段部30a,30bは、互いに対して幅方向Wに逆向きにずれて配置されている。すなわち、他のログ材100の段部30が差し込まれるための切欠部が端面16と第2の側面34とで構成され、一対の段部30a,30bは、ノッチ部20を中心に点対称に互いに対して幅方向Wにずれている。これにより、いずれも同じログ材100であるログ材100Aの上にログ材100Bをノッチ部20で交差して積み重ねると、図4に示すように、一方のログ材100の段部30は、幅方向Wの一端にある第1の側面31側に位置するシール材32の部分が他方のログ材100の本体部10の端面16に密着して当接し、一方のログ材100の段部30と他方のログ材100の本体部10との境界を密閉する。なお、ノッチ部20の幅E1は、一対の段部30a,30bの端面37,37間の間隔E2よりも狭くなっている。また、段部30の幅は、段部30の一方の端面37と対向する本体部10の端面16との間隔よりも狭くなっている。すなわち、ログ材100のノッチ部20及び段部30は、シール材22,32がないと隙間を有しており、シール材22,32の肉厚はこの隙間よりも大きい。
【0028】
一方、一方のログ材100の段部30は、第1の側面31に対して幅方向Wの他端にある第2の側面34側に位置するシール材32の部分が交差して積み重ねられた他方のログ材100の段部30の端面37に密着して当接し、段部30どうしの境界を密閉する。このようにして、交差して積み重ねられたログ材100A,100Bによって交互に密閉されることにより、ノッチ部20の4辺は、シール材32が巻き回された4つの段部30が上から見て矩形の4辺を構成して配列されて互いに密着するため、4つの段部30の内側の矩形の空間は完全に密閉される。
【0029】
また、交差せずに同じ向きに積み重ねられたログ材100,100は、図5に示すように、下側のログ材100の段部30の上面に位置するシール材32と上側のログ材100の段部30の下面に位置するシール材32とが互いに密着するため、上下のログ材100,100間の境界が密閉される。これにより、複数のログ材100を交差して順次積み重ねたときに、上から見て4つの段部30で囲まれた矩形の空間は、最下段のログ材100から最上段のログ材100にかけて密閉される。
【0030】
本実施形態のログ材100は、図4に示すように、ノッチ部20を挟んで位置する一対の段部30a,30bの各々がノッチ部20に対して幅方向Wにずれて配置されている。これにより、交差して積み重ねられる複数のログ材100A,100Bの段部30a,30bの構造を同一にすることができ、本体部10の端面16と段部30の端面37とをシール材22,32で密閉することができる。すなわち、同一構造の段部30a,30bを有するログ材100A,100Bを交互に積み重ねることで、それぞれのログ材100A,100Bの第1の側面31のシール材32と本体部10の端面16とが当接し、第2の側面34のシール材32と段部30の端面37とが当接してノッチ部20が密閉される。
【0031】
段部30に巻かれたシール材32は、図6に示すように、段部30に巻き回されているが本体部10の水路面13にはシール材が設けられていない。このため、他のログ材100と組み合わされたときに、本体部10と他のログ材100との間に隙間を有し、この隙間が雨水を排水するための排水路15となる。
【0032】
一方のログ材100のノッチ部20は、一対のシール材22,22がそれぞれ幅方向の両端で他方のログ材100の一対の段部30a,30bの端面37,37の間に挟まって密着して当接し、ノッチ部20と段部30a,30bとの境界を密閉する。すなわち、積み重ねられたログ材100のノッチ部20は、90度毎に同じに嵌合及び密閉されている。このとき、図7に示すように、一方のログ材100Aと他方のログ材100Bとは、それぞれ縦方向の寸法の半分だけ上下にずれて積み重ねられている。
【0033】
本実施形態のログ材100は、長尺な本体部10と、本体部10の長手方向Lと交差して延在する溝部21を有する他のログ材100と嵌合可能なノッチ部20と、本体部10とノッチ部20との間に設けられてシール材32を取り付け可能な段部30とを備え、本体部10は、長手方向Lに延在する凸部11が設けられた第1の面10aと、長手方向Lに延在する凹部12を有する第2の面10bとを背中合わせに有し、段部30は、第1の面10aに沿って有する第3の面35と、第2の面10bに沿って有する第4の面36との間隔D1が、第1の面10aと第2の面10bとの間隔D2よりも小さくなっている。これにより、ノッチ部20に隣接する位置にある段部30にシール材32を設けることができてノッチ部20の4辺が密閉され、ログ材100どうしの隙間からノッチ部20への雨水の侵入を防止することができる。このため、ノッチ部における防水性を向上させることができる。
【0034】
また、ログ材100は、本体部10よりも断面積の小さな段部30が設けていることにより、ログ材100どうしをノッチ部20で積み重ねたときに、シール材32が収容される隙間を有するため、ノッチ部20,20どうしの間にシール材が挟まってノッチ部20,20どうしの嵌合がきつくなることがなく、また、挟まったシール材がめくれて防水不良を生じさせることがない。
【0035】
さらに、ログ材100は、ノッチ部20へのシール材の取り付けやコーキング処理を施工現場で行う必要がなく施工性が良い。
【0036】
さらにまた、ログ材100は、シール材が外部に露出したり、施工現場でのコーキング処理によりコーキング材が外部に露出したりすることがないため、シール材の露出によってログ壁の美観を損ねることがない。
【0037】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態のログ材200について説明する。
図8は、ログ材の断面図を示し、図9は、ログ材の上面図を示し、図10は、2本のログ材を組んだときの上面図を示し、図11は、ノッチ部の斜視図を示す。なお、第2実施形態では第1実施形態と異なる部分について説明し、第1実施形態と同一の構成に対しては同一の符号を用いている。
【0038】
本実施形態のログ材200は、図8に示すように、本体部10の側面である第1の面10aと第2の面10bとの間の部分が円柱状に膨らんだ膨張部17を有する構成が第1実施形態のログ材100と異なっている。この膨張部17は、ログ材200を組み上げてログハウスを作成したときに、外壁は丸太らしい曲面で、内壁は板壁のような雰囲気をもたらすために設けられている。膨張部17の輪郭が有する曲面は、上端よりも下端の方が本体部10に対して外側に位置している、すなわち凸部11を挟む第1の面10aの全体的な幅は、凹部12を挟む第2の面10bの全体的な幅よりも幅広である。これにより、同じ向きに積み重ねられたログ材200は、上側に積まれたログ材200の下端が下側に積まれたログ材200の上端よりも外側に突出する。
【0039】
膨張部17は、図9に示すように、本体部10の長手方向Lに沿って延在している。膨張部17は、ノッチ部20の近傍で長手方向Lに対して45度だけ斜めに切り取られた形状を有している。具体的には、膨張部17は、ガイド面14の外側端部から45度に切り取られた平坦な傾斜面17aを有している一方、端面16の外側端部から長手方向Lにずれた位置から45度に切り取られた平坦な傾斜面17bを有している。これら傾斜面17a,17bの各々は、長手方向Lと溝部21が延在する方向である幅方向Wとに対して45度傾斜した平面を有しており、互いに対して90度傾斜している。これらの傾斜面17a,17bの延長線上には、上から見て、直交して交互に積み重ねられた複数のログ材200の交点が位置する。
【0040】
積み重ねられたログ材200,200は、図10に示すように、膨張部17に傾斜面17a,17bを有していることにより、隣り合う傾斜面17a,17bどうしが当接する。このとき、積み重ねられたログ材200,200は、図11に示すように、直交して交互に積み重ねられたログ材200,200の膨張面17,17がログ材200の高さの半分程度の高さだけずれて位置している。
【0041】
以上、実施形態に基づいて本発明を説明してきたが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記実施形態では、凸部11は、図1に示すように、段部30の手前で終端して設けられているが、これに限定されない。凸部11は、図12に示すように、段部30まで延在して、段部30の端面37で終端していてもよい。このとき、段部30に巻き付けられたシール材32は、両端が凸部11の手前で終端して凸部11を挟んで配置されている。
【符号の説明】
【0042】
10…本体部
10a…第1の面
10b…第2の面
10c…角部
11…凸部
11a…頂面
12…凹部
12a…底面
13…水路面
14…ガイド面
15…排水路
16…端面
17…膨張部
20…ノッチ部(嵌合部)
21…溝部
22…シール材
23…側面
30…段部
31…第1の側面
32…シール材
34…第2の側面
35…第3の面
36…第4の面
36a…底面
37…端面
100…ログ材
200…ログ材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12