特許第6851661号(P6851661)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6851661
(24)【登録日】2021年3月12日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】履物底部および履物
(51)【国際特許分類】
   A43B 3/12 20060101AFI20210322BHJP
【FI】
   A43B3/12 Z
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2020-96865(P2020-96865)
(22)【出願日】2020年6月3日
【審査請求日】2020年7月1日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520196368
【氏名又は名称】平松 久
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】平松 久
【審査官】 渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−179202(JP,A)
【文献】 特開2007−244802(JP,A)
【文献】 特開2005−334631(JP,A)
【文献】 特開2005−074194(JP,A)
【文献】 実公昭55−041041(JP,Y2)
【文献】 登録実用新案第3126479(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 1/00− 23/30
A43C 1/00− 19/00
A43D 1/00−999/00
B29D 35/00− 35/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外力により変形可能な壁面と、外部から液体を補充可能な補充口と、前記壁面の変形に伴い内部の前記液体を漏出可能な漏出口と、を有するタンク部と、
履物底面側に開口しており、かつ、前記漏出口に接続しており前記タンク部から漏出した前記液体の液体溜りを形成する凹部と、
少なくとも前記凹部の周りに配置され、前記凹部より下方に突出しており着地時に地面に接触する着地面と、を有する履物底部。
【請求項2】
前記凹部と前記着地面とを前記履物底面側に有し、前記タンク部を着脱自在に収容する底部本体部と、を有する請求項1に記載の履物底部。
【請求項3】
前記履物底面側から見て前記凹部が配置される部分における前記底部本体部の上下方向の厚みは、前記履物底面側から見て前記凹部に隣接する前記着地面が配置される部分における前記底部本体部の上下方向の厚みより薄いことを特徴とする請求項2に記載の履物底部。
【請求項4】
前記凹部には、前記液体を保持する多孔質体が配置される請求項1から請求項3までのいずれかに記載の履物底部
【請求項5】
前記多孔質体の材質は、前記着地面の材質よりも小さい圧縮弾性率を有することを特徴とする請求項4に記載の履物底部。
【請求項6】
前記タンク部は、前記漏出口からの前記液体の漏出および漏出停止を切り換える切り換え構造を有する請求項1から請求項5までのいずれかに記載の履物底部。
【請求項7】
前記履物底面側から見て、前記凹部および前記着地面の少なくとも一部は、前記タンク部と重なることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれかに記載の履物底部。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれかに記載の履物底部と、
前記履物底部に接続する履物上部と、を有する履物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、履物底部およびこれを有する靴やサンダルなどの履物に関する。
【背景技術】
【0002】
サンダルの底に起伏を設けることで、砂浜などに特徴的な足跡を形成するビーチサンダルが提案されている(特許文献1など参照)。このようなビーチサンダルは、サンダルの底面に起伏を形成し、やわらかい砂地などにサンダルの足跡を形成するものである。
【0003】
一方、コンクリートのプールサイドのような固い地面に対して足跡を形成するビーチサンダルとして、ビーチサンダルの底の外形状をキャラクターに模したものが提案されている(特許文献2)。このようなビーチサンダルでは、これを履いた人が、ビーチサンダルの底が濡れた状態でプールサイドを歩くことにより、ビーチサンダルの外形状を転写した足跡が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭54−98350号公報
【特許文献2】実用新案登録第3126479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のビーチサンダルの底構造では、すぐに底面の水分が欠乏するため、多くの足跡を継続的に形成することが難しいという課題がある。また、着地面により足跡を形成するため、水分を地面に転写しようとする場合、スリップしやすいという課題がある。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、スリップが防止でき、かつ、固い地面であっても継続的に足跡が形成することができる履物底部および履物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る履物底部は、外力により変形可能な壁面と、外部から液体を補充可能な補充口と、前記壁面の変形に伴い内部の前記液体を漏出可能な漏出口と、を有するタンク部と、
履物底面側に開口しており、かつ、前記漏出口に接続しており前記タンク部から漏出した前記液体を溜める液体溜りを形成する凹部と、
少なくとも前記凹部の周りに配置され、前記凹部より下方に突出しており着地時に地面に接触する着地面と、を有する。
【0008】
本発明に係る履物底部は、タンク部を有しており、タンク部から漏出した液体が凹部へ伝わる構造を有している。このため、このような履物底部を有する履物を履いて歩くことにより、タンク部から伝わる凹部の液体が地面に対して転写され、液体による足跡が継続的に地面に形成される。また、液体溜りを形成する凹部の周りには、凹部よりも下方に突出する着地部が形成されているため、着地部が着地時に地面に接触することにより、スリップが防止される。
【0009】
また、たとえば、前記凹部と前記着地面とを前記履物底面側に有し、前記タンク部を着脱自在に収容する底部本体部と、を有してもよい。
【0010】
タンク部が底部本体部に対して着脱自在であることにより、タンク部を底部本体部から取り外し、容易にタンク部内に液体を補充することができる。
【0011】
また、たとえば、前記履物底面側から見て前記凹部が配置される部分における前記底部本体部の上下方向の厚みは、前記履物底面側から見て前記凹部に隣接する前記着地面が配置される部分における前記底部本体部の上下方向の厚みより薄くてもよい。
【0012】
凹部に対応する領域における底部本体部の厚みを薄くすることにより、着地時において、凹部を大きく下方に沈みこませることができる。このため、このような履物底部は、凹部の液体を、より確実に地面に転写して足跡を形成することができる。
【0013】
また、たとえば、前記凹部には、前記液体を保持する多孔質体が配置されていてもよい。
【0014】
このような多孔質体を有する履物底部は、着地時に転写される液体の量を制御しやすいため、より安定して継続的に、液体による足跡を形成することができる。
【0015】
また、たとえば、前記多孔質体の材質は、前記着地面の材質よりも小さい圧縮弾性率を有してもよい。
【0016】
このような多孔質体は、着地時における着地面の変形を、多孔質体が妨げる問題を防止できる。そのため、このような多孔質体および着地面を有する履物底部は、クッション性が良く、また、確実に液体による足跡を形成する履物底部を実現できる。
【0017】
また、たとえば、前記タンク部は、前記漏出口からの前記液体の漏出および漏出停止を切り換える切り換え構造を有してもよい。
【0018】
このような切り換え構造を有する履物底部は、床面に液体を転写すべきでないスーパーのような屋内施設などでは、切り換え構造によりタンク部からの液体の漏出を停止し、たとえタンク部に液体が残っている状態であっても、足跡を形成しないようにすることができる。
【0019】
また、たとえば、前記履物底面側から見て、前記凹部および前記着地面の少なくとも一部は、前記タンク部と重なっていてもよい。
【0020】
凹部とタンク部が重なっていることにより、タンク部の漏出口から凹部への液体の経路が形成しやすく、構造を単純にすることができる。また、着地面とタンク部とが重なっていることにより、タンク部の壁面に着地時の力を容易に伝えて液体を漏出させることができるため、このような履物底部は、確実に液体による足跡を形成する履物底部を実現できる。
【0021】
また、たとえば、本発明に係る履物は、上記いずれかに記載の履物底部と、
前記履物底部に接続する履物上部と、を有する。
【0022】
本発明に係る履物は、履物底部と履物上部により、履物を履く人の足の一部または全体を収容する。本発明に係る履物としては、靴、サンダル、ブーツ、草履、シューズなどがあげられるが、特に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る履物の底面図および側面図である。
図2図2は、図1に示す履物に含まれる履物底部の分解図である。
図3図3は、図1および図2に示す履物底部に含まれるタンク部を説明する概念図である。
図4図4は、図1および図2に示す履物底部に含まれる履物底面、凹部および多孔質体を示す概念図である。
図5図5は、本発明の第2実施形態に係る履物に含まれる履物底部のタンク部を示す概略図である。
図6図6は、本発明の第2実施形態に係る履物に含まれる履物底部の履物底面、凹部および多孔質体を示す概念図である。
図7図7は、本発明の第3実施形態に係る履物の底面図である。
図8図8は、図7に示す履物の使用状態図を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
第1実施形態
図1(a)は、本発明の第1実施形態に係る履物10の底面図であり、図1(b)は履物10の側面図である。図1(b)に示すように、履物10は、履物10を履いた人の踵が露出するサンダルであるが、本発明に係る履物としてはこれに限定されず、スニーカーなどの靴や、シューズやスリッパのような上履きであってもよい。
【0025】
図1(b)に示すように、履物10は、履物上部60と、履物底部20とを有する。履物底部20は、履物10におけるソールの部分であり、後述するように底部本体部30とタンク部50等を有する。
【0026】
履物上部60は、履物底部20に接続しており、アッパー62と、ヒールバンド64を有する。アッパー62は、履物10を履いた人のつま先や足の甲をカバーする。ヒールバンド64は、履物10を履いた人の踵の上部に引っ掛けて使用される。なお、履物10の形状としては、図1(b)に示される形状のみには限定されず、踵を覆う形状を有するものや、鼻緒形状の履物上部を有するものなど、他の形状であってもよい。
【0027】
図2は、図1(b)に示す履物底部20の分解図である。図2に示すように、履物底部20は、タンク部50と、多孔質体35と、底部本体部30とを有する。タンク部50における後方の一部は、底部保体部40から露出している。タンク部50は、図1(b)において太矢印70で示されるように後方に引き抜くことにより、履物底部20に対して分離できるようになっている。
【0028】
図3は、履物10におけるタンク部50を説明する概念図である。図3(a)は、タンク部50を履物底面側30b(下方)から見た図である。図3(b)は、タンク部50が有する切り換え構造58を示す図である。図3(c)は、タンク部50を履物上部側30a(上方)から見た図である。
【0029】
図2図3(a)および図3(c)に示すように、タンク部50は、中空構造になっており、内部に液体を貯蔵できるようになっている。タンク部50は、履物10を履く人が履物底部20を踏みつけた際の外力により変形可能な壁面52を有する。タンク部50の壁面52の材質は、たとえば樹脂、金属、セラミックスなどであるが、特に限定されない。
【0030】
実施形態に示すタンク部50は、キャップ54aおよび切り替え機構58を除き、ほぼ全体が同一の材質による壁面52で構成されているが、タンク部50の構成としてはこれには限定されない。また、タンク部50は、壁面の一部分のみが、外力によって変形しやすくなっていてもよい。
【0031】
図3(c)に示すように、タンク部50は、外部から液体を補充可能な補充口54を有する。補充口54には、補充口54を塞ぐキャップ54aが取付られている。履物10によって足跡を形成する場合、予め補充口54から、タンク部50内に液体を補充しておく。
【0032】
図3(c)に示すように、タンク部50には空気孔53が形成されている。空気孔53からは、タンク部50内に空気を導入できるようになっている。
【0033】
図3(a)に示すように、タンク部50の履物底面側には、タンク部50内部の液体を漏出可能な漏出口56が、複数(図3に示す例では8つ)形成されている。タンク部50内の液体は、タンク部50が壁面52の変形に伴い押しつぶされることにより、漏出口56から押し出される。
【0034】
漏出口56の直径は、たとえば0.1〜10mm程度とすることができるが、特に限定されない。漏出口56には、漏出口56からの空気の流入を防止したり、漏出量を制御したりするフィルタや弁体が備えられていてもよい。漏出口56の形状は、図3に示すような円形に限定されず、多角形状、スリット状その他の形状であってもよい。また、漏出口56の数も特に限定されず、後述する凹部34(図1(a)の大きさなどに応じて、適宜調整される。
【0035】
図3(a)および図3(b)に示すように、タンク部50は、漏出口56からの液体の漏出および漏出停止を切り換える切り換え構造58を有する。切り換え構造58は、略円盤状の開閉弁58aと、開閉弁58aから後方に突出する開閉レバー58bとを有する。開閉弁58aは、軸58abを中心として回転できるように、タンク部50内に取り付けられている。
【0036】
開閉レバー58bの一部は、タンク部50の後方から、タンク部50の外へ露出している。開閉レバー58bを操作することにより、タンク部50内の開閉弁58aが回転し、漏出口56から液体が漏出する状態と、漏出口56から液体が漏出しない状態が切り替えられる。
【0037】
すなわち、開閉レバー58bの操作により、開閉弁58aの貫通孔58aaが漏出口56に重なる位置に移動すると、タンク部50内の液体が漏出口56から漏出する。これに対して、開閉レバー58bの操作により、開閉弁58aの貫通孔58aaが漏出口56とは重ならない位置に移動すると(図3(a)参照)、漏出口56からの液体の漏出が停止する。なお、切り換え構造58は、開閉レバー58bの操作量に応じて、開閉弁58aの貫通孔58aaと漏出口56との重複量を変更し、漏出口56からの液体の漏出量を調整可能である。
【0038】
図1(a)に示すように、履物10を下方から見た場合に見える履物底面には、凹部34と、着地面36とが形成されている。また、凹部34には、多孔質体35が配置されている。
【0039】
図2(c)に示すように、履物10は、凹部34と着地面36とを履物底面側に有しており、タンク部50を着脱自在に収容する底部本体部30を有する。底部本体部30の内部には、後方に開口するタンク収容部32が形成されており、タンク収容部32には、タンク部50が履物10の後方から挿入される。
【0040】
図1(a)および図1(b)に示すように、凹部34は、履物底面側に開口しており、多孔質体35が、凹部34の内部に配置されている。底部本体部30の側面図である図2(c)に示すように、凹部34は、タンク部50の下方であって、漏出口56の直下に配置されている。
【0041】
図4は、多孔質体35(図4(a))および底部本体部30(図4(b))を履物底面側30b(下方)から見た図である。図4(b)に示すように、凹部34の上面である仕切り壁33には、タンク部50に対応する位置に液体経路37が形成されている。したがって、図2(c)に示す凹部34は、液体経路37を介して、タンク部50の漏出口56(図3(a)参照)に接続している。
【0042】
図2(c)、図4(a)および図4(b)に示すように、凹部34には、タンク部50から漏出した液体が流入し、凹部34は、タンク部50から漏出した液体の液体溜りを形成する。凹部34に配置される多孔質体35は、凹部34内の液体を保持するが、仮に多孔質体35が配置されていなくても、凹部34は、凹部34の上面や側面の表面張力により、液体溜りを形成することができる。
【0043】
なお、図2に示す底部本体部30は、凹部34とタンク部50との間を仕切る仕切り壁33を有するが、底部本体部30は、仕切り壁33を有さなくてもよい。この場合、凹部34の上面は、タンク部50における履物底面側30bの面が構成し、凹部34と漏出口56とが直接接続する。このように、凹部34と漏出口56とは、直接接続していてもよく、図2(c)および図4(b)に示すように、液体経路37を介して間接的に接続していてもよい。
【0044】
図1(a)に示すように、凹部34には、多孔質体35が配置されている。図4(a)に示すように、多孔質体35は、凹部34の形状に応じた外形状を有しており、全体が凹部34に収容されている。ただし、後述する第2実施形態に示すように、多孔質体35は、一部が凹部34の外に広がっていてもよい(図6等参照)。
【0045】
図2(b)および図2(c)に示すように、多孔質体35における履物底面側の面である多孔質体底面35aは、履物10の着地面36より上方に配置されている。多孔質体底面35aを着地面36より上方に配置することにより、地面に対して、着地面36が多孔質体底面35aより先に接することができるため、スリップを好適に防止できる。着地面36から多孔質体底面35aまでの上下方向の距離は、特に限定されないが、たとえば0〜10mm程度とすることができ、0.1〜5mm程度とすることが好ましい。
【0046】
多孔質体35の材質としては、特に限定されないが、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリプロピレンなどの発砲プラスチックなどがあげられるが、特に限定されない。また、多孔質体35の材質は、着地面36の材質より小さい圧縮弾性率を有することが好ましい。これにより、たとえ多孔質体底面35aが、着地面36と面一か、着地面36より下方に位置していても、多孔質体35は地面と接触することで容易に圧縮され、多孔質体35からの水が広がる前に、着地面36が地面に接触できる。したがって、このような履物10は、凹部34および多孔質体35に対応した足跡を形成できるとともに、スリップを防止することができる。なお、圧縮弾性率の小さい多孔質体35を着地面36から下方に突出させることにより、液体の地面への転写量を増加させ、より明瞭な足跡を形成することができる。
【0047】
図1(a)に示すように、履物10の履物底面には、着地面36が形成されている。図1(a)および図1(b)に示すように、着地面36は、凹部34を除く履物底面の全体に広がっているが、着地面36としてはこれに限定されず、少なくとも凹部34の周りに配置されていればよく、履物底面の一部に配置されていてもよい。
【0048】
図2(c)に示すように、着地面36は、凹部34より下方に突出しており、着地時に地面に接触する。着地面36の材質としては、たとえばゴム、エラストマー、合成樹脂などがあげられるが、特に限定されない。着地面36は、底部本体部30の他の部分より硬質の(圧縮弾性率が大きい)材料で構成されていてもよいが、底部本体部30の他の部分と同じ材質で構成されていてもよい。また、着地面36の空隙率は、多孔質体35の空隙率より小さいことが、着地面36が水分を含んでしまうことを防止する観点から好ましい。
【0049】
図2(c)に示すように、底部本体部30は、着地面36、凹部34、タンク収容部32、仕切り壁33を有する。履物底面側30bから見て凹部34が配置される部分における底部本体部30の上下方向の厚み(T11+T12)は、履物底面側から見て凹部34に隣接する着地面36が配置される部分における底部本体部30の上下方向の厚み(T21+T22)より薄い。したがって、底部本体部30の上方から、履物10を履いた人の体重が作用した場合、厚みが薄い凹部34に対応する部分が下方に沈み込み、凹部34の液体を確実に地面に転写することができる。
【0050】
また、図1(a)に示すように、履物底面側からみて、凹部34および着地面36の少なくとも一部は、タンク部50と重なっている。凹部34とタンク部50が上下方向に重なっていることにより、タンク部50の漏出口56(図3(a参照)から凹部34への液体の経路が形成しやすく、構造を単純にすることができる。また、着地面36とタンク部50とが重なっていることにより、タンク部50の壁面52に、着地時の力を容易に伝えて、タンク部50の内部の液体を漏出させることができる。このため、このような履物底部20は、液体による足跡を、確実に地面に形成することができる。
【0051】
以上のように、履物10の履物底部20は、タンク部50を有しており、タンク部50から漏出した液体が凹部34へ伝わる構造を有している。このため、このような履物底部20を有する履物10を履いて歩くことにより、タンク部50から伝わる凹部34の液体が地面に対して転写され、液体による足跡が継続的に地面に形成される。また、液体溜りを形成する凹部34の周りには、凹部34よりも下方に突出する着地面36が形成されているため、着地面36が着地時に地面に接触することにより、スリップが防止される。
【0052】
また、タンク部50が底部本体部30に対して着脱自在であることにより、タンク部50を底部本体部30から取り外し、容易にタンク部50内に液体を補充することができる(図1(b)参照)。なお、タンク部50は、底部本体部30と一体で着脱不可であってもよい。この場合、タンク部50に液体を補充する補充口54(図3(c))は、タンク部50の壁面52が、履物10の表面に露出する部分に形成される。
【0053】
タンク部50に補充される液体は、転写後蒸発して地面を汚しにくい水などが用いられる。野外において水を地面に転写することにより、路面温度の低下による環境効果も期待できる。ただし、タンク部50に補充される液体は、着色されたインクなどであってもかまわない。
【0054】
また、タンク部50は、中空であるもののみには限定されず、微小な空隙が内部に形成されており液体を保持する発砲材料などを有していてもよい。また、履物10は、底部本体部30の上面側に設けられるインソール部を有していてもよい。
【0055】
第2実施形態
図5は、第2実施形態に係る履物が有するタンク部150の底面図(図5(a))および上面図(図5(b))であり、図6は、多孔質体135(図6(a))および底部本体部130(図6(b))の底面図である。第2実施形態に係る履物は、タンク部50の空気孔153、多孔質体135および底部本体部130の構造および形状が異なるが、その他については、第1実施形態に係る履物10と同様である。第2実施形態に係る履物については、第1実施形態に係る履物10との相違点を中心に説明を行い、共通点については説明を省略する。
【0056】
図5(a)に示すように、タンク部150の後方には、空気孔153が形成されており、空気孔153には、開閉栓153aが取り付けられている。履物を履いている人が、開閉栓153aを操作することにより、タンク部150内への空気の流入の可否を、切り換えることができる。
【0057】
開閉栓153aは、タンク部150の漏出口156a、156bからの液体の漏出および漏出停止を切り換える切り換え構造を兼ねる。開閉栓153aを操作することにより、タンク部150内への空気の流入を停止すると、タンク部150の壁面152に対して変形力が伝わり難くなり、漏出口156a、156bからの液体の漏出が停止する。
【0058】
図5(a)に示すように、タンク部150の下面には、2つの領域に漏出口156a、156bが形成されている。漏出口156aは、踵側の領域に形成されており、漏出口156bは、つま先側の領域に形成されている。漏出口156aおよび漏出口156bは、いずれも第1実施形態に係る漏出口56と同様に、タンク部150の壁面152の変形に伴い内部の液体を漏出する。
【0059】
図6(b)に示すように、底部本体部130の履物底面には、2つの凹部134a、134bが形成されている。凹部134aは、踵側の領域に形成されており、凹部134bは、つま先側の領域に形成されている。凹部134a、134bには、図2に示すような仕切り壁33が形成されていない。また、底部本体部130の履物底面における凹部134a、134b以外の領域には、凹部134a、134bより下方に突出しており着地時に地面に接触する着地面136が形成されている。
【0060】
図6(a)に示すように、多孔質体135は、下方突出部135a、135bと、中間層135cとを有する。多孔質体135は、図1に示す多孔質体35とは異なり、その一部である中間層135cが、凹部134a、134bの外に配置される。すなわち、図6(a)に示す多孔質体135のうち、中間層135cはシート状となっており、図5(a)に示すタンク部150の下面の全体または大部分を覆っている。
【0061】
これに対して、多孔質体135の下方突出部135aは、中間層135cから下方に突出しており、凹部134aの内部に配置される。また、多孔質体135の下方突出部135bは、中間層135cから下方に突出しており、凹部134bの内部に配置される。
【0062】
図5(a)に示す漏出口156a、156bから漏出した液体は、図6に示す多孔質体135の中間層135cを介して、凹部134a、134b内部の下方突出部135a、135bに伝わる。このように、図6(b)に示す凹部134a、134bは、多孔質体135の中間層135cを介して、タンク部150の漏出口156a、156bに接続している。なお、多孔質体135の外側縁135dは、中間層135cから液体が漏れ出すことを防止するための封止処理がされていてもよい。
【0063】
図5および図6に示すような第2実施形態に係る履物および履物底部も、第1実施形態に係る履物10および履物底部20と同様の効果を奏する。
【0064】
第3実施形態
図7は、本発明の第3実施形態に係る履物210を示す底面図である。履物210は、図1(a)に示す履物10と同様に、履物底面側に開口しておりタンク部から漏出した液体の液体溜まりを形成する凹部234と、凹部234の周りに配置されており凹部234より下方に突出する着地面236とを有する。凹部234内には、多孔質体235が配置されている。また、図7では示されていないが、履物210は、図1(b)に示すタンク部50と同様に、液体を溜めておくことが可能なタンク部を有する。
【0065】
履物210の着地面236には、底溝236aが形成されている。図7に示すように、履物210の着地面236は、平坦でなくてもよく、スリップ防止等のための底溝236aが形成されていてもよい。また、たとえば、履物210の着地面236は、着地時に地面に接触する突起の頂部であってもよい。
【0066】
図8は、履物210の使用状態を示す概念図である。図8に示すように、履物210を履いて歩くことにより、履物210の凹部234(図7参照)および多孔質体235の形状に対応する足跡280が、地面や床面に形成される。また、第3実施形態に係る履物210は、第1実施形態に係る履物10との共通点については、第1実施形態に係る履物10と同様の効果を奏する。
【0067】
以上、実施形態を挙げて本発明を説明してきたが、本発明は上述した実施形態のみには限定されず、他の実施形態や変形例を多く含むことが言うまでもない。たとえば、凹部34、134a、134b、234によって形成される足跡の形状は、図1図6図7に示すものに限定されず、様々な形状、模様、文字およびこれらの組み合わせとすることができる。また、図7に示すように、履物210の外形状を、動物や想像上のキャラクターの足を模した形状とすることができ、また、その履物210により形成される足跡280の形状を、動物やキャラクターの足の形状に対応させてもよい。
【符号の説明】
【0068】
10、210…履物
20…履物底部
30、130…底部本体部
30a…履物上部側
30b…履物底面側
32…タンク収容部
33…仕切り壁
34、134a、134b…凹部
35、135、235…多孔質体
36、236…着地面
37…液体経路
50、150…タンク部
52、152…壁面
53、153…空気孔
54…補充口
54a…キャップ
56、156a、156b…漏出口
58…切り換え構造
58a…開閉弁
58aa…貫通孔
58ab…軸
58b…開閉レバー
60…履物上部
62…アッパー
64…ヒールバンド
70…太矢印
153a…開閉栓
135a…下方突出部
135b…下方突出部
135c…中間層
135d…外側縁
236a…底溝
【要約】
【課題】スリップが防止でき、かつ、固い地面であっても継続的に足跡が形成することができる履物底部および履物。
【解決手段】外力により変形可能な壁面と、外部から液体を補充可能な補充口と、前記壁面の変形に伴い内部の前記液体を漏出可能な漏出口と、を有するタンク部と、履物底面側に開口しており、かつ、前記漏出口に接続しており前記タンク部から漏出した前記液体の液体溜りを形成する凹部と、少なくとも前記凹部の周りに配置され、前記凹部より下方に突出しており着地時に地面に接触する着地面と、を有する履物底部。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8