特許第6851668号(P6851668)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6851668生死菌の状態判定装置を用いた生死菌状態判定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6851668
(24)【登録日】2021年3月12日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】生死菌の状態判定装置を用いた生死菌状態判定方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/34 20060101AFI20210322BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20210322BHJP
   C12M 1/12 20060101ALI20210322BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   C12M1/34 B
   G01N21/64 F
   C12M1/12
   C12Q1/02
【請求項の数】2
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2020-195661(P2020-195661)
(22)【出願日】2020年11月26日
(62)【分割の表示】特願2017-559186(P2017-559186)の分割
【原出願日】2016年12月26日
(65)【公開番号】特開2021-36908(P2021-36908A)
(43)【公開日】2021年3月11日
【審査請求日】2020年12月25日
(31)【優先権主張番号】特願2015-257250(P2015-257250)
(32)【優先日】2015年12月28日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513315112
【氏名又は名称】合同会社日本理化学開発
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】森脇 俊一
(72)【発明者】
【氏名】森脇 英樹
【審査官】 太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−187935(JP,A)
【文献】 特開平9−275998(JP,A)
【文献】 特開2000−232897(JP,A)
【文献】 特開2003−169695(JP,A)
【文献】 国際公開第2002/064818(WO,A1)
【文献】 特開2008−054509(JP,A)
【文献】 特表2014−502856(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
WPIDS/WPIX(STN)
AGRICOLA(STN)
FSTA(STN)
TOXCENTER(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
死菌状態測定装置に用いて生死菌の状態判定を行う生死菌状態判定方法であって、
前記生死菌状態測定装置は、
内部を暗室空間とし内部に測定機構を収納したケース本体と、ケース本体の正面に形成した菌類基盤挿入口を開閉自在とした開閉蓋体と、ケース本体内に収納して、検体から採取した菌体の生死菌の判別、菌数の計測等を行うべく構成した測定機構と、より構成すると共に、
測定機構は、
検体から採取した菌体を載置した菌類基盤を挿入固定する菌類基盤保持機構と、
類基盤上の菌体に向かって照射可能に構成した励起光照射機構と、
菌類基盤上の菌体を撮像可能に配設した撮像カメラと、より構成し、
前記励起光照射機構は、前記菌類基盤上の菌体が染色されている蛍光物質を励起させるための処理菌体励起光用LEDを生菌用と死菌用とに分けて菌体に対し励起光を照射可能としものであり、
測定用フィルタに菌体を濾過採取する工程を次のとおりとすることにより前記生死菌状態測定装置に用いて生死菌の状態判定を行う生死菌状態判定方法。
工程1:試験管に検体を少量滴下する工程。
工程2:試験管に専用試薬を滴下し、密封して攪拌後静置する工程。
工程3:測定用フィルタを別途設けたフィルタハウジング中に収納してセットする工程。
工程4:測定用フィルタを収納したフィルタハウジングを別途設けたシリンジの先端に接続して、フィルタハウジング内部とシリンジ内部とを連通状態とする工程。
工程5:試験管中の検体をシリンジ内部に注入する工程。
工程6:シリンジ内部を加圧してシリンジ先端からフィルタハウジング内の測定用フィルタへ向かって検体と共に菌体を圧入することにより測定用フィルタ面に染色された菌体のみを濾過採取する工程。
工程7:測定用フィルタをフィルタハウジングから取り出して菌類基盤上に載置することにより、測定用フィルタ面に濾過採取された菌体群を測定用フィルタを介して菌類基盤上に配置する工程。
工程8:菌類基盤を前述の生死菌状態判定装置における菌類基盤保持機構に挿入し、励起光照射機構と撮像カメラより構成した前記生死菌状態判定装置を用いて、菌体の状態を画像として把握して生死菌の状態を判定する工程。
【請求項2】
測定機構は、菌類基盤保持機構を支持する別動する二層からなるXYステージをXY軸方向に微調整移動するXY軸調整機構を備
前記測定機構は、制御部と、前記菌体が付着する前記菌類基盤上に配置された測定用フィルタ上を仮想区画し複数コマの仮想格子毎に前記撮像カメラの撮影画角で撮影可能に拡大する光学系とを更に備え、
前記制御部は、前記撮像カメラが一の仮想区画を撮影した後に、前記撮影画角内に他の仮想区画が入るよう前記XY軸調整機構を制御することを特徴とする請求項に記載の生死菌状態判定方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細菌類やカビ類(以下、総称して菌類ともいう。)の付着或いは混入する検体から採取した菌類の生菌、死菌の状態判別が可能で、特に食品類の生産者や流通業者には極めて好適な菌類の即時の判別が可能な装置を用いた生死菌状態判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品類とりわけ水分率の高い生鮮食品や加工食品等は菌類の繁殖しやすい条件を具有することから、これら食品等の生産原初から混在し若しくは流通及び消費に至る段階で該菌類等が付着し或いは落下混入し、且これが短時間に繁殖し極めて不衛生となるばかりか度々食中毒が招来されたり、或いは商品の変質や不腐が招来される結果となっている。
【0003】
そのため生鮮食品では合成樹脂素材製の容器や紙器で包装し更には保冷等を施し流通や消費に供しているが、これら容器や紙器には特段抗菌処理がなされてないため、原初から混在する菌類は時間経過とともに繁殖するばかりか該容器や紙器の外面には、流通や消費に亘る間に付着し或いは落下した菌類が繁殖し極めて不衛生な状態におかれている。
【0004】
他方、加工食品についても従来許容される合成保存料を添加し菌類の繁殖防止を図っていたが、近年の健康指向の高まりとともに合成保存料が危険視されるに至り、加えて消費者保護の見地より製造物責任所謂PL法の施行とも相俟って、食品生産者はもとより流通業者においても衛生管理が強く求められる実情にある。
【0005】
かかる状況に鑑み、最近では例えばX-Galなどのような発色成分を適宜に混合させた発色培地に採取した菌類を植菌し、これを所要温度に保持されたインキュベーター等の培養器で略24時間乃至48時間培養することによりコロニーを形成し、且大腸菌等が保持するβ−ガラクトシターゼ酵素で発色成分を分解し発色させて判別する技術が出現した。
【0006】
しかし、流通に供される食品類の菌類の判別手段としては判別のための培養に長時間を要するため実用性に劣り、判別し得る菌類も大腸菌や一般生菌の一部に限定され、しかも、生菌死菌の判別もできない等の欠点を有していた。
【0007】
また、他の判別技術として蛍光染料を生理的食塩水に適宜濃度に混合させた染色溶液に採取した菌類を混入したうえ、これを24時間乃至48時間培養しコロニーの形成を図ったうえ光学顕微鏡で判別する方法もが提案されている。
【0008】
しかし、この方法も依然培養のために長時間を要し、しかも蛍光染料は菌類の細胞内に入りにくく且一旦細胞内に浸透した染料も容易に流失するため細胞が十分に染色されず、従って発光エネルギーも微弱であるため精密高倍率のレンズを使用せねばならぬ等判別装置も大型で且高価となる等、流通に供される食品類の菌類判別のためには問題が多かった。
【0009】
かかる問題に鑑み、最近では、特許第2979383号に示すように、フルオレセイン(fluorescein)若しくはその誘導体からなる蛍光染料が生菌並びに死菌の細胞内に浸透し易いこと、及びプロピジウムイオダイト(Propidium iodide)からなる蛍光染料が死菌の細胞内のみに浸透しえること、更には生菌細胞内に浸透したフルオレセイン或いはその誘導体からなる蛍光染料が特定波長たる488nmの励起光の吸収によりストークス則に従って該吸収光より長波長の520nmの強い蛍光発光を呈すること、及び死菌細胞内に浸透したプロピジウムイオダイトからなる蛍光染料も488nm励起光の吸収に伴いストークス則に従い該吸収光より長波長の625nmの強い蛍光発光がなされる反面、フルオレセイン若しくはその誘導体からなる蛍光染料は死菌細胞に取込まれて蛍光発光が阻害されることを究明し、その上で、特定波長たる488nmの励起光を吸収し蛍光発光する発光エネルギーが極めて強いために、前記蛍光染料で染色した染色菌液を培養することなく且光散乱させることによって低い倍率を以って蛍光波長毎の発光数(生菌及び死菌)、発光の形状(菌の種類)、発光数(菌数)等を即時に判別しえる技術が提案された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平09−275998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この技術は細菌類やカビ類等の菌類が混在付着する検体から適宜手段で被着採取した菌類を、極めて簡便な方法で即時に生菌や死菌、菌の種類或いは菌数を判別することの可能となった。
【0012】
しかし、かかる菌体の生菌や死菌その他の状況の判別技術は、即時に結果を判別可能とした基本的な技術ではあるが、蛍光波長毎の発光数、発光形状、発光数等を拡大レンズで視認するものであるため、実際にその判別結果を得るためのプロセス作業は専門性を有し、万人に容易に実行しやすいものではなく、更には視認技術が拡大レンズを用いたものであるため正確性に欠ける。
【0013】
すなわち、菌体の判別を行うために蛍光発光を用いて生菌、死菌の区別を行う優れた技術ではあるが、最終的には視認による判別となるため視認に至るまでの作業が複雑となり、菌体の状況把握が不正確となり、更には視認に際して拡大レンズを通して菌体状況を目視で確認するために映像が不明確になり、正確な生菌、死菌の状況把握が困難となる欠点を有していた。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明では事前準備として染色菌液を作成し、フィルタ上に滴下してフィルタ上の染色菌液に励起光を複数の励起光用LEDによって斜め上方より正確に照射して、一定の蛍光波長のもとに生菌、死菌の菌体を発光させてCMOSイメージセンサにより撮像して正確な菌体の撮像を可能とした生死菌の状態判定装置を用いる生死菌状態判定方法として上記の課題を解消した。
具体的には、本発明に係る生死菌状態判定方法では、生死菌状態測定装置に用いて生死菌の状態判定を行う生死菌状態判定方法であって、前記生死菌状態測定装置は、内部を暗室空間とし内部に測定機構を収納したケース本体と、ケース本体の正面に形成した菌類基盤挿入口を開閉自在とした開閉蓋体と、ケース本体内に収納して、検体から採取した菌体の生死菌の判別、菌数の計測等を行うべく構成した測定機構と、より構成すると共に、測定機構は、検体から採取した菌体を載置した菌類基盤を挿入固定する菌類基盤保持機構と、菌類基盤上の菌体に向かって照射可能に構成した励起光照射機構と、菌類基盤上の菌体を撮像可能に配設した撮像カメラと、より構成し、前記励起光照射機構は、前記菌類基盤上の菌体が染色されている蛍光物質を励起させるための処理菌体励起光用LEDを生菌用と死菌用とに分けて菌体に対し励起光を照射可能としたものであり、測定用フィルタに菌体を濾過採取する工程を次のとおりとすることにより前記生死菌状態測定装置に用いて生死菌の状態判定を行うこととした。
工程1:試験管に検体を少量滴下する工程。
工程2:試験管に専用試薬を滴下し、密封して攪拌後静置する工程。
工程3:測定用フィルタを別途設けたフィルタハウジング中に収納してセットする工程。
工程4:測定用フィルタを収納したフィルタハウジングを別途設けたシリンジの先端に接続して、フィルタハウジング内部とシリンジ内部とを連通状態とする工程。
工程5:試験管中の検体をシリンジ内部に注入する工程。
工程6:シリンジ内部を加圧してシリンジ先端からフィルタハウジング内の測定用フィルタへ向かって検体と共に菌体を圧入することにより測定用フィルタ面に染色された菌体のみを濾過採取する工程。
工程7:測定用フィルタをフィルタハウジングから取り出して菌類基盤上に載置することにより、測定用フィルタ面に濾過採取された菌体群を測定用フィルタを介して菌類基盤上に配置する工程。
工程8:菌類基盤を前述の生死菌状態判定装置における菌類基盤保持機構に挿入し、励起光照射機構と撮像カメラより構成した前記生死菌状態判定装置を用いて、菌体の状態を画像として把握して生死菌の状態を判定する工程。
また、本発明に係る生死菌状態判定方法では、測定機構は、菌類基盤保持機構を支持する別動する二層からなるXYステージをXY軸方向に微調整移動するXY軸調整機構を備え、前記測定機構は、制御部と、前記菌体が付着する前記菌類基盤上に配置された測定用フィルタ上を仮想区画し複数コマの仮想格子毎に前記撮像カメラの撮影画角で撮影可能に拡大する光学系とを更に備え、前記制御部は、前記撮像カメラが一の仮想区画を撮影した後に、前記撮影画角内に他の仮想区画が入るよう前記XY軸調整機構を制御することとした。
【0015】
また本願では、以下のような発明も包含している。
すなわち、この発明は、内部を暗室空間とし内部に測定機構を収納したケース本体と、ケース本体の正面に形成した菌類基盤挿入口を開閉自在とした開閉蓋体と、ケース本体内に収納して、検体から採取した菌体の生死菌の判別、菌数の計測等を行うべく構成した測定機構と、より構成すると共に、測定機構は、検体から採取した菌体を載置した菌類基盤を挿入固定する菌類基盤保持機構と、菌類基盤保持機構の斜め上方周辺に配置し、菌類基盤上の菌体に向かって集中照射可能に構成した励起光照射機構と、菌類基盤上の菌体上方に固定フレームを介して配設した撮像カメラと、菌類基盤保持機構を支持する別動する二層からなるXYステージをXY軸方向に微調整移動するXY軸調整機構と、より構成した生死菌の状態判定装置に関する。
【0016】
また、菌類基盤の一部には検体から菌体を濾過採取した測定用フィルタを載置したことに特徴を有する。
【0017】
また、菌類基盤と撮像カメラとの間に介設した複数のバンドパスフィルタの切換えを行うためのフィルタ切換機構を撮像カメラの固定フレーム後方に配設したことにも特徴を有する。
【0018】
また、菌類基盤保持機構は、菌類基盤両側縁を左右外側方から挟持する左右レールと、左右レールの一方を外側方へ変位して左右レールによる菌類基盤の挟持を解除するためのレール変位機構と、菌類基盤挿入口からレール変位機構の操作を行うために左右レールの一方の外側方に配設し、中途の枢支部を中心に回動操作可能に構成した操作レバーとより構成し、レール変位機構は、左右レールの一方に水平に突設した摺動用軸と、摺動用軸の頭部に設けた操作レバー当接突部と、操作レバー当接突部に先端を当接した操作レバーの中途部をXYステージに枢支した操作枢支部と、左右レールの一方の外側面と操作レバー先端との間に介設した圧縮バネと、より構成したことにも特徴を有する。
【0019】
また、励起光照射機構は、菌類基盤保持機構の斜め上方周辺に複数個配置した励起光用LEDよりなり、各励起光用LEDは生菌用と死菌用とに分けてそれぞれ互い違いに配設したことにも特徴を有する。
【0020】
また、撮像カメラは、測定用フィルタ上の菌体群を所定数の格子状区画に区分して区画毎にCMOSイメージセンサーによって把握した光によって別途に接続したコンピューターを介して画像処理することにも特徴を有する。
【0021】
また、XY軸調整機構は、X軸用モータとY軸用モータとの各出力軸を二層のXYステージにそれぞれ連動連設すると共に、XYステージには予め原点位置を設定しておき、二層のXYステージをXY軸方向へ微調整移動するに際しては原点位置を中心とした移動距離情報を各XY軸用モータの制御部に送信して原点補正を行うべく構成したことにも特徴を有する。
【0022】
また、測定用フィルタに菌体を濾過採取する工程を次のとおりとすることにより上記の生死菌状態測定装置に用いて生死菌の状態判定を行う生死菌状態判定方法に関する。
工程1:試験管に検体を少量滴下する工程。
工程2:試験管に専用試薬を滴下し、密封して攪拌後静置する工程。
工程3:測定用フィルタを別途設けたフィルタハウジング中に収納してセットする工程。
工程4:測定用フィルタを収納したフィルタハウジングを別途設けたシリンジの先端に接続して、フィルタハウジング内部とシリンジ内部とを連通状態とする工程。
工程5:試験管中の検体をシリンジ内部に注入する工程。
工程6:シリンジ内部を加圧してシリンジ先端からフィルタハウジング内の測定用フィルタへ向かって検体と共に菌体を圧入することにより測定用フィルタ面に染色された菌体のみを濾過採取する工程。
工程7:測定用フィルタをフィルタハウジングから取り出して菌類基盤上に載置することにより、測定用フィルタ面に濾過採取された菌体群を測定用フィルタを介して菌類基盤上に配置する工程。
工程8:菌類基盤を前述の生死菌状態判定装置における菌類基盤保持機構に挿入し、励起光照射機構と撮像カメラより構成した生死菌状態判定装置を用いて、菌体の状態を画像として把握して生死菌の状態を判定する工程。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る生死菌の状態判定装置によれば、内部を暗室空間とし内部に測定機構を収納したケース本体と、ケース本体の正面に形成した菌類基盤挿入口を開閉自在とした開閉蓋体と、ケース本体内に収納して、検体から採取した菌体の生死菌の判別、菌数の計測等を行うべく構成した測定機構と、より構成すると共に、測定機構は、検体から採取した菌体を載置した菌類基盤を挿入固定する菌類基盤保持機構と、菌類基盤保持機構の斜め上方周辺に配置し、菌類基盤上の菌体に向かって集中照射可能に構成した励起光照射機構と、菌類基盤上の菌体上方に固定フレームを介して配設した撮像カメラと、菌類基盤保持機構を支持する別動する二層からなるXYステージをXY軸方向に微調整移動するXY軸調整機構と、より構成したため、比較的容易な作業でありながら、菌体の状況把握が従来に比して正確で、更には撮像画像を介して正確な生菌、死菌の状況把握を行うことができる。
【0024】
また、菌類基盤の一部には検体から菌体を濾過採取した測定用フィルタを載置したことにより、フィルタ上にトラップされた生死菌を直接的に判別することができ、しかも、フィルタは菌類基盤上に載置されていることから、菌類基盤ごと検体であるフィルタを容易に移動させることができる。
【0025】
また、菌類基盤と撮像カメラとの間に介設した複数のバンドパスフィルタの切換えを行うためのフィルタ切換機構を撮像カメラの固定フレーム後方に配設したため、ケース本体内においてフィルタ切替機構をコンパクトに収容することができる。
【0026】
また、菌類基盤保持機構は、菌類基盤両側縁を左右外側方から挟持する左右レールと、左右レールの一方を外側方へ変位して左右レールによる菌類基盤の挟持を解除するためのレール変位機構と、菌類基盤挿入口からレール変位機構の操作を行うために左右レールの一方の外側方に配設し、中途の枢支部を中心に回動操作可能に構成した操作レバーとより構成し、レール変位機構は、左右レールの一方に水平に突設した摺動用軸と、摺動用軸の頭部に設けた操作レバー当接突部と、操作レバー当接突部に先端を当接した操作レバーの中途部をXYステージに枢支した操作枢支部と、左右レールの一方の外側面と操作レバー先端との間に介設した圧縮バネと、より構成したため、菌類基盤の設置や取り外しが容易であり、しかも、測定状態において菌類基盤を堅実に保持することができる。
【0027】
また、励起光照射機構は、菌類基盤保持機構の斜め上方周辺に複数個配置した励起光用LEDよりなり、各励起光用LEDは生菌用と死菌用とに分けてそれぞれ互い違いに配設したため、各励起光用LEDより出射された励起光を菌類基盤やフィルタ等により阻害されることなく、直接的にフィルタ上の菌類に照射することができ、効率的な蛍光発光を促すことができる。また、生菌用と死菌用の励起光用LEDを互い違いに配設したことにより、フィルタ上の菌類に対しムラ無く励起光を照射することができる。
【0028】
また、撮像カメラは、測定用フィルタ上の菌体群を所定数の格子状区画に区分して区画毎にCMOSイメージセンサーによって把握した光によって別途に接続したコンピューターを介して画像処理することとしたため、直接的な検鏡によって生死菌の数を視覚的に計数する場合に比して、労力を飛躍的に削減しつつも正確で、且つ、測定者の個人差によることなく安定した状態判別を行うことができる。
【0029】
また、XY軸調整機構は、X軸用モータとY軸用モータとの各出力軸を二層のXYステージにそれぞれ連動連設すると共に、XYステージには予め原点位置を設定しておき、二層のXYステージをXY軸方向へ微調整移動するに際しては原点位置を中心とした移動距離情報を各XY軸用モータの制御部に送信して原点補正を行うべく構成したため、測定毎の再現性を正確に保持しつつ、XYステージ上の菌類基盤保持機構をXY軸方向に移動させて状態判別を行わせることができる。
【0030】
また、本発明に係る生死菌状態判別方法では、測定用フィルタに菌体を濾過採取する工程を、試験管に検体を少量滴下する工程1と、試験管に専用試薬を滴下し、密封して攪拌後静置する工程2と、測定用フィルタを別途設けたフィルタハウジング中に収納してセットする工程3と、測定用フィルタを収納したフィルタハウジングを別途設けたシリンジの先端に接続して、フィルタハウジング内部とシリンジ内部とを連通状態とする工程4と、試験管中の検体をシリンジ内部に注入する工程5と、シリンジ内部を加圧してシリンジ先端からフィルタハウジング内の測定用フィルタへ向かって検体と共に菌体を圧入することにより測定用フィルタ面に染色された菌体のみを濾過採取する工程6と、測定用フィルタをフィルタハウジングから取り出して菌類基盤上に載置することにより、測定用フィルタ面に濾過採取された菌体群を測定用フィルタを介して菌類基盤上に配置する工程7と、菌類基盤を前述の生死菌状態判定装置における菌類基盤保持機構に挿入し、励起光照射機構と撮像カメラより構成した生死菌状態判定装置を用いて、菌体の状態を画像として把握して生死菌の状態を判定する工程8と、を行って前記生死菌状態測定装置に用いて生死菌の状態判定を行うこととしたため、比較的容易な作業でありながら、菌体の状況把握が従来に比して正確で、更には撮像画像を介して正確な生菌、死菌の状況把握を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】状態判定システムの構成を示した説明図である。
図2】本実施形態に係る判定装置の構成を示した説明図である。
図3】菌類基盤保持機構及びXYステージの構成を示した説明図である。
図4】蛍光染色された菌体をフィルタ上に濾別する過程を示した説明図である。
図5】測定機構の要部構成を示した分解斜視図である。
図6】制御部において実行される画像処理を示したフローである。
図7】主要な電気的構成を示すブロック図である。
図8】光量テーブルを示した説明図である。
図9】制御部にて実行される処理を示したフローである。
図10】光量テーブルを示した説明図である。
図11】制御部にて実行される処理を示したフローである。
図12】光量テーブルを示した説明図である。
図13】制御部にて実行される処理を示したフローである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に、本実施形態に係る生死菌の状態判定装置及び生死菌状態判定方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は本実施形態に係る生死菌の状態判定装置(以下、判定装置Aという。)とコンピュータCとを電気的に接続して構築した生死菌の状態判定システムSを示す説明図である。
【0033】
判定装置Aは、略方形状のケース本体10と、ケース本体10内に収納した測定機構11とより構成されている。
【0034】
ケース本体10は、略密閉方形状に形成されて内部を暗室空間としており、安定載置のために底部にウエイトを設け、正面の側壁には開閉蓋体12を開閉自在に設けている。
【0035】
測定機構11は、生死菌の判別を行うための部位であり、電圧変換部49aを介設した電源ケーブル49を介して図示しない商用電源より供給された電力により稼動する。
【0036】
開閉蓋体12は、開蓋操作により内部の測定機構11が稼動停止し、閉蓋操作により稼動するように測定機構11と連動連設されている。
【0037】
開閉蓋体12により開閉される開閉口13は、菌類基盤挿入口14としており、菌類基盤挿入口14には測定機構11の一部として正面部分を構成する菌類基盤保持機構15が設けられている。
【0038】
図2に示すように菌類基盤保持機構15は、ケース本体10の内部に設けた略門型の固定フレーム16に設置し、図3に示すように、使用者Pにより挿入される平面視長方形状の菌類基盤17(図1参照)の長手側両側縁を左右外側方から挟持する左右レール18L,18Rと、左右レール18L,18Rの一方(本実施形態では左レール18L)を外側方へ変位して左右レール18L,18Rによる菌類基盤17の挟持を解除するためのレール変位機構19と、菌類基盤挿入口14からレール変位機構19の操作を行うために左右レール18L,18Rの一方の外側方に配設し、中途の枢支部20aを中心に回動操作可能に構成した操作レバー20とより構成し、レール変位機構19は左右レール18L,18Rの一方に水平に突設した摺動用軸21と、摺動用軸21の頭部に設けた操作レバー当接突部21aと、操作レバー当接突部21aに先端を当接した操作レバー20の中途部をXYステージ22に枢支した操作枢支部23と、左右レール18L,18Rの一方の外側面と操作レバー20先端との間に介設した圧縮バネ24とより構成している。
【0039】
菌類基盤保持機構15に挿入固定する菌類基盤17は、検体から採取した菌体を載置しており、具体的には、後述するように検体から採取して蛍光染色溶液にて処理した菌体を測定用フィルタ17aにより濾過して採取し、処理菌体の付着した測定用フィルタ17aごと菌類基盤17に載置して測定機構11における菌類基盤保持機構15にセットする。
【0040】
また、図2に示すように菌類基盤保持機構15の周辺においては励起光照射機構25を配設しており、励起光照射機構25は、菌類基盤保持機構15の斜め上方周辺に複数個配置した励起光用LED26よりなり、各励起光用LED26は生菌用LED26aと死菌用LED26bとに分けてそれぞれ互い違いに配設している。
【0041】
すなわち、全体で6個の励起光用LED26を生菌用3個と死菌用3個に分けて互い違いに環状に配設している。
【0042】
生菌用LED26aは、488nmの波長を含む青色の励起光を出射可能な発光ダイオード(LED)を用いており、死菌用LED26bは、530nmの波長を含む緑色の励起光を出射可能な発光ダイオード(LED)を用いている。各励起光用LED26は、処理菌体の付着した測定用フィルタ17aに向って斜め上方より集中して励起光を照射可能に構成している。付言すれば、各励起光用LED26は、測定用フィルタ17aの上方で、測定用フィルタ17aを囲むように環状に配置し、測定用フィルタ17a上の菌体に対して斜め上方から多角的に励起光を照射可能に構成している。
【0043】
更には、固定フレーム16上には、染色溶液で処理した菌体付着の測定用フィルタ17a上方位置において、環状に配置した各励起光用LED26の内方空間を介して測定用フィルタ17aに指向させた撮像カメラ27を設けている。
【0044】
撮像カメラ27は、測定用フィルタ17a上の菌体群を所定数の格子状区画に区分して区画毎にCMOSイメージセンサ28にて受光した光によって、測定機構11の後部に配設した制御部29へ受光信号を送信し、制御部29にてパターンマッチングによる画像解析処理を施した上で、コンピュータCへ画像データ及び解析結果を送信する。
【0045】
具体的には、撮像カメラ27は測定用フィルタ17a上の菌体を個別判断可能な程度に拡大する光学系を備えており、測定用フィルタ17aの全体をいっぺんに1コマで撮像するのではなく、該測定用フィルタ17aを後述するXYステージ22によって、例えば24コマのXY軸移動させることにより、該測定用フィルタ17aの付着菌体を仮想区画した24コマの仮想格子毎にそれぞれを撮影する。
【0046】
結果的には、撮像カメラ27の撮像ポイントは、測定用フィルタ17aの直径約1cmの面積を例えば24コマに仮想区分して、各区画した区分毎に撮影するものであり、そのためにはXYステージ22によって測定用フィルタ17aをXY移動する。
【0047】
撮像カメラ27と測定用フィルタ17aとの間には、蛍光の受光時に不要の励起光や雑光線が混合して撮像されないように、これら雑光線除去のためのバンドパスフィルタ30を介在させている。
【0048】
バンドパスフィルタ30は、生菌用と死菌用の二種類の丸型フィルタを方形状のフレーム31に前後して配設して構成している。
【0049】
フレーム31の二種類のバンドパスフィルタ30は、生菌と死菌の撮像に応じて切替自在なフィルタ切替機構32を介して切り替える。
【0050】
フィルタ切替機構32は、固定フレーム16に搭載した切替フレーム33の上端に配設した切替用ソレノイド34と、切替用ソレノイド34のプランジャー先端に枢支連結した駆動アーム35と、駆動アーム35の中途部を切替フレーム33に枢支する枢支部36と、枢支部36の下方で駆動アーム35と切替フレーム33との間に介在したスプリング37と、駆動アーム35の下端と中途を枢支連結した前後進可能な作用アーム38と、作用アーム38の前端に連設したバンドパスフィルタ30を備えるフレーム31とより構成している。
【0051】
したがって、電気的なソレノイドの進退操作により駆動アーム35、作用アーム38、枢支部36等のリンク機構を介して連動連結したバンドパスフィルタ30は前後進の切替により二種類のフィルタを撮像カメラ27と測定用フィルタ17aとの間に介在可能に構成し、生菌、死菌の撮像に際し、励起光や不要の雑光線が混入するのを防いでいる。
【0052】
測定用フィルタ17aを配置した菌類基盤保持機構15を例えば24コマ撮像するためにXY移動させるためのXY軸調整機構40は、図3(c)に示すように、X軸用モータ41とY軸用モータ42との各出力軸を二層のXYステージ22にそれぞれ連動連設すると共に、XYステージ22には予め原点位置を設定しておき、二層のXYステージ22をXY軸方向へ微調整移動するに際しては原点位置を中心とした移動距離情報を各XY軸用モータ41,42の制御部に送信して原点補正して移動すべく構成している。
【0053】
すなわち、X軸方向に摺動するX盤43とY軸方向に摺動するY盤44とをそれぞれ別動状態で二層に重積している。
【0054】
X盤43は、X軸用モータ41の駆動軸に螺合機構やラック・ピニオン等所定の駆動機構を介してX軸方向に摺動可能に構成している。
【0055】
X盤43の下層にはY盤44がY軸用モータ42の駆動軸に所定の駆動機構を介してY軸方向に摺動可能に構成している。
【0056】
X軸用モータ41の駆動によりX盤43はX軸方向に移動し、X盤43の下面でX盤43を上面に載置したY盤44はY軸方向への移動時に上面のX盤43を共に一体としてY軸方向に移動させてXY盤43,44の原点からXY軸方向に移動調整して、24コマ相当分だけ撮像ポイントに対する位置調整を行う。
【0057】
なお、Y盤44と一体のX盤43の移動は、X軸モータ41と共に移動するように構成している。
【0058】
また、XY盤43,44はそれぞれ下方にXY盤43,44のXY平面移動を支持するためのXY支持基盤43a,44aを設けており、X盤43のX支持基盤43aは、Y盤44と一体に構成されY盤44のY軸移動を上面においてX盤43へ伝動しX盤43のY軸移動を促す。
【0059】
次に、検体に染色溶液を混合して検体から濾別菌体を測定用フィルタ17aに載置するための技術について説明する。
【0060】
まず、菌体付着の検体を生理食塩水に溶解し、その生理食塩水に生菌用と死菌用の二種類の蛍光染料を混入した溶液を調製する。具体的には、測定対象物において菌体付着の検体が測定対象物内部に存在する場合と測定対象物表面に存在する場合とで採取法を分けて得られた検体約1gに対して、滅菌済の生理食塩水9ccを加えて撹拌希釈する。
【0061】
次いで、検体溶解液中に存在する検体の固形残渣を濾過や遠心分離機により分離した溶液に生菌用と死菌用の蛍光染色溶液とともに、染色促進剤や流失防止剤を混入溶解させて溶液を調製する。
【0062】
ここで、蛍光染色溶液としては、例えば生菌用としてフルオレセインまたはその誘導体を、死菌用としてプロピジウムイオダイトを用いることができる。
【0063】
フルオレセインは、生菌細胞内においては分散され、死菌細胞内においてはその細胞内に取込まれ、中心波長488nmの励起光の吸収によりその中心波長が530nmの強い蛍光発光を呈する。
【0064】
一方、プロピジウムイオダイトは、生菌細胞内には浸透できず、死菌細胞内には浸透して分散することができ、中心波長530nmの励起光の吸収により中心波長が620nmの強い蛍光発光を呈する。
【0065】
また、生菌用のフルオレセインまたはその誘導体や、死菌用のプロピジウムイオダイトからなる蛍光染料は、励起光の吸収に伴い撮像可能な蛍光発光を呈すために、生理的食塩水に希釈する際には、少なくとも3μmol/ml以上の濃度に調製する。但し、過剰な濃度は生菌に対し悪影響を与える危険があることから、最大でも15μmol/mlに制限することが望まれる。
【0066】
また、生菌の蛍光染色に用いるプロピジウムイオダイトは、染色促進効果を期待してジメチルスルホキシド(DMSO)を溶媒として溶解させても良い。蛍光染料の細胞内への浸透阻害は主に細胞膜に起因するが、DMSOは、蛍光染料の菌類細胞内への浸透を高めることができる。
【0067】
また、生菌や死菌に浸透させた蛍光染料の流出を防止すべく、流出防止剤を添加するようにしても良い。この流出防止剤としては、例えば塩化カリウム溶液を採用することができる。
【0068】
次に、菌体が分散され染色剤が混入された溶液(以下、染色菌液という。)を室温又は必要に応じて所要温度に加温すること、好ましくは25乃至35℃程度に加温することにより、染色促進剤の作用とも相俟って蛍光染料が菌類の細胞内に浸透されて有効な染色がなされる。染色に要する時間は加温条件によっても多少異るが、概ね3〜15分程度である。
【0069】
次いで、図4(a)に示すように、得られた染色菌液をシリンジ45内に注入し、測定用フィルタ17aを収容した濾過カートリッジ47へ染色菌液を圧送して測定用フィルタ17a上に菌体46をトラップする。
【0070】
この操作により図4(b)に示すように、測定用フィルタ17a上には、蛍光染料で染色された菌体46が濾別される。
【0071】
そして、図4(b)や図4(c)に示すように、この菌体46の濾別された測定用フィルタ17aをピンセット48等を用いて菌類基盤17上に載置して判定装置Aにより生死菌の状態判定を行う。
【0072】
次に、このようにして調製した測定サンプルの判定装置Aによる判定処理を以下に詳説する。
【0073】
まず、図1に示すように、ケース本体10の開閉蓋体12を開蓋し、菌体46が濾別された測定用フィルタ17aを載置した菌類基盤17を菌類基盤挿入口14の菌類基盤保持機構15に挿入固定する。
【0074】
具体的には、図5に示すように、菌類基盤挿入口14から操作レバー20を介して左右レール18L,18Rの位置を変位させることで菌類基盤17の両側縁を左右外側方から左右レール18L,18Rで挟持し、適正な測定位置に調整しながら菌類基盤17のセットを完了する。
【0075】
その後、ケース本体10の開閉蓋体12を閉蓋して測定機構11を稼動させ、菌類基盤保持機構15の周辺に配設した励起光照射機構25により生菌用LED26aからの青色光と死菌用LED26bからの緑色光との2種の励起光を切り替えつつ6方照射することで測定用フィルタ17a上の生菌、及び死菌からそれぞれの蛍光発光を得る。
【0076】
具体的には、励起光照射機構25の生菌用LED26aから発せられた青色光に含まれる波長488nmの励起光照射により、フルオルセインが細胞内に浸透した測定用フィルタ17a上の生菌からは長波長の530nmの緑色蛍光の発光を得る一方、死菌用LED26bから発せられた緑色光に含まれる波長530nmの励起光照射により、プロピジウムイオダイトが細胞内に浸透した死菌からは長波長の620nmの赤色蛍光の発光を得る。
【0077】
このような励起光の照射状態で、生菌と死菌の撮像に応じ、フィルタ切替機構32により撮像カメラ27と測定用フィルタ17aとの間に介在させたバンドパスフィルタ30を生菌用又は死菌用に切り替えて励起光や雑光線を遮断する。
【0078】
すなわち、電気的な切替用ソレノイド34の進退操作によりバンドパスフィルタ30を切り替えて、生菌と死菌のそれぞれについて撮像するに際し不要の雑光線が混入することを防止する。なお、このバンドパスフィルタ30の生菌用フィルタと死菌用フィルタの切り替えは、撮像カメラ27による1回の撮影毎に制御部29を介して連動して行われる。
【0079】
撮像カメラ27による撮影は、菌類基盤保持機構15に設定した測定用フィルタ17aの付着菌体46をXYステージ22により24コマに仮想区画して、菌類基盤保持機構15のXY軸調整機構40によりXY移動させて24コマそれぞれの仮想格子区画毎にバンドパスフィルタ30を介して生菌用と死菌用に分けて行う。
【0080】
すなわち、1コマの仮想格子区画において生菌と死菌の撮影をそれぞれ1回行う毎に、菌類基盤保持機構15のXY軸調整機構40の原点位置を中心とした移動距離情報が各XY軸用モータ41,42(図示省略)の制御部に送信されて原点補正が行われる。
【0081】
そして、XYステージ22上の測定用フィルタ17aが、次の撮像ポイントである他方の仮想格子区画に位置調整されることで、測定用フィルタ17a上を合計24コマ分、生菌と死菌でそれぞれ24回、合計48回、撮像カメラ27により撮影される。
【0082】
そして、撮像カメラ27による撮影画像は、励起光の照射によって生菌、死菌から得られたそれぞれの蛍光発光強度をCMOSイメージセンサ28(図2参照)によって把握し、制御部29で画像処理される。
【0083】
この制御部29における画像処理では、大まかにグレースケール画像変換工程や、菌マッチングパターン工程、生菌一致数記録工程等が行われる。
【0084】
具体的には図6のフローに示すように、まず、CMOSイメージセンサ28により得られた画像データをグレースケール画像に変換するグレースケール画像変換工程が行われる(ステップS10)。
【0085】
次いで、このグレースケール画像変換された情報を元に、菌体の判別を行うための菌マッチングパターン工程を行う。
【0086】
菌マッチングパターン工程は、生菌の画像データと死菌の画像データとのそれぞれについて、制御部29に予め登録された菌種の特定形状パターンとグレースケール画像上に表された被写体の形状との一致を照合することで行う。
【0087】
また、この菌マッチングパターンの設定は、登録された菌種の特定形状パターンについて、XY軸のピクセル数を5×5、6×6、及び8×8とした3種類の設定があり(ステップS11)、各設定毎に以下の作業を繰り替えして行う。
【0088】
制御部29に登録された菌種の特定形状パターンとグレースケール画像上に表された被写体形状の照合は、特定形状パターンがグレースケール画像上の1コマの仮想格子区画内につき、画像の開始点から1ピクセル毎にY軸方向移動してスキャニング照合することで行う(ステップS12、ステップS15)。
【0089】
この際、制御部29に登録された菌種の特定形状と一致する箇所をグレースケール画像上に発見した場合(ステップS12:Yes)には、その一致箇所にスポットマークをつける(ステップS13)。マーキング後は、画像のスキャン開始点から既にマークした特定形状パターン分Y軸方向へ特定形状パターンを移動調整して(ステップS14)、スキャニング照合の続きを開始する(ステップS16:No)。
【0090】
Y軸一列分、すなわち縦一列のスキャニング照合が完了した場合(ステップS16:Yes)は、画像のスキャン開始点からX軸方向に1ピクセル分、すなわち横方向に特定形状パターンを移動し(ステップS17)、縦方向をスキャニング照合する(ステップS18:No)。
【0091】
このようにグレースケール画像上1コマの仮想格子区画内全域を縦横に亘ってスキャニング照合し、生菌、及び死菌のそれぞれについてマーキングする同定作業を24コマ分行う(ステップS19)。
【0092】
そして、生菌一致数記録工程では、各仮想格子区画内に生菌及び死菌毎にマークされたスポット数を、生菌、死菌のそれぞれ同定数として認識して各仮想格子区画毎に記録する(ステップS20)。
【0093】
このようにして判別された測定フィルタ上に存在する生菌と死菌の数情報が、撮像カメラ27によって得られた画像データとともにコンピュータCのモニタ上に反映さることにより、菌体の状態を画像として把握して生死菌の状態を判定可能としている。
【0094】
一方、コンピュータCでは、撮像された各画像データを表示すると共に、各画像データにおいて検出された生菌及び死菌の数情報を併せて表示する。
【0095】
このように、本実施形態に係る判定装置Aによれば、使用者が肉眼で検鏡しながらカウンターを片手に生菌や死菌を一つ一つ計数する必要もなく、比較的容易な作業でありながら、菌体の状況把握が従来に比して正確で、更には撮像画像を介して正確な生菌、死菌の状況把握を行うことができる。すなわち、上述の構成を備えた微生物蛍光画像測定機や微生物蛍光画像測定方法を提供することができるとも言える。
【0096】
次に、第1の変形例に係る生死菌の状態判定装置(以下、判定装置A2という。)について説明する。なお、以下に説明する各変形例では、前述の判定装置Aと略同様の構成については説明を省略する場合がある。また、以下に説明する各変形例の構成、例えば電気的構成などについては、前述の判定装置Aにおいても備えられていると解することができ、その逆に、前述の判定装置Aにおける構成は、以下に説明する各変形例においても備えられていると解することもできる。
【0097】
判定装置A2は、菌数をより正確に計数可能とすべく構成した点に特徴を有している。上述した判定装置Aでは、生菌用LED26aや死菌用LED26bから照射される励起光の光量について特に調整を行っておらず、例えば、これらLED26からの励起光の光量を一定としている場合、測定用フィルタ17a上の所定面積あたりの菌体46が多いと菌全体からの蛍光の発光量が多く、ある1つの菌体46の外縁と、この菌体46に近接する別の菌体46の外縁との境界が、取得した画像上において曖昧となってしまい、2つの菌体46があるにも拘わらず、画像上では1つの光の塊として写るので、パターンマッチングによる各菌体46の認識、すなわち、個々の菌体46を分離して認識することが困難となり、正確な菌数の算出が困難となる場合が考えられる。
【0098】
また、測定用フィルタ17a上の所定面積あたりの菌数が少ないと、菌全体からの蛍光の発光量が少なく、蛍光染色された夾雑物が発する蛍光ノイズについても菌体46であるとして誤認識してしまう可能性が高まるという問題が考えられる。
【0099】
そこで、判定装置A2では、測定用フィルタ17a上の撮影を行うに際し、基準となる第1コマ目(最初の区画の撮影)で大凡の菌数の値を取得し、得られた菌数の値が所定の値よりも多い場合にはLED26から発せられる励起光の光量を減らし、蛍光の発光量を抑制して各菌体46の境界を明瞭とし、また、得られた菌数の値が所定の値よりも少ない場合には励起光の光量を増やすことで、蛍光の発光量を増やし、菌体形状をより鮮明に撮像可能として正確な菌数測定を可能としている。
【0100】
以下ではまず、判定装置A2の電気的構成について説明し、その後、制御部29内における処理について説明する。
【0101】
図7は、判定装置A2における主要な電気的構成を示したブロック図である。図7に示すように、制御部29は、CPU51と、ROM52と、RAM53とを備えている。ROM52はCPU51の処理において必要なプログラム等が格納されており、RAM53はそのプログラム等の実行に際し一時的な記憶領域として機能する。
【0102】
具体的には、RAM53には、CMOSイメージセンサ28にて撮影された画像データや、菌数カウント値、死菌撮影フラグなどが記憶される。菌数カウント値は、CPU51がパターンマッチング処理を行うことで検出した菌の数であり、生菌数カウント値と、死菌数カウント値が記憶される。また、死菌撮影フラグは、死菌を撮影すべきタイミングか否かの判断に用いられるフラグであり、死菌を撮影するタイミングではない場合(例えば、生菌を撮影するタイミングである場合)はOFF、死菌を撮影するタイミングの場合はONの値を取る。
【0103】
ROM52には、判定装置A2の稼動に必要な各種処理を実現するためのプログラムや、パターンマッチングに必要となるテンプレート画像、CPU51が判断等を行う際に参照するテーブルなどが、それぞれ所定の領域に格納されている。例えばテーブルとしては、図8に示すような菌数等に応じてLED26からの励起光の光量を変化させるための光量テーブルが格納されている。すなわち、この光量テーブルは、パターンマッチングにより検出された菌数と、後述のLEDドライバ56への処理とが対応付けされたテーブルである。
【0104】
また、制御部29には、図1図2に示すように、電源スイッチ54や、開閉蓋体連動スイッチ55が接続されている。電源スイッチ54は、判定装置A2を稼動させるための主スイッチとして機能するものであり、また、開閉蓋体連動スイッチ55は、開閉蓋体12が開状態または閉状態のいずれであるかを検出するためのスイッチである。
【0105】
また、制御部29には、切替用ソレノイド34と、LEDドライバ56と、モータドライバ57と、撮像ユニット58とが接続されている。
【0106】
制御部29は、切替用ソレノイド34に対し、生菌又は死菌のいずれを撮影するタイミングかの情報が含まれたソレノイド駆動信号を送信する。ソレノイド駆動信号を受信した切替用ソレノイド34は、その信号の内容に応じて切替用ソレノイド34を駆動させ、フィルタ切替機構32を作動させてバンドパスフィルタ30の切り替えを行う。
【0107】
LEDドライバ56は、生菌用LED26aと死菌用LED26bとの点灯切り替えや、各LED26の光量調整を行う回路を備えており、制御部29から送信される励起信号や光量調整信号に応じて作動する。
【0108】
また、LEDドライバ56は記憶領域を備えており、同記憶領域には、生菌用LED26aや死菌用LED26bを発光させるに際し、光量の調整を行う上で参照される生菌用発光参照値や死菌用発光参照値(総称して発光参照値ともいう。)が格納される。発光参照値は、適量の菌数が存在する場合に適度な蛍光が得られるLED26の励起光量に相当する値が初期値として格納されている。
【0109】
励起信号には、LEDドライバ56に対して生菌用LED26aの点灯を指示する情報(以下、同情報を含んだ励起信号を生菌励起信号ともいう。)や、死菌用LED26bの点灯を指示する情報(以下、同情報を含んだ励起信号を死菌励起信号ともいう。)が含まれる。
【0110】
励起信号を受信したLEDドライバ56は、例えば生菌励起信号を受信した場合には生菌用発光参照値に応じた強度で生菌用LED26aを発光させ、死菌励起信号を受信した場合には、死菌用発光参照値に応じた強度で死菌用LED26bを発光させる。
【0111】
また、光量調整信号には、LEDドライバ56に対して減光を指示する減光情報(以下、減光情報を含む光量調整信号を減光信号ともいう。)や、増光を指示する増光情報(以下、増光情報を含む光量調整信号を増光信号ともいう。)や、減光や増光すべきLED26が生菌用LED26a又は死菌用LED26bのいずれであるかについての情報等が含まれる。
【0112】
光量調整信号を受信したLEDドライバ56は、例えば生菌用LED26aに関し減光信号を受信した場合には、生菌用LED26aの発光強度が低くなるよう生菌用発光参照値の値の書き換えを行い、死菌用LED26bに関して増光信号を受信した場合には、死菌用LED26bの発光強度が高くなるよう死菌用発光参照値の値の書き換えを行う。
【0113】
モータドライバ57は、X軸モータ41やY軸用モータ42の駆動制御を行う回路部である。制御部29は、モータドライバ57に対しては、モータ駆動信号を発出する。モータ駆動信号を受信したモータドライバ57は、予め記憶されている座標に従い、所定の撮影範囲(区画)が撮影画角内に入るようXYステージ22の移動を行う。
【0114】
撮像ユニット58は、CMOSイメージセンサ28を備えており、同CMOSイメージセンサ28にて得られた信号から画像データを構築し、制御部29へ送信する。制御部29が撮像ユニット58に対して撮影命令信号を送信すると、撮像ユニット58は、撮影により得られた画像データを制御部29へ戻す。
【0115】
また、制御部29にはコネクタ59が備えられており、同コネクタ59を介してコンピュータCとの間で双方向に通信可能としている。
【0116】
次に、制御部29において実行される測定用フィルタ17a上の生死菌の計数処理(以下、生死菌計数処理という。)について、図9を参照しつつ説明する。制御部29にて実行される生死菌計数処理は、判定装置A2を統括する処理(以下、メインルーチンという。)の一部として実行される。ここでは、生死菌計数処理について具体的に説明し、メインルーチンにおけるその他の各種処理についての説明は省略する。
【0117】
図9に示すように、生死菌計数処理では、まずCPU51は、RAM53の所定アドレスに記憶されている死菌撮影フラグの値の書き換えを行ってOFFとする(ステップS31)。また、LEDドライバ56に対し、生菌励起信号を送信する。
【0118】
次にCPU51は、死菌撮影フラグを参照し切替用ソレノイド34に対してソレノイド駆動信号を送信することでバンドパスフィルタ30の切り替えを行う(ステップS32)。すなわち、死菌撮影フラグがOFFの場合は生菌を撮影するタイミングである旨の情報を含んだソレノイド駆動信号を送信して生菌用のバンドパスフィルタ30を測定用フィルタ17aと撮像カメラ27との間に介入させ、死菌撮影フラグがONの場合は死菌を撮影するタイミングである旨の情報を含んだソレノイド駆動信号を送信して死菌用のバンドパスフィルタ30を介入させる。
【0119】
次に、CPU51は、撮像ユニット58に対して撮影命令信号を送信し、撮像カメラ27にて撮影を行わせ(ステップS33)、撮像ユニット58から受信した画像データをRAM53の所定アドレスに格納し(ステップS34)、格納された画像データをグレースケールに変換する(ステップS35)。
【0120】
次にCPU51は、RAM53に格納された画像データ上の所定位置において、ROM52に格納されているテンプレート画像を参照した上でパターンマッチングを行う(ステップS36)。ここで行うパターンマッチングの方法は、前述の判定装置Aにおいて述べた方法でも良く、また、公知の方法を採用することもできる。
【0121】
次にCPU51は、画像データ上の所定位置において行ったパターンマッチングが、テンプレート画像と一致したか否かについて判断を行う(ステップS37)。なお、テンプレート画像との一致は、必ずしも完全に合致する必要はなく、輝度や大きさ、形状などある程度の許容範囲内に含まれる状態も含む。
【0122】
ここで、テンプレート画像と一致したと判断した場合(ステップS37:Yes)には、CPU51は死菌撮影フラグを参照し、死菌撮影フラグがOFFであれば生菌数カウント値に、死菌撮影フラグがONであれば死菌数カウント値に1を加算する(ステップS38)。
【0123】
一方、テンプレート画像と一致していないと判断した場合(ステップS37:No)には、CPU51はRAM53上に格納されている画像全体のパターンマッチング処理が終了したか否かについて判断を行う(ステップS39)。ここでパターンマッチング処理が終了していないと判断した場合(ステップS39:No)には、CPU51は画像データ上におけるパターンマッチング位置をシフトさせ(ステップS40)、処理をステップS36へ戻す。
【0124】
一方、パターンマッチング処理が終了したと判断した場合(ステップS39:Yes)には、CPU51は、最初の撮影区画であるか否かについて判断を行う(ステップS41)。
【0125】
ここで最初の撮影区画ではないと判断した場合(ステップS41:No)には、CPU51は、処理をステップS45へ移す。一方、最初の撮影区画であると判断した場合(ステップS41:Yes)には、CPU51は死菌撮影フラグを参照した上でRAM53上の菌数カウント値を取得する(ステップS42)。具体的には、死菌撮影フラグがOFFであれば生菌数カウント値を、死菌撮影フラグがONであれば死菌数カウント値を取得する。
【0126】
次いでCPU51は、ROM52上に格納されている光量テーブルを参照して菌量の判断を行い(ステップS43)、テーブルに応じた光量調整信号をLEDドライバ56へ送信する(ステップS44)。またこのとき、死菌撮影フラグの状態に応じて、減光や増光すべきLED26が生菌用LED26a又は死菌用LED26bのいずれであるかについての情報を含む光量調整信号の生成を行う。本変形例において菌量の判断は、撮像区画内において菌体が接近して誤検出が高まる菌数以上であれば「多い」と判断し、適量であれば「中程度」と判断し、S/N比が悪化する菌数以下であれば「少ない」と判断することとしているが、必ずしも3段階で判断する必要はなく、より細分化しても良いのは勿論である。そして、例えば「多い」と判断した場合には、CPU51は減光信号をLEDドライバ56へ送信し、また、「少ない」と判断した場合には増光信号を送信する。
【0127】
次いでCPU51は、コネクタ59を介してコンピュータCに対し、RAM53上に格納されている画像データや、生菌数カウント値、死菌数カウント値などのデータを送信するデータ送信処理を行う(ステップS45)。
【0128】
次にCPU51は、死菌撮影フラグの値がOFFであるか否かの判断を行う(ステップS46)。ここで死菌撮影フラグの値がOFFであると判断した場合(ステップS46:Yes)には、CPU51はRAM53上に記憶されている死菌撮影フラグの値をONに書き換えると共に、LEDドライバ56に対し死菌励起信号の送信を行って(ステップS47)、処理をステップS32に戻す。
【0129】
一方、ステップS46において死菌撮影フラグがOFFではないと判断した場合(ステップS46:No)には、CPU51は、最後の撮影区画であるか否かについて判断を行う(ステップS48)。ここで、最後の撮影区画であると判断した場合(ステップS48:Yes)には、CPU51は処理を終了し、必要に応じて処理をメインルーチンへ戻す。
【0130】
一方、ステップS48において、最後の撮影区画ではないと判断した場合(ステップS48:No)には、CPU51はRAM53上に記憶されている死菌撮影フラグの値をOFFに書き換えると共に、LEDドライバ56に対し生菌励起信号の送信を行い(ステップS49)、モータドライバ57に対してモータ駆動信号を送信して次の撮影区画へXYステージ22を移動させる(ステップS50)と共に、処理をステップS32へ戻す。
【0131】
そして、このような構成を備えた本第1変形例に係る判定装置A2によれば、最初の撮影区画において、まず、適量の菌数が存在する場合に適度な蛍光が得られるLED26の励起光量で大凡の菌数の値を取得し、得られた菌数の値が所定の値よりも多い場合には励起光の光量を減らし、蛍光の発光量を抑制して各菌体の境界を明瞭とし正確な菌数測定が可能なる。
【0132】
また、得られた菌数の値が所定の値よりも少ない場合には励起光の光量を増やすことで、蛍光の発光量を増やし、菌体形状をより鮮明に撮像可能として正確な菌数測定を可能となる。
【0133】
次に、図10及び図11を参照しつつ、第2の変形例に係る生死菌の状態判定装置(以下、判定装置A3という。)について説明する。
【0134】
判定装置A3もまたA2と同様に、菌数をより正確に計数可能とすべく構成した点に特徴を有するものであるが、特に、菌の染色度合いに応じて励起光の光量の調整を行う点で構成を異にしている。測定対象となる菌類は、その種類によって蛍光染色されやすい菌と、されにくい菌が存在する。このことは、励起光(LED光)の光量を一定としている場合、同じ励起光の照射量にも拘わらず、蛍光発光が十分な菌と、不十分な菌が存在することとなる。特に、蛍光発光が不十分な菌については、パターンマッチングの該当とならず、計数漏れにつながり、菌数の正確な計数が困難となる場合が考えられる。
【0135】
そこで、判定装置A3では、測定用フィルタ17a上の撮影を行うに際し、基準となる第1コマ目(最初の区画の撮影)で得られた画像データのパターンマッチング処理を行い、パターンマッチングにより菌であると認識された複数の光点にについて輝度を算出すると共に、これら複数の光点の輝度の平均値を取得し、得られた輝度の平均値が所定の値よりも小さい場合には励起光の光量を増やすことで蛍光の発光量を増やし、菌体形状をより鮮明に撮像可能として正確な菌数測定を可能としている。
【0136】
具体的な構成は前述の判定装置Aや判定装置A2と大凡同様であり、大部分の説明は先の説明に委ねることとするが、特徴的な差異について述べるならば、まず、制御部29内に備えられているROM52の所定記憶領域には、図10に示す輝度とLEDドライバ56への処理とが対応付けされた光量テーブルが格納されている。
【0137】
また、図9において示したフローにおけるステップS42〜ステップS44に代えて、図11に示すステップS61〜ステップS63を実行することとしている。
【0138】
従って、判定装置A3の制御部29は、図9及び図11に示すフローに従って処理を開始すると、生菌撮影用のバンドパスフィルタ30をセットした上で撮像ユニット58に対して撮影を指示し(ステップS31〜ステップS33)、撮像ユニット58から受信した画像データをRAM53に格納してグレースケール変換し(ステップS34〜ステップS35)、画像データの全体に亘りパターンマッチング処理を行って生菌数のカウントを行う(ステップS36〜ステップS40)。
【0139】
次に、最初の撮影区画である場合(ステップS41:Yes)、図11に示すように、CPU51はパターンマッチング処理により菌として認識された画像データ上の複数の部位の輝度から、その平均値を算出する(ステップS61)。
【0140】
次に、CPU51は、ROM52上に格納されている光量テーブル、すなわち図10に示すテーブルを参照して輝度の判断を行い(ステップS62)、テーブルに応じた光量調整信号をLEDドライバ56へ送信する(ステップS63)。例えば、比較的染色されにくい菌が多く検出されている場合は低輝度と判断され、LEDドライバ56に対して増光信号が発出されることとなる。本変形例において輝度の判断は、撮像区画内において菌と判断された光点の輝度の平均値が、検出漏れのおそれが高まる程度の輝度以下であれば「低輝度」と判断し、適当な輝度であれば「中輝度」と判断し、パターンマッチングから逸脱するおそれが高まる程度の高輝度であれば「高輝度」と判断することとしているが、必ずしも3段階で判断する必要はなく、より細分化しても良いのは勿論である。
【0141】
そして、コンピュータへデータ送信処理を行った後(ステップS45)、同様の処理を再度死菌撮影によって得られた画像データに対しても行い(ステップS46:Yes)、二番目以降の撮影区画については調整された輝度にて撮影を行いつつパターンマッチング処理により菌数の算出が行われる。
【0142】
このように、判定装置A3によれば、基準となる第1コマ目でパターンマッチングにより菌であると認識された画像上の複数の光点について輝度を測定すると共に、輝度の平均値を取得し、得られた輝度の平均値が所定の値よりも小さい場合には励起光の光量を増やすこととしており、蛍光の発光量を増やし、菌体形状をより鮮明に撮像可能として正確な菌数測定を行うことができる。
【0143】
次に、図12及び図13を参照しつつ、第3の変形例に係る生死菌の状態判定装置(以下、判定装置A4という。)について説明する。
【0144】
判定装置A4もまたA2やA3と同様に、菌数をより正確に計数可能とすべく構成した点に特徴を有するものであるが、特に、撮影区画内に多数の菌が存在するものの、これらの菌の多くが蛍光染色されにくい菌である場合に、可及的に正確な菌数の計数がなされるよう処理を行う点で構成を異にしている。
【0145】
付言するならば、判定装置A4は、判定装置A2や判定装置A3の特徴点を兼ね備えた判定装置であると言え、染色されにくい菌が多く検出された場合には、敢えて励起光量を減じ、1つの撮影区画に関し生菌又は死菌のそれぞれについて複数枚の撮影を行うことで、近接する2つの菌体の分離検出に関する問題と、S/N比の問題との両者を解消することとしている。
【0146】
具体的には、まず、制御部29内に備えられているROM52の所定記憶領域には、図12に示す輝度及び菌数とLEDドライバ56への処理とが対応付けされた光量テーブルが格納されている。
【0147】
また、図9において示したフローにおけるステップS42〜ステップS44に代えて、図13に示すステップS71〜ステップS74を実行することとしている。
【0148】
また、RAM53の所定アドレスには、複数回の撮影を行うべきか否かを示す複数回撮影フラグが割り当てられている。この複数回撮影フラグはON又はOFFの二値をとり、初期値はOFFに設定される。
【0149】
従って、判定装置A4の制御部29は、図9及び図13に示すフローに従って処理を開始すると、死菌撮影フラグをOFFにすると共に複数回撮影フラグをOFFとし(ステップS31)、生菌撮影用のバンドパスフィルタ30をセットした上で撮像ユニット58に対して複数回撮影フラグの状態を含む撮影命令信号を発出して撮影を指示し(ステップS32〜ステップS33)、撮像ユニット58から受信した画像データをRAM53に格納してグレースケール変換し(ステップS34〜ステップS35)、画像データの全体に亘りパターンマッチング処理を行って生菌数のカウントを行う(ステップS36〜ステップS40)。
【0150】
次に、最初の撮影区画である場合(ステップS41:Yes)、図13に示すように、CPU51は死菌撮影フラグを参照した上でRAM53上の菌数カウント値を取得する(ステップS71)。ここでは、死菌撮影フラグがOFFなので生菌数カウント値を取得する。次に、CPU51はパターンマッチング処理により菌として認識された画像データ上の複数の部位の輝度から、その平均値を算出する(ステップS72)。
【0151】
次に、CPU51は、ROM52上に格納されている光量テーブル、すなわち図12に示すテーブルを参照して菌数及び輝度の判断を行い(ステップS73)、テーブルに応じた光量調整信号をLEDドライバ56へ送信する(ステップS74)。例えば、検出された菌数は多いものの、これらの平均輝度が検出漏れのおそれが高まる程度の輝度であれば「低輝度」かつ「菌数多い」と判断し、LEDドライバ56に対して減光信号を発出すると共に、複数枚撮影フラグの値をONにする。本変形例における輝度や菌数の判断は、前述の判定装置A2や判定装置A3にて述べたように、より細分化しても良いのは勿論である。
【0152】
そして、コンピュータへデータ送信処理を行った後(ステップS45)、同様の処理を再度死菌撮影によって得られた画像データに対しても行い(ステップS46:Yes)、最初の撮影区画における死菌の計数処理等が終了すると、二番目以降の撮影区画についての処理を開始する(ステップS48:No〜ステップS50→ステップS32)。
【0153】
ここで、二番目の撮影区画以降における撮影に際し、CPU51は、撮像ユニット58に対し、複数回撮影フラグの値、すなわち複数回撮影フラグ=ONの情報を含む撮影命令信号を発出して撮影を指示する。
【0154】
複数回撮影フラグ=ONの情報を受信した撮像ユニット58は、同じ位置で所定複数枚数(例えば2〜10枚)の撮影を行い、これらの画像データを制御部29へ向けて送信する。
【0155】
複数枚の画像データを受信した制御部29においてCPU51は、各画像データをグレースケールに変換した後に、撮影範囲全体に亘り所定位置における輝度を各画像データ間の平均輝度とした1枚の輝度平均化画像データを生成する(ステップS35)。
【0156】
そして、得られた輝度平均化画像データに対しパターンマッチング処理を行うことで菌類の計数を行うこととなる。
【0157】
このように、判定装置A4によれば、基準となる第1コマ目でパターンマッチングにより菌であると認識された画像上の複数の光点について輝度を測定して輝度の平均値を取得すると共に大凡の菌数の値を取得し、得られた輝度の平均値や菌数に応じて二番目の撮影区画以降における撮影に際し、励起光の光量を調整するようにしている。
【0158】
特に、得られた輝度の平均値が所定の値よりも小さく、かつ、検出された菌数が多い場合には励起光の光量を減じ、二番目の撮影区画以降では複数枚の撮影により得られた輝度平均化画像データに基づいてパターンマッチング処理を行うこととしており、菌類の輪郭は光量を減じてより明確とすると共に、パターンマッチングの邪魔となるランダムノイズ等は輝度平均化画像データの生成により希釈化することで正確な菌数測定を行うことができる。
【0159】
上述してきたように、本実施形態に係る判定装置A〜A4によれば、内部を暗室空間とし内部に測定機構を収納したケース本体と、ケース本体の正面に形成した菌類基盤挿入口を開閉自在とした開閉蓋体と、ケース本体内に収納して、検体から採取した菌体の生死菌の判別、菌数の計測等を行うべく構成した測定機構と、より構成すると共に、測定機構は、検体から採取した菌体を載置した菌類基盤を挿入固定する菌類基盤保持機構と、菌類基盤保持機構の斜め上方周辺に配置し、菌類基盤上の菌体に向かって集中照射可能に構成した励起光照射機構と、菌類基盤上の菌体上方に固定フレームを介して配設した撮像カメラと、菌類基盤保持機構を支持する別動する二層からなるXYステージをXY軸方向に微調整移動するXY軸調整機構と、より構成したため、使用者が肉眼で検鏡しながらカウンターを片手に生菌や死菌を一つ一つ計数する必要もなく、比較的容易な作業でありながら、菌体の状況把握が従来に比して正確で、更には撮像画像を介して正確な生菌、死菌の状況把握を行うことができる。
【符号の説明】
【0160】
10 ケース本体
11 測定機構
12 開閉蓋体
13 開閉口
14 菌類基盤挿入口
15 菌類基盤保持機構
16 固定フレーム
17 菌類基盤
17a 測定用フィルタ
18L 左レール
18R 右レール
19 レール変位機構
20 操作レバー
20a 枢支部
21 摺動用軸
21a 操作レバー当接突部
22 XYステージ
23 操作枢支部
24 圧縮バネ
25 励起光照射機構
27 撮像カメラ
28 CMOSイメージセンサ
29 制御部
30 バンドパスフィルタ
32 フィルタ切替機構
40 XY軸調整機構
41 X軸モータ
42 Y軸用モータ
45 シリンジ
46 菌体
46 付着菌体
47 濾過カートリッジ
A〜A4 判定装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13