(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に発明を実施するための形態を示す。
図1に示すように、本実施形態の複合型計測システム1は、計測手段2を複数備えている。この計測手段2には、事象を検知する検知部21と、検知部21で検知した事象に関するデータをサーバ3へ通信する通信部22と、検知部21から通信部22へのデータの伝送を制御する制御部23と、を備えている。この複合型計測システム1の一の計測手段の制御部23は、検知部21が事象を検知すると、他の計測手段の制御部23に信号を送信し、一の計測手段2の制御部23から信号を受信した他の計測手段の制御部23は、通信部22へのデータ伝送の抑制の要否を判断する。したがって、データ伝送の抑制の要否の判断結果をもとに、緊急時に計測されるデータの処理ができるため、通信インターフェース4の性能をあげることを回避しながら、緊急時に計測されるデータの処理をすることが可能となる。
【0014】
本実施形態の検知部21は、少なくとも1つのセンサが接続され、建物や設備内などの電気使用量や、温度、湿度などの環境データといった定期的に計測されるデータや、地震、雷などの緊急時に計測されるデータを検知する。
【0015】
本実施形態の通信部22は、検知部21が検知したデータをサーバ3へ通信する。本実施形態では、通信インターフェース4であるゲートウェイと接続し、ネットワーク6を介してサーバ3へ通信される。
【0016】
本実施形態の制御部23は、検知部21が事象を検知したときに検知部21からのデータを通信部22へ伝送する。また、本実施形態の制御部23は、他の計測手段2の制御部23と信号線で接続され、信号の送受信を行っている。なお、制御部23と他の計測手段の制御部23との間で、無線による信号の送受信を行うものとしてもよい。
【0017】
本実施形態の制御部23は、通信部22がサーバ3側への通信を完了すると、他の計測手段の制御部23へ完了信号を送信する。また、他の計測手段の制御部23は完了信号を受信すると、通信部22へのデータ伝送の抑制を解除する。したがって、データ伝送の抑制に関する判断結果に基づいてデータ伝送の抑制が実施された後、非日常的かつ重要なデータについて通信部22がサーバ3側への通信を完了すると、データ伝送の抑制状態が解除される。このため、データ伝送の抑制状態を適切に解除することが可能となる。
【0018】
制御部23は、検知部21からの計測結果を演算、判定する機能を有してもよい。計測手段2で地震を計測する場合には、計測した加速度のデータから、制御部23で震度を演算してもよい。また、使用電力量を計測する場合には、測定した結果が正常値よりも乖離していないかを制御部23を用いて判定し、異常が見受けられた場合は、通信部22からその旨を通信するようにしてもよい。
【0019】
本実施形態の計測手段2はメモリ部24を備えている。また、制御部23は、伝送の抑制が必要と判断すると、データをメモリ部24に記憶する。この制御部23は、伝送の抑制が解除されると、メモリ部24からデータを読み出し、前記データを通信部22から外部へ送信する。したがって、一時的に伝送の抑制が生じても、もともと送ることが予定されていたデータは後から送ることができ、伝送されるべきデータが欠けることを抑制できる。
【0020】
ここで、本実施形態の複合型計測システムの一例について、詳細に説明する。本実施形態の複合型計測システム1における複数の計測手段を緊急時のデータを計測する第1計測手段2aと、定常的なデータを計測する第2計測手段2b、第3計測手段2cとで構成されるものとする。ここで、第2、第3計測手段を他の計測手段とする。
【0021】
通常時には、第2、第3の計測手段2b,2cの検知部21b,21cが検知した定常的なデータが通信部22b,22cからゲートウェイ4を介してサーバ3へ送信される。しかし、地震等の緊急時に、第1の計測手段2aの検知部21aが事象を検知した場合には、検知部21aからのデータを通信部22aへ伝送すると同時に、制御部23aは他の計測手段の制御部23b,23cに対して、検知信号を送信する。この検知信号を受信した他の計測手段の制御部23b,23cは、検知部21b,21cから通信部22b,22cへのデータ伝送の抑制の要否を判断する。
【0022】
ところで、使用電力量など、定常的なデータを計測する第2計測手段2bでは、検知部21bにおいて、定常的に事象を検知しているため、制御部23bから第1、第3計測手段2a,2cの制御部23a,23cに対して、頻繁に検知信号が送信されることとなる。その結果、制御部23が煩雑な状態となり、制御部の正常な動作を妨げてしまう虞がある。そこで、計測手段の制御部からの信号の送信を抑制する機能を計測手段に備えてもよい。そうすることで、制御部23が必要以上に煩雑な状態になることはなく、正常な動作を行うことができる。
【0023】
検知信号を受信した制御部23b,23cがデータ伝送の抑制が必要と判断した場合には、検知部21b,21cが事象を検知する場合であっても、検知部21b,21cから通信部22b,22cへの伝送を抑制する。このとき、通信部22b,22cからサーバ3への送信も抑制しても構わない。その結果、第1の計測手段2aの検知部21aが検知したデータのみが通信部22aからゲートウェイ4を介してサーバ3へ送信される。
【0024】
その後、第1の計測手段2aの通信部22aからサーバ3へのデータの通信が完了すると、制御部23aは、他の計測手段の制御部23b,23cへデータ通信が完了したことを伝える完了信号を送信する。他の計測手段の制御部23b,23cがその完了信号を受信すると、検知部21b,21cから通信部22b,22cへのデータ伝送の抑制を解除し、データ伝送が再開される。
【0025】
他の計測手段の制御部23b,23cが検知部21b,21cから通信部22b,22cへのデータ伝送を抑制するとき、制御部23b,23cは検知部21b,21cからメモリ部24b,24cへデータを伝送し、検知するデータをメモリ部24b,24cへ記憶する。その後、第1の計測手段2aの制御部23aからの完了信号を受信し、検知部21b,21cから通信部22b,22cへのデータ伝送の抑制が解除されたときに、メモリ部24b,24cに記憶されたデータを優先して通信部22b,22cへ伝送し、サーバ3へ通信する。
【0026】
本実施形態の複合型計測システム1は、検知信号を受信した際、通信部22への伝送抑制の要否を判断する構成とすることができる。この判断材料として、検知部21が検知する事象に優先度を設定し、優先度を元に制御部23に判断させることができる。例えば、
図2に示すように、信号の優先度を設定する設定部25を計測手段2に備えることができる。このようにすれば、信号の優先度を個別に設定可能となり、設置環境に応じた優先度を設定することが可能となる。
【0027】
優先度は、ユーザの必要に応じて設定することができるが、定常的なデータであるか、緊急時のデータであるかという点に基づいて設定することが好ましい。例えば、使用電力のデータと、地震データとが同時に検知された場合に、緊急時のデータである地震データを測定する測定手段の制御部23から送信される検知信号の優先度を高く設定しておくということである。そうすることで、地震データを確実に通信することができる。優先度の設定については、プログラム上で設定することも考えられるが、優先度の変更を容易に行えるように、設定操作に使用される外部スイッチ等を設けても良い。
【0028】
この他、一の計測手段の検知部が非常に重要なデータを検知したときに、制御部から他の計測手段の制御部へ抑制信号を送信し、抑制信号を受信した制御部は、常に検知部21から通信部22への伝送の抑制を行うものとしてもよい。また、緊急時のデータ若しくは優先度の高いデータを通信した場合であっても、通信容量に余裕がある場合には、他の計測手段2がデータ伝送を抑制する必要はないため、サーバ3へ通信されるデータの容量などに基づいて抑制の要否を判断する構成としてもよい。
【0029】
次に、
図3に示したデータ通信制御のフローを用いて、データ通信制御の一例を、第1計測手段2aを主体として示す。このとき、第2、第3計測手段2b、2cを他の計測手段とする。
先ず、検知部21aで事象を検知する(S001)。制御部23aは他の計測手段の制御部23b,23cに検知信号を送信する(S002)。この後、制御部23aは他の計測手段の制御部23b,23cから、検知信号を受信しているか否かを判断する(S003)。他の計測手段から検知信号を受信していると判断した場合には、検知部21aで検知したデータが、他の計測手段で検知したデータよりも優先度が高いか否かを判断する(S004)。検知部21aで検知したデータが他の計測手段で検知したデータよりも優先度が高いと判断した場合には、制御部23aはデータ伝送を抑制することはなく、検知部21aで検知したデータを通信部22aへ伝送する(S005)。なお、ステップ003で、他の計測手段から検知信号を受信していないと判断した場合には、検知部21aで検知した内容を通信部22aへ伝送する(S006)。
また、ステップ004において、計測手段で検知したデータが他の計測手段で検知したデータよりも優先度が高いと判断しなかった場合には、制御部23aは検知部21aから通信部22aへのデータ伝送を抑制し、当該データをメモリ部24aへ伝送する(S007)。メモリ部24aに伝送されたデータはメモリ部24aで記憶される。
また、ステップ0005、0006において、通信部へ伝送されたデータは、ゲートウェイ4を介してサーバ3へ通信される。
【0030】
図2に示す状態においては、第1計測手段2aの優先度が「高」、第2計測手段2bが「中」、第3計測手段2cが「低」に設定されている。このため、3つの計測手段全ての検知部が事象を検知した場合には、第1計測手段2aの検知したデータが優先されてサーバ3へ通信される。また、第2計測手段2bと第3計測手段2cの検知部が事象を検知した場合には、第2計測手段2bが優先される。
【0031】
ところで、定常的なデータを検知する計測手段Aについては、通信部22からの通信によって、動作状態を確認することができるが、緊急時のデータを検知する計測手段Bについては、常時通信している訳ではないため、動作状況を把握することが困難となる。そこで、本実施形態においては、
図4に示すように、計測手段2の動作状況に生じる異常を判定する異常判定部26を備えた構成としている。より具体的には、計測手段Aの制御部23Aから計測手段Bの制御部23Bに対し、定期的に動作確認信号を送信する構成としている。動作確認信号は、複数の計測手段2がお互いの動作状態を確認するために、制御部23が送信する信号である。この計測手段Aの制御部23Aが動作確認信号を受信すると、計測手段Bの制御部23Bに応答信号を送信する設定とすることによって、応答信号の有無で計測手段Bの動作状態(待機中の状態)を確認することができる。
【0032】
本実施形態の計測手段Aの制御部23Aは、計測手段Bの制御部23Bへの信号の送信に対して、それに応答する応答信号を計測手段Bの制御部23Bから受信しない場合に、異常判定部26Aによって、計測手段Bの異常を判定する。
【0033】
ここで、動作確認の一例を
図5に示すフローを用いて説明する。
この例では、計測手段Aの制御部23Aが計測手段Bの制御部23Bに動作確認信号を送信する(S101)。通常、動作確認信号に対応する応答信号が計測手段Bの制御部23Bから送られる。このため、ステップ101の後、計測手段Bの制御部23Bから送られた応答信号を計測手段Aの制御部23Aが受信しているか否かを判断する(S102)。制御部23Aが応答信号を受信している場合、計測手段Bが正常に機能していると判断する(S103)。ステップ102で、制御部23Aが応答信号を受信していない場合、計測手段Bが正常に機能していないと判断し、計測手段Bの異常を外部へ通信する(S104)。このようにすれば、計測手段Bの異常を判定することができる。また、計測手段Bの異常を早期に発見しやすくなる。
【0034】
計測手段Bから応答信号が送信されない場合の外部への通信手段としては、サーバ3へその旨を通信してもよいし、計測手段A,Bにランプを設け、ランプを点灯させる等の手段を採用してもよい。このとき、計測手段2にリセット手段を設け、異常の生じた計測手段を再起動させるリセット信号を送信できるようにすることで、計測手段Aから計測手段Bにリセット信号を送信し、計測手段Bを強制的に再起動させてもよい。
【0035】
計測手段2間でリセット信号をやり取りするだけではなく、外部機器を介して計測手段2を再起動させることも可能である。例えば、
図4に示すように、動作確認信号に対する計測手段Bの応答信号を、所定の期間、計測手段Aが未受信の場合には、サーバ3などの外部機器にリセット信号を送り、外部機器から計測手段Bを再起動させる構成とすることもできる。このように、サーバ3などの外部機器にリセット信号を送る構成とすることで、リセット信号の記録を集積することが容易となる。
【実施例】
【0036】
図6に実施例を示す。本実施例では、二点鎖線で示した分電盤9内に複数の計測手段2が備えられている。計測手段2の一つは、電力など定常的に計測されるデータの計測に使用されるものである。また、雷や地震の検知ができる計測手段2も分電盤9内に備えられている。
【0037】
本実施例では、地震を検知可能な計測手段2から、他の計測手段2に検知信号が送信されている。他の計測手段2はこの検知信号を受けることにより、通信部22へのデータ伝送の抑制をおこなっている。つまり、地震を検知した計測手段2が通信インターフェース4であるゲートウェイまでの伝送路を占有した状態となっている。このため、通信インターフェース4の性能をあげることを回避しつつも、地震に関するデータの処理が適切にできる状態が確保されている。
【0038】
以上、一つの実施形態を中心に説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、各種の態様とすることが可能である。例えば、検知部が検知する事象については、実施形態などに示した例に限定されるものではなく、火事のデータを扱う計測手段を複合型計測システムに組み込んでも良い。
【0039】
実施例では、1つの計測手段が1つの事象を検知するように、検知部と制御部とを1つずつ備えた例を示したが、1つの計測手段が複数の事象を検知するように、複数の検出部と制御部を備えてもよい。このとき、計測手段が備える複数の制御部間で信号の送受信を行い、データ伝送の制御を行うことができる。
【0040】
本実施形態の複合型計測システムにおける計測手段をマンションやビルなどの階毎もしくは部屋毎に設けることで、マンションの一室で発生した火災などの緊急時のデータを優先して外部に通信することができ、火災の拡大等を防ぐことができる。また、計測手段を戸建住宅毎に設けることで、特定の地区で生じた地震や雷などの緊急時のデータを優先して、周辺地域などに通信することができる。