(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6851687
(24)【登録日】2021年3月12日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】電気機器収納箱用パッキンとこれを用いた両扉式の電気機器収納用箱
(51)【国際特許分類】
H05K 5/03 20060101AFI20210322BHJP
F16J 15/10 20060101ALI20210322BHJP
F16J 15/06 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
H05K5/03 G
F16J15/10 P
F16J15/06 P
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-21208(P2017-21208)
(22)【出願日】2017年2月8日
(65)【公開番号】特開2018-129382(P2018-129382A)
(43)【公開日】2018年8月16日
【審査請求日】2019年12月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227401
【氏名又は名称】日東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】特許業務法人なじま特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 亮
(72)【発明者】
【氏名】塚原 正浩
(72)【発明者】
【氏名】青木 康恭
【審査官】
▲高▼橋 真之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−195275(JP,A)
【文献】
特開2005−150295(JP,A)
【文献】
特開2001−069618(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3001539(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 5/00− 5/06
F16J 15/00−15/14
E06B 7/00− 7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉扉と水切金具とを備えた開口部の周縁に貼着される電気機器収納箱用パッキンであって、パッキン本体の裏面を、扉または筺体本体のいずれか一方の部材への貼付面とし、パッキン本体の表面を、扉を閉じたときに他方の部材に密着する密着面とし、パッキン本体には、前記水切金具に密着する密着面に対して隣接する位置に、パッキン本体の他の部位よりも反発力が高い弾性部を形成したことを特徴とする電気機器収納箱用パッキン。
【請求項2】
パッキン本体が中空構造であり、前記弾性部をパッキン本体の裏面から表面にわたるように形成したことを特徴とする請求項1記載の電気機器収納箱用パッキン。
【請求項3】
前記弾性部に対応するパッキン本体の表面に、パッキン本体とは反発力が異なる別のパッキンを貼り付けたことを特徴とする請求項1または2に記載の電気機器収納箱用パッキン。
【請求項4】
前記弾性部とパッキン本体を別部材としたことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の電気機器収納箱用パッキン。
【請求項5】
先に閉じられる一方扉の端部と、後に閉じられる他方扉の端部とを重ね合せ、筐体本体の開口部を覆う両扉式の電気機器収納用箱であって、一方扉の少なくとも上面の端部には水切金具が配置され、他方扉の端部の前記水切金具に対応する位置には、請求項1〜4の何れかに記載の電気機器収納箱用パッキンを貼付したことを特徴とする両扉式の電気機器収納用箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器収納箱用パッキンと、これを用いた両扉式の電気機器収納用箱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
両扉式の電気機器収納用箱としては、筐体本体に垂直方向の回転軸により軸支された先に閉じられる一方扉の端部と、同じく筐体本体に垂直方向の回転軸により軸支された後に閉じられる他方扉の端部とを中央で重ね合せ、筐体本体の開口部を覆う構造が一般的である。
【0003】
なお本明細書においては、先に閉じられる扉を「一方扉」、後に閉じられる扉を「他方扉」と記す。多くの場合、一方扉は左扉、他方扉は右扉である。また本明細書において扉の端部とは、各扉の中央側の端部を指すものとする。
【0004】
屋外仕様の電気機器収納用箱においては、筐体本体の周縁を囲うように水切部が形成され、この水切部に扉の内側周縁部に設けられたパッキンを当接させ、シールする構造となっている。1枚扉の場合にはシール構造は単純であるが、両扉式の場合には双方の扉の端部が重なり合う中央部分のシールが問題となる。
【0005】
このため特許文献1に示されるように、一方扉の端部の上下に断面がコの字状の水切金具を設け、一方扉とこの水切金具との内面には筐体本体の水切部と当接するパッキンを貼り付けてある。また、他方扉の内側周縁部にもパッキンが設けられており、水切金具の外面と当接してシールする構造が採用されている。
【0006】
図13と
図14に特許文献1に示されたような従来構造の要部の水平断面を示す。50は筐体本体の水切部、51は先に閉じられる一方扉、52は後に閉じられる他方扉、53は一方扉51に設けられた水切金具、54は水切金具53の裏面に形成されたパッキン、55は他方扉52の裏面に形成されたパッキンである。
【0007】
まず
図13に示されるように一方扉51が閉じてパッキン54が水切部50に密着し、その後に
図14に示すように他方扉52が一方扉51の外側から閉じ、パッキン55が水切部50の外面に密着する。パッキン55は変形し易い中空パッキンである。
【0008】
図13から
図14の状態に至るとき、パッキン55は水切部50と当接して面圧を受け、
図14中に矢印で示す方向に変形する。この変形に連れてパッキン55の表面56が矢印方向に引っ張られ、
図14に示すように筐体本体の水切部50との間に隙間57が発生することがある。その結果、この隙間57から筐体本体の内部に水が浸入するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006―07464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って本発明の目的は上記した従来の問題点を解決し、水の浸入を確実に防止することができる、電気機器収納箱用パッキンとこれを用いた両扉式の電気機器収納用箱を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するためになされた本発明は、開閉扉
と水切金具とを備えた開口部の周縁に貼着される電気機器収納箱用パッキンであって、パッキン本体の裏面を、扉または筺体本体のいずれか一方の部材への貼付面とし、パッキン本体の表面を、扉を閉じたときに他方の部材に密着する密着面とし、パッキン本体には、
前記水切金具に密着する密着面に対して隣接する位置に、パッキン本体の他の部位よりも反発力が高い弾性部を形成したことを特徴とするものである。なお、パッキン本体が中空構造であり、前記弾性部をパッキン本体の裏面から表面にわたるように形成することができる。また、前記弾性部に対応するパッキン本体の表面に、パッキン本体とは反発力が異なる別のパッキンを貼り付けた構造とすることができる。また、前記弾性部とパッキン本体を別部材とすることができる。
【0012】
また本発明の両扉式の電気機器収納用箱は、先に閉じられる一方扉の端部と、後に閉じられる他方扉の端部とを重ね合せ、筐体本体の開口部を覆う両扉式の電気機器収納用箱であって、一方扉の少なくとも上面の端部には水切金具が配置され、他方扉の端部の前記水切金具に対応する位置には、上記の何れかに記載の電気機器収納箱用パッキンを貼付したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電気機器収納箱用パッキンは、パッキン本体に、扉を閉じたときに他方の部材に対する反発力を高める弾性部を形成したので、弾性に優れる。このため、一方の部材に形成したパッキンをこの弾性部によって他方の部材の方向に押し返すことができ、一方の部材と他方の部材間に生じる隙間を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態の電気機器収納用箱の全体を示す斜視図である。
【
図4】パッキンを省略して水切金具を示す扉裏面側からの斜視図である。
【
図5】一方扉の端部を扉裏面側から見た斜視図である。
【
図6】一方扉の端部を扉裏面側から見た正面図である。
【
図7】他方扉の先端部を扉裏面側から見た斜視図である。
【
図9】一方扉と他方扉の重なり状態を示す水平断面図である。
【
図10】一方扉と他方扉の重なり状態を示す水平断面図である。
【
図11】他の実施形態における一方扉と他方扉の重なり状態を示す水平断面図である。
【
図12】さらに他の実施形態における一方扉と他方扉の重なり状態を示す水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の好ましい実施形態を示す。
【0016】
(全体構造)
図1は両扉式の電気機器収納用箱の全体を示す斜視図であり、1は前面が開口している筐体本体、2は筐体本体1に垂直方向の回転軸により軸支された先に閉じられる一方扉(左扉)、3は筐体本体1に垂直方向の回転軸4により軸支された他方扉(右扉)である。一方扉2にはハンドル5が設けられ、他方扉3には図示されていないハンドルの裏面に、一方扉2の端部の裏面に係止される止め金6、これと連動する鎖錠棒7などが設けられている。
【0017】
筐体本体1の開口部の周縁には、周縁を囲うように水切部10が形成されている。水切部10は
図2、
図3に示されるように、筐体本体1の周縁をU字溝が形成されるように折り曲げたものである。また、一方扉2の裏面と他方扉3の裏面には、後述するパッキンがそれぞれ設けられている。これらのパッキンはコ字状であり開口が対向するように各扉の裏面に貼り付けられるが、後で閉じられる他方扉3のパッキンはロ字状としてもよい。これらのパッキンは扉を閉じたときに筐体本体1の水切部10の垂直面に密着し、従来と同様、水の浸入を防止するものである。
【0018】
(水切金具)
一方扉2の中央側の垂直端部には、
図3に示されるように筐体本体1の奥行方向に窪む溝部12が形成されている。この溝部12の上下端部には水切金具13が形成されている。この溝部12は両扉の中央の合わせ部から水が浸入しても水切金具13を伝わって溝部12内を流下させ、筐体本体1の内部への浸入を防止するためのものである。
【0019】
水切金具13は一方扉2の端部に溶接されたものであり、
図4に示すように一方扉2への溶接面となる取付片14と、外側に延びる第1片15と、取付片14と第1片15の上面を覆う第2片16とが一連に形成されている。第2片16は取付片14の上部より扉内側方向に延設されている。取付片14の上端部には平面部18が形成され、その上端に第2片16が形成されている。
【0020】
(一方扉のパッキン)
図5以下に示すように、一方扉2の裏面にはパッキン20が設けられている。
図5、
図6は一方扉2の裏面側からパッキン20を見た斜視図であり、パッキン20は水切金具13の裏面を水平方向に横断するように一方扉2の裏面に貼り付けられている。パッキン20は反発力の小さい中空構造のパッキンであり、一方扉2を小さい力で閉じることができるようになっている。このパッキン20の表面は、一方扉2を閉じたときに変形しながら広い面積で筐体本体1の水切部10に密着し、防水性能を高めている。パッキン20の先端には先細の突出部21が形成されている。
【0021】
(他方扉のパッキン)
図7、
図8に示すように、他方扉3の裏面周縁部にも同様の中空構造のパッキン本体を備えた第1パッキン22が貼り付けられている。
図7は他方扉3を内面側から見た斜視図である。この第1パッキン22は、パッキン本体の裏面を、扉または筺体本体のいずれか一方の部材への貼付面40とし、パッキン本体の表面を、扉を閉じたときに他方の部材に密着する密着面41としたもので、パッキン本体には、扉を閉じたときに他方の部材に対する反発力を高める弾性部23が形成されている。この弾性部23は
図9、
図10に示すように他方扉3を閉じたときに一方扉2の水切金具13に隣接する位置の反発力を高めるためのものである。
【0022】
詳しくは、弾性部23は他方扉3を閉じたときに水切金具13に隣接する位置に形成、水切金具13から左右方向にずらして配置されるので、他方扉3の開閉操作に対する反発力を最小限とすることができ、他方扉3の開閉操作を楽に行うことができる。なお、弾性部23の材料としては特に限定するものではなく、第1パッキン22と同材質のものであっても良く、少なくとも、中空構造のパッキンからなる第1パッキン22の他の部位よりも反発力が高くなるようになれば良い。なお、弾性部23は第1パッキン22のパッキン本体の裏面から表面に渡るように形成され、詳しくは、第1パッキン22の中空パッキンの貼付面40の内面から、密着面41の内面に渡るように形成されている。
【0023】
図7〜
図10に示す実施形態では、第1パッキン22の表面に第1パッキン22よりも柔らかい反発力が異なるパッキンで、スポンジ状の材質からなる第2パッキン24が貼り付けられている。第2パッキン24は柔らかいスポンジ状の材質からなるため、他方扉3を閉じたときに水切金具13及び突出部21に追従するように変形して隙間が生じることを防止している。弾性部23は、
図10に示すように一方扉2の外から他方扉3を閉じたときに、水切金具13によって引っ張られた第1パッキン22を筐体本体1の水切部10の方向に押し返し、隙間の発生を防止するものである。
【0024】
なお、この弾性部23の配置位置は、第2パッキン24の端部対応位置、詳しくは筐体本体1の奥行方向に重複するように配置されている。そのため、他方扉3を閉じたときに、第2パッキン24が水切金具13と当接することで変形するが、弾性部23により第2パッキン24の端部を水切部10に押さえつけるように形成されるため、第2パッキン24の端部に隙間が生じることを防止している。
【0025】
また
図11に示す他の実施形態では、中空構造のパッキン本体からなる第1パッキン22の内部に、パッキン本体よりも弾性に優れた第1パッキン22とは別部材からなる弾性部25を着脱自在に挿入して弾性部23を構成している。このようにすれば、第1パッキン22が水切金具13に当接する位置の反発力が高まることがないため、他方扉3を閉じるに要する力が少なくて済む利点がある。このような弾性部25は第1パッキン22の裏面の内面側と表面の内面側に当接するように配置されることが望ましい。
【0026】
さらに
図12に示す他の実施形態は、第1パッキン22のみ他方扉3に形成したもので、この場合も第1パッキン22の水切金具13に隣接する位置の内部に弾性に優れた弾性部26を封入している。この構造としても、他の実施形態と同様に水切金具13によって引っ張られた第1パッキン22を筐体本体1の水切部10の方向に押し返し、隙間の発生を防止することができる。
【0027】
また、本実施形態においては、他方扉3に第1パッキン22を貼り付けるものとしたが、筐体本体1側の水切部10にパッキン22に貼り付けるものであっても良く、この場合においても弾性部23によって、他方扉3に対して反発力を高め、防水性能を高めることができる。
【0028】
以上に説明したように、本発明によれば、水切金具13によって変形した第1パッキン22を弾性部23によって筐体本体1の水切部10の方向に押し返すことができ、他方扉3と一方扉2の水切金具13との間の隙間を防止することができる。なお、本実施形態においては、両扉式の電気機器収納用箱の後に閉じられる他方扉3に形成される第1パッキン22について説明をしたが、他方扉3のみからなる電気機器収納用箱であっても良く、この場合でも第1パッキン22と弾性部23により筐体本体1に対して反発力を高めるため、防水性能を高めることができる。
【符号の説明】
【0029】
1 筐体本体
2 一方扉(左扉)
3 他方扉(右扉)
4 回転軸
5 ハンドル
6 止め金
7 鎖錠棒
10 水切部
12 溝部
13 水切金具
14 取付片
15 第1片
16 第2片
18 平面部
20 パッキン
21 突出部
22 第1パッキン
23 弾性部
24 第2パッキン
25 弾性部
26 弾性部
40 貼付面
41 密着面
50 筐体本体の水切部
51 一方扉
52 他方扉
53 水切金具
54 パッキン
55 パッキン
56 パッキンの表面
57 隙間