特許第6851699号(P6851699)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジヤトコ株式会社の特許一覧 ▶ 日産自動車株式会社の特許一覧

特許6851699自動変速機のクラッチ滑り診断装置及びクラッチ滑り診断方法
<>
  • 特許6851699-自動変速機のクラッチ滑り診断装置及びクラッチ滑り診断方法 図000002
  • 特許6851699-自動変速機のクラッチ滑り診断装置及びクラッチ滑り診断方法 図000003
  • 特許6851699-自動変速機のクラッチ滑り診断装置及びクラッチ滑り診断方法 図000004
  • 特許6851699-自動変速機のクラッチ滑り診断装置及びクラッチ滑り診断方法 図000005
  • 特許6851699-自動変速機のクラッチ滑り診断装置及びクラッチ滑り診断方法 図000006
  • 特許6851699-自動変速機のクラッチ滑り診断装置及びクラッチ滑り診断方法 図000007
  • 特許6851699-自動変速機のクラッチ滑り診断装置及びクラッチ滑り診断方法 図000008
  • 特許6851699-自動変速機のクラッチ滑り診断装置及びクラッチ滑り診断方法 図000009
  • 特許6851699-自動変速機のクラッチ滑り診断装置及びクラッチ滑り診断方法 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6851699
(24)【登録日】2021年3月12日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】自動変速機のクラッチ滑り診断装置及びクラッチ滑り診断方法
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/12 20100101AFI20210322BHJP
   F16H 59/18 20060101ALI20210322BHJP
   F16H 59/46 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   F16H61/12
   F16H59/18
   F16H59/46
【請求項の数】7
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2017-208920(P2017-208920)
(22)【出願日】2017年10月30日
(65)【公開番号】特開2019-82191(P2019-82191A)
(43)【公開日】2019年5月30日
【審査請求日】2020年6月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笠原 誠史
(72)【発明者】
【氏名】孫 研
(72)【発明者】
【氏名】可部 智昭
(72)【発明者】
【氏名】望月 伸晃
【審査官】 中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/133345(WO,A1)
【文献】 特開2002−286049(JP,A)
【文献】 特開平10−205614(JP,A)
【文献】 特開平04−151068(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 59/00−61/12
F16H 61/16−61/24
F16H 61/66−61/70
F16H 63/40−63/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用駆動源と駆動輪との間に配される自動変速機と、
前記自動変速機に有し、ドライバーにより走行レンジが選択された状態にて締結される走行クラッチと、
前記走行レンジの選択中、前記走行クラッチに所定値以上のクラッチ回転差が生じると疑似D状態であると判定するクラッチ滑り診断部と、
を備える自動変速機のクラッチ滑り診断装置において、
前記走行クラッチのクラッチ回転差を検出する駆動源側回転センサと駆動輪側回転センサを設け、
前記クラッチ滑り診断部は、前記2つの回転センサからの検出値に所定値以上の回転差が生じた場合、前記2つの回転数検出値間の大小関係と前記2つの回転数検出値の経時変化勾配関係がアクセル操作によるトルク伝達態様と対応していると判断されると、疑似D状態であると判定する
ことを特徴とする自動変速機のクラッチ滑り診断装置。
【請求項2】
請求項1に記載された自動変速機のクラッチ滑り診断装置において、
前記クラッチ滑り診断部は、アクセル踏み込み操作によるドライブ走行中、前記2つの回転センサからの検出値に所定値以上の回転差が生じた場合、駆動源側回転検出値が駆動輪側回転検出値よりも大きく、前記2つの検出値の変化勾配が上昇勾配の関係にあると、疑似D状態であると判定する
ことを特徴とする自動変速機のクラッチ滑り診断装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された自動変速機のクラッチ滑り診断装置において、
前記クラッチ滑り診断部は、アクセル戻し操作によるドライブ走行中、前記2つの回転センサからの検出値に所定値以上の回転差が生じた場合、駆動源側回転検出値が駆動輪側回転検出値よりも大きく、前記2つの検出値の変化勾配が下降勾配の関係にあると、疑似D状態であると判定する
ことを特徴とする自動変速機のクラッチ滑り診断装置。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載された自動変速機のクラッチ滑り診断装置において、
前記クラッチ滑り診断部は、アクセル足離し操作によるコースト走行中、前記2つの回転センサからの検出値に所定値以上の回転差が生じた場合、駆動輪側回転検出値が駆動源側回転検出値よりも大きく、前記2つの検出値の変化勾配が下降勾配の関係にあると、疑似D状態であると判定する
ことを特徴とする自動変速機のクラッチ滑り診断装置。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載された自動変速機のクラッチ滑り診断装置において、
前記クラッチ滑り診断部は、前記2つの回転センサからの検出値に所定値以上の回転差が生じた場合、前記2つの検出値の経時変化勾配関係がアクセル操作によるトルク伝達態様と対応関係にないと判断されると、回転センサの機能異常を診断する回転センサ機能異常診断を実行する
ことを特徴とする自動変速機のクラッチ滑り診断装置。
【請求項6】
請求項5に記載された自動変速機のクラッチ滑り診断装置において、
前記クラッチ滑り診断部は、前記回転センサの機能異常診断を実行する場合、前記2つの検出値に駆動源側と駆動輪側のうち少なくとも一方の回転を示す検出値を加えた3つ以上の回転検出値を用い、1つの回転検出値の変化勾配が他の回転検出値の変化勾配と異なる関係のとき、異なる関係の回転センサが機能異常であると診断する
ことを特徴とする自動変速機のクラッチ滑り診断装置。
【請求項7】
走行用駆動源と駆動輪との間に配される自動変速機と、
前記自動変速機に有し、ドライバーにより走行レンジが選択された状態にて締結される走行クラッチと、を備える自動変速機において、
前記走行レンジの選択中、前記走行クラッチに所定値以上のクラッチ回転差が生じると疑似D状態であると判定する自動変速機のクラッチ滑り診断方法であって、
走行用駆動源側の回転数検出値と駆動輪側の回転数検出値とから前記走行クラッチのクラッチ回転差を検出し、
前記クラッチ回転差が所定値以上である場合、前記2つの回転数検出値間の大小関係と前記2つの回転数検出値の経時変化勾配関係がアクセル操作によるトルク伝達態様と対応していると判断されると、疑似D状態であると判定する
ことを特徴とする自動変速機のクラッチ滑り診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行レンジの選択中、走行クラッチに所定値以上のクラッチ回転差が生じると疑似D状態であると判定する自動変速機のクラッチ滑り診断装置及びクラッチ滑り診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、Dレンジ選択状態で、指示クラッチトルクと推定クラッチトルクとの偏差が所定値よりも大きい、又は、相対回転速度差が所定回転速度よりも大きいと、疑似D状態であると判定する自動変速機の制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
ここで、「疑似D状態」とは、走行レンジ(DレンジやRレンジやLレンジ等をいう。)での走行中に締結状態であるべき走行クラッチが意図せずにクラッチ滑り締結状態になることをいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際特開WO2014/034280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来装置にあっては、疑似D状態であるとの判定条件として、Dレンジ選択条件とクラッチ差回転条件を用いている。このため、走行クラッチが締結状態であるにもかかわらず、回転センサに異常が生じている場合、疑似D判定条件成立により疑似D状態であると誤判定するおそれがある、という問題があった。
【0005】
例えば、駆動系の上流側からエンジン→トルクコンバータ→走行クラッチ→プライマリプーリ→ベルト→セカンダリプーリが配されるエンジン車のベルト式無段変速機であるとする。この場合、アクセル踏み込みによるドライブ走行で走行クラッチが解放状態や滑り締結状態であると、Nt(=タービン回転数)>Npri(=プライマリ回転数)による回転差となり、Nt<Npriとなる回転差は発生しない。しかし、疑似D判定のクラッチ差回転条件は、回転差が所定値以上であるため、例えば、回転センサの機能異常によりNt<Npriとなっても条件成立により疑似D状態であると誤判定する。
【0006】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、走行レンジが選択された状態で走行クラッチに差回転が発生したとき、疑似D状態であるとの誤判定を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、自動変速機と、走行クラッチと、走行レンジの選択中、走行クラッチに所定値以上のクラッチ回転差が生じると疑似D状態であると判定するクラッチ滑り診断部と、を備える。
この自動変速機のクラッチ滑り診断装置において、走行クラッチのクラッチ回転差を検出する駆動源側回転センサと駆動輪側回転センサを設ける。
クラッチ滑り診断部は、2つの回転センサからの検出値に所定値以上の回転差が生じた場合、2つの回転数検出値間の大小関係と2つの回転数検出値の経時変化勾配関係がアクセル操作によるトルク伝達態様と対応していると判断されると、疑似D状態であると判定する。
【発明の効果】
【0008】
例えば、走行レンジの選択中、2つの回転センサからの検出値に所定値以上の回転差が生じると疑似D状態であると判定する。しかし、疑似D判定が検出値を用いた判定であるため、実際は走行クラッチが滑り締結状態ではなくても、回転センサが検出値を上げたり下げたりする機能異常であるとき、疑似D状態であると誤判定する。
この点に着目し、疑似D判定条件に、2つの回転数検出値間の大小関係と2つの回転数検出値の経時変化勾配関係の判断を加えることで、疑似D状態と回転センサ機能異常を見分け、回転センサ機能異常による疑似D誤判定を排除するようにした。
この結果、走行レンジが選択された状態で走行クラッチに差回転が発生したとき、疑似D状態であるとの誤判定を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1の自動変速機のクラッチ滑り診断装置及びクラッチ滑り診断方法が適用されたエンジン車の駆動系と制御系を示す全体システム図である。
図2】自動変速モードでの無段変速制御をバリエータにより実行する際に用いられるDレンジ無段変速スケジュールの一例を示す変速スケジュール図である。
図3】実施例1のクラッチ滑り診断装置を示す要部構成図である。
図4】実施例1のCVTコントロールユニットのクラッチ滑り診断部にて実行される疑似D判定処理及び回転センサ機能異常診断処理の流れを示すフローチャート1である。
図5】実施例1のCVTコントロールユニットのクラッチ滑り診断部にて実行される疑似D判定処理及び回転センサ機能異常診断処理の流れを示すフローチャート2である。
図6】縦軸を車速としタービン回転数とプライマリ回転数のクラッチ差回転を横軸としたときの疑似D判定閾値とセンサ機能異常判定閾値の一例を示す閾値マップ図である。
図7】ドライブ走行中又はコースト走行中に疑似D判定を行う場合に回転センサ機能異常がないときの2つの回転数検出値間の大小関係と経時変化勾配関係を示す関係特性図である。
図8】ドライブ走行中又はコースト走行中に疑似D判定から回転センサ機能異常診断へ移行した場合にタービン回転センサが機能異常であるときの3つの検出値の大小関係と経時変化勾配関係を示す関係特性図である。
図9】ドライブ走行中又はコースト走行中に疑似D判定から回転センサ機能異常診断へ移行した場合にプライマリ回転センサが機能異常であるときの3つの検出値の大小関係と経時変化勾配関係を示す関係特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の自動変速機のクラッチ滑り診断装置及びクラッチ滑り診断方法を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0011】
まず、構成を説明する。
実施例1におけるクラッチ滑り診断装置及びクラッチ滑り診断方法は、トルクコンバータと前後進切替機構とバリエータと終減速機構により構成されるベルト式無段変速機(自動変速機の一例)を搭載したエンジン車に適用したものである。以下、実施例1の構成を、「全体システム構成」、「クラッチ滑り診断装置構成」、「疑似D判定処理及び回転センサ機能異常診断処理構成」に分けて説明する。
【0012】
[全体システム構成]
図1は、実施例1の自動変速機のクラッチ滑り診断装置及びクラッチ滑り診断方法が適用されたエンジン車の駆動系と制御系を示す。以下、図1に基づいて、全体システム構成を説明する。
【0013】
エンジン車の駆動系は、図1に示すように、エンジン1と、トルクコンバータ2と、前後進切替機構3と、バリエータ4と、終減速機構5と、駆動輪6,6と、を備えている。
ここで、ベルト式無段変速機CVTは、トルクコンバータ2と前後進切替機構3とバリエータ4と終減速機構5を図外の変速機ケースに内蔵することにより構成される。
【0014】
エンジン1は、ドライバーによるアクセル操作による出力トルクの制御以外に、外部からのエンジン制御信号により出力トルクを制御可能である。このエンジン1には、スロットルバルブ開閉動作や燃料カット動作等によりトルク制御を行う出力トルク制御アクチュエータ10を有する。
【0015】
トルクコンバータ2は、トルク増大機能やトルク変動吸収機能を有する流体継手による発進要素である。トルク増大機能やトルク変動吸収機能を必要としないとき、エンジン出力軸11(=トルクコンバータ入力軸)とトルクコンバータ出力軸21を直結可能なロックアップクラッチ20を有する。このトルクコンバータ2は、エンジン出力軸11にコンバータハウジング22を介して連結されたポンプインペラ23と、トルクコンバータ出力軸21に連結されたタービンランナ24と、ケースにワンウェイクラッチ25を介して設けられたステータ26と、を構成要素とする。
【0016】
前後進切替機構3は、バリエータ4への入力回転方向を前進走行時の正転方向と後退走行時の逆転方向で切り替える機構である。この前後進切替機構3は、ダブルピニオン式遊星歯車30と、複数枚のクラッチプレートによる前進クラッチ31と、複数枚のブレーキプレートによる後退ブレーキ32と、を有する。前進クラッチ31は、Dレンジ等の前進走行レンジ選択時に前進クラッチ圧Pfcにより油圧締結される。後退ブレーキ32は、Rレンジ等の後退走行レンジ選択時に後退ブレーキ圧Prbにより油圧締結される。なお、前進クラッチ31と後退ブレーキ32は、Nレンジ(ニュートラルレンジ)の選択時、前進クラッチ圧Pfcと後退ブレーキ圧Prbをドレーンすることで、いずれも解放される。
【0017】
バリエータ4は、プライマリプーリ42と、セカンダリプーリ43と、プーリベルト44と、を有し、ベルト接触径の変化により変速比(バリエータ入力回転とバリエータ出力回転の比)を無段階に変化させる無段変速機能を備える。プライマリプーリ42は、バリエータ入力軸40の同軸上に配された固定プーリ42aとスライドプーリ42bにより構成され、スライドプーリ42bは、プライマリ圧室45に導かれるプライマリ圧Ppriによりスライド動作する。セカンダリプーリ43は、バリエータ出力軸41の同軸上に配された固定プーリ43aとスライドプーリ43bにより構成され、スライドプーリ43bは、セカンダリ圧室46に導かれるセカンダリ圧Psecによりスライド動作する。プーリベルト44は、プライマリプーリ42のV字形状をなすシーブ面と、セカンダリプーリ43のV字形状をなすシーブ面に掛け渡されている。このプーリベルト44は、環状リングを内から外へ多数重ね合わせた2組の積層リングと、打ち抜き板材により形成され、2組の積層リングに沿って挟み込みにより環状に積層して取り付けられた多数のエレメントにより構成されている。なお、プーリベルト44としては、プーリ進行方向に多数配列したチェーンエレメントを、プーリ軸方向に貫通するピンにより結合したチェーンタイプのベルトであっても良い。
【0018】
終減速機構5は、バリエータ出力軸41からのバリエータ出力回転を減速すると共に差動機能を与えて左右の駆動輪6,6に伝達する機構である。この終減速機構5は、減速ギア機構として、バリエータ出力軸41に設けられたアウトプットギア52と、アイドラ軸50に設けられたアイドラギア53及びリダクションギア54と、デフケースの外周位置に設けられたファイナルギア55と、を有する。そして、差動ギア機構として、左右のドライブ軸51,51に介装されたディファレンシャルギア56を有する。
【0019】
エンジン車の制御系は、図1に示すように、油圧制御系を代表する油圧制御ユニット7と、電子制御系を代表するCVTコントロールユニット8と、を備えている。
【0020】
油圧制御ユニット7は、プライマリ圧室45に導かれるプライマリ圧Ppri、セカンダリ圧室46に導かれるセカンダリ圧Psec、前進クラッチ31への前進クラッチ圧Pfc、後退ブレーキ32への後退ブレーキ圧Prb、等を調圧するユニットである。この油圧制御ユニット7は、走行用駆動源であるエンジン1により回転駆動されるオイルポンプ70と、オイルポンプ70からの吐出圧に基づいて各種の制御圧を調圧する油圧制御回路71と、を備える。油圧制御回路71には、ライン圧ソレノイド弁72と、プライマリ圧ソレノイド弁73と、セカンダリ圧ソレノイド弁74と、セレクトソレノイド弁75と、ロックアップ圧ソレノイド弁76と、を有する。なお、各ソレノイド弁72,73,74,75,76は、CVTコントロールユニット8から出力される制御指令値によって各指令圧に調圧する。
【0021】
ライン圧ソレノイド弁72は、CVTコントロールユニット8から出力されるライン圧指令値に応じ、オイルポンプ70からの吐出圧を、指令されたライン圧PLに調圧する。このライン圧PLは、各種の制御圧を調圧する際の元圧であり、駆動系を伝達するトルクに対してベルト滑りやクラッチ滑りを抑える油圧とされる。
【0022】
プライマリ圧ソレノイド弁73は、CVTコントロールユニット8から出力されるプライマリ圧指令値に応じ、ライン圧PLを元圧として指令されたプライマリ圧Ppriに減圧調整する。セカンダリ圧ソレノイド弁74は、CVTコントロールユニット8から出力されるセカンダリ圧指令値に応じ、ライン圧PLを元圧として指令されたセカンダリ圧Psecに減圧調整する。
【0023】
セレクトソレノイド弁75は、CVTコントロールユニット8から出力される前進クラッチ圧指令値又は後退ブレーキ圧指令値に応じ、ライン圧PLを元圧として指令された前進クラッチ圧Pfc又は後退ブレーキ圧Prbに減圧調整する。
【0024】
ロックアップ圧ソレノイド弁76は、CVTコントロールユニット8から出力されるロックアップ圧指令値に応じ、ロックアップクラッチ20を締結/スリップ締結/解放するロックアップ制御圧PL/Uを調整する。
【0025】
CVTコントロールユニット8は、ライン圧制御や変速制御や前後進切替制御やロックアップ制御、等を行う。ライン圧制御では、スロットル開度等に応じた目標ライン圧を得る指令値をライン圧ソレノイド弁72に出力する。変速制御では、目標変速比(目標プライマリ回転Npri*)を決めると、決めた目標変速比(目標プライマリ回転Npri*)を得る指令値をプライマリ圧ソレノイド弁73及びセカンダリ圧ソレノイド弁74に出力する。前後進切替制御では、選択されているレンジ位置に応じて前進クラッチ31と後退ブレーキ32の締結/解放を制御する指令値をセレクトソレノイド弁75に出力する。ロックアップ制御では、ロックアップクラッチ20を締結/スリップ締結/解放するロックアップ制御圧PL/Uを制御する指令値をロックアップ圧ソレノイド弁76に出力する。
【0026】
CVTコントロールユニット8には、プライマリ回転センサ80、車速センサ81、セカンダリ圧センサ82、油温センサ83、インヒビタスイッチ84、ブレーキスイッチ85、アクセル開度センサ86、プライマリ圧センサ87、タービン回転センサ89、セカンダリ回転センサ90等からのセンサ情報やスイッチ情報が入力される。又、エンジンコントロールユニット88には、エンジン回転センサ12からのセンサ情報が入力される。CVTコントロールユニット8は、例えば、エンジンコントロールユニット88からエンジントルク情報を入力し、エンジンコントロールユニット88へエンジントルクリクエストを出力する。
【0027】
図2は、Dレンジ選択時に自動変速モードでの無段変速制御をバリエータ4により実行する際に用いられるDレンジ無段変速スケジュールの一例を示す。
【0028】
「Dレンジ変速モード」は、車両運転状態に応じて変速比を自動的に無段階に変更する自動変速モードである。「Dレンジ変速モード」での変速制御は、車速VSP(車速センサ81)とアクセル開度APO(アクセル開度センサ86)により特定される図2のDレンジ無段変速スケジュール上での運転点(VSP,APO)により、目標プライマリ回転数Npri*を決める。そして、プライマリ回転センサ80からのプライマリ回転数Npriを、目標プライマリ回転数Npri*に一致させるプーリ油圧制御により行われる。
【0029】
即ち、「Dレンジ変速モード」で用いられるDレンジ無段変速スケジュールは、図2に示すように、運転点(VSP,APO)に応じて最Low変速比と最High変速比による変速比幅の範囲内で変速比を無段階に変更するように設定されている。例えば、車速VSPが一定のときは、アクセル踏み込み操作を行うと目標プライマリ回転数Npri*が上昇してダウンシフト方向に変速し、アクセル戻し操作を行うと目標プライマリ回転数Npri*が低下してアップシフト方向に変速する。アクセル開度APOが一定のときは、車速VSPが上昇するとアップシフト方向に変速し、車速VSPが低下するとダウンシフト方向に変速する。
【0030】
[クラッチ滑り診断装置構成]
図3は、実施例1のクラッチ滑り診断装置を示す。以下、図3に基づいてクラッチ滑り診断装置構成を説明する。
【0031】
クラッチ滑り診断装置は、図3に示すように、前進クラッチ31(走行クラッチ)と、後退ブレーキ32(走行クラッチ)と、セレクトソレノイド弁75と、クラッチ滑り診断部8aと、を備えている。そして、クラッチ滑り診断部8aへ入力情報を提供する主なセンサ・スイッチ類として、エンジン回転センサ12と、プライマリ回転センサ80と、インヒビタスイッチ84と、タービン回転センサ89と、セカンダリ回転センサ90と、を備えている。
【0032】
前進クラッチ31と後退ブレーキ32は、トルクコンバータ2とバリエータ4の間に配される前後進切替機構3に並列に設けられる。前進クラッチ31は、セレクトレバー91による前進走行レンジ(Dレンジ、Lレンジ)の選択時に締結され、他のレンジ(Pレンジ、Rレンジ、Nレンジ)の選択時に解放される。後退ブレーキ32は、セレクトレバー91による後退走行レンジ(Rレンジ)の選択時に締結され、他のレンジ(Pレンジ、Nレンジ、Dレンジ、Lレンジ)の選択時に解放される。
【0033】
セレクトソレノイド弁75は、ベルト式無段変速機CVTのレンジ位置を選択するセレクトレバー91へのセレクト操作に連動して前進クラッチ31及び後退ブレーキ32の締結/解放制御を行う。実施例1の場合、前進クラッチ31と後退ブレーキ32が同時に締結されることがないため、3方向リニアソレノイド弁構造を有する1つのセレクトソレノイド弁75を用い、2つの走行クラッチの締結/解放制御を1つのセレクトソレノイド弁75によって行うようにしている。
【0034】
クラッチ滑り診断部8aは、ベルト式無段変速機の電子制御デバイスであるCVTコントロールユニット8に設けられ、疑似D判定処理と回転センサ機能異常診断処理を行う。疑似D判定処理では、タービン回転センサ89とプライマリ回転センサ80からの検出値に所定値以上の回転差が生じた場合、2つの回転数検出値間の大小関係と経時変化勾配関係がアクセル操作によるトルク伝達態様と対応関係にあるか否かが判断される。そして、2つの回転数検出値間の大小関係と2つの回転数検出値の経時変化勾配関係がアクセル操作によるトルク伝達態様と対応していると判断されると、疑似D状態であると判定する。
【0035】
ここで、「アクセル操作によるトルク伝達態様」とは、
(A) アクセル踏み込み操作によるドライブ加速走行中又はアクセル固定操作によるドライブ定速走行中であって、エンジン1から駆動輪6へ向かってトルク伝達する態様
(B) アクセル戻し操作によるドライブ減速走行中であって、エンジン1から駆動輪6へ向かってトルク伝達する態様
(C) アクセル足離し操作によるコースト走行中(惰性走行中)であって、駆動輪6からエンジン1へ向かってトルク伝達する態様
というように、三つに分類される態様をいう。
【0036】
回転センサ機能異常診断処理は、クラッチ滑り診断部8aにおいて、疑似D判定処理中に2つの検出値の経時変化勾配関係がアクセル操作によるトルク伝達態様と対応関係にないと判断されると直ちに診断処理が開始される。回転センサ機能異常診断を実行する場合、2つの検出値に駆動源側と駆動輪側のうち少なくとも一方の回転を示す検出値を加えた3つ以上の回転検出値を用い、1つの回転検出値の変化勾配が他の2以上の回転検出値の変化勾配と異なる関係のとき、異なる関係の回転センサが機能異常であると診断する。この回転センサ機能異常診断処理には、タービン回転センサ89の機能異常を診断する処理と、プライマリ回転センサ80の機能異常を診断する処理とを有する。
【0037】
インヒビタスイッチ84は、セレクトレバー91により選択されているレンジ位置(Pレンジ,Rレンジ,Nレンジ,Dレンジ,Lレンジ)を検出し、レンジ位置に応じたレンジ位置信号を出力する。ドライバーによるセレクト操作は、インヒビタスイッチ84からのレンジ位置信号を監視することで検出される。なお、ドライバーによるセレクト操作には、セレクトレバー91による操作以外に、セレクトスイッチ等による操作も含まれる。
【0038】
タービン回転センサ89は、トルクコンバータ2のタービンランナ24に連結されるトルクコンバータ出力軸21の回転であるタービン回転数Ntをパルス波信号のカウント回数であるパルスカウント数により検出するセンサである。このタービン回転数Ntは、走行クラッチのクラッチ入力回転数に相当する。
【0039】
プライマリ回転センサ80は、プライマリプーリ42に連結されるバリエータ入力軸40の回転であるプライマリ回転数Npriをパルス波信号のカウント回数であるパルスカウント数により検出するセンサである。このプライマリ回転数Npriは、走行クラッチのクラッチ出力回転数に相当する。
【0040】
エンジン回転センサ12は、エンジン1のクランク軸の回転であるエンジン回転数Neをパルス波信号のカウント回数であるパルスカウント数により検出するセンサである。このエンジン回転数Neは、ロックアップオフ時、走行クラッチのクラッチ入力回転数に比例する回転数になる。
【0041】
セカンダリ回転センサ90は、セカンダリプーリ43に連結されるバリエータ出力軸41の回転であるセカンダリ回転数Nsecをパルス波信号のカウント回数であるパルスカウント数により検出するセンサである。このセカンダリ回転数Nsecをバリエータ4の変速比RATIOを用いてバリエータ4の入力回転数に換算する演算により、走行クラッチの出力回転数に相当する演算値を取得することができる。
【0042】
[疑似D判定処理及び回転センサ機能異常診断処理構成]
図4及び図5は、実施例1のCVTコントロールユニット8のクラッチ滑り診断部8aにて実行される疑似D判定処理及び回転センサ機能異常診断処理の流れを示す。以下、疑似D判定処理及び回転センサ機能異常診断処理構成をあらわす図4及び図5の各ステップについて説明する。
【0043】
ステップS1では、走行レンジ(Dレンジ、Lレンジ、Rレンジ)を選択しているか否かを判断する。YES(走行レンジ選択中)の場合はステップS2へ進み、NO(非走行レンジ選択中)の場合はステップS1の判断を繰り返す。
【0044】
ステップS2では、ステップS1での走行レンジ選択中であるとの判断に続き、車速センサ81により取得された車速VSPが車速閾値以上であるか否かを判断する。YES(車速VSP≧車速閾値)の場合はステップS3へ進み、NO(車速VSP<車速閾値)の場合はステップS1へ戻る。
【0045】
ここで、「車速閾値」は、タービン回転数Ntとプライマリ回転数Npriの差分絶対値によるクラッチ差回転が、タービン回転センサ89とプライマリ回転センサ80によるバラツキ幅より大きくなる車速VSPの下限値に設定される。これは、車速VSPが車速閾値未満であるときは、疑似D判定を正確に実行できないことによる。
【0046】
ステップS3では、ステップS2での車速VSP≧車速閾値であるとの判断に続き、アクセル開度APOが、APO>0のドライブ走行であるか否かを判断する。YES(APO>0:ドライブ走行)の場合はステップS4へ進み、NO(APO=0:コースト走行)の場合はステップS14へ進む。
【0047】
ステップS4では、ステップS3でのAPO>0であるとの判断に続き、タービン回転数Ntとプライマリ回転数Npriとの差分によるクラッチ差回転が、第1差回転閾値ΔN1以下であるか否かを判断する。YES(Nt−Npri≦第1差回転閾値ΔN1)の場合はステップS5へ進み、NO(Nt−Npri>第1差回転閾値ΔN1)の場合はステップS8へ進む。
【0048】
ここで、(Nt−Npri)によりクラッチ差回転を演算したのは、トルク伝達方向がエンジン1から駆動輪6へ向かうドライブ走行中であるため、タービン回転数Ntとプライマリ回転数Npriの大小関係がNt>Npriになることによる。「第1差回転閾値ΔN1」は、図6に示すように、ドライブ側での疑似D判定範囲の下限値(例えば、500rpm程度)に設定される。
【0049】
ステップS5では、ステップS4でのNt−Npri≦第1差回転閾値ΔN1であるとの判断に続き、疑似D制御フラグFが、F=0(走行中疑似D制御を実行していないことをあらわす)であるか否かを判断する。YES(F=0)の場合はステップS7へ進み、NO(F=1)の場合はステップS6へ進む。
【0050】
ステップS6では、ステップS5でのF=1(走行中疑似D制御の実行中をあらわす)であるとの判断に続き、疑似D制御フラグFを、F=1からF=0に書き替え、ステップS7へ進む。
【0051】
ステップS7では、ステップS5でのF=0であるとの判断、或いは、ステップS6のF=0への書き替えに続き、正常時制御を実行し、リターンへ進む。
ここで、正常時制御とは、例えば、Dレンジ選択時において、トルク規制しないエンジン制御と、ロックアップスケジュールに基づく通常のロックアップ制御と、図2に示すDレンジ無段変速スケジュールに基づく無段変速制御と、を行うことをいう。なお、走行中疑似D制御から正常時制御へ切り替えられると、走行中疑似D制御中にベルト保護制御として実行されるロックアップオフ制御とエンジントルク規制制御を止め、その上で、正常時制御へ移行する。
【0052】
ステップS8では、ステップS4でのNt−Npri>第1差回転閾値ΔN1であるとの判断に続き、タービン回転センサ89とプライマリ回転センサ80からの検出値の経時変化勾配関係がドライブ走行シーンと対応しているか否かを判断する。YES(対応関係有り)の場合はステップS9へ進み、NO(対応関係無し)の場合はステップS11へ進む。なお、タービン回転センサ89とプライマリ回転センサ80からの検出値の経時変化勾配関係がドライブ走行シーンと対応しているか否かの詳しい判断内容については後述する。
【0053】
ステップS9では、ステップS8での対応関係有りとの判断に続き、タービン回転数Ntとプライマリ回転数Npriとの差分によるクラッチ差回転が、第2差回転閾値ΔN2以下であるか否かを判断する。YES(Nt−Npri≦第2差回転閾値ΔN2)の場合はステップS10へ進み、NO(Nt−Npri>第2差回転閾値ΔN2)の場合はステップS12へ進む。
【0054】
ここで、「第2差回転閾値ΔN2」は、疑似D範囲と回転センサ機能異常範囲を切り分けるクラッチ差回転として可能な最大値域の値であり、図6に示すように、ドライブ側での疑似D判定範囲の上限値(例えば、1000rpm程度)に設定される。
【0055】
ステップS10では、ステップS9でのNt−Npri≦第2差回転閾値ΔN2であるとの判断に続き、疑似D制御フラグFをF=1とし、走行中疑似D制御を実行し、リターンへ進む。
【0056】
ここで、「走行中疑似D制御」とは、走行クラッチのクラッチ滑り時にベルト保護を目的として実行されるロックアップクラッチ20の解放制御と、エンジン1から出力されるエンジントルクの上限値を規制するトルク規制制御とをいう。
【0057】
ステップS11では、ステップS8での対応関係無しであるとの判断に続き、タービン回転センサ89とプライマリ回転センサ80からの検出値に1つの検出値を加え、3つの値の経時変化勾配関係において1つの値が仲間外れの関係、つまり、1つの回転検出値の変化勾配が他の回転検出値の変化勾配と異なる関係にあるか否かを判断する。YES(仲間外れの関係有り)の場合はステップS12へ進み、NO(仲間外れの関係無し)の場合はステップS1へ戻る。なお、タービン回転センサ89とプライマリ回転センサ80からの検出値に1つの検出値を加え、3つの値の経時変化勾配関係において1つの値が仲間外れの関係にあるか否かの詳しい判断内容については後述する。
【0058】
ステップS12では、ステップS9でのNt−Npri>第2差回転閾値ΔN2との判断、或いは、ステップS11での仲間外れの関係有りとの判断、或いは、ステップS13でのイグニッションONとの判断に続き、異常時保護制御を実行し、ステップS13へ進む。
【0059】
ここで、「異常時保護制御」とは、回転センサ機能異常診断時、ドライバーに報知すると共に、ユニット保護を目的として実行されるロックアップクラッチ20の解放制御と、エンジン1のエンジントルク上限値を規制するトルク規制制御とをいう。加えて、タービン回転センサ89が機能異常であると診断されると、タービン回転センサ89からの検出値を用いるのを止め、タービン回転数Ntをプライマリ回転数Npriに置き換える。又、プライマリ回転センサ80が機能異常であると診断されると、プライマリ回転センサ80からの検出値を用いるのを止め、プライマリ回転数Npriをタービン回転数Ntに置き換える。
【0060】
ステップS13では、ステップS12での異常時保護制御の実行に続き、イグニッションスイッチがOFFであるか否かを判断する。YES(イグニッションOFF)の場合はエンドへ進み、NO(イグニッションON)の場合はステップS12へ戻る。
【0061】
ステップS14では、ステップS3でのAPO=0であるとの判断に続き、プライマリ回転数Npriとタービン回転数Ntとの差分によるクラッチ差回転が、第3差回転閾値ΔN3以下であるか否かを判断する。YES(Npri−Nt≦第3差回転閾値ΔN3)の場合はステップS15へ進み、NO(Npri−Nt>第3差回転閾値ΔN3)の場合はステップS18へ進む。
【0062】
ここで、(Npri−Nt)によりクラッチ差回転を演算したのは、トルク伝達方向が駆動輪6からエンジン1へ向かうコースト走行中であるため、タービン回転数Ntとプライマリ回転数Npriの大小関係がNt<Npriになることによる。「第3差回転閾値ΔN3」は、図6に示すように、コースト側での疑似D判定範囲の下限値(例えば、150rpm程度)に設定される。このコースト側での疑似D判定範囲下限値を、ドライブ側での疑似D判定範囲下限値よりも小さい差回転数としているのは、滑り締結が開始されたときのクラッチ差回転の拡大が、ドライブ走行中よりもコースト走行中の方が小さいことによる。
【0063】
ステップS15では、ステップS14でのNpri−Nt≦第3差回転閾値ΔN3であるとの判断に続き、疑似D制御フラグFが、F=0(走行中疑似D制御を実行していないことをあらわす)であるか否かを判断する。YES(F=0)の場合はステップS17へ進み、NO(F=1)の場合はステップS16へ進む。
【0064】
ステップS16では、ステップS15でのF=1(走行中疑似D制御の実行中をあらわす)であるとの判断に続き、疑似D制御フラグFを、F=1からF=0に書き替え、ステップS17へ進む。
【0065】
ステップS17では、ステップS15でのF=0であるとの判断、或いは、ステップS16のF=0への書き替えに続き、正常時制御を実行し、リターンへ進む。なお、「正常時制御」については、ステップS7と同様である。
【0066】
ステップS18では、ステップS14でのNpri−Nt>第3差回転閾値ΔN3であるとの判断に続き、タービン回転センサ89とプライマリ回転センサ80からの検出値の経時変化勾配関係がコースト走行シーンと対応しているか否かを判断する。YES(対応関係有り)の場合はステップS19へ進み、NO(対応関係無し)の場合はステップS21へ進む。なお、タービン回転センサ89とプライマリ回転センサ80からの検出値の経時変化勾配関係がコースト走行シーンと対応しているか否かの詳しい判断内容については後述する。
【0067】
ステップS19では、ステップS18での対応関係有りとの判断に続き、プライマリ回転数Npriとタービン回転数Ntとの差分によるクラッチ差回転が、第2差回転閾値ΔN2以下であるか否かを判断する。YES(Npri−Nt≦第2差回転閾値ΔN2)の場合はステップS20へ進み、NO(Npri−Nt>第2差回転閾値ΔN2)の場合はステップS22へ進む。
【0068】
ここで、「第2差回転閾値ΔN2」は、疑似D範囲と回転センサ機能異常範囲を切り分けるクラッチ差回転として可能な最大値域の値であり、図6に示すように、コースト側での疑似D判定範囲の上限値(例えば、1000rpm程度)に設定される。なお、疑似D判定範囲の上限値については、コースト側もドライブ側も同じ値とされる。
【0069】
ステップS20では、ステップS19でのNpri−Nt≦第2差回転閾値ΔN2であるとの判断に続き、疑似D制御フラグFをF=1とし、走行中疑似D制御を実行し、リターンへ進む。なお、「走行中疑似D制御」については、ステップS10と同様である。
【0070】
ステップS21では、ステップS18での対応関係無しであるとの判断に続き、タービン回転センサ89とプライマリ回転センサ80からの検出値に1つの検出値を加え、3つの値の経時変化勾配関係において1つの値が仲間外れの関係にあるか否かを判断する。YES(仲間外れの関係有り)の場合はステップS22へ進み、NO(仲間外れの関係無し)の場合はステップS1へ戻る。なお、タービン回転センサ89とプライマリ回転センサ80からの検出値に1つの検出値を加え、3つの値の経時変化勾配関係において1つの値が仲間外れの関係にあるか否かの詳しい判断内容については後述する。
【0071】
ステップS22では、ステップS19でのNpri−Nt>第2差回転閾値ΔN2との判断、或いは、ステップS21での仲間外れの関係有りとの判断、或いは、ステップS23でのイグニッションONとの判断に続き、異常時保護制御を実行し、ステップS23へ進む。なお、「異常時保護制御」について、ステップS12と同様である。
【0072】
ステップS23では、ステップS22での異常時保護制御の実行に続き、イグニッションスイッチがOFFであるか否かを判断する。YES(イグニッションOFF)の場合はエンドへ進み、NO(イグニッションON)の場合はステップS22へ戻る。
【0073】
次に、作用を説明する。
実施例1の作用を、「疑似D判定処理作用及び回転センサ機能異常診断処理作用」、「疑似D判定作用」、「タービン回転センサの機能異常診断作用」、「プライマリ回転センサの機能異常診断作用」に分けて説明する。
【0074】
[疑似D判定処理作用及び回転センサ機能異常診断処理作用]
図4及び図5に基づいて疑似D判定処理作用及び回転センサ機能異常診断処理作用を説明する。
【0075】
Dレンジを選択してのドライブ走行中、前進クラッチ31が完全締結状態を維持しているときは、Nt−Npri≦第1差回転閾値ΔN1になる。このため、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4→ステップS5→ステップS7→リターンへと進む流れが繰り返される。よって、ステップS7では、正常時制御が実行される。
【0076】
その後、Dレンジを選択してのドライブ走行中、前進クラッチ31へのクラッチ油圧不足や駆動系への入力トルク変動等により前進クラッチ31が滑り締結状態へ移行し、Nt−Npri>第1差回転閾値ΔN1になったとする。この場合、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4→ステップS8へと進む。ステップS8では、Nt−Npri>第1差回転閾値ΔN1になった原因が前進クラッチ31の滑り締結状態への移行であることで、タービン回転センサ89とプライマリ回転センサ80からの検出値の経時変化勾配関係がドライブ走行シーンと対応していると判断される。このため、前進クラッチ31の滑り締結状態が継続している間は、ステップS8→ステップS9→ステップS10→リターンへ進む流れが繰り返される。よって、ステップS10では、前進クラッチ31の滑り締結状態でプーリベルト44を保護する走行中疑似D制御の実行が継続される。
【0077】
その後、前進クラッチ31が滑り締結状態から完全締結状態に復帰すると、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4→ステップS5→ステップS6→ステップS7→リターンへと進む。よって、ステップS7では、走行中疑似D制御の実行から正常時制御の実行へとの制御復帰が実現される。
【0078】
一方、Dレンジを選択してのドライブ走行中、前進クラッチ31は完全締結状態を維持しているが、タービン回転センサ89やプライマリ回転センサ80の機能異常により、Nt−Npri>第1差回転閾値ΔN1になったとする。この場合、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4→ステップS8へと進む。ステップS8では、Nt−Npri>第1差回転閾値ΔN1になった原因が回転センサ機能異常であることで、タービン回転センサ89とプライマリ回転センサ80からの検出値の経時変化勾配関係がドライブ走行シーンと対応していないと判断される。よって、ステップS8からステップS11へ進み、回転センサ機能異常診断が開始される。
【0079】
ステップS11では、タービン回転センサ89とプライマリ回転センサ80からの検出値に1つの検出値を加え、3つの値の経時変化勾配関係において1つの値が仲間外れの関係にあると判断されると、ステップS11からステップS12へ進む。ステップS12では、タービン回転センサ機能異常、又は、プライマリ回転センサ機能異常による異常時保護制御が実行される。
【0080】
さらに、Dレンジを選択してのドライブ走行中、タービン回転センサ89やプライマリ回転センサ80の機能異常によりNt−Npri>第1差回転閾値ΔN1になり、かつ、2つの検出値の経時変化勾配関係がドライブ走行シーンと対応していると判断されたままになったとする。この場合、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS4→ステップS8→ステップS9→ステップS10→リターンへと進む流れが繰り返される。この途中のステップS9にてNt−Npri>第2差回転閾値ΔN2と判断されると、ステップS9からステップS12へと進み、ステップS12では、異常時保護制御が実行される。
【0081】
Dレンジを選択してのコースト走行中、前進クラッチ31が完全締結状態を維持しているときは、Npri−Nt≦第3差回転閾値ΔN3になる。このため、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS14→ステップS15→ステップS17→リターンへと進む流れが繰り返される。よって、ステップS17では、正常時制御が実行される。
【0082】
その後、Dレンジを選択してのコースト走行中、前進クラッチ31へのクラッチ油圧不足や駆動系への入力トルク変動等により前進クラッチ31が滑り締結状態へ移行し、Npri−Nt>第3差回転閾値ΔN3になったとする。この場合、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS14→ステップS18へと進む。ステップS18では、Npri−Nt>第3差回転閾値ΔN3になった原因が前進クラッチ31の滑り締結状態への移行であることで、タービン回転センサ89とプライマリ回転センサ80からの検出値の経時変化勾配関係がコースト走行シーンと対応していると判断される。このため、前進クラッチ31の滑り締結状態が継続している間は、ステップS18→ステップS19→ステップS20→リターンへ進む流れが繰り返される。よって、ステップS20では、前進クラッチ31の滑り締結状態でプーリベルト44を保護する走行中疑似D制御の実行が継続される。
【0083】
その後、前進クラッチ31が滑り締結状態から完全締結状態に復帰すると、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS14→ステップS15→ステップS16→ステップS17→リターンへと進む。よって、ステップS17では、走行中疑似D制御の実行から正常時制御の実行へとの制御復帰が実現される。
【0084】
一方、Dレンジを選択してのコースト走行中、前進クラッチ31は完全締結状態を維持しているが、タービン回転センサ89やプライマリ回転センサ80の機能異常により、Npri−Nt>第3差回転閾値ΔN3になったとする。この場合、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS14→ステップS18へと進む。ステップS18では、Npri−Nt>第3差回転閾値ΔN3になった原因が回転センサ機能異常であることで、タービン回転センサ89とプライマリ回転センサ80からの検出値の経時変化勾配関係がコースト走行シーンと対応していないと判断される。よって、ステップS18からステップS21へ進み、回転センサ機能異常診断が開始される。
【0085】
ステップS21では、タービン回転センサ89とプライマリ回転センサ80からの検出値に1つの検出値を加え、3つの値の経時変化勾配関係において1つの値が仲間外れの関係にあると判断されると、ステップS21からステップS22へ進む。ステップS22では、タービン回転センサ機能異常、又は、プライマリ回転センサ機能異常による異常時保護制御が実行される。
【0086】
さらに、Dレンジを選択してのコースト走行中、タービン回転センサ89やプライマリ回転センサ80の機能異常によりNpri−Nt>第3差回転閾値ΔN3になり、かつ、2つの検出値の経時変化勾配関係がコースト走行シーンと対応していると判断されたままになったとする。この場合、ステップS1→ステップS2→ステップS3→ステップS14→ステップS18→ステップS19→ステップS20→リターンへと進む流れが繰り返される。この途中のステップS19にてNpri−Nt>第2差回転閾値ΔN2と判断されると、ステップS19からステップS22へと進み、ステップS22では、異常時保護制御が実行される。
【0087】
このように、実施例1では、2つの回転センサ89,80からのタービン回転数Ntとプライマリ回転数Npriに所定値(第1差回転閾値ΔN1又は第3差回転閾値ΔN3)以上の回転差が生じた場合、下記の判断条件を加え、疑似D状態であると判定する。
(a) 2つの検出値であるタービン回転数Ntとプライマリ回転数Npriの大小関係がアクセル操作によるトルク伝達態様と対応関係にある(S4,S14)。
(b) 2つの検出値であるタービン回転数Ntとプライマリ回転数Npriの経時変化勾配関係がアクセル操作によるトルク伝達態様と対応関係にある(S8でYES,S18でYES)。
【0088】
即ち、本発明者等は、走行レンジの選択中、2つの回転センサからの検出値に所定値以上の回転差が生じると疑似D状態であると判定すると、回転センサが検出値を上げたり下げたりする機能異常であるとき、疑似D状態と誤判定してしまう点に着目した。
【0089】
そこで、疑似D判定条件に、2つの回転数検出値間の大小関係と経時変化勾配関係の判断を加えることで、疑似D状態と回転センサ機能異常を見分け、回転センサ機能異常による疑似D誤判定を排除するようにした。この結果、走行レンジが選択された状態で走行クラッチに差回転が発生したとき、疑似D状態であるとの誤判定が防止される。
【0090】
実施例1では、2つの回転センサ89,80からのタービン回転数Ntとプライマリ回転数Npriに所定値(第1差回転閾値ΔN1又は第3差回転閾値ΔN3)以上の回転差が生じた場合、上記(b)の判断条件が成立しないと、回転センサ機能異常診断を実行する。
【0091】
即ち、(b)の判断条件が無いと、回転センサが検出値を上げたり下げたりする機能異常であるとき、走行中疑似D制御の実行が継続されてしまう。よって、走行中疑似D制御の実行されている間は、回転センサ機能異常診断処理が開始されず、回転センサ機能異常診断への移行が遅れる。これに対し、(b)の判断条件は、疑似D状態と回転センサ機能異常を見分ける条件として設定したものであるため、回転センサ機能異常であると見分けられると、直ちに、疑似D判定から回転センサ機能異常診断へ移行する。この結果、回転センサが検出値を上げたり下げたりする機能異常であるとき、遅れることなく回転センサ機能異常診断処理が開始される。
【0092】
[疑似D判定作用]
図7は、ドライブ走行中又はコースト走行中に疑似D判定を行う場合に回転センサ機能異常がないときの2つの回転数検出値間の大小関係と経時変化勾配関係を示す。以下、図7に基づいて疑似D判定作用を説明する。
【0093】
疑似D判定する際、クラッチ差回転条件が成立している状況で検出値の大小関係と経時変化勾配関係を判断する場合、少なくともタービン回転数Ntとプライマリ回転数Npriとの2つの検出値を用いる。そして、走行シーンを、アクセル操作によりドライブ走行シーン(アクセルON&トルクアップ、アクセルON&トルクダウン)とコースト走行シーンとで分ける。ここで、タービン回転変化勾配ΔNtは、タービン回転センサ89からの検出値を微分演算処理(単位時間当たりの差分)により取得する。同様に、プライマリ回転変化勾配ΔNpriは、プライマリ回転センサ80からの検出値を微分演算処理(単位時間当たりの差分)により取得する。
【0094】
ドライブ加速走行シーン(アクセルON&トルクアップ)の場合、走行クラッチが完全締結されている正常時には、図7の上部左枠に示すように、Nt=Npriであり、両変化勾配ΔNt,ΔNpriは右上がり勾配になる。一方、走行クラッチのクラッチ外れにより滑り締結になるとエンジン1が吹け上がり、図7の上部右枠に示すように、タービン回転変化勾配ΔNtの右上がり勾配角度が大きくなる。これに対し、プライマリ回転変化勾配ΔNpriは右上がり勾配角度が小さくなる。
【0095】
よって、ドライブ加速走行シーン(アクセルON&トルクアップ)においては、走行クラッチが時刻t1から滑りを開始し、時刻t2にてクラッチ差回転が第1差回転閾値ΔN1になったとき、Nt>Npri、且つ、ΔNt>ΔNpri>0(正勾配)の関係になる。この場合、タービン回転数Ntとプライマリ回転数Npriの大小関係と経時変化勾配関係がドライブ加速走行シーンに対応している。つまり、2つの回転数検出値間の大小関係と2つの回転数検出値の経時変化勾配関係がアクセル操作によるトルク伝達態様と対応しているため、疑似D状態であると判定される。
【0096】
例えば、タービン回転センサ89からのタービン回転数Ntが下がる機能異常が発生した場合、タービン回転変化勾配ΔNtが右下がり勾配になる。よって、クラッチ差回転が第1差回転閾値ΔN1になったとき、Nt<Npri、且つ、ΔNt<0(負勾配)の関係であると、ドライブ加速走行シーンに対応していない。つまり、2つの回転数検出値間の大小関係と2つの回転数検出値の経時変化勾配関係がアクセル操作によるトルク伝達態様と対応していないため、疑似D判定されず、回転センサ機能異常診断へ移行する。
【0097】
なお、アクセル開度APOを一定に保ってのドライブ定速走行シーンの場合についても、走行クラッチのクラッチ外れにより滑り締結になるとエンジン1が吹け上がり、タービン回転変化勾配ΔNtの右上がり勾配角度が大きくなるため、疑似D状態を判定できる。
【0098】
ドライブ減速走行シーン(アクセルON&トルクダウン)の場合、走行クラッチが完全締結されている正常時には、図7の中部左枠に示すように、Nt=Npriであり、両変化勾配ΔNt,ΔNpriは右下がり勾配になる。一方、走行クラッチのクラッチ外れにより滑り締結になるとエンジン1が吹け上がり、図7の中部右枠に示すように、タービン回転変化勾配ΔNtの右下がり勾配角度が小さくなる。これに対し、プライマリ回転変化勾配ΔNpriは右下がり勾配角度が大きくなる。
【0099】
よって、ドライブ減速走行シーン(アクセルON&トルクダウン)においては、走行クラッチが時刻t1から滑りを開始し、時刻t2にてクラッチ差回転が第1差回転閾値ΔN1になったとき、Nt>Npri、且つ、0>ΔNpri>ΔNt(負勾配)の関係になる。この場合、タービン回転数Ntとプライマリ回転数Npriの大小関係と経時変化勾配関係がドライブ減速走行シーンに対応している。つまり、2つの回転数検出値間の大小関係と2つの回転数検出値の経時変化勾配関係がアクセル操作によるトルク伝達態様と対応しているため、疑似D状態であると判定される。
【0100】
例えば、タービン回転センサ89からのタービン回転数Ntが上がる機能異常が発生した場合、タービン回転変化勾配ΔNtが右上がり勾配になる。よって、クラッチ差回転が第1差回転閾値ΔN1になったとき、Nt>Npri、且つ、ΔNt>0(正勾配)の関係であると、ドライブ減速走行シーンに対応していない。つまり、2つの回転数検出値間の大小関係と2つの回転数検出値の経時変化勾配関係がアクセル操作によるトルク伝達態様と対応していないため、疑似D判定されず、回転センサ機能異常診断へ移行する。
【0101】
アクセル足離し操作によるコースト走行シーンの場合、走行クラッチが完全締結されている正常時には、図7の下部左枠に示すように、Nt=Npriであり、両変化勾配ΔNt,ΔNpriは右下がりの緩やかな勾配になる。一方、走行クラッチのクラッチ外れにより滑り締結になってもエンジン1が吹け上がりなく、図7の下部部右枠に示すように、タービン回転変化勾配ΔNtは右下がりの緩やかな勾配角度が保たれる。これに対し、プライマリ回転変化勾配ΔNpriは右下がり勾配角度が徐々に小さくなる。
【0102】
よって、コースト減速走行シーンにおいては、走行クラッチが時刻t1から滑りを開始し、時刻t2にてクラッチ差回転が第3差回転閾値ΔN3になったとき、Npri>Nt、且つ、0>ΔNpri>ΔNt(負勾配)の関係になる。この場合、タービン回転数Ntとプライマリ回転数Npriの大小関係と経時変化勾配関係がコースト減速走行シーンに対応している。つまり、2つの回転数検出値間の大小関係と2つの回転数検出値の経時変化勾配関係がアクセル操作によるトルク伝達態様と対応しているため、疑似D状態であると判定される。
【0103】
例えば、タービン回転センサ89からのタービン回転数Ntが上がる機能異常が発生した場合、タービン回転変化勾配ΔNtが右上がり勾配になる。よって、クラッチ差回転が第3差回転閾値ΔN3になったとき、Nt>Npri、且つ、ΔNt>0(正勾配)の関係であると、コースト走行シーンに対応していない。つまり、2つの回転数検出値間の大小関係と2つの回転数検出値の経時変化勾配関係がアクセル操作によるトルク伝達態様と対応していないため、疑似D判定されず、回転センサ機能異常診断へ移行する。
【0104】
[タービン回転センサの機能異常診断作用]
図8は、ドライブ走行中又はコースト走行中に疑似D判定から回転センサ機能異常診断へ移行した場合にタービン回転センサ89が機能異常であるときの3つの検出値の大小関係と経時変化勾配関係を示す。以下、図8に基づいてタービン回転センサ89の機能異常診断作用を説明する。
【0105】
疑似D判定において変化勾配が各走行シーンに対応していないと判断され、タービン回転センサ89の機能異常診断を実行する場合、少なくともタービン回転数Ntとプライマリ回転数Npriとエンジン回転数Ne(勾配特性がNtと相似)との3つの値を用いる。そして、疑似D判定と同様に、走行シーンを、アクセル操作によりドライブ走行シーン(アクセルON&トルクアップ、アクセルON&トルクダウン)とコースト走行シーンとで分ける。
【0106】
ドライブ加速走行シーン(アクセルON&トルクアップ)の場合、タービン回転センサ89の機能正常時には、図8の上部左枠に示すように、エンジン回転変化勾配ΔNeとタービン回転変化勾配ΔNtとプライマリ回転変化勾配ΔNpriが同じ右上がり勾配になる。一方、タービン回転センサ89からのタービン回転数Ntが水入り等により徐々に下がる機能異常時には、図8の上部左枠に示すように、タービン回転変化勾配ΔNtが右上がり勾配から右下がり勾配へと移行する。つまり、図8の上部左枠の破線にて示すタービン回転数(Nt)の特性から図8の上部左枠の細実線にて示すタービン回転数Ntの特性へと移行する。
【0107】
よって、タービン回転数Ntとプライマリ回転数Npriとエンジン回転数Neのうち、タービン回転変化勾配ΔNtが他の2つの変化勾配ΔNe,ΔNpriと異なる仲間外れの関係(1つの回転数検出値の勾配が他の回転数検出値の勾配と異なる関係)になる。そして、タービン回転変化勾配ΔNtがエンジン回転変化勾配ΔNeと逆の動きをしている。このため、異なる関係であるタービン回転センサ89が機能異常であると診断される。
【0108】
ドライブ減速走行シーン(アクセルON&トルクダウン)の場合、タービン回転センサ89の機能正常時には、図8の中部右枠に示すように、エンジン回転変化勾配ΔNeとタービン回転変化勾配ΔNtとプライマリ回転変化勾配ΔNpriが同じ右下がり勾配になる。一方、タービン回転センサ89からのタービン回転数Ntがパルス割れ等により徐々に上がる機能異常時には、図8の中部右枠に示すように、タービン回転変化勾配ΔNtが右下がり勾配から右上がり勾配へと移行する。つまり、図8の中部右枠の破線にて示すタービン回転数(Nt)の特性から図8の中部右枠の細実線にて示すタービン回転数Ntの特性へと移行する。
【0109】
よって、タービン回転数Ntとプライマリ回転数Npriとエンジン回転数Neのうち、タービン回転変化勾配ΔNtが他の2つの変化勾配ΔNe,ΔNpriと異なる仲間外れの関係になる。そして、タービン回転変化勾配ΔNtがエンジン回転変化勾配ΔNeと逆の動きをしている。このため、タービン回転センサ89が機能異常であると診断される。
【0110】
アクセル足離し操作によるコースト走行シーンの場合、タービン回転センサ89の機能正常時には、図8の下部右枠に示すように、エンジン回転変化勾配ΔNeとタービン回転変化勾配ΔNtとプライマリ回転変化勾配ΔNpriが同じ右下がり勾配になる。一方、タービン回転センサ89からのタービン回転数Ntがパルス割れ等により徐々に上がる機能異常時には、図8の下部右枠に示すように、タービン回転変化勾配ΔNtが右下がり勾配から右上がり勾配へと移行する。つまり、図8の下部右枠の破線にて示すタービン回転数(Nt)の特性から図8の下部右枠の細実線にて示すタービン回転数Ntの特性へと移行する。
【0111】
よって、タービン回転数Ntとプライマリ回転数Npriとエンジン回転数Neのうち、タービン回転変化勾配ΔNtが他の2つの変化勾配ΔNe,ΔNpriと異なる仲間外れの関係になる。そして、アクセル足離し操作によるコースト走行シーンにおいてはタービン回転数Ntが上がることはない。このため、タービン回転センサ89が機能異常であると診断される。
【0112】
[プライマリ回転センサの機能異常診断作用]
図9は、ドライブ走行中又はコースト走行中に疑似D判定から回転センサ機能異常診断へ移行した場合にプライマリ回転センサ80が機能異常であるときの3つの検出値の大小関係と経時変化勾配関係を示す。以下、図9に基づいてプライマリ回転センサ80の機能異常診断作用を説明する。
【0113】
疑似D判定において変化勾配が各走行シーンに対応していないと判断され、プライマリ回転センサ80の機能異常診断を実行する場合、少なくともタービン回転数Ntとプライマリ回転数Npriとプライマリ演算回転数Npri#(勾配特性がNpriと相似)との3つの値を用いる。そして、疑似D判定と同様に、走行シーンを、アクセル操作によりドライブ走行シーン(アクセルON&トルクアップ、アクセルON&トルクダウン)とコースト走行シーンとで分ける。なお、プライマリ演算回転数Npri#は、セカンダリ回転センサ90からのセカンダリ回転数Nsecをバリエータ4の変速比RATIOを用いてバリエータ4の入力回転数に換算する演算により取得される。
【0114】
ドライブ加速走行シーン(アクセルON&トルクアップ)の場合、プライマリ回転センサ80の機能正常時には、図9の上部左枠に示すように、プライマリ演算回転変化勾配ΔNpri#とタービン回転変化勾配ΔNtとプライマリ回転変化勾配ΔNpriが同じ右上がり勾配になる。一方、プライマリ回転センサ80からのプライマリ回転数Npriが水入り等により徐々に下がる機能異常時には、図9の上部左枠に示すように、プライマリ回転変化勾配ΔNpriが右上がり勾配から右下がり勾配へと移行する。つまり、図9の上部左枠の破線にて示すプライマリ回転数(Npri)の特性から図9の上部左枠の1点鎖線にて示すプライマリ回転数Npriの特性へと移行する。
【0115】
よって、タービン回転数Ntとプライマリ回転数Npriとプライマリ演算回転数Npri#のうち、プライマリ回転変化勾配ΔNpriが他の2つの変化勾配ΔNt,ΔNpri#と異なる仲間外れの関係になる。そして、プライマリ回転変化勾配ΔNpriがプライマリ演算回転変化勾配ΔNpri#と逆の動きをしている。このため、プライマリ回転センサ80が機能異常であると診断される。
【0116】
ドライブ減速走行シーン(アクセルON&トルクダウン)の場合、プライマリ回転センサ80の機能正常時には、図9の中部右枠に示すように、プライマリ演算回転変化勾配ΔNpri#とタービン回転変化勾配ΔNtとプライマリ回転変化勾配ΔNpriが同じ右下がり勾配になる。一方、プライマリ回転センサ80からのプライマリ回転数Npriがパルス割れ等により徐々に上がる機能異常時には、図9の中部右枠に示すように、プライマリ回転変化勾配ΔNpriが右下がり勾配から右上がり勾配へと移行する。つまり、図9の中部右枠の破線にて示すプライマリ回転数(Npri)の特性から図9の中部右枠の1点鎖線にて示すプライマリ回転数Npriの特性へと移行する。
【0117】
よって、タービン回転数Ntとプライマリ回転数Npriとプライマリ演算回転数Npri#のうち、プライマリ回転変化勾配ΔNpriが他の2つの変化勾配ΔNt,ΔNpri#と異なる仲間外れの関係になる。そして、プライマリ回転変化勾配ΔNpriがプライマリ演算回転変化勾配ΔNpri#と逆の動きをしている。このため、プライマリ回転センサ80が機能異常であると診断される。
【0118】
アクセル足離し操作によるコースト走行シーンの場合、プライマリ回転センサ80の機能正常時には、図9の下部右枠に示すように、プライマリ演算回転変化勾配ΔNpri#とタービン回転変化勾配ΔNtとプライマリ回転変化勾配ΔNpriが同じ右下がり勾配になる。一方、プライマリ回転センサ80からのプライマリ回転数Npriがパルス割れ等により徐々に上がる機能異常時には、図9の下部右枠に示すように、プライマリ回転変化勾配ΔNpriが右下がり勾配から右上がり勾配へと移行する。つまり、図9の下部右枠の破線にて示すプライマリ回転数(Npri)の特性から図9の下部右枠の1転鎖線にて示すプライマリ回転数Npriの特性へと移行する。
【0119】
よって、タービン回転数Ntとプライマリ回転数Npriとプライマリ演算回転変化勾配ΔNpri#のうち、プライマリ回転変化勾配ΔNpriが他の2つの変化勾配ΔNt,ΔNpri#と異なる仲間外れの関係になる。そして、アクセル足離し操作によるコースト走行シーンにおいてはプライマリ回転数Npriが上がることはない。このため、プライマリ回転センサ80が機能異常であると診断される。
【0120】
次に、効果を説明する。
実施例1のベルト式無段変速機CVTのクラッチ滑り診断装置及びクラッチ滑り診断方法にあっては、下記に列挙する効果が得られる。
【0121】
(1) 走行用駆動源(エンジン1)と駆動輪6との間に配される自動変速機(ベルト式無段変速機CVT)と、自動変速機に有し、ドライバーにより走行レンジ(Dレンジ、Lレンジ、Rレンジ)が選択された状態にて締結される走行クラッチ(前進クラッチ31、後退ブレーキ32)と、走行レンジの選択中、走行クラッチに所定値以上のクラッチ回転差が生じると疑似D状態(疑似D状態とは、走行レンジ、つまり、DレンジやRレンジやLレンジ等での走行中に締結状態であるべき走行クラッチが意図せずにクラッチ滑り締結状態になることをいう。)であると判定するクラッチ滑り診断部8aと、を備える。
この自動変速機(ベルト式無段変速機CVT)のクラッチ滑り診断装置において、走行クラッチのクラッチ回転差を検出する駆動源側回転センサ(タービン回転センサ89)と駆動輪側回転センサ(プライマリ回転センサ80)を設ける。
クラッチ滑り診断部8aは、2つの回転センサからの検出値(タービン回転数Nt、プライマリ回転数Npri)に所定値以上の回転差が生じた場合、2つの回転数検出値間の大小関係と2つの回転数検出値の経時変化勾配関係がアクセル操作によるトルク伝達態様と対応していると判断されると、疑似D状態であると判定する。
このため、走行レンジ(Dレンジ、Lレンジ、Rレンジ)が選択された状態で走行クラッチ(前進クラッチ31、後退ブレーキ32)に差回転が発生したとき、回転センサの機能異常による差回転の発生を疑似D状態であるとする誤判定を防止するクラッチ滑り診断装置を提供することができる。
【0122】
(2) クラッチ滑り診断部8aは、アクセル踏み込み操作によるドライブ走行中、2つの回転センサからの検出値(タービン回転数Nt、プライマリ回転数Npri)に所定値(第1差回転閾値ΔN1)以上の回転差が生じた場合、駆動源側回転検出値(タービン回転数Nt)が駆動輪側回転検出値(プライマリ回転数Npri)よりも大きく、2つの検出値の変化勾配ΔNt,ΔNpriが上昇勾配の関係にあると、疑似D状態であると判定する。
このため、(1)の効果に加え、ドライブ加速走行シーンにおいて、回転センサ機能異常による誤判定を排除し、精度良く疑似D判定を行うことができる。
【0123】
(3) クラッチ滑り診断部8aは、アクセル戻し操作によるドライブ走行中、2つの回転センサからの検出値(タービン回転数Nt、プライマリ回転数Npri)に所定値(第1差回転閾値ΔN1)以上の回転差が生じた場合、駆動源側回転検出値(タービン回転数Nt)が駆動輪側回転検出値(プライマリ回転数Npri)よりも大きく、2つの検出値の変化勾配ΔNt,ΔNpriが下降勾配の関係にあると、疑似D状態であると判定する。
このため、(1)又は(2)の効果に加え、ドライブ減速走行シーンにおいて、回転センサ機能異常による誤判定を排除し、精度良く疑似D判定を行うことができる。
【0124】
(4) クラッチ滑り診断部8aは、アクセル足離し操作によるコースト走行中、2つの回転センサからの検出値(タービン回転数Nt、プライマリ回転数Npri)に所定値(第3差回転閾値ΔN3)以上の回転差が生じた場合、駆動輪側回転検出値(プライマリ回転数Npri)が駆動源側回転検出値(タービン回転数Nt)よりも大きく、2つの検出値の変化勾配ΔNt,ΔNpriが下降勾配の関係にあると、疑似D状態であると判定する。
このため、(1)〜(3)の効果に加え、コースト走行シーンにおいて、回転センサ機能異常による誤判定を排除し、精度良く疑似D判定を行うことができる。
【0125】
(5) クラッチ滑り診断部8aは、2つの回転センサからの検出値(タービン回転数Nt、プライマリ回転数Npri)に所定値(第1差回転閾値ΔN1又は第3差回転閾値ΔN3)以上の回転差が生じた場合、2つの検出値の経時変化勾配関係がアクセル操作によるトルク伝達態様と対応関係にないと判断されると、回転センサ(タービン回転センサ89、プライマリ回転センサ80)の機能異常を診断する回転センサ機能異常診断を実行する。
このため、(1)〜(4)の効果に加え、回転センサ(タービン回転センサ89、プライマリ回転センサ80)が検出値を上げたり下げたりする機能異常であるとき、遅れることなく回転センサ機能異常診断処理を開始することができる。
【0126】
(6) クラッチ滑り診断部8aは、回転センサ(タービン回転センサ89、プライマリ回転センサ80)の機能異常診断を実行する場合、2つの検出値(タービン回転数Nt、プライマリ回転数Npri)に駆動源側と駆動輪側のうち少なくとも一方の回転を示す検出値を加えた3つ以上の回転検出値を用い、1つの回転検出値の変化勾配が他の回転検出値の変化勾配と異なる関係のとき、異なる関係の回転センサ(タービン回転センサ89又はプライマリ回転センサ80)が機能異常であると診断する。
このため、(5)の効果に加え、少なくとも3つ以上の回転検出値を用い、1つの検出値の勾配が他の検出値と仲間外れの関係にあるか否かの判断を行うだけで、回転センサ機能異常診断を精度よく行うことができる。
【0127】
(7) 走行用駆動源(エンジン1)と駆動輪6との間に配される自動変速機(ベルト式無段変速機CVT)と、
自動変速機に有し、ドライバーにより走行レンジ(Dレンジ、Lレンジ、Rレンジ)が選択された状態にて締結される走行クラッチ(前進クラッチ31、後退ブレーキ32)と、を備える。
この自動変速機において、走行レンジの選択中、走行クラッチ(前進クラッチ31、後退ブレーキ32)に所定値以上のクラッチ回転差が生じると疑似D状態であると判定するクラッチ滑り診断方法であって、走行用駆動源側の回転数検出値と駆動輪側の回転数検出値とから走行クラッチ(前進クラッチ31、後退ブレーキ32)のクラッチ回転差を検出する。
クラッチ回転差が所定値以上である場合、2つの回転数検出値間の大小関係と2つの回転数検出値の経時変化勾配関係がアクセル操作によるトルク伝達態様と対応していると判断されると、疑似D状態であると判定する。
このため、走行レンジ(Dレンジ、Lレンジ、Rレンジ)が選択された状態で走行クラッチ(前進クラッチ31、後退ブレーキ32)に差回転が発生したとき、回転センサの機能異常による差回転の発生を疑似D状態であるとする誤判定を防止するクラッチ滑り診断方法を提供することができる。
【0128】
以上、本発明の自動変速機のクラッチ滑り診断装置及びクラッチ滑り診断方法を実施例1に基づき説明してきた。しかし、具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0129】
実施例1では、疑似D判定として、2つの検出値(Nt,Npri)を用いて大小関係と経時変化勾配関係を判断する場合、変化勾配ΔNt,ΔNpriを用いて経時変化勾配関係を判断する例を示した。しかし、疑似D判定としては、2つの検出値以外にクラッチ入力側とクラッチ出力側の検出値(演算値)を増やし、経時変化勾配関係を検出値(演算値)の大小関係に置き換えて判断するようにしても良い。
【0130】
実施例1では、回転センサ機能異常診断として、3つの検出値(Nt,Npri,Ne)を用いてタービン回転センサ89の機能異常を診断する場合と、2つの検出値(Nt,Npri)と1つの演算値(Npri#)を用いてプライマリ回転センサ80の機能異常を診断する場合の例を示した。しかし、回転センサ機能異常診断としては、タービン回転センサ機能異常診断かプライマリ回転センサ機能異常診断かにかかわらず、3つの検出値(Nt,Npri,Ne)と1つの演算値(Npri#)との合計4つの値を用いて、タービン回転センサ又はプライマリ回転センサの機能異常診断を行うようにしても良い。
【0131】
実施例1では、本発明のクラッチ滑り診断装置及びクラッチ滑り診断方法を、自動変速機としてベルト式無段変速機CVTを搭載したエンジン車に適用する例を示した。しかし、本発明のクラッチ滑り診断装置は、自動変速機として、ステップATと呼ばれる有段変速機を搭載した車両や副変速機付き無段変速機を搭載した車両等に適用しても良い。また、適用される車両としても、エンジン車に限らず、走行用駆動源にエンジンとモータを搭載したハイブリッド車、走行用駆動源にモータを搭載した電気自動車等に対しても適用できる。ここで、ステップATと呼ばれる有段変速機を搭載した車両に適用する場合、N→Dセレクト操作時やN→Rセレクト操作時に締結される発進クラッチを走行クラッチとして取り扱う。
【符号の説明】
【0132】
1 エンジン(走行用駆動源)
CVT ベルト式無段変速機(自動変速機)
2 トルクコンバータ
3 前後進切替機構
31 前進クラッチ(走行クラッチ)
32 後退ブレーキ(走行クラッチ)
4 バリエータ
5 終減速機構
6 駆動輪
7 油圧制御ユニット
8 CVTコントロールユニット
8a クラッチ滑り診断部
12 エンジン回転センサ
80 プライマリ回転センサ
84 インヒビタスイッチ
89 タービン回転センサ
90 セカンダリ回転センサ
91 セレクトレバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9