(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
<前提技術>
図16は本願発明の活性ガス生成装置における基本構成を模式的に示す説明図である。同図に示すように、高電圧側電極構成部1(第1の電極構成部)と、高電圧側電極構成部1の下方に設けられる接地側電極構成部2(第2の電極構成部)と、高電圧側電極構成部1及び接地側電極構成部2に交流電圧を印加する高周波電源5(交流電源部)とを基本構成として有している。
【0022】
高電圧側電極構成部1は、誘電体電極11(第1の誘電体電極)と誘電体電極11の上面上に選択的に形成される金属電極10(第1の金属電極)とを有し、接地側電極構成部2は、誘電体電極21(第2の誘電体電極)と誘電体電極21の下面上に選択的に形成される金属電極20(第2の金属電極)とを有している。接地側電極構成部2の金属電極20が接地レベルに接続され、高電圧側電極構成部1の金属電極10に高周波電源5から交流電圧が印加される。
【0023】
そして、高周波電源5の交流電圧の印加により、誘電体電極11及び21が対向する誘電体空間内において、金属電極10及び20が平面視重複する領域が放電空間として規定される。上述した高電圧側電極構成部1、接地側電極構成部2及び高周波電源5によって活性ガス生成用電極群が構成される。
【0024】
このような構成において、交流電源部である高周波電源5による交流電圧の印加により、高電圧側電極構成部1と接地側電極構成部2との間に放電空間が形成され、この放電空間に窒素分子等の原料ガス6を供給すると、ラジカル化した窒素原子等の活性ガス7を得ることができる。
【0025】
以下で述べる実施の形態1〜実施の形態4の活性ガス生成装置は、
図16で示した活性ガス生成装置は基本構成として、さらに発展させた装置である。
【0026】
<実施の形態1>
図1は実施の形態1の活性ガス生成装置における接地側電極構成部2Aの誘電体電極211の全体構造を示す斜視図である。
図2は接地側電極構成部2Aの上面及び下面構造等を示す説明図である。同図(a)が上面図であり、同図(b)が同図(a)のA−A断面図、同図(c)が下面図であり、同図(d)が同図(a)のB−B断面図である。
図3は
図2(a)の着目領域R11を拡大して示す説明図であり、同図(a)が上面図、同図(b)が着目領域R11におけるA−A断面図である。なお、
図1〜
図3それぞれにおいて適宜XYZ座標系を示している。
【0027】
これらの図に示すように、実施の形態1の接地側電極構成部2A(第2の電極構成部)は誘電体電極211と金属電極201H及び201L(一対の第2の部分金属電極;第2の金属電極)とを有している。
【0028】
誘電体電極211は、平面視して、X方向を長手方向、Y方向を短手方向とした長方形状の平板構造を呈している。以下、誘電体電極211において、後述する直線形段差形状部52A及び52Bを境界として、中心部を主要領域53、両端部を端部領域54A及び54Bと呼ぶ場合がある。
【0029】
誘電体電極211(第2の誘電体電極)に関し、主要領域53内の中央領域R50においてX方向(第1の方向;電極形成方向)に沿って、複数のガス噴出孔55(5つのガス噴出孔55)が設けられる。複数のガス噴出孔55はそれぞれ誘電体電極211の上面から下面に貫通して設けられる。
【0030】
図2(b),(c)に示すように、金属電極201H及び201L(一対の第2の部分金属電極)は誘電体電極211の下面上に形成され、平面視して誘電体電極211の中央領域R50を挟んで互いに対向して配置される。金属電極201H及び201Lは平面視して略長方形状を呈し、X方向(第1の方向)を長手方向(電極形成方向)とし、X方向に直角に交差するY方向(第2の方向)を互いに対向する電極対向方向としている。金属電極201H及び201Lは平面視した大きさは同一であり、その配置は中央領域R50を中心として対称となっている。
【0031】
なお、金属電極201H及び201Lは誘電体電極211の下面にてメタライズ処理されることにより形成され、その結果、誘電体電極211と金属電極201H及び201Lとは一体形成されて接地側電極構成部2A(第2の電極構成部)を構成する。メタライズ処理として印刷焼成方法やスパッタリング処理、蒸着処理等を用いた処理が考えられる。
【0032】
図5は高電圧側電極構成部1A(第1の電極構成部)の上面及び下面構造等を示す説明図である。同図(a)が上面図であり、同図(b)が同図(a)のC−C断面図、同図(c)が下面図である。なお、
図5において適宜XYZ座標系を示している。
【0033】
同図に示すように、高電圧側電極構成部1Aは、誘電体電極111と、誘電体電極111の上面上に形成された金属電極101H及び101Lとから構成される。誘電体電極111は誘電体電極211と同様、X方向を長手方向、Y方向を短手方向とした、平面視して長方形状の平板構造を呈している。
【0034】
同図(b)に示すように、誘電体電極111は、X方向に沿って膜厚(厚み)が連続的に変化した構造となっている。なお、誘電体電極111の膜厚はY方向に沿って均一の厚さを呈している。
【0035】
具体的には、同図(b)に示すように、誘電体電極111の右端(+X方向の端部)の膜厚は厚さdA1に設定され、左端(−X方向の端部)の膜厚は厚さdB1(>dA1)に設定されている。
【0036】
そして、誘電体電極111の膜厚は、X方向に沿って右端(厚さdA1)から左端(厚さdB1)にかけて連続的に厚くなる。したがって、誘電体電極111の上面は水平方向(X方向)に対し一定の傾きを有している。なお、厚さdA1と厚さdB1との高低差として、例えば、厚さdB1の80%程度にすることが想定される。
【0037】
また、金属電極101H及び101L(一対の第1の部分金属電極;第1の金属電極)は誘電体電極111の上面上に形成され、平面視して誘電体電極211の中央領域R50に対応する同形状の中央領域R60を挟んで互いに対向して配置される。金属電極101H及び101Lの膜厚は均一である。
【0038】
この際、金属電極101H及び101Lは、金属電極201H及び201Lと同様、平面視して略長方形状を呈し、X方向(第1の方向)を長手方向(電極形成方向)とし、X方向に直角に交差するY方向(第2の方向)を互いに対向する電極対向方向としている。金属電極101H及び101Lは平面視した大きさは同一であり、その配置は中央領域R60を中心として対称となっている。ただし、金属電極101H及び101Lの短手方向(Y方向)並びに長手方向(X方向)の幅が、金属電極201H及び201Lに比べて少し短く設定される。なお、金属電極101H及び101Lも、金属電極201H及び201Lと同様にメタライズ処理により誘電体電極111の上面上に形成することができる。
【0039】
図6〜
図8は高電圧側電極構成部1Aと接地側電極構成部2Aとの組立工程を示す斜視図である。なお、
図6〜
図8それぞれにおいてXYZ座標系を示している。なお、
図6〜
図8では、説明の都合上、誘電体電極111の上述した膜厚の変化及び上面の傾きの図示を省略している。
【0040】
図6に示すように、接地側電極構成部2A上に高電圧側電極構成部1Aを配置することにより活性ガス生成用電極群301を組み立てることができる。
図6及び
図7に示すように、高電圧側電極構成部1Aにおける誘電体電極111の中央領域R60と、接地側電極構成部2Aにおける誘電体電極211の中央領域R50とが平面視重複するように位置決めしつつ、高電圧側電極構成部1Aを接地側電極構成部2A上に積み上げて組み合わせることにより、最終的に
図8に示すように活性ガス生成用電極群301を完成することができる。
【0041】
活性ガス生成用電極群301を構成する誘電体電極111と誘電体電極211とが対向する誘電体空間内において、金属電極101H及び101Lと金属電極201H及び201Lとが平面視重複する領域が放電空間として規定される。
【0042】
メタライズ部である金属電極101H及び101L並びに金属電極201H及び201Lには、
図16で示した金属電極10及び20のように、(高圧)高周波電源5に接続されている。接地側電極構成部2Aの金属電極201H及び201Lは接地されており、本実施の形態では、高周波電源5より0ピーク値を2〜10kVで固定して、周波数を10kHz〜100kHzで設定した交流電圧を金属電極101H及び101L,金属電極201H及び201L間に印加している。
【0043】
上述したように、高電圧側電極構成部1Aの誘電体電極111は、接地側電極構成部2Aの誘電体電極211と異なって、上面上及び下面上に何も形成されていない。したがって、高電圧側電極構成部1Aと接地側電極構成部2Aとを組み合わせる際には上部から接地側電極構成部2A側にバネやボルト等の締付力によって固定するのみとなり、座ぐり形状等を設けて敢えて接地側電極構成部2Aと位置決めしないことで、輸送時等に誘電体電極111と誘電体電極211との端面間の接触によるコンタミ発生の可能性を極力抑制した構造の活性ガス生成用電極群301を得ることができる。
【0044】
上述した放電空間(放電場)は異常放電を抑制するために一定間隔以上、ガス噴出孔55に近付けることはできない。したがって、放電空間を抜けてからガス噴出孔55までの中央領域R50(R60)上の空間は、非放電空間(非放電場,デッドスペース)となり、この非放電空間では活性ガスは生成されることなく減少していくだけとなる。
【0045】
活性ガスは放電空間にて生成され、放電空間を通過すると、その高エネルギーさ故に急激に減衰し、短時間で全て消滅してしまう。活性ガスの減衰メカニズムのうち、基底状態の他分子との衝突等によってエネルギーを失うタイプの場合、単純に圧力を下げて衝突頻度を低くするだけで活性ガスの消滅速度を抑制することが可能となる。つまり、大気圧近傍の放電空間で生成した活性ガスを速やかに減圧下の後段の成膜処理チャンバへと噴出するようにすることが重要であり、そのために先に記した非放電空間を規定する中央領域R50(R60)のY方向の幅は可能な限り狭くすることが望ましい。
【0046】
非放電空間を極小化するために放電空間をガス噴出孔55に近付けることはできない。なぜなら、ガス噴出孔55を放電空間に近づけすぎると、活性ガスに生成時に異常放電が発生する恐れがあるからである。そこで、実施の形態1の活性ガス生成装置は、非放電空間を埋めるべく、クサビ形段差形状部51(中央領域段差部)を誘電体電極211の上面の中央領域R50において上方に突出して、誘電体電極211の構成要素として一体形成して設けたことを特徴としている。
【0047】
すなわち、クサビ形段差形状部51は、平面視して複数のガス噴出孔55に重複することなく、平面視して複数のガス噴出孔55それぞれに近づくに従いY方向(第2の方向)の形成幅が短くなるように形成される。具体的には、5つのガス噴出孔55間に平面視菱形状に形成され、互いに離散した4つの菱形単体部51s(
図3(a)参照)と、5つのガス噴出孔55のうち両端のガス噴出孔55の外側に設けられた平面視略二等辺三角形状の2つの三角単体部51t(
図3(a)参照)との集合体によりクサビ形段差形状部51が形成される。
【0048】
したがって、外部から原料ガスをY方向(
図6〜
図8で示すガス供給方向D1)に沿って、誘電体空間における中央領域R50上(中央領域R60下)に向けて供給することにより、原料ガスが放電空間を通過する際に得られる活性ガスを生成し、複数のガス噴出孔55から−Z方向(
図6〜
図8で示すガス噴出方向D2)に沿って活性ガスを外部に噴出することができる。
【0049】
この際、複数のガス噴出孔55それぞれに近づくに従いY方向の形成幅が短くなるように、それぞれが離散形成された4つの菱形単体部51sと2つの三角単体部51tとを有するクサビ形段差形状部51(中央領域段差部)の存在により、誘電体空間内の中央領域R50上(中央領域R60下)において、複数のガス噴出孔55に対応する活性ガスの複数のガス流路をそれぞれ絞り込むことができる。その結果、実施の形態1の活性ガス生成装置は、各ガス噴出孔55においてガス流速を高めることができる結果、より高密度の活性ガスを生成することができる。
【0050】
なお、クサビ形段差形状部51のような平面形状以外でも、例えば平面形状が半円形状でも良く、平面視して複数のガス噴出孔55に重複することなく、平面視して複数のガス噴出孔55それぞれに近づくに従いY方向(第2の方向)の形成幅が短くなるように形成された形状であれば、上述した効果を達成することができることは勿論である。
【0051】
なお、原料ガスとして例えば窒素、酸素、弗素、及び水素のうち少なくとも一つを含むガスが考えられる。すなわち、酸素、希ガス類や水素、弗素類のガスを原料ガスとして供給する態様が考えられる。これら原料ガスが活性ガス生成用電極群301の外周部からガス供給方向D1に沿って内部へと進み、内部の放電空間を経由して活性ガスとなり、活性ガス(ラジカルを含んだガス)は誘電体電極211に設けられた複数のガス噴出孔55からガス噴出方向D2に沿って後段の成膜処理チャンバへと噴出される。成膜処理チャンバ内において、反応性の高い活性ガスを利用することで処理対象基板であるウェハに対し成膜処理を行うことができる。なお、活性ガスは複数のガス噴出孔55から噴出される複数の部分活性ガスを含んでいる。
【0052】
このように、窒素、酸素、弗素、及び水素のうち少なくとも一つを含む原料ガスから、より高密度の活性ガスを生成することができる。
【0053】
クサビ形段差形状部51は、高電圧側電極構成部1Aの誘電体電極111ではなく、接地側電極構成部2Aの誘電体電極211の上面上に設けている。すなわち、複数のガス噴出孔55とクサビ形段差形状部51とは同一の誘電体電極111に形成されている。このため、
図6〜
図8で示すように、活性ガス生成用電極群301の組立時において複数のガス噴出孔55とクサビ形段差形状部51との位置決めを不要なものとし、装置構成の簡易化を図ることもできる。
【0054】
このクサビ形段差形状部51は高電圧側電極構成部1と接地側電極構成部2との間の放電空間におけるギャップ長(誘電体電極111,誘電体電極211間のZ方向の距離)を規定するスペーサとしても機能する。
【0055】
したがって、
図6〜
図8で示したように、接地側電極構成部2A上に高電圧側電極構成部1Aを積層する簡単な組立工程によって、クサビ形段差形状部51の形成高さによって放電空間におけるギャップ長を設定することができる。
【0056】
また、従来、スペーサは放電空間に形成されることが多かった。この場合、スペーサ側面を経由した沿面放電が発生し、放電ロスやコンタミの発生の原因となってきた。本実施の形態では、誘電体電極211の上面に突出して設けたクサビ形段差形状部51は放電空間外の中央領域R50に設けられているため、コンタミ発生等の抑制につながっている。
【0057】
図1〜
図3に示すように、誘電体電極211は両端側に存在する、主要領域53と端部領域54A及び54Bとの境界領域において、上方に突出して形成される直線形段差形状部52A及び52B(一対の端部領域段差部)をさらに有している。直線形段差形状部52A及び52Bは平面視して、誘電体電極211の短手方向の全長に亘ってY方向に延びて形成され、クサビ形段差形状部51の形成高さと共に直線形段差形状部52A及び52Bの形成高さにより、放電空間におけるギャップ長を規定している。
【0058】
これら直線形段差形状部52A及び52Bの存在により、誘電体電極211のX方向両端部からの放電空間へのガスの流入を規制している。誘電体電極211の両端部からのガス流入が可能となると誘電体電極211の両端部近傍のガス噴出孔55(
図1で最右、あるいは最左に存在するガス噴出孔55)は、活性ガスの流入量が影響を受け易いため、各ガス噴出孔55からの活性ガスのガス流量の計算が複雑化し、制御が困難となるという不具合がある。その不具合を直線形段差形状部52A及び52Bを設けることによって解消している。
【0059】
直線形段差形状部52A及び52Bが設けられることにより、高電圧側電極構成部1A及び接地側電極構成部2A間のガスの流入進路はY方向の2面からのみとなる。したがって、ガスの流れ自体が比較的安定化するため放電空間内の圧力分布が一定となり、均一な放電空間を形成することができる。
【0060】
このように、誘電体電極211はさらに直線形段差形状部52A及び52Bを有することにより、複数のガス噴出孔55のうち、X方向における両端部からの距離が近いガス噴出孔55においても、当該両端部から意図しないガスの流入等の影響で活性ガスの流入量が変化してしまう現象が生じないため、複数のガス噴出孔55間でバラツキを生じさせることなく活性ガスを噴出することができる。その結果、圧力分布が一定でかつ複数のガス噴出孔55それぞれの流量が同一とすることができる。
【0061】
なお、後述する
図4に示すように、放電空間(金属電極201H及び201Lの中央領域R50側の端部)から複数のガス噴出孔55に至るY方向における距離である非放電距離d25を10mm以上に設定している。
【0062】
このように、非放電距離d25を10mm以上に設定することにより、活性ガス生成時に異常放電を発生しにくくすることができる。
【0063】
図4は
図2(a)の着目領域R12を拡大して示す上面図である。なお、
図4において適宜XYZ座標系を示している。同図に示すように、非放電空間の極小化のため、クサビ形段差形状部51のY方向の形成長さが最長となった端部51H及び51Lは放電空間を形成する金属電極201H及び201Lに隣接する位置まで延ばされている。クサビ形段差形状部51の端部51H及び51Lと金属電極201H及び201Lとが重なると、活性ガス生成時に異常放電を誘発しかねないため、放電空間を規定する金属電極201H及び201Lにおいて、端部51H及び51Lに対応する領域に平面視略三角形状の切り欠き部61H及び61Lを設けている。その結果、クサビ形段差形状部51と金属電極201H及び201Lとの間に所定の基準距離(例えば、2〜3mm)を確保している。
【0064】
同様にして、
図5(a),(b)に示すように、金属電極101H及び101Lにおいても、端部51H及び51Lに対応する箇所に切り欠き部71H及び71Lを設けている。
【0065】
このように、金属電極101H及び101L並びに金属電極201H及び201Lの平面視重複領域で規定される放電空間とクサビ形段差形状部51との間において、平面視した両者の最短距離が所定の基準距離以上になるように、金属電極101H及び101L並びに金属電極201H及び201Lの平面形状を設定することにより、活性ガス生成時に異常放電を発生しにくくすることができる。
【0066】
また、上述したように、金属電極101H及び101Lの短手方向(Y方向)並びに長手方向(X方向;電極形成方向)の幅を、金属電極201H及び201Lに比べて少し短く設定することにより、金属電極101H及び101Lと金属電極201H及び201Lとの平面形状の一部を異ならせている。
【0067】
その結果、金属電極101H及び101Lあるいは金属電極201H及び201Lの端面で生じ易い異常放電の発生を抑制することができる。
【0068】
なお、上記効果を重視しない場合、金属電極101H及び101Lと金属電極201H及び201Lとの平面形状を完全一致させても良い。
【0069】
さらに、高電圧側電極構成部1A及び接地側電極構成部2A(特に誘電体電極111及び211)のうち、活性ガスと接触する領域であるガス接触領域を石英、アルミナ、窒化珪素あるいは窒化アルミを構成材料として形成することが望ましい。
【0070】
上記構成材料で形成した面は、活性ガスに対して化学的に安定な物質であるため、活性ガスと接触するガス接触領域との間で、活性ガスの失活を抑制した状態で、活性ガスをガス噴出孔から噴出することができる。
【0071】
なお、複数のガス噴出孔55それぞれ同一形状(直径を同一の円状)で形成することが基本構成である。
【0072】
一方、複数のガス噴出孔の形状(直径)を複数のガス噴出孔55間で互いに異なるように設定する変形構成も考えられる。
【0073】
実施の形態1の活性ガス生成装置において、上記変形構成を採用した場合、複数のガス噴出孔55間で噴出量を異なる内容に設定することができる効果を奏する。なお、この変形構成については後に詳述する。
【0074】
(誘電体電極111)
図5(b)で示したように、誘電体電極111及び誘電体電極211のうちの一方の誘電体電極である誘電体電極111は、電極形成方向であるX方向に沿って膜厚を変化させた膜厚変化構造を有している。
【0075】
ここで、X方向における5つのガス噴出孔55の位置を右側(+X側)から噴出孔位置P1〜P5とする。噴出孔位置P1〜P5に対応して5つの第1〜第5の部分放電空間に上記放電空間を分類することができる。すなわち、第i(i=1〜5のいずれか)の部分放電空間は、上記放電空間内で、X方向に沿って噴出孔位置Pi及びその近傍を含む空間となる。なお、第1〜第5の部分放電空間は放電空間内で何ら分断されていない。
【0076】
このように、電極形成方向(X方向)における複数のガス噴出孔55の位置に対応して、上記放電空間を複数の部分放電空間に分類することができる。
【0077】
したがって、実施の形態1の活性ガス生成装置は、上述した膜厚変化構造を有する誘電体電極111は備えているため、第1〜第5の部分空間における第1〜第5の部分放電電圧を互いに異なる値にすることができる。
【0078】
図9は実施の形態1の誘電体電極111の膜厚変化に伴う部分放電電圧及び発生N濃度の変化を表形式で示す説明図である。
図9では、窒素ガスを原料ガス6とし、活性ガス7としてラジカル化した窒素原子を発生させる場合を示している。
【0079】
図9に示すように、誘電体電極111の膜厚が1mm、3mm、6mmの場合の3つの部分放電空間PD1、PD2及びPD3を形成した場合を想定する。
【0080】
部分放電空間PD1〜PD3間それぞれのギャップ長は1mmで同一であり、部分放電空間PD1〜PD3それぞれの圧力であるギャップ部圧力も30kPaで同一であり、全体印加電圧となる交流電圧も5000Vで共通である。
【0081】
一方、部分放電空間PD1、PD2及びPD3の部分放電電圧は4200V、3100V及び2300Vと変化し、部分放電空間PD1、PD2及びPD3で発生する活性ガス7における発生N濃度(発生窒素濃度)は、110ppm、80ppm及び50ppmと変化する。発生N濃度は、活性ガス7におけるラジカル化した窒素原子の濃度、すなわち、活性ガス濃度を意味する。
【0082】
図9で示したように、部分放電空間PD1〜PD3間において、部分放電電圧は誘電体電極111の膜厚に反比例する。なぜなら、誘電体電極111の下面において、比較的膜厚が薄い下面の電位が、比較的膜厚が厚い下面の電位より、膜厚が薄い分、高くなっているからである。
【0083】
一方、発生N濃度は部分放電電圧に比例するため、部分放電空間PD1〜PD3それぞれの発生N濃度は、高濃度側から部分放電空間PD1、PD2及びPD3の順となる。
【0084】
図9に示すように、誘電体電極111に上記膜厚変化構造を持たせて、部分放電空間PD1〜PD3間で誘電体電極111の膜厚(厚み)を変えることにより、部分放電空間PD1〜PD3間における発生N濃度に濃度勾配を設けることができる。
【0085】
このように、誘電体電極111の上記膜厚変化構造は、高周波電源5からの交流電圧の印加時において複数の部分放電空間で発生する複数の部分放電電圧が互いに異なる値になるように、電極形成方向(X方向)に沿って膜厚を変化させている。
【0086】
すなわち、誘電体電極111(一方の誘電体電極)の膜厚は放電電圧寄与パラメータとなり、誘電体電極111の上記膜厚変化構造は、上記放電電圧寄与パラメータを変化させたパラメータ変化構造として機能している。
【0087】
このような構造の実施の形態1の活性ガス生成装置は、誘電体電極211に設けられる複数のガス噴出孔55から噴出される複数の部分活性ガスを含む活性ガスを外部に噴出している。
【0088】
したがって、実施の形態1の活性ガス生成装置において、誘電体電極111における厚さdA1〜厚さdB1間の膜厚差、複数のガス噴出孔55の配置を適切に設定することにより、噴出される活性ガス内の複数の部分活性ガス間でラジカル化された原子や分子等の濃度である活性ガス濃度を変化させることができる。
【0089】
このように、実施の形態1の活性ガス生成装置は、交流電圧の印加時において複数の部分放電空間で発生する複数の部分放電電圧が互いに異なる値になるように、電極形成方向に沿って膜厚(放電電圧寄与パラメータ)を変化させた膜厚変化構造(パラメータ変化構造)を有することを特徴としている。
【0090】
実施の形態1の活性ガス生成装置は、上記特徴を有することにより、放電空間を複数に分断することなく、かつ、高周波電源5からの1種類の交流電圧の印加によって、互いに活性ガス濃度が異なる複数の部分活性ガスを含む活性ガスを外部に噴出することができる効果を奏する。
【0091】
さらに、実施の形態1の活性ガス生成装置は、パラメータ変化構造として、電極形成方向(X方向)に沿って誘電体電極111の膜厚を変化させた膜厚変化構造を採用している。このため、実施の形態1の活性ガス生成装置は、誘電体電極111及び誘電体電極211のうち、一方の誘電体電極である誘電体電極111の膜厚を変化させるという比較的簡単な改良構造で、上述した効果を達成することができる。
【0092】
さらに、実施の形態1では、上記膜厚変化構造として、電極形成方向に沿って、誘電体電極111の膜厚を連続的に変化させる構造を採用している。この構造では、例えば、誘電体電極111の電極形成方向に沿った両端部の膜厚に有意差をもたせるという、比較的簡単な設定により膜厚変更構造を実現することができる利点を有する。
【0093】
加えて、実施の形態1の活性ガス生成装置は、外部から窒素ガス等の原料ガス6を電極対向方向に沿って誘電体空間の中央領域R60上に向けて供給することにより、放電空間を通過させた後、誘電体電極211の中央領域R50に設けられた複数のガス噴出孔55から、互いの活性ガス濃度が異なる複数の部分活性ガスを含む活性ガスを外部に噴出することができる。
【0094】
ここで、活性ガス生成装置の後段に配置された成膜処理チャンバ等において、活性ガスを利用して基板の成膜処理を行う場合を考える。
【0095】
この場合、活性ガス濃度以上に単位時間当たりの絶対数(フラックス)に成膜処理内容が大きく依存する。なお、フラックスとは、各ガス噴出孔55から得られる単位時間当たりの活性ガス量(atms/sec)を意味する。
【0096】
すなわち、活性ガス濃度が高くてもガス流量そのものが微量であれば多くの成膜時間が必要となる。そこで、複数のガス噴出孔55間で噴出される単位時間当たりのガス流量を変化させることにより、複数の部分活性ガス間で実質的な濃度差、すなわち、フラックスに差を設けるという変形構成が考えられる。
【0097】
このように、誘電体電極111の膜厚を均一にして、複数のガス噴出孔55で孔径を変化させることにより、複数のガス噴出孔55間でガス流量を変化させるという変形構成が考えられる。
【0098】
しかし、上記変形構成では、複数の部分放電空間におけるギャップ部圧力に有意差が生じることになる。なぜなら、孔径の大きなガス噴出孔近傍の部分放電空間ほど圧力が低下するからである。ギャップ部圧力は放電の状態を大きく変化させてしまうと同時に、ギャップ部圧力が10kPa〜30kPa程度、ギャップ長1〜3mm程度の部分放電空間では圧力が低下するほど放電電力も低下してしまう傾向がある。このため、ガス流量の増加分を放電電力の低下が相殺してしまうため、上記変形構成では、フラックスを精度良く制御することが非常に困難となってしまう。
【0099】
一方、実施の形態1の活性ガス生成装置では、複数の部分放電空間(放電場)の状態は一切変更することなく、つまり、複数のガス噴出孔55の孔径を同一にして、複数の部分放電空間の圧力は一定のギャップ部圧力に設定することにより、部分活性ガス間で精度良く活性ガス濃度差を設けることができるため、上記変更構成から達成不可能な効果を奏している。
【0100】
<実施の形態2>
図10はこの発明の実施の形態2である活性ガス生成装置の高電圧側電極構成部1Bの構造を示す説明図である。同図(a)が上面図であり、同図(b)が同図(a)のD−D断面図であり、同図(c)が接地側電極構成部2Bにおける誘電体電極212の断面構造を示す断面図である。同図(c)では金属電極202H及び202Lの図示を省略している。なお、
図10において適宜XYZ座標系を示している。
【0101】
実施の形態2の活性ガス生成装置は、高電圧側電極構成部1Aが高電圧側電極構成部1Bに置き換わり、接地側電極構成部2Aが接地側電極構成部2Bに置き換わった点が実施の形態1と異なる。
【0102】
なお、
図10(c)に示すように、誘電体電極212は、実施の形態1の誘電体電極211と同様、中央領域R50内に電極形成方向に沿って複数のガス噴出孔55が設けられている。なお、誘電体電極212においても、誘電体電極211と同様、さらに、クサビ形段差形状部51、直線形段差形状部52A及び52Bを有する構造を採用しても良い。
【0103】
なお、
図10では図示を省略しているが、誘電体電極212の下面に形成される金属電極202H及び202Lは、誘電体電極211の下面に形成される金属電極201H及び201Lと等価な構造を呈している。
【0104】
図10(c)において、5つのガス噴出孔55を右側から55(1)、55(2)、55(3)、55(4)及び55(5)と識別可能に示している。
【0105】
図10に示すように、高電圧側電極構成部1Bは誘電体電極112と、誘電体電極112の上面上に形成された金属電極102H及び102Lとから構成されている。
【0106】
誘電体電極112は誘電体電極111と同様、X方向を長手方向、Y方向を短手方向とした平面視して長方形状の平板構造を呈している。
【0107】
同図(b)に示すように、誘電体電極112は、X方向に沿って膜厚(厚み)が段階的(離散的)に変化した構造となっている。なお、誘電体電極112の膜厚はY方向に沿って均一の厚みを呈している。
【0108】
具体的には、同図(b)に示すように、誘電体電極112の右端(+X方向の端部)の膜厚は厚さdA2に設定され、左端(−X方向の端部)の膜厚は厚さdB2(>dA2)に設定されている。
【0109】
そして、誘電体電極112の膜厚は、X方向に沿って右端(厚さdA2)から左端(厚さdA2)にかけて段階的に厚くなる。具体的には、誘電体電極111の右端から左端にかけて5段階で膜厚が変化している。
【0110】
同図(b)に示すように、誘電体電極112は互いに膜厚が異なる、複数の誘電体部分領域として、5つの誘電体部分領域PX1〜PX5を有している。誘電体部分領域PX1は、電極形成方向であるX方向において、最右に存在するガス噴出孔55(1)の噴出孔位置P1を含む領域である。
【0111】
誘電体部分領域PX2はX方向において右から2番目に存在するガス噴出孔55(2)の噴出孔位置P2を含む領域である。誘電体部分領域PX3はX方向において右から3番目に存在するガス噴出孔55(3)の噴出孔位置P3を含む領域である。誘電体部分領域PX4はX方向において右から4番目に存在するガス噴出孔55(4)の噴出孔位置P4を含む領域である。誘電体部分領域PX5はX方向において最左に存在するガス噴出孔55(5)の噴出孔位置P5を含む領域である。
【0112】
誘電体電極112において、誘電体部分領域PX1における膜厚は厚さdA2であり、誘電体部分領域PX2における膜厚は厚さdA2+Δzであり、誘電体部分領域PX3における膜厚は厚さdA2+2・Δzであり、誘電体部分領域PX4における膜厚は厚さdA2+3・Δzであり、誘電体部分領域PX5における膜厚は厚さdB1(=厚さdA2+4・Δz)である。なお、上述した例では誘電体部分領域PX1〜PX5における隣接する誘電体部分領域間の段差がΔzで均一である場合を示したが、必ずしも均一にする必要はない。例えば、所望の活性ガス濃度差が得られるように、隣接する誘電体部分領域間の段差を異なる値に設定しても良い。
【0113】
このように、誘電体電極112は、電極形成方向であるX方向において、複数のガス噴出孔55が設けられる5つの噴出孔位置P1〜P5に基づき、5つの誘電体部分領域PX1〜PX5に分類される。そして、誘電体部分領域PX1〜PX5間で膜厚を変化させている。
【0114】
図10(a)に示すように、金属電極102H及び102L(一対の第1の部分金属電極;第1の金属電極)は誘電体電極112の上面上に形成され、平面視して誘電体電極212の中央領域R50に対応する同形状の中央領域R60を挟んで互いに対向して配置される。この際、金属電極102H及び102Lは、金属電極202H及び202Lと同様、平面視して略長方形状を呈し、X方向(第1の方向)を長手方向(電極形成方向)とし、X方向に直角に交差するY方向(第2の方向)を互いに対向する電極対向方向としている。
【0115】
なお、
図10(a)に示された複数のガス噴出孔55は、誘電体電極212に存在する複数のガス噴出孔55を、誘電体電極112に平面視して重複する位置に仮想的に示したものであり、実際には誘電体電極112には形成されていない。
【0116】
図10(b)に示すように、金属電極102H及び102Lはそれぞれ膜厚を均一にし、かつ、誘電体電極111の誘電体部分領域PX1〜PX5に対応して5段階の階段状に形成されている。
【0117】
なお、金属電極102H及び102Lの他の構造的特徴は、実施の形態1の金属電極101H及び101Lと同様であるため、説明を省略する。
【0118】
実施の形態2の活性ガス生成装置において、誘電体電極112と誘電体電極212とが対向する誘電体空間内において、金属電極102H及び102Lと金属電極202H及び202Lとが平面視重複する領域が放電空間として規定される。
【0119】
実施の形態2において、上記放電空間は、電極形成方向であるX方向に沿って、誘電体電極212における誘電体部分領域PX1〜PX5に対応する第1〜第5の部分放電空間に分類される。
【0120】
すなわち、誘電体部分領域PXi(i=1〜5のいずれか)において、金属電極102H及び102Lと金属電極202H及び202Lとが平面視重複する領域が第iの部分放電空間となる。なお、第1〜第5の部分放電空間は放電空間内で何ら分断されていない。
【0121】
このように、電極形成方向(X方向)における複数のガス噴出孔55(5つのガス噴出孔55(1)〜55(5))の噴出孔位置P1〜P5に対応して、上記放電空間を第1〜第5の部分放電空間に分類することができる。
【0122】
したがって、実施の形態2の活性ガス生成装置は、上述した膜厚変化構造を有する誘電体電極112は備えているため、実施の形態1と同様、第1〜第5の部分空間における第1〜第5の部分放電電圧を互いに異なる値にすることができる。
【0123】
このように、誘電体電極112の上記膜厚変化構造は、交流電圧の印加時において複数の部分放電空間で発生する複数の部分放電電圧が互いに異なる値になるように、電極形成方向(X方向)に沿って膜厚を変化させている。
【0124】
すなわち、誘電体電極112(一方の誘電体電極)の膜厚は放電電圧寄与パラメータとなり、誘電体電極112の上記膜厚変化構造は、上記放電電圧寄与パラメータを変化させたパラメータ変化構造として機能している。
【0125】
このような構造の実施の形態2の活性ガス生成装置は、誘電体電極212に設けられる複数のガス噴出孔55から噴出される複数の部分活性ガスを含む活性ガスを外部に噴出している。
【0126】
したがって、実施の形態2の活性ガス生成装置において、誘電体電極112の誘電体部分領域PX1〜PX5における各膜厚、複数のガス噴出孔55の配置を適切に設定することにより、噴出される活性ガス内の複数の部分活性ガス間でラジカル化された原子や分子の濃度である活性ガス濃度を変化させることができる。
【0127】
このように、実施の形態2の活性ガス生成装置は、実施の形態1と同様、電極形成方向に沿って膜厚(放電電圧寄与パラメータ)を変化させた膜厚変化構造(パラメータ変化構造)を有することを特徴としている。
【0128】
実施の形態2の活性ガス生成装置は、上記特徴を有することにより、実施の形態1と同様、放電空間を複数に分断形成することなく、かつ、高周波電源5からの1種類の交流電圧の印加によって、互いに活性ガス濃度が異なる複数の部分活性ガスを含む活性ガスを外部に噴出することができる効果を奏する。
【0129】
さらに、実施の形態2の活性ガス生成装置は、実施の形態1と同様、パラメータ変化構造として、電極形成方向(X方向)に沿って誘電体電極112の膜厚を変化させた膜厚変化構造を採用している。このため、実施の形態2の活性ガス生成装置は、誘電体電極112及び誘電体電極212のうち、一方の誘電体電極である誘電体電極112の膜厚を変化させるという比較的簡単な改良構造で、上述した効果を達成することができる。
【0130】
加えて、実施の形態2では、誘電体電極112における膜厚変化構造として、誘電体部分領域PX1〜PX5間で膜厚を離散的に変化させた構造を採用している。このため、実施の形態2の活性ガス生成装置は、誘電体電極112における誘電体部分領域PX1〜PX5単位に所望の膜厚に精度良く設定することができる。
【0131】
さらに、誘電体部分領域PX1〜PX5間で段差が設けられる、誘電体電極112の離散的な膜厚変化構造は、誘電体電極111の連続的な膜厚変化構造に比べ、加工に要する手間や費用の低減化を図ることができる。
【0132】
なお、金属電極102H及び102Lは、一般的にスパッタ等の成膜処理方法もしくは金属ペースト塗布による焼成加工方法等を用いて、誘電体電極112の上面上に形成さされるが、誘電体部分領域PX1〜PX5間の段差部にて分断しないように注意する必要がある。
【0133】
<実施の形態3>
図11はこの発明の実施の形態3である活性ガス生成装置の高電圧側電極構成部1Cの構造を示す説明図である。同図(a)が上面図であり、同図(b)が同図(a)のE−E断面図である。
【0134】
図12は高電圧側電極構成部1Cを分解して示す断面図であり、
図11(a)のE−E断面を示している。同図(a)が部分誘電体電極113Bと金属電極101Hとの積層構造の断面図であり、同図(b)が部分誘電体電極113Aの断面構造の断面図である。なお、
図11及び
図12それぞれにおいて適宜XYZ座標系を示している。
【0135】
実施の形態3の活性ガス生成装置は、高電圧側電極構成部1Aが高電圧側電極構成部1Cに置き換わり、接地側電極構成部2Aが接地側電極構成部2Cに置き換わった点が実施の形態1と異なる。
【0136】
なお、図示しないが、接地側電極構成部2Cの構造は、実施の形態1の接地側電極構成部2Aと同一構造を呈している。すなわち、接地側電極構成部2Cは誘電体電極213と金属電極203H及び203Lとから構成され、誘電体電極213は誘電体電極211と同一構造を呈し、金属電極203H及び203Lは、金属電極201H及び201Lと同一構造を呈し、誘電体電極213の下面に金属電極201H及び201Lと同一内容で設けられる。
【0137】
なお、接地側電極構成部2Cを実施の形態2の接地側電極構成部2Bと同一構成で形成しても良い。すなわち、接地側電極構成部2Cにおいて、誘電体電極213は誘電体電極212と同一構造を呈しても良い。
【0138】
図11に示すように、高電圧側電極構成部1Cは、誘電体電極113と誘電体電極113の上面上に形成された金属電極103H及び103Lとから構成される。
【0139】
図11(a)に示すように、誘電体電極113は誘電体電極111と同様、X方向を長手方向、Y方向を短手方向とした平面視して長方形状の平板構造を呈している。
【0140】
図11(b)に示すように、誘電体電極113(一方の誘電体電極)は、第1の積層用部分誘電体電極である部分誘電体電極113Aと、誘電体電極113上に形成される第2の積層用部分誘電体電極である部分誘電体電極113Bとを含んで構成される。したがって、部分誘電体電極113A及び113Bによる積層構造により誘電体電極113が構成される。
【0141】
図11及び
図12に示すように、部分誘電体電極113Aは均一の膜厚を有し、部分誘電体電極113Bは、実施の形態1の誘電体電極111と同様、膜厚が連続的に変化する膜厚変化構造を有する。
【0142】
具体的には、
図12(a)に示すように、部分誘電体電極113Bの右端(+X方向の端部)の膜厚は厚さdA3に設定され、左端(−X方向の端部)の膜厚は厚さdB3(>dA3)に設定されている。一方、
図12(b)に示すように、部分誘電体電極113Aは均一の厚さd3に設定されている。
【0143】
したがって、部分誘電体電極113Bの膜厚は、X方向に沿って右端(厚さdA3)から左端(厚さdB3)にかけて連続的に厚くなる。その結果、誘電体電極113全体の膜厚は、X方向に沿って右端(厚さdA3+d3)から左端(厚さdB3+d3)にかけて連続的に厚くなる。したがって、誘電体電極113(部分誘電体電極113B)の上面は水平方向(X方向)に対し一定の傾きを有している。
【0144】
ここで、「dA3+d3=dA1」及び「dB3+d3=dB1」になるように、設定すれば、誘電体電極113は膜厚に関し、実施の形態1の誘電体電極111と等価な構造を有することになる。
【0145】
図11(b)及び
図12(a)で示したように、部分誘電体電極113Bを有する誘電体電極113(一方の誘電体電極)は、誘電体電極111と同様、電極形成方向であるX方向に沿って膜厚を連続的に変化させた膜厚変化構造を有している。
【0146】
また、金属電極103H及び103L(一対の第1の部分金属電極;第1の金属電極)は誘電体電極113(部分誘電体電極113B)の上面上に形成され、平面視して誘電体電極213の中央領域R50に対応する同形状の中央領域R60を挟んで互いに対向して配置される。この際、金属電極103H及び103Lは、金属電極203H及び203Lと同様、平面視して略長方形状を呈し、X方向(第1の方向)を長手方向(電極形成方向)とし、X方向に直角に交差するY方向(第2の方向)を互いに対向する電極対向方向としている。
【0147】
実施の形態3の活性ガス生成装置において、誘電体電極113と誘電体電極213とが対向する誘電体空間内において、金属電極103H及び103Lと金属電極203H及び203Lとが平面視重複する領域が放電空間として規定される。
【0148】
したがって、実施の形態3の活性ガス生成装置において、実施の形態1と同様、X方向に沿って5つの第1〜第5の部分放電空間に上記放電空間を分類することができる。すなわち、第i(i=1〜5のいずれか)の部分放電空間は、上記放電空間において、噴出孔位置Pi及びその近傍を含む空間となる。なお、第1〜第5の部分放電空間は放電空間内で何ら分断されていない。
【0149】
このように、電極形成方向(X方向)における複数のガス噴出孔55の位置に対応して、上記放電空間を複数の部分放電空間に分類することができる。
【0150】
したがって、実施の形態3の活性ガス生成装置は、上述した膜厚変化構造を有する誘電体電極113(部分誘電体電極113B)を備えているため、実施の形態1と同様、第1〜第5の部分空間における第1〜第5の部分放電電圧を互いに異なる値にすることができる。
【0151】
このように、誘電体電極113(部分誘電体電極113B)の上記膜厚変化構造は、交流電圧の印加時において複数の部分放電空間で発生する複数の部分放電電圧が互いに異なる値になるように、電極形成方向(X方向)に沿って膜厚を変化させている。
【0152】
すなわち、誘電体電極113(一方の誘電体電極)の膜厚は放電電圧寄与パラメータとなり、誘電体電極113の上記膜厚変化構造は、上記放電電圧寄与パラメータを変化させたパラメータ変化構造として機能している。
【0153】
このような構造の実施の形態3の活性ガス生成装置は、誘電体電極213に設けられる複数のガス噴出孔55から噴出される複数の部分活性ガスを含む活性ガスを外部に噴出している。
【0154】
したがって、実施の形態3の活性ガス生成装置において、部分誘電体電極113Aの膜厚、部分誘電体電極113Bにおける厚さdA3〜厚さdB3間の膜厚差、複数のガス噴出孔55の配置を適切に設定することにより、噴出される活性ガス内の複数の部分活性ガス間で活性ガス濃度を変化させることができる。
【0155】
このように、実施の形態3の活性ガス生成装置は、実施の形態1及び実施の形態2と同様、電極形成方向に沿って膜厚(放電電圧寄与パラメータ)を変化させた膜厚変化構造(パラメータ変化構造)を有することを特徴としている。
【0156】
実施の形態3の活性ガス生成装置は、上記特徴を有することにより、放電空間を複数に分断することなく、かつ、高周波電源5からの1種類の交流電圧の印加によって、互いに活性ガス濃度が異なる複数の部分活性ガスを含む活性ガスを外部に噴出することができる効果を奏する。
【0157】
さらに、実施の形態3の活性ガス生成装置は、パラメータ変化構造として、電極形成方向(X方向)に沿って誘電体電極113における部分誘電体電極113Bの膜厚を変化させた膜厚変化構造を採用することにより、誘電体電極113及び誘電体電極213のうち、一方の誘電体電極である誘電体電極113の膜厚を変化させるという比較的簡単な改良構造で、上述した効果を達成することができる。
【0158】
さらに、実施の形態3では、上記膜厚変化構造として、電極形成方向に沿って、部分誘電体電極113Bの膜厚を連続的に変化させる構造を採用している。この構造では、例えば、部分誘電体電極113Bの電極形成方向に沿った両端部の膜厚に有意差をもたせるという、比較的簡単な設定により膜厚変更構造を実現することができる利点を有する。
【0159】
加えて、実施の形態3では、誘電体電極113を部分誘電体電極113Aと部分誘電体電極113Bとの積層構造により構成している。
【0160】
このため、実施の形態3の活性ガス生成装置は、第1の積層用部分誘電体電極である部分誘電体電極113Aとして既存の誘電体電極を用いつつ、第2の積層用部分誘電体電極として部分誘電体電極113Bを新たに追加するだけで、誘電体電極113として膜厚変化構造を実現することができる。その結果、実施の形態3の活性ガス生成装置を比較的安価に得ることができる。
【0161】
<実施の形態4>
図13はこの発明の実施の形態4である活性ガス生成装置の高電圧側電極構成部1Dの構造を示す説明図である。同図(a)が上面図であり、同図(b)が同図(a)のF−F断面図である。なお、
図13において適宜XYZ座標系を示している。
【0162】
実施の形態4の活性ガス生成装置は、高電圧側電極構成部1Aが高電圧側電極構成部1Dに置き換わり、接地側電極構成部2Aが図示しない接地側電極構成部2Dに置き換わった点が実施の形態1と異なる。
【0163】
図示しないが、接地側電極構成部2Dは誘電体電極214と誘電体電極214の下面に形成される金属電極204H及び204Lにより構成される。
【0164】
誘電体電極214は実施の形態1の誘電体電極211と同一構造を呈し、金属電極204H及び204Lは金属電極201H及び201Lと同一構造を呈し、誘電体電極214の下面に金属電極201H及び201Lと同一内容で設けられる。なお、誘電体電極214を実施の形態2の誘電体電極212と同一構造にしても良い。
【0165】
図13に示すように、高電圧側電極構成部1Dは、誘電体電極114と誘電体電極114の上面上に形成される金属電極104H及び104Lとから構成される。
【0166】
図13(a)に示すように、誘電体電極114は誘電体電極111と同様、X方向を長手方向、Y方向を短手方向とした平面視して長方形状の平板構造を呈している。
【0167】
図13(b)に示すように、誘電体電極114(一方の誘電体電極)は、第1の積層用部分誘電体電極である部分誘電体電極114Aと、誘電体電極114上に形成される第2の積層用部分誘電体電極である部分誘電体電極114Bとを含んで構成される。したがって、部分誘電体電極114A及び113Bによる積層構造により誘電体電極114が構成される。
【0168】
図13(b)に示すように、部分誘電体電極114A及び114Bは共に均一の膜厚を有し、部分誘電体電極114Bは、電極形成方向であるX方向に沿って、互いの誘電率が異なる5種類の部分誘電体領域14a〜14eが互いに隣接して設けられる誘電率変化構造を有する。
【0169】
部分誘電体領域14a〜14eは、電極形成方向(X方向)における複数のガス噴出孔55の噴出孔位置P1〜P5(
図10(c)参照)に対応する位置関係で設けられている。
【0170】
すなわち、部分誘電体領域14eはX方向において噴出孔位置P1を含んでおり、部分誘電体領域14dはX方向において噴出孔位置P2を含んでおり、部分誘電体領域14cはX方向において噴出孔位置P3を含んでおり、部分誘電体領域14bはX方向において噴出孔位置P4を含んでおり、部分誘電体領域14aはX方向において噴出孔位置P5を含んでいる。
【0171】
具体的には、
図13に示すように、部分誘電体電極114Bの左端(−X方向の端部)から、右端(+X方向の端部)にかけて、5つの部分誘電体領域14a〜14eを有している。部分誘電体領域14a〜14eは互いに異なる誘電率を有する構成材料で構成されている。一方、部分誘電体電極114Aは、全体に亘って同一材料で構成されている。
【0172】
ここで、部分誘電体領域14a〜14eは14a、14b、14c、14d及び14eの順で誘電率が高くなる構成材料(誘電体a、誘電体b、誘電体c、誘電体d及び誘電体e)で形成されている。
【0173】
したがって、部分誘電体電極114Bの誘電率は、X方向に沿って左端(誘電体a)から右(誘電体e)にかけて段階的に高くなる。その結果、誘電体電極114全体の誘電体合成容量は、X方向に沿って左端から右端にかけて段階的に高くなる。
【0174】
このように、実施の形態4において、部分誘電体電極114Bを有する誘電体電極114(一方の誘電体電極)は、電極形成方向であるX方向に沿って誘電率を段階的に変化させた誘電率変化構造を有している。
【0175】
また、金属電極104H及び104L(一対の第1の部分金属電極;第1の金属電極)は誘電体電極114(部分誘電体電極114B)の上面上に形成され、平面視して誘電体電極214の中央領域R50に対応する同形状の中央領域R60を挟んで互いに対向して配置される。この際、金属電極104H及び104Lは、金属電極204H及び204Lと同様、平面視して略長方形状を呈し、X方向(第1の方向)を長手方向(電極形成方向)とし、X方向に直角に交差するY方向(第2の方向)を互いに対向する電極対向方向としている。
【0176】
実施の形態4の活性ガス生成装置において、誘電体電極114と誘電体電極214とが対向する誘電体空間内において、金属電極104H及び104Lと金属電極204H及び204Lとが平面視重複する領域が放電空間として規定される。
【0177】
実施の形態4において、上記放電空間は、部分誘電体領域14a〜14eと平面視して重複する領域に対応して第1〜第5の部分放電空間に分類される。これら第1〜第5の部分放電空間は放電空間内で何ら分断されていない。
【0178】
このように、電極形成方向(X方向)における複数のガス噴出孔55(5つのガス噴出孔55(1)〜55(5))の噴出孔位置P1〜P5に対応して、上記放電空間を第1〜第5の部分放電空間に分類することができる。
【0179】
したがって、実施の形態4の活性ガス生成装置は、上述した誘電率変化構造を有する誘電体電極114(部分誘電体電極114B)は備えているため、第1〜第5の部分放電空間における第1〜第5の部分放電電圧を互いに異なる値にすることができる。
【0180】
図14は実施の形態4の部分誘電体電極114A及び114Bの積層構造による部分放電電圧の変化を表形式で示す説明図である。
図14では、部分誘電体領域14a〜14eに分類した内容で示している。
【0181】
図14に示すように、部分誘電体電極114Aの膜厚は1mmで均一であり、部分誘電体電極114Bの膜厚も部分誘電体領域14a〜14e間は変化なく均一の1mmである。放電面積は3300mm
2であり、全体印加電圧となる交流電圧は5000Vとなる。なお、放電面積は、誘電体電極114(部分誘電体電極114A及び114B)が金属電極104H及び104Lと平面視して重複する面積となる。
【0182】
ここで、部分誘電体電極114Aの比誘電率は「10」である。一方、部分誘電体領域14aの構成材料である誘電体aの比誘電率は「10」、部分誘電体領域14bの構成材料である誘電体bの比誘電率は「20」、部分誘電体領域14cの構成材料である誘電体cの比誘電率は「30」、部分誘電体領域14dの構成材料である誘電体dの比誘電率は「40」、部分誘電体領域14eの構成材料である誘電体eの比誘電率は「50」である。
【0183】
したがって、部分誘電体電極114A及び114Bの積層構造による誘電体合成容量に関し、部分誘電体領域14a〜14eにおける積層領域間で異なる値となる。
【0184】
具体的には、部分誘電体領域14aにおける積層領域で7.34・10
−11F、部分誘電体領域14bにおける積層領域で9.79・10
−11F、部分誘電体領域14cにおける積層領域で1.10・10
−10F、部分誘電体領域14dにおける積層領域で1.17・10
−10F、部分誘電体領域14eにおける積層領域で1.22・10
−10Fとなる。
【0185】
その結果、部分誘電体領域14a〜14eに対応する第1〜第5の部分放電空間の部分放電電圧は3550V、3850V、3950V、4000V及び4050Vと変化する。
【0186】
したがって、実施の形態4の活性ガス生成装置は、部分放電電圧に比例する部分活性ガスの活性ガス濃度を、複数の部分活性ガス間で異なる値に設定することができる。
【0187】
このように、部分誘電体領域14a〜14eに対応する第1〜第5の部分放電空間において、部分放電電圧は部分誘電体領域14a〜14eの誘電率に対し正の相関を有する。
【0188】
一方、部分活性ガスにおける活性ガス濃度は部分放電電圧に比例するため、第1〜第5の部分放電空間それぞれで生成される部分活性ガスの活性ガス濃度は、低濃度側から第1、第2、…、第5の順となる。
【0189】
このように、誘電体電極114(部分誘電体電極114B)に上記誘電率変化構造を持たせることにより、第1〜第5の部分放電空間間における活性ガス濃度に濃度勾配を設けることができる。
【0190】
図15は誘電体種類の具体例による部分放電電圧の変化を表形式で示すグラフである。
図15では、部分誘電体領域14a〜14cに分類した内容で示している。
【0191】
図15に示すように、部分誘電体電極114Aの膜厚は1mmで均一であり、部分誘電体電極114Bの膜厚も部分誘電体領域14a〜14c間は変化なく均一の1mmである。放電面積は3300mm
2であり、全体印加電圧となる交流電圧は5000Vとなる。全体印加電圧となる交流電圧は5000Vとなる。
【0192】
ここで、部分誘電体電極114Aの比誘電率は「9.9」である。一方、部分誘電体領域14aの構成材料である石英の比誘電率は「3.8」、部分誘電体領域14bの構成材料であるアルミナの比誘電率は「9.9」、部分誘電体領域14cの構成材料であるHfO
2(酸化ハフニウム)の比誘電率は「15」である。
【0193】
したがって、部分誘電体電極114A及び114Bの積層構造による誘電体合成容量は、部分誘電体領域14a〜14c間で異なる値となる。
【0194】
すなわち、部分誘電体領域14aにおける積層領域で4.0・10
−11F、部分誘電体領域14bにおける積層領域で7.0・10
−11F、部分誘電体領域14cにおける積層領域で9.0・10
−10Fとなる。
【0195】
その結果、部分誘電体領域14a〜14cに対応する第1〜第3の部分放電空間の部分放電電圧は2900V、3550V、及び3750Vと変化する。
【0196】
したがって、部分誘電体領域14a〜14c間で部分放電電圧に比例する部分活性ガスの活性ガス濃度を、複数の部分活性ガス間で異なる値に設定することができる。
【0197】
このように、
図15から、部分誘電体領域14a〜14c間で異なる構成材料を用いることにより、部分誘電体領域14a〜14c間の誘電率に有意な差異を持たせることができる。
【0198】
上述したように、誘電体電極114の上記誘電率変化構造は、交流電圧の印加時において複数の部分放電空間で発生する複数の部分放電電圧が互いに異なる値になるように、電極形成方向(X方向)に沿って誘電率を変化させている。
【0199】
すなわち、誘電体電極114(一方の誘電体電極)における部分誘電体電極114Bの誘電率は放電電圧寄与パラメータとなり、誘電体電極114の上記誘電率変化構造は、上記放電電圧寄与パラメータを変化させたパラメータ変化構造として機能している。
【0200】
このような構造の実施の形態4の活性ガス生成装置は、誘電体電極214に設けられる複数のガス噴出孔55から噴出される複数の部分活性ガスを含む活性ガスを外部に噴出している。
【0201】
したがって、実施の形態4の活性ガス生成装置において、部分誘電体電極114Aの誘電率、部分誘電体電極114Bの部分誘電体領域14a〜14eにおける各誘電率、複数のガス噴出孔55の配置を適切に設定することにより、噴出される活性ガス内の複数の部分活性ガス間で活性ガス濃度を変化させることができる。
【0202】
このように、実施の形態4の活性ガス生成装置は、交流電圧の印加時において第1〜第5の部分放電空間で発生する第1〜第5の部分放電電圧が互いに異なる値になるように、電極形成方向に沿って誘電率(放電電圧寄与パラメータ)を変化させた誘電率変化構造(パラメータ変化構造)を有することを特徴としている。
【0203】
実施の形態4の活性ガス生成装置は、上記特徴を有することにより、放電空間を複数に分断することなく、かつ、高周波電源5からの1種類の交流電圧の印加によって、互いに活性ガス濃度が異なる複数種の部分活性ガスを含む活性ガスを外部に噴出することができる効果を奏する。
【0204】
さらに、実施の形態4では、一方の誘電体電極である誘電体電極114の膜厚を均一にすることができるため、従来構造と同様、誘電体電極114及び誘電体電極214は共に膜厚を均一にすることができる。
【0205】
その結果、実施の形態4の活性ガス生成装置は、誘電体電極114の上面上に金属電極104H及び104Lを精度良く形成し、かつ、及び誘電体電極214の下面上に金属電極204H及び204Lを精度良く形成することができる。加えて、スペース的に誘電体電極に厚みを持たせることが困難な条件下においても、実施の形態4の活性ガス生成装置は支障無く対応可能である。
【0206】
また、実施の形態4は、第1の積層用部分誘電体電極として、誘電率及び膜厚が均一な既存の部分誘電体電極114Aを用いることができるため、既存の誘電体電極を用いつつ、第2の積層用部分誘電体電極となる部分誘電体電極114Bを新たに追加するだけで、誘電率変化構造を実現することができる。
【0207】
各々が高誘電率を有する誘電体a〜誘電体eを構成材料とした部分誘電体領域14a〜14eは板状に構成して部分誘電体電極114Aの上面上に載せても良いし、誘電率が十分高い場合は、部分誘電体領域14a〜14eをスパッタ等で部分誘電体電極114Aの上面上に直接成膜しても良い。
【0208】
なお、放電面となる部分誘電体電極114Aの素材は、パーティクル等の不純物を発生させない観点から高純度アルミナもしくはサファイアに固定される。
【0209】
一方、金属電極形成面となる部分誘電体電極114Bは、放電に晒されないため、基板汚染の観点における制約を考慮する必要は無い。このため、部分誘電体電極114Bの部分誘電体領域14a〜14eの構成材料として、誘電率を最優先して選択することができる。
【0210】
<その他>
実施の形態1〜実施の形態4において、一般に誘電体電極111〜114及び誘電体電極211〜214の膜厚が厚くなり過ぎると高周波電源5から印加する交流電圧をより高くしないと、放電空間において十分な放電電力が得られなくなる。一方、交流電圧を高くすると、多くの絶縁対策が必要となるため、可能な限り印加電圧なる交流電圧は低い方が望ましい。このため、制限無く交流電圧を高くできないという懸念材料がある。
【0211】
上記膜厚変化構造を採用した実施の形態1〜実施の形態3の活性ガス生成装置は上記懸念材料を有している。
【0212】
一方、実施の形態4の活性ガス生成装置は、誘電体電極114及び214の膜厚を共に均一にすることができる。したがって、交流電圧の電圧レベルを抑制したい場合には、部分誘電体領域14a〜14eの構成材料として用いる誘電体a〜誘電体eを全て所定の誘電率よりも高い高誘電率素材で生成することで解消することができる。なお、所定の誘電率として比誘電率=10が考えられる。
【0213】
なお、上述の実施の形態1〜実施の形態4において、上記パラメータ変化構造(膜厚変化構造,または誘電率変化構造)を誘電体電極111〜114(第1の誘電体電極)に設けたが、それに限定される訳ではない。
【0214】
すなわち、誘電体電極111〜114に代えて誘電体電極211〜214(第2の誘電体電極)に上記パラメータ変化構造を設けたり、誘電体電極111〜114及び誘電体電極211〜214共に上記パラメータ変化構造を設けたりしても良い。
【0215】
なお、誘電体電極111〜114は下面に何も設けていないため、誘電体電極211〜214に比べ、上記パラメータ変化構造を容易に設けることができる利点を奏する。また、誘電体電極111〜114及び誘電体電極211〜214双方に上記パラメータ変化構造を設ける場合、片方に上記パラメータ変化構造を設ける場合と比較して、放電電圧寄与パラメータ(膜厚,誘電率)の変化を大きくできる利点を奏する。
【0216】
この発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【0217】
すなわち、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。
【0218】
例えば、実施の形態4の活性ガス生成装置において、部分誘電体領域14a〜14eの膜厚を部分誘電体領域14e〜14aの順で厚くするようにして、上記誘電率変化構造及び上記膜厚変化構造の組合せ構造を実現しても良い。
【0219】
また、実施の形態3の誘電体電極113において、部分誘電体電極113Bの構造を、実施の形態2の誘電体電極112のように膜厚が段階的に変化する構造に変更しても良い。
本発明は、放電空間を複数に分断することなく、かつ、1種類の交流電圧の印加によって、互いに活性ガス濃度が異なる複数種の部分活性ガスを含む活性ガスを外部に噴出することができる活性ガス生成装置を提供することを目的とする。そして、本発明において、高電圧側電極構成部(1A)は、誘電体電極(111)と、誘電体電極(111)の上面上に形成された金属電極(101H,101L)とから構成される。誘電体電極(111)は、X方向に沿って膜厚が連続的に変化した構造となっている。すなわち、誘電体電極(111)の右端の膜厚は厚さdA1に設定され、左端の膜厚は厚さdB1(>dA1)に設定され、X方向に沿って右端から左端にかけて連続的に厚くなる。