(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
平行平板方式の誘電体バリア放電で活性ガスを生成する活性ガス生成装置は、例えば特許文献1で開示されている。
【0003】
図14は特許文献1で開示された従来の窒素ラジカル生成システム100の概略構成を示す図である。窒素ラジカル生成システム100は、窒素ラジカル生成装置101、交流電圧源108及び処理チャンバー112から構成されている。
【0004】
活性ガス生成装置である窒素ラジカル生成装置101は、誘電体バリア放電を利用して、窒素ガスから活性ガスである窒素ラジカルを生成する。
【0005】
窒素ラジカル生成装置101内の空間102には、誘電体バリア放電を生成する、放電ユニットが配設されている。ここで、上記放電ユニットは、第一電極103及び第二電極104から構成される。
【0006】
第二電極104は、窒素ラジカル生成装置101の底面の中央部に設置されている。そして、第二電極104に対面して、第一電極103が配設されている。ここで、第一電極103と第二電極104とは、所定の間隔だけ離れて対面している。つまり、第一電極103と第二電極104の間には、放電空間105が形成されている。
【0007】
また、放電空間105に面する第一電極103の主面及び放電空間105に面する第二電極104の主面の少なくとも一方には、誘電体(
図14において図示を省略している)が配設されている。
【0008】
上記放電ユニットは、第一電極103と第二電極104との間の放電空間105に誘電体バリア放電を発生させることができる。
【0009】
窒素ラジカル生成装置101の上面中央部において、ガス供給口106が配設されている。ガス供給口106を介して、窒素ラジカル生成装置101の外部から、窒素ラジカル生成装置101内の空間102へと、原料ガスである窒素ガスが供給される。
【0010】
第二電極104の中央部には、窒素ラジカルガスが、窒素ラジカル生成装置101外へと出力する、ガス放出部107が一つ穿設されている。
【0011】
交流電圧源108は、上記放電ユニットに対して、高圧の交流電圧を印加する。交流電圧源108の一方端子は、第一電極103と電気的に接続される。また、交流電圧源108の他方端子は、窒素ラジカル生成装置101の筐体(接地)と電気的に接続されている。なお、上記から分かるように、窒素ラジカル生成装置101の底面には、第二電極104が配設されている。したがって、交流電圧源108の他方端子は、窒素ラジカル生成装置101を介して、第二電極104と電気的に接続される。
【0012】
つまり、交流電圧源108は、第一電極103と第二電極104との間に、高圧の交流電圧を印加する。そして、交流電圧の印加により、第一電極103と第二電極104との間の放電空間105において、誘電体バリア放電が発生する。
【0013】
ガス供給口106から供給された窒素ガスは、各電極103,104の外周部から放電空間105内に侵入する。そして、窒素ガスは、各電極103,104の外周部から内部へと伝搬する。放電空間105内に発生している誘電体バリア放電によって、伝搬中の窒素ガスから窒素ラジカルガスが生成される。生成された窒素ラジカルガスは、ガス放出部107から、窒素ラジカル生成装置101外へと出力される。
【0014】
また、
図14に示すように、窒素ラジカル生成装置101の下側には、処理チャンバー112が配設されている。ここで、窒素ラジカル生成装置101の底面と処理チャンバー112の上面とが接している。
【0015】
また、窒素ラジカル生成装置101と処理チャンバー112との間には、オリフィス部109が配設されている。オリフィス部109は、細孔110を介してガス放出部107と処理チャンバー112内の処理室111とを接続する。
【0016】
オリフィス部109の細孔110の径は、ガス放出部107の孔の径よりも小さい。より具体的に、オリフィス部109の細孔110の入り口の径は、ガス放出部107の孔の出口の径よりも小さい。したがって、オリフィス部109の細孔110により、窒素ラジカル生成装置101内の空間102と処理室111との間における圧力区分が、形成される。
【0017】
処理チャンバー112内の処理室111では、窒素ラジカル生成装置101で生成され、当該窒素ラジカル生成装置101(具体的には、ガス放出部107)から出力される窒素ラジカルを利用した処理が実施される。
【0018】
図14に示すように、処理チャンバー112内の処理室111には、サセプタ114が配設されており、当該サセプタ114上には、処理対象物であるウェハ(基板)113が載置されている。また、処理チャンバー112の側面には、ガス排気部115が配設されている。ガス排気部115により、処理室111内の圧力は、たとえば1Torr〜100Torr程度の範囲で、一定に維持されている。また、ガス排気部115によるガス排気処理により、空間102及び処理室111の圧力設定のみならず、窒素ラジカル生成装置101から処理チャンバー112への、窒素ガス及び窒素ラジカルガスの流れも発生させている。
【0019】
このように、
図14で示した従来の窒素ラジカル生成システム100における窒素ラジカル生成装置101は、誘電体バリア放電を第一電極103と第二電極104との間の放電空間105で発生させ、誘電体バリア放電によって得られた活性ガスを、ガス放出部107及びオリフィス部109の細孔110を経由して、後段の装置である処理室111に供給するものである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
<実施の形態>
(基本構成)
図1はこの発明の実施の形態である活性ガス生成装置の基本構成を示す説明図である。
図1にXYZ直交座標系を記している。本実施の形態の活性ガス生成装置51は、放電空間15に供給された原料ガス6を活性化して得られる活性ガス7を生成する活性ガス生成装置である。
【0037】
活性ガス生成装置51は、金属筐体31、ガス供給口32、活性ガス生成用電極群301とオリフィス部40とを主要構成部として含んでいる。
【0038】
金属筐体31は、接地電位に設定された金属製の活性ガス生成装置51用の筐体であり、上部にガス供給口32が取り付けられ、ガス供給口32から原料ガス6が金属筐体31の内部空間33に供給される。
【0039】
活性ガス生成装置51における金属筐体31の内部空間33に活性ガス生成用電極群301が配置される。具体的には、金属筐体31の底面上に活性ガス生成用電極群301が配置される。そして、金属筐体31の底面の一部にオリフィス部40が組み込まれている。
【0040】
活性ガス生成用電極群301は、第1の電極構成部である高電圧側電極構成部1と、第2の電極構成部である接地側電極構成部2との組合せにより構成され、接地側電極構成部2は高電圧側電極構成部1の下方に設けられる。
【0041】
高電圧側電極構成部1は、第1の誘電体電極である誘電体電極11と、誘電体電極11の上面上に形成される第1の金属電極である金属電極10とを主要構成部として有している。高電圧側電極構成部1は、誘電体電極11の上面上に金属電極10と独立して形成される補助導電膜である導電膜12をさらに有している。
【0042】
金属製の導電膜12は、平面視して少なくとも一つのガス噴出孔9と金属製の金属電極10との間に設けられる。なお、金属製の導電膜12は、平面視して少なくとも一つのガス噴出孔9と重複しても良い。
【0043】
なお、金属電極10及び導電膜12は、例えばスパッタリング法や印刷焼成法を利用して誘電体電極11の上面上に設けられる。
【0044】
接地側電極構成部2は、第2の誘電体電極である誘電体電極21と誘電体電極21の下面上に形成される第2の金属電極である金属電極20とを主要構成部として有している。
【0045】
なお、金属電極20は、スパッタリング法や印刷焼成法等を利用して、誘電体電極21の下面上に設けられる。
【0046】
高電圧側電極構成部1の誘電体電極11と接地側電極構成部2の誘電体電極21とは図示しないスペーサー等により、予め定められた一定の間隔が設けられるように設置されている。
【0047】
そして、金属電極10と金属電極20との間に高周波電源5から交流電圧が印加される。具体的には、金属電極10には高周波電源5から交流電圧が印加され、金属電極20及び導電膜12は金属筐体31を介して接地電位に設定される。
【0048】
誘電体電極11と誘電体電極21とが対向する誘電体空間内において、金属電極10及び20が平面視重複する領域を含んで放電空間15が設けられる。
【0049】
なお、誘電体電極11の上面、誘電体電極21の下面の形状は面一でもよく、所定の形状を設けても良い。例えば、誘電体電極11の上面において、金属電極10と導電膜12との間で沿面放電が発生しないように、障害となる凹凸形状を設けるようにしても良い。
【0050】
誘電体電極21は、活性ガス7を外部の処理空間63に噴出するための少なくとも一つのガス噴出孔9を有している。
【0051】
オリフィス部40は、誘電体電極21の下方に設けられ、少なくとも一つのガス噴出孔9に対応する少なくとも一つの貫通孔49を有している。なお、オリフィス部40は構成材料をセラミック、ガラス及びサファイアのうちの一つとしている。
【0052】
このような構成の活性ガス生成装置51において、金属電極10及び20間に交流電圧を印加して活性ガス生成用電極群301の放電空間15に誘電体バリア放電を発生させ、同時にガス供給口32から金属筐体31の内部空間33内に原料ガス6を供給し、活性ガス生成用電極群301の外周部から内部に原料ガス6を流通させる。
【0053】
すると、活性ガス生成装置51において、放電空間15内の原料ガス6が活性化されることにより活性ガス7が生成され、生成された活性ガス7は、上記誘電体空間内における放電空間15から少なくとも一つのガス噴出孔9に至る経路である活性ガス流通経路を流れる。
【0054】
上記活性ガス流通経路を流れる活性ガス7は、少なくとも一つのガス噴出孔9及びオリフィス部40の貫通孔49を経由して、ガスの流れ18に沿って最終的に後段の処理空間63に供給される。
【0055】
本実施の形態の活性ガス生成装置51において、上述したように、導電膜12は平面視して上記活性ガス流通経路の一部と重複するように設けられている。
【0056】
このように、本実施の形態の活性ガス生成装置51は、以下の特徴(1)及び特徴(2)を有している。
【0057】
(1) 導電膜12は平面視して上記活性ガス流通経路の一部と重複するように設けられる。
(2) 導電膜12は接地電位に設定されている。
【0058】
図1で示した実施の形態の活性ガス生成装置51の基本構成を実現する具体的構成として以下で説明する第1の態様及び第2の態様が考えられる。
【0059】
(第1の態様)
図2〜
図5はそれぞれ実施の形態1の活性ガス生成装置51における第1の態様の活性ガス生成用電極群301Aの構造を示す図である。
図2〜
図5それぞれにXYZ直交座標系を記している。
【0060】
活性ガス生成装置51の第1の態様は、
図1で示した基本構成の活性ガス生成用電極群301として、
図2〜
図5で示す活性ガス生成用電極群301Aを採用している。
【0061】
図2は第1の態様の高電圧側電極構成部1Aを上方(+Z方向側)から視た平面図である。
図3は第1の態様の接地側電極構成部2Aを下方(−Z方向側)から視た平面図である。
図4は活性ガス生成用電極群301AのXZ平面における断面構造を示す断面図である。
図5は活性ガス生成用電極群301Aの全体構成を模式的に示す説明図である。
【0062】
以下、
図2〜
図5を適宜参照して、第1の態様の活性ガス生成用電極群301Aについて説明する。
【0063】
図4及び
図5に示すように、活性ガス生成用電極群301Aは、第1の電極構成部である高電圧側電極構成部1Aと、第2の電極構成部である接地側電極構成部2Aとの組合せにより構成される。接地側電極構成部2Aは高電圧側電極構成部1Aの下方に設けられる。
図2〜
図5に示すように、活性ガス生成用電極群301Aは平行平板方式を採用している。
【0064】
高電圧側電極構成部1Aは、第1の誘電体電極である誘電体電極11Aと、誘電体電極11Aの上面上に形成される第1の金属電極である金属電極10Aとを主要構成部として有している。高電圧側電極構成部1Aは、誘電体電極11Aの上面上に金属電極10Aと独立して形成される補助導電膜である導電膜12Aをさらに有している。
【0065】
図2に示すように、誘電体電極11Aは平面視して円状に形成され、金属電極10Aは平面視して円環状に形成され、導電膜12Aは平面視して円状に形成される。導電膜12Aは誘電体電極11Aの中心部上に、平面視してガス噴出孔9Aと重複するように配置される。金属電極10Aは、導電膜12の周囲を囲むように、導電膜12の外周部から所定距離隔てて配置される。
図2のA−A断面が
図4の断面構造となる。
【0066】
一方、接地側電極構成部2Aは、第2の誘電体電極である誘電体電極21Aと誘電体電極21Aの下面上に形成される第2の金属電極である金属電極20Aとを主要構成部として有している。
【0067】
そして、誘電体電極11Aは、活性ガス7を外部の処理空間63に噴出するための単一のガス噴出孔9Aを有している。この単一のガス噴出孔9Aが
図1で示した基本構成における少なくとも一つのガス噴出孔9に対応する。
【0068】
図3に示すように、誘電体電極21Aは平面視して円状に形成され、金属電極12Aは平面視して円環状に形成され、単一のガス噴出孔9Aは平面視して円状に形成される。ガス噴出孔9Aは平面視して誘電体電極21Aの中心部に設けられる。金属電極20Aはガス噴出孔9Aの周囲を囲むように、ガス噴出孔9Aの外周部から所定距離隔てて配置される。
図3のB−B断面が
図4の断面構造となる。
【0069】
上述した構成の第1の態様は、誘電体電極11A及び21A間に形成される誘電体空間内において、放電空間15から単一のガス噴出孔9Aに至る経路を活性ガス流通経路としている。
【0070】
図2〜
図5に示すように、導電膜12Aは平面視してガス噴出孔9Aと重複する位置に配置される。すなわち、導電膜12Aは、平面して上記活性ガス流通経路の一部と重複するように配置される。
【0071】
そして、金属電極10Aと金属電極20Aとの間に高周波電源5から交流電圧が印加される。具体的には、金属電極10Aには高周波電源5から交流電圧が印加され、金属電極20A及び導電膜12Aは金属筐体31を介して接地電位に設定される。
【0072】
第1の態様のオリフィス部40は、誘電体電極21Aの下方に設けられ、単一のガス噴出孔9Aに対応する単一の貫通孔49を有している。
【0073】
このように、活性ガス生成装置51の第1の態様において、導電膜12Aは平面視して上記活性ガス流通経路の一部と重複するように設けられ、かつ、導電膜12Aは接地電位に設定されていることを特徴としている。すなわち、第1の態様は基本構成の上記特徴(1)及び特徴(2)を有している。
【0074】
このような構成の活性ガス生成装置51の第1の態様は、金属電極10A及び20A間に交流電圧を印加して活性ガス生成用電極群301Aの放電空間15に誘電体バリア放電を発生させる。さらに、活性ガス生成装置51の第1の態様は、ガス供給口32から金属筐体31の内部空間33内に原料ガス6を供給し、活性ガス生成用電極群301Aの外周部から単一のガス噴出孔9Aに向かう方向をガスの流れ8(
図5参照)として原料ガス6を流通させる。
【0075】
すると、活性ガス生成装置51の第1の態様において、放電空間15内の原料ガス6が活性化されることにより活性ガス7が生成され、生成された活性ガス7は、上記誘電体空間内における放電空間15から単一のガス噴出孔9Aに至る経路である活性ガス流通経路を流れる。
【0076】
上記活性ガス流通経路を流れる活性ガス7は、単一のガス噴出孔9及びオリフィス部40の貫通孔49を経由して、ガスの流れ18に沿って最終的に後段の処理空間63に供給される。
【0077】
(第2の態様)
図6〜
図9は実施の形態の活性ガス生成装置51における第2の態様の活性ガス生成用電極群301Bの構造を示す図である。
図6〜
図9それぞれにXYZ直交座標系を記している。
【0078】
活性ガス生成装置51の第2の態様は、
図1で示した基本構成の活性ガス生成用電極群301として、
図6〜
図9で示す活性ガス生成用電極群301Bを採用している。
【0079】
図6は第2の態様の高電圧側電極構成部1Bを上方(+Z方向側)から視た平面図である。
図7は第2の態様の接地側電極構成部2Bを下方(−Z方向側)から視た平面図である。
図8は活性ガス生成用電極群301BのXZ平面における断面構造を示す断面図である。
図9は活性ガス生成用電極群301Bの全体構成を模式的に示す説明図である。
【0080】
以下、
図6〜
図9を適宜参照して、第2の態様の活性ガス生成用電極群301Bについて説明する。
【0081】
図8及び
図9に示すように、活性ガス生成用電極群301Bは、第1の電極構成部である高電圧側電極構成部1Bと、第2の電極構成部である接地側電極構成部2Bとの組合せにより構成される。接地側電極構成部2Bは高電圧側電極構成部1Bの下方に設けられる。
図6〜
図9に示すように、活性ガス生成用電極群301Bは平行平板方式を採用している。
【0082】
高電圧側電極構成部1Bは、第1の誘電体電極である誘電体電極11Bと、誘電体電極11Bの上面上に形成される第1の金属電極である金属電極対10H及び10Lとを主要構成部として有している。高電圧側電極構成部1Bは、誘電体電極11Bの上面上に金属電極対10H及び10Lと独立して形成される補助導電膜である導電膜12Bをさらに有している。
【0083】
図6に示すように、誘電体電極11Bは平面視してY方向を長辺方向とした矩形状に形成され、金属電極対10H及び10Lはそれぞれ平面視してY方向を長辺方向とした矩形状に形成され、導電膜12Bは平面視してY方向を長辺方向とした矩形状に形成される。導電膜12Bは平面視して誘電体電極11BのX方向の中心部上に配置される。
【0084】
金属電極対10H及び10Lは導電膜12Bを挟むように、導電膜12Bから所定距離隔てて配置される。すなわち、金属電極10Hは導電膜12Bに対し左側(−X方向側)に配置され、金属電極10Lは導電膜12Bに対し右側(+X方向側)に配置される。
図6のC−C断面が
図8の断面構造となる。
【0085】
一方、接地側電極構成部2Bは、第2の誘電体電極である誘電体電極21Bと誘電体電極21Bの下面上に形成される第2の金属電極である金属電極対20H及び20Lとを主要構成部として有している。
【0086】
そして、誘電体電極11Bは、活性ガス7を外部の処理空間63に噴出するための複数のガス噴出孔9Bを有している。これら複数のガス噴出孔9Bが
図1で示した基本構成における少なくとも一つのガス噴出孔9に対応する。
【0087】
図7に示すように、誘電体電極21Bは平面視してY方向を長辺方向とした矩形状に形成され、金属電極対20H及び20Lはそれぞれ平面視してY方向を長辺方向とした矩形状に形成され、複数のガス噴出孔9Bはそれぞれ平面視して円状に形成される。
【0088】
複数のガス噴出孔9BはY方向に沿って互いに離散して誘電体電極21Bに設けられる。複数のガス噴出孔9Bはそれぞれ誘電体電極21BのX方向における中心位置に配置される。
【0089】
金属電極対20H及び20Lは、複数のガス噴出孔9Bを挟むように、所定距離隔てて配置される。金属電極20Hは複数のガス噴出孔9Bに対し左側(−X方向側)に配置され、金属電極20Lは複数のガス噴出孔9Bに対し右側(+X方向側)に配置される。
図7のD−D断面が
図8の断面構造となる。
【0090】
上述した構成の第2の態様は、誘電体電極11B及び21B間に形成される誘電体空間内において、放電空間15から複数のガス噴出孔9Aに至る経路を活性ガス流通経路としている。
【0091】
図6〜
図9に示すように、導電膜12Bは平面視して複数のガス噴出孔9Bと重複する位置に配置される。すなわち、導電膜12Bは、平面して上記活性ガス流通経路の一部と重複するように配置される。
【0092】
そして、金属電極対10H及び10Lと金属電極対20H及び20Lとの間に高周波電源5から交流電圧が印加される。具体的には、金属電極対10H及び10Lには高周波電源5から交流電圧が印加され、金属電極対20H及び20L及び導電膜12Bは金属筐体31を介して接地電位に設定される。
【0093】
第2の態様のオリフィス部40は、誘電体電極21Bの下方に設けられ、複数のガス噴出孔9Bに対応する複数の貫通孔49を有している。
【0094】
このように、活性ガス生成装置51の第2の態様において、導電膜12Bは平面視して上記活性ガス流通経路の一部と重複するように設けられ、かつ、導電膜12Bは接地電位に設定されていることを特徴としている。すなわち、第2の態様は基本構成の上記特徴(1)及び特徴(2)を有している。
【0095】
このような構成の活性ガス生成装置51の第2の態様は、金属電極対10H及び10Lと金属電極対20H及び20Lとの間に交流電圧を印加して活性ガス生成用電極群301Bの放電空間15に誘電体バリア放電を発生させる。さらに、活性ガス生成装置51の第2の態様は、ガス供給口32から金属筐体31の内部空間33内に原料ガス6を供給し、活性ガス生成用電極群301BのX方向両端部から、X方向に平行なガスの流れ8(
図9参照)に沿って内部に原料ガス6を流通させる。
【0096】
すると、活性ガス生成装置51の第2の態様において、放電空間15内の原料ガス6が活性化されることにより活性ガス7が生成され、生成された活性ガス7は、上記誘電体空間内における放電空間15から複数のガス噴出孔9Bに至る経路である活性ガス流通経路を流れる。
【0097】
上記活性ガス流通経路を流れる活性ガス7は、複数のガス噴出孔9及びオリフィス部40の複数の貫通孔49を経由して、ガスの流れ18に沿って最終的に後段の処理空間63に供給される。
【0098】
(シミュレーション結果)
図10はシミュレーション対象の構造を模式的に示す説明図である。
図10にXYZ直交座標系を記す。
図11は導電膜12(12A,12B)を有さない従来構造のシミュレーション結果を示す説明図である。
図12は本実施の形態の基本構成(第2の態様)のシミュレーション結果を示す説明図である。
図13は本実施の形態の変形例のシミュレーション結果を示す説明図である。
【0099】
図10で示す構造は、シミュレーション対象の活性ガス生成装置51S及び処理チャンバー60との組合せ構造となっている。活性ガス生成装置51Sは
図1で示した基本構成の活性ガス生成装置51と同様な構成を呈しており、第1及び第2の態様のうち、
図6〜
図9で示した第2の態様を採用している。なお、
図10では導電膜12Bや処理チャンバー60のガス排気部の図示を省略している。
【0100】
活性ガス生成装置51Sは以下の寸法特性を有している。内部空間33の形成高さは17.25mmであり、X方向の形成幅は90(45+45)mmであり、X方向における中心からの距離は45mmである。
【0101】
また、誘電体電極11B及び12Bそれぞれの膜厚は1.5mmであり、放電空間15におけるギャップ長は1.5mmであり、ガス噴出孔9Bの半径は8mmであり、貫通孔49の半径は0.5(8−7.5)mmであり、貫通孔49の形成長は5mmである。
【0102】
そして、金属電極対10H及び10LそれぞれのX方向における形成幅は10mmであり、X方向における中心からの距離は15.5mmであり、誘電体電極11Bの端部から金属電極対10H及び10Lそれぞれに至るX方向における距離は10mmである。また、処理チャンバー60の処理空間63における形成高さは10.5mmである。
【0103】
図11〜
図13は、
図10の着目領域R40の拡大図であり、着目領域R40はガス噴出孔9Bの近傍における活性ガス生成用電極群301B及びオリフィス部40の断面構造である。
【0104】
さらに、高電圧側電極構成部1Bの誘電体電極11B及び接地側電極構成部2Bの誘電体電極21Bそれぞれの誘電体材料の比誘電率は“10”とし、金属電極10Bに印加する電圧は6000Vとしてシミュレーションを実行している。
【0105】
また、金属筐体31及び処理チャンバー60の筐体は共に金属製であり、電位は接地電位“0”Vとしてシミュレーションを実行している。
【0106】
電界強度の評価対象は、処理チャンバー60の処理空間63であるため、
図11〜
図13において、オリフィス部40の下方の処理空間63の電界強度を可視化して示している。
【0107】
図11は、高電圧側電極構成部1Bに接地電位設定用の導電膜12Bを有さない従来構造の活性ガス生成装置のシミュレーション結果である。
【0108】
同図に示すように、活性ガス生成装置の後段の処理空間63に面するオリフィス部40の電界強度は27V/mmを超える領域があり、評価対象領域である処理空間63の半分以上が5V/mm以上の電界強度を持つ領域が占めている。
【0109】
図12は、高電圧側電極構成部1Bに導電膜12Bを設けた実施の形態の第2の態様の構造であり、導電膜12Bは平面視して活性ガス流通経路P7の一部に重複するように配置されている。
【0110】
図12に示すように、活性ガス生成装置51の第2の態様は、処理空間63に面するオリフィス部は電界強度が強くなっているものの、5V/mm以下であり、
図11で示す従来構造に比べて、導電膜12Bによって処理空間63内における電界強度が緩和されている効果が確認された。
【0111】
図13は、高電圧側電極構成部1Bに2つの導電膜12Bを分離して設置した変形例の構造である。
【0112】
変形例では、導電膜12Bを2つの導電膜12H及び12Lに分離し、導電膜12Hを金属電極10H側に配置し、導電膜12Lを金属電極10L側に配置している。
【0113】
そして、導電膜12H及び12Lが平面視して複数のガス噴出孔9Bを挟むように配置される。なお、導電膜12H及び12Lも
図6〜
図9で示した導電膜12Bと同様、平面視して矩形状に形成される。
【0114】
変形例においても、導電膜12H及び12Lは平面視して活性ガス流通経路P7の一部と重複するように設けられ、かつ、導電膜12H及び12Lは接地電位に設定されている。
【0115】
図13に示すように、変形例においても、
図11で示す従来構造に比べて、導電膜12H及び12Lによって、処理空間63内の電界強度が緩和されている効果が確認された。ただし、変形例では、1〜5V/mmの領域は
図12で示す実施の形態の基本構成(第2の態様)と比較して増加している。
【0116】
図10〜
図13で示したシミュレーション結果より、高電圧側電極構成部1(1B)に接地電位に設定された導電膜12(12B)を設け、導電膜12を平面視して上記活性ガス流通経路の一部と重複するように設けることにより、処理空間63における電界強度が緩和されることが明らかになった。
【0117】
なお、上述したシミュレーションの印加電圧の大きさや、金属電極10(10B)等のサイズ等は例示であり、印加電圧の大きさや金属電極10のサイズ・配置方法によって、後段の処理空間63での電界強度の大きさは変化する。
【0118】
しかしながら、本発明の実施の形態の上記特徴(1)及び特徴(2)を有すれば、後段の処理空間63の電界強度緩和効果を発揮することができる。
【0119】
(効果等)
以上説明したように、本実施の形態の活性ガス生成装置51は、以下の特徴(1)及び特徴(2)を有している。
【0120】
(1) 導電膜12(12A,12B)は平面視して上記活性ガス流通経路の一部と重複するように設けられる。
(2) 導電膜12は接地電位に設定されている。
【0121】
本実施の形態の活性ガス生成装置51は、上記特徴(1)及び特徴(2)を有することにより、接地電位に設定された補助導電膜である導電膜12によって、上記活性ガス流通経路における電界強度を緩和することができる。
【0122】
その結果、本実施の形態の活性ガス生成装置51は、オリフィス部の構造を変更することなく、オリフィス部40の下方に設けられる処理空間63の電界強度を意図的に弱めることができるという主要効果を奏する。さらに、上記主要効果に伴い、以下の第1〜第4の副次的効果を得ることができる。
【0123】
第1の副次的効果:処理空間63での異常放電の発生が抑制され、処理空間63内でのメタルコンタミネーションの発生を抑制し、処理空間63におけるウェハ等の処理対象物へのダメージの低減化を図ることができる。
【0124】
第2の副次的効果:放電空間15から少なくとも一つのガス噴出孔9に至る距離である活性ガス流通距離がより短くなるように金属電極10及び20を配置することができる。
【0125】
その結果、本実施の形態の活性ガス生成装置51は、処理空間63での電界強度を高めることなく効率的に活性ガス7を処理空間63に供給することができる。さらに、上記活性ガス流通距離を短くする分、活性ガス生成装置51の小型化を図ることができる。
【0126】
なお、上記活性ガス流通距離を短くする方法として、第1の態様(
図2〜
図5)では、金属電極10A及び10Bの内周部をより中心に近づける構成が考えられる。また、第2の態様(
図6〜
図9)では、金属電極対10H及び10L並びに金属電極対20H及び20LをよりX方向の中央に近づけて配置する構成が考えられる。
【0127】
第3の副次的効果:オリフィス部の少なくとも一つの貫通孔9の形成長さの短縮化を図ることができる。
【0128】
その結果、本実施の形態の活性ガス生成装置51は、処理空間63での電界強度を高めることなく、効率的に活性ガス7を処理空間63に供給することができる。さらに、少なくとも一つの貫通孔9の形成長さを短縮する分、活性ガス生成装置51の小型化を図ることができる。
【0129】
第4の副次的効果:印加する交流電圧をより高電圧にすることができる。その結果、本実施の形態の活性ガス生成装置51は、処理空間63での電界強度を高めることなく、大容量な活性ガス7を処理空間63に供給することができる。
【0130】
さらに、本実施の形態の活性ガス生成装置51は、オリフィス部40の構成材料をセラミック、ガラス及びサファイアのうち少なくとも一つとしている。
【0131】
オリフィス部40の構成材料を耐食性のあるセラミック、ガラス及びサファイアのうち少なくとも一つとすることにより、活性ガス7との反応が低減され、活性ガス7の失活を抑制することができる。その結果、本実施の形態の活性ガス生成装置51は、より高濃度な活性ガス7をオリフィス部40の下方の処理空間63に供給することができる。なお、サファイアに代えて、導電性を有さず、耐食性を有する他の固体結晶を用いても良い。
【0132】
また、本実施の形態の活性ガス生成装置51で用いる原料ガス6は、水素、窒素、酸素、弗素、塩素ガスのうち少なくとも一つを含むガスであることが望ましい。
【0133】
本実施の形態の活性ガス生成装置51は、上述したガスを原料ガスとすることにより、窒化膜・酸化膜などの成膜処理、エッチングガスや洗浄ガスの生成、表面改質処理が可能となる。
【0134】
以下、この点を詳述する。窒素や酸素を原料ガス6とすれば窒化膜や酸化膜の絶縁膜を成膜することができる。弗素や塩素ガスを原料ガス6とすれば、活性化した弗化ガスや塩素ガスをエッチングガスや洗浄ガスとして利用することができる。水素や窒素を原料ガス6とすれば、活性化した水素ガスや窒化ガスによって基板等の所定対象物の表面を水素化、窒化して表面改質処理が行える。
【0135】
<その他>
図1で示す活性ガス生成装置51の基本構成では、オリフィス部40と接地側電極構成部2の誘電体電極21とを分離して構成したが、オリフィス部40と誘電体電極21とを一体的に構成しも良い。例えば、誘電体電極21に設ける少なくとも一つのガス噴出孔9それぞれの径を、オリフィス部40の貫通孔49の径のように十分小さくするように構成しても良い。
【0136】
この場合、誘電体電極21に設けられる少なくとも一つのガス噴出孔9がオリフィス部の少なくとも一つの貫通孔の役割を発揮し、誘電体電極21自体がオリフィス部としても機能することになる。このように、活性ガス生成装置51を変形して誘電体電極21自体にオリフィス部を設ける構成にしても良い。
【0137】
図1で示した実施の形態の活性ガス生成装置51の基本構成を実現する具体的構成として第1の態様(
図2〜
図5)及び第2の態様(
図6〜
図9)を示した。基本構成の上記特徴(1)及び特徴(2)を満足することを条件として、第1及び第2の態様以外の構成が適用可能である。
【0138】
この発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。