(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電極基材と、該電極基材の表面を覆うように配置され且つ活物質粒子を含む活物質層と、前記電極基材と前記活物質層との間に配置され且つ結着剤を含む中間層と、を有する電極を備え、
前記活物質層の活物質粒子は、LixNiyMnzCo(1-y-z)O2の化学組成で表されるリチウム金属複合酸化物(ただし、0<x≦1.3であり、0<y<1であり、0<z<1である)を含み、
前記活物質粒子は、二次粒子を含み、該二次粒子は、表面に凹凸を有し、
前記活物質層の前記二次粒子の凸部は、前記中間層に入り込み前記電極基材及び前記中間層と接触しており、
前記二次粒子の凸部は、前記電極基材にめり込んでいる、蓄電素子。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る蓄電素子の一実施形態について、
図1〜
図9を参照しつつ説明する。蓄電素子には、二次電池、キャパシタ等がある。本実施形態では、蓄電素子の一例として、充放電可能な二次電池について説明する。尚、本実施形態の各構成部材(各構成要素)の名称は、本実施形態におけるものであり、背景技術における各構成部材(各構成要素)の名称と異なる場合がある。
【0017】
本実施形態の蓄電素子1は、非水電解質二次電池である。より詳しくは、蓄電素子1は、リチウムイオンの移動に伴って生じる電子移動を利用したリチウムイオン二次電池である。この種の蓄電素子1は、電気エネルギーを供給する。蓄電素子1は、単一又は複数で使用される。具体的に、蓄電素子1は、要求される出力及び要求される電圧が小さいときには、単一で使用される。一方、蓄電素子1は、要求される出力及び要求される電圧の少なくとも一方が大きいときには、他の蓄電素子1と組み合わされて蓄電装置100に用いられる。前記蓄電装置100では、該蓄電装置100に用いられる蓄電素子1が電気エネルギーを供給する。
【0018】
蓄電素子1は、正極11及び負極12を電極として有する。詳しくは、蓄電素子1は、
図1〜
図9に示すように、正極11と負極12とセパレータ4とを含む電極体2と、電極体2を収容するケース3と、ケース3の外側に配置される外部端子7であって電極体2と導通する外部端子7と、を備える。また、蓄電素子1は、電極体2、ケース3、及び外部端子7の他に、電極体2と外部端子7とを導通させる集電体5等を有する。
【0019】
電極体2は、正極11と負極12とがセパレータ4によって互いに絶縁された状態で積層された積層体22が巻回されることによって形成される。これにより、電極体2では、正極11と、正極11と対向する負極12との間に、セパレータ4が配置される。
【0020】
正極11は、正極基材としての金属箔111と、金属箔111に重なるように形成され且つ導電助剤及び結着剤を含む中間層113と、中間層113に重なるように形成され且つ活物質粒子を含む正極活物質層112と、を有する。尚、中間層113は、導電助剤を含まなくてもよいが、本実施形態では、一例として、導電助剤を含む中間層について説明する。
【0021】
金属箔111は帯状である。金属箔111の厚みは、通常、10μm以上20μm以下である。本実施形態の正極の金属箔111は、例えば、アルミニウム箔である。正極11は、帯形状の短手方向である幅方向の一方の端縁部に、正極活物質層112で覆われない露出部105(正極活物質層112が形成されていない部位)を有する。
【0022】
正極活物質層112は、負極12と対向するように配置される。正極活物質層112は、正極活物質と、バインダと、を含む。詳しくは、正極活物質層112は、正極の活物質粒子を80質量%以上98質量%以下含み、バインダを1質量%以上10質量%以下含み、導電助剤を1質量%以上10質量%以下含む。
【0023】
正極11の活物質粒子は、リチウムイオンを吸蔵放出可能な正極活物質を含む粒子である。活物質粒子は、正極活物質を95質量%以上含む。正極活物質は、例えば、リチウム金属酸化物である。具体的に、正極活物質は、例えば、Li
xMeO
p(Meは、1又は2以上の遷移金属を表す)によって表される複合酸化物(Li
xCoO
2、Li
xNiO
2、Li
xMnO
4、Li
xNi
yMn
zCo
(1−y−z)O
2等)、Li
aMe
b(XO
c)
d(Meは、1又は2以上の遷移金属を表し、Xは例えばP、Si、B、Vを表す)によって表されるポリアニオン化合物(Li
aFe
bPO
4、Li
aMn
bPO
4、Li
aMn
bSiO
4、Li
aCo
bPO
4F等)である。本実施形態の正極活物質は、Li
xNi
yMn
zCo
(1−y−z)O
2の化学組成で表されるリチウム金属複合酸化物(ただし、0<x≦1.3であり、0<y<1であり、0<z<1である)であり、詳しくは、LiNi
1/3Co
1/3Mn
1/3O
2である。正極11の活物質粒子の平均粒径D50(後述)は、通常、3μm以上20μm以下である。
【0024】
正極活物質は、金属箔111よりも硬い。正極活物質を含む正極の活物質粒子は、金属箔111よりも硬い。正極活物質及び金属箔111の各硬さは、例えば、島津製作所製のダイナミック超微小硬度計を用いた測定によって決められる。
【0025】
正極活物質層112には、活物質粒子が、正極活物質を含む一次粒子が集合した二次粒子の状態、及び、集合していない一次粒子の状態で存在する。即ち、正極活物質層112では、独立して存在する一次粒子と、一次粒子が集合した二次粒子とが混在する。正極活物質層112に含まれる活物質粒子のほとんどは、一次粒子が集合した二次粒子である。
【0026】
正極11の活物質粒子は、中間層113に入り込み金属箔111及び中間層113と接触している。詳しくは、正極11の活物質粒子は、中間層113を突き抜けて金属箔111にめり込んでいる。
正極11の活物質粒子は、二次粒子を含み、二次粒子は、表面に凹凸を有する。表面に凹凸を有する二次粒子は、例えば、一次粒子が球状に集まった中央部と、一次粒子が中央部の表面から外方へ突出した凸部とによって形成される。凸部は、例えば、中間層113を突き抜けて金属箔111にめり込んでいる。
【0027】
正極活物質層112に用いられるバインダは、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、エチレンとビニルアルコールとの共重合体、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレンブタジエンゴム(SBR)である。本実施形態のバインダは、ポリフッ化ビニリデンである。
【0028】
正極活物質層112は、ケッチェンブラック(登録商標)、アセチレンブラック、黒鉛等の導電助剤をさらに有してもよい。本実施形態の正極活物質層112は、導電助剤としてアセチレンブラックを有する。
【0029】
中間層113は、金属箔111と正極活物質層112との間に配置される。中間層113は、活物質粒子を含まない。中間層113の厚みは、正極11の金属箔111の厚みに対して、0.005以上0.2以下である。中間層113の厚みは、通常、0.1μm以上2μm以下である。中間層113の厚みとは、活物質粒子がめり込んでいない部分での厚みであり、具体的には例えば、中間層113を突き抜けて金属箔111にめり込んだ活物質粒子の周囲における中間層113の厚みである。
【0030】
中間層113は、正極基材(金属箔)111と正極活物質層112との間に部分的に形成され得る。即ち、中間層113は、正極基材(金属箔)111の表面を部分的に覆い得る。
【0031】
中間層113の厚みは、活物質粒子の一次粒子の平均粒径D50よりも小さい。一次粒子の平均粒径D50は、電極(正極11)の厚み方向断面の走査型電子顕微鏡写真における一次粒子の平均粒径によって求められる。詳しくは、断面写真において、金属箔111に沿うように配置された活物質粒子の一次粒子の少なくとも100個がランダムに選ばれ、それぞれの一次粒子の最も長い径が測定され、測定値が平均されることにより、一次粒子の平均粒径D50が求められる。
【0032】
中間層113の厚みは、活物質粒子の一次粒子の平均粒径D50に対して、通常、0.05以上1.0未満である。
【0033】
中間層113は、固形分が2g/m
2以下の量となるように、好ましくは0.1g/m
2以上1g/m
2以下の量となるように、塗布されて形成される。固形分とは、製造時において、塗布後に揮発する成分を除いたものであり、いわゆる目付量である。
【0034】
中間層113は、導電助剤に対して0.5以上5以下の質量比の結着剤を含む。中間層113は、導電助剤を30質量%以上80質量%以下含む。中間層113は、結着剤を20質量%以上70質量%以下含む。
【0035】
中間層113は、活物質よりも柔らかく、金属箔111よりも柔らかい。それぞれの硬さは、例えば、ビッカース硬さ試験によって決められる。中間層113の硬さは、例えば、結着剤と導電助剤との量比を変えることによって調整できる。
【0036】
導電助剤としては、カーボンブラック及び黒鉛からなる群より選択された少なくとも1種が挙げられる。カーボンブラックとしては、例えば、ケッチェンブラック(登録商標)、アセチレンブラック等が挙げられる。本実施形態では、中間層113は、カーボンブラックを導電助剤として含む。
【0037】
結着剤としては、キトサン分子構造を有する化合物、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、エチレンとビニルアルコールとの共重合体、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、及び、スチレンブタジエンゴム(SBR)からなる群より選択された少なくとも1種が挙げられる。本実施形態では、中間層113は、少なくとも、キトサン分子構造を有する化合物を結着剤として含む。
【0038】
キトサン分子構造を有する化合物としては、例えば、セルロースとキトサンピロリドンカルボン酸塩との架橋重合体、キチン又はキトサンの誘導体などが挙げられる。
【0039】
負極12は、負極基材としての金属箔121と、金属箔121の上に形成された負極活物質層122と、を有する。金属箔121は帯状である。本実施形態の負極の金属箔121は、例えば、銅箔である。負極12は、帯形状の短手方向である幅方向の他方(正極11の露出部105と反対側)の端縁部に、負極活物質層122で覆われない露出部(負極活物質層が形成されていない部位)105を有する。
【0040】
負極活物質層122は、負極活物質と、バインダと、を有する。
【0041】
負極活物質は、例えば、グラファイト、難黒鉛化炭素、及び易黒鉛化炭素などの炭素材、又は、ケイ素(Si)及び錫(Sn)などのリチウムイオンと合金化反応を生じる材料である。本実施形態の負極活物質は、グラファイト(黒鉛)である。
【0042】
負極活物質層122に用いられるバインダは、正極活物質層112に用いられたバインダと同様のものである。本実施形態のバインダは、ポリフッ化ビニリデンである。
【0043】
負極活物質層122は、ケッチェンブラック(登録商標)、アセチレンブラック、黒鉛等の導電助剤をさらに有してもよい。本実施形態の負極活物質層122は、導電助剤を有していない。
【0044】
セパレータ4は、絶縁性を有する部材である。セパレータ4は、帯状である。セパレータ4は、正極11と負極12との間に配置される。これにより、電極体2(詳しくは、積層体22)において、正極11と負極12とが互いに絶縁される。また、セパレータ4は、ケース3内において、電解液を保持する。これにより、蓄電素子1の充放電時において、リチウムイオンが、セパレータ4を挟んで交互に積層される正極11と負極12との間を移動する。
【0045】
セパレータ4は、例えば、織物、不織布、又は多孔膜によって多孔質に構成される。セパレータ4の材質としては、高分子化合物、ガラス、セラミックなどが挙げられる。高分子化合物としては、例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリアミド(PA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)などのポリオレフィン(PO)、又は、セルロースが挙げられる。
【0046】
セパレータ4の幅(帯形状の短手方向の寸法)は、負極活物質層122の幅より僅かに大きい。セパレータ4は、正極活物質層112及び負極活物質層122が重なるように幅方向に位置ずれした状態で重ね合わされた正極11と負極12との間に配置される。
【0047】
本実施形態の電極体2では、以上のように構成される正極11と負極12とがセパレータ4によって絶縁された状態で巻回される。即ち、本実施形態の電極体2では、正極11、負極12、及びセパレータ4の積層体22が巻回される。
【0048】
正極11と負極12とが積層された状態で、
図9に示すように、正極11の露出部105と負極12の露出部105とは重なっていない。即ち、正極11の露出部105が、正極11と負極12との重なる領域から幅方向に突出し、且つ、負極12の露出部105が、正極11と負極12との重なる領域から幅方向(正極11の露出部105の突出方向と反対の方向)に突出する。積層された状態の正極11、負極12、及びセパレータ4、即ち、積層体22が巻回されることによって、電極体2が形成される。正極11の露出部105又は負極12の露出部105のみが積層された部位によって、電極体2における露出積層部26が構成される。
【0049】
露出積層部26は、電極体2における集電体5と導通される部位である。露出積層部26は、巻回された正極11、負極12、及びセパレータ4の巻回中心方向視において、中空部27を挟んで二つの部位(二分された露出積層部)261に区分けされる。
【0050】
以上のように構成される露出積層部26は、電極体2の各極に設けられる。即ち、正極11の露出部105のみが積層された露出積層部26が電極体2における正極11の露出積層部を構成し、負極12の露出部105のみが積層された露出積層部26が電極体2における負極12の露出積層部を構成する。
【0051】
ケース3は、開口を有するケース本体31と、ケース本体31の開口を塞ぐ(閉じる)蓋板32と、を有する。ケース3は、電極体2及び集電体5等と共に、電解液を内部空間に収容する。ケース3は、電解液に耐性を有する金属によって形成される。ケース3は、例えば、アルミニウム、又は、アルミニウム合金等のアルミニウム系金属材料によって形成される。ケース3は、ステンレス鋼及びニッケル等の金属材料、又は、アルミニウムにナイロン等の樹脂を接着した複合材料等によって形成されてもよい。
【0052】
電解液は、非水溶液系電解液である。電解液は、有機溶媒に電解質塩を溶解させることによって得られる。有機溶媒は、例えば、プロピレンカーボネート及びエチレンカーボネートなどの環状炭酸エステル類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、及びエチルメチルカーボネートなどの鎖状カーボネート類である。電解質塩は、LiClO
4、LiBF
4、及びLiPF
6等である。電解液は、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、及びエチルメチルカーボネートを、プロピレンカーボネート:ジメチルカーボネート:エチルメチルカーボネート=3:2:5の割合で調整した混合溶媒に、1mol/LのLiPF
6を溶解させたものである。
【0053】
ケース3は、ケース本体31の開口周縁部と、長方形状の蓋板32の周縁部とを重ね合わせた状態で接合することによって形成される。また、ケース3は、ケース本体31と蓋板32とによって画定される内部空間を有する。本実施形態では、ケース本体31の開口周縁部と蓋板32の周縁部とは、溶接によって接合される。
【0054】
以下では、
図4に示すように、蓋板32の長辺方向をX軸方向とし、蓋板32の短辺方向をY軸方向とし、蓋板32の法線方向をZ軸方向とする。
【0055】
ケース本体31は、開口方向(Z軸方向)における一方の端部が塞がれた角筒形状(即ち、有底角筒形状)を有する。
【0056】
蓋板32は、ケース本体31の開口を塞ぐ板状の部材である。具体的に、蓋板32は、ケース本体31の開口を塞ぐようにケース本体31に当接する。より具体的には、蓋板32が開口を塞ぐように、蓋板32の周縁部がケース本体31の開口周縁部に重ねられる。開口周縁部と蓋板32とが重ねられた状態で、蓋板32とケース本体31との境界部が溶接される。これにより、ケース3が構成される。
【0057】
蓋板32は、Z軸方向視において、ケース本体31の開口周縁部に対応した輪郭形状を有する。即ち、蓋板32は、Z軸方向視において、X軸方向に長い矩形状の板材である。また、蓋板32の四隅は、円弧状である。
【0058】
蓋板32は、ケース3内のガスを外部に排出可能なガス排出弁321を有する。ガス排出弁321は、ケース3の内部圧力が所定の圧力まで上昇したときに、該ケース3内から外部にガスを排出する。ガス排出弁321は、X軸方向における蓋板32の中央部に設けられる。
【0059】
ケース3には、電解液を注入するための注液孔が設けられる。注液孔は、ケース3の内部と外部とを連通する。注液孔は、蓋板32に設けられる。
【0060】
注液孔は、注液栓326によって密閉される(塞がれる)。注液栓326は、溶接によってケース3(本実施形態の例では蓋板32)に固定される。
【0061】
外部端子7は、他の蓄電素子1の外部端子7又は外部機器等と電気的に接続される部位である。外部端子7は、導電性を有する部材によって形成される。例えば、外部端子7は、アルミニウム又はアルミニウム合金等のアルミニウム系金属材料、銅又は銅合金等の銅系金属材料等の溶接性の高い金属材料によって形成される。
【0062】
外部端子7は、バスバ等が溶接可能な面71を有する。面71は、平面である。外部端子7は、蓋板32に沿って拡がる板状である。詳しくは、外部端子7は、Z軸方向視において矩形状の板状である。
【0063】
集電体5は、ケース3内に配置され、電極体2と通電可能に直接又は間接に接続される。本実施形態の集電体5は、クリップ部材50を介して電極体2と通電可能に接続される。即ち、蓄電素子1は、電極体2と集電体5とを通電可能に接続するクリップ部材50を備える。
【0064】
集電体5は、導電性を有する部材によって形成される。
図6に示すように、集電体5は、ケース3の内面に沿って配置される。
【0065】
集電体5は、蓄電素子1の正極11と負極12とにそれぞれ配置される。本実施形態の蓄電素子1では、ケース3内において、電極体2の正極11の露出積層部26と、負極12の露出積層部26とにそれぞれ配置される。
【0066】
正極11の集電体5と負極12の集電体5とは、異なる材料によって形成される。具体的に、正極11の集電体5は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金によって形成され、負極12の集電体5は、例えば、銅又は銅合金によって形成される。
【0067】
本実施形態の蓄電素子1では、袋状の絶縁カバー6に収容された状態の電極体2(詳しくは、電極体2及び集電体5)がケース3内に収容される。
【0068】
次に、上記実施形態の蓄電素子の製造方法について、
図11を参照しつつ説明する。
【0069】
電極基材に導電助剤及び結着剤を含む組成物を塗布する(ステップS1)。塗布後の組成物に活物質粒子を含む合剤を塗布する(ステップS2)。塗布された合剤をプレスして、電極(正極)を作製する(ステップS3)。正極、セパレータ、及び負極を重ね合わせて電極体を形成する(ステップS4)。電極体をケースに入れ、ケースに電解液を入れることによって蓄電素子を組み立てる(ステップS5)。
【0070】
ステップS1では、正極用の金属箔111の両方の面に、導電助剤と結着剤と溶媒とを含む中間層用組成物をそれぞれ塗布することによって中間層113を形成する。中間層113を形成するための塗布方法としては、一般的な方法が採用される。
【0071】
ステップS2では、形成した各中間層113の外側の面に、正極活物質とバインダと溶媒とを含む合剤をそれぞれ塗布することによって正極活物質層112を形成する。正極活物質層112を形成するための塗布方法としては、一般的な方法が採用される。
【0072】
ステップS3では、例えば、ロールプレス法が採用される。詳しくは、金属箔111と中間層113と正極活物質層112とが積み重なったものを一対のロール間で挟み込みつつ押圧する。これにより、正極11の活物質粒子を中間層113に入り込ませ、中間層113を突き抜けさせ、金属箔111にめり込ませる。そして、活物質粒子を金属箔111と接触させる。なお、負極12は、負極用の金属箔121の上に負極活物質層122を形成することによって、同様に作製できる。
【0073】
また、ステップS3では、プレス圧が10kgf/mm以上100kgf/mm以下であることが好ましい。プレスにおいて、ロールの直径がΦ360mmであり、温度が150℃であることが好ましい。
【0074】
ステップS4では、正極11と負極12との間にセパレータ4を挟み込んだ積層体22を巻回することにより、電極体2を形成する。電極体2の形成では、正極活物質層112と負極活物質層122とがセパレータ4を介して互いに向き合うように、正極11とセパレータ4と負極12とを重ね合わせ、積層体22を作る。次に、積層体22を巻回して、電極体2を形成する。
【0075】
ステップS5では、ケース3のケース本体31に電極体2を入れ、ケース本体31の開口を蓋板32で塞ぎ、電解液をケース3内に注入する。ケース本体31の開口を蓋板32で塞ぐときには、ケース本体31の内部に電極体2を入れ、正極11と一方の外部端子7とを導通させ、且つ、負極12と他方の外部端子7とを導通させた状態で、ケース本体31の開口を蓋板32で塞ぐ。電解液をケース3内へ注入するときには、ケース3の蓋板32の注入孔から電解液をケース3内に注入する。
【0076】
上記のように構成された本実施形態の蓄電素子1では、活物質粒子は、中間層113に入り込み正極11の電極基材(金属箔)111及び中間層113と接触している。蓄電素子1において充放電反応が繰り返されると、活物質粒子が膨張や収縮を繰り返す。ところが、活物質粒子は、中間層113に入り込み正極11の電極基材(金属箔)111及び中間層113と接触している分、膨張や収縮によっても、電極基材(金属箔)111及び中間層113から離れにくい。従って、正極活物質層112が中間層113から剥離しにくい。また、活物質粒子は、結着剤を含む中間層113に入り込み電極基材(金属箔)111及び中間層113と接触している。活物質粒子が電極基材(金属箔)111と接触した部分の周囲には、中間層113の結着剤が存在する。結着剤が存在する分、活物質粒子が電極基材(金属箔)111及び中間層113から離れにくく、正極活物質層112が中間層113から剥離しにくい。これによっても、上記の蓄電素子1は、充放電サイクルによって内部抵抗が上昇することを抑制できる。
【0077】
上記の蓄電素子1では、正極11の活物質粒子は、中間層113を突き抜けて、正極11の電極基材(金属箔)111にめり込んでいる。活物質粒子は、電極基材(金属箔)111にめり込んでいることによって、上記の膨張や収縮によっても、電極基材(金属箔)111及び中間層113から離れにくい。従って、正極活物質層112が中間層113から剥離しにくい。また、活物質粒子は、結着剤を含む中間層113を突き抜けて電極基材(金属箔)111にめり込んでいる。活物質粒子のめり込み部分の周囲には、中間層113の結着剤が存在する。結着剤が存在する分、活物質粒子が電極基材(金属箔)111及び中間層113から離れにくく、正極活物質層112が中間層113から剥離しにくい。これによって、上記の蓄電素子1は、充放電サイクルによって内部抵抗が上昇することを抑制できる。また、活物質粒子は、電極基材(金属箔)111の表面に存在する酸化被膜を突き破って、電極基材(金属箔)111にめり込み且つ接触している。これにより、内部抵抗が上昇することを抑えることができ、さらには、出力を向上させる等、蓄電素子1のパフォーマンスを向上させることができる。
【0078】
上記の蓄電素子1では、中間層113が導電助剤を含むことから、活物質粒子のめり込み部分の周囲に導電助剤が存在し得る。導電助剤が存在する分、めり込んだ活物質粒子と電極基材(金属箔)111との間の導電性が確実に確保される。
【0079】
上記の蓄電素子1では、正極活物質層112の活物質粒子は、Li
xNi
yMn
zCo
(1−y−z)O
2の化学組成で表されるリチウム金属複合酸化物(ただし、0<x≦1.3であり、0<y<1であり、0<z<1である)を含む。これにより、製造時に、活物質粒子をより確実に金属箔111にめり込ませることができる。
【0080】
上記の蓄電素子1では、正極11の活物質粒子は、二次粒子を含み、二次粒子は、表面に凹凸を有する。凸部分は、突出している分、めり込みやすい。従って、凸部分が金属箔111の方へ突出するように配置された二次粒子は、製造時に、より確実に金属箔111にめり込むことができる。
【0081】
上記の蓄電素子1では、中間層113の厚みは、活物質粒子の一次粒子の平均粒径D50よりも小さい。斯かる構成により、製造時に、活物質粒子がより確実に中間層113を突き抜けることができる。
【0082】
上記の蓄電素子1では、中間層の導電助剤は、カーボンブラックである。これにより、より均一な導電性を中間層に付与することができる。また、中間層の結着剤は、キトサン分子構造を有する化合物である。これにより、中間層と電極基材との密着性をより確実に保持することができる。
【0083】
尚、本発明の蓄電素子は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。
【0084】
上記の実施形態では、中間層113を有する正極11を備えた蓄電素子1について詳しく説明したが、本発明では、負極12が中間層を有し、負極12の活物質粒子が負極12の金属箔121にめり込んでもよい。
【0085】
上記実施形態では、活物質層が各電極の金属箔の両面側にそれぞれ配置された電極について説明したが、本発明の蓄電素子では、正極11又は負極12は、活物質層を金属箔の片面側にのみ備えてもよい。
【0086】
上記実施形態では、積層体22が巻回されてなる電極体2を備えた蓄電素子1について詳しく説明したが、本発明の蓄電素子は、巻回されない積層体22を備えてもよい。詳しくは、それぞれ矩形状に形成された正極、セパレータ、負極、及びセパレータが、この順序で複数回積み重ねられてなる電極体を蓄電素子が備えてもよい。
【0087】
上記実施形態では、蓄電素子1が充放電可能な非水電解質二次電池(例えばリチウムイオン二次電池)として用いられる場合について説明したが、蓄電素子1の種類や大きさ(容量)は任意である。また、上記実施形態では、蓄電素子1の一例として、リチウムイオン二次電池について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、本発明は、種々の二次電池、その他、電気二重層キャパシタ等のキャパシタの蓄電素子にも適用可能である。
【0088】
蓄電素子1(例えば電池)は、
図10に示すような蓄電装置100(蓄電素子が電池の場合は電池モジュール)に用いられてもよい。蓄電装置100は、少なくとも二つの蓄電素子1と、二つの(異なる)蓄電素子1同士を電気的に接続するバスバ部材91と、を有する。この場合、本発明の技術が少なくとも一つの蓄電素子に適用されていればよい。
【実施例】
【0089】
以下に示すようにして、非水電解質二次電池(リチウムイオン二次電池)を製造した。
【0090】
(実施例1)
(1)正極の作製
導電助剤(炭素質材料 アセチレンブラック 平均粒子径−35nm)と、結着剤(キトサン 製品名「DCN」大日精化工業社製)と、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)とを導電助剤/結着剤/NMP=5/5/90の質量比で混合することによって、中間層用の組成物を調製した。調製した組成物を、厚み15μmのアルミ箔の両方の面上に、乾燥後に0.2g/m
2の量となるようにそれぞれ塗布した。溶剤としてNMPと、導電助剤(アセチレンブラック)と、バインダ(PVdF)と、正極活物質(LiNi
1/3Co
1/3Mn
1/3O
2)とを、混合、混練することで、正極用の合剤を調製した。導電助剤、バインダ、正極活物質の配合量は、それぞれ4.5質量%、4.5質量%、91質量%とした。調製した正極用の合剤を、乾燥後に10mg/cm
2の量となるように、中間層用の組成物上にそれぞれ塗布した。乾燥後、正極活物質層中の活物質充填密度が3g/mLになるようにロールプレスを行った。ロールプレス時のプレス条件(線圧)は、30kgf/mmとした。その後、真空乾燥して、水分を除去した。
【0091】
(2)負極の作製
負極活物質としては、平均粒径D50が10μmのグラファイトを用いた。また、バインダとしては、PVdFを用いた。負極用の合剤は、溶剤としてNMPと、バインダと、負極活物質とを混合、混練することで作製した。バインダは、7質量%となるように配合し、負極活物質は、93質量%となるように配合した。作製した負極用の合剤を、乾燥後に5mg/cm
2の量となるように厚み10μmの銅箔上に塗布した。乾燥後、負極合剤中の活物質充填密度が1.5g/mLになるようにロールプレスを行い、真空乾燥して、水分を除去した。
【0092】
(3)セパレータ
セパレータとして幅10cm、厚み21μmのポリエチレン製微多孔膜を準備した。
【0093】
(4)電解液の調製
電解液としては、以下の方法で調製したものを用いた。非水溶媒として、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートを、それぞれ30体積%、40体積%、30体積%となるように混合した溶媒を用い、この非水溶媒に、塩濃度が1.2mol/LとなるようにLiPF
6を溶解させ、電解液を調製した。
【0094】
(5)ケース内への電極体の配置
上記の正極、上記の負極、上記の電解液、セパレータ、及びケースを用いて、一般的な方法によって電池を製造した。
まず、セパレータが上記の正極および負極の間に配されて積層されてなるシート状物を巻回した。次に、巻回されてなる電極体を、ケースとしてのアルミニウム製の角形電槽缶のケース本体内に配置した。続いて、正極及び負極を2つの外部端子それぞれに電気的に接続させた。さらに、ケース本体に蓋板を取り付けた。上記の電解液を、ケースの蓋板に形成された注液口からケース内に注入した。最後に、ケースの注液口を封止することにより、ケースを密閉した。
【0095】
(実施例2)
中間層用の組成物を0.3g/m
2の量となるようにそれぞれ塗布した点以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造した。
【0096】
(実施例3)
中間層用の組成物を0.4g/m
2の量となるようにそれぞれ塗布した点以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造した。
【0097】
(実施例4)
中間層用の組成物を0.6g/m
2の量となるように塗布した点以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造した。
【0098】
(比較例1)
中間層用の組成物を0.2g/m
2の量となるように塗布し、ロールプレス時の線圧を5kgf/mmとした点以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造した。
【0099】
(比較例2)
中間層を作製しなかった点以外は、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を製造した。
【0100】
<電子顕微鏡による観察>
正極を作製した時点で、正極を厚み方向に切断し、断面を走査型電子顕微鏡によって観察した。それぞれの実施例及び比較例の観察像の例を
図12〜
図16に示す。各観察像の下に示す直線線分は、スケールを示す。
実施例1〜4の正極では、活物質粒子が中間層を突き抜けて金属箔にめり込んでいた(突入していた)。実施例4の正極では、活物質粒子が中間層を突き抜けて金属箔及び中間層と接触していた。一方、比較例1の正極では、活物質粒子が中間層に入り込んでいるものの金属箔とは接触していなかった。比較例2の正極では、活物質粒子が単に金属箔にめり込んでいた。
【0101】
<電池性能(内部抵抗)の評価>
充放電サイクル数に対する抵抗値比率を一般的な方法によって確認することにより、電池性能(内部抵抗)の評価を行った。横軸を充放電サイクル数とし、縦軸を抵抗値比率として測定値をプロットしたグラフによって、評価結果を
図17に示す。なお、抵抗値は、比較例2の電池におけるサイクル数0のときの抵抗値を100としたときの比率(相対値)によって表されている。
中間層がない比較例2の場合、サイクル数が増大するにつれて、抵抗値比率が増加の一途である。一方、中間層がある場合、中間層用の組成物の塗布量が増加するにつれて、抵抗値比率の増加が鈍化した。このことから、中間層の存在、及び、中間用の組成物の量が電池性能の向上に明らかに寄与していることがわかった。また、金属箔に活物質がめり込むことの有無と、抵抗値比率との関係を、実施例1と比較例1において比較した。その結果、中間層用の組成物に対するロールプレス圧を下げて、金属箔に活物質をめり込ませなかった場合(比較例1)に比べ、めり込ませた場合(実施例1)では、明らかに抵抗値比率が低かった。極箔に活物質がめり込むことも、抵抗値比率低減に寄与していることがわかった。