【実施例1】
【0031】
図1に示す本発明の第1実施例の接続構造は、一つの谷状部11を有する定尺屋根材1A,1Bを流れ方向に接続する構造であって、水下側に配する定尺屋根材1Bの谷状部11の棟側には堰状体として定形止水材2X,2Yが固着され、該水下側の定尺屋根材1Bと固定部材7Aを介して接続される水上側に配する定尺屋根材1Aは、前記定形止水材2X,2Yと接触することなく接続されている構成である。
【0032】
この接続構造に用いられる定尺屋根材1A,1Bは、水上側に配するものを1A、水下側に配するものを1Bとして区別したが、基本的な構成に相違はなく、略中央に略平坦状の面板部に相当する谷状部11が形成され、その左右にそれぞれ山状部の半分に相当する立ち上げ部12,12が形成される左右対称状の嵌合式屋根材(金属製の折板屋根材)である。この立ち上げ部12の高さの中程には外方へく字状に突出する嵌合部121が設けられ、更にその上方には傾斜状に上方へ延出する傾斜面部122、略水平状に外方へ延出する水平状面部123を介してその端縁(上端)にはU字状に成形された端縁部124が形成されている。
【0033】
この定尺屋根材1Bの施工手順を簡単に説明すると、角鋼で形成される母屋4にタイトフレームである支持材5をビス5bにて固定し、その上に
図1には図示されていない断熱材6を介して前記端縁部124,124が突き合わされるように左右に隣り合う定尺屋根材1B,1Bを敷設する。この断熱材6としては、
図2に示すように予め表面に排水路61を形成した定形材を用いてもよいし、不定形の充填材を用いるようにしてもよい。この状態で、
図2(e)に拡大して示すピース状の補助材8を取り付け、脚長の取付ボルト8bにて前記タイトフレーム(支持材5)に固定する。
前記補助材8は、取付ボルト8bの通孔811が形成される中央平坦部81の裏面側に前記端縁部124,124に嵌合状に配設される係合片82,82が形成され、前記中央平坦部81の左右には、前記傾斜面部122及び水平状面部123の上面側に沿う被覆部83を備え、取付ボルト8bの固定により、前記定尺屋根材1Bと共に一体的に固定される。
【0034】
その後、左右方向に隣接する定尺屋根材1B,1Bの立ち上げ部12,12間に上方からキャップ材3Bを嵌合状に取り付けて接続するが、前述のように補助材8を取り付けているので、当然のことながらこのキャップ材3Bは前記補助材8を覆うように配されるものとなる。
なお、水上側の定尺屋根材1A,1A間に配設するキャップ材も上方から嵌合状に取り付けるが、符号を敢えて変更してキャップ材3Aとした。
【0035】
そして、前記水上側の定尺屋根材1Aを固定する固定部材7Aは、水下側の定尺屋根材1B上に固着されると共に水上側の定尺屋根材1Aを裏面側から保持する吊子(保持部材)に相当する部材であるため、前記水上側の定尺屋根材1Aと前記水下側の定尺屋根材1Bとを接続する接続部材を兼ねる。そのため、前記補助材8を介して水下側に配した定尺屋根材1Bのタイトフレーム(支持材5)に連絡させて固定した構成である。
【0036】
この固定部材7Aについては、
図2(d)に拡大して示すように水下側のキャップ材3Bに止水材7cを介して重合する底面部71と、その前端及び後端を起立状に立ち上げてその外端縁が定尺屋根材1Aの立ち上げ部12の裏面側に近似する受面部72,72と、からなる側面視が逆ハット状のピース材である。この受面部72の上端を外方へ折り曲げて形成した水平状受支部73には、前記定尺屋根材1Aの水平状面部123が受支され、この受面部72の斜め上端を外方へ折り曲げて形成した傾斜状受支部74には、前記定尺屋根材1Aの傾斜面部122が受支され、この受面部72の中央上端を切り欠いて形成した凹状部721には、前記定尺屋根材1A,1Aの端縁部124,124が並列状に嵌合する。また、前記受面部72の外方へ突出する側端及びその下端は、前記定尺屋根材1Aの嵌合部121が弾性的に係合する被係合部722である。
【0037】
この固定部材7Aを前述のように止水材7cを介して底面部71をキャップ3Bの上面に重合した状態で、固定ビス7bを前記補助材8の被覆部83に打ち込んで一体化させる。この補助材8は、前述のように脚長の取付ボルト8bにて前記タイトフレーム(支持材5)に固定されているので、固定部材7A自体の取付強度もそれに取り付ける水上側の定尺屋根材1Aの取付強度も十分に高いものとなる。
【0038】
図1(a)における符号9aは弾性止水材などから形成されるピース状のシール材であり、山状部における水下側の定尺屋根材1Bと水上側の定尺屋根材1Aとの間を塞ぐものである。即ち前記定形止水材2X,2Yと異なり、このシール材9aを介して水下側の定尺屋根材1Bと水上側の定尺屋根材1Aとを接触状に接続させる構成である。
このシール材9aは、言い換えればハゼ部等の山状部における定尺屋根材1A,1B間を塞ぐので、該山状部における水下側からの雨水の浸入を堰き止めつつ、下方(谷状部11側)へ流下させる(導く)役割を果たす。
【0039】
また、
図1(a)における符号9bは一次防水材兼化粧材である化粧フレームであって、前記定尺屋根材と同様の素材で形成したものである。
この化粧フレーム9bは、定尺屋根材1Aの水下側の端縁を保護でき、その端縁の変形を防止して端縁からの錆等の発生を抑え、更には作業者の手足を保護できる。
【0040】
なお、この第1実施例における定尺屋根材1A,1Bは、谷状部11の水上端が略垂直状に立ち上げられており(立ち上げ部111が形成されており)、水下側に配する定尺屋根材1Bの谷状部11の棟側には僅かな間隔を隔てて略平行状に二列の定形止水材2X,2Yが両面テープ2bにて固着されている。該両面テープ2bは、耐久性・耐水性を有するものが望ましい。
【0041】
前記定形止水材2X,2Yは、水上側に配するものを2X、水下側に配するものを2Yとして区別したが、基本的な構成に相違はなく、短幅の柱状体を略U字状に成形したピース材であって、前記定尺屋根材1Bの谷状部11に配される平坦部21とその左右端を傾斜状に立ち上げて前記定尺屋根材1Bの立ち上げ部12の基端に配される傾斜部22,22とで形成されている。
【0042】
この定形止水材2X,2Yについては
図1(b)に拡大して示したが、前記平坦部21の下面には、下面側が開放する矩形状の水抜き溝211が3箇所に形成され、中央とその左右に形成される水抜き溝211は、水下側の定形止水材2Yではやや左側へずれて形成され、水上側の定形止水材2Xではやや右側へずれて形成されおり、それぞれの水抜き溝211は、非直線上に配置されている(=流れ方向に沿う直線上から双方の水抜き溝211がずれて配置されている)。
図1(b)中の一点鎖線は、流れ方向に沿う直線を示しており、水下側から水上側に向かって吹き上げ風等により逆流状に雨水が浸入することを想定したものである。水下側に配する定形止水材2Yに形成した3箇所の水抜き溝211の中心を通る二点鎖線は、何れも水上側に配する定形止水材2Xに形成した3箇所の水抜き溝211を通るものではないので、浸入する雨水の流速を抑え、水抜き溝211から雨水を排出する作用を大きくしている。
【0043】
即ちこの第1実施例では、そもそも堰状体として二列の定形止水材2X,2Yを配しているので、一列のみを配する場合に比べて谷状部11における雨水の浸入をより確実に防止することができるが、隣り合う定形止水材2X,2Yのそれぞれの水抜き溝211の位置を意図的にずらせる、即ち
図1(b)中の一点鎖線上に配置しないことにより、水抜き溝211から雨水が浸入する作用より水抜き溝211から雨水を排出する作用を大きくしている。
【0044】
これに対し、
図3に示す第2実施例では、水下側に配する定形止水材2Zでは、下面側が開放する矩形状の水抜き溝211が、中央とその左右の3箇所に形成される構成であって、水上側に配する定形止水材2Oでは水抜き溝が形成されない構成である。
したがって、この第2実施例では、水上側に配する定形止水材2Oが前記谷状部11の水上端の立ち上げ部111と同様に水下側からの雨水の浸入を阻止でき、その二重の効果により雨水の浸入を阻止する効果は極めて高いものである。
【0045】
即ちこの第2実施例では、そもそも二列の定形止水材を配しているので、一列のみを配する場合に比べて谷状部11における雨水の浸入をより確実に防止することができる点については前記第1実施例と同様であるが、特に水上側の定形止水材20にて、確実に雨水のそれ以上の浸入を防止する。この場合の水下側の定形止水材2Zでは、複数の水抜き溝211を有するので、浸入した雨水を水下側へ排水できる。