特許第6851730号(P6851730)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6851730
(24)【登録日】2021年3月12日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】静電容量検知線及びその応用品
(51)【国際特許分類】
   G01V 3/08 20060101AFI20210322BHJP
   B60N 2/90 20180101ALI20210322BHJP
   A47C 7/62 20060101ALI20210322BHJP
   G01B 7/00 20060101ALI20210322BHJP
   H01H 36/00 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   G01V3/08 D
   B60N2/90
   A47C7/62 Z
   G01B7/00 101C
   H01H36/00 V
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-108212(P2016-108212)
(22)【出願日】2016年5月31日
(65)【公開番号】特開2017-215176(P2017-215176A)
(43)【公開日】2017年12月7日
【審査請求日】2019年4月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000129529
【氏名又は名称】株式会社クラベ
(72)【発明者】
【氏名】森下 典栄
(72)【発明者】
【氏名】藤井 寛剛
【審査官】 藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−292445(JP,A)
【文献】 特開2008−311111(JP,A)
【文献】 特開2008−224575(JP,A)
【文献】 特開2003−048471(JP,A)
【文献】 特開2002−221579(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3077751(JP,U)
【文献】 特開2013−020951(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0208414(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 3/00−3/40
G01B 7/00−7/34
H01H 36/00
G01N 27/22−27/24
B60N 2/00−2/90
A47C 7/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の電極線と第二の電極線と芯線を有し、上記第一の電極線及び上記第二の電極線が引き揃えられて上記芯線上に巻装されており、上記第一の電極線と上記第二の電極線の何れか一方又は両方が絶縁被膜により被覆されており、上記第一の電極線と上記第二の電極線が長さ方向に渡って上記絶縁被膜を介して接しており、上記第一の電極線と上記第二の電極線間の静電容量値を検知する静電容量検知線。
【請求項2】
上記第一の電極線と上記第二の電極線が隙間無く引き揃えられて上記芯線上に巻装されている請求項1記載の静電容量検知線。
【請求項3】
上記第一の電極線及び上記第二の電極線が引き揃えられて上記芯線上に巻装されたものの外周に外層被覆が形成されている請求項1又は請求項2記載の静電容量検知線。
【請求項4】
請求項1〜請求項3何れか記載の静電容量検知線が基材上に配設されている静電容量検知体。
【請求項5】
請求項1〜請求項3何れか記載の静電容量検知線により検知された静電容量値の変化によって人体の接近を検出する人感検知器。
【請求項6】
請求項1〜請求項3何れか記載の静電容量検知線により検知された静電容量値変化によって着座者の有無を検出する着座検知機能付き座席。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、2つの検知線間の静電容量を検知する、所謂2電極型静電容量センサに係るものであり、線状の静電容量検知線、それを面状にした静電容量検知体、及び、これらの応用品である人感検知器や着座検知機能付き座席等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、静電容量センサは、タッチパネルや着座検知器等に使用されており、特に、所謂2電極型静電容量センサは、優れた検出感度から、様々な用途で広く使用されている。これは、近接状態で絶縁された2つの電極に人体が近付くことにより、この2つの電極間の静電容量値が変化することから、この静電容量の変化を検出するものである(例えば、特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−191110公報:デンソー
【特許文献2】実用新案登録第3077751号公報:三ツ星ベルト
【特許文献3】特許第3895373号公報:サークコーポレイション
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、2電極型静電容量センサにおいては、2電極間の距離が一定状態で固定されていることが必要になる。これにより、誤動作の防止と検出感度の向上を図ることができるためである。しかしながら、従来の静電容量センサにおいては、2電極間の距離を一定状態で固定することについて、充分な検討がなされているとはいえなかった。特に、静電容量センサを現場に後加工で設置したり、着座検知のような大きな圧力が加わるような環境での使用であったりした場合、静電容量センサが変形を受けることにより、2電極間の距離も変化してしまうことが起こっていた。これによって、設計で意図しないような検出をしてしまうような誤動作や、検出感度の低下を招くおそれがあった。
【0005】
本発明はこのような従来技術の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、2つの電極間の距離を一定状態で固定できることにより、誤動作を防止でき優れた検出感度を得ることが可能な静電容量検知線と、その応用品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するべく、本発明による静電容量検知線は、第一の電極線と第二の電極線と芯線を有し、上記第一の電極線及び上記第二の電極線が引き揃えられて上記芯線上に巻装されており、上記第一の電極線と上記第二の電極線の何れか一方または両方が絶縁被膜により被覆されており、上記第一の電極線と上記第二の電極線間の静電容量値を検知するものである。
また、上記第一の電極線及び上記第二の電極線が引き揃えられて上記芯線上に巻装されたものの外周に外層被覆が形成されていることが考えられる。
また、上記の静電容量検知線が基材上に配設されている静電容量検知体が考えられる。
また、応用品として、上記の静電容量検知線により検知された静電容量値の変化によって人体の接近を検出する人感検知器が考えられる。また、上記の静電容量検知線により検知された静電容量値変化によって着座者の有無を検出する着座検知機能付き座席が考えられる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、第一の電極線と第二の電極線の何れかまたは両方が絶縁被膜によって絶縁され、引き揃えられて芯線上に巻装されているため、第一の電極線と第二の電極線の間の距離が長さ方向にわたって一定となり、且つ、確実にそれらの位置が固定されることになる。そのため、第一の電極線と第二の電極線の間の距離が変化してしまうこともなく、誤動作を防止でき優れた検出感度を得ることができる。
特に、第一の電極線及び第二の電極線が引き揃えられて芯線上に巻装されたものの外周に外層被覆が形成されていれば、第一の電極線と第二の電極線の位置をより確実に固定させることができる。また、第一の電極線と第二の電極線の間に異物が混入して誤作動を起こすことを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明による実施の形態示す図で、静電容量検知線の構成を示す一部切り欠き側面図である。
図2】本発明による実施の形態を示す図で、ホットプレス式ヒータ製造装置の構成を示す図である。
図3】本発明による実施の形態を示す図で、静電容量検知線を所定のパターン形状に配設する様子を示す一部斜視図である。
図4】本発明による実施の形態を示す図で、面状の静電容量検知体の構成を示す平面図である。
図5】本発明による実施の形態を示す図で、面状の静電容量検知体を車両用座席内に埋め込んだ様子を一部切り欠いて部示す斜視図である。
図6】本発明による他の実施の形態を示す図で、静電容量検知線の構成を示す一部切り欠き側面図である。
図7】本発明による他の実施の形態を示す図で、静電容量検知線の構成を示す一部切り欠き側面図である。
図8】本発明による他の実施の形態を示す図で、静電容量検知線の構成を示す一部切り欠き側面図である。
図9】本発明による他の実施の形態を示す図で、静電容量検知線の構成を示す一部切り欠き側面図である。
図10】本発明による他の実施の形態を示す図で、静電容量検知線の構成を示す一部切り欠き側面図である。
図11】本発明による他の実施の形態を示す図で、静電容量検知線の構成を示す一部切り欠き側面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図1図11を参照して本発明の実施の形態を説明する。これらの実施の形態は、静電容量検知線を面状の静電容量検知体とし、着座検知機能を付与した車両用座席に適用することを想定した例を示すものである。
【0010】
まず、図1図5を参照して本実施の形態を説明する。この実施の形態における静電容量検知線10の構成から説明する。本実施の形態における静電容量検知線10は図1に示すような構成になっている。まず、外径約0.2mmの芳香族ポリアミド繊維束からなる芯線3があり、該芯線3の外周には、素線径0.08mmの硬質錫入り銅合金線からなる第一の電極線1及び第二の電極線2を引き揃えて構成されたものがピッチ約1.0mmで螺旋状に巻装されている。第一の電極線1及び第二の電極線2には、アルキドシリコーンワニス(アルキド:シリコーン=50:50)を塗布し乾燥して形成したシリコーンを含有する絶縁被膜5が、厚さ約5μmで形成されている。この芯線3上に第一の電極線1及び第二の電極線2を巻装したものの外周に、外層被覆7として難燃剤が配合されたポリエチレン樹脂が0.2mmの厚さで押出被覆される。なお、この実施の形態において、外層被覆7に用いられたポリエチレン樹脂は、熱融着材として機能する。静電容量検知線10はこのような構成になっていて、その仕上外径は0.8mmである。
【0011】
次に、上記構成をなす静電容量検知線10を接着・固定する基材11の構成について説明する。本実施例における基材11は、低融点ポリエステルを鞘成分とする芯鞘構造を有する熱融着性繊維10%と、難燃性ポリエステル繊維からなる難燃性繊維90%とを混合させた不織布(目付100g/m、厚さ0.6mm)で構成されている。このような基材11は、型抜き等の公知の手法により所望の形状とされる。
【0012】
次に、上記静電容量検知線10を基材11上に所定のパターン形状で配設して接着・固定する構成について説明する。図2は静電容量検知線10を基材11上に接着・固定させるためのホットプレス式ヒータ製造装置13の構成を示す図である。まず、ホットプレス治具15があり、このホットプレス治具15上には複数個の係止機構17が設けられている。上記係止機構17は、図3に示すように、ピン19を備えていて、このピン19はホットプレス冶具15に穿孔された孔21内に下方より差し込まれている。このピン19の上部には係止部材23が軸方向に移動可能に取り付けられていて、コイルスプリング25によって常時上方に付勢されている。そして、図3中仮想線で示すように、これら複数個の係止機構17の係止部材23に静電容量検知線10を引っ掛けながら所定のパターン形状にて配設することになる。
【0013】
図2に戻って、上記複数個の係止機構17の上方にはプレス熱板27が昇降可能に配置されている。すなわち、静電容量検知線10を複数個の係止機構17の係止部材23に引っ掛けながら所定のパターン形状にて配設し、その上に基材11を置く。その状態で上記プレス熱板27を降下させて静電容量検知線10と基材11に、例えば、230℃/5秒間の加熱・加圧を施すものである。それによって、静電容量検知線10側の外層被覆7の熱融着材と基材11側の熱融着性繊維が融着することになり、その結果、静電容量検知線10と基材11が接着・固定されることになる。尚、上記プレス熱板27の降下による加熱・加圧時には複数個の係止機構17の係止部材23はコイルスプリング25の付勢力に抗して下方に移動するものである。
【0014】
基材11の静電容量検知線10を配設しない側の面には、接着層の形成、或いは、両面テープの貼り付けがなされても良い。これは、座席に取り付ける際、面状の静電容量検知体31を座席に固定するためのものである。
【0015】
上記作業を行うことにより、図4に示すような車両用座席用の静電容量検知体31を得ることができる。尚、上記静電容量検知体31における静電容量検知線10の片端はリード線39が接続端子(図示しない)によって接続されており、このリード線39により、静電容量の測定器に接続される。そして、この測定器によって検知された静電容量値により、着座の有無が検出されることになる。また、初期の静電容量値からの静電容量値の変化を検知して、これに基づき、着座の有無を検出することもできる。
【0016】
そして、上記構成をなす面状の静電容量検知体31は、図5に示すような状態で、車両用座席41内に埋め込まれて配置されることになる。すなわち、上記した通り、車両用座席41の表皮カバー43または座席パット45に、面状の静電容量検知体31が貼り付けられることとなるものである。
【0017】
尚、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。まず、静電容量検知線10は、少なくとも第一の電極線1と第二の電極線2を有し、これら第一の電極線1と第二の電極線2の何れかまたは両方が絶縁被膜5により被覆されているものであれば、種々の形態のものを使用することができる。
【0018】
例えば、第一の電極線1と第二の電極線2をそれぞれ複数本使用した形態(図6参照)、絶縁被膜5により被覆された第一の電極線1と絶縁被膜5により被覆されていない第二の電極線2が交互に配置された形態(図7参照)や、絶縁被膜5により被覆された第一の電極線1と第二の電極線2の本数を増やして、絶縁被膜5により被覆された第一の電極線1と第二の電極線2を並べて配置するような形態も考えられ(図8参照)、それら以外にも様々な構成のものが想定される。また、外部からのノイズ電波を逃がすためのシールド線6を併せて引き揃えることも考えられる(図9参照)。第一の電極線1と第二の電極線2は、絶縁被膜5を介して接するように引き揃えられていると、より、第一の電極線1と第二の電極線2の間の距離を一定状態に固定でき好ましい。特に、第一の電極線1と第二の電極線2を隙間無く引き揃えて巻装することにより、2つの電極間の距離はより確実に一定状態で固定でき、異物の混入も防止できることになる(図10参照)。この際、第一の電極線1と第二の電極線2の他に、シールド線等の他の線材を混在させて引き揃えても良い。また、第一の電極線1と第二の電極線2の間に一定間隔の空間を設けられていてもよい。その場合は、第一の電極線1及び第二の電極線2が絶縁被膜で被覆されない形態も考えられる。
【0019】
芯線3としては、例えば、ガラス繊維等の無機繊維や、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル繊維、脂肪族ポリアミド繊維、芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維等の有機繊維のモノフィラメント、マルチフィラメント、スパン、或いはそれらの繊維材料、若しくは、それらの繊維材料を構成する有機高分子材料を芯材とし、その周上に熱可塑性の有機高分子材料が被覆された構成を有する繊維などが挙げられる。なお、芯線3は導電材料であっても機能するので、種々の金属線、ガラス繊維等の無機繊維、上記した有機繊維等その材質を問わない。
【0020】
第一の電極線1や第二の電極線2の材料としては、従来公知のものを使用することができ、例えば、銅線、銅合金線、ニッケル線、鉄線、アルミニウム線、ニッケル−クロム合金線、鉄−クロム合金線、などが挙げられ、銅合金線としては、例えば、錫−銅合金線、銅−ニッケル合金線、銅固溶体と銅銀共晶がファイバー状になった銀入り銅合金線などが挙げられる。このうち、コストと特性のバランスの点から、銅線または銅合金線を使用することが好ましい。これら銅線または銅合金線には軟質のものと硬質のものがあるが、耐屈曲性の観点からは、軟質のものよりも硬質のものの方が特に好ましい。尚、硬質銅線や硬質銅合金線とは、線引き加工等の冷間加工によって個々の金属結晶粒が加工方向に長く引き伸ばされ繊維状組織となったものである。このような硬質銅線や硬質銅合金線は、再結晶温度異常で加熱すると、金属結晶内に生じた加工歪みが解消されるとともに、新たな金属結晶の基点となる結晶各が出現し始める。この結晶核が発達して、順次旧結晶粒と置換される再結晶が起き、更に結晶粒が成長した状態となる。軟質銅線や軟質銅合金線はこのような結晶粒が成長した状態のものである。この軟質銅線や軟質銅合金線は、硬質銅線や硬質銅合金線と比べて伸びや電気抵抗値は高いものの引張強さが低い性質となるため、耐屈曲性は硬質銅線や硬質銅合金線と比べて低くなる。このように、硬質銅線や硬質銅合金線は、熱処理によって耐屈曲性が低い軟質銅線や軟質銅合金線になるため、できるだけ熱履歴の少ない加工を行うことが好ましい。尚、硬質銅線はJIS−C3101(1994)、軟質銅線はJIS−C3102(1984)においても定義がなされており、外径0.10〜0.26mmでは伸び15%以上、外径0.29〜0.70mmでは伸び20%以上、外径0.80〜1.8mmでは伸び25%以上、外径2.0〜7.0mmでは伸び30%以上のものが軟質銅線とされる。また、銅線には錫メッキが施されているものも含まれる。錫メッキ硬質銅線はJIS−C3151(1994)、錫メッキ軟質銅線はJIS−C3152(1984)にて定義がなされている。また、第一の電極線1や第二の電極線2の断面形状についても種々のものが使用でき、通常使用される断面円形のものに限られず、いわゆる平角線と称されるものを使用しても良い。
【0021】
但し、芯線3に第一の電極線1と第二の電極線2を巻装することから、上記した第一の電極線1と第二の電極線2の材料の中でも、巻付けたときのスプリングバックする量が小さいものが良く、復元率が200%以下となるものが好ましい。例えば、銅固溶体と銅銀共晶がファイバー状になった銀入り銅合金線などは、抗張力性に優れ引張強度や屈曲強度には優れるものの、巻付けたときスプリングバックし易い。そのため、芯線3に巻装する際に、第一の電極線1や第二の電極線2の浮きや、過度の巻付けテンションによる第一の電極線1や第二の電極線2の破断が生じ易く、また加工後には撚り癖が生じ易いため好ましくない。特に、第一の電極線1や第二の電極線2に絶縁被膜5が被覆される形態であるので、この絶縁被膜5による復元力も加わることになる。そのため、第一の電極線1や第二の電極線2の復元率が小さいものを選定し、絶縁被膜5による復元力をカバーすることが重要となる。
【0022】
ここで、本発明で規定する復元率の測定について詳しく記述する。まず、電極線に一定荷重を掛けながら、電極線径の60倍の径の円柱形マンドレルに対して、電極線が重ならないように3回以上巻きつける。10分後、荷重を取り去り電極線をマンドレルから外し、弾性により復元した形状の内径を測定して、電極線のスプリングバックする割合を次の式(I)により算出して、復元率として評価する。
R=(d/d)×100―――(I)
記号の説明:
R:復元率(%)
:巻付試験に用いたマンドレル径(mm)
:電極線をマンドレルに巻きつけた後、荷重を開放して復元した形状の内径(mm)
【0023】
第一の電極線1や第二の電極線2に被覆される絶縁被膜5としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂、ナイロン樹脂、ポリエステルナイロン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、シリコーンなどが挙げられる。例えば、これら材料の中からシリコーンを含有したものが選択されることが考えられる。シリコーンは、シロキサン結合による主骨格を持つ人口高分子化合物の総称であり、シリコーン樹脂やシリコーンゴム(シリコーンエラストマー)などの形態をとるものである。シリコーン樹脂は3次元網目構造を持ち、シリコーン樹脂を含む樹脂では、ガラス転移点は室温以上である。シリコーンゴムは、直鎖状のポリマーが橋架けによりゴム状となった分子構造となっており、シリコーンゴムを含むゴムでは、そのガラス転移点は、一例として−124℃である。また、置換基としてメチル基とフェニル基の量を適宜調整したものや、エーテル基、フルオロアルキル基、エポキシ基、アミノ基、カルボキシル基等の他の置換基を適宜導入したものも考えられる。また、例えば、ポリエステル樹脂とシリコーン樹脂を混合した所謂アルキドシリコーン、エポキシ樹脂とシリコーン樹脂を混合した所謂エポキシシリコーン、アクリルポリマーとジメチルポリシロキサンのグラフト共重合体である所謂アクリルシリコーンのような、シリコーンと他の高分子材料の混合物や、ポリシロキサンと他のポリマー成分の共重合体を使用することも考えられる。絶縁被膜5に含有されるシリコーンの量は、種々特定の観点から特定の範囲内とすることが好ましい。尚、シリコーンと他のポリマー成分の共重合体を使用する場合は、共重合体におけるシリコーン分のみの重量をシリコーンの量として算出する。シリコーンの量を一定以上とすることで絶縁被膜5の耐熱性を向上させることができる。また、外観にも悪影響を及ぼす可能性がある。この観点から、シリコーン含有量は、重量比で、20%以上とすることが好ましく、更には30%以上、更には40%以上、更には50%以上、更には60%以上、更には70%以上、更には80%以上、更には90%以上とすることが考えられる。また、シリコーンの量が多すぎると、濡れ性が低くなって第一の電極線1や第二の電極線2への塗布が困難となってしまい、外観に問題が生じる可能性がある。また、それによって、絶縁被膜5の絶縁性が充分なものでなくなってしまう可能性がある。この観点から、シリコーン含有量は、重量比で、90%以下とすることが好ましく、更には80%以下、更には70%以下、更には60%以下、更には50%以下、更には40%以下、更には30%以下、更には20%以下とすることが考えられる。また、第一の電極線1や第二の電極線2と絶縁被膜5の密着性を向上させるために、予め第一の電極線1や第二の電極線2にプライマーを塗布しておくことも考えられる。これらのようなシリコーンは、例えば、溶剤や水のような溶媒または分散媒に溶解または分散した状態で第一の電極線1や第二の電極線2に塗布し乾燥する方法、第一の電極線1や第二の電極線2の外周に押出成形等の成形手段によって形成する方法などにより、第一の電極線1や第二の電極線2に被覆され、絶縁被膜5とされる。シリコーンの押出成形は比較的定温ですることができるが、溶剤や水等で溶解または分散したシリコーンを塗布する場合は、乾燥を短時間で済ますために比較的高温環境に晒されることになる。上記のように、銅線または銅合金線の第一の電極線1や第二の電極線2は、熱履歴によって硬質か軟質かが変わることになるため、この点も考慮した絶縁被膜5の形成方法を選択する必要がある。また、絶縁被膜5の形成に当たっては、押出成形よりも、塗布の方が絶縁被膜5の厚さを薄くすることができる。これにより、静電容量検知線として細径化を図ることができる。また、上記した絶縁被膜5の材料の中からフッ素樹脂が選択されることも考えられる。フッ素樹脂としては、例えば、テトラフルオロエチレン−パーフルオロエチレンアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−ビニリデンフルオライド共重合体(THV)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、テトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(CTFE)、などが挙げられる。このような、フッ素樹脂は不燃性であり化学的に安定している材料である点でも好ましい。特に、ETFEは機械的強度及び耐スパーク性にも優れているため好ましい。また、PFAは耐熱特性に特に優れているため好ましい。
また、絶縁被膜5の厚さは、第一の電極線1及び第二の電極線2の直径の3〜30%であることが好ましい。3%未満であると、絶縁被膜5が薄くなりすぎて欠損が生じ、第一の電極線1と第二の電極線2が導通してしまう可能性がある。また、30%を超えると、検出感度が低下し、接続端子を圧着する際に絶縁被膜5の除去が困難となるとともに、静電容量検知線が無駄に太くなってしまうことになる。
【0024】
上記第一の電極線1と第二の電極線2を引き揃えまたは撚り合せて芯材3上に巻装する際には、撚り合せるよりも、引き揃えた方が好ましい。これは、静電容量検知線の径が細くなるとともに、第一の電極線1と第二の電極線2の距離も一定となり、表面も平滑になるためである。また、引き揃えまたは撚り合わせの他に、芯材3上に第一の電極線1と第二の電極線2を編組することも考えられる。
【0025】
本発明による静電容量検知線は、絶縁被膜5が形成された第一の電極線1や第二の電極線2の外周に外層被覆7が形成されていることが好ましい。この外層被覆7により、第一の電極線1と第二の電極線2の位置の固定がより確実なものとなる。
【0026】
外層被覆7を形成する場合は、押出成形等によって行っても良いし、予めチューブ状に成形した外層被覆7を被せても良く、形成の方法には特に限定はない。押出成形によって外層被覆7を形成すると、第一の電極線1や第二の電極線2の位置の固定はより確実なものとなる。外層被覆7を構成する材料としても、静電容量検知線の使用形態や使用環境などによって適宜設計すれば良く、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、芳香族ポリアミド系樹脂、脂肪族ポリアミド系樹脂、塩化ビニル樹脂、変性ノリル樹脂(ポリフェニレンオキサイド樹脂)、ナイロン樹脂、ポリスチレン樹脂、フッ素樹脂、合成ゴム、フッ素ゴム、エチレン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー等、種々のものが挙げられる。特に、難燃性を有する高分子組成物が好ましく使用される。ここでの難燃性を有する高分子組成物とは、JIS−K7201(1999年)燃焼性試験における酸素指数が21以上のものを示す。酸素指数が26以上のものは特に好ましい。このような難燃性を得るため、上記した外層被覆7を構成する材料に適宜難燃材等を配合してもよい。難燃剤としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の金属水和物、酸化アンチモン、メラミン化合物、リン系化合物、塩素系難燃剤、臭素系難燃剤などが挙げられる。これらの難燃剤には公知の方法で適宜表面処理を施しても良い。また、外層被覆7は絶縁材料に限定されず、導電材料とすることも考えられる。例えば、外層被覆7の構成材料としてフェライトやカーボンブラックのような導電粉末が配合されているものを使用したり、外層被覆7の一部または全部が金属線や導電繊維の編組や横巻から構成されていたりすることも考えられる。
【0027】
また、この外層被覆7を熱融着材で形成することにより、加熱加圧により静電容量検知線10を基材11に熱融着することができる。このような場合、上記した外層被覆7を構成する材料の中でも、基材との接着性に優れるオレフィン系樹脂が好ましい。オレフィン系樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−不飽和エステル共重合体などが挙げられる。これらの中でも特に、エチレン−不飽和エステル共重合体が好ましい。エチレン−不飽和エステル共重合体は、分子内に酸素を有する分子構造であるため、ポリエチレンのような炭素と水素のみの分子構造をしている樹脂と比較して燃焼熱が小さくなり、その結果、燃焼の抑制につながることとなる。また、元々の接着性が高いため基材との接着性も良好である上、無機粉末等を配合した際の接着性の低下が少ないため、種々の難燃剤を配合するのに好適である。エチレン−不飽和エステル共重合体としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体などが挙げられ、これらの単独または2種以上の混合物であってもよい。ここで「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸とメタクリル酸の両方を表すものである。これらの内から任意に選択すれば良いが、上記した絶縁被膜5を構成する材料の分解開始温度以下または融点以下の温度で溶融する材料である方が良い。また、基材11との接着性に優れる材料として、ポリエステル系熱可塑性エラストマーが挙げられる。ポリエステル系熱可塑性エラストマーとしては、ポリエステル−ポリエステル型、ポリエステル−ポリエーテル型のものがあるが、ポリエステル−ポリエーテル型の方が高い接着性を有するため好ましい。尚、静電容量検知線10と基材11を熱融着する場合、静電容量検知線10と基材11との接着強度は非常に重要なものである。この接着強度が充分でないと、使用していくうちに基材11と静電容量検知線10とが剥離してしまうおそれがある。
【0028】
外層被覆7は1層だけでなく、複数層形成してもよい。例えば、フッ素樹脂による層を形成し、その外周に熱融着材としてポリエチレン樹脂の層を形成し、これら2層により外層被覆7を構成するような形態も考えられる。もちろん、3層以上となっていても構わない。
【0029】
基材11としては、上記実施の形態で示した不織布の他に、例えば、織布、紙、アルミ箔、マイカ板、樹脂シート、発泡樹脂シート、ゴムシート、発泡ゴムシート、延伸多孔質体等、種々のものが使用できるが、FMVSS No.302自動車内層材料の燃焼試験に合格する難燃性を有するものが好ましい。ここで、FMVSSとは、Federal Motor Vehicle Safety Standard、即ち、米国連邦自動車安全基準のことであり、そのNo.302として、自動車内装材料の燃焼試験が規定されている。これらの中でも、不織布は、風合いが良く柔軟であるため、特に車両用座席の用途において好ましい。また、不織布を使用する場合も、上記実施の形態の場合には、不織布を構成する熱融着性繊維として、低融点ポリエステルを鞘成分とする芯鞘構造を有する繊維を使用しているが、それ以外にも、例えば、低融点ポリプロピレンを鞘成分とする芯鞘構造を有する繊維、またはポリエチレンを鞘成分とする芯鞘構造を有する繊維等の使用が考えられる。このような熱融着性繊維を使用することで、熱融着性繊維の芯部を取り囲んだ状態で、熱融着性繊維の鞘部と外層被覆7の熱融着材とが互いに融着し一体化することとなるため、静電容量検知線10と不織布との接着は非常に強固なものとなる。また、難燃性繊維としては、例えば、上記の難燃性ポリエステルの他に、種々の難燃性繊維の使用が考えられる。ここで、難燃性繊維とは、JIS−L1091(1999年)に合格する繊維のことを指す。このような難燃性繊維を使用することで、基材は優れた難燃性を付与されることとなる。
【0030】
熱融着性繊維の混合割合は、5%以上が好ましく、また、20%以下が好ましい。熱融着性繊維の混合割合が5%未満だと、十分な接着性が得られない。また、熱融着性繊維の混合割合が20%を超えると、不織布が固くなり、着座者が違和感を訴えることになり得るのみでなく、逆に静電容量検知線との接着性が低下してしまう。更には、熱融着する際の熱によって基材が収縮し、設計で意図した寸法が得られなくなる可能性もある。難燃性繊維の混合割合は、70%以上であり、好ましくは70%以上95%以下である。難燃性繊維の混合割合が70%未満だと、十分な難燃性が得られない。また、難燃性繊維の混合割合が95%を超えると、相対的に熱融着性繊維の混合割合が不足してしまい、十分な接着性が得られない。尚、熱融着性繊維の混合割合と難燃性繊維の混合割合を合算して100%になる必要はなく、他の繊維を適宜混合させても良い。また、熱融着性繊維が混合されていない場合であっても、例えば、上記の熱融着部の材料と基材を構成する繊維の材料を同系統の材料とすることで、必要充分な接着性を得られることもあるので、熱融着性繊維が混合されていないことも充分に考えられる。
【0031】
また、不織布の大きさや厚さなどは、使用用途によって適宜に変更するものであるが、その厚さ(乾燥時に測定した値)は、例えば、0.6mm〜1.4mm程度とすることが望ましい。このような厚さの不織布を使用すれば、加熱・加圧により静電容量検知線と不織布とを接着・固定した際、不織布が静電容量検知線の外周の30%以上、好ましくは50%以上の部分と良好に接着することになるからであり、それによって、強固な接着状態を得ることができるからである。
【0032】
上記基材の中でも、空隙を有しているものが好ましく、特に、静電容量検知線が配設される面(以下、配設面と記す)が、静電容量検知線が配設されない面(以下、非配設面と記す)よりも空隙が多くなっているように構成されることが好ましい。空隙が多い状態とは、例えば、織布や不織布等の布体の場合、目付け、即ち単位体積当たりの繊維重量が小さい状態、発泡樹脂シートや発泡ゴムシートのような多孔体の場合、気孔率が大きい状態のことを示す。本発明による基材の具体的な態様としては、例えば、温度や圧力を調節するなどして片面のみまたは両面で強弱異なるカレンダー加工を行った織布または不織布、片面のみからニードルパンチを行った不織布、片面にパイル形成や起毛をさせた布体、厚さ方向で気孔率が傾斜するように発泡制御した発泡樹脂シートまたは発泡ゴムシート、空隙の多さが異なる材料を貼り合わせたもの、などが挙げられる。また、特に基材の空隙は連続していることが好ましい。これは、溶融した熱融着層が連続した空隙に浸透していくことで、アンカー効果が増して接着強度が向上するためである。このような空隙が連続している態様としては、繊維の集合体である織布や不織布等の布体、連続気孔を有する発泡樹脂シートや発泡ゴムシートなどが考えられる。尚、非配設面は空隙を有していないものも考えられる。
【0033】
また、静電容量検知線10を基材11に配設する際、加熱加圧による融着によって接着・固定する態様でなく、他の態様により静電容量検知線10を基材11に固定しても良い。例えば、温風により熱融着材からなる外層被覆7を溶融させて接着・固定する態様、第一の電極線1と第二の電極線2の何れか一方または両方に通電してその発熱により熱融着材からなる外層被覆7を溶融させて接着・固定する態様、加熱しながら一対の基材11で挟持固定する態様など、種々の態様が考えられる。
【0034】
また、熱融着材を使用しない形態も考えられ、例えば、縫製によって静電容量検知線10を基材11上に配置することや、一対の基材11で静電容量検知線10を挟持固定することも考えられる。このような場合、図11に示すように外層被覆7を形成しないことが考えられる。
【0035】
また、面状の静電容量検知体31を座席に固定するための接着層については、基材11の伸縮性の点や、良質な風合いの保持という点からすると、離型シート等の上に接着剤のみからなる接着層を形成し、該接着層を上記離型シートから上記基材11表面に転写することによって接着層を形成することが好ましい。また、この接着層は、難燃性を有するものが好ましく、それ単独でFMVSS No.302自動車内装材料の燃焼試験に合格するような難燃性を有するものが好ましい。例えば、高分子アクリル系粘着剤などが挙げられる。接着層は基材の配設面に形成しても良いし非配設面に形成しても良い。
【0036】
上記実施の形態では、車両用座席内に静電容量検知体を配置して着座の検知を行うことを説明したが、他の形態も考えられる。例えば、車両のステアリングホイールにおける芯金と表皮の間に静電容量検知体を配置することで、運転手がステアリングホイールを把持しているかどうかを検知することができる。
【0037】
また、人体の接近によって第一の電極線1と第二の電極線2の間の静電容量地が変化するので、これを検出することにより、種々の形態の人感検知器として応用することができる。
【実施例】
【0038】
本発明によって得られる静電容量検知線を基材上に配設し、面状の静電容量検知体としたものについて、人体の検知が実際になされるかを検証する。
【0039】
(実施例1)
実施例1の静電容量検知線10は、図1に示す形態のものである。外径約0.2mmの芳香族ポリアミド繊維束からなる芯線3の外周に、素線径0.08mm、抵抗値2.5Ω/mの硬質錫入り銅合金線からなる第一の電極線1及び第二の電極線2を引き揃えて構成されたものがピッチ約1.0mmで螺旋状に巻装される。第一の電極線1及び第二の電極線2には、アルキドシリコーンワニス(アルキド:シリコーン=50:50)を塗布し乾燥して形成した絶縁被膜5が、厚さ約5μmで形成される。その外周に、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)からなる内層と、難燃剤が配合されたポリエチレン樹脂からなる外層の2層からなる外層被覆7が、内層0.16mm、外層0.2mmの厚さで押出被覆される。なお、この実施の形態において、外層被覆7の外層に用いられたポリエチレン樹脂は、熱融着材として機能する。静電容量検知線10はこのような構成になっていて、その仕上外径は1.1mmである。この静電容量検知線10は、図4に示すように、基材11上に接着・固定され、面状の静電容量検知体31とされる。基材11は、低融点ポリエステルを鞘成分とする芯鞘構造を有する熱融着性繊維10%と、難燃性ポリエステル繊維からなる難燃性繊維90%とを混合させた不織布(目付100g/m、厚さ0.6mm)で構成される。型抜きの手法によって所望の形状にされた基材11上に、上記実施の形態で示したように静電容量検知線10を配設し、ホットプレス式ヒータ製造装置によって230℃/5秒間の加熱加圧をして、静電容量検知線10を基材11上に接着・固定した。このようにして、図4に示すような実施例1による静電容量検知体31を得た。
【0040】
(実施例2)
上記実施例1と同様にして実施例2に係る静電容量検知体31を得た。実施例1と異なる点は、基材11上に静電容量検知線10を配設し、ミシンによる縫製によって、静電容量検知線10を基材11上に固定したことである。
【0041】
(実施例3)
上記実施例1と同様にして実施例2に係る静電容量検知体31を得た。実施例1と異なる点は、外層被覆7について、厚さ0.2mmのテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)からなる層のみとして仕上外径が0.7mmであることと、基材11上に静電容量検知線10を配設し、ミシンによる縫製によって、静電容量検知線10を基材11上に固定したことである。
【0042】
(実施例4)
上記実施例1と同様にして実施例2に係る静電容量検知体31を得た。実施例1と異なる点は、外層被覆7について、厚さ0.2mmの難燃剤が配合されたポリエチレン樹脂からなる層のみとして仕上外径が0.7mmであることと、基材11上に静電容量検知線10を配設し、ミシンによる縫製によって、静電容量検知線10を基材11上に固定したことである。
【0043】
(実施例5)
上記実施例1と同様にして実施例2に係る静電容量検知体31を得た。実施例1と異なる点は、外層被覆7について、厚さ0.2mmのポリエステル系熱可塑性エラストマーからなる層のみとして仕上外径が0.7mmであることと、基材11上に静電容量検知線10を配設し、ミシンによる縫製によって、静電容量検知線10を基材11上に固定したことである。
【0044】
上記のようにして得た実施例1〜5の静電容量検知体31について、一般的な車両用座席上に配置し、第一の電極線1と第二の電極線を市販のLCRメータに接続した。この状態の静電容量検知体31に、一般成人が手を載せ、静電容量の変化を測定した。また、併せて、手の替わりにポリエチレン容器に入れた重さ1kgの鉄製オモリを載せ、静電容量の変化を測定した。また、静電容量検知体31の上に直接手やオモリを載せるだけでなく、静電容量検知体31の上に布材(一般的な自動車用座席の表皮に使われるもので、厚さ6.0mm)または革材(一般的な自動車用座席の表皮に使われるもので、厚さ6.0mm)を配置し、その上に上記のような手やオモリを載せ、静電容量の変化を測定した。なお、静電容量の変化は、まず手またはオモリを乗せる前の静電容量値を測定して初期値とし、手またはオモリを載せた後の静電容量値を測定して、初期値からの変化率を算出した。これらの結果を表1にまとめる。
【0045】
【表1】
【0046】
表1に示すとおり、実施例1〜5何れの静電容量検知体においても、人体の接触について充分に検出可能であった。また、人体の接触と、人体以外の物体の接触について、充分に識別可能な値として検出された。
【産業上の利用可能性】
【0047】
以上詳述したように本発明によれば、2つの電極間の距離を一定状態で固定できることにより、誤動作を防止でき優れた検出感度を得ることが可能な静電容量検知線や静電容量検知体を提供することができる。この静電容量検知線や静電容量検知体は、上記した着座検知付きの座席の他、種々の用途に利用が可能である。例えば、自動車用ステアリングホイール内に配置することで、運転手の把持を検知する機能を付与することができる。また、人感検知器として、種々の工作機械や熱機器等の安全装置や、不使用時に電源を切る省エネ装置、入退室監視装置、盗難検知装置等に応用することも可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 第一の電極線
2 第二の電極線
3 芯材
5 絶縁被膜
7 外層被覆
10 静電容量検知線
11 基材
31 静電容量検知体
41 車両用座席
図1
図2
図3
図4
図5
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図11