(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エンジン、バッテリ、前記エンジンをクランキングさせるスタータおよび前記バッテリから供給される電力により動作する電気負荷を搭載した車両に用いられて、外部電源から供給される電力により前記スタータを作動させて、前記エンジンを始動させるジャンピングスタートが行われたことを判定する装置であって、
前記エンジンの始動時に前記エンジンの始動により前記バッテリの状態に応じて変化する変化値を取得する変化値取得手段と、
前記変化値取得手段によって取得された変化値を記憶する変化値記憶手段と、
前記バッテリの端子に流れる電流値を取得する電流値取得手段と、
前記変化値記憶手段に記憶されている前回の前記エンジンの始動時に取得された変化値と比較して今回の前記エンジンの始動時に取得された変化値が所定値以上増大したか否かの判定、および、前記エンジンの始動から所定時間が経過する前であって、前記車両が停止し続けており、前記電気負荷に含まれる所定の機器が動作していない状態において、前記電流値取得手段によって取得される電流値が所定量以上減少したか否かの判定を行い、前記変化値が所定値以上増大したと判定した場合、または、前記電流値が所定以上減少したと判定した場合に、今回の前記エンジンの始動がジャンピングスタートであると判定する判定手段とを含む、ジャンピングスタート判定装置。
【背景技術】
【0002】
近年、エンジンを駆動源とする車両には、燃費の向上などの目的で、IDS制御が採用されてきている。IDS制御を採用した車両では、たとえば、運転者のブレーキ操作により、車速が所定のIDS開始車速以下に低下すると、エンジンが自動的に停止(アイドリングストップ)される。その後、運転者がブレーキ操作を解除すると、エンジンが自動的に再始動され、アイドリングストップからの復帰(IDS復帰)となる。
【0003】
バッテリは、その使用に伴って劣化する。バッテリが劣化すると、バッテリの端子電圧(バッテリ電圧)が低下する。バッテリ電圧が低下している状態でIDS制御が実行されると、IDS復帰の際に、エンジンをクランキングさせるスタータに必要な電圧を印加することができず、エンジンを再始動できないおそれがある。そのため、IDS制御が採用された車両では、エンジンの始動時にバッテリの劣化判定が行われて、バッテリが劣化している場合には、IDS制御が禁止される。
【0004】
たとえば、外部電源(他の車両のバッテリなど)からスタータへの電力供給によりエンジンを始動させる、いわゆるジャンピングスタート(ジャンプスタート)が行われるのは、バッテリの劣化によりバッテリ電圧が低下している場合が多い。ジャンピングスタートの際には、通常、エンジンフードが開かれ、バッテリに外部電源がブースタケーブルで接続されて、スタートスイッチがオンされる。そのため、イグニッションキースイッチがオンの状態で、エンジンフードが一度でも開かれると、ジャンピングスタートが行われたと推定できるので、その後のトリップ中(イグニッションキースイッチがオフされるまでの間)は、IDS制御が禁止される。エンジンフードの開閉は、エンジンフードの開閉に応じてオン/オフするエンジンフードスイッチにより検出することができる。
【0005】
また、スタータの動作電力が大きいため、スタータの動作時には、バッテリ電圧が大きく低下する。バッテリの劣化が大きいほど、スタータの動作時に低下したバッテリ電圧の最低値が低い値になる。そのため、バッテリ電圧が所定値以下まで低下した場合、その後のトリップ中は、IDS制御が禁止される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、バッテリがエンジンフードで覆われる空間以外に配置されている場合、たとえば、バッテリが前席シートの直下や車両後部の荷室の下などに配置されている場合、エンジンフードが開かれたことを以て、ジャンピングスタートが行われたと推定することができず、IDS制御を禁止することができない。
【0008】
なお、ジャンピングスタートでは、外部電源がバッテリに接続されているので、クランキング時のバッテリ電圧が所定値以下に低下しないので、クランキング時のバッテリ電圧に基づいてIDS制御が禁止されることもない。
【0009】
本発明の目的は、バッテリがエンジンフードで覆われる空間以外に配置されていても、ジャンピングスタートが行われたことを判定できる、ジャンピングスタート判定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するため、本発明の一の局面に係るジャンピングスタート判定装置は、エンジン、バッテリおよびエンジンをクランキングさせるスタータを搭載した車両に用いられて、外部電源から供給される電力によりスタータを作動させて、エンジンを始動させるジャンピングスタートが行われたことを判定する装置であって、エンジンの始動時にエンジンの始動によりバッテリの状態に応じて変化する変化値を取得する変化値取得手段と、変化値取得手段によって取得された変化値を記憶する変化値記憶手段と、変化値記憶手段に記憶されている前回のエンジンの始動時に取得された変化値と今回のエンジンの始動時に取得された変化値との差分が所定値以上である場合に、今回のエンジンの始動がジャンピングスタートであると判定する判定手段とを含む。
【0011】
エンジンが始動される際には、スタータの動力により、エンジンがクランキングされる。たとえば、バッテリの端子電圧(バッテリ電圧)やクランキング中のエンジンの回転数は、バッテリの状態に応じて変化する。すなわち、バッテリ電圧が低いほど、スタータの始動に伴って低下したバッテリ電圧の最低値が低くなる。また、バッテリ電圧が低いほど、バッテリからスタータに印加される電圧(つまりバッテリ電圧)が低いため、スタータの回転数が低く、スタータの動力によりクランキングされるエンジンの回転数が低くなる。
【0012】
エンジンの始動時には、スタータの始動時のバッテリ電圧の最低値やクランキング中のエンジンの回転数など、エンジンの始動によりバッテリの状態に応じて変化する変化値が取得される。変化値は、エンジンの始動の度に毎回取得されて、変化値記憶手段に記憶される。変化値記憶手段には、前回のエンジンの始動時に取得された変化値が少なくとも記憶されている。変化値が新たに取得されると、その今回のエンジンの始動時に取得された変化値と前回のエンジンの始動時に取得された変化値との差分が所定値以上であるか否かが判定される。そして、変化値の差分が所定値以上である場合、今回のエンジンの始動がジャンピングスタートであると判定される。
【0013】
前回および今回ともに、バッテリ電圧でスタータが動作して、エンジンが始動した場合、前回のエンジンの始動時に取得された変化値と今回のエンジンの始動時に取得された変化値との差分(通常の差分)は小さい。
【0014】
前回は、バッテリ電圧が低いながらも、バッテリ電圧でスタータが動作して、エンジンが始動したが、今回は、バッテリ電圧が低すぎて、バッテリ電圧ではスタータが正常に動作せず、エンジンが始動しなかったために、ジャンピングスタートが行われるといった場合がある。ジャンピングスタートでは、外部電源がバッテリに並列に接続される。そのため、このときのバッテリの状態では、バッテリ電圧が外部電源の出力電圧と同電圧となり、今回のエンジンの始動時に取得される変化値は、外部電源の出力電圧に応じた値となる。その結果、今回のエンジンの始動時に取得される変化値は、前回のエンジンの始動時に取得された変化値から大きく変化し、それらの変化値の差分は、通常の差分よりも大きくなる。
【0015】
よって、今回のエンジンの始動時に取得された変化値と前回のエンジンの始動時に取得された変化値との差分が所定値以上である場合、ジャンピングスタートが行われたと判定することができる。これにより、バッテリがエンジンフードで覆われる空間以外に配置されていても、ジャンピングスタートが行われたか否かを精度よく判定することができる。
【0016】
本発明の他の局面に係るジャンピングスタート判定装置は、エンジン、バッテリ、エンジンをクランキングさせるスタータおよびバッテリから供給される電力により動作する電気負荷を搭載した車両に用いられて、外部電源から供給される電力によりスタータを作動させて、エンジンを始動させるジャンピングスタートが行われたことを判定する装置であって、バッテリの端子に流れる電流値を取得する電流値取得手段と、エンジンの始動から所定時間が経過する前であって、車両が停止し続けており、電気負荷に含まれる所定の機器が動作していない状態において、電流値取得手段によって取得される電流値が所定量以上変化した場合に、エンジンの始動がジャンピングスタートであると判定する判定手段とを含む。
【0017】
バッテリが劣化していない正常の状態では、車両が停止し続けており、電気負荷に含まれる所定の機器(たとえば、消費電力が比較的大きい機器)が動作していなければ、エンジンの始動から所定時間が経過するまでの間には、バッテリの端子電圧(バッテリ電圧)が大きく低下せず、車両に搭載されたオルタネータによるバッテリの充電は行われない。したがって、エンジンの始動から所定時間が経過するまでは、バッテリの端子に流れる電流値が大きく変化しない。
【0018】
これに対し、ジャンピングスタートが行われた場合、エンジンの始動後に、バッテリと外部電源との接続が解除される。バッテリに外部電源が接続されている状態では、バッテリが外部電源により充電されるので、バッテリの端子に比較的大きな充電電流が流れている。バッテリと外部電源との接続が解除されると、バッテリの端子に流れる充電電流がなくなるので、バッテリの端子に流れる電流値が減少する。
【0019】
よって、エンジンの始動から所定時間が経過する前であって、車両が停止し続けており、電気負荷に含まれる所定の機器が動作していない状態で、バッテリの端子に流れる電流値が減少した場合、ジャンピングスタートが行われたと判定することができる。これにより、バッテリがエンジンフードで覆われる空間以外に配置されていても、ジャンピングスタートが行われたか否かを精度よく判定することができる。
【0020】
ジャンピングスタート判定装置は、所定のIDS開始条件が成立したことに応じて、前記エンジンを停止させ、その停止中に所定のIDS復帰条件が成立したことに応じて、前記エンジンを再始動させるIDS制御を実行するIDS制御手段を備える車両用制御装置に、ジャンピングスタート判定手段として組み込まれてもよい。
【0021】
この場合、車両用制御装置は、IDS制御手段およびジャンピングスタート判定手段に加えて、ジャンピングスタート判定手段によりジャンピングスタートが行われたと判定された場合に、IDS制御手段によるIDS制御を禁止するIDS制御禁止手段をさらに備えることが好ましい。
【0022】
この構成によって、バッテリが劣化しているためにIDS復帰時にエンジンを再始動できない不具合が生じることを抑制できる。
【0023】
また、ジャンピングスタート判定装置は、バッテリのSOC(State Of Charge)が充電制御範囲の上限値以上である場合およびSOCが充電制御範囲の下限値以上かつ上限値未満であって車両が減速中でない場合に、エンジンの回転によって発電する発電機による発電が停止され、SOCが充電制御範囲の下限値以上かつ上限値未満であって車両が減速中である場合に、発電機による発電を行わせる充電制御を実行する充電制御手段を備える車両用制御装置に、ジャンピングスタート判定手段として組み込まれてもよい。
【0024】
この場合、車両用制御装置は、充電制御手段およびジャンピングスタート判定手段に加えて、ジャンピングスタート判定手段によりジャンピングスタートが行われたと判定された場合に、充電制御手段による充電制御を禁止する充電制御禁止手段をさらに備えることが好ましい。
【0025】
この構成によって、バッテリが劣化している場合に、充電制御の実行によってその劣化がさらに進行することを抑制できる。その結果、バッテリの寿命を延ばすことができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、バッテリがエンジンフードで覆われる空間以外に配置されていても、ジャンピングスタートが行われたか否かを精度よく判定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0029】
<電気的構成>
図1は、本発明の一実施形態に係るECU11が搭載された車両1の要部の電気的構成を示すブロック図である。
【0030】
車両1は、エンジン2を駆動源とする自動車である。エンジン2に付随して、エンジン2のクランキングのためのスタータ3と、エンジン2の回転によって発電するオルタネータ4とが設けられている。また、車両1には、バッテリ5が搭載されている。バッテリ5は、たとえば、公称電圧が12Vの鉛電池である。
【0031】
スタータ3には、エンジン2の始動時に、バッテリ5から電源ライン6を介して電圧が印加される。エンジン2のクランクシャフトには、フライホイールが保持されており、スタータ3に電圧が印加されると、スタータ3のプランジャが移動して、スタータ3のスタータギヤがエンジン2のフライホイールと噛合する。また、スタータ3に内蔵されたリレーがオンになり、バッテリ5からスタータ3に供給される電流が増大して、スタータ3からエンジン2に大きなトルクが入力され、そのトルクによりエンジン2がクランキングされる。エンジン2がクランキングされながら、エンジン2の点火プラグがスパークされることにより、エンジン2が始動する。
【0032】
また、バッテリ5の電圧は、車両1に搭載されているワイパモータ、ヘッドライト、エアコンディショナおよびオーディオ機器などの電気負荷7に印加される。
【0033】
オルタネータ(ALT)4は、ロータ、ステータおよびICレギュレータを備えている。ロータは、エンジン2のクランクシャフトの回転に伴って回転する。ロータには、フィールドコイル(ロータコイル)が設けられている。回転しているロータのフィールドコイルにICレギュレータからフィールド電流(励磁電流)が供給されることにより、ステータに設けられているステータコイルに電磁誘導による三相交流電流が流れる。三相交流電流は、整流器で直流電圧に整流される。オルタネータ4は、直流電力を発電電力として出力し、この発電電力が電源ライン6を介してバッテリ5に供給されることにより、バッテリ5が充電される。
【0034】
また、車両1には、たとえば、複数のECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)が備えられている。複数のECUには、次に述べるECU11が含まれる。各ECUは、同様のハード構成を有しており、CAN(Controller Area Network)通信プロトコルによる双方向通信が可能に接続されている。
【0035】
ECU11には、CPU12およびメモリ13(ROM、RAMなど)が備えられている。ECU11には、バッテリ5のマイナス端子に関連して設けられた電流センサ14が接続されている。電流センサ14には、バッテリ5のマイナス端子を流れる充電電流とバッテリ5のマイナス端子を流れる放電電流とを区別して検出可能なものが採用されている。また、ECU11には、バッテリ5の端子電圧(バッテリ電圧)が入力される。さらに、ECU11には、図示されていないが、アクセルペダルの操作量に応じた検出信号を出力するアクセルセンサ、エンジン2のクランクシャフトの回転に同期したパルス信号を検出信号として出力するエンジン回転数センサ、エンジン2の電子スロットルバルブの開度(スロットル開度)に応じた検出信号を出力するスロットル開度センサなどの各種センサが接続されている。
【0036】
ECU11は、各種センサの検出信号から取得した情報および/または他のECUから入力される種々の情報などに基づいて、エンジン2の始動、停止および出力調整などのため、エンジン2の電子スロットルバルブ、インジェクタおよび点火プラグ、ならびにスタータ3などを制御する。また、ECU11は、バッテリ5の充電残量であるバッテリ残量を算出し、バッテリ残量に基づいて、オルタネータ4による発電を制御する。また、ECU11により、バッテリ残量が算出されると、その算出されたバッテリ残量がメモリ13に更新して記憶される。
【0037】
車両1では、ECU11により、IDS制御(アイドリングストップ制御)および充電制御(充放電制御)が実行可能である。
【0038】
<IDS制御>
IDS制御は、エンジン2のアイドリングを抑制することにより燃費の向上を図る技術である。IDS制御では、車両1の走行中に、ブレーキペダルが操作される(踏まれている)と、所定のIDS開始条件が成立しているか否かが判定される。IDS開始条件は、たとえば、車速が所定のアイドリングストップ実施車速(たとえば、10km/h)以下であり、かつ、ブレーキペダルが一定時間以上操作されているという条件である。ブレーキペダルが操作されている間、IDS開始条件が成立しているか否かが一定の周期で判定される。そして、IDS開始条件が成立すると、エンジン2が停止(アイドリングストップ)される。アイドリングストップの開始後は、所定のIDS復帰条件が成立しているか否かが一定の周期で判定される。IDS復帰条件は、たとえば、アイドリングストップ中にブレーキペダルの操作が解除される(ブレーキペダルから運転者の足が離される)という条件である。IDS復帰条件が成立すると、スタータ3が作動されて、エンジン2が再始動される。
【0039】
<充電制御>
充電制御は、オルタネータ4による発電を抑制することにより燃費の向上を図る技術である。充電制御では、バッテリ5の充電容量(満充電量)に対するメモリ13に記憶されているバッテリ残量の比率であるSOC(State Of Charge)が算出される。そして、SOCが充電制御範囲の上限値以上である場合、オルタネータ4による発電が停止される。SOCが充電制御範囲の下限値以上であって上限値未満である場合、車両1が減速中であるか否かが判定され、その判定結果に応じてオルタネータ4の発電が制御される。すなわち、車両1が減速中でない場合には、オルタネータ4による発電が停止され、車両1が減速中である場合には、オルタネータ4による発電が行われる。
【0040】
<ジャンピングスタート判定処理>
図2は、ジャンピングスタート判定処理の流れを示すフローチャートである。
【0041】
車両1では、エンジン2が始動(IDS制御による再始動を含む。)される度に、ECU11により、ジャンピングスタート判定処理が実行される。
【0042】
ジャンピングスタート判定処理では、まず、メモリ13のRAMに設けられているジャンピングスタート判定フラグが0にリセットされているか否かが判定される(ステップS11)。ジャンピングスタート判定フラグは、イグニッションオン(スタートスイッチオン)時に0にリセットされ、1がセットされると、イグニッションオンの間(トリップ中)は0にリセットされない。
【0043】
ジャンピングスタート判定フラグに1がセットされている場合(ステップS11のNO)、以下に説明するステップS12〜S16は実行されず、ジャンピングスタート判定処理が終了される。
【0044】
ジャンピングスタート判定フラグが0にリセットされている場合(ステップS11のYES)、前回のエンジン2の始動時に取得したバッテリ電圧の最低値と今回のエンジン2の始動時に取得したバッテリ電圧の最低値との差分(以下、単に「バッテリ電圧の最低値の差分」という。)が求められて、その差分が所定の第1判定値以上であるか否かが判定される(ステップS12)。
【0045】
エンジン2の始動時に、バッテリ5からスタータ3に電圧が印加されて、スタータ3に内蔵されたリレーがオンになり、バッテリ5からスタータ3に供給される電流が増大すると、その瞬間にバッテリ電圧が大きく低下する。エンジン2が始動される度に毎回、ECU11により、その始動の際に低下したバッテリ電圧の最低値が取得される。そして、その取得されたバッテリ電圧の最低値がメモリ13のRAMに記憶される。
【0046】
バッテリ電圧の最低値の差分が第1判定値未満である場合(ステップS12のNO)、電流センサ14の検出信号から取得される電流値の変化量が所定の第2判定値以上であるか否かが判定される(ステップS13)。
【0047】
具体的には、エンジン2が始動される度に毎回、エンジン2の始動から所定時間が経過するまでの間、電流センサ14の検出信号から電流値が繰り返し取得されて、所定時間内における電流値の変化量が求められる。そして、その所定時間内に、車両1が停止し続けており、かつ、電気負荷7に含まれる所定の機器、たとえば、ヘッドライトやエアコンディショナなどの消費電力が比較的大きい機器が作動していない場合、電流値の変化量が所定の第2判定値以上であるか否かが判定される。
【0048】
電流値の変化量が第2判定値未満である場合(ステップS13のNO)、前回のエンジン2の始動時に取得したクランキング回転数と今回のエンジン2の始動時に取得したクランキング回数との差分(以下、単に「クランキング回転数の差分」という。)が求められて、その差分が所定の第3判定値以上であるか否かが判定される(ステップS14)。
【0049】
エンジン2が始動される度に毎回、ECU11により、クランキング時のエンジン2の回転数(クランキング回転数)が取得される。そして、その取得されたバッテリ電圧の最低値がメモリ13のRAMに記憶される。
【0050】
クランキング回転数の差分が第3判定値未満である場合(ステップS14のNO)、ジャンピングスタート判定処理が終了される。
【0051】
バッテリ電圧の最低値の差分が第1判定値以上である場合(ステップS12のYES)、電流値の変化量が第2判定値以上である場合(ステップS13のYES)、または、クランキング回転数の差分が第3判定値以上である場合には(ステップS14のYES)、ジャンピングスタート判定フラグに1がセットされて(ステップS15)、ジャンピングスタート判定処理が終了される。
【0052】
エンジン2が始動される際には、スタータ3の動力により、エンジン2がクランキングされる。バッテリ電圧やクランキング回転数は、バッテリ5の状態に応じて変化する。すなわち、バッテリ電圧が低いほど、スタータ3の始動に伴って低下したバッテリ電圧の最低値が低くなる。また、バッテリ電圧が低いほど、バッテリ5からスタータ3に印加される電圧(つまりバッテリ電圧)が低いため、スタータ3の回転数が低く、スタータ3の動力によりクランキングされるエンジン2の回転数が低くなる。
【0053】
前回および今回ともに、バッテリ電圧でスタータ3が動作して、エンジン2が始動した場合、バッテリ電圧の最低値の差分(通常の差分)は小さい。
【0054】
前回は、バッテリ電圧が低いながらも、バッテリ電圧でスタータ3が動作して、エンジン2が始動したが、今回は、バッテリ電圧が低すぎて、バッテリ電圧ではスタータ3が正常に動作せず、エンジン2が始動しなかったために、ジャンピングスタートが行われるといった場合がある。ジャンピングスタートでは、外部電源がバッテリ5に並列に接続される。そのため、この外部電源が並列に接続されたバッテリ5の状態では、バッテリ電圧が外部電源の出力電圧と同電圧となり、今回のエンジン2の始動時に取得されるバッテリ電圧の最低値は、外部電源の出力電圧に応じた値となる。その結果、今回のエンジン2の始動時に取得されるバッテリ電圧の最低値は、前回のエンジン2の始動時に取得されたバッテリ電圧の最低値から大きく変化し、バッテリ電圧の最低値の差分は、通常の差分よりも大きくなる。
【0055】
よって、バッテリ電圧の最低値の差分が第1判定値以上である場合(ステップS12のYES)、ジャンピングスタートが行われたと判定することができる。この場合、ジャンピングスタートが行われたことを表すジャンピングスタート判定フラグに1がセットされる(ステップS15)。
【0056】
また、前回および今回ともに、バッテリ電圧でスタータ3が動作して、エンジン2が始動した場合、クランキング回転数の差分(通常の差分)は小さい。
【0057】
前回は、バッテリ電圧が低いながらも、バッテリ電圧でスタータ3が動作して、エンジン2が始動したが、今回は、バッテリ電圧が低すぎて、バッテリ電圧ではスタータ3が正常に動作せず、エンジン2が始動しなかったために、ジャンピングスタートが行われるといった場合がある。ジャンピングスタートでは、外部電源がバッテリ5に並列に接続される。そのため、この外部電源が並列に接続されたバッテリ5の状態では、バッテリ電圧が外部電源の出力電圧と同電圧となり、今回のエンジン2の始動時に取得されるクランキング回転数は、外部電源の出力電圧に応じた値となる(前回のエンジン2の始動時よりも増大する)。その結果、今回のエンジン2の始動時に取得されるクランキング回転数は、前回のエンジン2の始動時に取得されたクランキング回転数から大きく変化し、クランキング回転数の差分は、通常の差分よりも大きくなる。
【0058】
よって、クランキング回転数の差分が第3判定値以上である場合(ステップS14のYES)、ジャンピングスタートが行われたと判定することができる。この場合、ジャンピングスタート判定フラグに1がセットされる(ステップS15)。
【0059】
さらに、バッテリ5が劣化していない正常の状態では、車両1が停止し続けており、電気負荷7に含まれる所定の機器が動作していなければ、エンジン2の始動から所定時間が経過するまでの間には、バッテリ5の端子電圧(バッテリ電圧)が大きく低下せず、車両に搭載されたオルタネータによるバッテリ5の充電は行われない。したがって、エンジン2の始動から所定時間が経過するまでは、バッテリ5の端子に流れる電流値が大きく変化しない。
【0060】
これに対し、ジャンピングスタートが行われた場合、エンジン2の始動後に、バッテリ5と外部電源との接続が解除される。バッテリ5に外部電源が接続されている状態では、バッテリ5が外部電源により充電されるので、バッテリ5の端子に比較的大きな充電電流が流れている。バッテリ5と外部電源との接続が解除されると、バッテリ5の端子に流れる充電電流がなくなるので、バッテリ5の端子に流れる電流値が減少する。
【0061】
よって、エンジン2の始動から所定時間が経過する前であって、車両が停止し続けており、電気負荷7が動作していない状態で、バッテリ5の端子に流れる電流値が第2判定値以上変化した場合(ステップS13のYES)、ジャンピングスタートが行われたと判定することができる。この場合、ジャンピングスタート判定フラグに1がセットされる(ステップS15)。
【0062】
ジャンピングスタート判定フラグに1がセットされている状態では、前述のIDS制御および充電制御が禁止される。
【0063】
<作用効果>
以上のように、ジャンピングスタート判定処理では、バッテリ5がエンジンフードで覆われる空間以外に配置されていても、ジャンピングスタートが行われたか否かを精度よく判定することができる。
【0064】
そして、ジャンピングスタートが行われた場合には、ジャンピングスタート判定フラグに1がセットされて、IDS制御および充電制御が禁止される。これにより、バッテリ5が劣化しているためにIDS復帰時にエンジン2を再始動できない不具合が生じることを抑制できる。また、充電制御の実行によってバッテリ5の劣化が進行することを抑制でき、バッテリ5の寿命を延ばすことができる。
【0065】
<変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することも可能である。
【0066】
たとえば、ECU11により、押し込み充電が実行可能である場合、ジャンピングスタート判定フラグに1がセットされている状態では、押し込み充電が禁止されてもよい。押し込み充電は、バッテリ5の寿命を延ばすための技術である。押し込み充電は、バッテリ5が満充電状態まで充電された後に実行される。バッテリ5が満充電状態まで充電されたか否かの判定のため、オルタネータ4による発電中に、電流センサ14の検出信号に基づいて、バッテリ5の充電電流の電流値が取得される。そして、その充電電流の電流値が所定の満充電判定閾値まで低下すると、バッテリ5が満充電状態であると判定される。そして、バッテリ5が満充電状態まで充電されると、押し込み充電が実行されて、所定の押し込み時間が経過するまで、一定の充電電流でのバッテリ5の充電が継続される。
【0067】
また、IDS制御では、ECU11とは別のECU、たとえば、IDS制御のためのIDSECUにより、IDS開始条件が成立しているか否かの判定がなされてもよい。この場合、IDS開始条件が成立してことに応じて、IDSECUからECU11にエンジン停止要求が送信され、このエンジン停止要求を受けて、ECU11により、エンジン2が停止される。また、IDSECUにより、IDS復帰条件が成立しているか否かの判定がなされる。そして、IDS復帰条件が成立すると、IDSECUからECU11にエンジン再始動要求が送信され、このエンジン再始動要求を受けて、ECU11により、エンジン2が再始動される。
【0068】
その他、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。