(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1部材と第2部材の間の位置決めに際して、前記第1部材と前記第2部材の接近方向と垂直な面内における相互位置を位置決めするための部材間の位置決めシステムであって、
前記第1部材側に固定される第1位置決め部材と、前記第2部材側に固定される第2位置決め部材とからなり、
前記第1位置決め部材は第1係合部を備えており、
前記第2位置決め部材は、前記第1係合部に係合する第2係合部を備えると共に、前記第1部材と前記第2部材の接近方向に関して、前記第2係合部の後側に弾性支持体と伸縮支持体とを備え、
前記伸縮支持体を複動タイプの油圧シリンダで構成し、ピストンの加圧面の前後の油圧室を油圧ラインで接続すると共に、該油圧ラインにバルブを設けていることを特徴とする部材間の位置決めシステム。
前記第1係合部が凸形状をした雄型で、前記第2係合部が凹形状をした雌型であるか、あるいは、前記第1係合部が凹形状をした雌型で、前記第2係合部が凸形状をした雄型であることを特徴とする請求項1に記載の部材間の位置決め機構。
前記第1部材が、水中若しくは水上に係留されている係留構造物、水底に立設している水中構造物、水底に立設して水上に出ている部分を有する水上構造物、地上に立設している陸上構造物のいずれかであることを特徴とする請求項7に記載の部材の接合方法。
第1部材と第2部材の間の位置決めに際して、前記第1部材と前記第2部材の接近方向と垂直な面内における相互位置を位置決めするための部材間の位置決めシステムであって、
前記第1部材側に固定される第1位置決め部材と、前記第2部材側に固定される第2位置決め部材とからなり、
前記第1位置決め部材は第1係合部を備えており、
前記第2位置決め部材は、前記第1係合部に係合する第2係合部を備えると共に、前記第1部材と前記第2部材の接近方向に関して、前記第2係合部の後側に弾性支持体と伸縮支持体とを備えていることを特徴とする部材間の位置決めシステムを備えていることを特徴とする部材の接合システムを単数または複数用いて接合作業を行うことを特徴とする部材の接合方法であって、
前記第2部材が風車を備えた上部構造物であることを特徴とする部材の接合方法。
洋上構造物を下部構造物と上部構造物に分割して、一部又は全部を水中に直立状態に維持した前記下部構造物の上方部位に、運搬船に設けた一対の腕状部材を持つフォーク状構造物に保持した状態で前記上部構造物を移動し、前記運搬船を沈降させることにより、前記上部構造物を下降させて、前記下部構造物の上側に載置する洋上構造物の接合方法において、
第1部材と第2部材の間の位置決めに際して、前記第1部材と前記第2部材の接近方向と垂直な面内における相互位置を位置決めするための部材間の位置決めシステムであって、
前記第1部材側に固定される第1位置決め部材と、前記第2部材側に固定される第2位置決め部材とからなり、
前記第1位置決め部材は第1係合部を備えており、
前記第2位置決め部材は、前記第1係合部に係合する第2係合部を備えると共に、前記第1部材と前記第2部材の接近方向に関して、前記第2係合部の後側に弾性支持体と伸縮支持体とを備えていることを特徴とする部材間の位置決めシステムを備えていることを特徴とする部材の接合システムを単数または複数用いて接合作業を行うことを特徴とする部材の接合方法を使用し、前記下部構造物を前記第1部材とし、前記上部構造物を前記第2部材とすることを特徴とする洋上構造物の接合方法。
前記下部構造物と前記上部構造物の接合作業中に、前記伸縮支持体を伸縮させることにより、接合時の風車及びナセルを支持する軸の位置と前記運搬船の位置の距離を調整することを特徴とする請求項10に記載の洋上構造物の接合方法。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような上部構造物と下部構造物を接合する際には、上部構造物と下部構造物との間の相対位置に関しての位置決めが重要になるが、特に、洋上接合においては、上部構造物は、クレーン船のクレーンで吊られた状態や、運搬船の一対の腕状部材を持つフォーク状構造物に搭載された状態等にあり、これらのクレーン船や運搬船は波浪によって搖動している。そのため、上部構造物と下部構造物の相互間の位置決めが難しく、特に、上部構造物と下部構造物を上下方向から接近させて接合する場合には、接近方向及びこの接近方向に垂直な面内における上部構造物と下部構造物との相対距離が、波浪などの外乱により大きくなったり小さくなったりして変動するため、位置決め用部材に大きな衝撃荷重や荷重変動が加わって位置決め用部材が破損する可能性があるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記の状況を鑑みてなされたものであり、その目的は、接近方向とこの接近方向に垂直な面内における位置決めを容易に行うことができ、しかも、接近方向の相対距離の変動と衝撃荷重を弾性支持体によって効果的に吸収しながら位置決めができ、位置決め後には弾性支持体に加わっている押圧力を開放できる部材間の位置決めシステム、部材間の位置決め方法、部材の接合システム、部材の接合方法を提供することにある。
【0007】
また、本発明のさらなる目的は、大型クレーン船を用いることなく、洋上で、風力発電装置のナセル等の装置及び設備を備えた上部構造物を下部構造物の上に載置して接合及び組み立てができ、また、大規模メンテナンスが必要になったときには、これらの装置及び設備を容易に取り外して陸地に運んでメンテナンス作業を簡便に行うことができる、洋上構造物の接合方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための本発明の部材間の位置決めシステムは、第1部材と第2部材の間の位置決めに際して、前記第1部材と前記第2部材の接近方向と垂直な面内における相互位置を位置決めするための部材間の位置決めシステムであって、前記第1部材側に固定される第1位置決め部材と、前記第2部材側に固定される第2位置決め部材とからなり、前記第1位置決め部材は第1係合部を備えており、前記第2位置決め部材は、前記第1係合部に係合する第2係合部を備えると共に、前記第1部材と前記第2部材の接近方向に関して、前記第2係合部の後側に弾性支持体と伸縮支持体とを備え
、前記伸縮支持体を複動タイプの油圧シリンダで構成し、ピストンの加圧面の前後の油圧室を油圧ラインで接続すると共に、該油圧ラインにバルブを設けていることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、第1係合部とこの第1係合部と係合可能な第2係合部とにより、接近方向と垂直な面における位置決めを容易に行うことができる。また、接近方向に関して第2係合部を支持している弾性支持体と伸縮支持体の両方で、接近方向の衝撃荷重と荷重変動及び相対距離の変化をより効率的に吸収でき、第1位置決め部材と第2位置決め部材の破損を防止できる。
また、弾性支持体に加わっている押圧力の解除の度合いをバルブの開閉や弁開度で調整できるようになる。
【0010】
さらに、適宜伸縮支持体を収縮させて弾性支持体が配置されている空間領域を大きして弾性支持体を開放することにより、位置決め後に弾性支持体への押圧力及び弾性変形を解除できる。また、位置決め作業後の第1部材と第2部材とが接合している状態で弾性支持体に荷重が加わっていない状態にできるので、この弾性支持体を繰り返し使用することが可能となる。
【0011】
また、上記の部材間の位置決めシステムにおいて、前記第1係合部が凸形状をした雄型で、前記第2係合部が凹形状をした雌型であるか、あるいは、前記第1係合部が凹形状をした雌型で、前記第2係合部が凸形状をした雄型である。この凸形状をした雄型としては、先端がテーパー形状の円錐又は円錐台となっているピンで形成したり、これに係合する凹形状をした雌型をテーパー形状の穴で形成したりする。これらの雄型、雌型としては多くの形状を採用できるが、前記凸形状をした雄型が円錐形状、角錐形状、円錐台形状、角錐台形状のうちのいずれかの形状を有していると、接近方向に垂直な面内における位置ずれおよび衝撃荷重を吸収できる構造になる上に、工作性がよくなるので製造し易くなる。
【0012】
また、上記の部材間の位置決めシステムにおいて、前記第1位置決め部材が前記
第1部材に着脱可能に、又は、前記第2位置決め部材が前記
第2部材に着脱可能に、又は、前記第1位置決め部材と前記第2位置決め部材のそれぞれが前記
第1部材と前記
第2部材のそれぞれに着脱可能に設けている構成にすると、これらの第1位置決め部材と第2位置決め部材の一方又は両方を、繰り返し、別の第1部材と第2部材の位置決めに使用することができるようになり、コストパフォーマンスが向上する。
【0014】
そして、上記の目的を達成するための本発明の部材の接合システムは、上記の部材間の位置決めシステムを備えていることを特徴とする。これにより、上記の部材間の位置決めシステムと同様な効果を発揮できる。
【0015】
また、上記の目的を達成するための本発明の部材間の位置決め方法は、上記の部材間の位置決めシステムを用いて位置決め作業を行うことを特徴とする。これにより、上記の部材間の位置決めシステムと同様な効果を発揮できる。
【0016】
また、上記の目的を達成するための本発明の部材の接合方法は、上記の部材の接合システムを単数または複数用いて接合作業を行うことを特徴とする。これにより、上記の部材の接合システムと同様な効果を発揮できる。
【0017】
上記の部材の接合方法において、前記第1部材が、水中若しくは水上に係留されている係留構造物、水底に立設している水中構造物、水底に立設して水上に出ている部分を有する水上構造物、地上に立設している陸上構造物のいずれかであると
、前記第2部材が風車を備えた上部構造物であると、この部材の接合方法による効果はより大きくなる。
また、本発明が第1部材と第2部材の間の位置決めに際して、前記第1部材と前記第2部材の接近方向と垂直な面内における相互位置を位置決めするための部材間の位置決めシステムであって、前記第1部材側に固定される第1位置決め部材と、前記第2部材側に固定される第2位置決め部材とからなり、前記第1位置決め部材は第1係合部を備えており、前記第2位置決め部材は、前記第1係合部に係合する第2係合部を備えると共に、前記第1部材と前記第2部材の接近方向に関して、前記第2係合部の後側に弾性支持体と伸縮支持体とを備えていることを特徴とする部材間の位置決めシステムを備えていることを特徴とする部材の接合システムを単数または複数用いて接合作業を行うことを特徴とする部材の接合方法であって、前記第2部材が風車を備えた上部構造物であると、この部材の接合方法による効果はより大きくなる。
【0018】
そして、上記の目的を達成するための洋上構造物の接合方法は、洋上構造物を下部構造物と上部構造物に分割して、一部又は全部を水中に直立状態に維持した前記下部構造物の上方部位に、運搬船に設けた一対の腕状部材を持つフォーク状構造物に保持した状態で前記上部構造物を移動し、前記運搬船を沈降させることにより、前記上部構造物を下降させて、前記下部構造物の上側に載置する洋上構造物の接合方法において、
第1部材と第2部材の間の位置決めに際して、前記第1部材と前記第2部材の接近方向と垂直な面内における相互位置を位置決めするための部材間の位置決めシステムであって、前記第1部材側に固定される第1位置決め部材と、前記第2部材側に固定される第2位置決め部材とからなり、前記第1位置決め部材は第1係合部を備えており、前記第2位置決め部材は、前記第1係合部に係合する第2係合部を備えると共に、前記第1部材と前記第2部材の接近方向に関して、前記第2係合部の後側に弾性支持体と伸縮支持体とを備えていることを特徴とする部材間の位置決めシステムを備えていることを特徴とする部材の接合システムを単数または複数用いて接合作業を行うことを特徴とする部材の接合方法を使用し、前記下部構造物を前記第1部材とし、前記上部構造物を前記第2部材とすることを特徴とする方法である。
【0019】
この方法によれば、上記の部材の接合方法を使用して、接合作業時に運搬船をバラスト調整により沈降させることにより、上部構造物の荷重をスムーズに、運搬船から下部構造物に移動させることができ、しかも、上記の部材の接合システムを使用することで、上下方向(接近方向)と水平方向(接近方向に垂直な面内)の衝撃荷重を吸収しながら位置決めすることができるので、作業時間及び接合のためのコストを低減することができる。また、設置と逆の手順を行うことにより、容易に上部構造物を下部構造物から取り外すことができるので、上部構造物を陸上に運搬して、陸上で大規模メンテナンスを行うことが容易にできるようになる。
【0020】
上記の洋上構造物の接合方法において、前記下部構造物と前記上部構造物の接合作業中に、前記伸縮支持体を伸縮させることにより、接合時の風車及びナセルを支持する軸の位置と前記運搬船の位置の距離を調整すると、この方法により、運搬船の一対の腕状部材の高さを調整することよりも短時間且つ容易に伸縮支持体を伸縮させることができる。
【発明の効果】
【0021】
以上に説明したように、本発明の接合部材の位置決めシステム、接合部材の位置決め方法、接合部材の接合システム、接合部材の接合方法によれば、接近方向とこの接近方向に垂直な面内における位置決めを容易に行うことができ、しかも、接近方向の相対距離の変動と衝撃荷重を弾性支持体によって効果的に吸収しながら位置決めができ、位置決め後には弾性支持体に加わっている押圧力を開放できる。
【0022】
また、本発明の洋上構造物の接合方法によれば、大型クレーン船を用いることなく、洋上で、風力発電装置のナセル等の装置及び設備を備えた上部構造物を下部構造物の上に載置して接合及び組み立てができ、また、大規模メンテナンスが必要になったときには、これらの装置及び設備を容易に取り外して陸地に運んでメンテナンス作業を簡便に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る実施の形態の部材間の位置決めシステム、部材間の位置決め方法、部材の接合システム、部材の接合方法、及び、洋上構造物の接合方法について説明する。この実施の形態における洋上構造物の接合方法についての説明では、洋上構造物として、風力で得られる揚力を利用するプロペラ型の水平軸型風車を水面上部分に配置している洋上風力発電用の洋上構造物を例にしている。しかし、本発明は、必ずしも、洋上構造物は風力発電用の洋上構造物に限定する必要は無く、その他の洋上で上部構造物と下部構造物を一体化する洋上構造物に適用できる。
【0025】
なお、図面は説明用の図面であり、必ずしも、各図の間で構成や形状や寸法が整合しているとは限らない。また、ここでは、第1位置決め部材を第1部材側に、第2位置決め部材を第2部材側に固定する例で説明しているが、逆の第1位置決め部材を第2部材側に、第2位置決め部材を第1部材側に固定してもよい。
【0026】
最初に、本発明に係る実施の形態の部材間の位置決めシステム及び部材間の位置決め方法について説明する。なお、この本発明に係る実施の形態の部材間の位置決め方法は、この本発明に係る実施の形態の部材間の位置決めシステム1を用いて位置決め作業を行う位置決め方法である。
【0027】
図1に示すように、この部材間の位置決めシステム1は、第1部材10と第2部材20の位置決めに際して、第1部材10と第2部材20の接近方向Aと垂直な面内における相互位置を位置決めするための部材間の位置決めシステムである。この接近方向Aとは、位置決め及び接合する前の離間状態の第1部材10と第2部材20を位置決め及び接合のために接近させていく方向のことである。
【0028】
この部材間の位置決めシステム1は、
図1の下側の第1部材10側に固定される第1位置決め部材30と、
図1の上側の第2部材20側に固定される第2位置決め部材40とを有して構成される。この第1位置決め部材30は第1係合部31を備えており、また、第2位置決め部材40は、第1係合部31に係合する第2係合部41を備えている。それと共に、第1部材10と第2部材20の接近方向Aに関して、第2係合部41の後側に弾性支持体42と伸縮支持体43とを備えている。これらの第2係合部41と弾性支持体42と伸縮支持体43は、筒状カバー体44の内部に配置されて保持されている。
【0029】
この構成により、第1係合部31と第2係合部41を係合させることで接近方向Aに垂直な面内における位置決めを行い、弾性支持体42の弾性変化と伸縮支持体43の伸縮により接合作業時における接近方向Aの第1部材10と第2部材20の相互距離Lの変動及びこの変動に起因する衝撃荷重及び荷重変動を吸収する。
【0030】
より詳細には、第1係合部31は凸形状をした雄型で、第2係合部41が凹形状をした雌型で形成されている。あるいは、逆に、第1係合部31が凹形状をした雌型で、第2係合部41が凸形状をした雄型で形成される。この凸形状をした雄型としては、例えば、円錐形状、角錐形状、円錐台形状、角錐台形状のうちのいずれかの形状を採用することが好ましく、この形状にすると接近方向Aに垂直な面内における位置ずれ及び衝撃荷重を吸収できる構造になる上に、工作性がよく製造し易くなる。しかしながら、雄型と雌型の形状は、これらの形状に限定する必要は無く、その他の形状であってもよく、互いに係合したときに、接近方向Aに垂直な面内での平面的な動きが制限されて固定される形状であればよい。
【0031】
この実施の形態の示す図面では、第1係合部31をピン形状とし、この先端の凸形状をした雄型を一つの円錐台31aで形成し、第2係合部41は、第1係合部31のピン形状に係合するテーパー穴で形成している。しかしながら、必ずしも、テーパー穴である必要はなく、傾斜面を有するガイド板を周囲に接近方向に沿って配置して第1係合部41を傾斜面で囲いこむようなガイド構造であってもよい。第1係合部31も第2係合部41も、例えば、円錐台とテーパー穴を互いに並列で有しているような、互いに係合する凹凸形状で形成されていてもよい。要するに、第1位置決め部材30と第2位置決め部材40における接近方向Aの相対距離Lが小さくなるにつれて、接近方向Aに垂直な面内の移動が制限されて、第1係合部31と第2係合部41の係合が完了したときに、第1係合部31が第2係合部41に対して接近方向Aに垂直な面内で位置決めされている結果となるような構成であればよい。
【0032】
図1に示すように 第1位置決め部材30は、取り付け部材32と第1部材10の固定部材11とを締結ボルト33で締結することにより、第1部材10に固定される。この第1位置決め部材30は、締結ボルト33を外すことにより、容易に、第1部材10から取り外しできる。つまり、第1位置決め部材30は、第1部材10に着脱可能に固定される。
【0033】
また、第2位置決め部材40は、取り付け部材45と第2部材20の固定部材21とを締結ボルト46で締結することにより、第2部材20に固定される。この第2位置決め部材40は、締結ボルト46を外すことにより、容易に、第2部材20から取り外しできる。つまり、第2位置決め部材40は、第2部材20に着脱可能に固定される。
【0034】
また、弾性支持体42は、防舷材などで使用されるゴム部材やゴムと金属を積層した耐震用の弾性体等を使用することができる。この弾性支持体42は衝撃緩衝部材の機能を有して、第1部材10と第2部材20との相対距離Lの変動による第1係合部31と第2係合部41との間の衝撃荷重と荷重変動を一次的に負担及び吸収する必要があるので、衝撃荷重に強く、ある程度の量の弾性変形をする材料で構成する。
【0035】
一方、伸縮支持体43には油圧シリンダや空気シリンダ等の流体シリンダを用いることができる。流体シリンダに加わる荷重が小さい場合には、衝撃荷重を吸収し易い空気シリンダでもよい。また、衝撃荷重が比較的小さく、また、第2位置決め部材40を小さく軽量にする必要がある場合には、弾性支持体42と伸縮支持体43の代わりに空気シリンダを設けて、この空気シリンダに弾性支持体42の機能と伸縮支持体43の機能を発揮させてもよい。
【0036】
一方、荷重が大きい場合には、耐荷重が大きく、かつ、大きな力を出せる油圧シリンダを使用する。さらに、伸縮支持体43をピストンの加圧面の両面に油圧を加えることのできる複動タイプの油圧シリンダで構成し、ピストンの加圧面の前後の油圧室を油圧ライン(図示しない)で接続すると共に、この油圧ラインに開閉弁(図示しない)を設けて構成すると、この開閉弁の開閉でピストンの移動速度をきめ細かく制御できるので、弾性支持体42に加わる荷重を調整しながら解放することができるようになる。
【0037】
なお、第2係合部41と弾性支持体42と伸縮支持体43の順序に関しては、位置決め作業時における衝撃荷重や荷重変動は、第2係合部41に加わるので、衝撃力を吸収する弾性支持体42は第2係合部41の直後に配置し、弾性支持体42の弾性変形の量を調整する伸縮支持体43は弾性支持体42の後側に配置する構成にして、伸縮支持体43に衝撃力が加わるのを回避することが好ましい。
【0038】
そして、第1部材10と第2部材20は、第1位置決め部材30の第1係合部31と第2位置決め部材40の第2係合部41が係合した状態で、接近方向Aに垂直な面内における位置決めがなされ、第1部材10を第2部材20に向かって接近方向Aに移動し、第1部材10の接合部材12の接合穴13とは、第2部材20の接合部材22の接合穴23とが一致する位置まで移動させる。この接合穴13と接合穴23の一致後に、締結ボルト(図示しない)を挿入して締結ナット(図示しない)で固定する。
【0039】
この接合部材の位置決めシステム1は、第1部材10と第2部材20のそれぞれに第1位置決め部材30と第2位置決め部材40を設置して行われるが、この第1位置決め部材30と第2位置決め部材40のセット(組み合わせ)を1組とした場合は、第1部材10と第2部材20の接近方向Aに垂直な面内の位置決めを行うことができるが、第1位置決め部材30と第2位置決め部材40を旋回中心とする、第1部材10と第2部材20の旋回方向の位置決めはできないので、この旋回方向の位置決めも行うときは、2つ以上(複数)の組のセット。好ましくは2〜4組のセットを用いることになる。
【0040】
次に、本発明に係る実施の形態の部材の接合システム及び部材の接合方法について説明すると、本発明に係る実施の形態の部材の接合システムは、この部材間の位置決めシステム1を備えた接合システムであり、本発明に係る実施の形態の部材の接合方法は、この部材の接合システム1を用いて接合作業を行う接合方法である。
【0041】
次に、本発明に係る実施の形態の部材間の位置決めシステム1、部材間の位置決め方法、部材の接合システム、部材の接合方法における、離間状態から接合完了までの第1段階〜第6段階の部材間の位置決めシステム1の状態、より詳細には、第1部材10に固定された第1位置決め部材30と第2部材20に固定された第2位置決め部材40とにおける位置決め及び接合の作業時における各状態を
図2及び
図3を参照しながら説明する。
【0042】
図2の左側に示す第1段階では、第1係合部31と第2係合部41とは離間している状態であり、第1部材10と第2部材20のどちらか一方または両方を接近方向Aと平行な面内または同じ面内で移動させて(
図2では第2部材20を下降させて)、第2係合部41を第1係合部31に対向させる。そして、伸縮支持体43を伸長させている状態で、第2位置決め部材40(第2部材20)を第1位置決め部材30(第1部材10)に接近方向Aから接近させて、第2係合部41を第1係合部31に当接させる。この
図2の中央に示す第2段階では、弾性支持体42が弾性変形していない。
【0043】
次に、
図2の右側に示す第3段階になるように、第2位置決め部材40(第2部材20)を第1位置決め部材30(第1部材10)に接近方向Aからさらに接近させて、弾性支持体42を押圧して圧縮して弾性変形させる。この第2部材20の第1部材10への接近を続けて、第1部材10と第2部材20を
図4の左側に示す接合位置のある状態にして、第4段階とする。この第3段階から第4段階に至るまでの間は、第1部材10と第2部材20との相対距離Lの変動に起因する、第2係合部41から第1係合部31に加わる衝撃荷重及び荷重変動は、弾性支持体42で吸収される。
【0044】
この第4段階の第2部材20と第1部材10とが接合位置にある状態になった時点では、第2部材20の荷重の全部または一部を第2部材20をクレーンやその他の構成では支持するか、あるいは、第2部材20の荷重の一部または全部を第1部材10で負担する。そして、第2部材20と第1部材10との接合位置になっている状態では、
図1に示すように、第1部材10の接合部材12の接合穴13と、第2部材20の接合部材22の接合穴23の位置が互いに一致しているので、締結ボルトを挿入して締結ナットにより締結して第1部材10の接合部材12と第2部材20の接合部材22とを固定する。これにより、第1部材10と第2部材20の接合が行われる。
【0045】
この位置決め又は接合後に、
図3の中央に示す第5段階に移り、伸縮支持体43を収縮して、弾性支持体42の弾性変形の量を軽減し、
図3の右側に示す第6段階になるようにする。この第6段階では、接合後の弾性支持体42の収納空間を拡大して弾性支持体42を弾性変形させている圧縮力をゼロにして弾性支持体42を開放する。これにより、接合後は、弾性支持体42には押圧力が加わっていない解放状態になるので、弾性支持体42の劣化を防止でき、繰り返し使用することができる。
【0046】
上記の構成の部材間の位置決めシステム1、部材間の位置決め方法、部材の接合システム、部材の接合方法によれば、第1係合部31とこの第1係合部31と係合可能な第2係合部41とにより、接近方向Aと垂直な面における位置決めを容易に行うことができる。
【0047】
特に、この第1部材10と第2部材20の接近時に相対距離Lを安定して減少することができないようない場合、例えば、洋上接合の場合には、第1部材10と第2部材20の相対距離Lが変動するので、第1係合部31と第2係合部41の両方が第1部材10と第2部材20にそれぞれ剛な状態で支持されていると、第1係合部31と第2係合部41が接触してから完全に係合するまでの間に衝突を繰り返して破損にしたりする場合が生じるが、これを、接近方向Aに関して第2係合部41を弾性支持体42で支持することにより、接近方向Aの衝撃荷重と荷重変動と相対距離の変化をより効率的に吸収できる。
【0048】
つまり、接近方向Aに垂直な面内における位置ずれ及び衝撃荷重は、第1係合部31と第2係合部41の間で徐々に吸収しながら、第1部材10と第2部材20の接近方向Aに垂直な面内における相対距離Lがゼロになるように、第1部材10と第2部材20の一方又は両方を動かして位置調整することにより、接合時の接近方向Aに垂直な面内における位置決めを行うことができる。
【0049】
また、接近方向Aの衝撃荷重と荷重変動と相対距離Lの変動は、まずは弾性支持体42における弾性変形で吸収する。そして、接近方向Aの接近距離Lが小さくなるのに従って、弾性支持体42が押圧されて弾性変形して小さくなる。
【0050】
また、第1部材10と第2部材20を位置決めして接合した後では、伸縮支持体43を収縮して弾性支持体42に加わっている荷重を解除することができる。この荷重の解除により、弾性支持体42に大きな荷重が加わるのを接合作業時の一時的なものとすることができる。これにより、接合作業後では、弾性支持体42は荷重から解放された状態になるので、弾性支持体42を繰り返し使用することが可能となる。
【0051】
これにより、第1部材10に第2部材20を載置するような場合には、第1部材10と第2部材20との間の荷重受け機構(図示しない)に第2部材20の荷重を確実に受け渡すことができ、第1係合部31と第2係合部41との係合により、第1部材10と第2部材20とが位置決めされていることで、接合面における第1部材10の接合部材12の接合穴13と第2部材20の接合部材22の接合穴23との位置が一致し、互いに当接している接合部材12、22同士を締結ボルトで締結することで、第2部材20を第1部材10に確実に固定することができる。
【0052】
この部材の接合方法を使用できる対象物としては、さまざまな構造物が考えられる。例えば、洋上構造物に関しては、第1部材10が、水中若しくは水上に係留されている、
図4に示すような浮体式のスパータイプの洋上構造物や
図7に示すような浮体式のセミサブタイプの洋上構造物の下部構造物となる係留構造物がある。また、特に図示しないが、水底に立設している水中構造物があり、さらに、水底に立設して水上に出ている部分を有する、
図8に示すような着定式のモノパイルタイプの洋上構造物や
図9に示すような着床式のジャケットタイプの洋上構造物の下部構造物となる水上構造物がある。また、陸上構造物としては、
図10に示すような地上に立設している陸上設置式の風力発電用の陸上構造物や、
図11に示すような地上基礎の上に載置される橋梁の陸上構造物がある。
【0053】
そして、これらの下部構造物(第1部材)10の上に載置する上部構造物(第2部材)20を、
図4及び
図7〜
図10に示すように、第2部材20が、プロペラのブレード24をナセル25で回転可能に支持して、このナセル25を支柱26で支持しているような、風車を備えた上部構造物で構成すると、この部材の接合方法による効果がより大きくなる。
【0054】
これらの下部構造部(第1部材)10と上部構造物(第2部材)20との接合部分を拡大して、
図5と
図6に示す。
図5は平面図であり、部材間の位置決めシステム1を円周方向に3セット配置している状態を示している。また、
図6は側面図であり、部材間の位置決めシステム1の側面断面を示しているが、部材間の位置決めシステム1の固定部分を正面と側面で示すことができるように、部材間の位置決めシステム1を円周方向に4セット配置している状態を示している。つまり、3セットの
図5と4セットの
図6では整合が取れていないが、あえて、説明し易い図とするためと、本発明では、部材間の位置決めシステム1のセット数が固定して限定されないことを例示するために、3セットと4セットの図面としている。
【0055】
この
図5及び
図6の構成では、部材間の位置決めシステム1の第1位置決め部材30は、第1部材10の固定部材11の上に取り付け部材32と締結ボルト33で取り付けられている。一方、この部材間の位置決めシステム1の第2位置決め部材40は取り付け部材45と締結ボルト46で、第2部材20の接合部材22に取り付けられている。
【0056】
これらの第2位置決め部材40は、取り付け及び取り外し作業がし易いように、作業台として使用する接合用ステージ27よりも上に置かれている。この接合用ステージ27は、第2部材20の外周側に、設けられており、接合状態では、第1部材10の上に載置される。また、この接合用ステージ27は安全確保のために周囲を作業台の囲い27aで囲まれている。
【0057】
また、
図11に示すように、橋梁を固定支持する基礎部分を第1部材10とし、橋梁を第2部材20とすることもできる。この構成では、クレーン(図示しない)で、クレーン側吊りワイヤー62により、クレーン吊り具61を吊上げて、このクレーン吊り具61に固定接続された吊りワイヤー63で橋梁(第2部材)20を吊上げている。そして、部材間の位置決めシステム1が橋梁の両端側に配置されている。
【0058】
次に、本発明に係る洋上構造物の接合方法について説明する。この洋上構造物の接合方法は、上記の部材の接合方法を使用する方法である。より詳細には、
図12〜
図15に示すように、洋上構造物を下部構造物と上部構造物に分割して構成する。この下部構造物を第1部材10とし、この上部構造物を第2部材20とする。そして、下部構造物(第1部材)10の一部又は全部を水中に直立状態に維持して、この下部構造物10の上方部位に、運搬船50に設けた一対の腕状部材51aを持つフォーク状構造物51に上部構造物(第2部材)20を保持し、このフォーク状構造物51に載置した状態で上部構造物20を移動する。次に、この上部構造物20を下部構造物10の直上に移動し終わったら、運搬船50をバラスト調整して沈降させることにより、上部構造物20を下降させて、下部構造物10の上側に載置する。
【0059】
この洋上構造物の接合方法における、上部構造物(第2部材)20の下降量(移動量)と運搬船50の沈降量(移動量)と弾性支持体42の反力(弾性力)と伸縮支持体のストローク(収縮量)との関係の一例を
図16に示す。この例では、第2部材20を下降して第1係合部31と第2係合部41が接触した時点(t1)から弾性支持体42が弾性変形し始めて反力が次第に大きくなる。そして、時点(t2)で上部構造物20の荷重が運搬船50側から第2位置決め部材40の弾性支持体42側に移動し終わる。
【0060】
この時点(t2)から時点(t3)までは静定時間であり、この時間の間で上部構造物20の荷重が弾性支持体42にかかっていることを確認する。この確認の終了の時点(t3)からは、上部構造物20の荷重がかからなくなった運搬船50を水平方向に移動し、退避する。そして、下部構造物10と上部構造物20の接合部が接触し始めた時点(t4)から弾性支持体42から下部構造物10と上部構造物20の接合部に荷重がすべて移動した時点(t5)から締結ボルトでの締結を開始する。この時点(t4)から次の時点(t5)までは、伸縮支持体43のストロークを収縮して、弾性支持体42を開放し、弾性変形と反力を減少してゼロにする。なお、接合作業を終了した後は、必要に応じて、第1位置決め部材30と第2位置決め部材40の両方または一方を取り外す。
【0061】
この洋上構造物の接合方法によれば、上記の部材の接合方法を使用して、接合作業時に運搬船50をバラスト調整により沈降させることにより、上部構造物20の荷重をスムーズに、運搬船50から下部構造物10に移動させることができ、しかも、上記の部材の接合方法及び部材の接合システムを使用することで、上下方向(接近方向A)と水平方向(接近方向に垂直な面内)の衝撃荷重を吸収しながら、位置決めすることができる。なお、
図17は、伸縮支持体43を」ストロークさせて第1係合部31を迎えに行く形にした場合を示す。
【0062】
さらには、上記の上部構造物20を下部構造物10の位置決めと接合のための作業と逆の手順の作業を行うことにより、容易に上部構造物20を下部構造物10から取り外すことができるので、風車のナセル25とブレード24と支柱26等を備えた上部構造物20を陸上に運搬して、陸上で大規模メンテナンスを行うことが容易にできるようになる。
【0063】
なお、この下部構造物10は、スパータイプやセミサブタイプ等の浮体式の下部構造物であっても、モノパイルタイプやジャケットタイプ等の着床式の下部構造物のいずれであっても構わない。また、運搬船50に設ける一対の腕状部材51aを持つフォーク状構造物51は、フォークリフトのように、2つ腕状部材51aを離間して、運搬船50の後ろ側に平行に突き出した構造であり、下部構造物10の支柱(又は上部構造物20の支柱)をその離間した腕状部材51aの間に入れられるように構成されている。
【0064】
また、上部構造物20には、運搬船50に設けられた一対の腕状部材51aで保持し易いように、上部構造物20を構成しておく。この構成としては、接合部又は接合部の近傍に張り出し部となる接合用ステージ27を設けることで、この接合用ステージ27の下面の両側を一対の腕状部材51aの上に載置又は取り付けることが簡単にできるようになる。この構成により、上部構造物20を運搬船50に固定することが容易にできるようになる。この接合用ステージ27は、上部構造物20をメンテナンスするときに使用するデッキと兼用にすることが好ましい。また、作業員の安全のために接合用ステージ27の周囲には、囲い27aを設ける。
【0065】
この洋上構造物の接合方法においては、下部構造物10と上部構造物20の接合作業中に、伸縮支持体43を伸縮させることにより、接合時の軸の位置と運搬船50の位置との距離を調整するように構成する。この構成にすると、伸縮支持体43を伸縮させて位置調整する方が、一対の腕状部材51aを持つフォーク状構造物51の高さを調整するために運搬船50をバラスト調整して沈降させるよりも、短時間且つ容易である。従って、接合作業における作業時間及びコストを低減できる。
【0066】
この洋上構造物の接合方法によれば、大型クレーン船を用いることなく、洋上で、風力発電装置のナセル25等の装置及び設備を備えた上部構造物20を下部構造物10の上に載置して接合及び組み立てができ、また、大規模メンテナンスが必要になったときには、これらの装置及び設備を容易に取り外して陸地に運んでメンテナンス作業を簡便に行うことができる。