【実施例】
【0042】
図面に基づき、この発明の実施例を説明する。
【0043】
1.掘削用の装置の構成
【0044】
(1) 掘削ロッ61ドは、所定本数を長さ方向に連結できるロッド本体を、オーガ67の下端に取り付けし、掘削ロッド61の下端部には掘削ヘッド62を取り付けて構成する。掘削ヘッド62は、掘削ロッド61の軸芯周りに回転して掘削刃で地面を掘削できるようになっており、例えば、掘削ヘッド61は、ロッド本体の下端に連結できるヘッド本体62aに水平軸を設け、水平軸に掘削腕62b、62bを揺動自在に取り付け、ヘッド本体62aの下端と掘削腕62b、62bの先端に掘削刃が取り付けてある(
図4(a))。
掘削ヘッド62は、掘削腕が鉛直下方に垂れた位置(ニュートラル位置)から揺動した角度で、掘削腕62bの掘削刃の位置、すなわち、掘削ロッド61の軸芯からの放射方向の掘削刃の水平位置を算出して、その掘削刃で掘っている杭穴の外周壁の位置、すなわち杭穴の「掘削径」が計測できる。
【0045】
(2) また、掘削ロッド61(掘削ヘッド62)が正回転することにより、掘削腕62b、62bは一側に揺動して、予め設定した最大揺動角度で、杭穴の軸部を一定杭径D0で掘削する(
図4(b))。また、掘削ロッド61(掘削ヘッド62)を逆回転することにより、掘削腕62b、62bを他側に揺動させて、予め設定した最大揺動角度D1(>D0)で杭穴を拡大掘削できるようになっている(
図4(d))。
なお、この掘削ヘッド62は、正回転の同一回転方向で、D0の掘削とD1の掘削を調整することもできるようになっている(図示していない)。
【0046】
(3)また、掘削ロッド61の中空部には、セメントミルクや水を供給する供給パイプが配置されており、ロッド本体をつなぐ際には、この供給パイプも連結できるようになっている(図示していない)。掘削ヘッド62のヘッド本体62aと掘削腕62b、62bには、ヘッド本体62aの供給パイプから供給を受けたセメントミルクや水を杭穴内に放出できる吐出口が設けられている(図示していない)。
【0047】
(4) 杭打ち機(掘削機兼用)64は、自走式でオペレータ室65を有する本体部の一側に、タワー66が高く立設される構成となっている。タワー66の上端部から地面付近まで、鉛直方向に昇降させることができるオーガ67が取り付けてある。オーガ67に掘削用アタッチメントを取り付けて、オーガ67に掘削ロッド61の上端を連結して、オーガ67の回転を掘削ロッド61の軸芯周りの回転に伝えることができ、また、オーガ67を昇降させることにより、掘削ロッド61(掘削ヘッド62)を昇降させることができる(
図4(a))。
この際、オーガ67の上端にワイヤー68、68が取り付けられ、ワイヤー68の繰り出し量を計測することにより、地面69からの掘削ロッド61の先端(掘削ヘッド62の掘削刃)までの距離、すなわち「掘削ヘッド62(掘削刃)の深さ位置」を計測できるようになっている。また、通常、掘削ロッド本体の長さは10m程度であり、ロッド本体を連結しながら、掘削ヘッド62を地面69から数10m下方の支持地盤まで掘削するので、初期位置からワイヤー68の累積距離で、掘削ヘッド62の深さ位置を計測できる(
図4(a))。
したがって、この掘削ヘッド62の深さ位置を計測することにより、掘削ヘッド62の吐出口からのセメントミルクなどを吐出する深さ位置も計測できる。
【0048】
(5) また、オーガ67の駆動により掘削ロッド61を回転して、掘削ヘッド62で杭穴70を掘削するので、オーガ67の積算電流値などを測定することにより、「掘削ヘッドの掘削抵抗値」を測定して算出する(
図4(a)〜(d))。
【0049】
(6) また、杭打ち機64に、または、杭打ち機64に併設して、セメントミルクプラントから、所定濃度のセメントミルクや水を掘削ロッドに供給するポンプが設けられ、ポンプから排出され、掘削ロッド61(掘削ヘッド62)に供給され、掘削ヘッド62の吐出口から供給される(
図4(d)〜(f))。掘削ヘッド62の吐出口から供給される「注入根固め液量」(すなわち富配合のセメントミルク)、「注入杭周固定液量」(すなわち、根固め液より貧配合のセメントミルク)、「注入水量」が計測される。また、この際、供給している際の根固め液、杭周固定液、または水の「温度」が計測される。なお、地盤によっては掘削ヘッド62の吐出口から掘削刃周辺に水を供給すると掘りやすい地盤があり、水はこの際に使用する(
図4(b)〜(d))。
【0050】
(7) また、オーガ67に既製杭埋設用のアタッチメントを装着すれば、既製杭74の上端をつかみ、同様にオーガ67を昇降させながら、既製杭74を杭穴60内に埋設できる(
図5)。
【0051】
(8) 上記の各データは、杭打ち機64のオペレータ室65にある、施工実施端末30(通常はいわゆるノートパソコン)に入力される。
【0052】
4.施工実施端末30を使った施工方法
【0053】
(1) その構築現場毎に、施工品質管理サーバ20の現場情報データベース23a、杭穴仕様情報データベース23a、既製杭仕様情報データベース、点検情報データベースから、設計値である「現場データ」「杭穴仕様データ」「既製杭仕様データ」「点検情報データ」を取得して、制御手段31で処理して、目視容易なデータとして、表示手段33に表示する。
【0054】
(2−1) 表示手段33では、現場情報データから、左下隅に「現場名80」が表示される。また、右上隅に「日時分82」が表示される(
図7)。
また、施工順にしたがって、杭NO表示枠に、杭NO「44」が表示される。画面最上段欄82には、「杭穴仕様データ」に基づき、
・「拡径比 1.4 」←杭穴の根固め部掘削径D
1/既製杭74の外径
・「掘削径:1230mm 」←杭穴70の軸部掘削D
0
・「拡大径:1540mm 」←杭穴の根固め部の掘削径D
1
・「根固計画:5.59m
3 」←根固め液の注入量
・「杭周計画:11.90m
3 」←杭周固定液の注入量
が表示される(
図7)。なお、この場合、表示されないが、
・「既製杭」の外径は、1100mm
である。なお、既製杭74が設計通りのものが使用されているかどうかは、後述のように、現場担当者端末40で確認して、確認データが作成される。
【0055】
(2−2) また、画面左端欄83には、以下の各表示欄が設けられている(
図7)。
・「深度(m2)」83aには、掘削ヘッドの現在の深さ位置が表示される。また、オーガ(すなわち掘削ロッド)が逆回転している場合には、「逆転」と表示される。
・「実測最終深度(m)」83bには、その杭穴の施工で掘削ヘッドが最も下端に位置した深さ位置が表示される。
・「電流(A)」83cには、オーガの現状の電流値が表示される。
・「流量(m
3/h)」83dには、「注入根固め液量」データまたは「注入杭周固定液量」データが表示される。
・「水量(m
3)」83eには、「注入水量」の総量データが表示される。
・「速度(m/min)」83fには、掘削ヘッドの下降速度、すなわち“時間当たりの深さ位置の変化”が表示される。
・「最終深度(m)」83gには、その杭穴の設計深度のデータが表示される。
・「温度(℃)」83hには、ポンプにおける根固め液、杭周固定液、または水の温度が表示される。
・「高/低切替」83iには、オーガの回転(すなわち掘削ロッドの回転)を低速と高速に切り替えることができ、その高低の別が表示される。
・「現在状況」83jには、オーガ(すなわち掘削ロッド)が回転している場合を「稼働」、停止していれば「停止」が表示される。
ここで、「杭穴仕様データ」に基づき、最終深度欄83gに「72.11m」が表示されている。
【0056】
(2−3) また、中央部にグラフ表示領域があり、6つのグラフが表示される。
(a)第1グラフ91
掘削ロッドの深さ位置(根固め部)の変化グラフ
横軸:時間(分)、縦軸:深度(m)
ここでは、下端部が表示され、「杭穴仕様データ」に基づき、根固め部72の開始深さ91aと終了深さ(即ち杭穴の下端深さ)91bにラインが表示されている。
(b)第2グラフ92
オーガの電流値の変化グラフ
横軸:時間(分)、縦軸:電流(A)
(c)第3グラフ93
オーガの電流値の変化グラフ(根固め部付近)
横軸:時間(分)、縦軸:電流(A)
(d)第4グラフ94
深さ毎のN値を深さ毎の電流記録値変化に変換したグラフ
横軸:電流値(×10
6・A・SEC)、縦軸:深度(m)
ここでは、「杭穴仕様データ」に基づき、根固め部72の開始深さ94aと終了深さ(即ち杭穴の下端深さ)94bにラインが表示されている。また、「杭穴仕様データ」に基づき、既製杭74の杭頭(最上端)位置の深さ94cが表示されている。
(e)第5グラフ95
根固め液の深さ毎の注入量グラフ
横軸:注入量(m3)、縦軸:深度(m)
ここでは、「杭穴仕様データ」に基づき、注入量ライン95a、95b、95cが表示されている。注入量ライン95aは、杭穴75の根固め部72内の全深さで均一に必要な注入量V
1のラインで、注入量ライン95bは根固め部72の下端部で追加的に必要な注入量V
2を示すラインである。また、注入量ライン95cは根固め部72の下端部に必要な総注入量V
3(=V
1+V
2)の量を示すラインである。
(f)第6グラフ96
杭周固定液の深さ毎の注入量グラフ
横軸:注入量(m3)、縦軸:深度(m)
ここでは、「杭穴仕様データ」に基づき、深さ毎の設計注入量96aのラインが表示されている。
上記のように、各グラフで、「杭穴仕様データ」「点検情報データ」に基づき、表示手段33に、
目標値が表示される。また、第4グラフ94に、地盤調査に基づきN値の値を深度毎に電流値に換算したグラフが表示されており(
図7)、硬い地盤、やわらかい地盤など予想でき、また支持地盤の深さ位置も予想できる。
【0057】
(2−4) 杭打ち機64のオーガ67に掘削ロッド61を取り付け、未だオーガ67を回転しない状態で、掘削ヘッドを地面の直上に位置させる(
図4(a)、
図7)。
オーガ67を回転させ、地面69に掘削ヘッド62の掘削刃を当てると土圧で掘削腕62b、62bが開き、予め設定した角度で掘削腕が揺動して、径D0=1230mmで杭穴の軸部71の掘削始める(
図4(b)。この際、オーガ67に負荷が掛かるので、電流値83cが上昇する。
【0058】
(2−5) さらに掘削を進め、杭穴の軸部71を所定深さ「72、1m」まで掘削する(
図4(c))。「杭穴仕様データ」に基づき所定の深度に至ったことを、「深度(m)」83a、「実測最終深度(m)」83bの数字で確認できる(
図8)。また、第1グラフ91でも確認できる。
【0059】
(2−6) 続いて、オーガ67を逆転すれば、土圧で掘削腕62b、62bが逆方向に開き、予め設定した径D1=1540mmで杭穴根固め部72を拡大掘削する(
図4(d))。
【0060】
(2−7) 所定形状の杭穴70の掘削が完了したならば、根固め部72内で、掘削ヘッド62を所定の上下動をさせながら(
図8。グラフ91)、杭穴70の下端部内を撹拌する。
【0061】
(2−8) 続いて、根固め部72内で、掘削ヘッド62を所定の上下動をさせながら、予め決められた深さで、吐出口から根固め部液を注入する(
図9。グラフ91、グラフ95)。これにより、根固め部72内の掘削泥土は、根固め部液(セメントミルク)により置換される。グラフ95に表示された根固め部液の注入量(下端部でV
3、その他でV
1)が、「杭穴仕様データ」に合致していることを確認でできる。
【0062】
(2−9) 続いて、掘削ヘッド62を上昇させながら、所定深さで所定量の杭周固定液を吐出口から注入する(
図6(e)(f)))。この際。注入した深さ毎の杭周固定液の注入量が第6グラフ96に表示され、予め設定された設計注入量96aのラインに沿って注入されていることが確認できる(
図10)。
【0063】
(2−10) 掘削ロッド61を地面69から地上に引き上げれば、杭穴70の掘削が完了する(
図4(g))。
【0064】
(2−11) 杭穴70の掘削が完了したならば、施工実施端末30の最終画面(
図10)が「杭穴掘削確認データ」として、直接にまたは施工品質管理サーバ20を介して、施工結果管理サーバ10に転送され、転送と同時に、施工実施端末30から「杭穴掘削確認データ」が削除される。なお、
図8〜
図9の状態では、第1グラフ91は根固め部72付近の深さのみの拡大表示であったが、
図10の最終画面では、第1グラフ91Aは地面から杭穴底までの全深さでのグラフに切り替わっており、ここで、既製杭74の杭頭(最上端)位置を示すライン91c(第4グラフ94のライン94cと同じ深さである)が表示される。
また、各グラフ91〜96を拡大して、あるいは他の施工データと組み合わせて「杭穴掘削確認データ」とすることもできる(図示していない)。
【0065】
(2−12) 施工結果確認サーバ10では、「杭穴掘削確認データ」(
図10)は改変不可能な状態で保存・管理される。また、「杭穴掘削確認データ」を報告書データ作成手段17で印刷をすれば、関係者の確認捺印欄97が右下に表示された報告書98ができる(
図11)。
【0066】
(3−1) 続いて、杭穴70内に既製杭74を埋設する。作業に先立ち、現場管理者(現場監督)の「現場担当者端末」に、施工品質管理サーバ20の各データベースから「現場データ」「既製杭仕様データ」「必要な杭穴データ」「点検情報データ」が取得されている。「点検情報データ」に基づき施工中のポイント毎に「既製杭仕様データ」等と実際の施工とが一致して否かの確認作業を「現場担当者端末」において行う。
【0067】
(3−2) オーガ67のアタッチメントを既製杭用に取り替え、地面69においてある下端に配置する既製杭74a(鎖線図示)の仕様が「既製杭仕様データ」と合っていることを「現場担当者端末」で確認して、「現場担当者端末」から撮影画像ともに「既製杭確認データ」を施工品質管理サーバ20に転送する。
【0068】
(3−3) 続いてオーガ67に既製杭64aを吊り上げ(
図5(a))、杭穴70から挿入して下降させる。「点検情報データ」で必要ならば、この状況を「現場担当者端末」から撮影画像ともに「既製杭確認データ」を施工品質管理サーバ20に転送する。
【0069】
(3−4) 続いて、地面69付近で、既製杭74aを一旦支持して、既製杭74aをオーガ67から切り離す。これと同時期にあるいはこれと前後して、地面69においてある次ぎに使用する既製杭74b(図示していない)の仕様が「既製杭仕様データ」と合っていることを「現場担当者端末」で確認して、「現場担当者端末」から撮影画像ともに「既製杭確認データ」を施工品質管理サーバ20に転送する。
【0070】
(3−5) 続いて、オーガ67には次の中間に位置する既製杭74bを吊り上げ(
図5(b))、既製杭74aと既製杭74bとを、所定の連結手段で一体に連結する(
図5(c))。連結に使用するバンド類、バンド類の取付が「既製杭仕様データ」と一致していることを「現場担当者端末」で確認して、「現場担当者端末」から撮影画像ともに「既製杭確認データ」を施工品質管理サーバ20に転送する。以下の各既製杭の連結作業についても同様に処理される。
続いて、連結した既製杭74a、74bを下降させる。
【0071】
(3−6) 以下同様に、必要数の中間の既製杭74b、74bを連結しながら、最後に、最上の既製杭74cを連結して、既製杭74a、74b、74cを杭穴70内に埋設する(
図5(d))。
この場合も吊り上げる前に、地面69においてある次ぎに使用する既製杭74cの仕様が「既製杭仕様データ」と合っていることを「現場担当者端末」で確認して、「現場担当者端末」から撮影画像ともに「既製杭確認データ」を施工品質管理サーバ20に転送する。
【0072】
(3−7) 既製杭74aの下端位置が根固め部72の所定位置にあることを確認して、基礎杭74cを地面69付近で支持する。根固め部72で根固め液が固化すれば、基礎杭75の構築が完了する(
図5(d))。
【0073】
(3−8) 前記(3−6)における既製杭74aの下端位置の確認は、通常以下のように行う。
既製杭74aの下端位置は「既製杭仕様データ」(「現場担当者端末」に送られている)に規定されており、各既製杭74a〜74cの長さの合計から、最上に位置する既製杭74cの上端が地面69からどの程度の長さだけ上方にあるか(下方にあるか)で、所定の下端位置を満たしている可否が確認される。「現場担当者端末」から地面69付近の既製杭74cの撮影画像ともに「既製杭確認データ」を施工品質管理サーバ20に転送する。
また、既製杭74aの下端位置は、オーガ67の位置を、杭穴掘削時の掘削ロッド61の深さ位置(掘削ヘッド62の深さ位置)と同期させれば、掘削ヘッド62の深さ位置を計測した流れと同様にして、地面69から(あるいは、杭穴70の底から)既製杭74aの下端の深さ位置が測定できる。
【0074】
(4) 以上のようにして、杭穴70の掘削、根固め部液の注入、既製杭74の埋設が、「杭穴仕様情報データ」「既製杭仕様データ」と一致していることを確認でき、設計どおりの基礎杭75が構築されたことが現場確認できる。さらに各「確認データ」が「施工結果確認サーバ」に、転送され、かつ転送と同時に施工実施端末30の「確認データ」が削除される。また、編集改変不可のデータとして保存される。よって、設計に基づき施工されたことが担保できる。
【0075】
(5) 以上の作業を、現場内の一つの杭穴70で実施し、同様に現場内に必要数の基礎杭75を構築する(
図6)。この際、各杭穴70、70およびその杭穴70に埋設する既製杭74は「杭穴番号」「杭番号」で管理される。