【0026】
本発明で用いられるポリイソ(チオ)シアナート化合物は、一分子中に少なくとも2個以上のイソ(チオ)シアナート基を有する化合物であり、特に限定されないが、具体的には、例えば、ヘキサメチレンジイソシアナート、2,2−ジメチルペンタンジイソシアナート、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアナート、ブテンジイソシアナート、1,3−ブタジエン−1,4−ジイソシアナート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、1,6,11−ウンデカントリイソシアナート、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアナート、1,8−ジイソシアナート−4−イソシアナートメチルオクタン、ビス(イソシアナートエチル)カーボネート、ビス(イソシアナートエチル)エーテル、リジンジイソシアナートメチルエステル、リジントリイソシアナート等の脂肪族ポリイソシアナート化合物;
キシリレンジイソシアナート、1,2−ジイソシアナートベンゼン、1,3−ジイソシアナートベンゼン、1,4−ジイソシアナートベンゼン、2,4−ジイソシアナートトルエン、エチルフェニレンジイソシアナート、イソプロピルフェニレンジイソシアナート、ジメチルフェニレンジイソシアナート、ジエチルフェニレンジイソシアナート、ジイソプロピルフェニレンジイソシアナート、トリメチルベンゼントリイソシアナート、ベンゼントリイソシアナート、ビフェニルジイソシアナート、トルイジンジイソシアナート、4,4'−メチレンビス(フェニルイソシアナート)、4,4'−メチレンビス(2−メチルフェニルイソシアナート)、ビベンジルー4,4'−ジイソシアナート、ビス(イソシアナートフェニル)エチレン、ビス(イソシアナートエチル)ベンゼン、ビス(イソシアナートプロピル)ベンゼン、α,α,α',α'−テトラメチルキシリレンジイソシアナート、ビス(イソシアナートブチル)ベンゼン、ビス(イソシアナートメチル)ナフタリン、ビス(イソシアナートメチルフェニル)エーテル、ビス(イソシアナートエチル)フタレート、2,6−ジ(イソシアナートメチル)フラン等の芳香環化合物を有するポリイソシアナート化合物;
ビス(イソシアナートメチル)スルフィド、ビス(イソシアナートエチル)スルフィド、ビス(イソシアナートプロピル)スルフィド、ビス(イソシアナートヘキシル)スルフィド、ビス(イソシアナートメチル)スルホン、ビス(イソシアナートメチル)ジスルフィド、ビス(イソシアナートエチル)ジスルフィド、ビス(イソシアナートプロピル)ジスルフィド、ビス(イソシアナートメチルチオ)メタン、ビス(イソシアナートエチルチオ)メタン、ビス(イソシアナートメチルチオ)エタン、ビス(イソシアナートエチルチオ)エタン、1,5−ジイソシアナート2−イソシアナートメチル−3−チアペンタン、1,2,3−トリス(イソシアナートメチルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(イソシアナートエチルチオ)プロパン、3,5−ジチア−1,2,6,7−ヘプタンテトライソシアナート、2,6−ジイソシアナートメチル−3,5−ジチア−1,7−ヘプタンジイソシアナート、2,5−ジイソシアナートメチルチオフェン、4−イソシアナートエチルチオ−2,6−ジチア−1,8−オクタンジイソシアナート等の含硫脂肪族ポリイソシアナート化合物;
2−イソシアナートフェニル−4−イソシアナートフェニルスルフィド、ビス(4−イソシアナートフェニル)スルフィド、ビス(4−イソシアナートメチルフェニル)スルフィドなどの芳香族スルフィド系ポリイソシアナート化合物;
ビス(4−イソシアナートフェニル)ジスルフィド、ビス(2−メチル−5−イソシアナートフェニル)ジスルフィド、ビス(3−メチル−5−イソシアナートフェニル)ジスルフィド、ビス(3−メチル−6−イソシアナートフェニル)ジスルフィド、ビス(4−メチル−5−イソシアナートフェニル)ジスルフィド、ビス(4−メトキシ−3−イソシアナートフェニル)ジスルフィド等の芳香族ジスルフィド系ポリイソシアナート化合物;
2,5−ジイソシアナートテトラヒドロチオフェン、2,5−ジイソシアナートメチルテトラヒドロチオフェン、3,4−ジイソシナトメチルテトラヒドロチオフェン、2,5−ジイソシアナート1,4−ジチアン、2,5−ジイソシアナートメチル−1,4−ジチアン、4,5−ジイソシアナート1,3−ジチオラン、4,5−ビス(イソシアナートメチル)−1,3−ジチオラン、4,5−ジイソシアナートメチル−2−メチル−1,3−ジチオラン等の含硫脂環族ポリイソシアナート化合物;
1,2−ジイソチオシアナトエタン、1,6−ジイソチオシアナトヘキサン等の脂肪族ポリイソチオシアナート化合物;
シクロヘキサンジイソチオシアナート等の脂環族ポリイソチオシアナート化合物;
1,2−ジイソチオシアナトベンゼン、1,3−ジイソチオシアナトベンゼン、1,4−ジイソチオシアナトベンゼン、2,4−ジイソチオシアナトトルエン、2,5−ジイソチオシアナト−m−キシレン、4,4'−メチレンビス(フェニルイソチオシアナート)、4,4'−メチレンビス(2−メチルフェニルイソチオシアナート)、4,4'−メチレンビス(3−メチルフェニルイソチオシアナート)、4,4'−ジイソチオシアナトベンゾフェノン、4,4'−ジイソチオシアナト−3,3'−ジメチルベンゾフェノン、ビス(4−イソチオシアナトフェニル)エーテル等の芳香族ポリイソチオシアナート化合物;
さらには、1,3−ベンゼンジカルボニルジイソチオシアナート、1,4−ベンゼンジカルボニルジイソチオシアナート、(2,2−ピリジン)−4,4−ジカルボニルジイソチオシアナート等のカルボニルポリイソチオシアナート化合物、チオビス(3−イソチオシアナトプロパン)、チオビス(2−イソチオシアナトエタン)、ジチオビス(2−イソチオシアナトエタン)等の含硫脂肪族ポリイソチオシアナート化合物;
1−イソチオシアナト−4−[(2−イソチオシアナト)スルホニル]ベンゼン、チオビス(4−イソチオシアナトベンゼン)、スルホニル(4−イソチオシアナトベンゼン)、ジチオビス(4−イソチオシアナトベンゼン)等の含硫芳香族ポリイソチオシアナート化合物、2,5−ジイソチオシアナトチオフェン、2,5−ジイソチオシアナト−1,4−ジチアン等の含硫脂環族ポリイソチオシアナート化合物;
1−イソシアナート6−イソチオシアナトヘキサン、1−イソシアナート4−イソチオシアナトシクロヘキサン、1−イソシアナート4−イソチオシアナトベンゼン、4−メチル−3−イソシアナート1−イソチオシアナトベンゼン、2−イソシアナート4,6−ジイソチオシアナト−1,3,5−トリアジン、4−イソシアナートフェニル−4−イソチオシアナトフェニルスルフィド、2−イソシアナートエチル−2−イソチオシアナトエチルジスルフィド等のイソシアナート基とイソチオシアナト基を有する化合物等が挙げられる。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。チオ尿素中の鉄の含有量の分析、及び、得られたポリチオール化合物のb
*値とプラスチックレンズのYI値(黄色度)の測定は、以下の方法で行った。
・鉄含有量 : チオ尿素を水に溶解させ、水溶液とし、その後にイオンクロマトグラフ法により測定した。
・ポリチオール化合物のb
*値:(株)日立製作所製分光光度計U−3500を用いて光路長10mmで測定を行った。
・プラスチックレンズのYI値:(株)村上色彩技術研究所製分光透過率測定器DOT−3を用いて測定を行った。測定レンズには0.00D、肉厚1.8mmのものを使用した。
また、得られたプラスチックレンズを眼鏡レンズとして用いる場合の評価を行った。色調および透明性を観察して無色透明のものを良品(○)とし、無色透明とはいえないものを不良(×)とした。
【0034】
(チオ尿素中の鉄含有量低減化)
チオ尿素中の鉄の含有量は、以下の手順により低減させた。
チオ尿素500gを純水2000gに溶解後、陰イオン交換樹脂処理を行い、鉄の低減化を行った。その後、再結晶化を行い、減圧乾燥し、チオ尿素392gを得た。処理前の鉄含有量は1000ppmであり、処理後の鉄含有量は10ppmであった(実施例1、2)。他の実施例、比較例においても上記と同様の方法を用いて処理条件を適宜変更することにより種々の鉄含有量を有するチオ尿素を得た。
【0035】
[実施例1]
(ビスメルカプトメチル-3,6,9-トリチア-ウンデカンジチオールの合成)
2−メルカプトエタノール78.1g(1.0モル)とトリエチルアミン2.0gの混合液にエピクロロヒドリン92.5g(1.0モル)を内温35〜40℃に保ちながら1時間かけて滴下し、40℃で1時間熟成を行った。この反応液にあらかじめ硫化ナトリウム9水和物125.0g(0.5モル)を純水100gに溶解した水溶液を内温40〜45℃に保ちながら1時間かけて滴下し、さらに45℃で1時間熟成を行った。
次に上記反応液に36質量%塩酸水溶液303.8g(3.0モル)と鉄含有量10ppmのチオ尿素190.3g(2.5モル)を加えて110℃で9時間加熱撹拌した。室温まで冷却後、トルエン400mlを加え、30質量%水酸化ナトリウム水溶液600.4g(4.5モル)を徐々に加え60℃で4時間加水分解を行った。得られた有機層を36質量%塩酸水溶液100ml、水100mlで2回、順次洗浄後、ロータリーエバポレーターにてトルエンを留去し、目的とするポリチオールを170.5g(収率93.0%)得た。
得られたポリチオールのb
*値は、下記表1に示すように、0.9であった。
【0036】
(プラスチックレンズの作製)
キシリレンジイソシアナート50.6質量部、硬化触媒としてジメチルスズジクロライド0.01質量部、離型剤として酸性リン酸エステル(城北化学工業(株)製JP−506H)0.20質量部、紫外線吸収剤として(シプロ化成(株)製 シーソーブ701)0.5質量部を混合、溶解させた。さらに、上記で得られたポリチオール化合物49.4質量部を添加混合し、混合均一液とした。この混合均一液を200Paにて1時間脱泡を行った後、5.0μmPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)フィルターにて濾過を行った。次いで直径75mm、−4.00D及び0.00Dのガラスモールドとテープからなるレンズ用モールド型へ注入した。このモールド型を電気炉へ投入し、15℃から120℃まで20時間かけて徐々に昇温し、2時間保持した。重合終了後、電気炉からモールド型を取り出し、離型してレンズを得た。得られたレンズをさらに120℃で3時間アニールを行った。
得られたプラスチックレンズのYI値は、下記表1に示すように、1.68であった。
【0037】
[実施例2]
(ビスメルカプトメチル-3,6,9-トリチア-ウンデカンジチオールの合成)
実施例1の鉄含有量10ppmのチオ尿素を鉄含有量40ppmのチオ尿素へ変更した以外は実施例1と同様にポリチオール化合物を合成した。
目的とするポリチオール化合物を166.8g(収率91.0%)得た。
得られたポリチオールのb
*値は、下記表1に示すように、1.2であった。
【0038】
(プラスチックレンズの作製)
上記のポリチオール化合物を用いた以外は実施例1と同様にプラスチックレンズを作製した。
得られたプラスチックレンズのYI値は、下記表1に示すように、1.72であった。
【0039】
[実施例3]
(ビスメルカプトメチル-3,6,9-トリチア-ウンデカンジチオールの合成)
実施例1の鉄含有量10ppmのチオ尿素を鉄含有量80ppmのチオ尿素へ変更した以外は実施例1と同様にポリチオール化合物を合成した。
目的とするポリチオール化合物を168.2g(収率91.7%)得た。
得られたポリチオールのb
*値は、下記表1に示すように、1.3であった。
【0040】
(プラスチックレンズの作製)
上記のポリチオール化合物を用いた以外は実施例1と同様にプラスチックレンズを作製した。
得られたプラスチックレンズのYI値は、下記表1に示すように、1.77であった。
【0041】
[実施例4]
(ビスメルカプトエチルチオメルカプトプロパンの合成)
2−メルカプトエタノール78.1g(1.0モル)とトリブチルアミン2.0gの混合液にエピクロロヒドリン46.3g(0.5モル)を内温35〜40℃に保ちながら1時間かけて滴下し、40℃で1時間熟成を行った。この反応液に45質量%水酸化ナトリウム水溶液44.4g(0.5モル)を内温40〜45℃に保ちながら1時間かけて滴下し、80℃に昇温後、1時間熟成を行った。
次に上記反応液に36質量%塩酸水溶液303.8g(3.0モル)と鉄含有量10ppmのチオ尿素114.2g(1.5モル)を加えて110℃で2時間加熱撹拌した。室温まで冷却後、トルエン200mlを加え、45質量%水酸化ナトリウム水溶液266.7g(3.0モル)を徐々に加え60℃で4時間加水分解を行った。
得られた有機層を36%質量塩酸水溶液100ml、水100mlで2回、順次洗浄後、ロータリーエバポレーターにてトルエンを留去し、目的とするポリチオールを111.2g(収率85.4%)得た。
得られたポリチオールのb
*値は、下記表1に示すように、0.5であった。
【0042】
(プラスチックレンズの作製)
キシリレンジイソシアナート52.0質量部、硬化触媒としてジメチルスズジラウレート0.05質量部、離型剤として酸性リン酸エステル(城北化学工業(株)製JP−506H)0.20質量部、紫外線吸収剤として(シプロ化成(株)製シーソーブ701)0.5質量部を混合、溶解させた。さらに、上記で得られたポリチオール化合物48.0質量部を添加混合し、混合均一液とした。この混合均一液を200Paにて1時間脱泡を行った後、5.0μmPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)フィルターにて濾過を行った。次いで直径75mm、−4.00D及び0.00Dのガラスモールドとテープからなるレンズ用モールド型へ注入した。このモールド型を電気炉へ投入し、15℃から120℃まで20時間かけて徐々に昇温し、2時間保持した。重合終了後、電気炉からモールド型を取り出し、離型してレンズを得た。得られたレンズをさらに120℃で3時間アニールを行った。
得られたプラスチックレンズのYI値は、下記表1に示すように、1.62であった。
【0043】
[実施例5]
(ビスメルカプトエチルチオメルカプトプロパンの合成)
実施例2の鉄含有量10ppmのチオ尿素を鉄含有量40ppmのチオ尿素へ変更した以外は実施例2と同様にポリチオール化合物を合成した。
目的とするポリチオール化合物を108.8g(収率83.6%)得た。
得られたポリチオールのb
*値は、下記表1に示すように、0.6であった。
【0044】
(プラスチックレンズの作製)
上記のポリチオール化合物を用いた以外は実施例2と同様にプラスチックレンズを作製した。
得られたプラスチックレンズのYI値は、下記表1に示すように、1.65であった。
【0045】
[実施例6]
(ビスメルカプトエチルチオメルカプトプロパンの合成)
実施例2の鉄含有量10ppmのチオ尿素を鉄含有量80ppmのチオ尿素へ変更した以外は実施例2と同様にポリチオール化合物を合成した。
目的とするポリチオール化合物を107.6g(収率82.6%)得た。
得られたポリチオールのb
*値は、下記表1に示すように、0.8であった。
【0046】
(プラスチックレンズの作製)
上記のポリチオール化合物を用いた以外は実施例2と同様にプラスチックレンズを作製した。
得られたプラスチックレンズのYI値は、下記表1に示すように、1.68であった。
【0047】
[比較例1]
(ビスメルカプトメチル-3,6,9-トリチア-ウンデカンジチオールの合成)
実施例1の鉄含有量10ppmのチオ尿素を鉄含有量120ppmのチオ尿素へ変更した以外は実施例1と同様にポリチオール化合物を合成した。
目的とするポリチオール化合物を167.0g(収率91.0%)得た。
得られたポリチオールのb
*値は、下記表1に示すように、1.8であった。
【0048】
(プラスチックレンズの作製)
上記のポリチオール化合物を用いた以外は実施例1と同様にプラスチックレンズを作製した。
得られたプラスチックレンズのYI値は、下記表1に示すように、2.21であった。
【0049】
[比較例2]
(ビスメルカプトエチルチオメルカプトプロパンの合成)
実施例2の鉄含有量10ppmのチオ尿素を鉄含有量120ppmのチオ尿素へ変更した以外は実施例2と同様にポリチオール化合物を合成した。
目的とするポリチオール化合物を105.1g(収率80.7%)得た。
得られたポリチオールのb
*値は、下記表1に示すように、1.6であった。
【0050】
(プラスチックレンズの作製)
上記のポリチオール化合物を用いた以外は実施例2と同様にプラスチックレンズを作製した。
得られたプラスチックレンズのYI値は、下記表1に示すように、2.15であった。
【0051】
【表1】
【0052】
表1に示すように、鉄の含有量が100ppm以下のチオ尿素を用いて得られるポリチオール化合物は、色調に優れており、このポリチオール化合物を用いて作製されたプラスチックレンズは色調および透明性においても優れていた。これに対し、比較例1および2にて鉄の含有量が100ppmを超えるチオ尿素を用いて得られるポリチオール化合物は、色調が悪化し、得られるプラスチックレンズも色調および透明性において悪化していた。実施例および比較例で得られた樹脂は、単独で見るといずれも無色透明であったが、すべての樹脂を比較して観察すると、比較例の樹脂は実施例の樹脂に比べて僅かに黄色く観察された。
【0053】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。