特許第6851787号(P6851787)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パイロットインキ株式会社の特許一覧

特許6851787可逆熱変色性マイクロカプセル顔料、ならびにそれを含む液状組成物および積層体
<>
  • 特許6851787-可逆熱変色性マイクロカプセル顔料、ならびにそれを含む液状組成物および積層体 図000011
  • 特許6851787-可逆熱変色性マイクロカプセル顔料、ならびにそれを含む液状組成物および積層体 図000012
  • 特許6851787-可逆熱変色性マイクロカプセル顔料、ならびにそれを含む液状組成物および積層体 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6851787
(24)【登録日】2021年3月12日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】可逆熱変色性マイクロカプセル顔料、ならびにそれを含む液状組成物および積層体
(51)【国際特許分類】
   C09B 67/08 20060101AFI20210322BHJP
   B41M 5/28 20060101ALI20210322BHJP
   B41M 5/333 20060101ALI20210322BHJP
   B41M 5/337 20060101ALI20210322BHJP
   C09K 9/02 20060101ALI20210322BHJP
   C09D 17/00 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   C09B67/08 A
   B41M5/28 280
   B41M5/28 250
   B41M5/333 220
   B41M5/337
   B41M5/337 212
   C09K9/02 C
   C09D17/00
【請求項の数】10
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-219098(P2016-219098)
(22)【出願日】2016年11月9日
(65)【公開番号】特開2017-95696(P2017-95696A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2019年7月10日
(31)【優先権主張番号】特願2015-225862(P2015-225862)
(32)【優先日】2015年11月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000111890
【氏名又は名称】パイロットインキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 英明
(72)【発明者】
【氏名】藤 田 勝 幸
(72)【発明者】
【氏名】柴 田 敏 博
【審査官】 井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−086233(JP,A)
【文献】 特開2013−231138(JP,A)
【文献】 特開2014−084454(JP,A)
【文献】 特開2007−118197(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B 1/00 − 69/10
B41M 5/
C09D 17/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(イ)電子供与性呈色性有機化合物と、
(ロ)電子受容性化合物として下記一般式(B):
【化1】
(式中、Rは炭素数10〜22の直鎖又は分岐鎖アルキル基を示し、Zはそれぞれ独立に水素又は水酸基であり、Zのうち、一つまたは二つが水酸基である。)で示される化合物と、
(ハ)前記(イ)成分および(ロ)成分による電子授受反応を可逆的に生起させる反応媒体として、鎖式炭化水素類、脂環族炭化水素類、芳香族炭化水素類、およびハロゲン化炭化水素類からなる群から選ばれる化合物と、
(ニ)軟化点が−10℃以上であり、且つ、重量平均分子量が200〜100,000である、スチレンポリマーと、
(ホ)下記一般式(E):
【化2】
(式中、kは2〜6の数を示し、Rはそれぞれ独立に炭素数10〜22の直鎖アルキル基を示す。)
で示されるアルコキシフェニル化合物と
を含んでなり、加熱により消色状態から発色状態となる可逆熱変色性組成物が内包されたマイクロカプセルを含んでなることを特徴とする、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料。
【請求項2】
前記Rが、炭素数10〜20の直鎖アルキル基である、請求項1記載の顔料。
【請求項3】
前記一般式(E)で表される化合物が、下記式(E−i)または(E−ii):
【化3】
(式中、二つのRはそれぞれ同一であっても、異なっていてもよい)。
で示される、請求項1または2に記載の顔料。
【請求項4】
前記スチレンポリマーの重量平均分子量が、200〜6,000である、請求項1〜3に記載の顔料。
【請求項5】
前記スチレンポリマーが、ポリスチレン、スチレン−α−メチルスチレン系共重合体、α−メチルスチレン重合体、およびα−メチルスチレンとビニルトルエンの共重合体からなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の顔料。
【請求項6】
前記(イ)成分1質量部に対する(ニ)成分の割合が0.1〜10質量部である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の顔料。
【請求項7】
前記(イ)成分1質量部に対する(ホ)成分の割合が0.02〜10質量部である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の顔料。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の顔料と、ビヒクルと、を含んでなることを特徴とする、可逆熱変色性液状組成物。
【請求項9】
前記顔料の含有量が、前記液状組成物の全質量に対し5〜40質量%である、請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
支持体上に請求項1〜7のいずれか1項に記載の顔料を含んでなる可逆熱変色層を具備してなることを特徴とする、可逆熱変色性積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は可逆熱変色性マイクロカプセル顔料に関するものである。更に詳細には、消色状態からの加熱により発色する可逆熱変色性マイクロカプセル顔料に関するものである。また、本発明は、その顔料を用いた液状組成物およびその顔料を含む層を具備した積層体にも関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記(イ)、(ロ)による電子授受反応を可逆的に生起させる反応媒体からなる可逆熱変色性組成物のうち、(ロ)成分としてヒドロキシ安息香酸エステルを用いることによって、消色状態からの加熱により発色状態を示し、降温により消色状態に復帰する変色挙動を示す可逆熱変色性組成物及びそれを内包したマイクロカプセル顔料が開示されている(例えば、特許文献1および2参照)。
【0003】
特許文献1および2において開示されるような従来の前記可逆熱変色性組成物は、加熱により発色状態を示すものの、発色する温度が高く、日常生活温度や日常生活温度近傍の温度で容易に発色させることは困難であった。また、日常生活温度や日常生活温度近傍の温度で発色させる可逆熱変色性組成物が得られたとしても、発色状態における色濃度が低く、実用性を満足させるためにさらなる改良が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−105732号公報
【特許文献2】特開2013−231138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、消色状態からの加熱により発色する可逆熱変色性組成物について鋭意検討した結果、前記の(イ)、(ロ)、および(ハ)成分に加え、特定成分を組み合わせることにより、消色状態からの加熱により比較的低温で発色状態を呈し、発色状態から冷却により再び消色状態に復帰し得る変色挙動を示すと共に、発色時の色濃度が高い可逆熱変色性組成物を内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による可逆熱変色性マイクロカプセル顔料は、
(イ)電子供与性呈色性有機化合物と、
(ロ)電子受容性化合物として下記一般式(B):
【化1】
(式中、Rは炭素数10〜22の直鎖又は分岐鎖アルキル基を示し、Zのうち、一つまたは二つが水酸基である。)
で示される化合物と、
(ハ)前記(イ)成分および(ロ)成分による電子授受反応を可逆的に生起させる反応媒体として、鎖式炭化水素類、脂環族炭化水素類、芳香族炭化水素類、およびハロゲン化炭化水素類からなる群から選ばれる化合物と、
(ニ)軟化点が5℃以上であり、且つ、重量平均分子量が200〜100,000である、スチレンポリマーと、
(ホ)下記一般式(E):
【化2】
(式中、kは2〜6の数を示し、Rはそれぞれ独立に炭素数12〜22の直鎖アルキル基を示す。)
で示されるアルコキシフェニル化合物と
を含んでなり、加熱により消色状態から発色状態となる可逆熱変色性組成物が内包されたマイクロカプセルを含んでなることを特徴とするものである。
【0007】
また、本発明による可逆熱変色性液状組成物は、前記顔料と、ビヒクルと、を含んでなることを特徴とするものである。
【0008】
さらに本発明による可逆熱変色性積層体は、支持体上に前記顔料を含んでなる可逆熱変色層を具備してなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、生活環境温度域や日常生活温度近傍の温度における消色状態から加熱により容易に発色状態を呈し、発色状態から冷却により再び消色状態に復帰する可逆的変色挙動を呈し、このときに発色時の色濃度が高く、消色時には残色が少ない可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を提供できるものである。この顔料は、教習要素、玩具、装飾等、多様な分野に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料の変色挙動を示す説明図。
図2】可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料の変色挙動を示す説明図。
図3】可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料の変色挙動を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0012】
[可逆熱変色性組成物]
本発明に用いられる可逆熱変色性組成物(以下、単に組成物ということがある)は、(イ)〜(ホ)の成分を含んでなるものである。これらの成分について説明すると以下の通りである。
【0013】
(イ)電子供与性呈色性有機化合物
本発明の(イ)成分、即ち電子供与性呈色性有機化合物は、色を決める成分であって、顕色剤である(ロ)成分に電子を供与し、発色する化合物である。
【0014】
本発明における(イ)成分、即ち電子供与性呈色性有機化合物としては、フタリド化合物、フルオラン化合物、スチリノキノリン化合物、ジアザローダミンラクトン化合物、ピリジン化合物、キナゾリン化合物、ビスキナゾリン化合物等が挙げられ、これらのうちフタリド化合物およびフルオラン化合物が好ましい。フタリド化合物としては、例えばジフェニルメタンフタリド化合物、フェニルインドリルフタリド化合物、インドリルフタリド化合物、ジフェニルメタンアザフタリド化合物、フェニルインドリルアザフタリド化合物、およびそれらの誘導体などが挙げられ、これらの中でも、フェニルインドリルアザフタリド化合物、ならびにそれらの誘導体が好ましい。また、フルオラン化合物としては、例えば、アミノフルオラン化合物、アルコキシフルオラン化合物、およびそれらの誘導体が挙げられる。
【0015】
以下にこれらの化合物を例示する。
3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、
3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、
3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、
3,3−ビス(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、
3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、
3−(2−ヘキシルオキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、
3−〔2−エトキシ−4−(N−エチルアニリノ)フェニル〕−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、
3−(2−アセトアミド−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−プロピルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、
3,6−ビス(ジフェニルアミノ)フルオラン、
3,6−ジメトキシフルオラン、
3,6−ジ−n−ブトキシフルオラン、
2−メチル−6−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)フルオラン、
3−クロロ−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、
2−メチル−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、
2−(2−クロロアミノ)−6−ジブチルアミノフルオラン、
2−(2−クロロアニリノ)−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、
2−(3−トリフルオロメチルアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、
2−(3−トリフルオロメチルアニリノ)−6−ジペンチルアミノフルオラン、
2−(ジベンジルアミノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、
2−(N−メチルアニリノ)−6−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)フルオラン、
1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン、
2−クロロ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、
2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、
2−アニリノ−3−メトキシ−6−ジエチルアミノフルオラン、
2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、
2−アニリノ−3−メトキシ−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、
2−キシリジノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、
2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)フルオラン、
1,2−ベンツ−6−ジエチルアミノフルオラン、
1,2−ベンツ−6−(N−エチル−N−イソブチルアミノ)フルオラン、
1,2−ベンツ−6−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)フルオラン、
2−(3−メトキシ−4−ドデコキシスチリル)キノリン、
スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−(ジエチルアミノ)−8−(ジエチルアミノ)−4−メチル、
スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジ−n−ブチルアミノ)−4−メチル、
スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジエチルアミノ)−4−メチル、
スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(N−エチル−N−i−アミルアミノ)−4−メチル、
スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン,2−(ジブチルアミノ)−8−(ジペンチルアミノ)−4−メチル、
4,5,6,7−テトラクロロ−3−〔4−(ジメチルアミノ)−2−メトキシフェニル〕−3−(1−ブチル−2−メチル−1H−インドール−3−イル)−1(3H)−イソベンゾフラノン、
4,5,6,7−テトラクロロ−3−〔4−(ジエチルアミノ)−2−エトキシフェニル〕−3−(1−エチル−2−メチル−1H−インドール−3−イル)−1(3H)−イソベンゾフラノン、
4,5,6,7−テトラクロロ−3−〔4−(ジエチルアミノ)−2−エトキシフェニル〕−3−(1−ペンチル−2−メチル−1H−インドール−3−イル)−1(3H)−イソベンゾフラノン、
4,5,6,7−テトラクロロ−3−[4−(ジエチルアミノ)−2−メチルフェニル]−3−(1−エチル−2−メチル−1H−インドール−3−イル)−1(3H)−イソベンゾフラノン、
3′,6′−ビス〔フェニル(2−メチルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9′−〔9H〕キサンテン]−3−オン、
3′,6′−ビス〔フェニル(3−メチルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9′−〔9H〕キサンテン]−3−オン、
3′,6′−ビス〔フェニル(3−エチルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9′−〔9H〕キサンテン]−3−オン、
2,6−ビス(2′−エチルオキシフェニル)−4−(4′−ジメチルアミノフェニル)ピリジン、
2,6−ビス(2′,4′−ジエチルオキシフェニル)−4−(4′−ジメチルアミノフェニル)ピリジン、
2−(4′−ジメチルアミノフェニル)−4−メトキシ−キナゾリン、
4,4′−(エチレンジオキシ)−ビス〔2−(4−ジエチルアミノフェニル)キナゾリン〕
等を挙げることができる。
【0016】
なお、フルオラン化合物としては、キサンテン環を形成するフェニル基に置換基を有する化合物の他、キサンテン環を形成するフェニル基に置換基を有すると共にラクトン環を形成するフェニル基にも置換基(例えば、メチル基等のアルキル基、クロロ基等のハロゲン原子)を有する青色や黒色を呈する化合物であってもよい。
【0017】
これらの(イ)成分は、2種類以上を組み合わせて用いることができる。(イ)成分の組み合わせによって、多様な着色を実現できる。
【0018】
(ロ)電子受容性化合物
本発明において用いられる、(ロ)即ち電子受容性化合物は、(イ)成分から電子を受け取り、(イ)成分の顕色剤として機能する化合物である。この(ロ)成分として用いられる化合物は、一般式(B)で示される化合物であり、ヒドロキシ安息香酸エステルと呼ばれる。
【化3】
【0019】
式中、Rは炭素数10〜22、好ましくは16〜22のアルキル基を示す。炭素数が10未満或いは22を越えるアルキル基を有する化合物は結晶性が低いため、熱変色性能が不十分となることがあり、実用性を十分満足できない場合がある。変色特性、発色濃度等、より実用性能を考慮した場合、この化合物のアルキル基は、炭素数10〜20の直鎖アルキル基であることが更に好ましい。
【0020】
はそれぞれ独立に水素又は水酸基であり、Zのうち、一つまたは二つが水酸基である。特に、p位に一つの水酸基を有するもの、p位とm位に二つの水酸基を有するもの、および二つのm位にそれぞれ水酸基を有するものが好ましい。
【0021】
以下に本発明に用いることができるヒドロキシ安息香酸エステルを例示する。
3−ヒドロキシ安息香酸デシルエステル、3−ヒドロキシ安息香酸ウンデシルエステル、3−ヒドロキシ安息香酸ドデシルエステル、3−ヒドロキシ安息香酸トリデシルエステル、3−ヒドロキシ安息香酸テトラデシルエステル、3−ヒドロキシ安息香酸ペンタデシルエステル、3−ヒドロキシ安息香酸ヘキサデシルエステル、3−ヒドロキシ安息香酸ヘプタデシルエステル、3−ヒドロキシ安息香酸オクタデシルエステル、3−ヒドロキシ安息香酸ノナデシルエステル、3−ヒドロキシ安息香酸エイコシルエステル、3−ヒドロキシ安息香酸ヘンエイコシルエステル、3−ヒドロキシ安息香酸ドコシルエステル、4−ヒドロキシ安息香酸デシルエステル、4−ヒドロキシ安息香酸ウンデシルエステル、4−ヒドロキシ安息香酸ドデシルエステル、4−ヒドロキシ安息香酸トリデシルエステル、4−ヒドロキシ安息香酸テトラデシルエステル、4−ヒドロキシ安息香酸ペンタデシルエステル、4−ヒドロキシ安息香酸ヘキサデシルエステル、4−ヒドロキシ安息香酸ヘプタデシルエステル、4−ヒドロキシ安息香酸オクタデシルエステル、4−ヒドロキシ安息香酸ノナデシルエステル、4−ヒドロキシ安息香酸エイコシルエステル、4−ヒドロキシ安息香酸ヘンエイコシルエステル、4−ヒドロキシ安息香酸ドコシルエステル、3,4−ジヒドロキシ安息香酸デシルエステル、3,4−ジヒドロキシ安息香酸ウンデシルエステル、3,4−ジヒドロキシ安息香酸ドデシルエステル、3,4−ジヒドロキシ安息香酸トリデシルエステル、3,4−ジヒドロキシ安息香酸テトラデシルエステル、3,4−ジヒドロキシ安息香酸ペンタデシルエステル、3,4−ジヒドロキシ安息香酸ヘキサデシルエステル、3,4−ジヒドロキシ安息香酸ヘプタデシルエステル、3,4−ジヒドロキシ安息香酸オクタデシルエステル、3,4−ジヒドロキシ安息香酸ノナデシルエステル、3,4−ジヒドロキシ安息香酸エイコシルエステル、3,4−ジヒドロキシ安息香酸ヘンエイコシルエステル、3,4−ジヒドロキシ安息香酸ドコシルエステル、3,5−ジヒドロキシ安息香酸デシルエステル、3,5−ジヒドロキシ安息香酸ウンデシルエステル、3,5−ジヒドロキシ安息香酸ドデシルエステル、3,5−ジヒドロキシ安息香酸トリデシルエステル、3,5−ジヒドロキシ安息香酸テトラデシルエステル、3,5−ジヒドロキシ安息香酸ペンタデシルエステル、3,5−ジヒドロキシ安息香酸ヘキサデシルエステル、3,5−ジヒドロキシ安息香酸ヘプタデシルエステル、3,5−ジヒドロキシ安息香酸オクタデシルエステル、3,5−ジヒドロキシ安息香酸ノナデシルエステル、3,5−ジヒドロキシ安息香酸エイコシルエステル、3,5−ジヒドロキシ安息香酸ヘンエイコシルエステル、3,5−ジヒドロキシ安息香酸ドコシルエステル。
【0022】
なお、これらの(ロ)成分は、2種類以上組み合わせて用いることもできる。
【0023】
(ハ)反応媒体
(ハ)前記(イ)成分および(ロ)成分による電子授受反応を可逆的に生起させる反応媒体としては、鎖式炭化水素類、脂環族炭化水素類、芳香族炭化水素類、およびハロゲン化炭化水素類からなる群から選ばれる化合物が用いられる。
【0024】
前記化合物を用いることにより、極性が低いため(イ)成分と(ロ)成分の反応による発色性に対する減感性が小さく、加熱発色の変色挙動と色濃度の向上に機能する。
【0025】
なお、前記(ロ)成分の化合物、例えばヒドロキシ安息香酸エステルはアルキル基の炭素数が大きい程、結晶性が高い傾向にある。結晶性の高い(ロ)成分に対して、適当な(ハ)成分を組み合わせることにより、結晶性の高い(ロ)成分を含む可逆熱変色性組成物を低温領域良好な変色特性を有するものとすることができる。
【0026】
前記炭化水素類としては、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカン、エイコサン、ヘンエイコサン、ドコサン、トリコサン、テトラコサン、ペンタコサン、ヘキサコサン、ヘプタコサン、オクタコサン、ノナコサン、トリアコンタン等の飽和炭化水素類、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、1−ヘンエイコセン、1−ドコセン、1−トリコセン、1−テトラコセン、1−ペンタコセン、1−ヘキサコセン、1−ヘプタコセン、1−オクタコセン、1−ノナコセン、および1−トリアコンテン等の不飽和鎖式炭化水素類を例示できる。
【0027】
脂環式炭化水素類としては、シクロオクタン、シクロドデカン、n−ペンタデシルシクロヘキサン、n−オクタデシルシクロヘキサン、n−ノナデシルシクロヘキサン、およびデカヒドロナフタレン等を例示できる。
【0028】
芳香族炭化水素類としては、ドデシルベンゼン、ビフェニル、エチルビフェニル、4−ベンジルベンゼン、フェニルトリルメタン、ジフェニルエタン、1,3−ジフェニルベンゼン、ジベンジルトルエン、メチルナフタレン、2,7−ジイソプロピルナフタレン、メチルテトラリン、およびナフチルフェニルメタン等を例示できる。
【0029】
ハロゲン化炭化水素類としては、1−ブロモデカン、1−ブロモウンデカン、1−ブロモドデカン、1−ブロモトリデカン、1−ブロモテトラデカン、1−クロロテトラデカン、1−ブロモペンタデカン、1−ブロモヘキサデカン、1−クロロヘキサデカン、1−ヨードヘキサデカン、1−ブロモヘプタデカン、1−ブロモオクタデカン、1−クロロオクタデカン、1−ヨードオクタデカン、1−ブロモエイコサン、1−クロロエイコサン、1−ブロモドコサン、および1−クロロドコサン等を例示できる。
【0030】
(ニ)スチレン系化合物
本発明による組成物は、特定のスチレン系化合物を含む。ここでスチレン系化合物とはスチレンまたはその誘導体に由来する構造を有する化合物である。この化合物は、同一の繰り返し単位を複数含むポリマーであってもよいし、異なった単位が連結した構造を有する化合物であってもよい。典型的には、スチレンまたはその誘導体を繰り返し単位に含むホモポリマーまたはコポリマーであるが、重合度は高い必要は無く、数個の単位が結合したオリゴマーであってもよい。
【0031】
本発明に用いられるスチレン系化合物の軟化点は、−10℃以上であり、好ましくは5℃以上である。軟化点がこの範囲にあることにより、比較的低温での発色性が改善される。なお、軟化点の上限は特に限定されないが、一般的に使用可能なスチレン系化合物の軟化点は200℃以下である。
【0032】
また、本発明に用いられるスチレン系化合物の重量平均分子量は、200〜100,000であり、200〜6,000であることが好ましい。
【0033】
なお、本発明において重量平均分子量は、GPC法(ゲル浸透クロマトグラフ法)により測定したものである。
【0034】
前記スチレン系化合物の具体例としては、ポリスチレン、スチレン−α−メチルスチレン系共重合体、α−メチルスチレン重合体、α−メチルスチレンとビニルトルエンの共重合体等が挙げられる。
ポリスチレンとしては、三洋化成工業(株)製、商品名:ハイマーSB−75(重量平均分子量2,000)、ハイマーST−95(重量平均分子量4,000)等が用いられる。
【0035】
スチレン−α−メチルスチレン系共重合体としては、理化ハーキュレス(株)製、商品名:ピコラスチックA5(重量平均分子量317)、ピコラスチックA75(重量平均分子量917)等が用いられる。
【0036】
α−メチルスチレン重合体としては、理化ハーキュレス(株)製、商品名:クリスタレックス3085(重量平均分子量664)、クリスタレックス3100(重量平均分子量1,020)、クリスタレックス1120(重量平均分子量2,420)等が用いられる。
【0037】
α−メチルスチレンとビニルトルエンの共重合体としては、理化ハーキュレス(株)製、商品名:ピコテックスLC(重量平均分子量950)、ピコテックス100(重量平均分子量1,740)等が用いられる。
【0038】
前記スチレン系化合物は単独で用いてもよいし、2種類以上を併用して用いることもできる。
【0039】
(ホ)アルコキシフェニル化合物
本発明に用いられる組成物は、特定のアルコキシフェニル化合物を含む。この化合物は、下記一般式(E)で表されるものである。
【化4】
式中、kは2〜6の数、好ましくは2を表す。
は、炭素数12〜22、好ましくは15〜20、の直鎖アルキル基を示し、kが2以上の場合には、Rはそれぞれ同一であっても、異なっていてもよい。
【0040】
が2の場合には、下式:
【化5】
(式中、二つのRはそれぞれ同一であっても、異なっていてもよい)。
で表される、二つの−OR基がm位またはp位に結合しているものが好ましい。
【0041】
本発明に用いられる可逆熱変色性組成物は、上記(イ)〜(ホ)の成分をすべて含んでなる。前記(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)、および(ホ)の各成分の割合は、濃度、変色温度、変色形態や各成分の種類に左右されるが、一般的に所望の特性が得られる成分比は、(イ)成分1に対して、(ロ)成分0.1〜50、好ましくは0.5〜20、(ハ)成分1〜200、好ましくは5〜100、(ニ)成分0.1〜10.0、好ましくは0.5〜5.0、(ホ)成分0.02〜10、好ましくは0.5〜5.0、の範囲である(前記割合はいずれも質量部である)。
【0042】
本発明に用いられる組成物は、前記の(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)、および(ホ)成分を含むものであるが、更には機能に支障のない範囲でその他の成分を添加することができる。
【0043】
例えば、このような添加剤の一つとして、ヒドロキシフェニル酢酸エステルを挙げることができる。ヒドロキシフェニル酢酸エステルは、化学構造が(ロ)成分に近似したものであり、組成物の発色濃度や変色特性を改良する作用を有する。このようなヒドロキシフェニル酢酸エステルは、3−または4−ヒドロキシフェニル酢酸と、炭素数6〜20の脂肪酸アルコールとのエステルが好ましい。
【0044】
また、本発明に用いられる組成物は、光安定剤を含んでいてもよい。前記光安定剤としては、(イ)成分の光反応による励起状態によって生ずる光劣化を防止する紫外線吸収剤、可視光線吸収剤、赤外線吸収剤、酸化防止剤、カロチン類、色素類、アミン類、フェノール類、ニッケル錯体類、スルフィド類等の一重項酸素消光剤、オキシドジスムスターゼとコバルト、及びニッケルの錯体等のスーパーオキシドアニオン消光剤、オゾン消光剤等、酸化反応を抑制する化合物が挙げられ、0.3〜24重量%、好ましくは0.8〜16重量%の割合で系中に配合される。なかでも、前記紫外線吸収剤と、酸化防止剤及び/又は一重項酸素消光剤を併用した系にあっては、耐光性の向上に特に効果的である。
【0045】
また、本発明に用いられる組成物には、そのほかの添加剤、例えば樹脂、架橋剤、硬化剤、乾燥剤、可塑剤、粘度調整剤、分散剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、酸化防止剤、溶解助剤、沈降防止剤、平滑剤、ゲル化剤、消泡剤、つや消し剤、浸透剤、pH調整剤、発泡剤、カップリング剤、保湿剤、防かび剤、防腐剤、防錆剤等を必要に応じて添加して機能を向上させることもできる。更には、一般的な非熱変色性の染料または顔料を配合することもできる。
【0046】
[マイクロカプセル顔料]
本発明において、前記組成物はマイクロカプセルに内包して使用される。組成物をマイクロカプセルに内包することにより、組成物が酸性物質、塩基性物質、過酸化物等の化学的に活性な物質又は他の溶剤成分と接触しても、その機能を低下させることがなくなり、耐熱安定性が保持できる。さらには組成物がマイクロカプセル内に保持されるので、種々の使用条件において組成物は同一の組成に保たれ、同一の作用効果を奏することができるからである。
【0047】
マイクロカプセル顔料の平均粒子径が小さいと、インキ組成物、塗料、或いは熱可塑性樹脂中へのブレンドに際して、分散安定性や加工適性が改善される傾向にあり、また、顔料を微粒子化することにより、ヒステリシス曲線におけるΔHを大きくすることができる。一方、平均粒子径が大きいと、高濃度の発色性を示すことができる傾向にある。このような観点から、本発明におけるマイクロカプセル顔料の平均粒子径は、0.1〜100μmであることが好ましく、3〜30μmの範囲であることがより好ましい。なお、粒子径、粒度分布の測定はレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置〔株式会社堀場製作所製;LA−300〕を用いて測定し、その数値を基に平均粒子径(メジアン径)を体積基準で算出することができる。
【0048】
尚、マイクロカプセル化は、公知の界面重合法、in Situ重合法、液中硬化被覆法、水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライング法等があり、用途に応じて適宜選択される。更にマイクロカプセルの表面には、目的に応じて更に二次的な樹脂皮膜を設けて耐久性を付与させたり、表面特性を改質させて実用に供することもできる。
【0049】
マイクロカプセル顔料を構成する内包物と壁膜との構成比は、内包物:壁膜=7:1〜1:(質量比)の範囲であることが好ましく、その比率が前記した範囲内にあることにより、発色時の色濃度及び鮮明性の低下を防止することができる。より好適には、内包物:壁膜=6:1〜1:1(質量比)である。
【0050】
前記マイクロカプセル顔料は、膜形成材料であるバインダーを含む媒体中に分散されて、インキ、塗料などの可逆熱変色性材料として適用され、従来より公知の方法、例えば、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビヤ印刷、コーター、タンポ印刷、転写等の印刷手段、刷毛塗り、スプレー塗装、静電塗装、電着塗装、流し塗り、ローラー塗り、浸漬塗装、等の手段により、紙、合成紙、布帛、植毛或いは起毛布、不織布、合成皮革、レザー、プラスチック、ガラス、陶磁器、木材、石材等の支持体上に可逆熱変色層を形成したり、或いは支持体中に分散することができる。
【0051】
更には、溶融状態の熱可塑性プラスチック中に混練して一体化された材料として適用できる。
【0052】
前記(イ)〜(ホ)成分を含んでなる組成物を内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の変色特性を説明すると以下の通りである。
消色状態を呈する可逆熱変色性組成物は、加熱過程において発色開始温度(T)の温度より発色し始め、完全発色温度(T)に達すると完全発色状態となり、降温する過程で消色誘発温度迄冷却した可逆熱変色性組成物は放置すると消色する。
【0053】
以下に本発明によるマイクロカプセル顔料のヒステリシス特性を図1の色濃度−温度曲線で表されるグラフに基づき説明する。
【0054】
図1において、縦軸に色濃度、横軸に温度が表されている。温度変化による色濃度は矢印に沿って変化する。ここで、Aは完全消色状態に達する温度T(以下、完全消色温度と称す)における濃度を示す点であり、Cは完全発色状態を保持できる温度T(以下、消色開始温度と称す)における濃度を示す点であり、Bは完全消色状態を保持できる温度T(以下、発色開始温度と称す)における濃度を示す点であり、Dは完全発色状態に達する温度T(以下、完全発色温度と称す)における濃度を示す点である。
【0055】
変色温度領域はTとT間の温度域であり、TとTの間の温度域が実質変色温度域、即ち、着色状態或いは消色状態のいずれかの状態を保持できる温度域である。
【0056】
具体的には、消色状態にある組成物を、発色開始温度(T)以上の温度まで加熱することにより発色状態への変化を開始させることができ、完全発色温度(T)以上の温度に加熱することにより完全な発色状態とすることができ、組成物の温度を消色開始温度(T)まで下げない限り、その状態を維持することができる。
なお、本発明によるマイクロカプセル顔料における前記完全発色温度(T)は、100℃以下、好ましくは80℃以下である。このような比較的低温で完全な発色が実現できることは本発明の特徴のひとつである。
【0057】
また、発色状態にある組成物を冷却し、消色開始温度(T)以下の温度まで冷却することにより消色状態への変化を開始させることができ、完全消色温度(T)以下の温度まで冷却することにより完全な消色状態とすることができ、組成物の温度を発色開始温度(T)まで上げない限り、その状態を維持することができる。
【0058】
また、線分EFの長さが変色のコントラストを示す尺度であり、線分HGの長さがヒステリシスの程度を示す温度幅(以下、ヒステリシス幅といい、ΔHで表す)であり、このΔH値が大きい程、変色前後の各状態の保持が容易である。ここで、TとTの差、或いは、TとTの差が変色の鋭敏性を示す尺度であり、それぞれ、1〜15℃の範囲、であることが好ましく、1〜10℃の範囲であることがより好ましい。
【0059】
なお、本発明に用いられるマイクロカプセル顔料は、原則的に上記のような色濃度−温度曲線を示すものであるが、特定の条件によっては異なった色濃度−温度曲線を示す場合がある。例えば、DからCを経てAの状態になるとき、雰囲気温度が非常に低い場合には、図2に示すような色濃度−温度曲線を示すことがある。すなわち、発色したマイクロカプセル顔料を冷却しても完全に消色しないような場合A’の状態となることがあり得る。
これは、(イ)成分と(ロ)成分との呈色反応によって生成した着色物質が冷却によって解離して消色する前に、着色物質の周囲に存在する反応媒体等の結晶化が先に進行してしまうことが理由と考えられる。
【0060】
しかしながら、本発明によるマイクロカプセル顔料は、冷却速度が遅い場合には図1に示すような色濃度−温度曲線を示し、仮に冷却速度が速く、完全に消色しない状態A’になったとしても、著しく低い温度でなければ、矢印で示されるように、徐々に消色が進行して、Aの状態に移行する。
【0061】
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料は、必要により添加剤を含むビヒクル中に分散させて液状組成物とすることで、(i)スクリーン印刷、オフセット印刷、プロセス印刷、グラビヤ印刷、コーター、タンポ印刷等に用いられる印刷インキ、(ii)刷毛塗り、スプレー塗装、静電塗装、電着塗装、流し塗り、ローラー塗り、浸漬塗装等に用いられる塗料、(iii)マーキングペン用、ボールペン用、万年筆用、筆ペン用等の筆記具用インキや,(iv)塗布具用インキ、(v)絵の具、(vi)化粧料、または(vii)繊維用着色液等の可逆熱変色性液状組成物に利用できる。
【0062】
添加剤としては、樹脂、架橋剤、硬化剤、乾燥剤、可塑剤、粘度調整剤、分散剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、溶解助剤、沈降防止剤、平滑剤、ゲル化剤、消泡剤、つや消し剤、浸透剤、pH調整剤、発泡剤、カップリング剤、保湿剤、防かび剤、防腐剤、防錆剤等が挙げられる。
【0063】
本発明による液状組成物のビヒクルとしては、有機溶剤を含む油性ビヒクル、或いは、水と、必要により有機溶剤を含む水性ビヒクルが挙げられる。
【0064】
本発明において用いることができる有機溶剤としては、エタノール、プロパノール、ブタノール、グリセリン、ソルビトール、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、チオジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、スルフォラン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等を挙げることができる。
【0065】
液状組成物としては、ビヒクル中に剪断減粘性付与剤を含む剪断減粘性液状組成物、ビヒクル中に水溶性高分子凝集剤を含み、顔料を緩やかな凝集状態に懸濁させた凝集性液状組成物を挙げることができる。
【0066】
液状組成物が剪断減粘性付与剤を含むことにより、例えばインキ組成物として利用した場合に、顔料の凝集、沈降を抑制することができると共に、筆跡の滲みを抑制することができるため、良好な筆跡を形成できる。
【0067】
更に、剪断減粘性付与剤を含むインキ組成物をボールペンに充填する場合、不使用時のボールとチップの間隙からのインキ漏れを防止したり、筆記先端部を上向き(正立状態)で放置した場合のインキ組成物の逆流を防止することができる。
【0068】
剪断減粘性付与剤としては、キサンタンガム、ウェランガム、構成単糖がグルコースとガラクトースの有機酸修飾ヘテロ多糖体であるサクシノグリカン(平均分子量約100万乃至800万)、グアーガム、ローカストビーンガム及びその誘導体、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸アルキルエステル類、メタクリル酸のアルキルエステルを主成分とする分子量10万〜15万の重合体、グルコマンナン、寒天やカラゲニン等の海藻より抽出されるゲル化能を有する増粘多糖類、ベンジリデンソルビトール及びベンジリデンキシリトール又はこれらの誘導体、架橋性アクリル酸重合体、無機質微粒子、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、脂肪酸アミド等のHLB値が8〜12のノニオン系界面活性剤、ジアルキル又はジアルケニルスルホコハク酸の塩類。N−アルキル−2−ピロリドンとアニオン系界面活性剤の混合物、ポリビニルアルコールとアクリル系樹脂の混合物を例示できる。
【0069】
本発明に用いることができる水溶性高分子凝集剤としては、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、水溶性多糖類等が挙げられる。
【0070】
水溶性多糖類としてはトラガントガム、グアーガム、プルラン、サイクロデキストリン、水溶性セルロース誘導体等が挙げられ、水溶性セルロース誘導体の具体例としてはメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等が挙げられる。
【0071】
また、液状組成物をインキ組成物としてボールペンに充填して用いる場合は、オレイン酸等の高級脂肪酸、長鎖アルキル基を有するノニオン性界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーンオイル、チオ亜燐酸トリ(アルコキシカルボニルメチルエステル)やチオ亜燐酸トリ(アルコキシカルボニルエチルエステル)等のチオ亜燐酸トリエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸モノエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸ジエステル、或いは、それらの金属塩、アンモニウム塩、アミン塩、アルカノールアミン塩等の潤滑剤を添加してボール受け座の摩耗を防止することが好ましい。
【0072】
更に、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール及び/又はその塩を含有させることにより、インキのpHが酸性或いはアルカリ領域であっても、一度凍結したインキが再度解凍された後に生じるマイクロカプセル顔料の分散不良や凝集を抑制でき、インキの粘度の上昇やそれに伴う筆跡カスレや淡色化を防止することができると共に、ボールペンに用いる場合はボールの腐食を防止することもできる。
【0073】
その他、必要に応じて(i)アクリル樹脂、スチレンマレイン酸共重合物、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、デキストリン等の、紙面への固着性や粘性を付与する樹脂、(ii)炭酸ナトリウム、燐酸ナトリウム、酢酸ソーダ等の無機塩類、水溶性のアミン化合物等の有機塩基性化合物等のpH調整剤、(iii)ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、サポニン等の防錆剤、(iv)フェノール、1,2−ベンズチアゾリン3−オンのナトリウム塩、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸プロピル、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルフォニル)ピリジン等の防腐剤或いは防黴剤、(v)尿素、ノニオン系界面活性剤、還元又は非還元デンプン加水分解物、トレハロース等のオリゴ糖類、ショ糖、サイクロデキストリン、ぶどう糖、デキストリン、ソルビット、マンニット、ピロリン酸ナトリウム等の湿潤剤、(vi)消泡剤、(vii)分散剤、(viii)インキ組成物の浸透性を向上させるフッ素系界面活性剤やノニオン系の界面活性剤を添加してもよい。
【0074】
液状組成物の全質量に対し、好ましくは5〜40質量%、より好ましくは10〜40質量%、さらに好ましくは10〜30質量%の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を含有することができる。マイクロカプセル顔料の含有量が上記の範囲であることにより、望ましい発色濃度が達成でき、更にインキ組成物として用いた場合にはその流出性の低下を防止することができる。
【0075】
本発明による液状組成物を収容することができる筆記具について説明する。一実施形態において、筆記具は、インキ組成物を収容した軸筒及び軸筒内のインキを導出するペン体を備えてなる。ペン体としては、マーキングペン体、ボールペン体、筆ペン体等が挙げられる。マーキングペン体としては、繊維チップ、フェルトチップ、プラスチックチップ等のマーキングチップが挙げられる。ボールペン体としては、ボールペンチップが挙げられる。
【0076】
以下に、本発明による液状組成物をインキ組成物としてボールペン、またはマーキングペンに使用する場合についてより詳細に説明する。
【0077】
本発明によるインキ組成物をボールペンに充填する場合、ボールペン自体の構造、形状は特に限定されるものではなく、例えば、軸筒内に剪断減粘性インキを充填したインキ収容管を有し、該インキ収容管はボールを先端部に装着したボールペンチップに連通しており、さらに収容管内のインキ組成物の端面には逆流防止用の液栓が密接しているボールペンを例示できる。
【0078】
ボールペンチップについて更に詳しく説明すると、金属製のパイプの先端近傍を外面より内方に押圧変形させたボール抱持部にボールを抱持してなるチップ、或いは、金属材料をドリル等による切削加工により形成したボール抱持部にボールを抱持してなるチップ、金属又はプラスチック製チップ内部に樹脂製のボール受け座を設けたチップ、或いは、チップに抱持するボールをバネ体により前方に付勢させたもの等を適用できる。
【0079】
又、ボールは、超硬合金、ステンレス鋼、ルビー、セラミック、樹脂、ゴム等を材料とするものを用いることができる、ボールの直径は、好ましくは0.3〜2.0mm、より好ましくは0.3〜1.5mm、さらに好ましくは0.3〜1.0mmである。
【0080】
インキ組成物を収容するインキ収容管は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等の熱可塑性樹脂からなる成形体、金属製管状体が用いられる。
【0081】
インキ収容管にはチップを直接連結する他、接続部材を介してインキ収容管とチップを連結してもよい。
【0082】
尚、前記インキ収容管はレフィルの形態として、レフィルを樹脂製、金属製等の軸筒内に収容するものでもよいし、先端部にチップを装着した軸筒自体をインキ収容体として、前記軸筒内に直接インキを充填してもよい。
【0083】
ボールペンは、ボールペンチップを覆うキャップを備えているものであってもよいし、キャップを備えていない出没式ボールペンであってもよい。
【0084】
インキ収容管に収容されたインキ組成物の後端の端面にはインキ逆流防止体組成物が充填されるのが一般的である。
【0085】
インキ逆流防止体組成物は不揮発性液体又は難揮発性液体からなる。具体的には、ワセリン、スピンドル油、ヒマシ油、オリーブ油、精製鉱油、流動パラフィン、ポリブテン、α−オレフィン、α−オレフィンのオリゴマーまたはコオリゴマー、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、脂肪酸変性シリコーンオイル等があげられ、一種又は二種以上を併用することもできる。
【0086】
不揮発性液体及び/又は難揮発性液体は、増粘剤を添加して好適な粘度まで増粘させることが好ましく、増粘剤としては表面を疎水処理したシリカ、表面をメチル化処理した微粒子シリカ、珪酸アルミニウム、膨潤性雲母、疎水処理を施したベントナイトやモンモリロナイトなどの粘土系増粘剤、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛等の脂肪酸金属石鹸、トリベンジリデンソルビトール、脂肪酸アマイド、アマイド変性ポリエチレンワックス、水添ひまし油、脂肪酸デキストリン等のデキストリン系化合物、セルロース系化合物等を挙げることができる。
【0087】
更に、液状のインキ逆流防止体と、固体のインキ逆流防止体を併用することもできる。
【0088】
本発明によるインキ組成物をマーキングペンに充填する場合、マーキングペン自体の構造、形状は特に限定されるものではなく、例えば、軸筒内に繊維集束体からなるインキ吸蔵体を内蔵し、毛細間隙が形成された繊維加工体からなるマーキングペンチップを直接或いは中継部材を介して軸筒に装着してなり、インキ吸蔵体とチップが連結されてなるマーキングペンのインキ吸蔵体に凝集性インキを含浸させたマーキングペンや、チップの押圧により開放する弁体を介してチップとインキ収容管とを配置し、インキ収容管内にインキを直接収容させたマーキングペン等を例示できる。
【0089】
チップは、繊維の樹脂加工体、熱溶融性繊維の融着加工体、フェルト体等の従来より汎用の気孔率が概ね30〜70%の範囲から選ばれる連通気孔の多孔質部材であり、一端を砲弾形状、長方形状、チゼル形状等の目的に応じた形状に加工して実用に供される。
【0090】
インキ吸蔵体は、捲縮状繊維を長手方向に集束させたものであり、プラスチック筒体やフィルム等の被覆体に内在させて、気孔率が概ね40〜90%の範囲に調整して構成される。
【0091】
また、弁体は、従来より汎用のポンピング式形態が使用できるが、筆圧により押圧開放可能なバネ圧に設定したものが好適である。
【0092】
なお、本発明によるインキを収容した筆記具を用いて被筆記面に筆記して得られる筆跡は、加熱具又は冷却具により変色させることができる。
【0093】
加熱具としては、抵抗発熱体を装備した通電加熱変色具、温水等を充填した加熱変色具、ヘアドライヤーの適用が挙げられるが、好ましくは、簡便な方法により変色可能な手段として摩擦部材が用いられる。特に、擦過時に実質的に磨耗しない弾性体が好ましい。
【0094】
摩擦部材としては、弾性感に富み、擦過時に適度な摩擦を生じて摩擦熱を発生させることのできるエラストマー、プラスチック発泡体等の弾性体が好適である。
【0095】
なお、鉛筆による筆跡を消去するための、一般的な消しゴムを使用して筆跡を摩擦することもできるが、摩擦時に消しカスが発生するため、消しカスが殆ど発生しない前述の摩擦部材が好適に用いられる。
【0096】
摩擦部材の材質としては、シリコーン樹脂やSEBS樹脂(スチレンエチレンブタジエンスチレンブロック共重合体)、ポリエステル系樹脂等が用いられる。
【0097】
摩擦部材は筆記具と別体の任意形状の部材(摩擦体)とを組み合わせて筆記具セットを得ることもできるが、筆記具に摩擦部材を設けることにより、携帯性に優れる。
【0098】
キャップを備える筆記具の場合、摩擦部材を設ける箇所は特に限定されるものではないが、例えば、キャップ自体を摩擦部材により形成したり、軸筒自体を摩擦部材により形成したり、クリップを設ける場合はクリップ自体を摩擦部材により形成したり、キャップ先端部(頂部)或いは軸筒後端部(筆記先端部を設けていない部分)に摩擦部材を設けることができる。
【0099】
出没式の筆記具の場合、摩擦部材を設ける箇所は特に限定されるものではないが、例えば、軸筒自体を摩擦部材により形成したり、クリップを設ける場合はクリップ自体を摩擦部材により形成したり、軸筒開口部近傍、軸筒後端部(筆記先端部を設けていない部分)或いはノック部に摩擦部材を設けることができる。
【0100】
冷却具としては、ペルチエ素子を利用した冷熱変色具、冷水、氷片等の冷媒を充填した冷熱変色具、冷蔵庫や冷凍庫の適用が挙げられる。
【0101】
可逆熱変色性液状組成物を塗布又は印刷する場合、支持体の材質は特定されず、総て有効であり、紙、合成紙、繊維、布帛、合成皮革、レザー、プラスチック、ガラス、陶磁材、金属、木材、石材等を例示でき、平面状に限らず、凹凸状であってもよい。
【0102】
支持体上に、可逆熱変色性組成物を含む層を設けることによって、可逆熱変色層を具備して積層体(印刷物)が得られる。
【0103】
支持体上に非熱変色性着色層(像を含む)が予め形成されているものにあっては、温度変化により着色層を、可逆熱変色層によって隠顕させることができ、変化の様相を更に多様化させることができる。
【0104】
更に、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ワックス類等に溶融ブレンドしてペレット、粉末、又はペースト形態として可逆熱変色性成形用樹脂組成物として利用することもでき、汎用の射出成形、押出成形、ブロー成形、又は注型成形等の手段により、任意形象の立体造形物、フィルム、シート、板、フィラメント、棒状物、パイプ等の形態の成形体が得られる。
【0105】
また、熱可塑性樹脂やワックス類に溶融ブレンドしてクレヨンを得ることもできる。
【0106】
なお、マイクロカプセル顔料、液状組成物、または樹脂組成物中には、一般の染顔料(非熱変色性)を配合し、有色(1)から有色(2)への変色挙動を呈することもできる。
【0107】
積層体、或いは、樹脂組成物を用いて成形した成形体上には、光安定剤及び/又は透明性金属光沢顔料を含む層を積層することによって耐光性を向上させたり、或いは、トップコート層を設けて耐久性を向上させることもできる。
【0108】
光安定剤としては、紫外線吸収剤、酸化防止剤、一重項酸素消光剤、スーパーオキシドアニオン消光剤、オゾン消光剤を例示できる。
【0109】
透明性金属光沢顔料としては、芯物質として天然雲母、合成雲母、ガラス片、アルミナ、透明性フィルム片の表面を酸化チタン等の金属酸化物で被覆した顔料を例示できる。
【0110】
可逆熱変色性組成物及びそれを内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料およびインキ組成物を用いた製品として具体的には、以下のものを例示することができる。
(1)玩具類
人形又は動物形象玩具、人形又は動物形象玩具用毛髪、人形の家や家具、衣類、帽子、鞄、および靴等の人形用付属品、アクセサリー玩具、ぬいぐるみ、描画玩具、玩具用絵本、ジグソーパズル等のパズル玩具、積木玩具、ブロック玩具、粘土玩具、流動玩具、こま、凧、楽器玩具、料理玩具、鉄砲玩具、捕獲玩具、背景玩具および乗物、動物、植物、建築物、および食品等を模した玩具等、
(2)衣類
Tシャツ、トレーナー、ブラウス、ドレス、水着、レインコート、およびスキーウェア等の被服、靴や靴紐等の履物、ハンカチ、タオル、およびふろしき等の布製身の回り品、手袋、ネクタイ、帽子等、
(3)屋内装飾品
絨毯、カーテン、カーテン紐、テーブル掛け、敷物、クッション、額縁、造花、写真立て等、
(4)家具
布団、枕、マットレス等の寝具、照明器具および冷暖房器具等、
(5)装飾品
指輪、腕輪、ティアラ、イヤリング、髪止め、付け爪、リボン、およびスカーフ等時計、眼鏡等、
(6)文房具類
筆記具、スタンプ具、消しゴム、下敷き、定規、粘着テープ等、
(7)日用品
口紅、アイシャドー、マニキュア、染毛剤、付け爪、付け爪用塗料等の化粧品、歯ブラシ等、
(8)台所用品
コップ、皿、箸、スプーン、フォーク、鍋、フライパン等、
(9)その他
カレンダー、ラベル、カード、記録材、および偽造防止用の各種印刷物、絵本等の書籍、鞄、包装用容器、刺繍糸、運動用具、釣り具、コースター、楽器、カイロ、蓄冷剤、財布等の袋物、傘、乗物、建造物、温度検知用インジケーター、および教習具等。
【実施例】
【0111】
下記成分を配合して、加温溶融して相溶体として可逆熱変色性組成物を調製した。
(イ)成分: 2−(ジブチルアミノ)−8−(ジペンチルアミノ)−4−メチル‐スピロ[5H−[1]ベンゾピラノ[2,3−g]ピリミジン−5,1’(3’H)−イソベンゾフラン]−3−オン 1質量部
(ロ)成分: 4−ヒドロキシ安息香酸ヘキサデシル 8質量部
(ハ)成分: ヘキサデカン 20質量部
(ニ)成分: 低分子量ポリスチレン樹脂(軟化点75℃) 5質量部
(ホ)成分: 1,4−ジデシルオキシベンゼン 1質量部
【0112】
この組成物を、エポキシ樹脂及びアミン硬化剤による界面重合反応により形成されたエポキシ樹脂皮膜中に内包して、マイクロカプセル形態の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料(実施例1)を得た。
このマイクロカプセル顔料をエチレン−酢酸ビニルエマルジョン中に分散した可逆熱変色性インキをスクリーン印刷により上質紙に印刷した印刷物を測定試料とした。
同様にして、各成分の種類を表1に記載したように変更して、実施例2〜9、比較例1〜2の測定試料を作成した。
【0113】
各測定試料を色差計〔TC−3600型色差計、(株)東京電色製〕の所定箇所にセットし、消色状態から速度10℃/分にて加熱する。加熱により呈色反応が進行して、ピンク色の発色が認められる。完全発色状態になるまで加熱した後、速度10℃/分で冷却した。各段階における温度と試料の色濃度からヒステリシス曲線を作成した。図3に実施例1のマイクロカプセル顔料のヒステリシス曲線を示す。これらのヒステリシス曲線から、発色開始温度(T)、完全発色温度(T)、消色開始温度(T)、および完全消色温度(T)を求めた。得られた結果は表1に示すとおりであった。なお、発色濃度および消色濃度は、蛍光分光濃度計FD−7型(商品名:コニカミノルタ株式会社製)を用いて測定し、その絶対濃度を記載した。
【0114】
【表1】
表中
A1: 2−(ジブチルアミノ)−8−(ジペンチルアミノ)−4−メチル‐スピロ[5H−[1]ベンゾピラノ[2,3−g]ピリミジン−5,1’(3’H)−イソベンゾフラン]−3−オン
B1: 4−ヒドロキシ安息香酸ヘキサデシル
B2: 4−ヒドロキシ安息香酸オクタデシル
C1: ヘキサデカン
C2: ペンタデカン
D1: 低分子量ポリスチレン樹脂、軟化点75℃(商品名:ピコラスチックA−75)
E1: 1,4−ジデシルオキシベンゼン(E−ii、R=C1021
E2: 1,4−ジウンデシルオキシベンゼン(E−ii、R=C1123
E3: 1,4−ジセチルオキシベンゼン(E−ii、R=C1633
E4: 1,3−ジテトラデシルオキシベンゼン(E−i、R=C1429
E5: 1,3−ジセチルオキシベンゼン(E−i、R=C1633
【0115】
実施例1のヒステリシス曲線から、本発明によるマイクロカプセル顔料は、約33℃で着色を開始し、約44℃で完全に着色することがわかる。このような室温に近い温度で十分な濃度が得られる顔料は従来知られていなかった。さらにこの着色した顔料は、冷却により、約17℃で消色を開始し、約10℃で完全に消色状態になる。
【0116】
なお、図3に示されたヒステリシス曲線では冷却後の濃度が、発色前の濃度に一致していない。これは冷却速度が速いことに起因するものである。冷却後の測定試料を室温放置することにより、濃度は発色前の濃度まで低下することが確認された。そして、表1の結果からも明らかなように、実施例1〜9のいずれも、比較例1および2に対して、発色濃度が高く、また消色時の色残りが少なかった。
【0117】
発色開始温度
完全発色温度
消色開始温度
完全消色温度
図1
図2
図3