(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本願発明の実施形態の説明]
最初に本願発明の実施形態の内容を列記して説明する。
(1)本願発明の一実施形態は、基板上に設けられたグラフェン層と、前記グラフェン層上に設けられたソース電極およびドレイン電極と、前記グラフェン層上に設けられたゲート絶縁膜と、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間における前記ゲート絶縁膜上に設けられた第1ゲート電極と、前記第1ゲート電極と前記ドレイン電極との間であり、かつ前記基板内に設けられた第2ゲート電極と、を具備する半導体装置である。これにより、第1ゲート電極と第2ゲート電極との距離を小さくでき、半導体装置の性能を向上させることができる。
(2)前記グラフェン層と第2ゲート電極との間に設けられた絶縁膜を具備することが好ましい。これにより、グラフェン層と第2ゲート電極との電気的接触を抑制できる。
(3)前記第2ゲート電極は、前記基板の一部を介し前記グラフェン層下に設けられていることが好ましい。これにより、グラフェン層と第2ゲート電極との電気的接触を抑制できる。
(4)上面視において、前記第1ゲート電極の前記ドレイン電極側の一部に前記第2ゲート電極の前記ソース電極側の一部が重なることが好ましい。これにより、半導体装置の性能を向上させることができる。
(5)前記第2ゲート電極には、基準電位が供給されることが好ましい。これにより、半導体装置の性能を向上させることができる。
(6)前記第2ゲート電極には、前記ソース電極に供給される電位が供給されることが好ましい。これにより、半導体装置の性能を向上させることができる。
【0010】
[本願発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態にかかる半導体装置の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【実施例1】
【0011】
図1は、実施例1に係るFETの断面図である。
図1に示すように、基板10上に絶縁膜13を介しグラフェン層12が形成されている。活性領域以外のグラフェン層12および絶縁膜13は除去されている。グラフェン層12上にソース電極24およびドレイン電極26が設けられている。グラフェン層12上のソース電極24とドレイン電極26との間にゲート絶縁膜14を介し第1ゲート電極20が形成されている。第1ゲート電極20よりドレイン電極26側の基板10内に第2ゲート電極22が設けられている。ゲート絶縁膜14は、グラフェン層12上に形成された酸化アルミニウム膜16と酸化アルミニウム膜16上に形成された酸化シリコン膜18とを有している。絶縁膜13は例えば酸化シリコン膜である。非活性領域からソース電極24およびドレイン電極26上に配線30が設けられている。
【0012】
第1ゲート電極20および第2ゲート電極22のゲート長をそれぞれLg1およびLg2とする。上面視において、第1ゲート電極20と第2ゲート電極22とが重なる距離をLopとする。
【0013】
図2は、実施例1に係るFETの等価回路図である。
図2に示すように、ソース電極24とドレイン電極26の間に第1ゲート電極20および第2ゲート電極22が設けられている。第1ゲート電極20には、ゲート電圧Vgが印加され、第2ゲート電極22には基準電位Vrefが印加される。基準電位Vrefを適切に設定することにより、ドレイン電極26から第1ゲート電極20下のチャネルにホールが注入されることを抑制できる。これにより、高いドレイン電圧におけるチャネル内のホール濃度の増加を抑制できる。このため、ドレイン電流が飽和し、ドレインコンダクタンスを抑制できる。よって、最大発振周波数fmax等のFET性能を向上させることができる。チャネルへのホールの供給を抑制するため、基準電位Vrefは第1ゲート電極20に印加されるバイアス電圧より高いことが好ましい。例えば、第2ゲート電極22は、ソース電極24に電気的に接続され、同電位となっていることが好ましい。
【0014】
[比較例1]
実施例1の効果について説明するため、比較例1についてシミュレーションを行った。
図3は、比較例1のシミュレーションに用いた2次元構造を示す図である。Xは平面方向、Yは高さ方向を示している。
図3に示すように、比較例1には絶縁膜13は設けられていない。第2ゲート電極22は、第1ゲート電極20とドレイン電極26との間のゲート絶縁膜14上に設けられている。第1ゲート電極20および第2ゲート電極22は、チタン膜20a、金膜20bおよびニッケル膜20cを有している。第1ゲート電極20および第2ゲート電極22のゲート長をそれぞれLg1およびLg2とする。第1ゲート電極20と第2ゲート電極22との距離をLggとする。第1ゲート電極20とソース電極24との距離および第2ゲート電極22とドレイン電極26との距離をLgoとする。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0015】
シミュレーション条件を以下に示す。
基板10:6H−SiC基板
グラフェン層12:膜厚が0.35nm
酸化アルミニウム(Al
2O
3)膜16:膜厚が5nm
酸化シリコン(SiO
2)膜18:膜厚が30nm
チタン膜(Ti)20a:膜厚が5nm
金(Au)膜20b:膜厚が150nm
ニッケル(Ni)膜20c:膜厚が15nm
ソース電極24、ドレイン電極26:膜厚が15nmのニッケル(Ni)膜
Lg1=Lg2=0.3μm
Lgo=0.01μm
Lgg:0.02μm、0.2μm、0.5μmおよび1.0μm
第1ゲート電極20に印加される電圧Vg1=2V
第2ゲート電極22に印加される電圧Vg1=5V
ソース電極24に印加される電圧Vs=0V
ドレイン電極26に印加される電圧Vd=3V
【0016】
図4は、比較例2における周波数に対するh21を示す図である。
図4において、電流利得h21が0dBの周波数がほぼ遮断周波数f
Tに相当する。
図4に示すように、距離Lggが大きくなると電流利得が小さくなり、遮断周波数f
Tが小さくなる。これは、第1ゲート電極20と第2ゲート電極22との間のグラフェン層12が第1ゲート電極20下のグラフェン層12とドレイン電極26との間の直列抵抗となる。ゲート長Lg1が小さくなると、この直列抵抗よる寄生抵抗の影響がより大きくなる。このため、距離Lggが大きくなると電流利得h21および遮断周波数f
Tが小さくなるものと考えられる。
【0017】
このように、距離Lggを小さくすることが好ましい。しかしながら、グラフェン層12の同じ面に設けられた第1ゲート電極20と第2ゲート電極22の距離を小さくすることはむずかしい。
【0018】
実施例1によれば、第1ゲート電極20とドレイン電極26との間であり、かつ基板10内に第2ゲート電極22が設けられている。これにより、第1ゲート電極20と第2ゲート電極22との距離を小さくできる。よって、半導体装置の性能(例えば電流利得および遮断周波数)を向上させることができる。
【0019】
上面視において、第1ゲート電極20のドレイン電極26側の一部に第2ゲート電極22のソース電極24側の一部が重なる。すなわち
図1の距離Lopが正である。これにより、第1ゲート電極20と第2ゲート電極22との間のグラフェン層12をなくすことができる。よって、第1ゲート電極20下のチャネルとドレイン電極26との間の直列抵抗を小さくできる。よって、最大発振周波数fmaxおよび遮断周波数f
T等のFET性能を向上できる。距離Lopは第1ゲート電極20のゲート長Lg1の5%以上が好ましく10%以上がより好ましい。距離Lopが大きいと、第1ゲート電極20がゲートとして機能しなくなる。よって、距離Lopは第1ゲート電極20のゲート長Lg1の50%以下が好ましく、20%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましい。
【0020】
第1ゲート電極20と第2ゲート電極22とは重なっていなくともよい。直列抵抗を小さくするため、第1ゲート電極20と第2ゲート電極22との距離Lggは第1ゲート電極20のゲート長Lg1の10%以下が好ましく、5%以下がより好ましい。
【0021】
ゲート長Lg1が小さくなると、直列抵抗の影響が大きくなる。よって、ゲート長Lgは1μm以下が好ましく、0.8μm以下がより好ましく、0.5μm以下がさらに好ましい。第1ゲート電極20を加工するため、ゲート長Lg1は0.1μm以上が好ましい。
【0022】
第1ゲート電極20とドレイン電極26との間の抵抗を小さくするため、第2ゲート電極22のゲート長Lg2は、Lg1より小さいことが好ましく、1/2Lg2以下がより好ましい。
【0023】
また、グラフェン層12と第2ゲート電極22との間に絶縁膜13が設けられていることが好ましい。これにより、グラフェン層12と第2ゲート電極22との電気的接触を抑制できる。
【0024】
第2ゲート電極22に、基準電位が供給される。これにより、ドレイン電極26からチャネルに供給されるホールを抑制できる。チャネルへのホールの供給を抑制するため、基準電位は第1ゲート電極20に印加されるバイアス電圧より高いことが好ましい。例えば、第2ゲート電極22には、ソース電極24に供給される電位が供給されることが好ましい。
【0025】
ゲート絶縁膜14は、酸化アルミニウム膜16を含むことが好ましい。これにより、トランジスタ特性を向上できる。酸化アルミニウム膜16はグラフェン層12に接触していることが好ましい。
【0026】
ゲート絶縁膜14は酸化アルミニウム膜16に設けられた酸化シリコン膜18を含むことが好ましい。これにより、ゲート絶縁膜14を厚くできる。
【実施例2】
【0027】
図5は、実施例2に係るFETの断面図である。
図5に示すように、グラフェン層12下に絶縁膜が設けられていない。基板10に下面からビアが形成され、ビア内に第2ゲート電極22が設けられている。グラフェン層12と第2ゲート電極22との間には基板10の一部10aが残存している。基板10の一部10aはゲート絶縁膜として機能する。基板10の下面には、第2ゲート電極22に接続する金属層23が設けられている。
【0028】
[実施例2の製造方法]
次に、実施例2に係るFETを製造する一例を説明する。
図6(a)から
図8(c)は、実施例2に係るFETの製造方法を示す断面図である。
図6(a)に示すように、6H−SiC基板10の表面を洗浄する。洗浄の条件は、アセトン処理を5分、エタノール処理を5分、および水洗を5分である。基板10の洗浄として、例えばRCA処理を行なってもよい。基板10としては、SiC層が形成されたSi基板でもよい。SiC熱昇華法を用いグラフェン層12を形成する場合、基板10の最上面はSiC層である。例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いグラフェン層12を形成する場合、基板10の最表面はSiC以外の材料層でもよい。
【0029】
基板10上に熱昇華法を用いグラフェン層12を形成する。SiC基板10を、アルゴン(Ar)雰囲気中において、1600℃で1分熱処理する。これにより、基板10上に膜厚が0.35nmから0.7nmのグラフェン層12が形成される。このように、SiCを熱処理することにより、SiC基板10内のSi原子が昇華し、C原子同士がSP2結合する。これにより、SiCよりグラフェン層12が形成される。熱処理雰囲気、熱処理温度および熱処理時間は、グラフェン層12の膜厚および膜質に応じ適宜設定することができる。例えば熱処理雰囲気を真空とすることもできる。グラフェン層12を薄くするためには、成長速度が遅くなる不活性ガス中の熱処理が好ましい。グラフェン層12の形成には例えばCVD法を用いることもできる。
【0030】
図6(b)に示すように、グラフェン層12上に蒸着法を用い、膜厚が5nmのアルミニウム(Al)膜15を形成する。アルミニウム膜15の形成は、例えばスパッタリング法を用いることもできる。アルミニウム膜15を例えば24時間大気に曝す。これにより、アルミニウム膜15が自然酸化し、グラフェン層12上に酸化アルミニウム膜16が形成される。酸化アルミニウム膜16はALD(Atomic Layer Deposition)法を用い形成してもよい。
【0031】
図6(c)に示すように、フォトレジスト等のマスク層を用い、非活性領域の酸化アルミニウム膜16およびグラフェン層12を除去する。酸化アルミニウム膜16を、例えばフォトレジストを現像するときのアルカリ系の現像液により除去する。さらに、グラフェン層12を、例えば酸素プラズマを用い除去する。
【0032】
図7(a)に示すように、基板10上に酸化アルミニウム膜16を覆うように酸化シリコン膜18を形成する。酸化シリコン膜18は、例えば膜厚が30nmでありCVD法を用い形成される。酸化シリコン膜18は、ゲート絶縁膜14を厚くするための膜である。酸化アルミニウム膜16と酸化シリコン膜18によりゲート絶縁膜14が形成される。ゲート絶縁膜14は、酸化アルミニウム膜16および酸化シリコン膜18以外の絶縁膜でもよい。
【0033】
図7(b)に示すように、酸化シリコン膜18上に第1ゲート電極20を形成する。第1ゲート電極20は、例えば酸化シリコン膜18側から膜厚が10nmのチタン膜および膜厚が100nmの金膜である。第1ゲート電極20は、例えば蒸着法およびリフトオフ法を用い形成する。第1ゲート電極20としては、金膜以外の膜を用いてもよい。ゲート抵抗の抑制の観点から抵抗率の低い材料が好ましい。
【0034】
図7(c)に示すように、フォトレジスト等のマスク層をマスクに酸化シリコン膜18および酸化アルミニウム膜16を除去する。酸化シリコン膜18および酸化アルミニウム膜16の除去には例えばドライエッチング法を用いる。
【0035】
図8(a)に示すように、ソース電極24およびドレイン電極26を例えば蒸着法およびリフトオフ法を用い形成する。ソース電極24およびドレイン電極26は、例えば膜厚が15nmのニッケル膜である。
【0036】
図8(b)に示すように、基板10の下面から基板10に穴25を形成する。穴25とグラフェン層12との間には基板10の一部10aを残存させる。穴25の形成には例えばドライエッチング法を用いる。基板10の一部10aの厚さは例えば500nmであり、好ましくは300nmから700nmの範囲である。第2ゲート電極22はグラフェン層12に基準電位を印加するための電極であり、基板10の一部10aの厚さは、ゲート絶縁膜14ほど厳密に制御されていなくてもよい。
【0037】
図8(c)に示すように、穴25内に第2ゲート電極22を形成する。第2ゲート電極22は例えば金層でありメッキ法を用い形成される。穴25に第2ゲート電極22となる金属を埋め込むときに、基板10の下面に金属層23を形成する。これにより、第2ゲート電極22に接続された金属層23が形成される。
【0038】
その後、ソース電極24およびドレイン電極26上に、例えば蒸着法およびリフトオフ法を用い配線30を形成する。配線30は、例えばソース電極24およびドレイン電極26側から膜厚が10nmのチタン膜および膜厚が100nmの金膜である。これにより、実施例2のFETが完成する。
【0039】
図6(a)から
図8(c)では、第1ゲート電極20を形成した後にソース電極24およびドレイン電極26を形成する例を説明した。第1ゲート電極20を形成する前にソース電極24およびドレイン電極26を形成してもよい。
【0040】
実施例2よれば、第2ゲート電極22は基板10の一部10aを介しグラフェン層12下に設けられている。これにより、グラフェン層12と第2ゲート電極22との電気的接触を抑制できる。また、金属層23をソース電極24の電位(例えばグランド電位)とすることで、第2ゲート電極22にソース電極24の電位を供給できる。
【0041】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0042】
(付記1)
基板上に設けられたグラフェン層と、
前記グラフェン層上に設けられたソース電極およびドレイン電極と、
前記グラフェン層上に設けられたゲート絶縁膜と、
前記ソース電極と前記ドレイン電極との間における前記ゲート絶縁膜上に設けられた第1ゲート電極と、
前記第1ゲート電極と前記ドレイン電極との間であり、かつ前記基板内に設けられた第2ゲート電極と、
を具備する半導体装置。
(付記2)
前記グラフェン層と第2ゲート電極との間に設けられた絶縁膜を具備する付記1に記載の半導体装置。
(付記3)
前記第2ゲート電極は、前記基板の一部を介し前記グラフェン層下に設けられている付記1に記載の半導体装置。
(付記4)
上面視において、前記第1ゲート電極の前記ドレイン電極側の一部に前記第2ゲート電極の前記ソース電極側の一部が重なる付記1に記載の半導体装置。
(付記5)
前記第2ゲート電極には、基準電位が供給される付記1に記載の半導体装置。
(付記6)
前記第2ゲート電極には、前記ソース電極に供給される電位が供給される付記1に記載の半導体装置。
(付記7)
前記ゲート絶縁膜は、酸化アルミニウム膜を含む付記1に記載の半導体装置。
(付記8)
前記ゲート絶縁膜は、前記酸化アルミニウム膜に設けられた酸化シリコン膜を含む付記7に記載の半導体装置。
(付記9)
前記基板はSiC基板である付記1に記載の半導体装置。