(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6851811
(24)【登録日】2021年3月12日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】車両用障害物報知装置
(51)【国際特許分類】
B60R 99/00 20090101AFI20210322BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
B60R99/00 352
G08G1/16 C
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-249195(P2016-249195)
(22)【出願日】2016年12月22日
(65)【公開番号】特開2018-103647(P2018-103647A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年11月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105980
【弁理士】
【氏名又は名称】梁瀬 右司
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100178995
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 陽介
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 聡
【審査官】
森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−190193(JP,A)
【文献】
特開平08−161699(JP,A)
【文献】
特開2007−328603(JP,A)
【文献】
特開平11−066496(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 99/00
G08G 1/16
G01S 13/931
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両周辺の障害物を検知し、該障害物との距離に応じて警報音発生手段による警報音の発音状況を可変する車両用障害物報知装置において、
自車両周辺の障害物までの距離を所定の計測時間ごとに計測する測距手段と、
前記測距手段による距離の計測値に応じて前記警報音発生手段の警報パターンを切り換えるパターン切換手段と、
前記警報発生手段による警告音の音圧を切り換える音圧切換手段と、
を備え、
前記音圧切換手段は、
前記測距手段による現在計測値と少なくとも数回の前記測距時間前の過去計測値とを比較し、自車両が前記障害物に接近しているときには前記警報音発生手段により切り換えられている警報パターンでの音圧を第1の音圧に切り換え、自車両が前記障害物から遠ざかっているときには前記警報音発生手段により切り換えられている警報パターンでの音圧を前記第1の音圧よりも小さい第2の音圧に切り換える
ことを特徴とする車両用障害物報知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両周辺の障害物を検知し、該障害物との距離に応じて警報音発生手段による警報音の発音状況を可変する車両用障害物報知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自車両周辺の障害物をセンサにより検知し、検知した障害物との距離に応じて警報音発生手段による警報音の警報パターンを切り換えるようにした車両用障害物報知装置が提案されている(特許文献1)。この車両用障害物報知装置では、例えば自車両に接近する障害物がある場合に、警報ブザーを駆動して運転者に注意を喚起し、その際に障害物までの距離を感覚的に運転者に知らせるためにブザーの時間間隔など警報パターンを変えることが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−345495号公報(段落0015参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記した車両用障害物報知装置の場合、例えば狭い路地を通過するケースでは、障害物である両側の壁などの障害物との距離が、路地を通過する間は狭い状態にあるため、路地に所定距離に接近してから路地を通過して所定距離以上離れるまで、警報ブザーは注意を喚起するパターンで同じ音圧で鳴り続けることになり、運転者にとって過剰な警報になり煩わしさを与えるという問題がある。
【0005】
本発明は、障害物の距離に応じて警報パターンを切り換えるときに、同じ警報パターンに設定されていても自車両が障害物に接近する場合と遠ざかるときとで音圧を大、小に切り換えて過剰な警報にならないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した目的を達成するために、本発明の車両用障害物報知装置は、自車両周辺の障害物を検知し、該障害物との距離に応じて警報音発生手段による警報音の発音状況を可変する車両用障害物報知装置において、自車両周辺の障害物までの距離を所定の計測時間ごとに計測する測距手段と、前記測距手段による距離の計測値に応じて前記警報音発生手段の警報パターンを切り換えるパターン切換手段と、
前記警報発生手段による警告音の音圧を切り換える音圧切換手段とを備え
、前記音圧切換手段は、前記測距手段による現在計測値と少なくとも数回の前記測距時間前の過去計測値とを比較し、自車両が前記障害物に接近しているときには前記警報音発生手段により切り換えられている警報パターンでの音圧を第1の音圧に切り換え、自車両が前記障害物から遠ざかっているときには前記警報音発生手段により切り換えられている警報パターンでの音圧を前記第1の音圧よりも小さい第2の音圧に切り換えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、測距手段による自車両と障害物との距離の計測値に応じてパターン切換手段により警報音発生手段の警報パターンが切り換えられ、測距手段による現在計測値と少なくとも数回の前記計測時間前の過去計測値とを比較の結果、音圧切換手段により、自車両が障害物に接近しているときには警報音発生手段により切り換えられている警報パターンでの音圧が
第1の音圧に切り換えられ、遠ざかっているときには音圧
が第1の音圧よりも小さい第2の音圧に切り換えられるため、自車両と障害物との距離が警報パターンを切り換えるに至らない状態であっても、同じ警報パターンにおいて障害物に接近するか障害物から遠ざかるかによって音圧が大小に切り換わり、従来のように警報ブザーが同じ音圧で鳴り続けるようなことがなく、運転者にとって過剰な警報になることを防止して運転者に煩わしさを与えるのを未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係る車両用障害物報知装置の一実施形態のブロック図である。
【
図3】一実施形態の動作説明用フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る車両用障害物報知装置の一実施形態について、
図1ないし
図3を参照して詳細に説明する。
【0010】
図1に示すように、車両用障害物報知装置1は、測距手段2と、警報音発生手段である警報ブザー3と、パターン切換手段4と、音圧切換手段5と、メモリ6とを備える。
【0011】
測距手段2は、超音波センサ、レーザレーダ、ミリ波レーザ等の測距用のセンサ2aにより構成され、センサ2aにより自車両周辺の障害物までの距離を所定の計測時間Δt(例えば、100ms)ごとに計測し、各計測時刻における計測値およびパターン切換手段4により切り換えられた警報パターンがメモリ6に記憶される。
【0012】
パターン切換手段4は、測距手段2により計測される自車両と障害物との距離の計測値に応じて警報ブザー3の警報パターンを切り換える。具体的には、現在の計測時刻tにおける計測値Dtが、
図2(a)に示すように、第1しきい値D1である45cmより小さければ、警報ブザー3による警報レベルが「警報」に設定されてそのときの警報パターンとしてパターンAの「ピピピ…」という連続的なブザー音が発生されるように、パターン切換手段4による切り換え設定が行われる。
【0013】
また、現在の計測時刻tにおける計測値Dtが、第1しきい値D1(45cm)以上で、かつ、第2閾値である60cmよりも小さければ、警報ブザー3による警報レベルが「注意喚起」に設定されてそのときの警報パターンとしてパターンBの「ピッピッピッ…」という断続的なブザー音が発生されるように、パターン切換手段4による切換制御が行われ、さらに現在の計測時刻tにおける計測値Dtが、第2しきい値D2(60cm)以上で、かつ、第3しきい値である100cmより小さければ、警報ブザー3による警報レベルが「情報提供」に設定されてそのときの警報パターンとしてパターンCの「ピ………ピ………ピ………」という離散的なブザー音が発生されるように、パターン切換手段4による切り換え設定が行われる。
【0014】
ところで、音圧切換手段5は、
図2(b)に示すように、パターン切換手段4により切り換え設定された警報パターンに変化がないときに、自車両と障害物との接近度合が遠ざかっているか、変化なしか、近づいているかに応じて、警報ブザー3の音圧をそれぞれロー(例えば40)、ミドル(例えば50)、ハイ(例えば60)に切り換え設定する。
【0015】
具体的には、
図3のフローチャートに示すように、測距手段2のセンサ2aにより自車両から障害物までの距離が計測され(ステップS1)、その計測値に応じた警報ブザー3の警報パターンがパターン切換手段4により切り換え設定され(ステップS2)、その後、現在の計測時刻tにおけるパターン切換手段4による警報パターンでの「警報」「注意喚起」「情報提供」等の警報レベルと、1回前の計測時刻t−1における警報レベルとが比較され、警報レベルが例えば「注意喚起」から「情報提供」に下がったか、或いは、「注意喚起」から「警報」に上がったかが判断される(ステップS3)。
【0016】
このとき、警報レベルが下がっていれば音圧切換手段5により警報ブザー3の音圧がロー(
図2(b)の40)に切り換え設定され(ステップS4)、警報レベルが上がっていれば音圧切換手段5により警報ブザー3の音圧がハイ(
図2(b)の60)に切り換え設定され(ステップS5)、設定された音圧で警報ブザー3が作動される(ステップS6)。
【0017】
さらに、音圧切換手段5により、警報レベルが変わらずに同じであれば、現在より2回前までの距離の計測値がメモリ6にあるかどうかの判定がなされ(ステップS7)、この判定結果がNOであれば上記したステップS5に戻り、判定結果がYESであれば、現在の計測時刻tおよび2回前までの計測時刻t−1,t−2の距離の計測値Dt,Dt−1,Dt−2の差分平均ΔAvが導出され(ステップS8)、この差分平均ΔAvがマイナスかプラスの判定がなされる(ステップS9)。
【0018】
そして、ステップS9の判定の結果、差分平均ΔAvがマイナスであれば、自車両と障害物との接近度合が近づく状態にあるとして同じ警報パターンにおける音圧がハイ(
図2(b)の60)に切り換え設定され(ステップS10)、差分平均ΔAvが変化なく±0であれば、自車両と障害物の接近度合に変化がなく同じ警報パターンにおける音圧がミドル(
図2(b)の50)に切り換え設定され(ステップS11)、差分平均ΔAvがプラスであれば、自車両と障害物との接近度合が遠ざかる状態にあるとして同じ警報パターンにおける音圧がロー(
図2(b)の40)に切り換え設定され(ステップS12)、その後ステップS6に移行して設定された音圧で警報ブザー3が作動される。
【0019】
このように、パターン切換手段4により切り換えられている警報パターンに変化がなければ、測距手段2による現在の計測時刻t、メモリ6に保持されている2回前までの計測時刻t−1,t−2での計測値Dt,Dt−1,Dt−2の差分平均ΔAvを導出することで、自車両と障害物とが近づいているか遠ざかっているかが音圧切換手段5により判断され、近づいていればパターン切換手段4により切り換えられている警報ブザー3の警報パターンでの音圧を大きくすべくハイに切り換えられ、遠ざかっているときには警報ブザー3の警報パターンでの音圧を小さくすべくローに切り換えられる。
【0020】
したがって、上記した実施形態によれば、同じ警報パターンにおいて障害物に接近するか障害物から遠ざかるかによって音圧が大、小(ハイ、ロー)に切り換わり、従来のように警報ブザーが同じ音圧で鳴り続けるようなことはなく、運転者にとって過剰な警報になるのを防止することができ、運転者に煩わしさを与えることがない。
【0021】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行なうことが可能である。
【0022】
例えば、上記した実施形態では、パターン切換手段4により警報パターンを切り換え設定する際の基準となる警報レベルを、「警報」「注意喚起」「情報提供」の3段階として説明したが、2段階あるいは4段階以上に設定してもよい。
【0023】
また、音圧切換手段5により音圧を切り換え設定する音圧をハイ、ミドル、ローの3段階とした場合について説明したが、これも2段階あるいは4段階以上に設定してもよい。
【0024】
また、上記した実施形態では、現在の計測時刻tにおける距離の計測値Dt、および、2回前までの計測時刻t−1,t−2における計測値Dt−1,Dt−2の差分平均ΔAvを導出するとしたが、3回以上の所定回前までの差分平均を導出してもよい。
【符号の説明】
【0025】
1 …車両用障害物報知装置
2 …測距手段
3 …警報ブザー(警報音発生手段)
4 …パターン切換手段
5 …音圧切換手段