特許第6851816号(P6851816)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6851816
(24)【登録日】2021年3月12日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】回転子
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/27 20060101AFI20210322BHJP
   H02K 15/03 20060101ALI20210322BHJP
   H02K 1/22 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   H02K1/27 501M
   H02K1/27 501K
   H02K15/03 A
   H02K1/22 A
   H02K1/22 Z
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-251915(P2016-251915)
(22)【出願日】2016年12月26日
(65)【公開番号】特開2018-107899(P2018-107899A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年8月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松岡 佑将
(72)【発明者】
【氏名】松原 正克
【審査官】 谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−064413(JP,A)
【文献】 特開2011−135638(JP,A)
【文献】 特開2010−119190(JP,A)
【文献】 特開2010−213516(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0068651(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/27
H02K 15/03
H02K 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸線回りに回転するシャフトと、
前記シャフトに隣接して固定され、前記回転軸線に沿って積層される3以上の複数の回転子鉄心と、
前記複数の回転子鉄心ごとに埋設される複数の永久磁石と、を備え、
前記複数の永久磁石のうち、少なくとも1つの前記永久磁石を間に挟んで前記回転軸線方向の両側に位置する外側永久磁石は、前記回転軸線方向で前記外側永久磁石の間に位置する中間永久磁石に対し、周方向に所定角度ずれて配置されており、
前記2つの外側永久磁石と前記中間永久磁石との互いに対向する端面に、それぞれ前記永久磁石の内部と比較して保磁力の高い高保磁力処理を施してなる膜が形成されており、
各前記永久磁石の前記内部の保磁力が同一である回転子。
【請求項2】
前記外側永久磁石は、前記中間永久磁石と前記回転軸線方向で対向する端面とは反対側の端面が、切断面である請求項1に記載の回転子。
【請求項3】
前記回転子鉄心は、前記回転軸線に沿って4つ積層されており、
前記回転軸線方向中央の2つの前記回転子鉄心に設けられた各々前記中間永久磁石は、周方向の相対位置がずれておらず、
前記2つの前記回転子鉄心に設けられた各前記中間永久磁石は、前記膜が形成されていない互いの重ね合わせ面となる端面を有する請求項2に記載の回転子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、回転子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、回転子の回転子鉄心に永久磁石が埋設された、いわゆる磁石埋め込み型の回転電機が知られている。この種の回転電機の回転子では、駆動時の騒音や振動の要因となるトルクリップルを低減するために、複数の回転子鉄心を周方向にずらしながら回転軸線に沿って積層する、いわゆるスキュー構造を採用する場合があった。このような構造を採用する場合、回転子鉄心の表面に形成される磁気的凹凸が滑らかになるので、トルクリップルを低減できる。
【0003】
ここで、スキュー構造を採用することにより、永久磁石の軸方向端面が回転子鉄心に接触する。このような部位では見かけ上磁気抵抗が小さくなり、電気子反作用による反磁界がより永久磁石に加わることとなる。このような場合、耐減磁性能が弱いために、永久磁石の減磁を発生させる原因となる。この結果、回転子全体でみたときの永久磁石の耐減磁性能が、低下してしまう可能性があった。
【0004】
この永久磁石の耐減磁性能の低下を補うために、永久磁石の表面に重希土類を拡散させることにより、永久磁石の保磁力を向上させる方法も考えられる。しかしながら、例えば、回転子鉄心のスキュー構造に対応させて永久磁石を分断して使用する場合、スキューされた回転子鉄心同士の重ね合わせ面に永久磁石の内部が露出することになる。永久磁石の表面に重希土類を拡散させる場合、永久磁石の内部の保磁力は基材と同程度に留まる。このため、結局回転子鉄心の永久磁石同士が重ね合わさる箇所で耐減磁性能が低下し、回転子全体でみたときの永久磁石の耐減磁性能の低下も抑えられない可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−136040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、スキュー構造を採用した場合の永久磁石の耐減磁性能の低下を抑制できる回転子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の回転子は、シャフトと、3以上の複数の回転子鉄心と、複数の永久磁石と、を持つ。シャフトは、回転軸線回りに回転する。3以上の複数の回転子鉄心は、シャフトに隣接して固定され、回転軸線に沿って積層される。複数の永久磁石は、複数の回転子鉄心ごとに埋設される。また、複数の永久磁石のうち、少なくとも1つの永久磁石を間に挟んで回転軸線方向の両側に位置する外側永久磁石は、回転軸線方向で外側永久磁石の間に位置する中間永久磁石に対し、周方向に所定角度ずれて配置されている。また、2つの外側永久磁石と中間永久磁石との互いに対向する端面に、それぞれ永久磁石の内部と比較して保磁力の高い高保磁力処理を施してなる膜が形成されている。また、各永久磁石の内部の保磁力が同一である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態の回転電機を示す斜視図。
図2】第1の実施形態の回転電機を中心軸方向に沿う断面でみたときの概略構成図。
図3】第1の実施形態の永久磁石の端面同士の重なり状況を示す説明図。
図4】第1の実施形態の同一軸線上の2つの永久磁石を示す模式図。
図5】第2の実施形態の同一軸線上の2つの永久磁石を示す模式図。
図6】第2の実施形態の永久磁石の製造方法を示す説明図。
図7】第3の実施形態の同一軸線上の2つの永久磁石を示す模式図。
図8】第4の実施形態の同一軸線上の4つの永久磁石を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態の回転子を、図面を参照して説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の回転子3を備えた回転電機1の斜視図である。
同図に示すように、回転電機1は、略円筒状の固定子2(固定子鉄心4)と、固定子2よりも径方向内側に設けられ、固定子2に対して回転自在に設けられた回転子3と、を備えている。
なお、固定子2および回転子3は、それぞれの中心軸線が共通軸上に位置した状態で配置されている。以下、共通軸を中心軸(回転軸線)Oと称し、中心軸Oに直交する方向を径方向と称し、中心軸O回りに周回する方向を周方向と称する。
【0011】
固定子2は、略円筒状の固定子鉄心4を有している。固定子鉄心4は、電磁鋼板を複数枚積層したり、軟磁性粉を加圧成形したりして形成することが可能である。固定子鉄心4の内周面には、中心軸Oに向かって突出し、周方向に等間隔で配列された複数のティース5が一体成形されている。ティース5は、断面略矩形状に形成されている。そして、隣接する各ティース5間には、それぞれスロット6が形成されている。これらスロット6を介し、各ティース5に電機子巻線7が巻回されている。この電機子巻線7に給電することにより、固定子2に所定の磁束が形成される。
【0012】
回転子3は、固定子鉄心4よりも径方向内側に配置されている。回転子3は、中心軸Oに沿って延びるシャフト13と、シャフト13に外嵌固定された略円柱状の回転子鉄心8と、を備えている。
回転子鉄心8は、電磁鋼板を複数枚積層したり、軟磁性粉を加圧成形したりして形成することが可能である。回転子鉄心8の外径は、径方向で対向する各ティース5との間に、所定のエアギャップGが形成されるように設定されている。また、回転子鉄心8の径方向中央には、中心軸O方向に貫通する貫通孔9が形成されている。この貫通孔9に、シャフト13が圧入等され、シャフト13と回転子鉄心8とが一体となって回転する。
【0013】
さらに、回転子鉄心8には、1/8周の周角度領域のそれぞれに、2つの永久磁石収納孔10が形成されている。2つの永久磁石収納孔10は、それぞれ中心軸O方向からみて矩形状となるように形成されている。また、2つの永久磁石収納孔10は、中心軸O方向からみて径方向外側が開口するV字状となるように周方向に所定間隔をあけて並んで配置されている。
【0014】
このように形成された各永久磁石収納孔10に、それぞれ永久磁石11が挿入され、例えば接着剤等により固定される。永久磁石11は、永久磁石収納孔10の形状に対応するように直方体状に形成されており、永久磁石収納孔10を埋めている。これにより、回転子鉄心8の外周面に、8つの磁極が形成される。
【0015】
ここで、1/8周の周角度領域のそれぞれに、2つの永久磁石11が中心軸O方向からみて径方向外側が開口するV字状に配置されているので、各永久磁石11により回転子鉄心8に形成される磁束を横切る固定子2による磁束を打ち消すように作用する。そして、各磁極の端部の漏れ磁界を抑制する。
【0016】
すなわち、1/8周の周角度領域のそれぞれに配置された2つの永久磁石11は、磁化方向が同一方向に沿っており、且つ磁化方向が同じとなる。
つまり、例えば、1/8周の周角度領域のそれぞれに配置された2つの永久磁石11は、それぞれ径方向外側の面がN極に着磁されている。この場合、周方向で隣り合う別の1/8周の周角度領域に配置された2つの永久磁石11は、それぞれ径方向外側の面がS極に着磁されている。なお、永久磁石11の保磁力についての詳細は、後述する。
【0017】
また、永久磁石収納孔10には、中心軸O方向からみて長手方向両端に、それぞれフラックスバリア12が形成されている。
フラックスバリア12は、永久磁石収納孔10に収納される永久磁石11の回転子鉄心8への磁束漏れを抑制するためのものである。すなわち、フラックスバリア12は、磁束が通りにくくなるように構成されていればよく、例えば、空洞部としたり、この空洞部に樹脂を充填させたりして構成することが可能である。
【0018】
図2は、回転電機1を中心軸O方向に沿う断面でみたときの概略構成図である。
同図に示すように、回転子3は回転子鉄心8を2つ備えており、これら2つの回転子鉄心8が中心軸O方向に沿って積層されている。また、2つの回転子鉄心8は、互いに周方向に所定角度ずれて配置されている。これにより、中心軸O方向で並ぶ永久磁石11が互いに周方向に所定角度ずれ、いわゆるスキュー構造になる。このため、2つの回転子鉄心8同士の重ね合わせ面8aに面する永久磁石11の端面11a同士(中心軸O方向で互いに対向する永久磁石11の端面11a同士)が接触している面積は、各永久磁石11の径方向に沿う断面積よりも小さくなる。
【0019】
より詳しく、図3に基づいて説明する。
図3は、2つの回転子鉄心8に埋設されたそれぞれの永久磁石11の端面11a同士の重なり状況を説明するための図である。
同図の実線で示すように一方の回転子鉄心8に対し、図3中二点鎖線で示すように他方の回転子鉄心8を所定角度ずらすと、永久磁石11の端面11a同士が接触している面積Ar1は、永久磁石11の径方向に沿う断面積Ar2よりも小さくなる。
前述したように、永久磁石11の端面11a同士が接触している面積Ar1が減少すると、反磁界磁束が通り易くなり、この結果、回転子3全体(2つの回転子鉄心8)でみたときの永久磁石11の耐減磁性能が低下してしまう可能性があった。そこで、本第1の実施形態の永久磁石11では、以下のような構成を採用している。
【0020】
図4は、2つの回転子鉄心8に埋設されている同一軸線上の2つの永久磁石11を模式的に示した図である。
同図に示すように、各回転子鉄心8の永久磁石11は、外周面全体に高保磁力処理部14(ハッチ部参照、以下の実施形態でも同様)が施されている。
【0021】
この高保磁力処理部14は、例えば、まず、ジスプロシウム(Dy)やテルビウム(Tb)等の重希土類を永久磁石11の外表面全体に塗布または蒸着させ、重希土類膜を形成する。そして、この重希土類膜を拡散することにより、永久磁石11の母材の表面に重希土類膜よりも厚い高保磁力処理部14が形成される。すなわち、高保磁力処理部14は、永久磁石11の母材の表面に形成された重希土類膜といえる。
【0022】
なお、高保磁力処理部14の厚みは、例えば1.5mm〜2.0mm程度である。また、塗布の方法としては、例えば処理液に永久磁石11を浸す、いわゆる浸漬方法などが挙げられる。さらに、永久磁石11の母材としては、例えばNd−Fe−B焼結磁石が用いられている。このNd−Fe−B焼結磁石は、ネオジム、鉄、およびボロンを主成分とする合金である。
【0023】
永久磁石11の外周面全体に高保磁力処理部14を施すことにより、回転子鉄心8同士の重ね合わせ面8aに面する永久磁石11の端面11aの保磁力を高めることができる。より具体的には、永久磁石11の角部で母材からの保磁力向上は、400kA/m〜500kA/m程度になる。このため、永久磁石11の端面11aの端面に反磁界が作用しても、永久磁石11の減磁を抑制できる。
【0024】
したがって、上述の第1の実施形態によれば、回転子3にスキュー構造を採用した場合であっても、回転子3全体として永久磁石11の減磁を抑制できる。このため、所望のトルクを確保しつつ、トルクリップルを低減できる高性能な回転電機1を提供できる。
【0025】
(第2の実施形態)
次に、図2を援用し、図5図6に基づいて、第2の実施形態について説明する。
図5は、同一軸線上の2つの永久磁石211を模式的に示した図であって、前述の図4に対応している。
ここで、前述の第1の実施形態と本第2の実施形態との相違点は、第1の実施形態の永久磁石11に施されている高保磁力処理部14の箇所と、第2の実施形態の永久磁石211に施されている高保磁力処理部14の箇所とが異なる点にある(以下の実施形態についても同様)。
【0026】
より具体的には、図5に示すように、第2の実施形態の永久磁石211には、回転子鉄心8同士の重ね合わせ面8a(図2参照)に面する永久磁石211の端面211aとは反対側の端面211bを除いた全ての外周面に、高保磁力処理部14が施されている。
【0027】
このような永久磁石211の具体的な製造方法について説明する。
すなわち、まず、図6に示すように、回転子鉄心8を2つ積層した中心軸O方向の高さH1(図2参照)と同一長さH2の永久磁石211を用意し、この永久磁石211の外表面全体に高保磁力処理部14を施す。なお、高保磁力処理部14を施す工程については、前述の第1の実施形態と同様である。
【0028】
続いて、永久磁石211を高さ方向H2で半分となるように切断して2分割する。そして、2分割された各々永久磁石211の切断面211cとは反対側の面が重ね合わさるように、それぞれ回転子鉄心8に組み付ける。すなわち、永久磁石211の端面211aとは反対側の高保磁力処理部14が施されていない端面211bは、切断面211cとされている。
【0029】
したがって、上述の第2の実施形態によれば、前述の第1の実施形態と同様の効果を奏する。また、これに加え、1本の永久磁石211から、積層される各回転子鉄心8のそれぞれに組付け可能な2つの永久磁石211を製造することができるので、回転子3の製造コストを低減することができる。
【0030】
(第3の実施形態)
次に、図2を援用し、図7に基づいて、第3の実施形態について説明する。
図7は、同一軸線上の2つの永久磁石311を模式的に示した図であって、前述の図4に対応している。
同図に示すように、第3の実施形態の永久磁石311には、回転子鉄心8同士の重ね合わせ面8a(図2参照)に面する永久磁石311の端面311aのみに、高保磁力処理部14が施されている。
【0031】
永久磁石311の端面311aのみに高保磁力処理部14を施す方法としては、例えば、以下のような方法が挙げられる。
まず、永久磁石311の端面311aを除いた全ての外表面にマスクを施す。そして、このマスクを施した状態で、永久磁石311の表面にジスプロシウム(Dy)やテルビウム(Tb)等の重希土類を塗布または蒸着させ、重希土類膜を形成する。この後、マスクを除去し、永久磁石311に重希土類膜を拡散させる。これにより、永久磁石311の端面311aのみに高保磁力処理部14を施すことができる。
【0032】
したがって、上述の第3の実施形態によれば、前述の第1の実施形態と同様の効果を奏する。また、永久磁石311の高保磁力処理部14を施すにあたり、この高保磁力処理部14が最低限必要な箇所(永久磁石311の減磁易い箇所、つまり、回転子鉄心8同士の重ね合わせ面8a近傍)のみに高保磁力処理部14を施している。このため、永久磁石311の製造コストを、さらに低減することが可能になる。
【0033】
(第4の実施形態)
次に、図8に基づいて、第4の実施形態について説明する。
図8は、同一軸線上の4つの永久磁石411を模式的に示した図であって、前述の図4に対応している。
同図に示すように、本第4の実施形態では、回転子403は、回転子鉄心8をつ備えており、これら4つの回転子鉄心8が中心軸O方向(図8において不図示)に沿って積層されている。また、4つの回転子鉄心8のうち、中心軸O方向中央の2つの回転子鉄心8は、周方向の相対位置がずれておらず、中心軸O方向で対向する2つの永久磁石411の端面411a同士が全て重なり合っている。
【0034】
これに対し、4つの回転子鉄心8のうち、中心軸O方向外側に配置されている2つの回転子鉄心8は、これら回転子鉄心8よりも中心軸O方向中央に配置されている2つの回転子鉄心8に対し、周方向に所定角度ずれて配置されている。これにより、回転子3全体として(永久磁石411が全体として)スキュー構造になっている。
【0035】
このような場合、回転子鉄心8同士の重ね合わせ面8aが周方向にずれていない箇所の永久磁石411の端面411aには、高保磁力処理部14が施されていない。これは、永久磁石411の端面411a同士が接触している面積が、各永久磁石11の径方向に沿う断面積と同一になり、とりわけ固定子2による反磁界磁束が通り易くなるわけではない。
【0036】
このため、中心軸O方向中央の2つの回転子鉄心8に組み付ける永久磁石411は、例えば、以下の製造方法を採用できる。
すなわち、前述の第2の実施形態の図6で示したように、まず、回転子鉄心8を2つ積層した中心軸O方向の高さH1と同一長さH2の永久磁石211の外表面に高保磁力処理部14を施したものを2分割する。そして、そのまま向きを変更せずに、第4の実施形態の永久磁石411として、中心軸O方向中央の2つの回転子鉄心8に組み付ける。
【0037】
これに対し、回転子鉄心8に対し、周方向に所定角度ずれて配置されている中心軸O方向外側の永久磁石411は、例えば、以下の製造方法を採用できる。
すなわち、前述の第2の実施形態の図6で示したように、まず、永久磁石211を2分割する。この後、それぞれ永久磁石211の切断面211cとは反対側の面が、他の回転子鉄心8の永久磁石411と重ね合わさるように向きを変更する。そして、第4の実施形態の永久磁石411として、中心軸O方向外側の2つの回転子鉄心8に組み付ける。
このように、中心軸O方向外側の永久磁石411は、回転子鉄心8同士の重ね合わせ面8aとは反対側の端面(高保磁力処理部14が施されていない端面、中心軸O方向外側に露出している端面)411bが、切断面411cとされる。
【0038】
したがって、上述の第4の実施形態によれば、前述の第2の実施形態と同様の効果を奏する。また、回転子鉄心8を4つ積層する分、回転電機1の回転トルクを向上させることができる。
【0039】
なお、上述の実施形態の回転子3,403は、回転子鉄心8が2つまたは4つ積層されている場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、3つまたは5つ以上積層されていてもよい。望ましくは、回転子鉄心8が偶数個積層されていることが望ましい。回転子鉄心8の積層個数を偶数個の設定することにより、上記第2の実施形態や第4の実施形態のような効果を奏することができる。
また、回転子鉄心8が複数個積層されている場合において、中心軸O方向で並び、且つ周方向に所定角度ずれた2つの永久磁石のうちの少なくとも1つが、互いに対向する端面同士とは反対側の端面(中心軸O方向外側に露出している端面)を切断面とすることが望ましい。
【0040】
さらに、上述の実施形態では、回転子鉄心8は、8つの磁極の凸極を形成するように構成されている場合について説明した。さらに、回転子鉄心8は、1つの磁極を、2つの永久磁石11〜411を中心軸O方向からみて径方向外側が開口するV字状に並べて形成する場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、磁石埋め込み型のさまざまな回転電機に、上述の永久磁石11〜411の構成を採用することができる。
【0041】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、回転子3,403にスキュー構造を採用した場合であっても、回転子3,403全体として永久磁石11〜411の耐減磁性能の低下を抑制できる。このため、所望のトルクを確保しつつ、トルクリップルを低減できる高性能な回転電機1を提供できる。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0043】
1…回転電機、3,403…回転子、8…回転子鉄心、8a…重ね合わせ面、11,211,311,411…永久磁石、11a,211a,311a,411a…端面,211c,411c…切断面、13…シャフト、14…高保磁力処理部、O…中心軸(回転軸線)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8