特許第6851845号(P6851845)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6851845
(24)【登録日】2021年3月12日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】トンネル用消音器及び消音システム
(51)【国際特許分類】
   E21F 17/12 20060101AFI20210322BHJP
【FI】
   E21F17/12
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-22737(P2017-22737)
(22)【出願日】2017年2月10日
(65)【公開番号】特開2018-127846(P2018-127846A)
(43)【公開日】2018年8月16日
【審査請求日】2019年8月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000216025
【氏名又は名称】鉄建建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】594036135
【氏名又は名称】株式会社東宏
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100147762
【弁理士】
【氏名又は名称】藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】石渡 康弘
(72)【発明者】
【氏名】冨澤 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】中澤 真司
(72)【発明者】
【氏名】宇田 誠
(72)【発明者】
【氏名】植村 義幸
(72)【発明者】
【氏名】小林 雅彦
【審査官】 高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−177221(JP,A)
【文献】 特開2002−235495(JP,A)
【文献】 特開2012−202092(JP,A)
【文献】 特開2011−169000(JP,A)
【文献】 特開2012−057327(JP,A)
【文献】 特開2015−001139(JP,A)
【文献】 特開2005−299323(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21F 17/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルの内周側に設けられ、前記トンネルの長手方向に移動可能な支持部と、
前記トンネルの長手方向に延びる管の少なくとも一部を形成する消音部と、
前記支持部の長手方向端部に取り付けられる前記隔壁と
前記支持部と前記トンネルの内周面との間に設けられる気密バルーンとを備え、
前記消音部は、前記管を形成する壁を厚さ方向に貫通する複数の孔を有し、前記支持部に取り付けられ
前記隔壁は、流体により膨張して、前記消音部の外周面と前記気密バルーンとの間に形成された背面空間を閉鎖するトンネル用消音器。
【請求項2】
前記支持部は、前記トンネルの内周に沿うアーチフレームを備え、前記アーチフレームから前記消音部を吊り下げる吊下部材をさらに備える請求項1に記載のトンネル用消音器。
【請求項3】
前記吊下部材は、前記支持部に対して前記消音部を上げ下げ可能である請求項1又は2に記載のトンネル用消音器。
【請求項4】
前記支持部は車輪を備える請求項1から3のいずれかに記載のトンネル用消音器。
【請求項5】
前記トンネルの床に設けられるレールをさらに備え、前記車輪は、前記支持部が前記トンネルの長手方向に移動可能となるように前記レールと係合する請求項4に記載のトンネル用消音器。
【請求項6】
前記隔壁は、前記消音部の端部よりも大きい内周を有する枠体と、前記枠体の内周及び周囲に設けられる袋体とを備え、前記袋体は流体により膨張して、前記枠体の内周及び前記枠体と前記トンネルの内周との間を塞ぐ請求項1から5のいずれかに記載のトンネル用消音器。
【請求項7】
流体を吐出するポンプをさらに備え、前記袋体は、前記ポンプからの流体によって膨張する請求項6に記載のトンネル用消音器。
【請求項8】
トンネル用消音器が移動するとき、前記袋体から流体が抜かれ、前記トンネルの内周面と前記枠体との間に空間が形成される請求項6又は7に記載のトンネル用消音器。
【請求項9】
前記支持部は、前記トンネルの内周に沿うアーチフレームを備え、前記トンネルの内周と前記アーチフレームとの間に設けられる気密用袋体を備える請求項1から8のいずれかに記載のトンネル用消音器。
【請求項10】
前記消音部は、前記トンネルの床と前記壁とによって管を形成する請求項1から9のいずれかに記載のトンネル用消音器。
【請求項11】
トンネルの内周側に設けられ、前記トンネルの長手方向に移動可能な支持部と、前記トンネル内に流体を噴出可能なノズルとを有する台車と、
前記トンネルの長手方向に延びる管の少なくとも一部を形成する消音部と、前記支持部の長手方向端部に取り付けられる前記隔壁と、前記支持部と前記トンネルの内周面との間に設けられる気密バルーンとを有するトンネル用消音器とを備え、
前記消音部は、前記管を形成する壁を厚さ方向に貫通する複数の孔を有し、前記支持部に取り付けられ
前記隔壁は、流体により膨張して、前記消音部の外周面と前記気密バルーンとの間に形成された背面空間を閉鎖するトンネル用消音システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル構築工事において発生する騒音を低減する消音器及び消音システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネルの坑口と切羽との間に設置され、切羽側で発生する騒音を消音するトンネルサイレンサが知られている。このトンネルサイレンサは、トンネルの内部に多数の貫通孔を有するダクトと、ダクトの外側のトンネル内空断面を閉鎖する隔壁と、ダクト、各隔壁、及びダクト周囲のトンネル内壁により包囲される空間からなる閉鎖空洞部とを備え、ダクトの貫通孔と閉鎖空洞部との作用により騒音を共鳴吸音する。隔壁は、鋼板から成り、ダクトの開口縁部からトンネル内空断面に対応する形状に形成されてダクトの開口縁部に接合される(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−177221号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
トンネルを掘削するに従って、切羽がトンネルの奥へ移動する。切羽が移動すると、切羽から発生する騒音を適切に低減するため、また作業領域を確保するため、トンネルサイレンサもまた移動させなければならない。しかしながら、特許文献1のように、ダクトの開口縁部からトンネル内空断面に対応する形状に形成された鋼板を隔壁として用い、ダクトの開口縁部に接合すると、鋼板は重いため移動に時間と手間が必要になること、ダクト及びトンネル内空断面に応じて鋼板を専用製作する必要があるためコスト上昇の原因となること、鋼板をトンネルの曲がりや形状変化に応じて変形させることは困難であること、また、トンネルの曲がりや形状変化に応じて複数の鋼板を専用製作することはコスト上昇の原因となること等の問題が生じる。
【0005】
本発明はこれらの課題に鑑みてなされたものであり、トンネルの形状に合わせて容易に移動可能でありながら、切羽から発生する騒音を低減可能なトンネル用消音器を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願第1の発明によるトンネル用消音器は、トンネルの内周側に設けられ、トンネルの長手方向に移動可能な支持部と、トンネルの長手方向に延びる管の少なくとも一部を形成する消音部と、支持部の長手方向端部に取り付けられる隔壁とを備え、消音部は、管を形成する壁を厚さ方向に貫通する複数の孔を有し、支持部に取り付けられることを特徴とする。
【0007】
支持部は、トンネルの内周に沿うアーチフレームを備え、アーチフレームから消音部を吊り下げる吊下部材をさらに備えることが好ましい。また、吊下部材は、支持部に対して消音部を上げ下げ可能であることが好ましい。
【0008】
支持部は車輪を備えることが好ましく、トンネル用消音器は、トンネルの床に設けられるレールをさらに備え、車輪は、支持部がトンネルの長手方向に移動可能となるようにレールと係合することが好ましい。
【0009】
隔壁は、消音部の端部よりも大きい内周を有する枠体と、枠体の内周及び周囲に設けられる袋体とを備え、袋体は流体により膨張して、枠体の内周及び枠体とトンネルの内周との間を塞ぐことが好ましい。
【0010】
流体を吐出するポンプをさらに備え、袋体は、ポンプからの流体によって膨張することが好ましい。
【0011】
トンネル用消音器が移動するとき、袋体から流体が抜かれ、トンネルの内周面と枠体との間に空間が形成されることが好ましい。
【0012】
支持部は、トンネルの内周に沿うアーチフレームを備え、トンネルの内周とアーチフレームとの間に設けられる気密用袋体を備えることが好ましい。
【0013】
消音部は、トンネルの床と壁とによって管を形成することが好ましい。
【0014】
本願第2の発明によるトンネル用消音システムは、トンネルの内周側に設けられ、トンネルの長手方向に移動可能な支持部と、トンネル内に流体を噴出可能なノズルとを有する台車と、トンネルの長手方向に延びる管の少なくとも一部を形成する消音部と、支持部の長手方向端部に取り付けられる隔壁とを有するトンネル用消音器とを備え、消音部は、管を形成する壁を厚さ方向に貫通する複数の孔を有し、支持部に取り付けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、トンネルの形状に合わせて容易に移動可能でありながら、切羽から発生する騒音を低減可能なトンネル用消音器が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1の実施形態によるトンネル用消音器を斜め上方から見た概略図である。
図2】トンネルの長手方向に対して直角な平面におけるトンネル用消音器の断面図である。
図3】トンネル用消音器の平面図である。
図4】トンネル用消音器の側面図である。
図5】第2の実施形態によるトンネル用消音器の断面図である。
【符号の説明】
【0017】
10 トンネル用消音器
20 トンネル
100 第1の支持部
101 養生台車
103 養生台車
110 アーチフレーム
120 基部
130 チェーンブロック
140 車輪
300 消音部
320 消音部フレーム
340 消音板
500 隔壁
510 隔壁枠体
520 隔壁バルーン
530 隔壁バルーン
600 第2の支持部
601 ミスト台車
603 ミスト台車
【発明を実施するための形態】
【0018】
本願発明による第1の実施形態によるトンネル用消音器10について図1から図4を用いて説明する。
【0019】
図1を参照すると、トンネル用消音器10は、第1の支持部100と、消音部300と、隔壁500とを主に備える。本明細書では、鉛直方向に沿う寸法を高さ、トンネルの長手方向及び高さ方向に直交する方向に沿う寸法を幅という。
【0020】
図2及び4を参照すると、第1の支持部100は、10.5メートルの長さを有する2台の養生台車101と、3メートルの長さを有する1台の養生台車103とから成る。養生台車101、103は、トンネル20の内周面22に沿う第1のアーチフレーム110と、トンネル20の長手方向に延びる2本の基部120と、第1のアーチフレーム110に取り付けられた複数のチェーンブロック130と、基部120の底面に取り付けられた車輪140と、複数の散水管160と、ポンプ及びタンク170と、吸引機・除塵除水ボックス180とを主に備える。養生台車101の第1のアーチフレーム110及び車輪140の数は各々8つであり、養生台車103の第1のアーチフレーム110の数は3つであり、車輪140の数は4つである。2台の養生台車101は、互いの長手方向端部で鉄骨及びボルト等を用いて接続され、これと同様にして養生台車103は養生台車101と互いの長手方向端部で鉄骨及びボルト等を用いて接続される。
【0021】
第1のアーチフレーム110は、複数の直線状の鉄骨を互いの端部で繋ぎ合わせてアーチ形状にしたものを、複数の直線状の鉄骨で支持したフレームである。これにより、第1のアーチフレーム110は、その外周に載せられた重量物からの荷重に耐えることができる。トンネル20の長手方向に複数の第1のアーチフレーム110が並べられ、第1のアーチフレーム110どうしは、トンネル20の長手方向に延びる基部120や、複数のブレース等を用いて接続される。基部120は、H鋼や鉄板などを溶接して成る部材であって、トンネル20の長手方向に直線的に延びる。基部120の頂面には、第1のアーチフレーム110の下端が接続される。車輪140は、基部120の底面121に回転自在に取り付けられる。チェーンブロック130は、吊下部材であって、歯車機構及びブレーキ装置等を格納する本体と、本体上部に取り付けられた上部フックと、歯車機構に接続されるロードチェーン及び手鎖と、ロードチェーンの下端に取り付けられる下部フックとを主に備える。上部フックは第1のアーチフレーム110の内周側かつ頂上付近に取り付けられ、下部フックは消音部300に取り付けられる。ポンプ及びタンク170と吸引機・除塵除水ボックス180は、基部120の頂面に設置される。複数の散水管160は、内周から外周まで貫通する複数の孔を有し、第1のアーチフレーム110の外周の頂上付近に、周方向へ所定の間隔を空けながら、養生台車101、103の長手方向に沿って取り付けられる。散水管160の一端はポンプ及びタンク170に取り付けられ、ポンプ及びタンク170から水が流される。ポンプ及びタンク170は、基部120の上に設けられ、例えば600リットルの水を貯留する。散水管160の一端がポンプ及びタンク170に取り付けられて、ポンプ及びタンク170は所定の圧力で水を散水管160に送る。散水管160は、送られたミスを孔から放散する。吸引機・除塵除水ボックス180は、放散された水を回収して貯留する。養生台車101、103の動作及び機能については後述される。
【0022】
第1の支持部100とトンネル20の内周面22との間、すなわち第1のアーチフレーム110の外周面とトンネル20の内周面22との間に気密バルーン200が設けられる。気密バルーン200は、ナイロン、ポリアリレート、及びポリエステルの三層、又はナイロン及びポリエステルの二層から成る袋体であって、図示されないたれ止め金具を用いて第1のアーチフレーム110の外周面に取り付けられる。気密エアーポンプ210が気密バルーン200に接続されて空気を送り込み、気密バルーン200は、トンネル20の内周面22に密着する。このとき、散水管160は、トンネル20の内周面22と気密バルーン200との間に位置する。
【0023】
図3及び4を用いて消音部300について説明する。消音部300は、長さ4.5m、高さ4.1m、幅5mのコの字型形状を有する4つの消音ユニット310を長手方向に接続して成る。つまり、消音部300は、長さ18m、高さ4.1m、幅5mのコの字型である。
【0024】
消音ユニット310は、等辺山形鋼から成る消音部フレーム320と、ポリカーボネート複層板から成る消音板340とから主に構成される。消音部フレーム320を形成する等辺山形鋼は、直線的に延びるL−40×40×3型であって、消音部フレーム320の長手方向に延びる4本と、高さ方向に延びる12本と、幅方向に延びる4本と、ブレースとして使用される8本とから成る。長手方向に延びる4本は、長さ4.5mであって、トンネル20の床面24側に設置される2本の床側山形鋼321と、トンネル20の天井側に設置される2本の天井側山形鋼322とから成る。これらは互いに平行に設置される。2本の床側山形鋼321どうしの間隔と、2本の天井側山形鋼322どうしの間隔は等しく、床側山形鋼321と天井側山形鋼322との間隔は等しい。高さ方向に延びる6本は、長さ4.1mの鉛直山形鋼323であって、それらの一端は床側山形鋼321に直角に接続され、他端は天井側山形鋼322に直角に接続され、床側山形鋼321から天井側山形鋼322まで互いに平行に延びる。6本のうち、2本は床側山形鋼321及び天井側山形鋼322の両端部に各々接続され、これにより消音ユニット310の2つの端部に設けられる。残りの4本は2本ずつ接触するように設けられる。幅方向に延びる4本は、長さ5mの頂面側山形鋼324であって、それらの端部は2本の天井側山形鋼322に直角に各々接続され、互いに平行に延びる。4本の頂面側山形鋼324のうち、2本は天井側山形鋼322及び鉛直山形鋼323の両端部に各々接続され、すなわち消音ユニット310の2つの端部に設けられる。残りの2本は他の2本と等間隔になるように設けられる。
【0025】
図2を参照すると、ブレースとして使用される8本は、長さ1.41mのブレース山形鋼325であって、天井側山形鋼322と鉛直山形鋼323との間に取り付けられる。ブレース山形鋼325と天井側山形鋼322、及びブレース山形鋼325と鉛直山形鋼323が成す角度は約45度である。
【0026】
図3及び4を参照すると、消音板340を形成するポリカーボネート複層板は、厚さ40mmであって、高さ4.1m及び長さ1.5mの6枚の側面板341と、幅5m及び長さ1.5mの3枚の頂面板342とから成る。6枚の側面板341は、床側山形鋼321、天井側山形鋼322、及び2本の鉛直山形鋼323に各々固定され、3枚の頂面板342は、天井側山形鋼322及び頂面側山形鋼324に各々固定される。
【0027】
図1を参照すると、4つの消音ユニット310のうち、中間に設けられる2つの消音ユニット310の消音板340には、複数の消音孔343が開けられる。消音孔343の直径は、例えば200mmであって、消音部300の頂面及び両側面の各々の面において3×5の行列を成すように、かつ消音部300の長さ方向中央に設けられる。
【0028】
図1、3、及び4を参照すると、隔壁500は、隔壁枠体510と、隔壁バルーン520及び530と、隔壁バルーン520及び530に接続されて空気を送り込む隔壁エアーポンプ(図示されない)とを主に備える。
【0029】
隔壁枠体510は、鉄骨により形成された2つの門型から主に構成され、2本の頂部鉄骨512、4本の側部鉄骨511、4本のブレース鉄骨513、及び2本の底部鉄骨514を主に備える。1つの門型は、1本の頂部鉄骨512、2本の側部鉄骨511、及び2本のブレース鉄骨513から主に構成される。頂部鉄骨512はトンネル20の幅方向に直線的に延び、2本の側部鉄骨511は、トンネル20の高さ方向に互いに平行に直線的に延びる。頂部鉄骨512の両端部に2本の側部鉄骨511が各々固定される。門型の内周は、消音ユニット310の端部の外周よりもわずかに大きい。2つの門型は、互いに平行となるようにトンネル20の長手方向に所定の間隔を空けて並べられ、図示されない鉄骨等を用いて底部鉄骨514に固定される。底部鉄骨514は、端部における底面が上方に湾曲した形状を有する。底部鉄骨514と門型との間に、ブレース鉄骨513が接続される。ブレース鉄骨513は、門型がトンネル20の床面24に倒れることを防ぐ。底部鉄骨514は、端部における底面が上方に湾曲した形状を有しているため、隔壁枠体510は、底部鉄骨514の長手方向に容易に移動可能である。
【0030】
隔壁バルーン520は、ナイロン、ポリアリレート、及びポリエステルの三層から成る袋体であって、天部バルーン521と、側部バルーン522と、中央バルーン524とを主に備え、切羽側に設けられる。隔壁バルーン530は、ナイロン及びポリエステルの二層から成る袋体であって、天部バルーン531と、側部バルーン532と、中央バルーン534とを主に備え、坑口側に設けられる。隔壁バルーン520、530において、ナイロンによる層は袋体の内側の層を成し、ポリエステルによる層は防爆シートであって、袋体の外側の層を成す。ポリアリレートはベクトラン(登録商標)であって、袋体の中間の層を成し、飛来物が袋体を貫通することを防止する。天部バルーン521、531は、2つの頂部鉄骨512の間に挟まれるようにして取り付けられ、側部バルーン522、532は、2つの側部鉄骨511の間に挟まれるようにして取り付けられる。中央バルーン524、534は、図示されないレール及び滑車を用いて幅方向に移動可能となるように、隔壁枠体510の内周に取り付けられる。すなわち、中央バルーン524、534により、隔壁枠体510の内側開口が開閉可能となる。
【0031】
次に、図1、2、及び4を参照して、トンネル20の内部に設置されたトンネル用消音器10について説明する。
【0032】
トンネル20の床面24に、2本のレール21が設置される。レール21は、溝形鋼、すなわちいわゆるCチャンネルであって、凹部が上方を向くように設置される。第1の支持部100の車輪140が溝形鋼の凹部内に置かれる。車輪140は溝形鋼の凹部内で回転可能である。そして、複数の第1のアーチフレーム110がトンネル20の内周面22に沿うように設置される。これにより、第1の支持部100がトンネル20の長手方向に容易に移動可能となる。
【0033】
第1のアーチフレーム110の内周側かつ頂上付近に取り付けられたチェーンブロック130から、下部フックが垂れ下がり、下部フックに消音部300が取り付けられる。チェーンブロック130を操作することにより、消音部300を上下させることが可能である。つまり、車輪140とチェーンブロック130によって、消音部300はトンネル20の長手方向及び上下方向に容易に移動可能である。
【0034】
消音部300は、コの字型形状の凹部がトンネル20の床面24と対向するように、下部フックに取り付けられる。消音部300が下げられてトンネル20の床面24に接触したとき、消音部300の内周面とトンネル20の床面24とで管が形成されるとともに、消音部300の外周面と気密バルーン200との間に背面空間350が形成される。
【0035】
隔壁500は、消音部300の両端部に設置される。天部バルーン521、531は、隔壁エアーポンプにより空気が送り込まれると、2つの頂部鉄骨512よりも上方に膨らんで、2つの頂部鉄骨512とトンネル20の内壁との間を閉鎖する。側部バルーン522、532は、隔壁エアーポンプにより空気が送り込まれると、側部鉄骨511よりも側方に膨らんで、側部鉄骨511とトンネル20の内壁との間を閉鎖する。中央バルーン524、534は、幅方向に移動して隔壁枠体510の内側開口を閉じた後、隔壁エアーポンプにより空気が送り込まれると、隔壁枠体510の内側開口内で膨らんで、隔壁枠体510の内側開口内を閉鎖する。これにより、トンネル20の長手方向に対して背面空間350を閉鎖する。すなわち、背面空間350は、消音部300の外周面、気密バルーン200、及び隔壁枠体510により形成される。天部バルーン521、531及び側部バルーン522、532は、トンネル20の内周形状に合わせて変形しながら膨張する。そのため、掘削が進むにつれてトンネル20の内周形状が変化しても、天部バルーン521、531及び側部バルーン522、532がトンネル20の内周形状に合わせて変形して、背面空間350を適切に閉鎖できる。
【0036】
消音部300の内周面とトンネル20の床面24との間に形成される管の大きさは、長さ4.5m、高さ4.1m、幅5mである一方、一般的な6立米のトラックミキサ30は、高さ約3.8m、幅約2.7mである。つまり、トラックミキサ30は、管よりも小さい。よって、消音部300を上げなくても、中央バルーン524、534を開けるだけで、トラックミキサ30は、管、すなわち消音部300を容易にくぐり抜けて、トンネル20の坑口から切羽まで容易に行き来することができる(図2参照)。
【0037】
次に、消音器300を用いて、トンネル20の切羽で生じる騒音を低減する手法について説明する。切羽及びその周辺で発生した騒音は、消音孔343及び背面空間350の働きによるいわゆるヘルムホルツ共鳴により減衰される。すなわち、消音器300の内周から消音孔343を経て背面空間350に到達した騒音は、背面空間350内の空気を振動させ、この振動と共鳴して、減衰される。
【0038】
次に、図2及び4を参照して、トンネル20の内部に設置された養生台車101、103の機能について詳細に説明する。ポンプ及びタンク170が動作すると、水が散水管160に送られ、散水管160の外周から水が連続的に放散される。放散された水は、気密バルーン200と内周面22の間を伝って、トンネル20の覆工コンクリートに届き、これにより、覆工コンクリートが湿潤状態に保たれて養生される。覆工コンクリートに届いた水は、その後、空気中の粉塵を捕らえながら、重力方向下方に落下する。そして、吸引機・除塵除水ボックス180に回収され貯留される。気密バルーン200がトンネル20の内周面22を覆うことにより、トンネル天端から落下する恐れのあるものから人、機械、設備等を防護することができる。
【0039】
本実施形態によれば、消音器300及び隔壁枠体510がトンネル20の長手方向に容易に移動可能であるため、トンネル用消音器10がトンネル20の長手方向に容易に移動可能となる。
【0040】
また、天部バルーン521、531及び側部バルーン522、532は、トンネル20の内周形状に合わせて変形して、背面空間350を適切に閉鎖できる。これにより、ヘルムホルツ共鳴現象を確実に発生させて、切羽から発生する騒音を確実に低減できる。
【0041】
次に、本願発明による第2の実施形態によるトンネル用消音器10について図5を用いて説明する。第2の実施形態は、養生台車101、103ではなくミスト台車601、603を用いる点において、第1の実施形態と異なる。第1の実施形態と同様の構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0042】
図5を参照すると、第2の支持部600は、10.5メートルの長さを有する2台のミスト台車601と、3メートルの長さを有する1台のミスト台車603とから成る。ミスト台車601、603は、トンネル20の内周面22に沿う第2のアーチフレーム630と、トンネル20の長手方向に延びる複数の支持鉄骨610及び2本の基部120と、第2のアーチフレーム630に取り付けられた複数のチェーンブロック130と、車輪611と、養生シート650と、複数の散水ノズル660と、ポンプ及びタンク170とを主に備える。ミスト台車601、603どうしの接続手段は、第1の実施形態と同様である。
【0043】
第2のアーチフレーム630は、曲線状に湾曲させた3本の金属管を互いの端部で繋ぎ合わせて連続する曲線を形成するアーチ形状にしたものである。3本の金属管は、アーチ形状の頂部を形成する1本と、アーチ形状の側部を形成する2本とから成る。第2のアーチフレーム630は、その内周面に接続される複数の直線状の支持鉄骨610により支持される。第2のアーチフレーム630の外周の全面、すなわちミスト台車601、603の外周全面を覆うように、例えばポリエチレンから成る養生シート650が取り付けられる。養生シート650は、図示されないたれ止め金具によって、第2のアーチフレーム630に固定される。複数の散水ノズル660は、第2のアーチフレーム630の外周に、周方向へ所定の間隔を空けながら取り付けられる。散水ノズル660の先端は、水を放散可能であって、養生シート650を貫通してトンネル20の内周面22と対向する。ポンプ及びタンク170は、基部120の上に設けられ、例えば600リットルの水を貯留し、図示されない配管を介して、所定の圧力で水を散水ノズル660に送る。ミスト台車601、603の動作及び機能については後述される。
【0044】
第2の支持部600とトンネル20の内周面22との間、すなわち第2のアーチフレーム630の外周面とトンネル20の内周面22との間であって、第2の支持部600の端部にエアバルブ620が設けられる。エアバルブ620は、ナイロン、ポリアリレート、及びポリエステルの三層、又はナイロン及びポリエステルの二層から成る袋体であって、図示されないたれ止め金具を用いて第2のアーチフレーム630の外周面に取り付けられる。気密エアーポンプ210がエアバルブ620に接続されて空気を送り込む。消音部300の構成、及び第2の支持部600の移動に関する構成は、第1の実施形態と同様である。トンネル20の床面24対して直角に接地される支持鉄骨610において、床面24に対向する端部に車輪611が取り付けられる。車輪611は床面24上で回転可能である。これにより、第2の支持部600がトンネル20の長手方向に容易に移動可能となる。
【0045】
次に、図5を参照して、トンネル20の内部に設置されたミスト台車601、603の機能について詳細に説明する。ポンプ及びタンク170が動作すると、水が散水ノズル660に送られ、散水ノズル660の先端からミスト状の水が連続的に放散される。水はトンネル20の覆工コンクリートに届き、これにより、覆工コンクリートが湿潤状態に保たれて養生される。覆工コンクリートに届いた水は、その後、空気中の粉塵を捕らえながら、重力方向下方に落下する。これにより、トンネル20内から粉塵を除去することができる。このとき、養生シート650を外しておけば、トンネル20内の粉塵をさらに除去することができる。ミスト台車601、603の内周をダンプトラック等が走行する場合、養生シート650を外しておけば、ダンプトラック等の荷台や、トンネル20の床版に水が落下する。これにより、荷台や床版を濡らして、これらから粉塵が飛散することを防止できる。また、養生シート650がトンネル20の内周面22を覆うことにより、トンネル天端から落下する恐れのあるものから人、機械、設備等を防護することができる。なお、養生シート650は、ポリエチレンでなくてもよく、鉄板等の剛性の高いものであってもよい。これにより、トンネル天端から落下する恐れのあるものから人、機械、設備等をより効果的に防護することができる。
【0046】
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得る。
【0047】
なお、第1の支持部100、養生台車101、103、第2の支持部600、及びミスト台車601、603の長さは、前述の値に限定されず、トンネル20の形状、要求される消音性能等に応じて適宜選択される。
【0048】
なお、消音部フレーム320及び消音板340の大きさは、前述のものに限定されず、トンネル20の形状、消音すべき周波数や低減すべき音量等に応じて適宜決定される。
【0049】
なお、消音ユニット310に開けられる消音孔343の大きさ、位置、及び数等は、前述のものに限定されず、消音すべき周波数や低減すべき音量等に応じて適宜決定される。
【0050】
なお、気密バルーン200は設けられなくてもよい。この場合、背面空間350は、消音部300の外周面、トンネル20の内周面22、及び隔壁枠体510により形成される。
【0051】
なお、本明細書および図中に示した各部材の大きさ及び素材は例示であって、これらの大きさ及び素材に限定されない。
【0052】
ここに付随する図面を参照して本発明の実施形態が説明されたが、記載された発明の範囲と精神から逸脱することなく、変形が各部の構造と関係に施されることは、当業者にとって自明である。
図1
図2
図3
図4
図5