(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前回実施した照射検出工程にて上記レーザパルスの照射を終了してから、今回実施した照射検出工程にて上記レーザパルスの照射を開始するまでの時間は、前回実施した照射検出工程にて溶融した加工対象物の表面が凝固するまでに要する時間よりも長い、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の制御方法。
上記集光レンズと上記加工対象物とを近づけながら、又は、上記集光レンズと上記加工対象物とを遠ざけながら、上記移動工程、上記照射検出工程、及び上記判定工程を含むサイクルを繰り返すことによって、上記集光レンズから上記加工対象物までの距離を設定する設定工程を含んでいる、
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の制御方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の制御方法は、「加工対象物の表面におけるレーザパルスのスポットサイズが小さくなるほど、反射パルスの強度の時間積分値が小さくなる」という傾向が成り立つことを前提としている。しかしながら、加工対象物の材質又は表面状態によっては、このような傾向が成り立たない、すなわち、特許文献1に記載の制御方法を用いて集光レンズから加工対象物までの距離を最適値に近づけることができないことを、本願発明者は見出した。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、加工対象物の材質及び表面状態によらず、集光レンズから加工対象物までの距離を最適値に近づけることが可能なレーザ加工機の制御方法を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明に係る制御方法は、集光レンズを透過したレーザパルスを用いて加工対象物を加工するレーザ加工機を制御する制御方法であって、上記集光レンズ又は上記加工対象物を移動することによって、上記集光レンズから上記加工対象物までの距離を変化させる移動工程と、上記レーザパルスを上記加工対象物に照射すると共に、上記レーザパルスを上記加工対象物が反射することにより生じた反射パルスを検出する照射検出工程と、上記移動工程の後に実施された上記照射検出工程にて検出された上記反射パルスの時間波形と、上記移動工程の前に実施された前回実施した上記照射検出工程にて検出された上記反射パルスの時間波形とを比較することによって、上記移動工程により上記集光レンズから上記加工対象物までの距離が最適値に近づいたか否かを判定する判定工程とを、含んでいる、ことを特徴とする。
【0008】
上記の構成によれば、上記判定工程における判定結果に基づいて、加工対象物の材質及び表面状態によらず、集光レンズから加工対象物までの距離を最適値に近づけることが可能になる。
【0009】
本発明に係る制御方法において、前回実施した照射検出工程にて上記レーザパルスの照射を終了してから、今回実施した照射検出工程にて上記レーザパルスの照射を開始するまでの時間は、前回実施した照射検出工程にて溶融した加工対象物の表面が凝固するまでに要する時間よりも長い、ことが好ましい。
【0010】
上記の構成によれば、凝固した加工対象物がレーザパルスを反射することによる生じる反射パルスの時間波形同士を上記判定工程において比較することができる。このため、上記移動工程により集光レンズから加工対象物までの距離が最適値に近づいたか否かを、より正確に判定することが可能になる。
【0011】
本発明に係る制御方法においては、上記判定工程において、今回実施した照射検出工程にて検出された上記反射パルスのパルス幅が前回実施した照射検出工程にて検出された上記反射パルスのパルス幅よりも狭いときに、上記集光レンズから上記加工対象物までの距離が上記最適値に近づいたと判定する、ことが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、上記移動工程により集光レンズから加工対象物までの距離が最適値に近づいたか否かを、簡単かつ正確に判定することができる。
【0013】
本発明に係る制御方法においては、上記判定工程において、今回実施した照射検出工程にて検出された上記反射パルスの立下りエッジ幅が前回実施した照射検出工程にて検出された上記反射パルスの立下りエッジ幅よりも狭いときに、上記集光レンズから上記加工対象物までの距離が上記最適値に近づいたと判定する、ことが好ましい。
【0014】
上記構成によれば、上記移動工程により集光レンズから加工対象物までの距離が最適値に近づいたか否かを、簡単かつ正確に判定することができる。
【0015】
本発明に係る制御方法は、上記集光レンズと上記加工対象物とを近づけながら、又は、上記集光レンズと上記加工対象物とを遠ざけながら、上記移動工程、上記照射工程、及び上記判定工程を含むサイクルを繰り返すことによって、上記集光レンズから上記加工対象物までの距離を設定する設定工程を含んでいる、ことが好ましい。
【0016】
上記の構成によれば、集光レンズから加工対象物までの距離を最適値に精度良く近づけることができる。
【0017】
本発明に係る制御方法は、上記集光レンズと上記加工対象物とを近づけながら、上記移動工程、上記照射検出工程、及び上記判定工程を含むサイクルを繰り返すことによって、上記集光レンズから上記加工対象物まで距離を設定する第1設定工程と、上記第1設定工程を実施する前、又は、上記第1設定工程を実施した後に、上記集光レンズと上記加工対象物とを遠ざけながら、上記移動工程、上記照射検出工程、及び上記判定工程を含むサイクルを繰り返すことによって、上記集光レンズから上記加工対象物までの距離を設定する第2設定工程と、上記第1設定工程及び上記第2設定工程を実施した後に、上記集光レンズから上記加工対象物までの距離を、上記第1設定工程にて設定された距離と上記第2設定工程にて設定された距離との中間値に設定する第3設定工程と、を含んでいる、ことが好ましい。
【0018】
上記の構成によれば、集光レンズから加工対象物までの距離をより精度良く最適値に近づけることができる。
【0019】
本発明に係る制御方法においては、上記加工対象物において上記第1設定工程でレーザパルスが照射される箇所と、上記加工対象物において上記第2設定工程でレーザパルスが照射される箇所とが異なる、ことが好ましい。
【0020】
上記の構成によれば、加工対象物において後に実施される設定工程でレーザパルスを照射する箇所が、先に実施される設定工程で照射されたレーザパルスにより荒らされているという事態を避けることができる。このため、上記第1設定工程と上記第2設定工程とを同様の条件で実施することができ、その結果、集光レンズから加工対象物までの距離を最適値により精度良く近づけることができる。
【0021】
本発明に係る制御方法においては、上記加工対象物においてレーザパルスが照射される箇所がサイクル毎に異なる、ことが好ましい。
【0022】
上記の構成によれば、加工対象物において後に実施されるサイクルでレーザパルスを照射する箇所が、先に実施されるサイクルで照射されたレーザパルスにより荒らされているという事態を避けることができる。このため、各サイクルを同様の条件で実施することができ、その結果、集光レンズから加工対象物までの距離を最適値により精度良く近づけることができる。
【0023】
上記レーザパルスは、MOPA型のファイバレーザにより生成されたものであり、上記照射検出工程において、PA部の出力端から分岐した戻り光に含まれる反射パルス、又は、MO部の出力端とPA部の入力端との間から分岐した戻り光に含まれる反射パルスを検出する、ことが好ましい。
【0024】
上記の構成によれば、反射パルスを効果的に検出することができる。
【0025】
なお、集光レンズを透過したレーザパルスを用いて加工対象物を加工するレーザ加工機であって、上記の制御方法を実施する制御部を備えているレーザ加工機についても、本発明の範疇に含まれる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の一態様によれば、加工対象物の材質及び表面状態によらず、集光レンズから加工対象物までの距離を最適化することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
〔レーザ加工機の構成〕
本発明の一実施形態に係るレーザ加工機1の構成について、
図1を参照して説明する。
図1は、レーザ加工機1の構成を示すブロック図である。
【0029】
レーザ加工機1は、レーザパルスを用いてワーク2(特許請求の範囲における「加工対象物」)を加工するための装置であり、
図1に示すように、レーザ装置11、レーザヘッド12、スタンド13、ステージ14、及び加工機制御部15を備えている。
【0030】
レーザ装置11は、レーザパルスを生成するための構成である。本実施形態において、レーザ装置11は、(1)レーザパルスを生成するファイバレーザ111と、(2)ファイバレーザ111を制御するレーザ装置制御部112と、により構成されている。ファイバレーザ111は、反射パルスを電流信号に変換するフォトダイオードPDを含んでおり、レーザ装置制御部112は、ファイバレーザ111を制御する機能に加えて、フォトダイオードPDにて得られた電流信号を参照して後述する判定工程を実施する機能を有している。レーザ装置11にて生成されたレーザパルスは、デリバリファイバDFを介してレーザヘッド12に供給される。なお、フォトダイオードPDを含むファイバレーザ111の構成例については、参照する図面を代えて後述する。
【0031】
レーザヘッド12は、レーザ装置11にて生成されたレーザパルスをワーク2に照射するための構成である。本実施形態において、レーザヘッド12は、(1)デリバリファイバDFから出射されたレーザパルスを、発散光から平行光に変換するコリメートレンズ121と、(2)コリメートレンズ121を透過したレーザパルスの進行方向を、図示した座標系においてx軸正方向からz軸負方向に変換するミラー122と、(3)ミラー122にて反射されたレーザパルスを、平行光から収束光に変換する集光レンズ123と、により構成されている。集光レンズ123を透過したレーザパルスは、ワーク2の表面に照射される。
【0032】
レーザヘッド12は、スタンド13によって、図示した座標系においてz軸と平行な方向に移動可能に保持されており、ワーク2は、ステージ14によって、図示した座標系においてxy面と平行な方向に移動可能に保持されている。加工機制御部15は、スタンド13を制御することによって、レーザヘッド12をz軸と平行な方向に移動すると共に、ステージ14を制御することによって、ワーク2をxy平面と平行な方向に移動することができる。
【0033】
レーザ加工機1は、ワーク2の加工を開始する前にフォーカス調整処理を実施する。このフォーカス調整処理は、(1)集光レンズ123からワーク2までの距離を変化させる移動工程と、(2)レーザパルスをワーク2に照射する照射工程と、(3)レーザパルスをワーク2が反射することにより生じた反射パルスを検出する検出工程と、(4)移動工程により集光レンズ123からワーク2までの距離が最適値に近づいたか否かを判定する判定工程とを含むサイクルを、判定工程における判定結果が「偽」になるまで繰り返すことによって実現される。
【0034】
本実施形態において、移動工程は、スタンド13が、加工機制御部15による制御に従い、レーザヘッド12をz軸と平行な方向に移動させることによって実現される。また、照射工程は、ファイバレーザ111が、レーザ装置制御部112による制御に従い、レーザパルスを生成することによって実現される。また、検出工程は、反射パルスをフォトダイオードPDが電流信号に変換すると共に、この電流信号をレーザ装置制御部112が取得することによって実現される。また、判定工程は、レーザ装置制御部112が、現サイクルの検出工程にて検出された反射パルスの時間波形(すなわち、フォトダイオードPDから取得した電流信号の時間波形)と前サイクルの検出工程にて検出された反射パルスの時間波形とを比較することによって実現される。なお、フォーカス調整処理の具体例については、参照する図面を代えて後述する。
【0035】
判定工程において集光レンズ123からワーク2までの距離が最適値に近づいたか否かを判定する判定方法としては、例えば、(a)現サイクルの検出工程にて検出された反射パルスのパルス幅が前サイクルの照射検出工程にて検出された反射パルスのパルス幅よりも狭いときに、集光レンズ123からワーク2までの距離が最適値に近づいたと判定する方法、又は、(b)現サイクルの検出工程にて検出された反射パルスの立下りエッジ幅が前サイクルの検出工程にて検出された反射パルスの立下りエッジ幅よりも狭いときに、集光レンズ123からワーク2までの距離が最適値に近づいたと判定する判定方法などが挙げられる。なお、このような判定方法により集光レンズ123からワーク2までの距離が最適値に近づいたか否かを判定することが可能な理由については、参照する図面を代えて後述する。
【0036】
なお、本実施形態においては、スタンド13を用いてレーザヘッド12をz軸と平行な方向に移動させることによって、集光レンズ123からワーク2の表面までの距離を変化させる構成を採用しているが、本発明はこれに限定されない。すなわち、ステージ14を用いてワーク2をz軸と平行な方向に移動させることによって、集光レンズ123からワーク2の表面までの距離を変化させる構成を採用してもよい。
【0037】
また、本実施形態においては、ステージ14を用いてワーク2をxy面と平行な方向に移動させることによって、ワーク2の表面においてレーザパルスが照射される位置を変化させる構成を採用しているが、本発明はこれに限定されない。すなわち、スタンド13を用いてレーザヘッド12をxy面と平行な方向に移動させることによって、ワーク2の表面においてレーザパルスが照射される位置を変化させる構成を採用してもよい。
【0038】
〔ファイバレーザの構成例〕
図1に示すレーザ加工機1が備えるファイバレーザ111の構成例について、
図2及び
図3を参照して説明する。
【0039】
図2の(a)は、ファイバレーザ111の第1の構成例を示すブロック図であり、
図2の(b)は、ファイバレーザ111の第2の構成例を示すブロック図である。
【0040】
図2の(a)及び(b)に示すファイバレーザ111は、何れも、レーザ光を生成するMO(Master Oscillator)部MOと、MO部MOにて生成されたレーザ光を増幅するPA(Power amplifier)部PAと、PA部PAにて増幅されたレーザ光をレーザヘッド12に導くデリバリファイバDFと、を備えたMOPA型のファイバレーザである。
【0041】
MO部MOは、
図2の(a)及び(b)に示すように、シード光源として機能するレーザダイオードLD1により構成されている。レーザダイオードLD1は、電流源I1から供給された駆動電流を用いて、レーザ光を生成する。レーザダイオードLD1にて生成されたレーザ光は、PA部PAに供給される。
【0042】
PA部PAは、
図2の(a)及び(b)に示すように、(1)励起光源として機能する複数のレーザダイオードLD21〜LD24と、(2)1つの入力ポートがMO部MO(より具体的には、レーダダイオードLD1)に接続され、残りの入力ポートがレーザダイオードLD21〜LD24に接続されたポンプコンバイナPCと、(3)入射端がポンプコンバイナPCの出力ポートに接続された増幅用ファイバAFと、を備えている。増幅用ファイバAFは、コアに希土類元素が添加されたダブルクラッドファイバである。
【0043】
PA部PAの各部は、MO部MOにて生成されたレーザ光を以下のように増幅する。すなわち、レーザダイオードLD21〜LD24は、電流源I2から供給された駆動電流を用いて、励起光を生成する。ポンプコンバイナPCは、レーザダイオードLD21〜LD24にて生成された励起光を合波すると共に、MO部MOから供給されたレーザ光を透過する。増幅用ファイバAFは、ポンプコンバイナPCにて合波された励起光を用いて、ポンプコンバイナPCを透過したレーザ光を増幅する。増幅用ファイバAFにて増幅されたレーザ光は、デリバリファイバDFを介して上述したレーザヘッド12に供給される。
【0044】
図2の(a)及び(b)に示すファイバレーザ111は、直接変調方式のファイバ型パルスレーザである。すなわち、一定の駆動電流を電流源I2からレーザダイオードLD21〜LD24に供給しながら、あるパルスパターンを有する駆動電流を電流源I1からレーザダイオードLD11に供給すると、そのパルスパターンを有するレーザ光がファイバレーザ111から出力される。このような電流源I1及び電流源I2の制御は、レーザ装置制御部112が行う。
【0045】
レーザ加工機1において、ファイバレーザ111から出力されたレーザパルスは、レーザヘッド12を介してワーク2に照射される。そうすると、このレーザパルスをワーク2が反射することにより生じた反射パルスが、レーザヘッド12を介してレーザ装置11に入力される。
図2の(a)及び(b)に示すファイバレーザ111は、この反射パルスを検出するための構成として、光カプラC及びフォトダイオードPDを備えている。
【0046】
図2の(a)に示すファイバレーザ111において、光カプラCは、デリバリファイバDFと増幅用ファイバAFとの間に挿入されており、デリバリファイバDFから増幅用ファイバAFに進入する反射パルスの一部をフォトダイオードPDに導く。フォトダイオードPDは、反射パルスを電流信号に変換し、得られた電流信号をレーザ装置制御部112に供給する。
【0047】
一方、
図2の(b)に示すファイバレーザ111において、光カプラCは、ポンプコンバイナPCの入力ポートと低反射ファイバブラッググレーティングFBG2との間に挿入されており、ポンプコンバイナPCの入力ポートから低反射ファイバブラッググレーティングFBG2に進入する反射パルスの一部をフォトダイオードPDに導く。フォトダイオードPDは、反射パルスを電流信号に変換し、得られた電流信号をレーザ装置制御部112に供給する。
【0048】
レーザ装置制御部112は、上述したフォーカス調整処理において、フォトダイオードPDにて得られた電流信号に基づいて判定工程を実施する。すなわち、現サイクルにてフォトダイオードPDから取得した電流信号の時間波形と前サイクルにてフォトダイオードPDから取得した電流信号の時間波形とを比較することによって、集光レンズ123からワーク2までの距離が最適値に近づいたか否かを判定する。
【0049】
図3の(a)は、ファイバレーザ111の第3の構成例を示すブロック図であり、
図3の(b)は、ファイバレーザ111の第4の構成例を示すブロック図である。
【0050】
図3の(a)及び(b)に示すファイバレーザ111は、
図2の(a)及び(b)に示すファイバレーザ111と同様、レーザ光を生成するMO部MOと、MO部MOにて生成されたレーザ光を増幅するPA部PAと、PA部PAにて増幅されたレーザ光をレーザヘッド12に導くデリバリファイバDFと、を備えたMOPA型のファイバレーザである。
【0051】
ただし、
図3の(a)及び(b)に示すファイバレーザ111は、Qスイッチ方式のファイバ型パルスレーザであり、MO部MOとPA部PAとの間に音響光学素子AOMが設けられている。
図3の(a)及び(b)に示すファイバレーザ111では、一定の駆動電流を電流源I1,I2からレーザダイオードLD11〜15,LD21〜LD24に供給しながら、あるパルスパターンで音響光学素子AOMをON/OFF制御すると、そのパルスパターンに対応した共振器のQ値に応じたレーザ光がファイバレーザ111から出力される。このような電流源I1,I2及び音響光学素子AOMの制御は、レーザ装置制御部112が行う。
【0052】
〔フォーカス調整処理の具体例〕
図1に示すレーザ加工機1が実施するフォーカス制御処理の具体例について、
図4を参照して説明する。
図4は、フォーカス調整処理の流れを示すフローチャートである。
図4には、加工機制御部15が制御主体となる工程と、レーザ装置制御部112が制御主体となる工程とを、並列的に示している。
【0053】
まず、加工機制御部15は、動作モードを調整モードに変更することを指示するモード変更指示をレーザ装置制御部112に与える(ステップS11)。レーザ装置制御部112は、このモード変更指示に応じて、動作モードを通常モードから調整モードに変更すると共に、モード変更完了通知を加工機制御部15に返す(ステップS21)。レーザ装置制御部112は、動作モードの変更を完了すると、加工機制御部15からのレーザON指示を待ち受ける(ステップS22:NO)。
【0054】
加工機制御部15は、このモード変更完了通知を確認すると、レーザON指示をレーザ装置制御部112に与える(ステップS12)。ファイバレーザ111が
図2に示す直接変調方式のファイバ型パルスレーザである場合、レーザ装置制御部112は、加工機制御部15からのレーザON指示に応じて、電流源I2をON状態に切り替え、レーザダイオードLD21〜LD24を点灯させる。その後、レーザ装置制御部112は、レーザダイオードLD21〜LD24が点灯している状態で、電流源I1を瞬間的にON状態に切り替え、レーザダイオードLD11を瞬間的に点灯させることによって、ファイバレーザ111に単一のレーザパルスを出力させる。一方、ファイバレーザ111が
図3に示すQスイッチ方式のファイバ型パルスレーザである場合、レーザ装置制御部112は、レーザ装置制御部112からのレーザON指示に応じて、電流源I1,I2をON状態に切り替え、レーザダイオードLD11,LD21〜LD24を点灯させる。その後、レーザ装置制御部112は、レーザダイオードLD11,LD21〜LD24が点灯している状態で、音響光学素子AOMを制御して共振器のQ値を瞬間的に高い状態に切り替えることによって、ファイバレーザ111に単一のレーザパルスを出力させる。これにより、レーザ装置11にて生成されたレーザパルスを、レーザヘッド12を用いてワーク2に照射する照射工程と、レーザパルスをワーク2が反射することにより生じた反射パルスを、フォトダイオードPDを用いて検出する検出工程とが実行される(ステップS23)。
【0055】
その後、加工機制御部15は、レーザOFF指示をレーザ装置制御部112に与える(ステップS13)。レーザ装置制御部112は、このレーザOFF指示に応じて、電流源I2をOFF状態に切り替え、レーザダイオードLD21〜LD24を消灯する。その後、レーザ装置制御部112は、集光レンズ123からワーク2までの距離が最適値に近づいたか否かを判定する判定工程を実行すると共に、判定結果を加工機制御部15に通知する(ステップS25)。判定工程において、レーザ装置制御部112は、現サイクルの検出工程にて検出された反射パルスの時間波形と前サイクルの検出工程にて検出された反射パルスとを比較することによって、集光レンズ123からワーク2までの距離が最適値に近づいたか否かを判定する。より具体的には、(a)現サイクルの検出工程にて検出された反射パルスのパルス幅W1が前サイクルの照射検出工程にて検出された反射パルスのパルス幅W1よりも狭いとき、又は、(b)現サイクルの検出工程にて検出された反射パルスの立下りエッジ幅W2が前サイクルの検出工程にて検出された反射パルスの立下りエッジ幅W2よりも狭いときに、集光レンズ123からワーク2までの距離が最適値に近づいたと判定する。
【0056】
レーザ装置制御部112から通知された判定結果の真偽値が前サイクルの判定結果と同じく「真」である場合、すなわち、集光レンズ123からワーク2までの距離が最適値に近づきつつある場合(ステップS14:NO)、加工機制御部15は、集光レンズ123からワーク2までの距離を変化させる移動工程を実行する(ステップS15)。そして、加工機制御部15は、移動工程の実行を完了すると、再度、レーザON指示をレーザ装置制御部112に与える(ステップS12)。この場合、上述したステップS12〜S14、S22〜S25が繰り返される。
【0057】
一方、レーザ装置制御部112から通知された判定結果の真偽値が前サイクルの判定結果と異なり「偽」である場合、すなわち、集光レンズ123からワーク2までの距離が最適値を超えて小さく又は大きくなり過ぎた場合(ステップS14:YES)、加工機制御部15は、集光レンズ123からワーク2までの距離を前サイクルの検出工程を実施したときの距離に戻す移動工程を実行する(ステップS16)。そして、加工機制御部15は、動作モードを通常モードに変更することを指示するモード変更指示をレーザ装置制御部112に与える(ステップS17)。レーザ装置制御部112は、このモード変更指示に応じて、動作モードを通常モードから調整モードに変更する(ステップS26)。これにより、フォーカス制御処理が完了する。
【0058】
なお、上述したフォーカス調整処理においては、各サイクルの照射工程においてワーク2の同じ箇所にレーザパルスが照射される構成を採用しているが、本発明は、これに限定されない。すなわち、各サイクルの照射工程においてワーク2の異なる箇所にレーザパルスが照射される構成を採用してもよい。後者の構成を採用する場合、加工機制御部15は、レーザヘッド12をz軸と平行な方向に移動することによって、集光レンズ123からワーク2までの距離を変化させる際に、ワーク2をxy平面と平行な方向に移動することによって、ワーク2においてレーザパルスが照射される箇所を変化させるようにすればよい。
【0059】
また、上述したフォーカス調整処理においては、判定工程における判定結果が「真」である場合、現サイクルにおける照射工程を終了した後、直ちに次サイクルにおける照射工程を開始する構成を採用しているが、本発明は、これに限定されない。すなわち、判定工程における判定結果が「真」である場合、現サイクルにおける照射工程を終了した後、所定の待機時間が経過してから次サイクルにおける照射工程を開始する構成を採用してもよい。後者の構成を採用する場合、上記の待機時間は、現サイクルの照射工程にて溶融したワーク2の表面が凝固するまでに要する時間よりも長いことが好ましい。なお、各サイクルの照射工程にて溶融したワーク2の表面が凝固するまでに要する時間は、レーザパルスのパルス幅と同程度である。このため、上記の待機時間は、レーザパルスのパルス幅の2倍以上であることが好ましく、レーザパルスのパルス幅の3倍以上であることが更に好ましい。
【0060】
図5の(a)は、レーザ加工機1が出力するレーザパルスの時間波形を示すグラフであり、
図5の(b)は、レーザパルスがワーク2の表面で合焦していないときの反射パルスの時間波形を示すグラフであり、
図5の(c)は、レーザパルスがワーク2の表面で合焦しているときの反射パルスの時間波形を示すグラフである。
【0061】
図5の(a)及び(b)を参照すると、レーザパルスがワーク2の表面で合焦していないときの反射パルスの時間波形は、相対パワーで見るとレーザパルスの時間波形と形状が同一であることが分かる。一方、
図5の(a)及び(c)を参照すると、レーザパルスがワーク2の表面で合焦しているときの反射パルスの時間波形は、相対パワーで見てもレーザパルスの時間波形と形状が異なり、レーザパルスの時間波形の広がりが小さくなっていることが分かる。例えば、反射パルスのパルス幅W1及び立下りエッジ幅W2は、レーザパルスがワーク2の表面で合焦しているときの方が、レーザパルスが加工対象2の表面で合焦していないときよりも小さくなっている。このような違いが生じる理由は、レーザパルスがワーク2の表面で合焦していないときには、レーザパルスがワーク2に吸収されない(そのエネルギーがワーク2を溶融するために消費されない)のに対して、レーザパルスがワーク2の表面で合焦しているときには、レーザパルスがワーク2に吸収される(そのエネルギーがワーク2を溶融するために消費される)からであると考えられる。
【0062】
図5からも明らかなように、レンズ123からワーク2までの距離が最適値に近づけば近づくほど、すなわち、レーザパルスの焦点が加工対処物2の表面に近づけば近づくほど、反射パルスの時間波形の広がりが小さくなる。このため、レンズ123からワーク2までの距離が最適値に近づいたか否かは、反射パルスの時間波形の広がりが小さくなったか否かに応じて判定することができる。例えば、(a)現サイクルの検出工程にて検出された反射パルスのパルス幅W1が前サイクルの照射検出工程にて検出された反射パルスのパルス幅W1よりも狭いとき、又は、(b)現サイクルの検出工程にて検出された反射パルスの立下りエッジ幅W2が前サイクルの検出工程にて検出された反射パルスの立下りエッジ幅W2よりも狭いときに、レンズ123からワーク2までの距離が最適値に近づいたと判定することができるのは、このためである。
【0063】
なお、
図5においては、パワーがピークパワーの50%以上になる時間幅をパルス幅W1としているが、下限値の取り方は任意である。すなわち、パワーがピークパワーの40%以上になる時間幅をパルス幅W1としても、あるいは、パワーがピークパワーの60%以上にはる時間幅をパルス幅W1としても、上述した結論が得られる。したがって、パルス幅W1は、α(0<α<100)を予め定められた定数として、パワーがピークパワーのα%以上になる時間幅と一般化することができる。ただし、αを30≦α≦70以下とすることによって、レーザパルスの時間波形を適切に反映したパルス幅W1を得ることができる。
【0064】
また、
図5においては、パワーがピークパワーの90%からピークパワーの10%にまで低下するのに要する時間を立下りエッジ幅W2としているが、上限値及び下限値の取り方は任意である。すなわち、パワーがピークパワーの85%からピークパワーの15%にまで低下するのに要する時間を立下りエッジ幅W2としても、あるいは、パワーがピークパワーの95%からピークパワーの5%にまで低下するのに要する時間を立下りエッジ幅W2としても、上述した結論が得られる。したがって、立下りエッジ幅W2は、β1及びβ2(0<β1<β2<100)を予め定められた定数として、パワーがピークパワーのβ2%からピークパワーのβ1%にまで低下するのに要する時間と一般化することができる。
【0065】
図6は、
図1に示すレーザ加工機1の第1の動作例を示す図である。
図6において、(a)は、反射パルスのパルス幅W1をサイクル毎に示すグラフであり、(b)は、集光レンズ123とワーク2との位置関係を示す模式図である。本動作例は、
図6の(b)に示すように、集光レンズ123を加工対象物123に次第に近づけていく場合、特に、ワーク2の表面においてレーザパルスを合焦させる集光レンズ123の位置がN=4のサイクルにおける集光レンズ123の位置の近傍にある場合の動作例である。
【0066】
N=1からN=4までのサイクルにおいては、
図6の(a)に示すように、現サイクルにおいて検出した反射パルスのパルス幅W1が前サイクルにおいて検出した反射パルスのパルス幅W2よりも小さくなる。このため、N=1からN4までのサイクルにおいては、
図6の(b)に示すように、集光レンズ123をワーク2に近づける移動工程が実施され、次サイクルにおける集光レンズ123からワーク2までの距離が現サイクルにおける集光レンズ123から加工対象物までの距離よりも短くなる。一方、N=5のサイクルにおいては、
図6の(a)に示すように、現サイクルにおいて検出した反射パルスのパルス幅W1が前サイクルにおいて検出した反射パルスのパルス幅W1よりも大きくなる。このため、N=5のサイクルにおいては、
図6の(b)に示すように、集光レンズ123をN=4のサイクルにおける位置に戻す移動工程が実施され、本サイクルをもってフォーカス調整処理が終了する。これにより、集光レンズ123からワーク2までの距離を、最適値に近い値に設定することができる。
【0067】
なお、本動作例は、集光レンズ123からワーク2までの距離を次第に短くする場合の動作例であるが、集光レンズ123からワーク2までの距離を変化させる方法はこれに限定されない。すなわち、集光レンズ123からワーク2までの距離を次第に長くする場合であっても、レーザ加工機1は、本動作例と同様に動作する。
【0068】
また、集光レンズ123からワーク2までの距離を次第に長くする動作Aと、集光レンズ123からワーク2までの距離を次第に短くする動作Bとをそれぞれ実施し、動作Aにより設定された集光レンズ123からワーク2までの距離ZAと、動作Bにより設定された集光レンズ123からワーク2までの距離ZBとの中間値(例えば、平均値)を、最終的な集光レンズ123からワーク2までの距離Zとして設定してもよい。動作Aによる距離ZAの設定と、動作Bによる距離ZBの設定とは、距離Zを設定する前に実施されていればよく、動作Aによる距離ZAの設定を終えてから動作Bによる距離ZBの設定を実施してもよいし、動作Bによる距離ZBの設定を終えてから動作Aによる距離ZAの設定を実施してもよい。
【0069】
動作A及び動作Bの両方を行う場合の第1の動作例を
図7に示す。
図7に示す動作例は、ワーク2において動作Aに際してレーザパルスを照射する場所と動作Bに際してレーザバルスを照射する場所とが同じ場合の動作例である。動作Aにおいては、集光レンズ123からワーク2までの距離Zを、ZA1→ZA2→ZA3と次第に大きくする。このとき、反射パルスのパルス幅W1は、WA1→WA2→WA3と変化し、3サイクル目でパルス幅W1が減少から増加に転じる。したがって、動作Aにより得られる集光レンズ123からワーク2までの距離ZAは、2サイクル目の位置ZA2となる。一方、動作Bにおいては、集光レンズ123からワーク2までの距離Zを、ZB1→ZB2→ZB3→ZB4と次第に小さくする。このとき、反射パルスのパルス幅W1は、WB1→WB2→WB3→WB4と変化し、4サイクル目でパルス幅W1が減少から増加に転じる。したがって、動作Bにより得られる集光レンズ123からワーク2までの距離ZAは、3サイクル目の位置ZB3となる。したがって、
図7に示す動作例における最終的な集光レンズ123からワーク2までの距離Zは、Z=(ZA2+ZB3)/2となる。
【0070】
動作A及び動作Bの両方を行う場合の第2の動作例を
図8に示す。
図8に示す動作例は、ワーク2において動作Aに際してレーザパルスを照射する場所と動作Bに際してレーザバルスを照射する場所とが異なる場合の動作例である。動作Aにおいては、集光レンズ123からワーク2までの距離Zを、Z1→Z2→Z3→Z4と次第に大きくする。このとき、反射パルスのパルス幅W1は、W11→W12→W13→W14と変化し、4サイクル目でパルス幅W1が減少から増加に転じる。したがって、動作Aにより得られる集光レンズ123からワーク2までの距離ZAは、3サイクル目の位置Z3となる。一方、動作Bにおいては、集光レンズ123からワーク2までの距離Zを、Z6→Z5→Z4→ZB3と次第に小さくする。このとき、反射パルスのパルス幅W1は、W11→W12→WB13→WB14と変化し、4サイクル目でパルス幅W1が減少から増加に転じる。したがって、動作Bにより得られる集光レンズ123からワーク2までの距離ZAは、3サイクル目の位置Z4となる。したがって、
図8に示す動作例における最終的な集光レンズ123からワーク2までの距離Zは、Z=(Z3+Z4)/2となる。
【0071】
また、本動作例は、現サイクルにおいて検出した反射パルスのパルス幅W1が前サイクルにおいて検出した反射パルスのパルス幅W1よりも狭いときに、レンズ123からワーク2までの距離が最適値に近づいたと判定する場合の動作例であるが、レンズ123からワーク2までの距離が最適値に近づいたか否かを判定する方法は、これに限定されない。すなわち、現サイクルにおいて検出した反射パルスの立下りエッジ幅W2が前サイクルにおいて検出した反射パルスの立下りエッジ幅W2よりも狭いときに、レンズ123からワーク2までの距離が最適値に近づいたと判定する場合であっても、レーザ加工機1は、本動作例と同様に動作する。
【0072】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。