(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1方向に対向する背当て部および前胴部と、前記第1方向の一端が前記背当て部に接続するとともに他端が前記前胴部に接続して互いに対向する2つのマチ部と、前記前胴部、前記背当て部、および前記マチ部のそれぞれの下端に接続される底部と、を備え、上端部に開口部が形成された箱状の胴部を有するランドセルにおいて、
前記底部の前記第1方向の長さは、前記開口部の前記第1方向の長さよりも短く、
前記前胴部を、前記第1方向に前記背当て部と対向するとともに、前記背当て部より上下方向の長さが短く、かつ、前記第1方向に膨出することなく平板状に形成された前胴本体と、前記前胴本体の下端部から前記底部へ平板状に延びる傾斜部とを備えるように構成することによって、前記胴部を、前記底部及び前記傾斜部の接続部分よりも前記背当て部側の本体収納部と、前記接続部分よりも前記前胴本体側の容量増加部とに機能分離したことを特徴とするランドセル。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ランドセルには、耐久性の向上が求められているだけでなく、児童の安全を確保することも求められる。具体的には、児童の転倒などによって、ランドセルに衝撃が加わったときに、この衝撃力をランドセルで吸収して児童を保護することが求められる。
【0005】
従来のように、ランドセルを補強すれば、ランドセルの強度を向上させることができるが、強度を向上させると、衝撃力がランドセルを介して児童に伝わりやすくなり、ランドセルによって衝撃力を吸収しにくくなってしまう。
【0006】
ここで、ランドセルの胴部には、小物を収納するための収納部が設けられていることがあり、この収納部が蛇腹構造を有していることがある。この場合、蛇腹構造によって、衝撃力を吸収可能であるが、収納部は小物を収納するだけのサイズであるため、収納部の蛇腹構造だけでは、衝撃力を十分には吸収しにくい。当然のことながら、蛇腹構造の収納部が設けられていなければ、衝撃力を吸収することはできない。
【0007】
そこで、衝撃力の吸収のため、胴部の補強を抑え、胴部を変形しやすくすることが考えられる。この場合、胴部に衝撃力が加わった際に、胴部全体が変形してしまい、教科書などの収納物を保護できなくなってしまう。
【0008】
そこで、本発明の目的は、ランドセルに衝撃が加わったときの衝撃力の吸収と収納物の保護の両立を図ることができるランドセルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のランドセルは、第1方向に対向する背当て部および前胴部と、前記第1方向の一端が前記背当て部に接続するとともに他端が前記前胴部に接続して互いに対向する2つのマチ部と、前記前胴部、前記背当て部、および前記マチ部のそれぞれの下端に接続される底部と、を備え、上端部に開口部が形成された箱状の胴部を有するランドセルにおいて、前記底部の前記第1方向の長さは、前記開口部の前記第1方向の長さよりも短いことを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、底部の第1方向の長さが、開口部の第1方向の長さよりも短いので、胴部において前胴部側の組織が構造的に弱くなるとともに、背当て部側の組織が構造的に強くなる。これにより、前胴部に衝撃が加わった際に、構造的に弱くなった前胴部側の組織により衝撃を緩和できる。そして、前胴部側の組織が破壊されても、構造的に強くなった背当て部側の組織により、収納物を保護できる。
【0011】
本発明によれば、衝撃の緩和をジャバラ(蛇腹構造の収納部)によらずに行うことができるので、ジャバラを不要にできる。ジャバラを設けない場合、ジャバラを設けるために必要な第1方向の長さ分、胴部の第1方向の長さを長くすることができる。従って、本発明によれば、ランドセル全体の大きさを変更することなく胴部の容量を増加させることが可能となる。
【0012】
本発明によれば、マチ部に新たな補強材を設けることなく上記作用を奏することができるので、ランドセルの重量を増大させることが無い。
以上から本発明によれば、ランドセルに衝撃が加わったときの衝撃力の吸収と収納物の保護の両立を行うことができ、かつ、ランドセルの重量の増大を抑制できるとともに、ランドセル全体の大きさを変更することなく胴部の容量を増大させることが可能になる。
【0013】
本発明では、前記前胴部は、前記第1方向に前記背当て部と対向し、且つ背当て部より上下方向の長さが短い前胴本体と、前記前胴本体の下端部から前記底部へ延びる傾斜部とを備えていてもよい。
【0014】
本発明では、前記前胴部は、前記背当て部と対向し、且つ前記背当て部より上下方向の長さが短い前胴本体と、前記前胴本体の下端部から前記底部向けて曲面状に延びる曲面部と、を備えていてもよい。
【0015】
本発明によれば、かぶせを傾斜部で底部側、かつ背当て部側へ傾斜するようにガイドすることで、かぶせをより湾曲形状に保持でき、ランドセルの意匠性を良好にできるとともに、ランドセルの前胴部への衝撃をこの湾曲形状により緩和することができる。
【0016】
本発明では、基端部が前記背当て部に接続するとともに、先端部に第1ロック機構があり、前記開口部に被さるかぶせを備え、前記傾斜部には、前記かぶせの前記先端部の前記傾斜部への固定および固定の解除を前記第1ロック機構と共に行う第2ロック機構があってもよい。
【0017】
本発明によれば、傾斜部は前胴本体に比べて短くなりやすく、傾斜部上は、ポケット等の設置にも利用しづらいデッドスペースになりやすいところ、傾斜部上を第2ロック機構の設置場所として利用する。そのため、本発明によれば、傾斜部上を有効利用できる。また、本発明によれば、第2ロック機構の胴部への突き当て面が平らである場合、平板な傾斜部に第2ロック機構を設けることで、第2ロック機構を傾斜部に密着させて設けることができ、第2ロック機構をしっかりと胴部に取り付けることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、ランドセル1を前胴部22側から見た斜視図である。
図2は、ランドセル1を背当て部21側から見た斜視図である。以降、ランドセル1を前胴部22が正面にくる視点で見た場合における前後左右上下方向を実施形態における前後左右上下方向とする。前方を該観測視における手前側、後方を該観測視における奥側とする。前後左右上下方向は互いに直交するものとする。
図1、2および後述の
図3における一点鎖線は、縫い目を示す。
【0020】
ランドセル1は、胴部2、かぶせ3、および肩ベルト4を備える。
胴部2は、前後方向(第1方向)に対向する背当て部21および前胴部22と、前後方向の両端が背当て部21および前胴部22に接続して互いに左右方向に対向する一対のマチ部23と、これら各要素21〜23の下端部に接続する底部24とを備える。胴部2は、箱状であり、左右幅はA4フラットファイルを収容できる幅になっている。
【0021】
胴部2の上端部には、開口部25が形成されている。使用者は、かぶせ3を開けることで、開口部25を介して胴部2内に教材等の収納物を出し入れできる。開口部25は、背当て部21、前胴部22、およびマチ部23の各上端部を含んで構成される。
【0022】
図3は、ランドセル1の側面図である。
マチ部23の上端部231において、前端部は前胴部22と接続し、後端部は背当て部21と接続する。マチ部23の上端部231は、中央部が上方に突出し、かつ前端部が後端部よりも下方に位置する形状となっている。
【0023】
マチ部23の下端部232は、底部24と接続している。下端部232の前後方向の長さL1は、底部24の前後方向の長さL1と同一となる。マチ部23の前端部233は前胴部22に接続し、後端部234は背当て部21に接続する。マチ部23の下端部232の前後方向の長さL1は、マチ部23の前端部233から背当て部21(後端部234)までの前後方向の長さL2よりも短い。ここで、マチ部23の前端部233から背当て部21までの前後方向の長さL2は、開口部25の前後方向の長さL2と略同一となる。従って、底部24の長さL1は、開口部25の長さL2よりも短くなる。本実施形態においては、底部24の長さL1は、マチ部23の長さL2の85%程としている。
【0024】
前胴部22は、前胴本体221および傾斜部222を備える。前胴本体221および傾斜部222は、平板状である。傾斜部222は、前胴本体221の下端部225である折曲部223に、前胴本体221から下方かつ後方に折曲するように接続している。
【0025】
折曲部223の底部24からの高さH1は、前胴部22の上端部の底部24から高さH2に対し、本実施形態では20%程とし、傾斜部222の前胴本体221に対する傾斜角度θは、本実施形態では20°程としている。
【0026】
なお、本実施形態における高さH1、H2の比率、長さL1、L2の比率、傾斜角度θの大きさは例示であり、本実施形態のものに限定されない。
【0027】
図4は、従来のランドセル1Fを模式的に示す側面図である。
従来のランドセル1Fの前胴部22Fには、ジャバラ26Fが設置され、ジャバラ26Fの前面にポケット27Fが設置されている。ジャバラ26Fの前後方向の長さを抑えるために、ベルト28Fが設けられている。ベルト28Fには、不図視のナスカン等のフックが設けられる。フックに引っ掛けられたものが底面部24Fから下方に出すぎないように、ベルト28Fは、底面部24Fから上方に離れた位置に設置される。
【0028】
従って、ベルト28に抑えられるジャバラ26Fの上端部も、底面部24Fから上方に離れた位置に配置されることとなる。これにより、従来のランドセル1Fでは、前胴部22Fの上下方向の長さと背当て部21Fの上下方向の長さとがほぼ同一とされ、前胴部22Fにおいて開口部25Fを高い位置で開口させ、開口部25Fがジャバラ26Fと干渉しないようになっている。
【0029】
このように、従来のランドセル1Fでは、開口部25Fは、前胴部22Fにおいて前方には開いておらず、上方に向けて開口している。そのため、使用者は、胴部2F内の収納物を上方から引っ張り出さなくてはならず、握力の小さい低年齢の使用者にとっては、収納物の取出しが大変であった。
【0030】
図5は、胴部2の効果を説明するための側面図である。
一方、本実施形態のランドセル1では、前胴部22にはジャバラを設けず直接ポケット224が設置されている。このように、本実施形態ではジャバラを設けていないため、開口部25の設計の自由度が大きい。
【0031】
そこで、本実施形態では、前述したように、マチ部23の上端部231の前端部を後端部よりも下方に大きく下げることにより、前胴部22において開口部25を下方に大きく拡げている(
図1)。これにより、本実施形態では、胴部2に収納された収納物を上からではなく前方斜め上から取り出すことが可能となった。
【0032】
マチ部23は、山なり形状の上端部231を水平に直線状とした場合に5角形となるような形状をしている。胴部2は、傾斜部222によって下部が前後方向に絞られた形状であり、底部24の前後方向の長さL1が開口部25の前後方向の長さL2よりも短い箱体となっている。
【0033】
胴部2を、前後方向において、後端部234から底部24の前端部241までの部分である本体収納部S1と、底部24の前端部241から胴部2の前端部233までの部分である容量増加部S2とに分けて考える。本体収納部S1は、底部24が平らであり、前後方向にわたって内部空間の高さが十分にあるので、本体収納部S1には大型教材を入れることができる。しかし、容量増加部S2については、底部が傾斜部222となっており上方にせりあがっているので、上下方向の長さが全体としては本体収納部S1よりも短くなる。
【0034】
そのため、容量増加部S2には、大型教材を入れることはできず、筆箱や、小型教材等の小物収納物を入れることになる。この小物収納物を取り出した場合には、容量増加部S2が隙間となる。すると、本体収納部S1内の収納物が、容量増加部S2側に斜めに倒れた状態となる場合がある。この場合、収納物の上端部が開口部25から飛び出す形となるため、より前方斜め上から収納物を容易に取り出すことが可能である。
【0035】
図6は、ランドセル1,1Fの胴部2,2Fに対する圧縮試験の結果を示すグラフ(A)、(B)である。ランドセル1の底部24(の長さL1)は6cm、背当て部21は33cm、前胴本体221は28cm、開口部25(の長さL2)は12cmとなっている。従来のランドセル1Fの底部24F(の長さL1)は12cm、背当て部21Fは33cm、前胴部22Fは33cm、開口部25Fは12cmとなっている。
【0036】
本試験では、本実施形態の前胴部22における折曲部223の上側(前胴部22の下端から10cm上方)に板を載せた後、前胴部22から背当て部21に向けて荷重をかけて胴部2を押しつぶし、押しつぶし距離(mm)と荷重(N)の関係を調べた。該試験結果を示すのがグラフ(A)である。また、本試験では、従来の前胴部22Fの下端から10cm上方に板を載せ、前胴部22Fから背当て部21Fに向けて荷重をかけて胴部2Fを押しつぶし、同様に押しつぶし距離(mm)と荷重(N)の関係を調べた。該試験結果を示すのがグラフ(B)である。グラフ(A)、(B)の横軸は押しつぶし距離(mm)、縦軸は荷重(N)の大きさを示す。
【0037】
従来のランドセル1Fでは、グラフ(B)に示されるように、27mm圧縮されて663Nがかかる地点B1までは、弾性的に変形することがわかる。そして、従来のランドセル1Fでは、地点B1を超えて圧縮されると急激に負荷が減少することから、地点B1で組織が破壊されたことがわかる。従って、地点B1を降伏点B1と模すことができる。このような従来のランドセル1Fでは、前胴部22Fに強い衝撃が加わった場合、ランドセル1Fは、降伏点B1までは反発しながら圧縮され、降伏点B1まで圧縮されると、破壊されることがわかる。
【0038】
本実施形態のランドセル1では、グラフ(A)に示されるように、まず、49mm圧縮されて417Nがかかる地点A1までは、弾性的に変形することがわかる。そして、ランドセル1では、地点A1を超えて圧縮されると負荷が減少することから、地点A1で組織が破壊されたことがわかる。従って、地点A1を降伏点A1と模すことができる。また、ランドセル1では、さらに圧縮されていくと、68mm圧縮されて1172Nがかかる地点A2までは、再び弾性的に変形することがわかる。そして、ランドセル1では、地点A2を超えて圧縮されると負荷が急激に減少することから、地点A2でも再び組織が破壊されたことがわかる。従って、地点A2を降伏点A2と模すことができる。
【0039】
このように、グラフ(A)から、本実施形態のランドセル1は、胴部2,2Fに荷重が加わった際に2段階で破壊されることがわかる。グラフ(A)は、胴部2に傾斜部222が設けられて底部24の長さL1が開口部25の長さL2よりも短くなっている影響により、まず、容量増加部S2が収納本体部S1よりも早く降伏点A1に至って破壊されることを示している。ランドセル1は、従来のランドセル1Fの降伏点B1の荷重よりも低い荷重で降伏点A1に至ることがわかる。容量増加部S2には傾斜部222が設けられているため、容量増加部S2は、矩形の箱状の従来の胴部2Fに比べて構造的に弱くなっているのである。
【0040】
また、グラフ(A)は、容量増加部S2の破壊の後も、収納本体部S1が引き続き弾性変形し、降伏点A2に至ると破壊されることを示している。ランドセル1は、従来のランドセル1Fの降伏点B1、および降伏点A1の荷重よりも高い荷重で降伏点A2に至ることがわかる。
【0041】
すなわち、本実施形態のランドセル1では、前胴部22への衝撃に対し、まず、容量増加部S2が破壊され、衝撃を緩和する。ランドセル1は従来のランドセル1Fを破壊するのに必要な力よりも弱い力では破壊されようになっており、衝撃を吸収しやすい構成にされている。
【0042】
続いて、本実施形態では、収納本体部S1が弾性変形する。ここで、収納本体部S1の降伏点A2は従来のランドセル1Fの降伏点B1よりも高いことから、収納本体部S1は、従来のランドセル1Fよりも強い構造であることがわかる。従って、本実施形態では、前胴部22への衝撃に対し、大型教材等を収納する収納本体部S1が従来のランドセルよりも強い構造とされているので、収納物の保護を十分に図ることができる。
【0044】
ここで、マチ部23を前後方向に圧縮した際の座屈荷重について、柱の座屈荷重の算出式であるオイラーの式(1)を参照して考察する。Pは座屈荷重、mは両端の固定方法で決まる定数、Eは縦弾性係数、Iは断面二次モーメントである。断面二次モーメントIとは、曲げモーメントに対する変形のしにくさを表した量である。Lは柱(マチ部23)の前後方向の長さである。座屈荷重Pは座屈が発生するときの荷重を指すため、座屈荷重Pの値が大きいほど座屈が発生しにくいことを表す。マチ部23を前後方向に圧縮した際の座屈応力については、柱の座屈応力の算出式であるオイラーの式(2)を用いて考察する。式(2)は、式(1)を柱の断面積で除算したものである。λは柱(マチ部23)の細長比、Eは縦弾性係数とする。
【0045】
式(1)から、胴部2の容量を増加させるために、胴部2の長さL2を大きくすると、Lが増加して座屈荷重Pが下がってしまい、胴部2の強度が弱くなることがわかる。そこで、従来は、胴部2Fの長さL2を長くした際には、胴部2Fの強度の減少を補うために、マチ部23Fに設けられる補強材の厚さや大きさを増加させていた。これにより、従来は、縦弾性係数Eを大きくして座屈荷重Pを維持し、ランドセル1Fの強度を確保していた。
【0046】
しかし、マチ部23Fに設ける補強材の厚さや大きさの増加は、ランドセル1Fの重量の増加につながり、好ましくない。そもそも、近年、小学校で使用される教科書やノートの大型化、教材の多種多様化、授業数の増加などを受けて、ランドセル1Fの収納容量は増加する傾向にあり、この収納容量の増加に伴ってランドセル1Fが大型化している。そのため、収納物の増加及びランドセル1Fの重量そのものが増加しており、使用者の負担を考えると、これ以上の重量の増加は好ましくない。また、ランドセル1Fの重量の増加は、使用者がランドセル1Fを背負った際の後方への重心移動の引き金になるおそれがあり、安全性の観点からも好ましくない。
【0047】
式(1)から、柱の長さLを小さくすることで座屈荷重Pの値を大きくすることができることがわかる。本実施形態においては、本体収納部S1の前後方向の長さL1(底部24の長さL1)は、従来の胴部2Fの前後方向の長さL2(開口部25の長さL2)よりも短い。そのため、本体収納部S1の降伏点A2の圧力は、従来のランドセル1Fの降伏点B1の圧力よりも高くなっており、本体収納部S1が従来の胴部2Fよりも構造的に強くなっていることが分かる。
【0048】
すなわち、本実施形態では、胴部2における底部24の長さL1を開口部25の長さL2よりも短くすることにより、胴部2に収納本体部S1および容量増加部S2という機能部を付与している。そして、胴部2に強い衝撃が加わった際には、容量増加部S2が衝撃緩和機能を果たし、収納本体部S1が収納物の保護機能を果たす。本実施形態では、このような作用効果を、胴部2に必要以上に補強材を用いなくても奏することができる、すなわち、ランドセル1の重量の増大を抑制しつつ、該作用効果を奏することができる。
【0049】
本実施形態では、ランドセル1にジャバラを設けないので、ジャバラを設けるために必要とした前後方向の長さ分、胴部2の前後方向の長さを長くすることができ、ランドセル1全体の大きさを変更することなく胴部2の容量を増加することができる。
【0050】
その他本実施形態におけるランドセル1の特徴を簡略に説明する。
図1に戻って、かぶせ3の先端部における左右方向の中央には、縦に長い穴32の開いた金属製の錠前金具31(第1ロック機構)が設けられている。
【0051】
傾斜部222は、平面視矩形形状であり、下方かつ後方へ傾斜する。傾斜部222と前胴本体221との境界には、左右方向に亘って直線状の折曲部223が形成される。傾斜部222における左右方向の中央には、金属製の錠前本体226(第2ロック機構)が取り付けられている。錠前本体226には、回転可能なつまみ227が設けられている。かぶせ3を閉じると、錠前金具31の穴32の中に縦方向の姿勢のつまみ227が位置付けられる。該つまみ227を横方向に90°回転させることで施錠でき、該状態からつまみ227を再度縦方向に90°回転させることで開錠できる。
【0052】
本実施形態では、マチ部23の上端部231の形状が、前端部側が後端部側よりも下方に下がった山なり形状であるので、マチ部23の上端部231によってかぶせ3を急な角度で下方へ案内できる。これにより、本実施形態では、かぶせ3を前後方向の長さが小さい湾曲形状にできるので、ランドセル1の前後方向の大型化を抑えることができる。
【0053】
本実施形態では、前胴本体221が、前後方向(底面部24)に直交する平面方向に沿っているので、前胴本体221と、後方側へ湾曲するかぶせ3と、の間に隙間が生じる。本実施形態では、この隙間にポケット224を設けることできるので、十分な収納力を確保できる。また、本実施形態では、傾斜部222でかぶせ3を下方、かつ後方へ傾斜するようにガイドできるので、かぶせ3を閉めた際に、かぶせ3をより湾曲形状にでき、ランドセル1の意匠性を良好にできる。
【0054】
本実施形態では、平板な傾斜部222に錠前本体226を設けるので、錠前本体226を傾斜部222に容易に密着させて取り付けることができる。
【0055】
(第1変形例)
図7は、第1変形例の胴部2Aを模式的に示す側面図である。
図7では、ポケット224等の図示を省略している。
胴部2Aの下部における絞りは、前記実施形態では傾斜部222により実現されていたが、該構成に限定されず、例えば曲部222Aにより実現されていてもよい。すなわち、前胴部22Aは、背当て部21と対向する前胴本体221と、前胴本体221の下端部から底部24へ延びるR状の曲部222Aとを備えていてもよい。
【0056】
(第2変形例)
図8は、第2変形例の胴部2Bを模式的に示す側面図である。
図8でも、ポケット224等の図示を省略している。
前記実施形態および第1変形例では、前胴本体221は、前後方向に直交する平面方向に沿っており、胴部2、2Aの下部のみが傾斜部222または曲部222Aにより絞られていた。しかし、本第2変形例のように、前胴部22B全体が、下方かつ、後方へ傾斜するテーパ状になっていることにより、胴部2Bの下部が絞られていてもよい。
【0057】
第1、第2変形例の胴部2A、2Bでも、共に、底部24の前後方向の長さL1が、胴部2の開口部25の前後方向の長さL2よりも短くなっているので、補強材によるランドセル1の重量の増加を抑えつつ、ランドセル1の十分な強度を確保できる。
【0058】
前記実施形態および第1、第2変形例では、前胴部22、22A、22B上にポケット224が設けられていた。しかし、ランドセルを小型化する必要はなく軽量化について、マチ部の補強材がないことをもって十分だという場合においては、前胴部22上にジャバラが設けられていてもよい。この場合であっても、本発明により軽量でより容量の大きいランドセルを提供することが可能である。
【0059】
前記実施形態では、胴部2(傾斜部222)に直接、胴部2側のロック機構が設けられていた。しかし、胴部2(例えば前胴本体221または傾斜部222)上にポケットが設けられ、該ポケット上に胴部2側のロック機構、例えばバックル(差し込み錠)のメス側が設けられ、かぶせ3側に、該かぶせ3側のロック機構、例えばバックルのオス側が設けられてもよい。
【0060】
前記実施形態では、かぶせ3は、傾斜部222の下端部まで覆っていたが、開口部25を覆っていればよく、かぶせ3を閉めた際の先端部の位置は、傾斜部222上であっても前胴本体221上であってもよい。
【0061】
(第3変形例)
図9は、第3変形例の胴部2Cを模式的に示す側面図である。
図9でも、ポケット224等の図示を省略している。
前記実施形態では、前胴本体221は、底部24と直交する方向に延びているが、前胴本体221は、底部24と直交する方向に延びていなくてもよい。本第3変形例では、前胴本体221は、底部24と直交する方向に対し、上端部側が前方側に倒れるように若干傾斜している。なお、前胴本体221は、底部24と直交する方向に対し、上端部側が後方側に倒れるように傾斜していてもよい。
【0062】
(第4変形例)
図10は、第4変形例のランドセル1Dを模式的に示す側面図である。
図10では、肩ベルト4等の図示を省略している。
前記実施形態および第1〜第3変形例では、前胴部22、22A、22B、22C上にポケット224が設けられていた。しかし、本第4変形例のランドセル1Dでは、前胴部22にポケット224が設けられていない。この場合、かぶせ3の素材にヌメ皮等の柔らかい皮革を用いることで、かぶせ3を前胴部22に沿わせるように設けることができる。本第4変形例でも、底部24の前後方向の長さL1が、胴部2の開口部25の前後方向の長さL2よりも短くなっているので、補強材によるランドセル1Dの重量の増加を抑えつつ、ランドセル1Dの十分な強度を確保できる。