(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
固定スクロールと可動スクロールとが背圧室の圧力によって互いに押し付けられ、吸入室に導入された流体を両スクロール間に形成される圧縮室にて圧縮し、吐出室から吐出するスクロール型圧縮機に適用され、前記背圧室の圧力を制御する制御弁であって、
前記吐出室に連通する弁孔と、前記背圧室に連通する第1圧力室と、前記吸入室に連通する吸入圧力室と、前記背圧室に連通する第2圧力室と、基準圧力が導入される基準圧力室とを直列に有するボディと、
前記第1圧力室から前記第2圧力室にわたって延在し、前記第1圧力室の側から前記弁孔に接離して弁部の開度を調整する弁体と、
前記第2圧力室と前記基準圧力室とを仕切るとともに前記弁体を軸線方向に支持し、前記第2圧力室と前記基準圧力室との差圧を感知して前記弁部の開閉方向に作動する感圧部材と、
を備え、
前記弁体は、前記弁孔を介して前記吐出室の圧力を開弁方向に受ける弁受圧面と、前記吸入圧力室にて前記吸入室の圧力を開弁方向に受ける第1受圧面と、前記第2圧力室にて前記背圧室の圧力を閉弁方向に受ける第2受圧面と、を有し、
前記弁体には実質的に、前記吸入室の圧力および前記吐出室の圧力が開弁方向に作用する一方、前記背圧室の圧力が閉弁方向に作用し、
前記弁体の実質的な有効受圧面積について、前記吸入室の圧力を受ける有効受圧面積をAs、前記吐出室の圧力を受ける有効受圧面積をAd、前記背圧室の圧力を受ける有効受圧面積をAmとした場合に、As>Am>Adの関係が成立することを特徴とする制御弁。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明においては便宜上、図示の状態を基準に各構造の位置関係を表現することがある。
【0013】
図1は、実施形態に係る圧縮機を含む冷凍サイクルを概略的に表す図である。
図2は、
図1のA−A矢視断面図である。
図1に示すように、圧縮機100は、モータにより駆動されるスクロール型圧縮機であり、本実施形態では自動車用空調装置の冷凍サイクルに設置される。圧縮機100は、その冷凍サイクルを流れる冷媒を圧縮して高温・高圧のガス冷媒にして吐出する。そのガス冷媒は凝縮器102(外部熱交換器)にて凝縮され、さらに膨張装置104により断熱膨張されて低温・低圧の霧状の冷媒となる。この低温・低圧の冷媒が蒸発器106にて蒸発し、その蒸発潜熱により車室内空気を冷却する。蒸発器106で蒸発された冷媒は、再び圧縮機100へと戻されて冷凍サイクルを循環する。
【0014】
圧縮機100は、そのハウジング110内にスクロールユニット112、スクロールユニット112を駆動するモータ114、モータ114の回転数を制御するインバータ116、およびスクロールユニット112の背圧を制御する制御弁1を備える。ハウジング110は、センターハウジング118と、センターハウジング118の前端側に接合されたフロントハウジング120と、センターハウジング118の後端側に接合されたリアハウジング122とを組み付けて構成される。
【0015】
センターハウジング118の内方にスクロールユニット112が配置されている。スクロールユニット112は、固定スクロール124と可動スクロール126とを軸線方向に対向配置して構成される。固定スクロール124は、段付円板状のベース128と、ベース128の前面に渦巻状に立設されたラップ130を有する。ベース128は、センターハウジング118とリアハウジング122とに挟持されるようにしてハウジング110に固定されている。ベース128は、センターハウジング118の後端部を概ね閉止している。ベース128とリアハウジング122との間には吐出室132が形成される。ベース128の中央を軸線方向に貫通するように吐出通路134が形成されている。ベース128の裏面側には、リリーフ弁136が設けられている。リリーフ弁136は、一方向弁であり、吐出通路134の吐出室132側の開口端を開閉する。
【0016】
可動スクロール126は、段付円板状のベース138と、ベース138の後面に渦巻状に立設されたラップ140を有する。ラップ140は、固定スクロール124のラップ130と噛みあい、両者の間に圧縮室142が形成される。可動スクロール126の前面中央部が円ボス状に突出し、ブッシュ144が回転可能に嵌合している。ブッシュ144には、モータ114の回転軸146が接続されている。
【0017】
センターハウジング118における前壁148の中央部がフロントハウジング120側に膨出し、その内方に軸受150が設けられている。前壁148の先端中央に挿通孔152が設けられ、回転軸146がその挿通孔152および軸受150を貫通している。前壁148と可動スクロール126との間には、環状のスラストプレート154が配置されている。前壁148は、可動スクロール126からのスラスト力を、そのスラストプレート154を介して受ける。前壁148と可動スクロール126とに囲まれる空間が背圧室156を形成する。固定スクロール124と可動スクロール126とは、背圧室156の圧力(背圧)によって互いに押し付けられる。
【0018】
前壁148とスラストプレート154との間にはシールリング158が介装され、可動スクロール126とスラストプレート154との間にはシールリング160が介装されている。一方、挿通孔152と軸受150との間にはシール部材162(リップシール)が配設されている。このような構成により、背圧室156の密封性(シール性)が確保されている。
【0019】
フロントハウジング120は、隔壁164により吸入室166と制御室168とに区画されている。吸入室166にモータ114が収容され、制御室168にインバータ116が収容されている。制御室168は、ハウジング110の前端部に位置し、カバー170により閉止されている。隔壁164の後面中央には円ボス状の支持部165が突設され、軸受167(滑り軸受)が圧入されている。
【0020】
モータ114は、例えば三相交流モータであり、回転軸146と、回転軸146と一体に設けられたロータ172と、フロントハウジング120に固定されたステータ174を含む。例えば、図示しない車載バッテリから供給される直流電流がインバータ116により交流電流に変換され、モータ114に供給される。
【0021】
回転軸146は、中空軸であり、その前端側が軸受167に支持され、後端側が軸受150に支持されている。回転軸146の前端開口部にはオリフィス部材176が圧入されている。回転軸146の後端には、その中心軸から偏心した位置に円柱状の偏心連結部178が突設されている。偏心連結部178は、ブッシュ144を介して可動スクロール126に連結されている。回転軸146の後端部には、バランスウェイト180が一体に設けられている。バランスウェイト180は、可動スクロール126の公転に伴う遠心力を相殺する。
【0022】
フロントハウジング120には、蒸発器106側から吸入室166へ冷媒を導入するための入口通路182が設けられている。センターハウジング118には、圧縮室142の入口につながる吸入圧空間184と吸入室166とを連通させる連通路186が形成されている。
【0023】
リアハウジング122には、吐出室132と取付孔188が区画形成されている。制御弁1は、取付孔188に挿入されるように取り付けられる。リアハウジング122にはまた、吐出室132から凝縮器102側へ吐出冷媒を導出するための出口通路190が設けられている。
【0024】
リアハウジング122にはさらに、吐出室132と取付孔188とを連通させる連通路192、背圧室156と取付孔188とを連通させるための連通路194、および吸入圧空間184と取付孔188とを連通させるための連通路196が設けられている。後述のように、制御弁1には吐出室連通ポート、背圧室連通ポートおよび吸入室連通ポートが設けられている。連通路192は吐出室連通ポートと連通し、連通路194は背圧室連通ポートと連通し、連通路196は吸入室連通ポートに連通する。連通路194は、センターハウジング118に形成された連通路200を介して背圧室156に連通する。連通路196は、ベース128に形成された連通孔198を介して吸入圧空間184に連通する。
【0025】
回転軸146の後端部には、内部通路202に連通する連通孔204が設けられている。一方、オリフィス部材176の軸線を貫通するようにリーク通路206が形成されている。これらの孔および通路を介して背圧室156内の冷媒を適宜吸入室166に戻す(漏洩させる)ことにより、背圧室156の圧力(背圧)を調整できる。
【0026】
以上のように構成された圧縮機100は、蒸発器106側から吸入室166に導入された吸入圧力Psの冷媒を、スクロールユニット112の圧縮室142に導入する。
図2に示すように、固定スクロール124と可動スクロール126とを噛みあわせることにより、ラップ130,140間に圧縮室142a,142b(これらを総称して「圧縮室142と表記する」)が形成されている。
【0027】
可動スクロール126の旋回運動に伴ってその冷媒が吸入圧空間184に吸入され、圧縮室142の入口に導かれる。可動スクロール126が旋回運動することで、各圧縮室142が外周側から中央へ向けて容積を減少しながら移動する。その過程で圧縮室142内の冷媒が徐々に圧縮され、高温・高圧となる。この冷媒は、圧縮室142が吐出通路134との導通位置に達することで吐出圧力Pdの冷媒として吐出室132に吐出される。この吐出冷媒は、出口通路190から凝縮器102へ向けて導出される。その吐出冷媒の一部は、制御弁1を介して背圧室156に導入されて背圧Pmの冷媒となり、背圧制御に供される。
【0028】
図3は、制御弁1の構成を示す断面図である。
制御弁1は、段付円筒状のボディ2を有する。ボディ2は、第1ボディ4と第2ボディ6とを同軸状に接続して構成される。第2ボディ6の上半部に雄ねじ部、第1ボディ4の下部には雌ねじ部がそれぞれ形成されており、第2ボディ6を第1ボディ4に螺入することで、両者が直列に連結されている。第1ボディ4と第2ボディ6とに囲まれる空間に感圧部8が設けられている。第1ボディ4には、その上端側からポート10,12,14が設けられている。このうち、ポート10は第1ボディ4の上端部に設けられ、ポート12,14は第1ボディ4の側部に設けられている。
【0029】
ポート10は「吐出室連通ポート」として機能し、連通路192を介して吐出室132に連通する。ポート12は「背圧室連通ポート」として機能し、連通路194,200を介して背圧室156に連通する。ポート14は「吸入室連通ポート」として機能し、連通路196,連通孔198を介して吸入圧空間184ひいては吸入室166に連通する(
図1参照)。
【0030】
ポート10とポート12とを連通させる通路には、段付円筒状の通路形成部材16が配設されている。通路形成部材16は、第1ボディ4の上部に同軸状に圧入されている。通路形成部材16の中央を軸線方向に貫通するように弁孔18が設けられている。ポート12の側から弁孔18に対向するように弁体24が配置されている。弁体24は、その先端部に弁孔に対向して吐出圧力Pdを開弁方向に受ける弁受圧面25を有する。弁体24が弁孔18に接離することにより弁部の開度が調整される。
【0031】
第1ボディ4の内部を区画するように隔壁26が設けられている。隔壁26の上方に第1圧力室20が形成され、下方に吸入圧力室28が形成されている。第1圧力室20は、弁孔18とポート12との間の圧力空間(弁室)を形成し、弁体24を配置する。第1圧力室20は、ポート12を介して背圧室156に連通する。吸入圧力室28は、ポート14を介して吸入圧空間184ひいては吸入室166に連通する(
図1参照)。
【0032】
隔壁26の中央を軸線方向に貫通するようにガイド孔32が設けられている。弁体24は、長尺状の中空弁体であり、ガイド孔32に摺動可能に挿通されている。弁体24は、下端近傍にやや大径のガイド部36を有する段付円筒形状をなす。弁体24は、上端部がテーパ形状となっており、そのテーパ面の先端部が弁受圧面25を構成する。弁体24の上部には、第1圧力室20と内部通路35とを連通させる連通孔37が設けられている。弁体24の下端開口部を閉止するように連結部材38が設けられている。連結部材38は、有底段付円筒状をなし、弁体24の下端部が圧入されている。
【0033】
ガイド孔32の上端部がやや拡径され、シール用のOリング40が配置されている。Oリング40を上方から押さえるように環状の支持部材42が設けられている。支持部材42は、第1ボディ4に圧入されている。Oリング40により、弁体24とガイド孔32との間隙を介した冷媒の流通が規制されている。
【0034】
第1ボディ4の下部には、円筒状のガイド部材44が圧入されている。ガイド部材44は、ガイド部36を摺動可能に支持するガイド孔45を有する。すなわち、弁体24は、ガイド孔32,45により二点支持されている。ガイド部36の外周面には、シール用のOリング46が嵌着されており、ガイド部36とガイド部材44との間隙を介した冷媒の流通が規制されている。
【0035】
ガイド部36により、吸入圧力室28と第2圧力室48とが区画されている。弁体24の下部には、第2圧力室48と内部通路35とを連通させる連通孔39が設けられている。このような構成により、第1圧力室20の背圧Pmが内部通路35を介して第2圧力室48にも導入される。
【0036】
ガイド部36は、吸入圧力室28にて吸入圧力Psを開弁方向に受ける第1受圧面47と、第2圧力室48にて背圧Pmを閉弁方向に受ける第2受圧面49を有する。弁体24は、第1圧力室20から第2圧力室48にわたって延在している。ガイド部36と隔壁26との間には、スプリング50が介装されている。スプリング50は、弁体24を開弁方向に付勢する「第1付勢部材」として機能する。
【0037】
第1ボディ4の上端開口部には、ポート10への異物の侵入を抑制するフィルタ部材52が嵌着されている。圧縮機100の吐出冷媒には金属粉等の異物が含まれることがあるため、フィルタ部材52は、その異物が制御弁1の内部に侵入することを防止又は抑制する。フィルタ部材52は、有底筒状のフィルタ54を有し、そのフィルタ54の開口端部をリング状の金属プレート56にて補強して構成される。フィルタ54は金属メッシュからなる。フィルタ部材52は、その底部を上にした状態で金属プレート56をボディ2に圧入することにより固定される。フィルタ部材52は、図示のようにボディ2の内側に装着されることにより、外部構造物との接触による変形が防止されている。
【0038】
一方、感圧部8は、有底円筒状のハウジング60と、感圧部材としてのダイヤフラム62と、ダイヤフラム62の中央を軸線方向に支持する作動部材64とを含む。ハウジング60は、その上端部(上底部)に半径方向外向きに延出するフランジ部66を有し、そのフランジ部66が第1ボディ4と第2ボディ6との間に挟持されるようにしてボディ2に固定されている。ダイヤフラム62の外周縁部が、第1ボディ4内の段差とフランジ部66との間に挟まれるようにして支持されている。第1ボディ4とダイヤフラム62との間には、シール用のOリング88が介装されており、感圧部8とボディ2との間隙を介した冷媒の流通が規制されている。
【0039】
ハウジング60は、そのフラットな上面でダイヤフラム62を支持するが、その上面中央に凹部68が形成されている。ハウジング60は、凹部68により画定される基準圧力室70と作動室72とを離隔する隔壁74を有する。その隔壁74を軸線方向に貫通するように挿通孔76が設けられている。作動部材64は、挿通孔76を摺動可能に貫通しており、その上端部がダイヤフラム62の中央部を挟んで連結部材38ひいては弁体24に連結されている。作動部材64の下端部は、支持部材78によって下方から支持されている。なお、作動部材64の上部には、フランジ状のストッパ79が設けられている。このため、作動部材64が下方に変位してもストッパ79が隔壁74に係止されることで、その脱落が防止される。
【0040】
ハウジング60の下端開口部には、有底円筒状のアジャスト部材80が螺合されている。そのアジャスト部材80の底部によりばね受け82が支持され、ばね受け82と支持部材78との間に、スプリング84が介装されている。スプリング84は、弁体24を閉弁方向に付勢する「第2付勢部材」として機能する。ばね受け82が環状をなし、アジャスト部材80の中央に連通孔86が設けられているため、作動室72は大気に開放される。すなわち、作動室72には、基準圧力Poとしての大気圧が導入される。その基準圧力Poが、作動部材64と挿通孔76との間隙を介して基準圧力室70に導入される。本実施形態の基準圧力室70は、第2圧力室48よりも低圧に維持される。
【0041】
ダイヤフラム62は、第2圧力室48と基準圧力室70とを仕切るとともに弁体24を軸線方向に支持する。ダイヤフラム62は、第2圧力室48の背圧Pmと基準圧力室70の基準圧力Poとの差圧を感知して弁部の開閉方向に作動する。
【0042】
以上のように構成された制御弁1は、
図1にも示したように、圧縮機100の取付孔188にワッシャ189を介して固定される。制御弁1の外周面には、その取付孔188との間に介装されてシール機能を発揮する複数のOリングが嵌着されている。すなわち、ボディ2におけるポート12の上方および下方にそれぞれOリング90,92が嵌着されている。また、ポート14の下方にもOリング94が嵌着されている。これらのOリングにより、各ポート間のシール、各連通路間のシール、および外部(大気)とのシールが確保されている。
【0043】
以上のような構成により、弁体24には実質的に、吸入圧力Psおよび吐出圧力Pdが開弁方向に作用する一方、背圧Pmが閉弁方向に作用する。すなわち、
図3に示すように、ダイヤフラム62の有効受圧面積A、ガイド孔45の断面積B、ガイド孔32の断面積C、弁孔18の断面積Dとする。このとき、弁体24の有効受圧面積(相殺後の受圧面積)について、吐出圧力Pdが作用する有効受圧面積Ad=D(開弁方向)、吸入圧力Psが作用する有効受圧面積As=B−C(開弁方向)、背圧Pmが作用する有効受圧面積Am=(B−A)−(C−D)(閉弁方向)となり、As>Am>Adの関係が成立する。ただし、ダイヤフラム62には、背圧Pmが開弁方向に作用する。
【0044】
次に、制御弁1の制御動作について説明する。
圧縮機100が駆動されると、可動スクロール126が固定スクロール124の軸線周りに旋回(公転)する。この可動スクロール126の公転によって、両スクロール間に形成される圧縮室142が外周側から中央へ向けて容積を減少しながら移動される。この過程で冷媒圧力が吸入圧力Psから吐出圧力Pdへ昇圧される。その吐出冷媒が冷凍サイクルを循環することにより、車両用空調装置の空調が行われる。このとき、吐出冷媒の一部が制御弁1のポート10へ供給される。
【0045】
このとき、制御弁1により圧縮機100の背圧Pmが制御される。弁体24は、吐出圧力Pdによる開弁方向の力、吸入圧力Psによる開弁方向の力、背圧Pmによる閉弁方向の力、ダイヤフラム62による開弁方向の駆動力、スプリング50による開弁方向の力、およびスプリング84による閉弁方向の力がつり合う弁リフト位置に保たれる。
【0046】
背圧の制御過程で吐出圧力Pdおよび吸入圧力Psのいずれか一方が上昇すると、弁体24に作用する開弁方向の力が大きくなる。このため、その荷重につり合う閉弁方向の力を大きくするよう背圧Pmも上昇する。本実施形態によれば、吐出圧力Pdおよび吸入圧力Psの上昇に伴って背圧Pmが上昇する制御特性が得られる。
【0047】
なお、本実施形態では、スプリング50の荷重がスプリング84の荷重よりも大きくされており、弁体24を含む可動部の受圧バランスによっては、弁部を常時開状態にできる。そのため、「開弁方向」を「弁開度が大きくなる方向」、「閉弁方向」を「弁開度が小さくなる方向」と捉えることもできる。このように弁部を常時開状態とする場合、弁孔18は可変オリフィスとして機能する。その場合、弁体24により弁孔18を完全閉とする必要がないため、弁部の寸法精度を厳密に管理する必要がなく、弁部の加工コストを抑えることもできる。このような制御弁は、以下のように特徴づけることもできる。すなわち、弁体が、吐出圧力および吸入圧力を開弁方向に受圧し、背圧を閉弁方向に受圧する。その弁体は弁孔を閉じることなく常に開弁状態を維持し、弁孔へ接離(近接または離間)することで弁部(可変オリフィス)の開度を調整する。
【0048】
図4は、制御弁1による制御特性を表す図である。図中の横軸は吸入圧力Psを示し、縦軸は背圧Pmを示す。図中実線のPd1、一点鎖線のPd2、および二点鎖線のPd3はそれぞれ吐出圧力Pdを示し、Pd3>Pd2>Pd1の順に高圧となっている。
【0049】
同図から分かるように、吸入圧力Psが高くなるにつれて背圧Pmが高くなる。また、吐出圧力Pdが高くなるにつれて背圧Pmが高くなる。本実施形態の制御弁1によれば、吐出圧力Pdや吸入圧力Psに応じた背圧Pmを実現でき、スクロール型圧縮機の圧縮不良を防止しつつ動力損失を抑制できる。
【0050】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はその特定実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
【0051】
上記実施形態では、基準圧力室70に大気を導入する例を示したが、作動室72を閉止することにより、真空状態としてもよい。また、上記実施形態では、制御弁1の感圧部材としてダイヤフラムを例示したが、ベローズその他の感圧部材としてもよい。
【0052】
上記実施形態では、第1圧力室20と第2圧力室48とを連通させる内部通路を弁体24に設ける例を示した。変形例においては、その内部通路をボディ2に設けてもよい。あるいは、第1圧力室20と第2圧力室48とを連通させることなく、個別に背圧室156に連通させてもよい。
【0053】
上記実施形態では、制御弁1が組み込まれるスクロール型圧縮機を冷房装置に設置する例を示したが、例えばヒートポンプ式の冷暖房装置に設置してもよい。その場合、例えば暖房時において制御弁1が極低温に晒されるときなど、基準圧力室70が第2圧力室48よりも高圧となるときがあってもよい。
【0054】
上記実施形態では、制御弁1が適用されるスクロール型圧縮機として、自動車用空調装置に搭載される圧縮機を例示した。変形例においては、一般用(家庭用、業務用)の空調装置に搭載されるスクロール型圧縮機に対し、制御弁1を適用してもよい。また、冷媒以外を作動流体とするスクロール型圧縮機に制御弁1を適用してもよい。
【0055】
なお、本発明は上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。上記実施形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成してもよい。また、上記実施形態や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。