(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
熱可塑性樹脂からなる樹脂ケース内に隣接して設けられた複数の電槽を区画する隔壁と、前記電槽内に配置された極板群と、前記極板群に電気的に接続する接続部と、隣接する前記電槽内のそれぞれの前記接続部を電気的に接続可能にする前記隔壁に設けられた貫通孔とを備える二次電池であって、
前記接続部は、前記貫通孔に挿入される突出部と、前記突出部の周囲において前記隔壁に対向するとともに、弾性変形可能な無端状のシール部材を前記隔壁との間に配置可能なシール部材配置部とを備え、
前記隔壁を挟んで対向する2つの前記接続部は、各前記接続部の前記突出部を前記貫通孔内で電気的に接続させるとともに、一方の前記接続部の前記シール部材配置部にのみ前記シール部材が配置され、
前記隔壁は、前記シール部材が当接する部分の少なくとも一部に前記樹脂ケースの樹脂よりも硬化された硬化部分を備える
二次電池。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、二次電池において、電槽間における電解液の移動を防止する必要はあるものの、特許文献1に記載の技術のような各接続突部に配置される2つのシール部材は、それを1つだけにしたとしても、電槽を隣接させる単電池間に短絡を生じさせない程度の移動防止には充分機能する。しかしながら、特許文献1に記載の技術において、一方のシール部材を取り除いたとすると、残った他方のシール部材の押圧力によって隔壁が変形されてシール性が低下するおそれがある。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、電槽間における電解液の移動に対するシール性を維持することのできる二次電池、及び、二次電池の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する二次電池は、熱可塑性樹脂からなる樹脂ケース内に隣接して設けられた複数の電槽を区画する隔壁と、前記電槽内に配置された極板群と、前記極板群に電気的に接続する接続部と、隣接する前記電槽内のそれぞれの前記接続部を電気的に接続可能にする前記隔壁に設けられた貫通孔とを備える二次電池であって、前記接続部は、前記貫通孔に挿入される突出部と、前記突出部の周囲において前記隔壁に対向するとともに、弾性変形可能な無端状のシール部材を前記隔壁との間に配置可能なシール部材配置部とを備え、前記隔壁を挟んで対向する2つの前記接続部は、各前記接続部の前記突出部を前記貫通孔内で電気的に接続させるとともに、一方の前記接続部の前記シール部材配置部にのみ前記シール部材が配置され、前記隔壁は、前記シール部材が当接する部分の少なくとも一部に前記樹脂ケースの樹脂よりも硬化された硬化部分を備える。
【0008】
このような構成によれば、貫通孔の周囲に設けるシール部材を1つとしても、シール部材が当接する部分における樹脂が変形し難いことから、シール部材の押圧力に起因する変形が抑制される。換言すると、一方の接続部はシール部材が隔壁の硬化部分を押圧し、他方の接続部はシール部材配置部が空間になることから、反対側に空間があったとしても隔壁の変形が抑制される。よって、電槽間における電解液に対するシール性を維持することができる。
【0009】
また、シール部材を1つにすることができるので部品点数が削減される。
好ましい構成として、前記硬化部分は、前記シール部材が当接する範囲よりも広い。
このような構成によれば、シール部材の周囲についても硬化されていることから樹脂の変形がより抑制されるようになる。
【0010】
好ましい構成として、前記樹脂は、結晶性樹脂であり、前記硬化部分は、前記結晶性樹脂の結晶化度が前記樹脂ケースの結晶化度よりも高い。
このような構成によれば、樹脂の結晶化度が高められた硬化部分をシール部材の周囲に設けることができる。なお、結晶化度は、溶融した樹脂の冷却速度が遅いほど高くなることから、硬化部分の硬さの調整も可能になる。
【0011】
好ましい構成として、前記硬化部分の硬さは、前記シール部材が当接する部分から離れることに応じて低くなる。
このような構成によれば、シール部材からの押圧力が強い部分の硬さ、いわゆる剛性や耐クリープ性が高められるとともに、シール部材から離れて押圧力が弱まるに応じて剛性等が低下する一方で靭性の割合が高まるようになる。これにより、隔壁において貫通孔の周囲に適切な耐性を付与することができるようになる。
【0012】
好ましい構成として、前記隔壁を挟んで対向する2つの前記接続部は、各前記突出部が同一形状であるとともに、各前記シール部材配置部が同一形状である。
このような構成によれば、2つの接続部に設けられている各突出部が同一形状であるとともに、各シール部材配置部が同一形状であるので、接続部の形成や突出部の溶接等による電気的接続が容易になる。
【0013】
上記課題を解決する二次電池の製造方法は、樹脂ケース内に隣接して設けられた複数の電槽を区画する隔壁と、隣接する前記電槽内にそれぞれ配置された極板群を電気的に接続可能にするために前記隔壁に設けられている貫通孔とを備える二次電池を製造する二次電池の製造方法であって、前記貫通孔に挿通される芯部と前記隔壁の前記貫通孔の周囲を挟むことができる一対の板部とを備える加熱部材で、前記貫通孔に前記芯部を挿通させつつ前記一対の板部で前記隔壁を挟むことによって前記加熱部材を前記隔壁に接触させる接触工程と、前記加熱部材の温度を上昇させて前記貫通孔の近傍が溶融するまで加熱する加熱工程と、前記上昇させた温度を自然冷却、又は、前記自然冷却よりも冷却時間が長くなるように冷却する冷却工程とを備える。
【0014】
このような方法によれば、膨張に耐えられる靭性を有する樹脂ケースにおいて、樹脂ケースの靭性は維持しつつ、樹脂ケースと一体成形されている隔壁について、貫通孔の周囲の剛性等を高めて変形に対する耐性を高めることができる。よって、電槽間における電解液に対するシール性を維持することができる。
【0015】
好ましい方法として、前記接触工程では、前記一対の板部のうちの一方の板部に前記芯部が設けられており、前記隔壁を前記一対の板部で挟むとき、前記一方の板部の前記芯部の先端を前記貫通孔に挿通させるとともに、前記芯部の設けられていない他方の板部の平面に当接させる。
【0016】
このような方法によれば、貫通孔を挿通した一方の板部の芯部の先端が、他方の板部の平面に当接されることにより、一対の板部の間で溶融した樹脂が貫通孔を塞ぐおそれがない。
【0017】
好ましい方法として、前記冷却工程では、前記加熱部材の温度が低下するように加熱量を調整する。
このような方法によれば、加熱部材の加熱量を調整することで貫通孔の周辺の樹脂の冷却時間を自然冷却より長い時間にすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、電槽間における電解液の移動に対するシール性を維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明にかかる二次電池、及び、二次電池の製造方法を具体化した一実施形態について、
図1〜
図7を参照して説明する。こうした二次電池は、例えば、自動車の駆動用電源として用いられる。
【0021】
図1に示すように、電池モジュールは、所要の電力容量を得るべく複数(例えば6個)の単電池11を電気的に直列接続して構成される。電池モジュールは、複数の個別の直方体状からなる単電池11を配列した構造となっている。単電池11は、角形の収容部を構成する電槽13の最も表面積の広い面(長側面)を縦に見てその側面にあたる短側面同士が互いに対向するように配列されている。
【0022】
電池モジュールは、例えばニッケル水素二次電池からなる単電池11がそれを構成する電槽13の短側面同士を隔壁12を介して複数連結したものが、樹脂ケースとしての角形の一体電槽10に収容されている。また電池モジュールは、各電槽13の上面開口が蓋体20により一体に封止されている。各電槽13内には、電池の構成部品として、正極板と負極板とがセパレータを介して積層された極板群14とその両側に接合された接続部としての集電板15,16が例えばアルカリ性の電解液とともに収容されている。
【0023】
極板群14の正極板及び負極板は互いに反対側の側部に突出されることで正極板及び負極板のリード部14a,14bが構成され、これらリード部14a,14bの側端縁にそれぞれ集電板15,16が接合されている。集電板15,16は、その上部15J,16Jにリード部14a,14bの反対側に向けて突設されている突出部としての接続突部15A,16Aを備えている。接続突部15A,16Aは、隔壁12の上部に形成されていて各電槽13の接続に用いられる貫通孔17に挿通されるとともに、貫通孔17を介してスポット溶接により電気的に接続される。これにより、各々隣接する電槽13を有する単電池11が電気的に直列に接続される。
【0024】
また、接続突部15A,16Aの周囲には、それぞれシール部材配置部としてのリング収容部15B,16Bがリード部14a,14b側に向けて環状に突設されている。よって、リング収容部15B,16Bは、リード部14a,14bの反対側に隔壁12に対向する凹状の環状空間15D,16Dをそれぞれ形成する。隔壁12を挟んで対向する集電板15,16は、それらのうちの一方の集電板15の環状空間15Dにシール部材が配置され、他方の集電板16の環状空間16Dにはシール部材等が配置されない。つまり、一方の環状空間15Dには、ゴムなどの弾性部材からなるシール部材としてのO−リング40が配置されている。一方の環状空間15Dに配置されたO−リング40は、リング収容部15Bのリード部14aの反対側の表面により貫通孔17の周囲の隔壁12の表面に押し付けられるとともに、その押圧力により、電槽13内の空間と貫通孔17との間における電解液の移動を遮断する。なお、ここでの電解液の遮断とは、隣接する電槽13の単電池11間に短絡を生じさせない程度の移動を防止することができる程度の遮断である。
【0025】
また、
図1において左側である、端部の電槽13にあって外側に位置する貫通孔19、すなわち一体電槽10の端側壁10a上方の貫通孔19には負極の接続端子30が装着されている。接続端子30は、その電槽13側に上述した接続突部16Aとは異なる上部の形状を有する集電板16の上部の接続点18がスポット溶接により接続される。また、図示しない右側の端部の電槽13にあって外側に位置する貫通孔19、すなわち一体電槽10の端側壁10a上方の貫通孔には正極の接続端子30が装着されている。そして、接続端子30は、その電槽13側に集電板15の上部がスポット溶接により接続される。このように一体電槽10の両端の接続端子30がそれぞれ集電板15,16に接続されることによって、直列接続された電槽13、すなわち複数の単電池11の総出力がこれら接続端子30から取り出される。
【0026】
図2を参照して、集電板15,16の上部15J,16Jの構成について詳述する。
集電板15,16は、隔壁12に当接する平面部15H,16Hを備えている。集電板15,16の上部15J,16Jは、接続突部15A,16Aが平面部15H,16Hよりも隔壁12の貫通孔17に向けて突設されている。集電板15,16は、平面部15Hが図において左側から隔壁12の表面に押し付けられるとともに、平面部16Hが図において右側から隔壁12の表面に押し付けられている。これにより、各集電板15,16の接続突部15A,16Aはそれぞれ貫通孔17の半分の深さまで該貫通孔17内に挿入されて貫通孔17の内部で接触するようになる。そして、集電板15,16は、2つの接続突部15A,16Aが溶接されることで各集電板15,16の平面部15H,16Hと隔壁12の表面との当接が維持される。
【0027】
また、接続突部15A,16Aは、その先端側が貫通孔17に挿通可能な大きさに形成され、その基端側が貫通孔17の内周より大きな大きさに形成されている。換言すると、接続突部15A,16Aは、貫通孔17に侵入する先端側の外径が貫通孔17の内径に嵌合する大きさに縮径されている。よって、2つの接続突部15A,16Aの先端側と基端側との間で貫通孔17の内径側部を挟み込むことができる。本実施形態では、先端側と基端側との間に段差部が形成されており、当該段差部で貫通孔17の外周部分を挟み込むことができるようになっている。
【0028】
しかしながら
図2に示すように、加工上の公差、加工精度等によって、2つの接続突部15A,16Aで貫通孔17の外周部分を挟み込むことができないこともある。例えば、2つの接続突部15A,16Aで挟み込むことができる大きさよりも貫通孔17の内径が大きければ、貫通孔17の少なくとも一部が、
図2の例では孔の上部が2つの接続突部15A,16Aに挟み込まれない。また例えば、貫通孔17が隔壁12の表面に対して傾斜していたとしても貫通孔17の少なくとも一部が2つの接続突部15A,16Aに挟み込まれない。
【0029】
リング収容部15B,16Bは、貫通孔17の周囲に環状の環状空間15D,16Dを形成する。リング収容部15B,16Bは、環状の内周側が貫通孔17に挿入される接続突部15A,16Aにつながり、外周側が集電板15,16の平面部15H,16Hにつながる。よって、リング収容部15B,16Bは、内周側の少なくとも一部が貫通孔17で隔壁12の表面に当接し、外周側の少なくとも一部が平面部15H,16Hによって隔壁12の表面に当接することで、隔壁12の表面との間に上述した環状空間15D,16Dを形成する。
【0030】
図2に示すように、本実施形態では、図において左側の環状空間15Dには、O−リング40が配置され、図において右側の環状空間16Dは空間のままである。
O−リング40は、公知のゴム材料などからなる環状かつ無端状のシール部材である。O−リング40は、その厚みがリング収容部15Bの深さよりも厚く形成されている。よって、リング収容部15Bに配置されたO−リング40は、各集電板15の平面部15Hよりも隔壁12の表面の方向に突出する。そのため集電板15が隔壁12の表面に当接されると、O−リング40は、リング収容部15Bの内面と隔壁12の表面との間に挟まれることにより弾性変形される。弾性変形されたO−リング40は、リング収容部15Bの内面と隔壁12の表面との間に反力を、いわゆる弾性力を付与し、集電板15と隔壁12との間に必要なシール性を確保する。これによって、隔壁12の貫通孔17には、O−リング40によって電槽13を隣接させる単電池11間に短絡を生じさせない程度の電解液の移動が防止される。なお、電池モジュールは、電解液の移動による短絡が生じないので、電解液が配置されない貫通孔17よりも上方に電槽13間の気体移動を許容する連通孔が設けられていたとしてもよい。
【0031】
一方、環状空間15DのO−リング40が当接する隔壁12において、環状空間16D側には空間が確保されている。このため、隔壁12は、O−リング40から図において右方向への反力が付与され続ける一方、環状空間16Dから図において左方向への力は付与されない。つまり、隔壁12の貫通孔17の周辺は環状空間16Dの方向に一方的に押されていることになる。このとき、
図2において貫通孔17の下側17bは、接続突部16Aの先端側と基端側とに係合する。よって、隔壁12が環状空間16Dを挟む2点である接続突部16Aと集電板16の平面部16Hとで支持、いわゆる2点支持され、O−リング40からの押圧力も2点支持で受け止められるようになる。しかしながら、
図2において貫通孔17の上側17aは、接続突部16Aの先端側と基端側とに係合しない。すなわち、隔壁12は、接続突部16Aには支持されず、集電板16の平面部16Hのみで支持される、いわゆる片持ち支持となる。このため、隔壁12は、貫通孔17の上側17aがO−リング40からの押圧力によって環状空間16Dの方向へ押し曲げられて変形するおそれがある。
【0032】
隔壁12は、一体電槽10として一体成形されている。一体電槽10は、熱可塑性樹脂としての結晶性樹脂からなり、射出成形により形成されている。結晶性樹脂としては、高密度ポリエチレン(HDPE)系の樹脂、低密度ポリエチレン(LDPE)系の樹脂、ポリプロピレン(PP)系の樹脂が挙げられる。
【0033】
一体電槽10は、その長側面は二次電池の充放電反応等に伴う内圧上昇に起因する膨張に対応可能な柔軟性、いわゆる靱性が必要であるため、靱性が確保されるように射出成形された後、迅速な冷却により固化される。
【0034】
図3のグラフL1は、冷却時間(固化するまでの時間)と結晶化度との関係を示す。詳述すると、結晶性樹脂は、冷却時間が短いほど結晶化度が低く、冷却時間が長いほど結晶化度が高くなる。また、結晶化度は、低いことで靱性が高くなる反面、剛性や耐クリープ性は低くなる、逆に高くなることで靱性が低くなる反面、剛性や耐クリープ性が高くなる。
【0035】
そこで、一体電槽10は、靱性が高く維持されるように、換言すると、剛性等が低く維持されるように、射出成形後に迅速に冷却され、例えば、結晶性樹脂の結晶化度が低い状態P1(
図3)に維持される。すなわち、一体電槽10と同時に成形される隔壁12にあっても樹脂ケースと同様の高い靱性と低い剛性等とを有する。ところで、靱性は変形に対して柔軟であることから、O−リング40等から継続的に付与される押圧力に応じて曲がるように変形するおそれがある。上述のように、貫通孔17の周囲は、O−リング40から継続的に反力が付与されていることから、片持ち支持となっている貫通孔17の上側17aは、O−リング40とは反対の方向に曲がるおそれがある。O−リング40は、リング収容部15Bと隔壁12の表面との間のシール性を、リング収容部15Bと隔壁12の表面とに接している部分の面圧により確保している。面圧は、O−リング40が大きく弾性変形されることに応じて高く維持されることから、隔壁12の表面がO−リング40に押圧されて変形するとO−リング40の弾性変形が小さくなって面圧が低下し、シール性も低下するおそれがある。
【0036】
そこで、本実施形態は、貫通孔17の周囲に硬化された硬化部分21を設けた。硬化部分21は、一体電槽10の形成時に比較して、隔壁12の貫通孔17の周囲の剛性等が高く、靱性が低い状態であることから、貫通孔17の上側17aのような片持ち支持部分であってもシール性の低下を抑制することができる。すなわち、上述したように、一体電槽10は、その長側面及び隔壁12ともに、靱性や柔軟性を有して形成されているが、これに対して隔壁12の貫通孔17の周囲に硬化部分21を形成した。逆に、一体電槽10は、その長側面が硬化されないことにより、長側面には成形時に付与された靱性や柔軟性が維持される。これにより、一体電槽10の長側面は、二次電池の充放電反応等に伴う内圧上昇に起因する膨張等の変形に対応可能である。
【0037】
図2に示すように、硬化部分21は、隔壁12の貫通孔17の周囲に、貫通孔17の中心を中心P0とする円形範囲として設けられている。円形範囲は、貫通孔17の上側17aにおいて集電板16の上端部である端部P2aを半径とする近傍範囲22として設けられる。なお、貫通孔17の下側17bにおける対応位置P2bの中心P0からの距離は、端部P2aの中心P0からの距離と同じ距離である。隔壁12は、片持ち支持部分の支点である環状空間16Dの外周部分P1aに当接する部分がO−リング40からの押圧力によって湾曲することから、この外周部分P1aを含む範囲を硬化することで湾曲が抑制される。
【0038】
つまり、隔壁12は、片持ち支持部分において、少なくとも、湾曲の支点になる外周部分P1aに当接する部分が硬化されることによっても湾曲が抑制される。よって円形範囲は、少なくとも、貫通孔17の上側17aにおいて環状空間16Dの外周部分P1aを過ぎた位置を半径とすることができる。ここで、硬化部分21に外周部分P1aから反中心P0方向に0.2mm以上の長さがあれば、O−リング40からの押圧力に起因する隔壁12の湾曲が好適に抑制される。通常、外周部分P1aと端部P2aとの間の距離は0.2mm以上あることから、隔壁12を中心P0側から端部P2aまで硬化させれば該隔壁12の湾曲が好適に抑えられる。なお、貫通孔17の下側17bにおいて環状空間16Dの外周部分P1bの中心P0からの距離は、外周部分P1aの中心P0からの距離と同じ距離である。
【0039】
すなわち、貫通孔17に近い近傍範囲22は、環状空間16Dの外周部分P1a,P1bを含む範囲に一体電槽10に比べて剛性等が高く靱性が低い硬化部分21が設けられる。これにより、O−リング40の押圧力による隔壁12の変形が抑制されることになり、貫通孔17の周囲に、特に、隔壁12の片持ち支持部分が生じたとしてもシール性の低下が抑制されるようになる。
【0040】
図4〜
図7を参照して、隔壁12に硬化部分21を備える二次電池の製造方法について説明する。
まず、
図4を参照して、二次電池の製造方法の概要について説明する。ここでは二次電池の製造工程のうち、特に、一体電槽10に極板群14の配置が行われる工程について説明する。二次電池の製造工程は、二次電池の製造装置100(
図5参照)によって各種処理が制御される。二次電池の製造装置100は、コンピュータ等の演算装置、加熱部材50、加熱部材50を移動させる駆動装置や加熱部材50の温度を上昇させる加熱装置等を含み構成されている。
【0041】
図4に示すように、二次電池の製造方法が開始されると、射出成形された電池モジュールの一体電槽10が処理位置に運搬される電槽運搬処理が行われる(ステップS10)。電槽運搬処理は、図示しない搬送装置によって行われる。
【0042】
次に、二次電池の製造装置100は、加熱部材50を隔壁12の貫通孔17に向けて移動させるとともに、隔壁12の貫通孔17とその周辺に接触させる処理である熱板接触処理を行う(接触工程:ステップS11)。続いて、二次電池の製造装置100は、加熱部材50を加熱する加熱処理を行う(加熱工程:ステップS12)とともに、加熱処理が終了すると、加熱部材を冷却する熱板冷却処理を行う(冷却工程:ステップS13)。それから、二次電池の製造装置100は、加熱部材50を隔壁12から離脱させる熱板除去処理を行う(ステップS14)。
【0043】
その後、二次電池の製造装置100は、極板群挿入処理を行う(ステップS15)とともに、隣接する電槽13に配置された極板群14の集電板15,16同士をスポット溶接により電気的に接続させる極板群間溶接処理を行う(ステップS16)。そして、一体電槽10への極板群14の配置が終了する。
【0044】
続いて、
図5〜
図7を参照して熱板接触処理(ステップS11)から熱板除去処理(ステップS14)間での処理について詳述する。
図5に示すように、加熱部材50は、隔壁12の貫通孔17に挿通される芯部52と隔壁12の貫通孔17の周囲を挟むことのできる一対の板部51,53とを備える。硬化部分21は、隔壁12の貫通孔17の周囲に貫通孔17の中心P0を中心とする円形範囲として設けられることから、一対の板部51,53は芯部52を中心とした円形とすることができる。また、板部51,53は円形であることから、それ自身の加熱や、2つの板部51,53での挟み込み等で湾曲したり、歪んだりするおそれが抑制される。また、2つの板部51,53が円形であれば、隔壁12をより均等に加熱することもできる。また、2つの板部51,53が円形であれば、2つの板部51,53の作製も容易である。
【0045】
そして、
図6に示すように、熱板接触処理(ステップS11)が開始されると、加熱部材50は、芯部52を隔壁12の貫通孔17に挿通可能な位置に板部51が配置されるとともに、板部51に隔壁12を挟んで対向する位置に板部53が配置される。そして、加熱部材50は、一対の板部51,53の間隔を狭めることで、隔壁12の貫通孔17に芯部52を挿通させつつ、一対の板部51,53で隔壁12を挟むようにする。このとき、貫通孔17を挿通した一方の板部51の芯部52の先端は、他方の板部53の平面に当接する。つまり、芯部52が貫通孔17の内周に接触し、一対の板部51,53が隔壁12の両面に接触することで加熱部材50が隔壁12に接触する。
【0046】
加熱部材50が隔壁12に接触することに続いて、加熱処理(ステップS12)が開始される。加熱処理では、加熱部材50の温度を上昇させて貫通孔17の周囲を溶融させる。加熱部材50は、電熱器、電磁波照射、レーザ照射等の周知の技術で温度が上昇される。加熱部材50は、一対の板部51,53の外周よりも内側及び芯部52近傍の樹脂を溶融させるように、その一方で、一対の板部51,53の外周近傍は溶融させないように隔壁12を加熱する。例えば、加熱部材50は、一対の板部51,53の外周部側が中心部よりも低温であると好ましい。一対の板部51,53の外周部に対応する隔壁12を溶融させないことにより、樹脂流出や隔壁12の変形などが抑制される。加熱部材50は、板部51,53の中心部や外周部のうちの1箇所又は複数箇所に温度センサーが設けられて温度が監視されることで、中心部を溶融させ外周部を溶融させないように加熱することができる。また、加熱部材50は、加熱対象の隔壁12について、中心部を溶融させ外周部を溶融させないようになる時間を実験や理論的等により予め設定し、この設定した時間だけ加熱するようにしてもよい。
【0047】
隔壁12の樹脂が溶融するまで加熱されたことに続いて、熱板冷却処理(ステップS13)が開始される。熱板冷却処理では、結晶性樹脂の結晶化度が高められるように溶融させた樹脂を冷却する。このとき、少なくとも一体電槽10が成形されたときの冷却時間よりも長い冷却時間で冷却することが好ましい。ここでの冷却は、自然冷却でもよいし、自然冷却よりも冷却時間が長くなるように冷却してもよい。
図3のグラフL1に示すように、樹脂の結晶化度は、溶融している樹脂が固化するまでに要する時間の長さに応じて高くなる。よって、隔壁12の貫通孔17の周囲に必要な剛性等に対応する結晶化度になるように冷却時間を設定する。例えば、加熱部材50は熱容量を有することから、隔壁12を一対の板部51,53で挟んだまま自然冷却することで冷却時間を長く確保してもよい。また、加熱部材50の発熱量を減少させていくことで隔壁12に対する加熱量を減らしていき自然冷却よりも長い冷却時間を確保するようにしてもよい。
【0048】
図7に示すように、隔壁12の樹脂が冷却されたことに続いて、熱板除去処理(ステップS14)が開始される。すなわち、加熱部材50は、隔壁12に接触していた芯部52と一対の板部51,53とが、一対の板部51,53の間隔が広げられることで、隔壁12の表面及び隔壁12の貫通孔17から離間する。これにより、熱板除去処理が終了する。
【0049】
ここで、
図7を参照して、硬化処理された隔壁12の結晶化度について説明する。なお、説明の便宜上、以下では、結晶化度が3段階に相違する場合について説明するが、結晶化度は固化までに要する時間に応じて4段階以上に相違してもよいし、又は無段階に相違してもよい。
【0050】
まず、加熱部材50は、中心には芯部52もあることから熱容量が大きく冷却に時間を要する。一方、一対の板部51,53の周辺部は熱容量が小さいとともに、外周は面積が大きいから放熱速度が速く冷却に要する時間が短くなる。さらに板部51,53の外周付近は溶融しないため、一体電槽10が射出成形されたときの樹脂の結晶化度が維持されている。
【0051】
よって、このように加熱処理された隔壁12の貫通孔17の周辺について樹脂の結晶化度は、貫通孔17の近傍から離れることに応じて低くなる。換言すると、貫通孔17の近傍にあるシール部材が当接する部分から離れることに応じて低くなる。例えば、貫通孔17を内周とする環状の範囲からなる近傍範囲22は、冷却時間が長くなるので結晶化度が高い。すなわち、一体電槽10において硬化部分21となる。また、近傍範囲22の外周から一対の板部51,53の外周までの間の範囲からなる中間範囲23は、放熱しやすいことからその冷却時間が近傍範囲22の冷却時間よりも短くなって結晶化度が近傍範囲22よりも低い一方、加熱処理されていない隔壁12のその他の部分よりも高い。すなわち、一体電槽10において硬化部分21となる。そして、こうした硬化部分21であればO−リング40からの押圧力に対する変形が抑制されるようになる。
【0052】
以上説明したように、本実施形態の二次電池、及び二次電池の製造方法によれば、以下に記載するような効果が得られるようになる。
(1)貫通孔17の周囲に設けるO−リング40を1つとしても、O−リング40が当接する部分における樹脂が変形し難いことから、O−リング40の押圧力に起因する変形が抑制される。換言すると、一方の集電板15の上部15JはO−リング40が隔壁12の硬化部分21を押圧し、他方の集電板16の上部16Jはリング収容部16Bが空間になるが、O−リング40の隔壁12を挟んだ反対側に空間があったとしても隔壁12の変形が抑制される。よって、電槽13間における電解液に対するシール性を維持することができる。
【0053】
また、O−リング40を1つにすることができるので部品点数が削減される。
(2)O−リング40の周囲についても硬化されていることから樹脂の変形がより抑制されるようになる。
【0054】
(3)樹脂の結晶化度が高められた硬化部分21をO−リング40の周囲に設けることができる。なお、結晶化度は、溶融した樹脂の冷却速度が遅いほど高くなることから、硬化部分21の硬さの調整も可能になる。
【0055】
(4)O−リング40からの押圧力が強い部分の硬さ、いわゆる剛性や耐クリープ性が高められるとともに、O−リング40から離れて押圧力が弱まるに応じて剛性等が低下する一方で靭性の割合が高まるようになる。これにより、隔壁12において貫通孔17の周囲に適切な耐性を付与することができるようになる。
【0056】
(5)2つの集電板15、16の上部15J、16Jに設けられている各接続突部15A,16Aが同一形状であるとともに、各リング収容部15B,16Bが同一形状であるので、集電板15、16の上部15J、16Jの形成や接続突部15A,16Aの溶接等による電気的接続が容易になる。
【0057】
(6)膨張に耐えられる靭性を有する一体電槽10において、一体電槽10の靭性は維持しつつ、一体電槽10と一体成形されている隔壁12について、貫通孔17の周囲の剛性等を高めて変形に対する耐性を高めることができる。よって、電槽13間における電解液に対するシール性を維持することができる。
【0058】
(7)貫通孔17を挿通した一方の板部51の芯部52の先端が、他方の板部53の平面に当接されることにより、一対の板部51,53の間で溶融した樹脂が貫通孔17を塞ぐおそれがない。
【0059】
(8)加熱部材50の加熱量を調整することで貫通孔17の周辺の樹脂の冷却時間を自然冷却より長い時間にすることができる。
(その他の実施形態)
なお、上記実施形態は以下の形態にて実施することもできる。
【0060】
・上記実施形態では、電池モジュールが6個の単電池11から構成されたが、6個以外の複数個の単電池から構成されていてもよい。
・上記実施形態では、接続突部15A,16Aがスポット溶接により電気的に接続される場合について例示した。しかしこれに限らず、対向する2つの接続突部が電気的に接続されるのであれば、アーク溶接、レーザビーム溶接、電子ビーム溶接等のスポット溶接以外の溶接技術によって電気的に接続させてもよい。
【0061】
・上記実施形態では、加熱処理する部分に貫通孔17がある場合について例示した。しかしこれに限らず、貫通孔を加熱処理後に形成するのであれば、加熱処理時に貫通孔はなくてもよく、このとき加熱部材としても芯部が不要である。
【0062】
・上記実施形態では、樹脂を溶融させる場合について例示した。しかしこれに限らず、形状が維持される範囲の加熱で硬化部分21を形成することができるのであれば、樹脂が溶融しなくてもよい。また、この場合、芯部はあってもよいし、なくてもよい。
【0063】
・上記実施形態では、集電板15,16の上部15J,16Jが同様の形状である場合について例示した。しかしこれに限らず、隔壁を挟んで対向する上部の形状が異なる形状であってもよい。例えば、一方にはリング収容部を設け、他方にはリング収容部を設けなくてもよい。例えば、一方のリング収容部よりも他方の上部はその長さが短くてもよい。
【0064】
・上記実施形態では、一対の板部51,53を芯部52を中心とする円形とした。しかしこれに限らず、一対の板部は三角形や、矩形状、その他の多角形状、楕円等であってもよい。例えば、隔壁12が縦長形状であることから、一対の板部としては、隔壁12の長辺に沿う硬化部分の上下方向の長さを隔壁12の短辺の幅よりも長くするときには円形以外の楕円等の形状になる。
【0065】
また、平面が芯部に対して偏心していたり、非対称であったりしてもよい。
また、一対の板部を構成する2つの板部の形状が相違していてもよい。
・硬化部分21は、貫通孔17の上側17aの方向においては、最長で隔壁12の上端位置P3aまでを含むことができる。
【0066】
このとき例えば、外周部分P1aから端部P2aまでの距離に対して、外周部分P1aから上端位置P3aまでの距離は20倍程度とすることができる。よって、外周部分P1aから端部P2aまでの距離を0.3mm、外周部分P1aから上端位置P3aまでの距離を6mmとすることができる。このとき、上側と下側とを同じ長さにすれば、中心P0に対して熱板の上下方向の長さを均等にできるので好ましい。
【0067】
また、貫通孔17の下側17bの方向においては、最長で隔壁12の下端位置P3bまでを含むことができる。
・上記実施形態では、硬化部分21が円形範囲である場合について例示した。しかしこれに限らず、硬化部分が円形以外の範囲であってもよい。硬化部分を近傍範囲22よりも広くすることができるのであれば、硬化部分の形状が三角形や、矩形状、その他の多角形状、楕円等であってもよい。
【0068】
・上記実施形態では、硬化部分21が円形範囲である場合について例示した。しかしこれに限らず、硬化部分は、隔壁が2点支持される部分については無い、又は小さい部分である一方、片持ち支持される部分については環状空間の外周に当接する部分まであればよい。例えば、硬化部分が貫通孔を囲まず、貫通孔の周囲の一部分にあってもよい。
【0069】
・上記実施形態では、硬化部分21を隔壁12の貫通孔17の周囲にあって、環状空間16Dの外周部分P1a,P1bまでか、それよりも広い部分まで設けた場合について例示した。しかしこれに限らず、硬化部分21が隔壁12の貫通孔17の周囲にあるのであれば、環状空間16Dの外周部分P1a,P1bよりも内側の部分のみにあってもよい。例えば、環状空間16Dの外周部分P1a,P1bよりも内側の部分に硬化部分が設けられたとしても、当該硬化部分によって隔壁の変形が抑制される。
【0070】
・上記実施形態では、二次電池がニッケル水素二次電池である場合について例示したが、これに限らず、二次電池は、電解液を利用する二次電池であればよく、こうした二次電池としては、例えば、ニッケルカドミウム二次電池が挙げられる。
【0071】
・上記実施形態では、二次電池は自動車の電源として用いられる場合について例示した。しかしこれに限らず、二次電池は、電源として用いられるものであれば、各種の移動体や固定体など自動車以外の電源として用いられてもよい。