(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る鉄道車両1の側面図である。
【0013】
図1に示すように、鉄道車両1は、台車2と、車体3と、を備えている。台車2は、車体3の下方に配置されており、車体3を支持するとともに、図略のレール上を走行するための車輪4を備えている。
【0014】
車体3は、略箱状に構成されており、内部に車室5が形成されている。また、車体3の屋根上には、空調装置7が配置されている。空調装置7は、外部又は車室5から空気を取り込み、取り込んだ空気の温度を上昇又は下降させて送出する。空調装置7が送出した空気は、空調ダクト9を介して、車室5の天井面6に形成されている通風口6aから車室5に供給される。また、この通風口6aには、空調装置7が送出した空気を車室5に供給するか否か、及び、その供給量を調整するための空調用シャッタ装置8が配置されている。
【0015】
次に、この空調用シャッタ装置8について詳細に説明する。以下の説明では、位置関係、大きさ、又は形状等を説明する用語は、その用語の意味が完全に成立している状態だけでなく、その用語の意味が略成立している状態も含むものとする。
【0016】
図2は、通風口6a及び空調用シャッタ装置8を下方から見た分解斜視図である。
図3は、整風板30に対して第1閉鎖板10及び第2閉鎖板20をスライドさせる様子を示す斜視図である。
図4は、第1閉鎖板10に対して第2閉鎖板20をスライドさせる様子を示す斜視図である。
図5は、第1閉鎖板10及び第2閉鎖板20のモケット貼付位置を示す斜視図である。
【0017】
空調用シャッタ装置8は、天井面6に取り付けられている。具体的には、天井面6のうち、屋根側(室内側の反対側)の面に取り付けられている。また、空調用シャッタ装置8は、整風板(枠部材)30と、第1閉鎖板10と、第2閉鎖板20と、を備える。
【0018】
また、第1閉鎖板10は整風板30上をスライド可能であり、第2閉鎖板20は第1閉鎖板10上をスライド可能である(詳細な構成は後述)。第1閉鎖板10及び第2閉鎖板20のスライド方向は、同じ方向であり、以下ではこの方向を単に「スライド方向」と称する。また、各図に示すように、スライド方向の一側(閉鎖時に第1閉鎖板10及び第2閉鎖板20をスライドさせる方向)を閉鎖側と称し、スライド方向の他側(開放時に第1閉鎖板10及び第2閉鎖板20をスライドさせる方向)を開放側と称する。
【0019】
整風板30は、第1閉鎖板10及び第2閉鎖板20よりも室内側に配置されている。整風板30は、アルミニウム又は鋼等の金属製である。整風板30は、空調装置7が送出した空気を整風する。
図2、3、5等に示すように、整風板30は、平板部31と、ルーバー33と、ストッパ34と、を備える。
【0020】
平板部31は、整風板30のベースとなる長方形の板状の部材である。平板部31の長手方向は、通風口の長手方向と同じである。平板部31には、複数の貫通状の開口部32が形成されている。
図3及び
図5に示すように、開口部32は細長状の孔であり、開口部32の長手方向はスライド方向と同じである。開口部32は、平板部31の長手方向(スライド方向)の端部を除いた位置に形成されている。また、開口部32は、スライド方向及び厚み方向に垂直な方向(板幅方向)に並べて形成されている。整風板30は、上下方向で見たときに開口部32と通風口6aとが重なるように配置される。
【0021】
ルーバー33は、
図2に示すように、平板部31の室内側の面から更に室内側に突出するように複数形成されている。ルーバー33の長手方向はスライド方向と同じである。ルーバー33は、平板部31の長手方向(スライド方向)の端部を除いた位置に形成されている。また、ルーバー33は、開口部32の並列方向と同じ方向に並べて形成されている。具体的には、隣接するルーバー33同士の間の領域に開口部32がそれぞれ形成されている。この構成により、空調装置7が送出した空気は、ルーバー33により整風されつつ、ルーバー33の間の開口部32から通風口6aを介して室内側に供給される。また、ルーバー33は、車室5から通風口6aの奥側(天井側)を見えにくくするという機能も有する。
【0022】
ストッパ34は、平板部31の屋根側の面から更に屋根側に突出するように形成されている。ストッパ34は、閉鎖側の端部近傍に配置されている。ストッパ34の長手方向は、開口部32の並列方向と同じである。ストッパ34は、第1閉鎖板10が閉鎖側に過剰にスライドすることを防止する。
【0023】
整風板30は、スライド方向において殆ど同じ形状であるため、押出方向をスライド方向とした押出成形により作成することで容易に形成できる。具体的には、平板部31及びルーバー33を含む形状を押出成形で作成し、その押出成形品に開口部32を形成したり、ルーバー33のスライド方向の両端部を切断したり、ストッパ34を溶接等により接合することで、作成される。なお、整風板30の作成方法は押出成形に限られず、例えば平板部31とルーバー33とが溶接により接合されていても良い。
【0024】
また、
図5に示すように、整風板30の屋根側の面の一部には、モケット71が貼り付けられている。モケット71は、パイル織物の布地である。モケット71と同種の布地は、鉄道車両1の座席の表地等にも使用されている。モケット71は、第1閉鎖板10が接触する部分の一部に貼り付けられている。具体的には、開口部32が形成されている箇所よりも、開口部32の並列方向の外側に貼り付けられている。
【0025】
第1閉鎖板10は、上下方向において第2閉鎖板20と整風板30の間に配置される。第1閉鎖板10は、アルミニウム又は鋼等の金属製である。第1閉鎖板10は、整風板30上をスライドすることで、開口部32(通風口6a)の開口面積を変化させる。
図2及び
図5等に示すように、第1閉鎖板10は、平板部11と、第1操作部13と、を備える。
【0026】
平板部11は、第1閉鎖板10のベースとなる長方形の板状の部材である。平板部11の長手方向は、通風口の長手方向と同じである。平板部11は、モケット71を介して、整風板30(平板部31)の屋根側の面に支持されている。また、整風板30の屋根側の面には、固定部材61が配置されている。固定部材61は、平板部11の屋根側の面、及び、短手方向の端面と接触している(又は僅かな隙間を空けて配置されている)。この構成により、固定部材61は、平板部11がスライド方向以外に移動することを規制する。また、整風板30よりもスライド方向の開放側では、固定部材61と同様の構成を有する車体側固定部材6cが設けられている。以上の構成により、第1閉鎖板10(平板部11)は、整風板30上をスライドすることができる。
【0027】
また、平板部11には、複数の貫通状の開口部12が形成されている。
図2及び
図5等に示すように、開口部12は細長状の孔であり、開口部12の長手方向はスライド方向と同じである。開口部12は、平板部11の長手方向の中央よりも閉鎖側に形成されている。また、開口部12は、スライド方向及び厚み方向に垂直な方向に並べて形成されている。開口部12の幅(並列方向の長さ)は開口部32の幅と同じであるが、異なっていても良い。通風を良好にする観点から、開口部12の幅は、開口部32の幅と同じか、開口部32の幅よりも長くてもよい。第1閉鎖板10は、上下方向で見たときに、開口部32及び通風口6aと開口部12とが重なるように配置される。なお、並列方向の端部に形成されている開口部12は、第1操作部13を形成するために、他の開口部12よりも長手方向の長さが短い。
【0028】
第1操作部13は、平板部11の室内側の面から更に室内側に突出するように形成されている。第1操作部13は、第1閉鎖板10をスライドさせるために使用者(乗客又は乗務員)が掴む部分である。第1閉鎖板10は、2つの第1操作部13を備えている。
図2等に示すように、この2つの第1操作部13は、開口部32に入り込むように配置されている。従って、使用者は、ルーバー33の間に位置している第1操作部13を掴んで、第1閉鎖板10のスライド操作を行う。また、第1閉鎖板10は、第1操作部13が開口部32の内壁で囲まれた状態を維持しつつスライドする。ここで、第1閉鎖板10の開放側へのスライドは、第1操作部13が開口部32の内壁に当たることで、規制されている(規制されるときの第1閉鎖板10の位置が開放位置に相当する)。一方、第1閉鎖板10の閉鎖側へのスライドは、上述のように、平板部11がストッパ34に当たることで、規制されている(規制されるときの第1閉鎖板10の位置が閉鎖位置に相当する)。
【0029】
また、モケット71を介して第1閉鎖板10が支持されていることで、金属同士の接触による異音及び摩耗を防止できる。また、モケット71は適度な摩擦力を生じさせるため、振動等により第1閉鎖板10がスライドすることを防止しつつ、使用者の操作が重くなり過ぎることを防止できる。
【0030】
また、
図5に示すように、第1閉鎖板10の屋根側の面の一部には、モケット72が貼り付けられている。モケット72は、モケット71と同じ素材であり、第2閉鎖板20が接触する部分の一部に貼り付けられている。具体的には、開口部12よりも閉鎖側の領域、及び、開口部12の同士の間の領域にモケット72が貼り付けられている。
【0031】
第1閉鎖板10は、平板部11に対して開口部12を形成する加工を行い、第1操作部13を溶接により接合することで作成される。なお、第1閉鎖板10の作成方法は、別の方法であっても良い。
【0032】
第2閉鎖板20は、第1閉鎖板10の屋根側の面に配置される。第2閉鎖板20のスライド方向の長さは、第1閉鎖板10よりも短い。また、本実施形態では、第2閉鎖板20は第1閉鎖板10上のみに位置しているため、第2閉鎖板20のスライド方向の長さは、第1閉鎖板10の半分以下である。第2閉鎖板20は、アルミニウム又は鋼等の金属製である。第2閉鎖板20は、第1閉鎖板10上をスライドすることで、開口部12の開口面積を変化させる。
図2及び
図4等に示すように、第2閉鎖板20は、平板部21と、第2操作部22と、を備える。
【0033】
平板部21は、第2閉鎖板20のベースとなる長方形の板状の部材である。平板部21の長手方向は、通風口の長手方向と同じである。平板部21は、モケット72を介して、第2閉鎖板20(平板部21)の屋根側の面に支持されている。モケット72を介して支持する効果は、モケット71と同じである。また、第2閉鎖板20の屋根側の面には、固定部材61と同様の構成の固定部材62が配置されている。これにより、第2閉鎖板20をスライド方向のみに移動させることができる。
【0034】
第2操作部22は、平板部21の室内側の面から更に室内側に突出するように形成されている。第2操作部22は、第2閉鎖板20をスライドさせるために使用者が掴む部分である。第2操作部22は、開口部12及び開口部32に入り込むように配置されている。従って、使用者は、ルーバー33の間に位置している第2操作部22を掴んで、第2閉鎖板20のスライド操作を行う。また、第2閉鎖板20は、平板部21が開口部12の内壁で囲まれた状態を維持しつつスライドする。ここで、第2閉鎖板20の開放側及び閉鎖側へのスライドは、第2操作部22が開口部12の内壁に当たることで、規制されている(開放側に規制されるときの第2閉鎖板20の位置が開放位置に相当し、閉鎖側に規制されるときの第2閉鎖板20の位置が閉鎖位置に相当する)。
【0035】
第2閉鎖板20は、平板部21に対して第2操作部22を溶接により接合することで作成される。なお、第2閉鎖板20の作成方法(特に第2操作部22の接合方法)は、別の方法であっても良い。
【0036】
本実施形態では、第1閉鎖板10、第2閉鎖板20、及び整風板30、全て同色(例えば黒色)で構成されている。これにより、第1操作部13及び第2操作部22が目立ちにくいため、美観を向上させることができる。
【0037】
次に、
図6から
図8を参照して、第1閉鎖板10及び第2閉鎖板20をスライドさせて、通風口の開度を調整する(特に、全開と全閉とを切り替える)ときの流れについて説明する。
【0038】
一般的に全開と全閉とを切替可能とするためには、開口部分の長さと同じだけ閉鎖板をスライド可能にする必要がある。しかし、この構成では、閉鎖板を収容する長いスペースが必要となる。別の構成としては、省スペースを目的とする場合、上下方向に複数段のレールを形成し、それぞれのレールに閉鎖板を配置する。この構成により、全開時に閉鎖板を収容する長さを抑えることができるので、省スペースが実現できる。しかし、この構成では、複数段のレールを形成するため構成が複雑となるため、重量が増加するとともに、コストも大幅に増加する。更に、上下方向の長さが長くなってしまう。
【0039】
これに対し、本実施形態の空調用シャッタ装置8は、長手方向及び上下方向に省スペースであり、簡単で低コストな構成で、全開と全閉を切替可能である。以下、具体的に説明する。
【0040】
図6は、全開状態における空調用シャッタ装置8を室内側から見た底面図である。
図6に示すように、全開状態では、第1閉鎖板10が開放位置に位置しているとともに、第2閉鎖板20が開放位置に位置している。本実施形態の第1閉鎖板10の開放位置は、第1閉鎖板10と開口部32とが重なっている。そして、第1閉鎖板10と開口部32が重なっている部分を開放させるために、第1閉鎖板10に開口部12が形成されている。従って、第2閉鎖板20を開放位置に位置させることで、開口部32を全開させることができる。また、全開状態において、第1操作部13及び第2操作部22は、開口部32の開放側の端部に位置している。これにより、第1操作部13及び第2操作部22によって整風されることを防止できる。
【0041】
また、全開の状態から開口部32を全閉させるためには、初めに、
図7に示すように、第1閉鎖板10を閉鎖位置にスライドさせる。この状態では、開口部12が開放されているため、開口部32の一部が開放されている。その後、第2閉鎖板20を閉鎖位置にスライドさせることで、
図8に示すように、開口部12が閉鎖される。従って、開口部32を全閉することができる。
【0042】
以上の構成により、第1閉鎖板10のスライド量を抑えつつ(第1閉鎖板10を収容するスペースを小さくしつつ)、かつ簡単な構成で、開口部32(通風口6a)を全開及び全閉させることができる。
【0043】
次に、
図9及び
図10を参照して、第1操作部13及び第2操作部22の突出長さについて説明する。
【0044】
図9は、スライド方向に垂直な面で切った空調用シャッタ装置8の断面図(
図8のA−A断面図)である。このように、第1操作部13及び第2操作部22がルーバー33よりも室内側に突出している場合(つまり、第1操作部13及び第2操作部22の室内側の端部がルーバー33の室内側の端部よりも更に室内側に位置している場合)、使用者が第1操作部13及び第2操作部22を操作し易くなる。
【0045】
図10は、変形例に係る空調用シャッタ装置8の断面図である。この変形例に示すようにルーバー33が第1操作部13及び第2操作部22よりも室内側に突出している場合(つまり、ルーバー33の室内側の端部が第1操作部13及び第2操作部22の室内側の端部よりも更に室内側に位置している場合)、第1操作部13及び第2操作部22が目立ちにくいため、シンプルな美観を実現できる。
【0046】
以上に説明したように、本実施形態の空調用シャッタ装置8は、鉄道車両1の天井面6に設けられており、室内への空気の吹出しを行う通風口6aに設けられる。この空調用シャッタ装置8は、第1閉鎖板10と、第2閉鎖板20と、を備える。第1閉鎖板10は、通風口6aに取り付けられる整風板30に支持されており、通風口6aを閉鎖する閉鎖位置と、通風口6aを開放させる開放位置と、の間で整風板30上をスライド可能である。第2閉鎖板20は、第1閉鎖板10に支持されており、当該第1閉鎖板10上を第1閉鎖板10と同じ方向にスライド可能である。第1閉鎖板10は、開放位置に位置している状態では、一部が通風口6aを塞ぐように位置し、当該通風口6aを塞ぐ部分に開口部12が形成されている。第2閉鎖板20は、第1閉鎖板10の開口部12を塞ぐ閉鎖位置と、当該開口部12を開放させる開放位置と、の間でスライド可能である。
【0047】
これにより、開放時においては、第1閉鎖板10が完全に収容できずに通風口6aの一部を塞いでしまうが、第1閉鎖板10に開口部12が形成されているため、通風口6aを十分に開放させることができる。一方、閉鎖時においては、第2閉鎖板20は第1閉鎖板10の開口部12を閉鎖できるため、通風口6aを十分に閉鎖することができる。従って、第1閉鎖板10を収容するスペース(具体的にはスライド方向の長さのスペース)を小さくしつつ、通風口6aを十分に開放及び閉鎖することができる。また、第1閉鎖板10が整風板30に支持され、第2閉鎖板20が第1閉鎖板10に支持されているため、複数の閉鎖板に個別のレールを設ける構成と比較して、構成をシンプルにできる。
【0048】
また、本実施形態の空調用シャッタ装置8において、第1閉鎖板10には、当該第1閉鎖板10をスライド操作する際に掴むための第1操作部13が形成されている。第2閉鎖板20には、当該第2閉鎖板20をスライド操作する際に掴むための第2操作部22が形成されている。
【0049】
これにより、第1閉鎖板10及び第2閉鎖板20をスライド操作させ易い。
【0050】
また、本実施形態の空調用シャッタ装置8において、整風板30には、ルーバー33が形成されている。ルーバー33の長手方向は、第1閉鎖板10のスライド方向と同じである。第1操作部13及び第2操作部22は、ルーバー33の間を通っている。
【0051】
これにより、ルーバー33の長手方向と第1閉鎖板10のスライド方向が同じであるため、第1操作部13及び第2操作部22がルーバー33に当たらない。従って、第1操作部13及び第2操作部22をルーバー33の間を通るように配置できるので、第1閉鎖板10及び第2閉鎖板20の操作性を更に向上できる。
【0052】
また、本実施形態の空調用シャッタ装置8において、第1操作部13及び第2操作部22の少なくとも一方は、ルーバー33よりも室内側に突出している。
【0053】
これにより、第1操作部13及び第2操作部22が視認し易くかつ掴み易いので、第1閉鎖板10及び第2閉鎖板20の操作性を一層向上できる。
【0054】
また、変形例の空調用シャッタ装置8において、ルーバー33は、第1操作部13及び第2操作部22の両方よりも室内側に突出している。
【0055】
これにより、第1操作部13及び第2操作部22がルーバー33によって室内から見えにくくなるので、シンプルな外観を実現できる。
【0056】
また、本実施形態の空調用シャッタ装置8において、第1操作部13は、第1閉鎖板10が開放位置に位置している状態において、通風口6aのスライド方向の端部に位置している。
【0057】
これにより、通風口6aを開放した状態において、第1操作部13が目立ちにくいので、シンプルな外観を実現できる。また、第1操作部13が通風口6aのスライド方向の中央に位置する場合と比較して、第1操作部13が通風の邪魔となりにくい。
【0058】
また、本実施形態の空調用シャッタ装置8において、第1閉鎖板10を閉鎖位置から開放位置にスライドさせる場合において、第1操作部13が整風板30に当たることで、当該第1閉鎖板10のスライド範囲が規制されている。
【0059】
これにより、第1操作部13がストッパとしても機能するため、部品点数を減らすことができる。
【0060】
また、本実施形態の空調用シャッタ装置8において、第2操作部22は、第1閉鎖板10の開口部12の内部に位置している。第2閉鎖板20を閉鎖位置と開放位置の間でスライドさせる場合において、第2操作部22が開口部12の枠(内壁)に当たることで、当該第2閉鎖板20のスライド範囲が規制されている。
【0061】
これにより、第2操作部22がストッパとしても機能するため、部品点数を減らすことができる。
【0062】
また、本実施形態の空調用シャッタ装置8において、第1閉鎖板10が開放位置に位置しているとともに、第2閉鎖板20が開放位置に位置している場合は、通風口6aがスライド方向の一端から他端まで開放されている。第1閉鎖板10が閉鎖位置に位置しているとともに、第2閉鎖板20が閉鎖位置に位置している場合は、通風口6aがスライド方向の一端から他端まで閉鎖されている。
【0063】
これにより、省スペースかつ簡単な構成で、通風口6aを全開及び全閉できる。
【0064】
また、本実施形態の空調用シャッタ装置8において第1閉鎖板10を厚み方向で見たときに、開口部12の長手方向は、当該第1閉鎖板10のスライド方向と同じであり、当該開口部12は、当該スライド方向と垂直な方向に並べて形成されている。第1閉鎖板10は、開口部12同士の間において、第2閉鎖板20の一部を支持する。
【0065】
これにより、第1閉鎖板10の開口部12の間で第2閉鎖板20を支持するため、第2閉鎖板20を端部のみで支持する構成と比較して、第2閉鎖板20を安定的に支持でき、また第2閉鎖板20の自重によるたわみが発生しにくい。
【0066】
また、本実施形態の空調用シャッタ装置8において、整風板30及び第1閉鎖板10は金属製である。整風板30は、布地を介して第1閉鎖板10を支持する。更に、第1閉鎖板10は、布地を介して第2閉鎖板20を支持する。
【0067】
これにより、布地で支持することで、摩耗及びスライド音を低減できる。特に、本実施形態のようにモケット71,72を用いることで、鉄道車両1の振動でスライドすることを防止しつつ、使用者の操作が重くなり過ぎることを防止できる。
【0068】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0069】
<用途>上記実施形態では、2箇所の通風口6aの両方に空調用シャッタ装置8が設けられているが、複数の通風口6aのうち一部のみに空調用シャッタ装置8が設けられていても良い。例えば、通風口が、車室の前部側、車室の後部側、乗務員室の合計3箇所に形成されており、乗務員室の通風口のみに空調用シャッタ装置8が設けられていても良い。この場合、乗務員室の空調用シャッタ装置8は通常は全開状態で使用されており、例えば車室内の温度を短期間で上昇又は下降させたいときであったり、空調装置の一部が故障しているときにおいて、空調用シャッタ装置8を全閉状態にすることで、乗務員室の空調を犠牲にして車室の空調を行うことができる。また、通風口6aは、室内への空気の吹出しに代えて又は加えて、室内の空気の取込みを行う構成であっても良い。
【0070】
<整風板30>本実施形態の整風板30に代えて、ルーバー33を備えていない構成の枠部材(通風口6aの周囲に取り付けられ、第1閉鎖板10等を支持する部材)を用いても空調用シャッタ装置8の構成を実現できる。また、開口部32はスリット状(細長状)であり、平行に複数形成されているが、開口部32は1つであっても良いし、スライド方向に並べて形成されていても良い。ストッパ34は、整風板30ではなく別の部材に取り付けられていても良い。
【0071】
<第1閉鎖板10>本実施形態の第1閉鎖板10は、開放位置において通風口6a(開口部32)と重なる領域の略全てに開口部12が形成されているが、当該重なる領域の少なくとも一部に開口部12が形成されていれば、ある程度の効果を発揮できる。開口部12は、上述の開口部32と同様に、スリット状以外の形状であっても良い。第1閉鎖板10は2つの第1操作部13を備えているが、1つであっても良い。また、開口部12が形成される範囲も本実施形態に限られない。ただし、開口部12を第2閉鎖板20で閉鎖するという観点からは、第1閉鎖板10のスライド方向の半分以下であることが好ましい(第2閉鎖板20を問題なく支持可能であれば、開口部12はそれより長くても良い)。また、第1操作部13は別の位置に形成されていても良い。例えば、開口部12の開放側の端部以外、具体的には開口部12のスライド方向の中央又は閉鎖側の端部に形成されていても良い。ただし、操作性の観点からは、上下方向で見たときに開口部32(通風口6a)と重なる位置に形成されていることが好ましい。第1閉鎖板10は、整風板30に直接又はモケット72を介して支持されているが、別の部材を介して支持されていても良い。
【0072】
<第2閉鎖板20>第2操作部22は、平板部21のスライド方向の端部であって、それに垂直な方向の中央に形成されているが、異なる位置に形成されていても良い。また、第2操作部22を2つ以上備える構成であっても良い。第2閉鎖板20は、第1閉鎖板10に直接又はモケット72を介して支持されているが、別の部材を介して支持されていても良い。
【0073】
なお、第1閉鎖板10、第2閉鎖板20、及び整風板30は何れも金属製であるが、少なくとも1つが別の素材(例えば高強度の樹脂等)であっても良い。
【0074】
<ストッパ構造>上記実施形態では、第1閉鎖板10はストッパ34(閉鎖側)及び開口部32の枠(開放側)によりスライド範囲が規制されているが、開放側のストッパとして別途設けた別のストッパを用いても良い(例えばストッパ34に類似した形状のストッパ)。また、第1操作部13の位置を変更する等して、閉鎖側のストッパとして開口部32の枠を用いても良い。第2閉鎖板20のストッパについても同様に、少なくとも一方のスライドの規制について別途設けたストッパを用いても良いし、開口部32の枠(内壁)をストッパとして用いても良い。
【0075】
<モケット71,72>上記実施形態では、開口部32の並列方向の外側のみにモケット71が貼り付けられているが、それに加えて又は代えて、開口部32同士の間にモケット71を貼り付けても良い。また、上記実施形態では、開口部12の間と、開口部12よりも開放側の領域と、にモケット72が貼り付けられているが、それに加えて又は代えて、開口部12の配列方向の外側にモケット72が貼り付けられていても良い。また、モケット71,72は、支持する側の部材ではなく、支持される側の部材(即ち、第1閉鎖板10の室内側の面と第2閉鎖板20の室内側の面)に貼り付けられていても良い。また、モケット71,72の代わりに、別の布地(織物又は不織布、例えばフェルト)を用いても良い。あるいは、布地以外の材料(樹脂等)を用いても良い。更には、モケット71,72の少なくとも一方を省略しても良い。
【0076】
<固定部材61,62>上記実施形態では、固定部材61は平板部31の長手方向の略全ての領域に形成されているが、平板部11がスライド方向に移動することを規制できるのであれば、例えば平板部31の長手方向の半分又は半分以下の領域に形成されていても良い。また、固定部材61,62は、L字状の1つの部材で平板部11(平板部21)の2方向の移動を規制しているが、離れて配置された2つの部材でそれぞれの方向の移動を規制しても良い。また、固定部材61,62は、それぞれ整風板30上及び第1閉鎖板10上に接合されているが、別の部材に接合されていても良い。ただし、第1閉鎖板10は第2閉鎖板20と一体的に移動するため、第2閉鎖板20上に形成される方が好ましい。
【0077】
<鉄道以外の乗物>上記実施形態では、空調用シャッタ装置8は、鉄道車両1に設けられているが、他の自動車及びバス等の他の車両に設けられていても良い。また、車両以外の乗物、例えば、船舶及び航空機に設けられていても良い。