特許第6851882号(P6851882)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 新日鐵住金株式会社の特許一覧 ▶ 東亜建設工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6851882-カルシア改質土の製造方法 図000007
  • 特許6851882-カルシア改質土の製造方法 図000008
  • 特許6851882-カルシア改質土の製造方法 図000009
  • 特許6851882-カルシア改質土の製造方法 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6851882
(24)【登録日】2021年3月12日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】カルシア改質土の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 17/02 20060101AFI20210322BHJP
   E02F 7/00 20060101ALI20210322BHJP
   C09K 17/06 20060101ALI20210322BHJP
   C09K 103/00 20060101ALN20210322BHJP
【FI】
   C09K17/02 P
   E02F7/00 D
   C09K17/06 P
   C09K103:00
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-74139(P2017-74139)
(22)【出願日】2017年4月4日
(65)【公開番号】特開2018-177841(P2018-177841A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2019年12月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000219406
【氏名又は名称】東亜建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】赤司 有三
(72)【発明者】
【氏名】太田 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】山越 陽介
(72)【発明者】
【氏名】野村 明弘
(72)【発明者】
【氏名】田中 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】桑原 拓馬
【審査官】 横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−180449(JP,A)
【文献】 特開2012−031618(JP,A)
【文献】 特開2013−119578(JP,A)
【文献】 特開2014−173285(JP,A)
【文献】 特開2016−056567(JP,A)
【文献】 米国特許第04652310(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K17/00−17/52
C09K103/00
E02F7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浚渫土とカルシア改質材とを混合して、所望の一軸圧縮強さを有するカルシア改質土を製造するカルシア改質土の製造方法であって、
カルシア改質土に含まれる水分とカルシア改質材との質量比率を水カルシア比とし、現場で使用する浚渫土および所定の仕様のカルシア改質材で作製したカルシア改質土について一軸圧縮試験を行うことにより、前記水カルシア比と、カルシア改質土の一軸圧縮強さとの相関関係を予め把握しておき、この相関関係と、所望の一軸圧縮強さとに基づいて、この所望の一軸圧縮強さを得るために必要な前記水カルシア比の許容範囲を決定し、混合する浚渫土および前記所定の仕様のカルシア改質材に含まれている水分とこのカルシア改質材との質量比率を現場水カルシア比とし、この現場水カルシア比を前記許容範囲内にしてカルシア改質土を製造するに際して、前記混合する浚渫土の単位体積当たりの水分の質量を、その浚渫土の湿潤密度、土粒子密度および水密度に基づいて算出し、前記土粒子密度および水密度には予め把握されている範囲内での所定値を用い、算出した前記混合する浚渫土の単位体積当たりの水分の質量と前記許容範囲の水カルシア比とに基づいて、前記混合する浚渫土の単位体積当たりの前記所定の仕様のカルシア改質材の混合質量を算出し、算出した前記混合質量とこのカルシア改質材の表乾密度とに基づいて、製造するカルシア改質土の単位体積当たりのこのカルシア改質材の体積混合比率を算出して、前記表乾密度には予め把握している値を使用し、現場では算出した前記体積混合比率で前記浚渫土とこのカルシア改質材とを混合することを特徴とするカルシア改質土の製造方法。
【請求項2】
前記水カルシア比毎に、前記体積混合比率と、前記混合する浚渫土の湿潤密度との相関関係を予め把握しておき、この相関関係と、前記混合する浚渫土の湿潤密度と、前記許容範囲の水カルシア比とに基づいて、現場で前記浚渫土と前記所定の仕様のカルシア改質材とを混合する際に用いる前記体積混合比率を決定する請求項1に記載のカルシア改質土の製造方法。
【請求項3】
製造したカルシア改質土の湿潤密度を測定し、この測定した湿潤密度と予め把握している混合した前記浚渫土の湿潤密度および前記所定の仕様のカルシア改質材の表乾密度とに基づいて、製造したカルシア改質土の単位体積当たりの前記カルシア改質材の体積混合比率を算出し、算出したこの体積混合比率と、このカルシア改質土を製造した際の前記カルシア改質土の単位体積当たりの前記カルシア改質材の体積混合比率とを比較して、前記カルシア改質土を製造する過程での不具合の有無を把握する請求項1または2に記載のカルシア改質土の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浚渫土と製鋼スラグから形成されたカルシア改質材の混合物であるカルシア改質土の製造方法に関し、さらに詳しくは、所望の一軸圧縮強さを有するカルシア改質土をより確実に製造することができるカルシア改質土の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
浚渫土を強度改良する改質材として、鉄鋼精製の過程で副産物として生じる製鋼スラグから形成されたカルシア改質材が使用されている。浚渫土にカルシア改質材を混合して製造されたカルシア改質土は、浅場や干潟、藻場などの造成材料として活用される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
従来、浚渫土とカルシア改質材とを概略的な目安の体積混合比(例えば、泥土:カルシア改質材=7:3)で混合することにより、カルシア改質土を製造している。しかしながら、このような体積混合比を浚渫土の性状が異なる場合にも適用しているため、製造されたカルシア改質土の強度(一軸圧縮強さ)にバラツキが生じている。そのため、より品質の安定したカルシア改質土を製造するには改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−173285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の状況を鑑みてなされたものであり、その目的は、所望の一軸圧縮強さを有するカルシア改質土をより確実に製造することができるカルシア改質土の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明のカルシア改質土の製造方法は、浚渫土とカルシア改質材とを混合して、所望の一軸圧縮強さを有するカルシア改質土を製造するカルシア改質土の製造方法であって、カルシア改質土に含まれる水分とカルシア改質材との質量比率を水カルシア比とし、現場で使用する浚渫土および所定の仕様のカルシア改質材で作製したカルシア改質土について一軸圧縮試験を行うことにより、前記水カルシア比と、カルシア改質土の一軸圧縮強さとの相関関係を予め把握しておき、この相関関係と、所望の一軸圧縮強さとに基づいて、この所望の一軸圧縮強さを得るために必要な前記水カルシア比の許容範囲を決定し、混合する浚渫土および前記所定の仕様のカルシア改質材に含まれている水分とこのカルシア改質材との質量比率を現場水カルシア比とし、この現場水カルシア比を前記許容範囲内にしてカルシア改質土を製造するに際して、前記混合する浚渫土の単位体積当たりの水分の質量を、その浚渫土の湿潤密度、土粒子密度および水密度に基づいて算出し、前記土粒子密度および水密度には予め把握されている範囲内での所定値を用い、算出した前記混合する浚渫土の単位体積当たりの水分の質量と前記許容範囲の水カルシア比とに基づいて、前記混合する浚渫土の単位体積当たりの前記所定の仕様のカルシア改質材の混合質量を算出し、算出した前記混合質量とこのカルシア改質材の表乾密度とに基づいて、製造するカルシア改質土の単位体積当たりのこのカルシア改質材の体積混合比率を算出して、前記表乾密度には予め把握している値を使用し、現場では算出した前記体積混合比率で前記浚渫土とこのカルシア改質材とを混合することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、水カルシア比とカルシア改質土の一軸圧縮強さとの相関関係を予め把握しておくことで、その相関関係と所望の一軸圧縮強さとに基づいて、所望の一軸圧縮強さを有するカルシア改質土を製造するのに必要な水カルシア比の許容範囲を精度よく決定できる。そして、現場カルシア比を決定した許容範囲内にして浚渫土とカルシア改質材とを混合することで、所望の一軸圧縮強さを有するカルシア改質土をより確実に製造することができる。これにより、品質のバラツキを小さくしてカルシア改質土を製造することが可能となる。前記混合する浚渫土の単位体積当たりの水分の質量は、例えば、その浚渫土の湿潤密度、土粒子密度および水密度に基づいて算出する。
【0008】
前記水カルシア比毎に、前記現場水カルシア比を前記許容範囲内にするために必要となる前記カルシア改質土の単位体積当たりの前記カルシア改質材の体積混合比率と、前記混合する浚渫土の湿潤密度との相関関係を予め把握しておき、この相関関係と、前記混合する浚渫土の湿潤密度とに基づいて決定した前記体積混合比率で前記浚渫土と前記カルシア改質材とを混合することもできる。水カルシア比毎に、カルシア改質材の体積混合比率と、混合する浚渫土の湿潤密度との相関関係を予め把握しておくと、所望の一軸圧縮強さに基づいて水カルシア比の許容範囲を決定し、混合する浚渫土の湿潤密度を測定するだけで、所望の一軸圧縮強さを有するカルシア改質土を製造するのに必要なカルシア改質材の体積混合比率を決定できる。作業が簡便化するので、カルシア改質土の製造効率を大幅に向上させることができる。
【0009】
製造したカルシア改質土の湿潤密度を測定し、この測定した湿潤密度と予め把握している混合した前記浚渫土の湿潤密度および前記カルシア改質材の表乾密度とに基づいて、製造したカルシア改質土の単位体積当たりの前記カルシア改質材の体積混合比率を算出し、算出したこの体積混合比率と、このカルシア改質土を製造した際の前記カルシア改質土の単位体積当たりの前記カルシア改質材の体積混合比率とを比較するとよい。製造したカルシア改質土の湿潤密度を測定して算出したカルシア改質材の体積混合比率と、製造した際のカルシア改質材の体積混合比率とを比較することで、カルシア改質土を製造する過程で不具合の有無を把握できる。これにより、製造したカルシア改質土の品質を厳しくチェックできるので品質の安定したカルシア改質土を製造するには益々有利になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】カルシア改質土の製造工程を例示する説明図である。
図2】水カルシア比とカルシア改質土の一軸圧縮強さとの相関関係を例示するグラフ図である。
図3】本発明のカルシア改質土の製造方法の一例を示すフロー図である。
図4】水カルシア比毎の浚渫土の湿潤密度とカルシア改質材の体積混合比率との相関関係を例示するグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のカルシア改質土の製造方法を図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0012】
図1に例示するように、本発明では、浚渫土Sとカルシア改質材Cとを混合することにより、所望の一軸圧縮強さを有するカルシア改質土Pを製造する。この実施形態では、バックホウ1により浚渫土Sとカルシア改質材Cとを撹拌混合してカルシア改質土Pを製造している。
【0013】
浚渫土Sとカルシア改質材Cとの混合は、バックホウ1ではなく、ミキサーなどの混合機等を使用して行うこともできる。また、浚渫土Sとカルシア改質材Cの他に必要に応じて他の部材を少量混合することもできる。カルシア改質材Cは、高炉で製造された銑鉄を転炉で精錬する工程で生成される製鋼スラグを成分管理、粒度調整した材料である。カルシア改質材の主成分は、石灰、二酸化珪素、酸化鉄である。
【0014】
本発明では、カルシア改質土Pに含まれる水分とカルシア改質材Cとの質量比率を水カルシア比Xaとする。また、現場において混合する浚渫土Sおよびカルシア改質材Cに含まれている水分とカルシア改質材Cとの質量比率を現場水カルシア比Xbとする。この実施形態では、水カルシア比Xaおよび現場水カルシア比Xbとして、カルシア改質土P(浚渫土Sおよびカルシア改質材C)に含まれる水分の質量をカルシア改質材Cの質量で除した値を採用している。
【0015】
尚、水カルシア比Xaおよび現場水カルシア比Xbには、カルシア改質材Cの質量をカルシア改質土Pに含まれる水分の質量で除した値を採用することもできる。その場合には、以下で説明する水カルシア比Xaおよび現場水カルシア比Xbをそれぞれ逆数として扱うことで同様の結果を得ることができる。
【0016】
本発明者らは、様々な性状の浚渫土Sとカルシア改質材Cとの配合試験を重ねた結果、図2に示すように、カルシア改質土Pの一軸圧縮強さquと水カルシア比Xaとの間に高い相関関係があることを知得した。図2のグラフ縦軸はカルシア改質土Pの一軸圧縮強さquを対数目盛で示し、グラフ横軸は水カルシア比Xaを示している。
【0017】
本発明では、このカルシア改質土Pの一軸圧縮強さquと水カルシア比Xaとの相関関係を利用して、カルシア改質土Pの製造を行う。本発明の製造方法の手順は図3に例示するフロー図のとおりである。
【0018】
本発明では予め、現場で使用する浚渫土および所定の仕様のカルシア改質材Cで作製したカルシア改質土について、水カルシア比Xaとカルシア改質土Pの一軸圧縮強さquとの相関関係を把握する。水カルシア比Xaとカルシア改質土Pの一軸圧縮強さquとの相関関係は、浚渫土Sとカルシア改質材Cとの配合試験(一軸圧縮試験)を行ない、図2に示すように、その試験結果をグラフ化することで把握できる。この水カルシア比Xaとカルシア改質土Pの一軸圧縮強さquとの相関関係は、様々な現場において汎用的に使用できる。
【0019】
カルシア改質土Pを製造する際には、この予め把握しておいた相関関係と、カルシア改質土Pに望まれる一軸圧縮強さquとに基づいて、この所望の一軸圧縮強さquを得るために必要な水カルシア比Xaの許容範囲を決定する。
【0020】
例えば、所望の一軸圧縮強さquが24kN/mである場合には、図2を参照して、一軸圧縮強さquが24kN/mを満足するような水カルシア比Xaの許容範囲を決定する。この実施形態の場合には、水カルシア比Xaの許容範囲を例えば、45%〜50%と決定する。
【0021】
そして、カルシア改質土Pを製造する現場では、現場水カルシア比Xbを、決定した水カルシア比Xaの許容範囲内にしてカルシア改質土Pを製造する。この実施形態の場合には、現場水カルシア比Xbが45%〜50%になるように浚渫土Sとカルシア改質材Cとを混合する。
【0022】
現場水カルシア比Xbを決定した許容範囲内にするために必要となる、カルシア改質土Pの単位体積当たりのカルシア改質材Cの体積混合比率Amは、以下の手順で算出することができる。
【0023】
まず、浚渫土Sが飽和(間隙が水で飽和)しているとし、混合する浚渫土Sの単位体積あたりの質量を示す湿潤密度ρm(g/cm)を測定し、この測定した浚渫土Sの湿潤密度ρmと、浚渫土Sの土粒子密度ρs(g/cm)と、浚渫土Sが含む水(海水)の密度ρw(g/cm)とを下記(1)式に代入することにより、混合する浚渫土Sの含水比Wm(%)を算出する。
含水比は土粒子の質量に対する水の質量の割合である。
【0024】
尚、浚渫土Sの土粒子密度ρsは、浚渫された場所や土の種類によらず概ね2.60g/cm3〜2.70g/cm3であるので、浚渫土Sの土粒子密度ρsは例えば、2.65g/cm3として計算することができる。同様に、浚渫土Sが含む水の密度ρwは概ね1.02g/cm3〜1.04g/cm3であるので、水の密度ρwは例えば、1.03g/cm3として計算することができる。
【0025】
次いで、(1)式で算出した浚渫土Sの含水比率Wmを下記(2)式に代入することにより、浚渫土Sの単位体積当たりの水分の質量Ww(t/m)を算出する。
【0026】
そして、(2)式で算出した浚渫土Sの単位体積当たりの水分の質量Wwと水カルシア比Xaとを下記(3)式に代入することにより、単位体積当りの浚渫土Sに対するカルシア改質材Cの混合質量Wc(t/m)を算出する。
【0027】
次いで、(3)式で算出した単位体積当りの浚渫土Sに対するカルシア改質材Cの混合質量Wcとカルシア改質材Cの表乾密度ρc(t/m)とを下記(4)式に代入することにより、カルシア改質土Pの単位体積当たりのカルシア改質材Cの体積混合比率Am(%)を算出する。
尚、カルシア改質材Cの表乾密度ρcは予め把握しておくことができるので、現場において測定する必要はない。
【0028】
上述した手順で、決定した水カルシア比Xaの許容範囲の上限(例えば、50%)と下限(例えば、45%)についてそれぞれカルシア改質材Cの体積混合比率Amを算出することで、現場水カルシア比Xbを許容範囲内にするために必要となるカルシア改質材Cの体積混合比率Amの許容範囲を算出することができる。現場では、カルシア改質土Pの単位体積当たりのカルシア改質材Cの体積混合比率Amが、この算出した許容範囲内になるように浚渫土Sとカルシア改質材Cとを混合する。
【0029】
このように本発明では、水カルシア比Xaとカルシア改質土Pの一軸圧縮強さquとの相関関係を予め把握しておくことで、その相関関係と所望の一軸圧縮強さquとに基づいて、所望の一軸圧縮強さquを有するカルシア改質土Pを製造するのに必要な水カルシア比Xaの許容範囲を精度よく決定できる。そして、現場カルシア比Xbを決定した許容範囲内して浚渫土Sとカルシア改質材Cとを混合することで、所望の一軸圧縮強さquを有するカルシア改質土Pをより確実に製造することができる。これにより、品質のバラツキを小さくしてカルシア改質土Pを製造することが可能となる。
【0030】
上記の(1)式〜(4)式により、質量比率である現場水カルシア比Xb(水カルシア比Xa)をカルシア改質材Cの体積混合比率Amに置き換えると、カルシア改質材Cの計量作業が行い易くなるので、カルシア改質土Pの製造効率を向上させるには有利になる。
【0031】
上記の(1)式〜(4)式の変数は、水カルシア比Xaと、カルシア改質材Cの体積混合比率Amと、混合する浚渫土Sの湿潤密度ρmである。それ故、図4に示すように、上記の(1)式〜(4)式は、式を整理することで、水カルシア比Xa毎のカルシア改質材Cの体積混合比率Amと混合する浚渫土Sの湿潤密度ρmとの相関関係としてグラフ化することもできる。
【0032】
図4のグラフ縦軸はカルシア改質材Cの体積混合比率Amを示しており、グラフ横軸は浚渫土Sの湿潤密度ρmを示している。グラフ上の直線A、B、C、D、E、Fは、それぞれ水カルシア比Xaを40%、45%、50%、55%、60%、65%とする場合のカルシア改質材Cの体積混合比率Amと浚渫土Sの湿潤密度ρmとの相関関係を示している。
【0033】
このように、水カルシア比Xa毎に、カルシア改質材Cの体積混合比率Amと、混合する浚渫土Sの湿潤密度ρmとの相関関係を予め把握しておくと、所望の一軸圧縮強さquに基づいて水カルシア比Xaの許容範囲を決定し、混合する浚渫土Sの湿潤密度ρmを測定するだけで、図4のグラフ図を参照して、所望の一軸圧縮強さquを有するカルシア改質土Pを製造するのに必要なカルシア改質材Cの体積混合比率Amを決定することが可能となる。
【0034】
また、水カルシア比Xaとカルシア改質土Pの一軸圧縮強さquには高い相関関係があるので、一軸圧縮強さquの異なるカルシア改質土Pを製造する場合にも、図4のグラフ図を参照してそれぞれの一軸圧縮強さquに相当する水カルシア比Xaを選択することで、それぞれの一軸圧縮強さquに合ったカルシア改質材Cの体積混合比率Amを容易に決定することが可能となる。
【0035】
図2図4に示すような2つのグラフ図を予め用意しておけば、現場においては、混合する浚渫土Sの湿潤密度ρmを測定するだけで、所望の一軸圧縮強さquを有するカルシア改質土Pを製造するのに適したカルシア改質材Cの体積混合率Amの許容範囲を容易に少ない工数で把握することが可能となる。それ故、作業が簡便化するので、カルシア改質土Pの製造効率を大幅に向上させることができる。
【0036】
浚渫土Sとカルシア改質材Cとを混合した後には、製造したカルシア改質土Pの単位体積当たりのカルシア改質材Cの体積混合比率Atと、カルシア改質土Pを製造した際のカルシア改質土Pの単位体積当たりのカルシア改質材Cの体積混合比率Amとを比較することで製造したカルシア改質土Pの品質を確認する。この工程は任意であるが実施することが好ましい。
【0037】
製造したカルシア改質材Cの体積混合比率Atは、製造したカルシア改質土Pの湿潤密度ρtを測定し、この測定した湿潤密度ρtと予め把握している混合した浚渫土Sの湿潤密度ρmおよびカルシア改質材Cの表乾密度ρcとに基づいて下記(5)式により、算出することができる。
【0038】
浚渫土Sとカルシア改質材Cとが決定した現場水カルシア比Xbの許容範囲内で適切に混合された場合には、製造したカルシア改質土Pの単位体積当たりのカルシア改質材Cの体積混合比率Atは、製造した際のカルシア改質材Cの体積混合比率Amの許容範囲内の数値となる。一方で、製造後のカルシア改質材Cの体積混合比率Atが、製造した際のカルシア改質材Cの体積混合比率Amの許容範囲を外れた数値となった場合には、計量作業や混合作業に不具合があり、製造したカルシア改質土Pが所望の一軸圧縮強さquを満足していない可能性がある。
【0039】
このように、製造したカルシア改質土Pの湿潤密度ρtを測定して算出したカルシア改質材Cの体積混合比率Atと、製造した際のカルシア改質材Cの体積混合比率Amとを比較することで、カルシア改質土Pを製造する過程で不具合の有無を把握できる。これにより、製造したカルシア改質土Pの品質を厳しくチェックできるので品質の安定したカルシア改質土Pを製造するには益々有利になる。
【符号の説明】
【0040】
1 バックホウ
S 浚渫土
C カルシア改質材
P カルシア改質土
図1
図2
図3
図4