(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリチオール化合物が、アルキルジチオール化合物、エーテル基含有ポリチオール化合物、カルボニル基含有ポリチオール化合物、チオエーテル基含有ポリチオール化合物、芳香族基含有ポリチオール化合物の何れかである請求項2に記載の地山固結用薬液組成物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景にして為されたものであって、その解決すべき課題とするところは、湧水などの水と接触した際にも、水の白濁を有利に防止し、且つ水に希釈されて流出することを効果的に防止し得る地山固結用薬液組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そして、本発明は、上記した課題を解決するために、以下に列挙せる如き各種の態様において、好適に実施され得るものであるが、また、以下に記載の各態様は、任意の組合せにおいて、採用可能である。なお、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに何等限定されることなく、明細書全体の記載から把握される発明思想に基づいて認識され得るものであることが、理解されるべきである。
【0007】
(1) ポリオールを主成分とするA液と、ポリイソシアネートを主成分とするB液とか らなる地山固結用薬液組成物において、前記A液が、
チオール基含有化合物からな る含硫黄化合物を含有していることを特徴とする地山固結用薬液組成物。
(2) 前記チオール基含有化合物が、1分子内に2以上のチオール基を有するポリチオ ール化合物である前記態様
(1)に記載の地山固結用薬液組成物。
(3) 前記ポリチオールが、アルキルジチオール化合物、エーテル基含有ポリチオール 化合物、カルボニル基含有ポリチオール化合物、チオエーテル基含有ポリチオール 化合物、芳香族基含有ポリチオール化合物の何れかである前記態様
(2)に記載の 地山固結用薬液組成物。
(4) 前記
チオール基含有化合物からなる含硫黄化合物が、前記ポリオールの100質 量部に対して、0.1〜30質量部の割合で含有せしめられている前記態様(1) 乃至前記態様
(3)の何れか1つに記載の地山固結用薬液組成物。
(5) 前記A液が、金属触媒又は3級アミン触媒の何れかを更に含有している前記態様 (1)乃至前記態様
(4)の何れか1つに記載の地山固結用薬液組成物。
(6) 前記A液及び前記B液のうちの少なくとも何れかが、難燃剤を更に含有している 前記態様(1)乃至前記態様
(5)の何れか1つに記載の地山固結用薬液組成物。
(7) 前記難燃剤が、前記ポリオールの100質量部に対して、5〜50質量部の割合 で前記A液に含有せしめられている前記態様
(6)に記載の地山固結用薬液組成物 。
(8) 前記難燃剤が、前記ポリイソシアネートの100質量部に対して、5〜40質量 部の割合で前記B液に含有せしめられている前記態様
(6)に記載の地山固結用薬 液組成物。
(9) 前記A液及び前記B液の25℃での粘度が、それぞれ、50〜500mPa・s である前記態様(1)乃至前記態様
(8)の何れか1つに記載の地山固結用薬液 組成物。
(10) 前記A液と前記B液との混合比が、体積基準にて、1:0.5〜1:3である 前記態様(1)乃至前記態様
(9)の何れか1つに記載の地山固結用薬液組成物 。
(11) 発泡倍率が1〜50倍である硬化反応生成物を与える前記態様(1)1乃至前 記態様
(10)の何れか1つに記載の地山固結用薬液組成物。
(12) 地盤注入用途又は空洞充填用途に用いられる前記態様(1)乃至前記態様(
1 1)の何れか1つに記載の地山固結用薬液組成物。
【発明の効果】
【0008】
そして、このような本発明に従う地山固結用薬液組成物の構成によれば、以下に列挙せる如き各種の効果が奏され得ることとなるのである。
(1)薬液組成物を注入するときに、水と接触しても、水が白濁することなく、有利に施工できる。
(2)薬液組成物が水に希釈されて、流出することが効果的に防止されることとなるため、水質汚染が防止される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
要するに、本発明は、ポリオールを主成分とするA液と、ポリイソシアネートを主成分とするB液からなる二液型の地山固結用薬液組成物において、かかるA液に、含硫黄化合物及び触媒を含有せしめることによって、所期の目的を達成したところに、大きな特徴を有しているのである。
【0010】
<A液>
(ポリオール)
本発明に従う地山固結用薬液組成物を構成する二液のうちの一つであるA液において、主成分であるポリオールとしては、特に限定されるものではなく、従来から地山固結用薬液組成物におけるポリオール成分として用いられているものが、同様に使用され得るところであり、例えば、公知のポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール等を挙げることが出来る。ここで、ポリエーテルポリオールとしては、特に限定されるものではなく、例えば、少なくとも2個以上の活性水素基を有する、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール類;エチレンジアミン等のアミン類;エタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン類等の化合物を開始剤として、これとエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドとの付加反応により製造されたもの等を、挙げることが出来る。また、ポリエステルポリオールにあっても、特に限定されるものではなく、例えば、多価アルコールと、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ダイマー酸等のポリカルボン酸とを反応させて得られるポリカルボン酸系ポリエステルポリオールや、ラクトン等を開環重合させて得られるラクトン系ポリエステルポリオール等を、挙げることが出来る。それらのポリオールは、単独で使用することが出来る他、二種以上のものを適宜に組み合わせて併用することも、可能である。
【0011】
そして、上述の如きポリオールは、一般に、100〜10000程度の分子量を有していることが望ましく、中でも200〜8000程度の分子量を有していることがより望ましく、特に250〜5000程度の分子量を有していることがさらに望ましいのである。かかる分子量が100よりも小さくなると、薬液組成物の硬化(固結)時に強度の発現が困難となる恐れがあり、また分子量が10000よりも大きくなると、A液の粘度が高くなり過ぎる問題を惹起する恐れがある。
【0012】
(含硫黄化合物)
また、本発明にあっては、A液には、上述の如きポリオールと共に、含硫黄化合物が含有せしめられることとなる。ここで、本明細書及び特許請求の範囲における含硫黄化合物とは、硫黄原子を有する化合物の全てを意味するものである。含硫黄化合物は、ポリオールの100質量部に対して、0.1〜30質量部の割合において、好ましくは0.1〜10質量部の割合において、A液に含有せしめられる。含硫黄化合物の含有量が0.1質量部よりも少ないと、水白濁の防止効果を有利に享受することが出来ない恐れがあり、その一方、30質量部よりも多いと、硬化反応生成物の物性を低下させる恐れがあり、また経済性も悪くなる。
【0013】
本発明に用いられる含硫黄化合物としては、具体的に、チオール基含有化合物、チオケトン基含有化合物、スルフィニル基含有化合物、スルフィド基含有化合物、ジスルフィド基含有化合物等を例示することが出来る。それらの中でも、特にイソシアネートとの反応によって環境中への薬液の流出を抑制し得る観点より、チオール基含有化合物が有利に用いられる。なお、これらの含硫黄化合物は、本発明においては、単独で、又は二種以上の化合物を併用して、使用されることとなる。
【0014】
ここで、チオール基含有化合物としては、ヘキサンチオール、オクタンチオール等のアルキルチオール化合物や、アミノエタンチオール等の、分子内にチオール基の他に水酸基やアミノ基等のポリイソシアネートと反応可能な反応基を有する化合物等を、例示することが出来る。また、本発明において用いられるチオール基含有化合物は、1分子内に2以上のチオール基を有するポリチオール化合物であることが、より好ましい。ポリチオール化合物は、ポリイソシアネートとの反応点となるチオール基を複数、有していることから、水中への溶解がより効果的に抑制され、また、一般的に、チオール基含有化合物特有の臭気も低いものが多く、そのような臭気の低いポリチオール化合物を用いることにより、作業環境への影響を低減できるという効果をも享受することが可能となる。
【0015】
本発明において用いられるポリチオール化合物としては、エタンジチオール、ヘキサンジチオール、オクタンジチオール、ドデシルジチオール等のアルキルジチオール化合物、ビス(2−メルカプトエチル)エーテル、3,6−ジオキサ−1,8−オクタンジチオール等のエーテル基含有ポリチオール化合物、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、テトラエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパンビス(3−メルカプトプロピオナート)、ジペンタエリスリトールトリス(メルカプトアセテート)等のカルボニル基含有ポリチオール化合物、3,7−ジチア−1,9−ノナンジチオール等のチオエーテル基含有ポリチオール化合物、1,4−ベンゼンジメタンチオール、4,5−ビス(メルカプトメチル)−o−キシレン等の芳香族基含有ポリチオール化合物等を挙げることが出来る。また、エーテル基、カルボニル基、チオエーテル基及び芳香族基から選ばれる二種以上のものを1分子内に有するポリチオール化合物にあっても、本発明においては使用可能である。
【0016】
より具体的に、本発明のポリチオール化合物としては、例えばエポキシ樹脂硬化剤などとして市販されているポリチオール化合物を、有利に用いることが出来る。そのようなポリチオール化合物としては、DPMP(製品名、ジペンタエリスリトール ヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)、SC有機化学株式会社製)、TMMP(製品名、トリメチロールプロパン トリス(3−メルカプトプロピオネート)、SC有機化学株式会社製)、TEMPIC(製品名、トリス−[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)−エチル]−イソシアヌレート、SC有機化学株式会社製)、PEMP(製品名、ペンタエリスリトール テトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、SC有機化学株式会社製)、EGMP−4(製品名、テトラエチレングリコール ビス(3−メルカプトプロピオネート)、SC有機化学株式会社製)、カレンズMT PE1(製品名、ペンタエリスリトール テトラキス(3−メルカプトブチレート)、昭和電工株式会社製)、カレンズMT BD1(製品名、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、昭和電工株式会社製)、カレンズMT NR1(製品名、1,3,5−トリス(3−メルカプトブチリルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、昭和電工株式会社製)、TPMB(製品名、トリメチロールプロパン トリス(3−メルカプトブチレート)、昭和電工株式会社製)、TEMB(製品名、トリメチロールエタン トリス(3−メルカプトブチレート)、昭和電工株式会社製)、チオコールLPシリーズ(製品名、ジエトキシメタンポリサルファイドポリマー、東レ・ファインケミカル株式会社製)、ポリチオールQE−340M(製品名、チオール基末端ポリエーテルポリマー、東レ・ファインケミカル株式会社製)等を、例示することが出来る。
【0017】
(触媒)
また、本発明の地山固結用薬液組成物にあっては、A液に触媒が含有されることが望ましい。本発明に使用される触媒としては、金属触媒又は3級アミン触媒の何れかが好ましく、それら両者を併用することがより好ましい。
【0018】
(金属触媒)
本発明において、金属触媒としては、公知のものを特に制限なく用いることが出来、ナトリウム、カリウム、カルシウム、錫、鉛、ビスマス、亜鉛、鉄、ニッケル、ジルコニウム、コバルト等の有機酸金属塩や有機金属錯体を用いることが出来る。その中で、有機酸金属塩としては、酢酸、オクチル酸、ネオデカン酸、ナフテン酸、ロジン酸等と金属との塩が挙げられ、また有機金属錯体としては、アセチルアセトン等と金属との錯体が挙げられる。具体的には、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、オクチル酸カリウム、オクチル酸ビスマス、オクチル酸鉛、オクチル酸鉄、オクチル酸錫、オクチル酸カルシウム、オクチル酸亜鉛、オクチル酸ジルコニウム、ネオデカン酸ビスマス、ネオデカン酸亜鉛、ネオデカン酸鉛、ネオデカン酸コバルト、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジラウリレート、アセチルアセトン鉄、アセチルアセトン亜鉛、アセチルアセトンジルコニウム、アセチルアセトンニッケル、アセチルアセトン錫等が挙げられる。これらの金属塩や金属錯体は、取り扱い性の向上のため、ミネラルスピリット、有機酸、グリコール類、エステル類等の希釈剤に溶解させたものを用いてもよい。また、これらの金属触媒は単体で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの中でも、好ましくは、カリウム、錫、鉛、ビスマス又は亜鉛の酢酸塩、オクチル酸塩、ネオデカン酸塩、ラウリル酸塩や、アセチルアセトン錯体が挙げられ、より好ましくはカリウム触媒が好適に用いられることとなる。
【0019】
なお、そのような金属触媒を使用する際には、ポリオールの100質量部に対して、0.1〜5質量部の割合において、好ましくは0.5〜3質量部の割合において、A液に含有せしめられる。金属触媒の含有量が0.1質量部よりも少ないと、反応に対する寄与が小さく、強度発現までの時間が長く、また発現強度も小さくなる恐れがあり、一方、5質量部よりも多いと、反応が速くなりすぎて、反応速度の制御が困難となる。
【0020】
(3級アミン触媒)
3級アミン触媒には、薬液組成物内又は外部の水を発泡剤源として用いる場合に、ポリイソシアネートと水との反応を促進する作用を有する泡化触媒、ポリイソシアネートとポリオールとの反応を促進する作用を有する樹脂化触媒、ポリイソシアネートの三量化を促進する作用を有するイソシアヌレート化触媒(三量化触媒)等がある。
【0021】
具体的には、泡化触媒としては、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’−トリエチルアミノエチルエタノールアミン、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N’−トリメチルアミノエチルピペラジン、N,N−ジメチルアミノエトキシエタノール、トリエチルアミン等が挙げられる。また、樹脂化触媒としては、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルプロパンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサンジアミン、トリエチレンジアミン、33%トリエチレンジアミン・67%ジプロピレングリコール、N,N−ジメチルアミノヘキサノール、N,N−ジメチルアミノエタノール、N−メチル−N’−ヒドロキシエチルピペラジン、N−メチルモルフォリン、1−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール等が挙げられる。更に、イソシアヌレート化触媒としては、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N,N’,N”−トリス(ジメチルアミノプロピル)−ヘキサヒドロ−s−トリアジン等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用しても何等差し支えない。また、これら3級アミン触媒の中でも、好ましくは樹脂化触媒、イソシアヌレート化触媒(三量化触媒)が好適に用いられる。
【0022】
なお、そのような3級アミン触媒を使用する際には、ポリオールの100質量部に対して、0.1〜5質量部の割合において、好ましくは0.5〜3質量部の割合において、A液に含有せしめられる。3級アミン触媒の含有量が0.1質量部よりも少ないと、反応に対する寄与が小さく、強度発現までの時間が長く、また発現強度も小さくなる恐れがあり、一方、5質量部よりも多いと、反応が速くなりすぎて、反応速度の制御が困難となる。
【0023】
<B液>
(ポリイソシアネート)
一方、本発明に従う地山固結用薬液組成物を構成する二液のうちの他の一つであるB液は、従来と同様に、ポリイソシアネートを必須成分として調製されてなるものであって、本発明にあっては、そのようなB液中におけるポリイソシアネートの含有量が70〜100質量%、好ましくは80〜100質量%、より好ましくは90〜100質量%となるように調製されることが望ましい。かかるポリイソシアネートの含有量が70質量%よりも少なくなると、硬化反応生成物の強度が低下する問題がある。そのため、B液におけるポリイソシアネートの割合は高い方が望ましく、B液をポリイソシアネートのみで形成しても、何等差支えない。
【0024】
また、本発明においては、かかるB液の必須成分であるポリイソシアネートは、分子中に2個以上のイソシアネート基(NCO基)を有する有機系イソシアネート化合物であり、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(クルードMDI)、トリレンジイソシアネート、ポリトリレンポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートの他、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー、ポリイソシアネートのイソシアヌレート変性体、カルボジイミド変性体等を挙げることが出来る。これらのポリイソシアネートは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。一般的には、反応性や経済性、取扱性等の観点から、MDIやクルードMDIが好適に用いられる。
【0025】
(難燃剤)
ところで、本発明に従う地山固結用薬液組成物を構成する、上述の如きA液及びB液の少なくとも何れかには、難燃剤が含有せしめられていることが好ましい。難燃剤は、A液に添加される場合においては、ポリオールの100質量部に対して5〜50質量部の割合で、好ましくは10〜40質量部の割合で含有せしめられることが望ましい。また、B液に添加される場合においては、ポリイソシアネートの100質量部に対して5〜40質量部の割合で、好ましくは10〜30質量部の割合で含有せしめられることが望ましい。
【0026】
また、そのような難燃剤としては、具体的には、臭素系難燃剤、塩素系難燃剤、リン系難燃剤、ハロゲン化リン酸エステル、無機系難燃剤等が挙げられる。これらは、単独で用いられてもよく、また2種以上を併用して用いられてもよい。これらの中でも、環境への負荷が少なく、発泡性組成物の減粘剤としても機能する点で、リン酸エステル及びハロゲン化リン酸エステルが好ましく用いられることとなる。なお、リン酸エステルとしては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリキシレニルホスフェート等が挙げられる。また、ハロゲン化リン酸エステルとしては、例えば、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(2−クロロプロピル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、テトラキス(2−クロロエチル)ジクロロイソペンチルジホスフェート、ポリオキシアルキレンビス(ジクロロアルキル)ホスフェート等が挙げられる。
【0027】
なお、本発明に従う地山固結用薬液組成物を構成する、上述の如きA液及びB液には、その使用目的に応じて、従来と同様な各種の添加剤を添加せしめることが可能である。例えば、A液又はB液に対する添加剤としては、整泡剤、減粘剤、発泡剤等を挙げることが出来る。これらの添加剤は、A液を構成するポリオールの100質量部に対して0.1〜30質量部、好ましくは0.5〜20質量部の割合において用いられることとなる。また、B液を構成するポリイソシアネートの100質量部に対して0.1〜15質量部、好ましくは0.5〜10質量部の割合となるように用いられることとなる。
【0028】
それら添加剤の中で、整泡剤は、A液とB液との反応によって形成されるフォームのセル構造を均一に整えるために用いられるものである。この整泡剤としては、例えば、シリコーン、非イオン系界面活性剤、ポリオキシアルキレン変性ジメチルポリシロキサン、ポリシロキサンオキシアルキレン共重合体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ヒマシ油エチレンオキシド付加物、ラウリル脂肪酸エチレンオキシド付加物等が挙げられ、これらの中でも、シリコーン及び非イオン系界面活性剤が好ましく用いられる。これらは、単独で用いられてもよく、2種以上を併用して用いられてもよい。また、整泡剤の中では、シリコーン系整泡剤がより好ましく、ポリオキシアルキレン変性ジメチルポリシロキサン、ポリシロキサンオキシアルキレン共重合体等が好ましい。
【0029】
また、減粘剤は、溶剤として用いられ、A液又はB液に溶解されて、それらの液を減粘する働きを有するものである。そのため、そのような機能を有するものである限りにおいて、特に限定されるものではなく、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ等のエーテル類、プロピレンカーボネート等の環状エステル類、ジカルボン酸メチルエステル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類、石油系炭化水素類等が挙げられる。これらは、単独で用いられてもよく、2種以上を併用して用いられてもよい。
【0030】
さらに、発泡剤についても、特に限定されるものではなく、水、炭化水素、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロオレフィン、ハイドロクロロフルオロオレフィン等を例示することが出来るが、それらの中でも、特に水が好適である。水は、B液のポリイソシアネートと反応して炭酸ガスを発生することから、発泡剤として作用するものである。発泡剤の添加量は、地山固結用薬液組成物の用途等に応じて適宜に決定されるところ、好ましくは、A液中に、かかるA液を構成するポリオール等の総量(但し、発泡剤は含まず。以下、本段落においては単にA液という。)の100質量部に対して0.1〜20質量部の割合において含有せしめられる。より具体的には、地盤注入用途に用いる場合、発泡剤は、比較的少量の添加に止める(A液の100質量部に対して0.1〜2質量部程度の割合において添加する)か、若しくは添加しないことが望ましく、その一方、空洞充填用途に用いる場合には、比較的多量とする(A液の100質量部に対して1〜20質量部程度の割合において添加する)ことが望ましい。
【0031】
ところで、本発明に従って調製されるA液及びB液は、それぞれ、25℃の温度下における粘度が50〜500mPa・s、好ましくは60〜400mPa・sとなるように、調製されるのが望ましい。この粘度が500mPa・sよりも高くなると、A液やB液が粘調な液となり、混合時の流動性が悪くなる等の問題を惹起するようになる。また、粘度が50mPa・sよりも低くなると、水に希釈されやすいという問題がある。なお、後述するように、地山固結用薬液組成物は、一般的に、所望とする硬化反応生成物の発泡倍率が、具体的な用途に応じて異なる。従って、所望とする発泡倍率の硬化反応生成物が得られるように、例えば、使用されるポリオール及びポリイソシアネートの種類やそれらの組合せが適宜に選択され、また必要に応じて発泡剤等が使用されること等によって、本発明の地山固結用薬液組成物は調製されることとなる。
【0032】
また、かくの如きA液とB液から構成される、本発明に従う地山固結用薬液組成物の使用に際しては、それら両液が、使用時に混合されて、目的とする地盤、岩盤等に対して、注入や流し込み等によって導入され、反応硬化せしめられることにより、基礎を形成することとなる。なお、かかるA液とB液との混合比(A:B)は、A液中の水酸基含有量とB液中のNCO基含有量によって適宜に変化せしめられることとなるが、一般に、体積基準にて、A:B=1:0.5〜1:3、好ましくは、1:1〜1:2.5の範囲内において、採用されることとなる。また、それらA液やB液の使用方法についても、それらの使用の直前に、二液の混合が確実に行われ得る手法であれば、特に限定はなく、従来から公知の注入手法や流し込み手法が、適宜に採用されることとなる。
【0033】
そして、それらA液とB液とを混合したときの発泡倍率は、1〜50倍の範囲で用いられることが好ましいが、例えば湧水を止めるような止水用途には発泡倍率が1〜10倍、好ましくは1〜5倍、より好ましくは1〜1.5倍となるよう設定される。地盤固結用途に用いる場合は発泡倍率が1〜15倍、好ましくは2〜10倍に設定される。また、空洞充填用途に用いる場合は発泡倍率が8〜50倍、好ましくは10〜40倍となるように設定される。
【実施例】
【0034】
以下に、本発明の実施例や比較例を幾つか示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記した具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。
【0035】
なお、以下の実施例及び比較例において得られたA液とB液の特性(粘度)と共に、A液とB液とを混合して反応硬化せしめた時の反応生成物の発泡倍率とその硬化時間、更には、A液とB液とを混合して水中で反応及び発泡せしめて、発泡体を得た後の水の濁りや水の光透過率については、それぞれ、以下の手法に従って、測定乃至は評価した。また、以下に示す「%」及び「部」は、何れも、質量基準である。
【0036】
(1)粘度
実施例及び比較例において得られたA液及びB液の粘度を、それぞれ、JIS−K−7117−1に準拠して、B型粘度測定装置を用いて粘度を測定した。
【0037】
(2)発泡倍率
25℃の温度に調整されたA液とB液とを、下記表1乃至表3に示される所定の混合比において、全量が100mlとなるようにそれぞれ計量して、それら計量液を2Lのディスカップに収容した後、充分に混合撹拌して、硬化せしめた。そして、硬化反応終了後の反応生成物について、その発泡高さを測定し、発泡倍率を求めた。
【0038】
(3)硬化時間
25℃の温度に調整されたA液とB液とを、下記表1乃至表3に示される所定の混合比で、混合した後、反応生成物からガスが発生し、発泡高さが変化しなくなるまでの時間、及び、反応生成物に串を刺して、内部まで刺さらない状態となるまでの時間を測定し、その何れか遅い方を、硬化時間の終点とした。
【0039】
(4)水濁り
25℃の温度に調整されたA液とB液とを、下記表1乃至表3に示される混合比で、全量が100mlとなるよう計量して、混合した。そして、その混合後、直ちに、2Lディスカップ中に収容された、撹拌翼にて100rpmで撹拌せしめられている20℃の水1L中に、A液とB液との混合物を投入し、発泡が開始するまでディスカップ内の撹拌を継続した。発泡開始後は、ディスカップ内より撹拌翼を抜き、反応が収まるまで静置した。反応が収まった後、水の濁りを目視で確認し、濁りが認められないものを◎、ほぼ濁りがないものを○、明らかに濁りが認められるものを×として、評価した。
【0040】
(5)光透過率
上記(4)の水濁り試験で用いられたディスカップ中の水を回収し、それについて、分光光度計(株式会社日立ハイテクノロジーズ社製:U−2800型分光光度計)を用いて、波長500nmでの光透過率を、測定した。
【0041】
(実施例1)
−A液の調製−
ポリオールとして、三洋化成工業株式会社製GP−400(開始剤:グリセリン、分子量:400、官能基数:3、水酸基価:400mgKOH/g)を用い、その100部に、含硫黄化合物として、SC有機化学株式会社製TMMP[トリメチロールプロパン トリス(3−メルカプトプロピオネート)]の0.5部、3級アミン触媒として、花王株式会社製カオーライザーNo.31(樹脂化触媒:33%トリエチレンジアミンのジプロピレングリコール溶液)の1.5部、金属触媒として、日本化学産業株式会社製プキャット15G(カリウム触媒:オクチル酸カリウム)の1.5部、難燃剤として、大八化学工業株式会社TMCPP[トリス(クロロプロピル)ホスフェート]の30部を添加して、均一に混合せしめることによって、A液を得た。そして、この得られたA液の粘度を測定し、その結果を、下記表1に示した。
【0042】
−B液の調製−
ポリイソシアネートとして、万華化学ジャパン株式会社製Wannate PM−200(ポリメリックMDI)を用い、その100部を、B液として準備した。そして、この準備されたB液の粘度を測定し、その結果を、下記表1に示した。
【0043】
−A液とB液の反応−
上記で得られたA液とB液とを、体積比にて、1:1の割合で組み合わせて、常温下において、均一に混合し、反応せしめた後、前述の評価手法に従って、各種の評価試験を行い、それらの結果を、下記表1に示した。
【0044】
(実施例2〜4)
実施例1において、含硫黄化合物の使用量を、それぞれ1部、4部、20部としたこと以外は、実施例1と同様の手法に従って、各々について各評価試験を行った。そして、その得られた結果を、下記表1に示した。
【0045】
(実施例5)
実施例3において、含硫黄化合物をSC有機化学株式会社製DPMP[ジペンタエリスリトール ヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)]に代えたこと以外は、実施例3と同様の手法に従って、各評価試験を行った。そして、その得られた結果を、下記表1に示した。
【0046】
(実施例6)
実施例3において、含硫黄化合物をSC有機化学株式会社製TEMPIC(トリス−[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)−エチル]−イソシアヌレート)に代えたこと以外は、実施例3と同様の手法に従って、各評価試験を行った。そして、その得られた結果を、下記表1に示した。
【0047】
(実施例7)
実施例3において、含硫黄化合物を東レ・ファインケミカル株式会社製チオコールLP−3(ジエトキシメタンポリサルファイドポリマー)に代えたこと以外は、実施例3と同様の手法に従って、各評価試験を行った。そして、その得られた結果を、下記表1に示した。
【0048】
(実施例8)
実施例7において、含硫黄化合物の使用量を30部としたこと以外は、実施例7と同様の手法に従って、各評価試験を行った。そして、その得られた結果を、下記表1に示した。
【0049】
(実施例9)
実施例3において、含硫黄化合物を東レ・ファインケミカル株式会社製ポリチオールQE−340M(チオール基末端ポリエーテルポリマー)に代えたこと以外は、実施例3と同様の手法に従って、各評価試験を行った。そして、その得られた結果を、下記表1に示した。
【0050】
(実施例10)
実施例3において、3級アミン触媒を花王株式会社製カオーライザーNo.14(三量化触媒:N,N’,N”−トリス(3−ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ−s−トリアジン)に代えたこと以外は、実施例3と同様の手法に従って、各評価試験を行った。そして、その得られた結果を、下記表2に示した。
【0051】
(実施例11)
実施例3において、3級アミン触媒の使用量を2部とし、金属触媒の使用量を2部とし、A液とB液とを体積比にて1:2の割合で組み合わせたこと以外は、実施例3と同様の手法に従って、各評価試験を行った。そして、その得られた結果を、下記表2に示した。
【0052】
(実施例12)
実施例3において、3級アミン触媒の使用量を2部とし、金属触媒としてTN−12(スズ触媒:ジブチル錫ラウリレート)を用いて、その使用量を0.5部としたこと以外は、実施例3と同様の手法に従って、各評価試験を行った。そして、その得られた結果を、下記表2に示した。
【0053】
(実施例13)
実施例3において、3級アミン触媒を添加せず、金属触媒の使用量を2部としたこと以外は、実施例3と同様の手法に従って、各評価試験を行った。そして、その得られた結果を、下記表2に示した。
【0054】
(実施例14)
実施例3において、3級アミン触媒の使用量を3部とし、金属触媒を添加しないこと以外は、実施例3と同様の手法に従って、各評価試験を行った。そして、その得られた結果を、下記表2に示した。
【0055】
(実施例15)
実施例3において、3級アミン触媒としてカオーライザーNo.14を用いて、その使用量を3部とし、金属触媒を添加しないこと以外は、実施例3と同様の手法に従って、各評価試験を行った。そして、その得られた結果を、下記表2に示した。
【0056】
(実施例16)
実施例3において、整泡剤として、シリコーン系整泡剤L−6970(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)の1部と、更に水の1部を添加した以外は、実施例3と同様の手法に従って、各評価試験を行った。そして、その得られた結果を、下記表2に示した。
【0057】
(実施例17)
実施例16において、整泡剤の使用量を2部とし、また水の使用量を6.5部とし、A液とB液とを体積比にて1:2の割合で組み合わせたこと以外は、実施例16と同様の手法に従って、各評価試験を行った。そして、その得られた結果を、下記表2に示した。
【0058】
(実施例18)
実施例1において、ポリオールとして、三洋化成工業株式会社製PP−400(開始剤:プロピレングリコール、分子量:400、官能基数:2、水酸基価:280mgKOH/g)の80部と、株式会社アデカ製BM−54(開始剤:エチレンジアミン、分子量:500、官能基数:4、EO付加あり、水酸基価:450mgKOH/g)の20部とを使用し、含硫黄化合物の使用量を0.7部とし、金属触媒の使用量を0.5部としたこと以外は、実施例1と同様の手法に従って、各評価試験を行った。そして、その得られた結果を、下記表3に示した。
【0059】
(実施例19)
実施例1において、ポリオールとして、三洋化成工業株式会社製PP−400(開始剤:プロピレングリコール、分子量:400、官能基数:2、水酸基価:280mgKOH/g)の50部と、三洋化成工業株式会社製FA−703(開始剤:グリセリン、分子量:5000、EO付加あり、官能基数:3、水酸基価:33mgKOH/g)の50部とを使用して、金属触媒の使用量を1部としたこと以外は、実施例1と同様の手法に従って、各評価試験を行った。そして、その得られた結果を、下記表3に示した。
【0060】
(比較例1〜4)
実施例1、実施例17、実施例18、実施例19において、各々、含硫黄化合物を添加しないこと以外は、実施例1と同様の手法に従って、各評価試験を行った。そして、その得られた結果を、下記表3に示した。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
【表3】
【0064】
かかる表1乃至表3に示される結果より明らかなように、本発明に従う、実施例1〜19に係るA液とB液との組合せからなる薬液組成物においては、何れも、反応が終了した後の水の濁りは、全く認められないか、若しくはほぼ認められず、また、波長500nmでの光透過率も良好であることが確認される。従って、本発明に従う地山固結用薬液組成物を、例えば湧水の多い地山で用いた場合にあっても、湧水が白濁することなく、有利に施工することが可能であると共に、湧水中への薬液組成物の流出が効果的に抑制され、水質汚染を有利に防止し得ることが認められるのである。
【0065】
これに対して、比較例1〜4に係るA液とB液との組合せからなる薬液組成物では、A液中に含硫黄化合物が添加されていないことから、何れも、反応が終了した後の水において、薬液組成物と水との接触に起因すると考えられる白濁が認められ、また、波長500nmでの光透過率も低いことが認められた。従って、そのような薬液組成物は、湧水の多い地山で用いられると、水質汚染の原因となる恐れがあるものと考えられる。