(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
熱可塑性エラストマー(a)が、ビニル結合含有量50モル%以上の熱可塑性エラストマー(a1)とビニル結合含有量45モル%未満の熱可塑性エラストマー(a2)の混合物である、請求項1に記載の構造体。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明においてまず重要なことは、樹脂組成物(B−1)および樹脂組成物(B−2)に使用する軟化剤(b)の含有量が異なることである。すなわち樹脂組成物(B−1)においては軟化剤(b)の含有量が15重量%以上であることが重要であり、好ましくは16重量%以上、より好ましくは17重量%以上、さらに好ましくは18重量%以上、特に好ましくは19重量%以上、最適には20重量%以上である。また、樹脂組成物(B−1)は、軟化剤(b)の含有量が好ましくは40重量%以下であり、より好ましくは35重量%以下である。制振樹脂(B−2)においては軟化剤(b)の含有量は10重量%以下であることが重要であり、好ましくは9.8重量%以下、より好ましくは9.6重量%以下、さらに好ましくは9.4重量%以下、特に好ましくは9.2重量%以下、最適には9重量%以下である。また、樹脂組成物(B−2)は、軟化剤(b)の含有量が好ましくは1重量%以上であり、より好ましくは3重量%以上である。これらの条件を満足し、さらに他の条件をも同時に満足することにより、本発明の目的とする、優れた制振性、静音性、非粘着性、及び施工性を有する構造体を提供することができる。このことは後述の実施例および比較例からも明らかである。
【0012】
<樹脂組成物(B−1)および(B−2)>
本発明の樹脂組成物(B−1)および(B−2)は、
(a)少なくとも1個のビニル芳香族化合物に由来する構造単位から構成される重合体ブロック(X)と少なくとも1個の共役ジエン化合物に由来する構造単位から構成される重合体ブロック(Y)とからなるブロック共重合体および/または該ブロック共重合体の水素添加物である熱可塑性エラストマー、
(b)軟化剤、
(c)ポリオレフィン系樹脂、
を少なくとも含有する。
【0013】
<熱可塑性エラストマー(a)>
本発明に使用する熱可塑性エラストマー(a)は、少なくとも1個のビニル芳香族化合物に由来する構造単位から構成される重合体ブロック(X)と、少なくとも1種の共役ジエン化合物から構成される重合体ブロック(Y)とからなるブロック共重合体である。粘着性の観点からは、重合体ブロック(X)を1個以上、共役ジエン化合物からなる重合体ブロック(Y)を1個以上含有していることが好ましい。一方、耐熱性、力学物性等の観点から、重合体ブロック(X)を2個以上、共役ジエン化合物からなる重合体ブロック(Y)を1個以上含有していることが好ましい。
【0014】
重合体ブロック(X)と共役ジエン化合物からなる重合体ブロック(Y)の結合様式は、線状、分岐状あるいはこれらの任意の組み合わせであってもよい。重合体ブロック(X)をXで、重合体ブロック(Y)をYで表したとき、ブロック共重合体の構造としては、例えばX−Yで示されるジブロック構造や、X−Y−Xで示されるトリブロック構造や、(X−Y)n、(X−Y)n−X、(ここでnは2以上の整数を表す)で示されるマルチブロック共重合体などを挙げることができる。これらの中でも、X−Y−Xで示されるトリブロック構造のものが、制振性、耐熱性、力学物性、汚れ防止性、取り扱い性等の点で好ましく、X−Yで示されるジブロック構造のものは、制振性、粘着性の面で好ましい。
【0015】
また、重合体ブロック(X)の構成成分であるビニル芳香族化合物と重合体ブロック(Y)の構成成分である共役ジエン化合物とが、ランダム状および/またはテーパー状に共重合したブロック部分を、本発明を阻害されない範囲で含有することができる。中でも、X−Y構造部分の接続部近傍に、該ランダムおよび/またはテーパー含有ブロックに配位する事がより好適である。ブロックXとブロックYとがランダム状に共重合したブロック部分では、ブロックX及びブロックYの間で、X及びYを構成する単量体がそれぞれランダムに結合する。ブロックXとブロックYとがテーパー状に共重合したブロック部分では、ブロックX及びブロックYの間で、ブロックXを構成する単量体数が一定割合で減少すると共にYを構成する単量体数が一定割合で増加する。
【0016】
前記ビニル芳香族化合物としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等が挙げられる。これらの中でも、スチレンおよびα−メチルスチレンが好ましい。芳香族ビニル化合物は1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0017】
前記熱可塑性エラストマー(a)中のビニル芳香族化合物に由来する構造単位の含有量は5〜75重量%が好ましく、5〜50重量%がより好ましく、5〜40質量%がさらに好ましい。ビニル芳香族化合物に由来する構造単位の含有量がこの範囲内であると、制振層の耐熱性および力学物性が良好となり易い傾向がある。
【0018】
前記共役ジエン化合物としては、例えばブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。共役ジエン化合物は1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0019】
前記ブロック共重合体における少なくとも1個の共役ジエン化合物に由来する構造単位から構成される重合体ブロック(Y)は、制振性の観点からイソプレン単独、またはイソプレンとブタジエンの混合物に由来する構造単位からなることが適している。樹脂組成物(B−1)および(B−2)は、重合体ブロックの共役ジエン化合物であるイソプレンおよび/またはブタジエンに由来するビニル結合単位(3,4−結合単位および1,2−結合単位の含有量の合計量)の含有量が35モル%以上であり、好適には40モル%以上、更に好ましくは50モル%以上である。これらの条件を満足することにより制振性、静音性が付与される。また、熱可塑性エラストマー(a)として、ビニル結合含有量50モル%以上の熱可塑性エラストマー(a1)と、ビニル結合含有量45モル%以下の熱可塑性エラストマー(a2)との混合樹脂を使用することも好適である。
【0020】
<ブロック共重合体の水素添加物>
また熱可塑性エラストマー(a)は、耐熱性や耐光性の観点から、ブロック共重合体とその水素添加物との混合物あるいはブロック共重合体の水素添加物単独であってよい。この場合、重合体ブロック(Y)を構成する構造単位中の共役ジエン化合物に由来する炭素−炭素二重結合の50%以上が水素添加されていることが好ましく、75%以上が水素添加されていることがより好ましく、95%以上が水素添加されていることがさらに好ましい。
【0021】
樹脂(a)の重量平均分子量は4万〜50万の範囲のものが用いられる。分子量が上記範囲より小さすぎる場合は、得られる樹脂組成物の力学物性の低下を招き好ましくない。逆に大きすぎる場合には粘度の上昇が著しくなり、成形加工性が損なわれ好ましくない。
【0022】
<軟化剤(b)>
軟化剤(b)としては、炭化水素系ゴム用軟化剤、例えばパラフィン系オイル、ナフテン系オイル、アロマ系オイル等のプロセスオイル、流動パラフィン等が挙げられる。中でもパラフィン系オイル、ナフテン系オイル等のプロセスオイルが好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
<ポリオレフィン系樹脂(c)>
樹脂組成物(B−1)および(B−2)は、強度や成形性、耐薬品性、耐熱性、非粘着性の改善の目的からさらにポリオレフィン系樹脂(c)を含有する。ポリオレフィン系樹脂(c)としては、プロピレン系重合体、エチレン系重合体等が挙げられる。プロピレン系重合体としては、例えばホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、アタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン等を使用することができる。中でも、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレンを用いるのが好ましい。エチレン系重合体としては、例えば中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のエチレン単独重合体;エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・1−ヘプテン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体、エチレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン・1−ノネン共重合体、エチレン・1−デセン共重合体等のエチレン・α−オレフィン共重合体等を使用することができる。
【0024】
樹脂組成物(B−1)および(B−2)におけるポリオレフィン系樹脂(c)の含有量はそれぞれ3〜30重量%であり、最適には4〜27重量%である。これらの条件を満たすことにより制振性、静音性、非粘着性、施工性を付与させることができる。
【0025】
<基布(A)>
本発明に用いる基布(A)としては、特に限定はされないが、形状としては、短繊維、長繊維、複合繊維(芯鞘繊維など)、スパンボンドなどを1種類以上用いた織布、或いは不織布、紙などが、また、素材としては、天然繊維、人造繊維、合成繊維、紙素材(パルプなど)などが用いられる。なかでも、不織布、紙が形態安定性、通気性、施工性の面で好適である。
【0026】
さらに、基布(A)としては、樹脂組成物(B−1)または樹脂組成物(B−2)を用いた織布、不織布、複合不織布などがより有効である。この場合は、樹脂組成物(B−1)および(B−2)からなる基布にそれぞれ、樹脂組成物(B−1)および(B−2)をさらに積層または含浸させる。
【0027】
不織布、複合不織布を得る方法としては、特に限定されるものではないが、以下で示すペレット状樹脂(各種樹脂、樹脂組成物(B−1)または(B−2)を含む)を汎用の単層紡糸設備、単層メルトブローン設備、複層・複合紡糸設備、或いは複層・複合メルトブローン設備などで不織布、複合不織布を得る。
【0028】
不織布、複合不織布の具体的な一例は、鞘部となる樹脂(各種樹脂、樹脂組成物(B−1)または(B−2)を含む)と、芯部となる樹脂(鞘部の樹脂とは異なる各種樹脂、樹脂組成物(B−1)または(B−2)を含む)とを別々の押出機に投入し、通常実施される溶融紡糸法、乾式紡糸法、あるいは湿式紡糸法などのいずれかで紡糸し、延伸などの処理を施して得た平均繊維直径20μm以下のフィラメント糸またはステープル繊維を用い、乾式法や湿式法で得た繊維ウエブからなる不織布、またはメルトブローン紡糸法あるいはフラッシュ紡糸法で直接平均繊維直径20μm以下の細繊維に紡糸し、捕集体に集積した繊維ウエブからなる不織布である。弾性重合体の細繊維からトラブルなく合理的に基材を作れる点ではメルトブローン紡糸法で作られた不織布が好ましい。
【0029】
織布、不織布または複合不織布の目付量は指向する用途から決められるが、通常平均重量20〜200g/m
2が好ましく使用される。また、伸縮時の形状追随性、弾性回復性を確保する為、例えば、熱プレスやピンポイント熱エンボスを施したり、ニードルパンチ法、高圧水流処理法などの絡合処理を組み合わせて、繊維の接触部の少なくとも一部を接着あるいは仮接着させて、形態の安定化と伸縮性を発現させる。
【0030】
<制振層(B−1)および(B−2)>
制振層(B−1)および(B−2)はそれぞれ、基布(A)に積層または含浸された状態で構造体(C)に含まれる。基布(A)に樹脂組成物(B−1)からなる制振層(B−1)および樹脂組成物(B−2)からなる制振層(B−2)を積層または含浸する方法としては、特に限定するものではないが、1)基布(A)に樹脂組成物(B−1)または(B−2)からなるフィルムまたはシートを加熱・加圧下に積層する方法、2)樹脂組成物(B−1)または(B−2)を押出し成膜機で溶融状態の樹脂膜を基布(A)に押出しラミネートする方法、3)トルエンなどの有機溶剤に加熱溶解した樹脂組成物(B−1)または(B−2)を基布(A)に含浸する方法、4)樹脂組成物(B−1)または(B−2)を含浸した基布(A)上に、さらに樹脂組成物(B−1)または(B−2)からなるフィルムまたはシートを加熱および加圧下に積層する方法、5)樹脂組成物(B−1)または(B−2)を含浸した基布(A)上に樹脂組成物(B−1)および(B−2)を溶融状態で押出しラミネートする方法などがある。各層間には接着層を使用することもでき、その場合の接着層の厚みは5μm以下が好適である。
【0031】
また、制振層(B−1)および/または(B−2)側にエンボス模様が必要な場合、該積層直後に凹凸模様を施した冷却プレスロールを通すこともできる。また別法として、エンボス模様を施した紙金型或いは樹脂シート金型を使用し、トルエンなどで熱溶解した樹脂組成物(B−1)および/または(B−2)を基布(A)に含浸することにより、制振層(B−1)および/または(B−2)側により精密なエンボス模様を施し、意匠性を向上させることもできる。
【0032】
このようにして得られる構造体(C)としては、(B−2)層/(B−1)層/基布(A)、(B−2)層/基布(A)/(B−1)層/基布(A)、(B−2)層/基布(A)/(B−1)層、基布(A)/(B−1)層/基布(A)/(B−2)層/基布(A)、基布(A)/(B−1)層/(B−2)層/基布(A)、基布(A)/(B−2)層/(B−1)層/基布(A)/(B−1)層/(B−2)層、などが挙げられる。樹脂組成物(B−1)は粘着性であり、樹脂組成物(B−2)は非粘着性であるため、最表層は非粘着性である制振層(B−2)であることが好適である。また(B−1)層と(B−2)層は隣接していることが接着性に優れ、さらにより優れた本発明の目的を達成することができることから好適である。ここで(B−1)層には樹脂組成物(B−1)含浸層が、また(B−2)層には樹脂組成物(B−2)含浸層も含まれる。
【0033】
制振性は、基布(A)の剛直性や厚さに大きく影響を受ける為、(B―1)層と(B−2)層の制振樹脂層の合計厚さは、一概に決定出来ないが、0.3〜5mmが好適であり、0.6〜3.5mmが最適である。また、(B−1)層と(B−2)層との厚み比率は、5/95〜80/20であることが好適である。5/95以下では、曲面基材(D)への貼付時、構造体(C)の端部浮き、或いは脱離が発生し易くなり、また80/20以上では、柔軟すぎることにより施工性が次第に悪くなる。
【0034】
また、基布(A)と(B−1)層および(B−2)層との接着を向上させ、かつ制振性をより向上させるために、樹脂組成物(B−1)または(B−2)を用いた芯鞘繊維を含む複合繊維からなる基布(A)を用いることが望ましい場合がある。
【0035】
また、基布(A)の厚さは、製造される構造体の用途などに応じて決めることができるが、0.3〜3mm程度であるのが好ましく、0.5〜2mm程度であるのがより好ましい。
【0036】
本発明において、樹脂組成物(B−1)および/または(B−2)には、耐摩耗性、表面コート剤との接着性などの改善の目的に極性エラストマー(d)を含有させることができる。極性エラストマー(d)としては、ポリウレタン系エラストマー、アクリル系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマーを一種類、あるいは 二種類以上使用することが出来る。なかでも、ポリウレタン系エラストマーが好ましく、樹脂(a)100重量部に対して、極性エラストマー(d)が5〜70重量部含有していることが、上記目的を達成する点から好ましく、5〜50重量部がより好ましい。また、異種樹脂との混和性を改善する為、本発明の効果を著しく損なわない範囲であれば必要に応じて、樹脂(a)、(c)の末端および/または中間部位に、ヒドロキシル基、カルボニル基、ビニル基、アミノ基、或いはイソシアネート基などの活性水素含有基を付与する事が望ましい場合がある。
【0037】
また、樹脂組成物(B−1)および/または(B−2)には、必要に応じて、粘着付与剤を含有させてもよい。粘着付与剤としては、例えば、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジン、水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、これらのグリセリンエステル、ペンタエリスリトールエステル等のロジンエステルなどのロジン系樹脂;α−ピネン、β−ピネン、ジペンテンなどを主体とするテルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂などテルペン系樹脂:(水添)脂肪族系(C5系)石油樹脂、(水添)芳香族系(C9系)石油樹脂、(水添)共重合系(C5−C9共重合系)石油樹脂、(水添)ジシクロペンタジエン系石油樹脂、脂環式飽和炭化水素など水素添加されていてもよい石油樹脂;ポリα−メチルスチレン、α−メチルスチレン−スチレン共重合体、スチレン系モノマー−脂肪族系モノマー共重合体、スチレン系モノマー−芳香族系モノマー(スチレン系モノマーを除く)共重合体などのスチレン系樹脂;フェノール系樹脂;キシレン樹脂;クマロン−インデン系樹脂等の合成樹脂等が挙げられる。これらの中でも、樹脂組成物の着色抑制の観点から、水添テルペン樹脂、脂環式飽和炭化水素樹脂、(水添)脂肪族系(C5系)石油樹脂が好ましい。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。粘着付与材を含有させる場合、その量はブロック共重合体(a)100重量部に対して、好ましくは100重量部以下であり、耐熱性の観点からは80重量部以下であることがより好ましい。
【0038】
樹脂組成物(B−1)および/または(B−2)には、クレー、珪藻土、シリカ、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、金属酸化物、マイカ、グラファイト、水酸化アルミニウムなどのリン片状無機系添加剤、各種の金属粉、木片、ガラス粉、セラミックス粉、粒状あるいは粉末ポリマー等の粒状あるいは粉末状固体充填材、その他の各種の天然または人工の短繊維、長繊維(例えば、わら、毛、ガラスファイバー、金属ファイバー、その他各種のポリマーファイバー等)などを配合することができる。また、中空フィラー、例えば、ガラスバルーン、シリカバルーンなどの無機中空フィラー、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン共重合体などからなる有機中空フィラーを配合することにより、軽量化をはかることができる。これらの中でも、ポリビニル系短繊維、ポリアリレート系短繊維、グラファイト、マイカ、酸化チタン、アルミニウム粉末、カーボンブラック、などは制振性を大きく改善する効果があり、より望ましい。
【0039】
樹脂組成物(B−1)および/または(B−2)には、上記の成分の他に、用途に応じて各種のブロッキング防止剤、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、結晶核剤、発泡剤、着色剤等を含有することも可能である。ここで、酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジtert−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジtert−ブチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジtert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ−5,5−ウンデカンなどのフェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤等を使用することができる。中でもフェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤が特に好ましい。酸化防止剤は、本発明の樹脂組成物に含まれる上記成分(a)〜(c)の合計100質量部に対して、0.01〜3.0質量部であることが好ましく、0.05〜1.0質量部であることがより好ましい。
【0040】
さらに、用途に応じて、難燃化剤を添加する事が可能である。ここで、難燃化剤としては、特に限定するものではないが、従来から用いられている各種の難燃化用添加剤(例えば、有機リン含有化合物、無機リン含有化合物、有機ハロゲン含有化合物、無機ハロゲン含有化合物、有機リン・ハロゲン含有化合物、無機リン・ハロゲン含有化合物、酸化アンチモン、酸化チタン、金属水酸化物、含水無機結晶化合物)の1種または2種以上を含有していてもよい。なかでも、ハロゲンを含有しないリン系難燃剤が好適であり、例えば、赤リン、有機リン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、ホスホルアミド化合物等が挙げられる。より好適には、芳香族系縮合リン酸エステル化合物が好ましい。
【0041】
また、構造体に、消音性、耐衝撃性を追加付与したい場合、発泡剤、発泡バルーン、或いは 中空ビーズなどを添加し発泡させることもできる。
【0042】
また、制振層(B−2)に接しない側の制振層(B−1)側のスリップ性、防汚性を更に改善する目的で、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、或いはアクリル系樹脂などをコート、或いはラミネートなどの方法で積層することができる。
【0043】
樹脂組成物(B−1)および(B−2)を調製するには、各成分を上記した配合割合で配合して、これらを均一に混合することで得られ、特に限定されないが、例えば、ミキシングロール、加圧式ニーダ、一軸押出機、二軸押出機などによって溶融混練し、ペレット状に調製することができる。また、場合によっては、トルエンなどの有機溶剤で加熱下、溶解し溶液状態で下記の後加工を行うこともできる。
【0044】
得られたペレット状樹脂は、例えば、ホットプレス機、射出成形機、インサート射出機、シート成形機、共押出シート成形機、押出ラミ成形機、などでフィルムまたはシートを得る。また、粘着性の制振層(B−1)が最表層の場合、工程通過性、及び取扱い性の面で、易剥離性の保護層(E)をラミネートロール、或いはラミネーターなどを通して積層することができる。
【0045】
易剥離性の保護フィルム(E)の材質としては、特に制限されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニル、 ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレ−ト、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ナイロン等のポリアミド;ポリアクリロニトリル;セルロース又はその誘導体;アルミニウム等の金属箔等が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。このようなフィルム及びシートとしては、その離型性を増すために、前記粘着剤層に接する面にあらかじめシリコーン処理やフッ素樹脂処理等が施されたものであってもよい。
【0046】
また、制振性を更に向上する為、粘着性制振樹脂(B−1)層に接していない制振樹脂(B−2)層側に、拘束層(F)を積層する事ができる。拘束層(F)としては、例えば、ガラスクロス、金属箔、合成樹脂不織布、カーボンファイバーなどが挙げられる。
【0047】
また、樹脂組成物(B−1)および/または(B−2)には、消音性、耐衝撃性、軽量性、意匠性を追加付与する為、制振層(B−1)、または制振層(B−2)に、発泡剤などを添加することができる。
【0048】
発泡する方法としては、特に限定されないが、化学発泡、物理発泡の方法があり、例えば、無機系発泡剤、有機系発泡剤、熱膨張性微粒子などの添加、二酸化炭素などの臨界発泡、或いは 中空ガラスバルーンなどを挙げることができる。
【0049】
無機系発泡剤としては、例えば、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、亜硝酸アンモニウム、水素化ホウ素ナトリウム、アジド類などが挙げられる。
【0050】
有機系発泡剤としては、例えば、N−ニトロソ系化合物、アゾ系化合物、スルホニルヒドラジン系化合物、スルホニルセミカルバジド系化合物、トリアゾール系化合物等が挙げられる。上記熱膨張性微粒子としては、加熱膨張性化合物、熱可塑性樹脂からなるマイクロカプセルに封入された熱膨張性微粒子を挙げることができる。
【0051】
上記発泡剤の中でも、熱膨張性粒子、或いは中空ガラスバルーンが好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0052】
化学発泡剤の添加割合は、熱可塑性エラストマー組成物全体の質量に対して0.1〜3質量%であることが好ましく、0.3〜2.9質量%であることがより好ましく、0.4〜2.8質量%であることが更に好ましい。発泡剤の配合割合が0.1質量%未満では、得られる発泡成形体の発泡倍率が不十分となって耐衝撃性、消音性が乏しくなる場合があり、3質量%を超えると、発泡セルが肥大化して理想的な独立発泡を有する成形体が得られない場合がある。
【0053】
また、非粘着性の制振層(B−2)に接しない側の制振層(B−1)側のスリップ性、防汚性を更に改善する目的で、フッ素系防汚剤、アクリル系防汚剤、或いはEVOH系防汚剤などからなる防汚層(E)を設けることができる。
【0054】
フッ素系防汚剤としては、特に限定されないが、フッ素含有シラン化合物が有効であり、アルコキシシランまたはアルキルアルコキシシランをフッ素含有シラン化合物に加えて、0.01〜15質量%の範囲で添加して得られた塗布組成物を用いることがより好ましい。
【0055】
アクリル系防汚剤としては、特に限定されないが、アクリル酸もしくはメタクリル酸とC1〜C4アルコールとのエステルを主構成モノマーとする重合体もしくは共重合体を主成分とする樹脂から選択されることが好ましい。このようなアクリル酸エステル系樹脂の主構成モノマーとしては、具体的には、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリレート及びブチルメタクリレートなどがあり、特にメチルアクリレートおよびメチルメタクリレートが好ましい。また、これらの主構成モノマーと共重合させるコモノマーとしては、例えば、アクリル酸もしくはメタクリル酸とC1 〜C12アルコールとのエステル、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ブタジエンなどを用いることができる。
【0056】
EVOH系防汚剤としては、特に限定されないが、エチレン含有量20〜55モル%、特に25〜50モル%、酢酸ビニル成分のケン化度90モル%以上、特に95モル%以上のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(すなわちEVOH)であり、極限粘度が0.7〜1.5dL/gの範囲にあるものが特に好ましい。また、本発明の趣旨を損なわない範囲で、EVOH樹脂層を構成するEVOH樹脂のうち50質量%未満であればα−オレフィン、不飽和カルボン酸系化合物、不飽和スルホン酸系化合物、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、ビニルエーテル、ビニルシラン化合物、塩化ビニル、スチレンなどの他のコモノマーで共重合変性されたEVOH樹脂であってよく、ウレタン化、アセタール化、シアノエチル化など後変性されたEVOH樹脂であってもよい。
【0057】
該防汚層(E)と制振層(B―1)および/または(B−2)との接着性が不十分な場合、制振層(B−1)および/または(B−2)の表面に、コロナ処理、或いはプラズマ処理を施すことが望ましい。プラズマ処理としては、酸素プラズマ処理、大気圧アルゴンプラズマ処理、大気圧チッソプラズマ処理等を選択することができる。中でも大気圧プラズマ処理であることが好ましい。
【0058】
更に、接着強度を改善する方法として、上記処理に加え、プライマー処理を行う事ができる。プライマーとしては、特に限定されないが、脂肪族環式構造含有ポリオール、芳香族構造含有ポリエステルポリオール、或いは親水性基含有ポリオールなどを含むポリオール、及び脂肪族環式構造含有ポリイソシアネートなどを含むポリイソシアネートを組み合わせることにより反応させて得られる。
【0059】
特に、防汚層(E)にEVOH系防汚剤を用いる場合、スチレン系エラストマーおよび/またはポリエステル系樹脂と、イソシアネート系架橋剤とを含有する接着性樹脂を用い、制振層(B−1)および/または(B−2)に接着性樹脂を積層した後、EVOH層を積層する方法や、離型PETフィルムなどに、EVOH層、及び接着剤層を積層した後、接着層側を制振層(B)に熱ラミネートを行なった後、離型PETフィルムを剥離する転写方法などが有効である。
【0060】
本発明の構造体は、化粧シート、制振性、消音性、非粘着性に優れ、かつ施工性(曲面への貼付性、貼付粘着性)などに優れており、基材(D)に張付けて使用される。基材(D)としては、制振、消音性が必要な薄板であれば、特に限定されず、例えば、各種産業製品に用いられる薄板が挙げられる。このような薄板を形成する材料は、特に限定されず、例えば、木材、ボード、金属または樹脂(FRPや合成樹脂を含む。)などである。このような薄板としては、具体的には、壁装材、家具類、自動車の薄板、電気機器や家電製品などの化粧シート薄板、さらには、コンピュータ、コンピュータディスプレイ、テレビ、ゲーム機器、冷蔵庫、掃除機の筐体内部の薄板などが挙げられる。
【0061】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例の物性評価は、以下に示す方法によって行った。
【実施例】
【0062】
(1)損失係数(η)の測定
振動体(厚さ1.0mm、幅15.0mm、長さ250mmのSPCC鋼板)及び拘束層(厚さ0.5mm、幅15.0mm、長さ250mmのアルミ板)に両面粘着テープを張付けた後、後述する実施例、比較例で作成した積層体の両側に該金属を貼り合わせ、リオン社製、商品名「SA−01」の測定装置を用い、0℃にて中央加振法により損失係数を測定した。
【0063】
(2)スチレン含有率
重合に使用した各モノマー成分の重量から算出した。
【0064】
(3)1,2−結合および3,4−結合単位の含有量(ビニル結合含有量)
水素添加前のブロック共重合体をCDCl3に溶解して1H−NMRスペクトルを測定(装置:JNM−Lambda 500(日本電子(株)製、測定温度:50℃)し、イソプレン、ブタジエン、またはイソプレンとブタジエンの混合物由来の構造単位の全ピーク面積と、イソプレン構造単位における1,2−結合単位および3,4−結合単位、ブタジエン構造単位における1,2−結合単位および3,4−結合単位、またはイソプレンとブタジエンの混合物の場合にはそれぞれの前記結合単位に対応するピーク面積の比からビニル結合含有量(1,2−結合単位と3,4−結合単位の含有量の合計)を算出した。
【0065】
(4)スリップ性
JIS K7125に準拠し、多層制振材(B)の非粘着性の制振層(B−2)側を、厚さ1.0mm、幅80mm、長さ200mmのSPCC鋼板に、70℃の熱プレスロールを用いて、加圧・加熱下で貼付を行い、制振層(B−1)側または基布(A)側を上向きに水平常盤に固定した。制振層(B−1)または基布(A)上に、63×63mmのすべり片(アルミ板:200g)置き、23℃−50%RH雰囲気下、島津製作所製オートグラフ、型番AG−1、500Nを用い、水平速度100mm/minで引っ張り時の初期張力(静摩擦係数=ピーク張力/荷重)、及びそれ以降の定常張力(動摩擦力係数=ピーク張力を除く平均張力/荷重)を測定した。
【0066】
(5)静音性(音源透過減衰率)
リオン社製の無音響箱(商品名:RKB−33L)内部を遮音隔壁で仕切り、一方に記録計付属の騒音計(リオン製:NL27)を、他方に騒音発生器(リオン製:SF−06)付属のスピーカーを直線状に設置し、実施例および比較例で作成した各シートを該遮音隔壁の窓(300×500mm角)取付けた場合と、該シートを取り除いた場合との騒音レベル(デシベル:db、23℃―500Hz)の差を算出する事で防音性(Δdb:音源透過減衰率に相当)の評価を行った。Δdbが10以上を好適とした。
【0067】
(6)施工性(基材曲面への長期貼付け性)
厚さ20mm、幅25mm、長さ100mmのラワン木材の長手方向に曲率半径20mmの曲面を施した基材(D)に、実施例、比較例で作成した積層体(C)の制振層(B−1)側に合成のり(ポリビニルアルコール水溶液)を塗布した後、加圧下で貼付けを行い、23℃、50%RH下で1日放置した。基材(D)の折曲げ端部からの積層体(C)の剥れの有無を目視で観察し、4段階評価を行った。ランク2以下を好適とした。
ランク1:剥離なし
ランク2:微小な剥離あり
ランク3:剥離あり
ランク4:剥離顕著
【0068】
(7)成形性
制振層(B−1)および(B−2)を構成する樹脂組成物を混練してペレットにする場合、押出機からのダイス吐出樹脂組成物がペレット状にならずクラム状のものが押し固められた状態となったとき、或いは制振層(B−1)および(B−2)を製膜および押出ラミネートした場合、シート最表面の厚みムラ、流れムラなどの外観不良などが発生した時は、成形性が不良とし、それ以外を成形性が良好とした。
【0069】
(8)制振層含浸比率
基布(A)の厚みに対する基布(A)に埋まりこんだ制振層(B−1)および(B−2)の厚みの比率を構造体(C)の断面顕微鏡観察より算出し、制振層含浸比率と定義した。制振層(B−1)および(B−2)を含浸法で作成した構造体(C)の場合、制振層(B−1)および(B−2)を構成する樹脂組成物(B−1)および(B−2)の溶液が毛細管現象で基布(A)に拡散し、正確な厚み測定が困難な場合がある。従って、含浸法で作成した構造体(C)の場合、離型PETフィルムに塗布した樹脂組成物(B−1)および(B−2)の溶液量を基準とし、溶液が乾燥した場合の厚みが、基布(A)にすべて含浸したと仮定して、基布(A)に含浸した制振層(B−1)および(B−2)の含浸比率を算出した。
【0070】
<実施例1〜19及び比較例1〜8
(実施例1〜12及び実施例15〜19は参考例)>
二軸押出機(口径46mm、L/D=46)を使用して、下記の各構成成分を表1〜3に示す配合に従って混合した後、180℃で溶融混練し、制振層(B−1)、制振層(B−2)製造用のペレット状の樹脂組成物を得た。
【0071】
<シート構成(C−1)>
基布(A)に制振層(B−1)層および(B−2)層を積層する方法として、(B−1)層を構成する樹脂組成物(B−1)、及び(B−2)層を構成する樹脂組成物(B−2)をTダイ共押出しラミ装置(口径40mm、L/D=24、230℃)に投入し、吐出した多層溶融シートの(B−1)層側を基布(A)上に積層・加圧・冷却し、(B−1)層厚みが0.4mm、および(B−2)層の厚みが0.7mmの(B−2)層/(B−1)層/基布(A)構成の多層シート(C)を得た。また、基布(A)への制振層(B−1)の含浸比率は35%であった。
【0072】
<シート構成(C−2)>
基布(A)に制振層(B−1)層および(B−2)層を積層する方法として、樹脂組成物(B−1)および(B−2)をそれぞれ別個に、Tダイ単層押出し装置(口径40mm、L/D=24、230℃)に投入し、離型フィルム(東レ社製PETフィルム、銘柄:ルミラー S−10#50、厚み=50μm)上に、それぞれ厚みが0.4mm単層フィルム(B−1)層、および厚みが0.7mm単層フィルム(B−2)層を得た。吐出した多層溶融シートの(B−1)層側を基布(A―1)上に積層・加圧・冷却し、(B−1)層厚みが0.4mm、および(B−2)層の厚みが0.7mmの構造体を得た。次に、基布(A−1)の両側を離型PETと反対側の(B−1)層及び(B−2)層で挟み込み、180℃の熱プレスロールで熱ラミネートを行い、(B−1)層/基布(A)/(B−2)層構成の多層シート(C)を得た。基布(A)への制振層(B−1)および(B−2)の含浸比率は0%であった。
【0073】
<シート構成(C−3)>
基布(A)に制振層(B−1)層を積層する方法として、ペレット状の樹脂組成物(B−1)を、トルエン溶液を溶剤とし、3時間、110℃で加熱攪拌した濃度40重量%の均一溶液とし、離型フィルム(東レ社製PETフィルム、銘柄:ルミラー S−10#50、厚み=50μm)上に溶液をコート直後、基布(A)を部分含浸、乾燥(80℃、30分)を行なった。その後、該含浸T型ダイス単軸押出機(口径40mm、L/D=24、230℃)を用い、(B−2)層を押出ラミネートし、(B−1)層厚みが0.4mm、および(B−2)層の厚みが0.7mmの(B−2)層/(B−1)層/基布(A)構成の多層シート(C)を得た。また、基布(A)への(B−1)層の含浸比率は25%であった。
【0074】
<シート構成(C−4)>
樹脂組成物(B−2)配合時、熱可塑性エラストマー、軟化剤およびポリオレフィン系樹脂の合計100重量部に対し、加熱時膨張粒子として、積水化学工業製の商品名アドバンセルEM501を10重量部を追加添加し、二軸押出機(口径46mm、L/D=46)を使用して180℃で溶融混練し発泡性を有する(B−2)層を得、上記の<シート構成(C−1)>と同様に多層シート(C)を得た。シート構成は(B−2)層/(B−1)層/基布(A)で、(B−1)層の厚みが0.4mm、(B−2)層の厚みが1.6mm、また 基布(A)への(B−1)層の含浸比率は25%であった。
【0075】
<基布(A―1)>
コットン50%、ナイロン40%、及びスパンデックス10%を含有する30番手糸を用い、目付82g/m
2、密度0.4g/cm
3の平織り布を基布(A―1)とした。
【0076】
<基布(A−2)>
ポリエステル65%、レーヨン35%を含有する60番手糸を、60ゲージで丸編みした布を基布(A−2)とした。
【0077】
<基布(A−3)>
二軸押出機(口径46mm、L/D=46)を使用して、実施例13に用いた樹脂組成物(B−1)と(B−2)をそれぞれ2台の単軸押出機(口径40mm、L/D=24、押出温度290℃)に投入し、これらの樹脂組成物(B−1)及び(B−2)を吐出量比率(B−1)/(B−2)=1/3で押出し、芯鞘複合メルトブローン装置にて芯部が樹脂組成物(B−2)からなり、鞘部が樹脂組成物(B−1)から構成され、平均繊維直径15μm、平均重量100g/m
2、繊維全断面積中の鞘部の面積比率が25%である芯鞘複合繊維からなる不織布層(A−3)を離型フィルム(銘柄:ルミラー S−10#50、厚み=50μm)上に得た。
【0078】
<基布(A−4)>
厚み0.3mm、重量200g/m
2の紙を基布(A−4)とした。
【0079】
<ブロック共重合体(a1)の製造>
特許第2703335号、或いは特開2003−128870号に準じ、乾燥し窒素で置換された耐圧反応器で、溶媒としてシクロヘキサン、開始剤としてn−ブチルリチウム、場合によっては共触媒を用い、スチレンモノマー、イソプレンモノマー、スチレンモノマーの順に添加し重合することによりA−B−Aの構造を有するブロック共重合体を得た後、シクロヘキサン中で、Pd−Cを触媒として用いて水素圧20kg/cm
2で水素反応を行い、水添ブロック共重合体(a1)を得た。これらのブロック共重合体水添物の分子特性を下記に示した。
【0080】
<ブロック共重合体(a1)>
・(a1−1)
種類:スチレンーイソプレンースチレン型トリブロック共重合体の水添ブロック共重合体、ビニル結合含有量73モル%、スチレン含有量20重量%
・(a1−2)
種類:スチレンーイソプレンースチレン型トリブロック共重合体の水添ブロック共重合体、ビニル結合含有量55モル%、スチレン含有量32重量%
・(a1−3)
種類:スチレンーイソプレンースチレン型トリブロック共重合体の水添ブロック共重合体、ビニル結合含有量50モル%、スチレン含有量29重量%
【0081】
<ブロック共重合体(a2)>
乾燥し窒素で置換された耐圧反応器で、溶媒としてシクロヘキサン、開始剤としてn−ブチルリチウム、場合によっては共触媒を用い、スチレンモノマー、イソプレンモノマーおよび1,3−ブタジエンモノマーの混合液、スチレンモノマーの順に添加し重合することによりA−B−Aの構造を有するブロック共重合体を得た後、シクロヘキサン中で、Pd−Cを触媒として用いて水素圧20kg/cm
2で水素反応を行い、それぞれ水添ブロック共重合体(a2)を得た。これらのブロック共重合体水添物の分子特性を下記に示した。
・(a2−1)
種類:スチレン−イソプレン・ブタジエン−スチレン型トリブロック共重合体の水添ブロック共重合体、ビニル結合含有量40モル%、スチレン含有量34重量%
・(a2−2)
種類:スチレン−イソプレン・ブタジエン−スチレン型トリブロック共重合体の水添ブロック共重合体、ビニル結合含有量20モル%、スチレン含有量33重量%
・(a2−3)
種類:スチレン−ブタジエン−スチレン型トリブロック共重合体の水添ブロック共重合体、ビニル結合含有量8モル%
【0082】
<炭化水素系ゴム用軟化剤(b)>
ダイアナプロセスオイルPW−380(商品名)、出光石油化学株式会社製、パラフィン系オイル、動粘度(40℃):381.6mm
2/s、環分析パラフィン:73%、環分析ナフテン:27%、重量平均分子量:1304
【0083】
<ポリオレフィン系重合体(c)>
ポリプロピレン プライムポリプロ F219DA(商品名)、株式会社プライムポリマー製、MFR(230℃):0.5g/10分
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】
【表3】
【0087】
表1〜2に示すとおり、本発明の熱可塑性エラストマーと軟化剤とポリオレフィン系樹脂を含む樹脂組成物で構成され、(a)成分中のビニル結合含有量、軟化剤(b)含有量、及びポリオレフィン系樹脂(c)含有量が所定の範囲内にある(B−1)層、(B−2)層および基布(A)で少なくとも構成される構造体(積層体)である実施例1〜19は、制振性、静音性、非粘着性、及び施工性に優れる。
【0088】
表3に示すとおり、比較例1は、実施例1の(B−1)層を構成する樹脂組成物及び(B−2)を構成する樹脂組成物をそれぞれ等重量部ブレンドした樹脂を単軸押出機(口径40mm、L/D=24、230℃)を使用してペレット化した後、T型ダイス単軸押出ラミネート機(口径40mm、L/D=24、230℃)を用い、基布(A)に押出ラミネートし構造体(C)を得たが、得られた積層体は非粘着性が悪化する結果となった。
比較例2は、(B−2)層を構成する樹脂組成物の成分の1つである軟化剤(b)の添加量を10重量%超えとし、実施例1と同様に積層体を得たが、得られた積層体は非粘着性が悪化する結果となった。
比較例3は、(B−2)層を構成する樹脂組成物の成分の1つであるオレフィン系樹脂(c)の添加量を30重量%超えとし、実施例1と同様に積層体を得たが、得られた積層体は制振性、及び柔軟性が悪化する結果となった。
【0089】
比較例4は、(B−2)層を構成する樹脂組成物の樹脂成分(a)のビニル結合含有量を35%未満とし、実施例1と同様に積層体を得たが、得られた積層体は制振性が悪化する結果となった。
比較例5は、(B−2)層を構成する樹脂組成物の樹脂成分の1つである樹脂(a)を除き、実施例1と同様に積層体を得ようとしたが、積層体の表面荒れが顕著で成形性が不十分であり、良好な積層体が得られなかった。
比較例6は、(B−1)層を構成する樹脂組成物の成分の1つである軟化剤(b)の添加量を10重量%未満とし、実施例1と同様に積層体を得たが、得られた積層体は柔軟性が悪化する結果となった。
比較例7は、(B−1)層を構成する樹脂組成物の樹脂成分の1つであるポリオレフィン樹脂(c)の添加量を30%超えとし、実施例1と同様に積層体を得たが、得られた積層体は制振性、柔軟性が悪化する結果となった。
比較例8は、(B−1)を構成する樹脂組成物の樹脂成分の1つである樹脂(a)のビニル結合含有量を35%未満とし、実施例1と同様に積層体を得たが、得られた積層体は制振性が悪化する結果となった。
【0090】
表1〜3から、本発明の構造体(積層体)は、比較例にくらべ、制振性、消音性、非粘着性に優れ、かつ施工性(曲面への貼付性、貼付粘着性)などに優れていることがわかる。またこれらの実施例で得られた積層体を塩ビ壁紙の表層部に積層し、化粧シートを得たが、いずれも上記の優れた特性を有していた。