特許第6851918号(P6851918)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6851918
(24)【登録日】2021年3月12日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】ポリアミド系多層フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/34 20060101AFI20210322BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   B32B27/34
   B32B27/30 102
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-127843(P2017-127843)
(22)【出願日】2017年6月29日
(65)【公開番号】特開2019-10772(P2019-10772A)
(43)【公開日】2019年1月24日
【審査請求日】2020年4月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 直樹
(72)【発明者】
【氏名】吉崎 博幸
【審査官】 小石 真弓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−188774(JP,A)
【文献】 特開2008−188776(JP,A)
【文献】 特開2005−288923(JP,A)
【文献】 特開2010−131950(JP,A)
【文献】 特開2008−080686(JP,A)
【文献】 特開2011−161683(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド系多層フィルムであって、
(A)ナイロン-6を80〜95重量%及び非晶性芳香族ポリアミドを20〜5重量%含む層、
(B)ナイロン-6を80〜95重量%及び結晶性芳香族ポリアミドを20〜5重量%含む層、並びに
(C)エチレン含有量が20〜35モル%であるエチレン-ビニルアルコール共重合体を含む層を含み、
A/B/C/B/Aの順で積層されてなる、
ことを特徴とするポリアミド系多層フィルム。
【請求項2】
前記(A)層に含まれる非晶性芳香族ポリアミドが、脂肪族ジアミンと、ジカルボン酸又はその誘導体との重縮合反応で得られる非晶性芳香族ポリアミドである、請求項1に記載のポリアミド系多層フィルム。
【請求項3】
前記(A)層に含まれる非晶性芳香族ポリアミドが、ヘキサメチレンジアミン-テレフタル酸-ヘキサメチレンジアミン-イソフタル酸の共重合体である、請求項1又は2に記載のポリアミド系多層フィルム。
【請求項4】
前記(B)層に含まれる結晶性芳香族ポリアミドが、芳香族ジアミンと、ジカルボン酸又はその誘導体との重縮合反応で得られる結晶性芳香族ポリアミドである、請求項1〜3のいずれかに記載のポリアミド系多層フィルム。
【請求項5】
前記(B)層に含まれる結晶性芳香族ポリアミドが、ポリメタキシリレンアジパミドである、請求項1〜4のいずれかに記載のポリアミド系多層フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリアミド系多層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ナイロン樹脂層を含む多層フィルムは、強靭であり、食品等の包装用として広く利用されている。食品包装フィルムには、更に、搬送、運搬等においてピンホールが生じない様に耐ピンホール性、つまりガスバリア性も要求される。
【0003】
本出願人は、既に、屈曲に耐えるソフト性と繰り返し接触による磨耗に耐える硬さとを備え、優れた耐ピンホール性を有するポリアミド系多層フィルムを開発した(特許文献1)。このポリアミド系多層フィルムは、特徴的なポリアミド層(A)、ポリアミド層(B)、バリア層(C)が、A/B/C/B/A等の順で積層された構成である。このポリアミド系多層フィルムは、印刷やラミネート時のテンションや熱によるフィルムの伸長が少なく加工適正に優れている。このポリアミド系多層フィルムは、また、延伸性、突刺強度、衝撃強度に優れており、重量物の包装、取り分け、餅、ウィンナー等の食品の包装に好適である。
【0004】
食品の包装用途に用いる場合、このポリアミド系多層フィルムに印刷を施すことや、ポリオレフィン系フィルム等を更にラミネートすることで、使用されることが多い。
【0005】
しかしながら、印刷工程やラミネート工程では、フィルムにテンションをかけ、更に熱がかかることから、フィルムが伸びてしまい、印刷柄にズレや歪みが発生することや、ラミネートフィルムとのズレが発生し、後工程の製袋時に袋の表面の図柄と裏面の図柄がずれてしまうことがあった。
【0006】
本出願人は、このような不具合に対し、テンションや熱に対し伸びの非常に小さいポリアミド系多層フィルムを開発している(特許文献2)。
【0007】
現在、食品包装用フィルムには、上記強靭性やガスバリア性、又、熱やテンションに対する寸法安定性に加えて、製袋品の開封性をより良好にする目的で、カット性が良好であることも要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008-188774
【特許文献2】特開2011-161682
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、製袋品の開封性を向上させるため、カット性が改善されたポリアミド系多層フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記の課題を解決するため鋭意研究を行った結果、ポリアミド系多層フィルムが、特定のポリアミドを含む層とエチレン-ビニルアルコール共重合体を含む層とから構成されことで、強靭性やガスバリア性に加えて、カット性も良好であることを見出した。
【0011】
この知見に基づき、更に研究を重ねて本発明を完成するに至った。
【0012】
本発明は、以下のポリアミド系多層フィルム及びその製造方法を提供する。
【0013】
項1.
ポリアミド系多層フィルムであって、
(A)ナイロン-6を80〜95重量%及び非晶性芳香族ポリアミドを20〜5重量%含む層、
(B)ナイロン-6を80〜95重量%及び結晶性芳香族ポリアミドを20〜5重量%含む層、並びに
(C)エチレン含有量が20〜35モル%であるエチレン-ビニルアルコール共重合体を含む層を含み、
A/B/C/B/Aの順で積層されてなる、
ことを特徴とするポリアミド系多層フィルム。
【0014】
項2.
前記(A)層に含まれる非晶性芳香族ポリアミドが、脂肪族ジアミンと、ジカルボン酸又はその誘導体との重縮合反応で得られる非晶性芳香族ポリアミドである、請求項1に記載のポリアミド系多層フィルム。
【0015】
項3.
前記(A)層に含まれる非晶性芳香族ポリアミドが、ヘキサメチレンジアミン-テレフタル酸-ヘキサメチレンジアミン-イソフタル酸の共重合体である、請求項1又は2に記載のポリアミド系多層フィルム。
【0016】
項4.
前記(B)層に含まれる結晶性芳香族ポリアミドが、芳香族ジアミンと、ジカルボン酸又はその誘導体との重縮合反応で得られる結晶性芳香族ポリアミドである、請求項1〜3のいずれかに記載のポリアミド系多層フィルム。
【0017】
項5.
前記(B)層に含まれる結晶性芳香族ポリアミドが、ポリメタキシリレンアジパミドである、請求項1〜4のいずれかに記載のポリアミド系多層フィルム。
【発明の効果】
【0018】
本発明のポリアミド系多層フィルムは、強靭性やガスバリア性に加えて、カット性も良好である。
【0019】
本発明のポリアミド系多層フィルムを食品包装用フィルムに用いると、強靭性やガスバリア性に加えて、カット性が良好であり、製袋品の開封性がより良好な食品包装袋を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、ポリアミド系多層フィルムに関する。
【0021】
(1)ポリアミド系多層フィルム
本発明のポリアミド系多層フィルムは、
(A)ナイロン-6を80〜95重量%及び非晶性芳香族ポリアミドを20〜5重量%含む層、
(B)ナイロン-6を80〜95重量%及び結晶性芳香族ポリアミドを20〜5重量%含む層、並びに
(C)エチレン含有量が20〜35モル%であるエチレン-ビニルアルコール共重合体を含む層を含み、
A/B/C/B/Aの順で積層されてなる、ことを特徴とする。
【0022】
(A)ナイロン-6を80〜95重量%及び非晶性芳香族ポリアミドを20〜5重量%含む層は、耐摩耗性、耐屈曲性、耐突刺性等の耐ピンホール性を発揮し、ラミネート強度を向上させる層(ポリアミド層)である。
【0023】
(B)ナイロン-6を80〜95重量%及び結晶性芳香族ポリアミドを20〜5重量%含む層は、耐摩耗性、耐屈曲性、耐突刺性等の耐ピンホール性を発揮し、剛性、耐熱性、乾熱収縮抑制を発揮する層(ポリアミド層)である。
【0024】
(C)エチレン含有量が20〜35モル%であるエチレン-ビニルアルコール共重合体を含む層は、酸素バリア性、剛性を発揮する層(バリア層)である。
【0025】
本発明のポリアミド系多層フィルムは、酸素バリア性の(C)層の両面を、耐ピンホール性等を備えた2層の(B)層(ポリアミド層)と、耐ピンホール性等を備えた2層の(A)層(ポリアミド層)とで夫々サンドイッチし、少なくとも5層の積層構造を有している。
【0026】
本発明のポリアミド系多層フィルムを包装用途で使用する場合、一方の面に接着剤層、シール層を有することが好ましい。
【0027】
本発明のポリアミド系多層フィルムは、強靭性やガスバリア性に加えて、カット性が良好である。本発明のポリアミド系多層フィルムは、テンションや熱によるフィルムの伸長が少ないため加工適正に優れるというメリットも有している。
【0028】
(1-1)(A)層(ポリアミド層)
本発明のポリアミド系多層フィルムの(A)層は、ナイロン-6を80〜95重量%及び非晶性芳香族ポリアミドを20〜5重量%含む層である。
【0029】
(A)層に含まれる非晶性芳香族ポリアミドは、脂肪族ジアミンと、ジカルボン酸又はその誘導体との重縮合反応で得られる非晶性芳香族ポリアミドであることが好ましい。その非晶性芳香族ポリアミドは、ヘキサメチレンジアミン-テレフタル酸-ヘキサメチレンジアミン-イソフタル酸の共重合体であることが好ましい
(A)層は、ナイロン-6(ポリカプラミド)を80〜95重量%含み、好ましくは84〜92重量%、より好ましくは86〜90重量%含む。(A)層がナイロン-6を含むことで、ポリアミド系多層フィルムに、耐摩耗性、耐屈曲性、耐突刺性等の耐ピンホール性を付与する。
【0030】
(A)層は、非晶性芳香族ポリアミドを20〜5重量%含み、好ましくは16〜8重量%、より好ましくは14〜10重量%含む。(A)層が非晶性芳香族ポリアミドを含むことで、ポリアミド系多層フィルムを包装用途で用いる場合、接着剤層やシール層とのラミネート強度を向上させることができる。
【0031】
非晶性芳香族ポリアミド(アモルファスナイロン)として、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミンと、テレフタル酸、イソフタル酸等のジカルボン酸又はその誘導体との重縮合反応で得られる非晶性芳香族ポリアミドであることが好ましい。
【0032】
非晶性芳香族ポリアミドとして、好ましいものは、ヘキサメチレンジアミン-イソフタル酸の重合体、ヘキサメチレンジアミン-テレフタル酸の重合体、ヘキサメチレンジアミン-テレフタル酸-ヘキサメチレンジアミン-イソフタル酸の共重合体等である。例えば、三井・デュポンポリケミカル(株)製のシーラーPA(ヘキサメチレンジアミン-テレフタル酸-ヘキサメチレンジアミン-イソフタル酸の共重合体)を例示することできる。
【0033】
(A)層には、フィルム表面に微視的な凹凸を作り、アンチブロッキング効果を付与する目的で、アンチブロッキング剤を適宜配合することができる。(A)層にアンチブロッキング剤を適宜配合することで、フィルム走行性等の加工適性が向上する。
【0034】
(A)層は、ポリアミド系多層フィルムにおいて、耐摩耗性、耐屈曲性、耐突刺性等の耐ピンホール性を発揮し、ラミネート強度を向上させる。
【0035】
(1-2)(B)層(ポリアミド層)
本発明のポリアミド系多層フィルムの(B)層は、ナイロン-6及び結晶性芳香族ポリアミドを含む層である。
【0036】
(B)層が、ナイロン-6を80〜95重量%及び結晶性芳香族ポリアミドを20〜5重量%含む層であることが好ましい。
【0037】
(B)層に含まれる結晶性芳香族ポリアミドは、芳香族ジアミンと、ジカルボン酸又はその誘導体との重縮合反応で得られる結晶性芳香族ポリアミドであることが好ましい。その結晶性芳香族ポリアミドは、ポリメタキシリレンアジパミドであることが好ましい。
【0038】
(B)層は、ナイロン-6(ポリカプラミド)を好ましくは80〜95重量%含み、より好ましくは82〜93重量%、更に好ましくは84〜91重量%含む。(B)層がナイロン-6を含むことで、ポリアミド系多層フィルムに、耐屈曲性、耐突刺性等の耐ピンホール性を付与する。
【0039】
(B)層は、結晶性芳香族ポリアミドを好ましくは20〜5重量%含み、より好ましくは18〜7重量%、更に好ましくは16〜9重量%含む。(B)層が結晶性芳香族ポリアミドを含むことで、ポリアミド系多層フィルムに、剛性、耐熱性、耐乾熱収縮抑制等を付与する。
【0040】
結晶性芳香族ポリアミドとして、メタキシレンジアミン、パラキシレンジアミン等の芳香族ジアミンと、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等のジカルボン酸又はその誘導体との重縮合反応で得られる結晶性芳香族ポリアミドであることが好ましい。具体的には、キシリレンジアミン系ポリアミドである。
【0041】
結晶性芳香族ポリアミドとして、好ましいものは、メタキシリレンジアミンとアジピン酸からなるポリアミド、即ちポリメタキシレンアジパミド等である。例えば、三菱ガス化学(株)製のS-6007、S-6011(MXナイロン)を使用することが可能である。
【0042】
(B)層は、ポリアミド系多層フィルムにおいて、剛性、耐熱性、乾熱収縮抑制を発揮する。
【0043】
(1-3)(C)層(バリア層)
本発明のポリアミド系多層フィルムの(C)層は、エチレン含有量が20〜35モル%であるエチレン-ビニルアルコール共重合体を含む層である。(C)層は、ポリアミド系多層フィルムに、酸素バリア性、剛性を付与する。
【0044】
(C)層は、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)で構成されるので、ポリアミド系多層フィルムに、酸素、窒素、二酸化炭素等のガスの透過性の低い層を設け、つまりガスバリア性を付与する。
【0045】
エチレン-ビニルアルコール共重合体のエチレン含有量は20〜35モル%であり、好ましくは22〜28モル%、より好ましくは24〜26モル%である。
【0046】
エチレン-ビニルアルコール共重合体の酢酸ビニル成分のケン化度は、好ましくは90モル%以上であり、より好ましくは95モル%以上である。
【0047】
また、エチレン-ビニルアルコール共重合体のメルトインデクサー(MFR)(210℃、2160g)は、好ましくは1〜35 g/10min、より好ましくは2〜10 g/10minである。
【0048】
例えば、日本合成化学(株)製のV2504RBを使用することが可能である。
【0049】
(C)層は、酸素バリア性を発揮する層(バリア層)である。
【0050】
(1-4)層構成
本発明のポリアミド系多層フィルムは、前記(A)層、(B)層、並びに(C)層が、A/B/C/B/Aの順で積層されてなる。
【0051】
2つの(A)層(ポリアミド層)及び2つの(B)層(ポリアミド層)の組成及び配合量は、夫々同一又は異なっていても良いが、多層フィルムの製造における簡便さやカール等の点から、同一であることが好ましい。
【0052】
本発明のポリアミド系多層フィルムの総厚みは、12〜20μmであることが好ましい。ポリアミド系多層フィルムの総厚みは、より好ましくは14〜18μm、更に好ましくは15〜17μmである。
【0053】
(A)層の厚みは、例えば2層合計で、好ましくは4〜13μm、より好ましくは5〜12μm、更に好ましくは6〜11μmである。
【0054】
(B)層の厚みは、例えば2層合計で、好ましくは3〜10μm、より好ましくは4〜9μm、更に好ましくは5〜8μmである。
【0055】
(C)層の厚みは、例えば1層で、好ましくは0.5〜3μm、より好ましくは1.0〜2.5μm、更に好ましくは1.5〜2.0μmである。
【0056】
(2)ポリアミド系多層フィルムの製造方法
本発明のポリアミド系多層フィルムは、
(1)(A)層用樹脂組成物、(B)層用樹脂組成物、及び(C)層用樹脂組成物を、A/B/C/B/Aの順になるように共押出により積層する工程、
(2)前記工程(1)で得られた積層物を縦横2軸に延伸する工程、及び
(3)前記工程(2)で得られた延伸物を加熱処理する工程を含む製造方法によって、
製造されることが好ましい。
【0057】
工程(1)
(A)層用樹脂組成物、(B)層用樹脂組成物、及び(C)層用樹脂組成物を、A/B/C/B/Aの順になるように共押出により積層することが好ましい。例えば、Tダイスより、冷却水が循環するチルロール上に共押出せしめ、フラット状の多層フィルムとして得ることができる。
【0058】
工程(2)
前記工程(1)で得られた積層物を縦横2軸に延伸することが好ましい。得られた石造物(フィルム)は、一軸延伸又は二軸延伸(同時二軸延伸、逐次二軸延伸)しても良い。
【0059】
延伸倍率は、例えば、縦延伸(MD)2.5〜4.5倍、横延伸(TD)2.5〜5倍とすることが好ましい。
【0060】
例えば、逐次二軸延伸の場合、50〜80℃のロール延伸機により2.5〜4.5倍に縦延伸し、80〜140℃の雰囲気のテンター延伸機により2.5〜5倍に横延伸せしめることが好ましい。
【0061】
工程(3)
前記工程(2)で得られた延伸物を加熱処理することが好ましい。工程(2)に引き続き、同テンターにより180〜220℃雰囲気中で熱処理して得ることが好ましい。
【0062】
本発明のポリアミド系多層フィルムは、一軸延伸又は二軸延伸(同時二軸延伸、逐次二軸延伸)しても良く、必要ならばその両表面又は片表面にコロナ放電処理を施すこともできる。
【0063】
(3)ポリアミド系多層フィルムの使用態様
本発明のポリアミド系多層フィルムは、強靭性やガスバリア性に加えて、カット性が良好である。本発明のポリアミド系多層フィルムは、テンションや熱によるフィルムの伸長が少ないため加工適正に優れるというメリットも有している。
【0064】
本発明のポリアミド系多層フィルムは包装用袋の基材として用いられることが好ましい。その包装用袋は、食品包装用であることが好ましい。
【0065】
本発明のポリアミド系多層フィルムは、強靭性やガスバリア性に加えて、袋を開封する際のカット性に優れている。
【0066】
本発明のポリアミド系多層フィルムを食品包装用フィルムに用いると、強靭性やガスバリア性に加えて、カット性が良好であり、製袋品の開封がより良好な食品包装を製造することができる。
【0067】
本発明のポリアミド系多層フィルムは、餅、ウィンナー等の酸素による影響を受け易い食品の包装等に好適である。本発明のポリアミド系多層フィルムは、低温の状態で輸送される冷凍食品の包装にも好適である。本発明のポリアミド系多層フィルムは、高い透明性を有しているため、食品包装物としたとき内容物(食品)の目視が容易である。
【実施例】
【0068】
以下に、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0069】
(1)ポリアミド系多層フィルムの原料
ポリアミド系多層フィルムの原料を示した(表1)。
【0070】
【表1】
【0071】
(2)ポリアミド系多層フィルムの製造
ポリアミド系多層フィルムは、表2及び表3に記載の割合で調整した。
【0072】
(A)層用樹脂組成物、(B)層用樹脂組成物、及び(C)層用樹脂組成物を、夫々バレル温度180〜260℃の押出機に投入し、A/B/C/B/Aの順になるように250℃の多層ダイより押出し、20〜40℃のチルロールで冷却固化し、フラット状の5層フィルムを得た。
【0073】
次いで、得られた5層フィルムを、50〜60℃のロール延伸機で縦方向(MD方向)に2.8倍に延伸し、次いで110℃の雰囲気温度のテンター延伸機で横方向(TD方向)に4.0倍に延伸し、更に同テンター内で210℃の雰囲気中で熱処理して5層延伸フィルムを得た。
【0074】
A層はシリカ系のアンチブロッキング剤を含む。
【0075】
【表2】
【0076】
【表3】
【0077】
(3)ポリアミド系多層フィルムの評価
(A)引裂伝播強度
測定サンプルの作製
得られた5層延伸フィルムを、フィルムTD方向に沿って長辺63.5±0.5mm、フィルムTD方向と垂直方向に短辺50mmの長方形にカットし、測定サンプルを作製した。
【0078】
次に、当該測定サンプルの短辺の中央(試験片の端部から25mmの位置)に、長辺と平行に長さ12.7±0.5mmの切り込みを入れた。
【0079】
測定方法
測定機器は、東洋精機製作所製の軽荷重引裂試験機Dタイプを用いた。
【0080】
各実施例及び比較例につき、合計5回の測定を行ない、夫々の平均値を算出した。
【0081】
評価基準
測定平均値が100mN以下の場合を○(良好)とし、100mNを超える場合を×(不良)とした。
【0082】
(B)ラミネート強度
測定サンプルの作製
得られた5層延伸フィルムの一方の表面の濡れ張力が56mN/mになるようコロナ処理を施し、そのフィルム表面をシーラントフィルム(三井化学東セロ株式会社製MC-S、厚み:30μm)と押出ラミネート加工により貼り合わせて、ラミネートフィルムを作製した。押出ラミネート層の厚みは20μmであった。
【0083】
次に、当該ラミネートフィルムのMD方向に長さ7cm、TD方向に長さ20cmにカットした2枚のフィルムの内面同士を、株式会社東洋精機製作所製熱傾斜試験機HG-100-2を用い、シール温度:150℃、圧力:0.26MPa、加圧時間:1秒の条件で熱融着した。熱融着した部分が10mmの幅になるよう短冊状にカットした測定サンプルを作製した。
【0084】
測定方法
測定機器は、株式会社東洋精機製作所製のストログラフVE1Dを用いた。
【0085】
短冊状にカットした測定サンプルをフィルムMD方向に引張り、熱融着した部分が剥離する時の応力を測定した。
【0086】
各実施例及び比較例につき、合計5回の測定を行ない、夫々の平均値を算出した。
【0087】
評価基準
測定平均値が33N/cm以上の場合を○(良好)とし、33N/cm未満の場合を×(不良)とした。
【0088】
(C)耐屈曲性
測定サンプルの作製
得られた5層延伸フィルムを、MD方向に約35cm×TD方向に約36cmのサンプルをカットした。
【0089】
次に、フィルムの内面と内面を合わせ、測定型紙を中にはさみ、折り曲げてMD方向にシール機でシールし、シールした部分に沿って余分なところを切って、測定サンプルを作製した。
【0090】
測定方法
測定機器は、テスター産業製の恒温槽付ゲルボフレックステスターBE-1006を用いた。
【0091】
測定サンプルを1000回屈曲させた。その後、サンプルのほぼ真ん中に10cm間標線を入れ、標線の片方をシール器でシール後、シールチェッカーを用いてピンホール発生個数をカウントした。
【0092】
各実施例及び比較例につき、合計3回の測定を行ない、夫々の平均値を算出した。
【0093】
評価基準
測定平均値が21個未満の場合を○(良好)とし、21個以上の場合を×(不良)とした。
【0094】
(4)ポリアミド系多層フィルムの評価結果
各評価の結果は表4及び表5に示した。
【0095】
本発明のポリアミド系多層フィルム(実施例1〜8)は、(A)ナイロン-6を80〜95重量%及び非晶性芳香族ポリアミドを20〜5重量%含む層、(B)ナイロン-6を80〜95重量%及び結晶性芳香族ポリアミドを20〜5重量%含む層、並びに(C)エチレン含有量が20〜35モル%であるエチレン-ビニルアルコール共重合体を含む層を含み、A/B/C/B/Aの順で積層されてなることで、カット性が良好である。
【0096】
更に本発明のポリアミド系多層フィルムは、ラミネート強度も高い。
【0097】
【表4】
【0098】
【表5】
【0099】
本発明のポリアミド系多層フィルムを食品包装用フィルムに用いると、強靭性やガスバリア性に加えて、カット性が良好であり、ラミネート剥離の少ない食品包装袋を製造することができる。