特許第6851922号(P6851922)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6851922ハンドル、燃料ホルダ、その組立体及び位置決め方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6851922
(24)【登録日】2021年3月12日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】ハンドル、燃料ホルダ、その組立体及び位置決め方法
(51)【国際特許分類】
   G21C 19/32 20060101AFI20210322BHJP
   G21F 5/012 20060101ALI20210322BHJP
   G21F 5/008 20060101ALI20210322BHJP
   G21F 9/36 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   G21C19/32 040
   G21F5/012
   G21F5/008
   G21F9/36 501G
   G21F9/36 501H
【請求項の数】16
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-136903(P2017-136903)
(22)【出願日】2017年7月13日
(65)【公開番号】特開2019-20185(P2019-20185A)
(43)【公開日】2019年2月7日
【審査請求日】2019年12月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229461
【氏名又は名称】株式会社グローバル・ニュークリア・フュエル・ジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100152205
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 昌司
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】早川 啓朗
(72)【発明者】
【氏名】田口 喜彦
(72)【発明者】
【氏名】樋ヶ 智章
【審査官】 鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭62−065486(JP,U)
【文献】 特開2000−329891(JP,A)
【文献】 米国特許第05121849(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 19/32
G21C 19/06
G21C 19/19
G21F 5/008− 5/012
G21F 9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形状の上蓋と結合する筐体を備え、核燃料体を収納可能な燃料ホルダと、
底部と、底部に結合され略コの字形状を有する上部と備えるハンドルと、
燃料ホルダとハンドルとを脱着可能に締結する締結部材と、
を備え、
上蓋と底部のそれぞれが、
中央部に位置し、締結部材を係合する締結穴と、
燃料ホルダとハンドルとを前記燃料ホルダの軸方向と直交する方向に位置決めする少なくとも1つの位置決め部と、
を備える、
燃料ホルダ組立体。
【請求項2】
前記上蓋と前記底部のうちの一方に配置された位置決め部の少なくとも1つが、位置決めピンであり、
前記上蓋と前記底部のうちの他方に配置された位置決め部の少なくとも1つが、前記位置決めピンと係合する位置決め係合部である、
請求項1に記載の燃料ホルダ組立体。
【請求項3】
前記位置決め部の端部が面取りされている、請求項2に記載の燃料ホルダ組立体。
【請求項4】
前記位置決め係合部が、位置決め溝であり、
前記位置決めピンが、前記上蓋と前記底部のうちの一方と平行な方向に延びる、請求項2または3に記載の燃料ホルダ組立体。
【請求項5】
前記上蓋および前記底部のそれぞれが、複数の位置決め部を備える、請求項1から4のいずれかに記載の燃料ホルダ組立体。
【請求項6】
前記複数の位置決め部が、前記締結穴に対して対称な位置に配置される、請求項5に記載の燃料ホルダ組立体。
【請求項7】
前記締結穴および前記複数の位置決め部が、直線上に配置される、請求項5または6に記載の燃料ホルダ組立体。
【請求項8】
前記上蓋に配置された位置決め部が、前記上蓋の対角線上に配置される、請求項1から7のいずれかに記載の燃料ホルダ組立体。
【請求項9】
前記底部が、前記底部と前記上部との結合位置を超えて外側に延びる延長部を有し、
前記位置決め部が、前記延長部に配置されている、
請求項1から8のいずれかに記載の燃料ホルダ組立体。
【請求項10】
前記上蓋に設けられた位置決め部のうちの少なくとも1つが、前記上蓋の側面に設けられている、請求項1から9のいずれかに記載の燃料ホルダ組立体。
【請求項11】
前記底部が、前記底部の長手方向とは異なる方向に延びる延長部を有し、
前記位置決め部が、前記延長部に配置されている、
請求項1から8のいずれかに記載の燃料ホルダ組立体。
【請求項12】
前記上蓋が、前記上蓋の上面から上方に向かって、前記上蓋の締結穴の周囲に延びるネジ被締結部を有し、
前記上蓋に設けられた位置決め部のうちの少なくとも1つが、前記ネジ被締結部の側面に配置された平坦部であり、
前記底部に設けられた位置決め部の少なくとも1つが、前記底部の底面よりも下方に延びて、前記平坦部と係合する突出部である、
請求項1に記載の燃料ホルダ組立体。
【請求項13】
ハンドルと締結部材の間に、締結部材の落下防止のための接続部が設けられている、請求項1から12のいずれかに記載の燃料ホルダ組立体。
【請求項14】
ハンドルの底部に設けられた少なくとも1つの位置決め部と、対応する燃料ホルダの位
置決め部とを係合し、それにより、前記ハンドルと前記燃料ホルダとを前記燃料ホルダの軸方向と直交する方向に位置決めするステップと、
締結部材を、ハンドルの締結穴を通して、燃料ホルダの締結穴と係合し、ハンドルと燃
料ホルダとを締結するステップと、
を含む、
位置決め方法。
【請求項15】
底部と、
前記底部に結合される略コの字形状の上部と、
を備え、
前記底部が、
中央部に配置され、燃料ホルダと締結するための締結部材を通す締結穴と、
前記燃料ホルダの軸方向と直交する方向に前記燃料ホルダとの位置決めを行う少なくとも1つの位置決め部と、
を備える、
ハンドル。
【請求項16】
矩形状の上蓋と結合する筐体を備え、核燃料体を収納可能な燃料ホルダであって、
前記上蓋が、
中央部に配置され、ハンドルと締結するための締結部材と係合する締結穴と、
前記燃料ホルダの軸方向と直交する方向に前記ハンドルとの位置決めを行う少なくとも1つの位置決め部と、
を備える、
燃料ホルダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料ホルダとハンドルとの位置決めに関し、特に、位置決め部を有するハンドル、燃料ホルダおよびその組立体、ならびに位置決め方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子炉用の核燃料体(燃料集合体)を輸送する際には、核燃料体を角筒状の燃料ホルダに収容し、さらに燃料ホルダを燃料輸送容器に装荷して、燃料輸送容器をトラックや船などの輸送手段で輸送を行うことが一般的である(特許文献1参照)。核燃料体を収容する燃料ホルダは核燃料を収容していない状態での保管中や燃料輸送容器に装荷された状態での輸送中には水平な状態で横置きされるが、核燃料体の収容や燃料輸送容器への装荷を行う際には、縦置きの状態で作業を行うため、クレーンで燃料ホルダをたて起こし、必要に応じて空中に吊り上げる。
【0003】
図2に燃料ホルダ10のたて起こしの状態を示す。燃料ホルダ10は、角筒状の筐体11と、筐体11の上部および下部の開口部に設けられた上蓋12および底蓋28を有する。中空の筐体11内部には、核燃料体19を収容することができる。上蓋12には、中央部にハンドル14を取付けるためのネジ被締結部13が設けられている。
【0004】
たて起こしは、燃料ホルダ10は作業台29の上に水平に置かれた状態から始まる。まず、核燃料体19を収容した燃料ホルダ10とハンドル14とを、締結部材であるボルト17によって締結する。本願では、燃料ホルダ10にハンドル14を取付けたものを、「燃料ホルダ組立体」と呼ぶ。燃料ホルダ組立体のハンドル14を、ワイヤなどの吊り具16の先端に設けられた掴み部15により把持し、吊り具16をクレーンなどで矢印Cの方向に引き上げる。これにより、燃料ホルダ10は水平な横置き状態から縦置き状態にたて起こすことができる。たて起こし完了後、さらに吊り具16をクレーンで上方に引き上げる。すると、燃料ホルダ10は作業台29から離れ、図3に示すように空中に吊られた状態となる。
【0005】
たて起こし作業や吊り作業にあたっては、作業の対象となる燃料ホルダ組立体の健全性や落下等の異常の発生を防止し、作業者等の安全を確保できる必要がある。さらに、核燃料体が収容されている場合には、核燃料体の健全性の健全性が維持できるとともに、作業者の被ばく線量を低減するため、ハンドル14を掴み部15により短時間で確実に掴むことができ、かつ、上蓋12に対してハンドル14を短時間で確実に着脱できることが求められる。また、燃料ホルダ10を精度よく姿勢制御するために、ハンドル14が燃料ホルダ10に正確に位置決めされて取付けられている必要がある。
【0006】
ところが、従来の燃料ホルダ組立体は、上蓋12とハンドル14とをボルト17で締結することにより位置決めを行っていたため、基準位置からのずれ量やそのばらつきが大きいという問題があった。
【0007】
図4は、従来の燃料ホルダ組立体における位置ずれの様子を示す。図4は、従来の燃料ホルダ組立体を上方からみた平面図であり、説明の都合上、上蓋12のネジ被締結部13のネジ穴56の中心をO、ハンドルの長手方向をX軸、X軸に垂直な方向をY軸とおく。実線で示した位置40がハンドルの基準位置40である。
【0008】
ボルト17は、ハンドル14の締結穴36を貫通して上蓋12の締結穴のネジ部とネジ止めされるが、ボルト17のボルトネジ部56とハンドル14の締結穴36との間には隙間Gがあるため、中心点Oからの位置ずれが生じ得る。例えば、破線41は、基準位置40からX方向およびY方向に平行にずれたハンドルの状態を示す。また、点線42は、基準位置40から点Oを中心に回転方向の位置ずれが生じている状態を表している。その他の位置ずれの要因として、例えば、関係する各部品の寸法誤差(ネジの径、穴の径や位置、ハンドル枠部(ハンドルの上部、底部)の真直度等)による誤差等がある。
【0009】
このため、短時間で効率よく、ハンドル14を燃料ホルダ12に正確に位置決めして取り付けることが望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2016−40530号公報
【発明の概要】
【0011】
本発明に係る燃料ホルダ組立体の一態様は、矩形状の上蓋と結合する筐体を備え、核燃料体を収納可能な燃料ホルダと、底部と、底部に結合され略コの字形状を有する上部と備えるハンドルと、燃料ホルダとハンドルとを脱着可能に締結する締結部材とを備え、上蓋と底部のそれぞれが、中央部に位置し、締結部材を係合する締結穴と、燃料ホルダとハンドルとを位置決めする少なくとも1つの位置決め部とを備えることを特徴とする。燃料ホルダとハンドルとの双方に位置決め部を設けることにより、従来は締結部材が兼ねていた締結機能と位置決め機能を分離し、位置決め機能を位置決め部が担うことによって、所望の精度の位置決めを簡便で効率よく行うことが可能となる。
【0012】
ここで、燃料ホルダとハンドルに設けられた位置決め部は、一方が位置決めピンであり、他方が対応する位置決めピンと係合する位置決め係合部(穴、溝、切欠きなど)であることが望ましい。位置決めピンと位置決め係合部の構成により、所望する位置決め精度に応じた位置決め部の設計を容易に行うことができる。
【0013】
また、位置決め部(位置決めピン、位置決め係合部の一方または双方)の端部は、面取りされていることが望ましい。高い位置決め精度に対応するためには、位置決めピンと位置決め係合部とが係合した際の隙間を小さくする必要があるため、係合作業の効率に悪影響を与えるおそれがある。位置決め部の端部を面取りすることにより、位置決めピンが係合する際のガイドとなって、係合作業の効率の低下を防ぐことができる。
【0014】
さらに、位置決めピンは、ピンが配置される部材(上蓋またはハンドル底部)と平行な方向に延びて、対応する溝形状の位置決め係合部と係合する構成とすることが望ましい。位置決め部どうしの接触面積や位置決めピンの断面積を広くとることにより位置決め精度や機械的強度が増し、またハンドルを上下動により、簡単に燃料ホルダと着脱することが可能となる。
【0015】
さらに、燃料ホルダの上蓋とハンドルの底部のそれぞれに、複数の位置決め部を設けることが望ましい。位置決め精度を向上させ、また所望の仕様に応じた位置決め精度の設計を容易に行うことができる。ここで、複数の位置決め部が、前記締結穴に対して対称な位置に、望ましくは締結穴および前記複数の位置決め部が直線上に配置されることが望ましい。締結によって生ずる力や取り付け後の燃料ホルダ組立体の取扱い時のハンドルへの外力が、位置決め部に均等に分散されることにより、精度よい位置決めが可能となる。
【0016】
さらに、締結穴および前記位置決め部が、ハンドルの長手方向や、矩形状の上蓋の対角線上に配置されていることが望ましい。また、ハンドルの底部が、ハンドルの底部と上部との結合位置を超えて外側に延びる延長部を有し、延長部に位置決め部が配置されていることが望ましい。締結穴と位置決め部の距離が離れれば離れるほど精度のよい位置決めが可能となる。このため、位置決め部は、上蓋の表面ではなく側面に設けてもよい。また、ハンドルの位置決め部を、底部の長手方向とは異なる方向に延びる延長部に配置してもよい。
【0017】
また、上蓋が、上蓋の上面から上方に向かって、前記上蓋の締結穴の周囲に延びるネジ被締結部を有し、上蓋に設けられた位置決め部のうちの少なくとも1つが、ネジ被締結部の側面に配置された平坦部であり、底部に設けられた位置決め部の少なくとも1つが、底部の底面よりも下方に延びて、平坦部と係合する突出部であってもよい。
【0018】
本発明は、上述した燃料ホルダ組立体を構成するハンドルや燃料ホルダ、ハンドルと燃料ホルダとを位置決めする方法を含む。すなわち、本発明の一態様は、底部と、前記底部に結合される略コの字形状の上部とを備え、前記底部が、中央部に配置され、燃料ホルダと締結するための締結部材を通す締結穴と、燃料ホルダとの位置決めを行う少なくとも1つの位置決め部とを備えるハンドルである。また、本発明のさらに別の態様は、矩形状の上蓋と結合する筐体を備え、核燃料体を収納可能な燃料ホルダであって、前記上蓋が、中央部に配置され、ハンドルと締結するための締結部材と係合する締結穴と、ハンドルとの位置決めを行う少なくとも1つの位置決め部とを備える燃料ホルダである。本発明のさらに別の態様は、ハンドルの底部に設けられた少なくとも1つの位置決め部と、対応する燃料ホルダの位置決め部とを係合するステップと、締結部材を、ハンドルの締結穴を通して、燃料ホルダの締結穴に係合し、ハンドルと燃料ホルダとを締結するステップとを含む位置決め方法である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る燃料ホルダ組立体の使用方法の説明図である。
図2】燃料ホルダ組立体の使用方法(たて起こし)の説明図である。
図3】燃料ホルダ組立体の使用方法(吊上げ)の説明図である。
図4】従来の燃料ホルダ組立体における位置ずれの説明図である。
図5】本発明に係る燃料ホルダの上蓋の概略構成図である。
図6】本発明に係るハンドルの概略構成図である。
図7】本発明に係る燃料ホルダの(a)上蓋へのハンドルの位置決め方法、(b)使用方法の一例および(c)使用方法の変形例のフローチャートである。
図8】本発明に係る(a)燃料ホルダ組立体と(b)位置ずれ量の説明図である。
図9】本発明に係る燃料ホルダ組立体の概略構成図である。
図10】本発明に係る燃料ホルダ組立体の概略構成図である。
図11】本発明に係る(a)燃料ホルダ組立体の概略構成図と(b)部分拡大図である。
図12】本発明に係るハンドルの概略構成図である。
図13】本発明に係る燃料ホルダ組立体の概略構成図である。
図14】本発明に係る燃料ホルダ組立体の概略構成図である。
図15】本発明に係る燃料ホルダ組立体の概略構成図である。
図16】本発明に係る燃料ホルダとハンドルの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る燃料ホルダ組立体の概略構成および使用態様の例を図1に示す。燃料ホルダ10は、角筒状の筐体11と、筐体11の上部および下部の開口部に設けられた上蓋12および底蓋28を有する。中空の筐体11内部には、核燃料体19を収容することができる。上蓋12には、中央部にネジ被締結部13が設けられ、締結部材であるボルト17がハンドル14を貫通してネジ被締結部13の締結穴にネジ止めされることにより、ハンドル14と締結される。ハンドル14の底面には2つの位置決めピン18が配置され、燃料ホルダ10に設けられた位置決め穴と係合することによって、燃料ホルダ10とハンドル14とが位置決めされている。燃料ホルダ組立体は図2および図3に図示したようなたて起こし作業や吊り作業に供される。図1は、吊り具16による吊り作業を行っている状態を示している。
【0021】
次に、図5および図6を参照しながら、位置決めを行う燃料ホルダ10の上蓋12とハンドル14の構成を詳細に述べる。図5(a)は、燃料ホルダ10の上蓋12を上面からみた平面図、図5(b)は、図5(a)の線I−I’における断面図である。参考のために、締結されるハンドル14を破線で表示した。
【0022】
上蓋12は矩形状を有し、各角は面取りされている。それぞれの角の近傍には上蓋取付穴24が設けられ、上蓋取付穴24にボルトを通し、筐体11の対応する取付ネジ穴にネジ止めすることにより、上蓋12と筐体11とを締結する。上蓋12の中央部には、点Oを中心とする円筒状の凸部形状を有するネジ被締結部13が配置され、さらに、点Oを中心とし、上蓋12およびネジ被締結部13を貫通する締結穴22が形成されている。締結穴22の内側には、ハンドル14との締結を行うボルトのネジ部と係合するネジ溝が形成されている。
【0023】
締結穴22の両側には、ハンドル14の位置決めピン18と係合する位置決め係合部21が形成されている。位置決め係合部21は、円筒状の非貫通穴で、上端が面取り23されている。位置決めピン18は、位置決め係合部21の形状にあわせて、円形断面のピンを用いている。位置決めピン18は、位置決めを行いたい方向に変形をしながら位置決め係合部21の穴に挿入されてしまうと、要求される精度での適切な位置決めが行えない。したがって、たわみによる変形が防止できる太さ、材質に設定する(曲げ剛性を大きくする)必要がある。位置決めピン18が変形を伴わずに位置決め係合部21の穴に挿入される場合であっても、両部材の接触を伴って挿入されるような条件では、ハンドル14の着脱時の作業性が低下するおそれがある。位置決めピン18および位置決め係合部12の少なくとも一方の端部周縁部に面取り、または、R仕上げを設けることによって、ハンドル14取り付け時の位置決めピン14の挿入過程での作業性を向上させることができる。
【0024】
締結穴22とその両側に配置された位置決め係合部21は線I−I’上に整列され、2つの位置決め係合部21は締結穴22の中心Oに対して対称な位置に配置されている。すなわち、位置決め係合部21は、締結穴22の中心線IIから等しい距離Lだけ離れて配置されている。これによって、締結によって生ずる力や取り付け後の燃料ホルダ組立体の取扱い時のハンドルへの外力が、それぞれの位置決め部に均等に分散されることにより、精度よい位置決めが可能となる。
【0025】
図6(a)はハンドル14を上面からみた概略平面図、図6(b)は正面方向からみた概略正面図、図6(c)は、図6(b)と90度異なる側面方向からみた概略側面図である。ハンドル14の枠体は、2つの脚部と脚部の一端間を結合する連結部とを有する略コの字形状の上部33と、上部33のそれぞれの脚部の他端間を結合する底部32を有する。底部32は、脚部との結合位置から底部32の長手方向外側に延びる延長部34を有する。底部32の中央部には、下方および上方へ突出する凸部35を有する。上方へ突出する凸部35は、ボルト17の座面と接する基準面37’となる。下方へ突出する凸部35は、燃料ホルダ10の上蓋12のネジ被締結部13と接する基準面37となる。この基準面37とネジ被締結部13の上面により、底部32と垂直な方向(燃料ホルダ10の軸方向)の位置合わせを行う。また、底部32の中央部(凸部35の中央部)には、凸部35および底部32を貫通する締結穴36が形成されている。締結穴36は、ハンドル14と燃料ホルダ10とを締結するボルトが通る貫通穴である。基準面37と基準面37’は互いに平行に、締結穴36はこれらの基準面に直交する方向にそれぞれ機械加工により形成される。ここで、ハンドル14は上部33と底部32とを一体で機械加工により製造することにより、十分な位置精度を確保することが可能である。また、上部33と底部32とを別々機械加工した後に溶接等により結合させてもよい。この場合、上部33の脚部と底部32の間の取り付け状態には溶接の影響による寸法変化が生じ得るが、寸法変化量を確認した上で、基準面37、基準面37’、締結穴36を機械加工により形成することにより、必要とされる位置精度を確保することが可能である。
【0026】
底部32の延長部34の底面96から、燃料ホルダ10の位置決め係合部21と係合する円柱状の位置決めピン18が延びる。2つの位置決めピン18は、締結穴36のその両側に、締結穴36の中心に対して対称な位置に配置されている。すなわち、位置決めピン18は、締結穴36の中心線IIから等しい距離Lだけ離れて配置されている。これによって、締結によって生ずる力や取り付け後の燃料ホルダ組立体の取扱い時のハンドルへの外力が、それぞれの位置決め部に均等に分散されることにより、精度よい位置決めが可能となる。また、締結穴36と2つの位置決めピン18が直線上に配置されていることから、ハンドル14を上蓋12に取り付ける際にこれらの位置決め部を同時に視認できる。また、ハンドル14の底部の形状が複雑化することやハンドル14の質量が有意に増加することはない。さらに、位置決めピン18の下端部は、面取り25されている。位置決めピン18および位置決め係合部12の少なくとも一方の端部周縁部に面取り、または、R仕上げを設けることによって、ハンドル14の取り付け時における位置決めピン18の挿入過程での作業性を向上させることができる。このようにハンドルを上下動により、簡単に燃料ホルダと着脱することが可能となる。
【0027】
次に、本発明にかかる位置決め方法について、図7(a)のフローチャートおよび図8を参照しながら、説明する。まず、燃料ホルダ10の上蓋12の上にハンドル14を配置し、ハンドル14の位置決めピン18と、上蓋12の位置決め係合部21とを係合し、燃料ホルダ10の上蓋12の上にハンドル14を着座させる(ステップ51)。このとき、燃料ホルダ10のネジ被締結部13の上面とハンドル14の基準面37とにより、燃料ホルダ10の軸方向の位置決めが行われ、また位置決めピン18と位置決め係合部21とにより燃料ホルダ10の軸方向と直交する方向の位置決めが行われる。
【0028】
次に、燃料ホルダ10とハンドル14との締結部材であるボルト17を、ハンドル14の締結穴36に挿通し、さらに締結穴36とほぼ同一の中心軸線上に形成された燃料ホルダ10の締結穴22へねじ込んで締結する(ステップ52)。ボルト17の頭部55は、ハンドル14の底部32から上に突出した状態となる。ボルト17のネジ部56は、ハンドル14の貫通穴36を貫通し、上蓋12の締結穴22の内側に形成されたネジ溝と係合する。ボルト17の締付け作業は、ボルト17の強度を考慮して予め設定した所定のトルク管理値にしたがって実施することが好ましい。
【0029】
燃料ホルダ10が使用される設備等の要求に応じて、位置決めピン18や位置決め係合部21の形状、外形寸法の差(はめ合い)の仕様を適切に設定することによって、ハンドル14の位置ずれやハンドル枠部の取り付け方向の可動範囲を所望の範囲内に制限することができる。これにより、必要とされるハンドルの取り付け精度が確保される。位置ずれ量について図8(b)を参照しながら説明する。図8(b)は、図8(a)の線III−III'における断面図であり、点74は位置決めピン18の中心を、点75は位置決め係合部21の中心を示す。また、説明の都合上、締結穴22の中心をOとおき、点Oから位置決め係合部21の中心75に向かう方向をX軸、X軸と直交する方向をY軸とおく。
【0030】
位置決めの機能を発揮するためには、位置決めピン18や位置決め係合部21が、点Oに対して十分な位置精度を確保する必要がある。これらの寸法精度に係る加工は、機械加工によるものであり、十分な位置精度を確保することが可能である。位置決め係合部21の穴の大きさは、位置決めピン18の外形寸法と同等以上に設定する。具体的には、ハンドル枠部の取り付け方向、ハンドル位置の取り付け精度を確保する上で、X軸方向、Y軸方向の各方向の位置ずれ量E1、E2、角度方向の位置ずれ量E3が、燃料ホルダ10が使用される設備等の要求に基づく精度(各位置ずれ量に対応する最大許容位置ずれ量:C1、C2,C3)の範囲内となるように、位置決めピン18と位置決め係合部21の寸法仕様(はめあい)を設定すればよい。すなわち、燃料ホルダ10が使用される設備等の要求に応じて、下式(1)から(3)のうち、必要とされるものを判断基準として適用して、位置決めピン18と位置決め係合部21の形状と寸法を設定すればよい。
【0031】
E1≦C1 ・・・(1)
E2≦C2 ・・・(2)
E3≦C3 ・・・(3)
ここで、角度方向の最大許容位置ずれ量C3の値は、締結穴22の中心Oから位置決め係合部21の中心までの距離Lが遠くなるほど大きくとることができる。燃料ホルダ上蓋やハンドルの製造過程で、各部品の加工精度や組立精度に起因する各種の寸法誤差が生じ得ることを考慮すると、他部品との干渉等の問題がない範囲で、距離Lがより長く設定できる位置に、位置決め部の位置を設定する。このため、上述した例のようにハンドル14の底部32に延長部34を設け、延長部34の底面に位置決めピン18を配置することによって、距離Lを大きくとり、位置決め精度を向上させることができる。
【0032】
本発明に係る燃料ホルダ組立体の取り扱い方法の例を、図1図7(b)および(c)を参照しながら説明する。図7(b)に示す取り扱い方法では、まず核燃料体収納前の横置きに配置されている燃料ホルダ10の上蓋12へのハンドル14の取り付けを行う(ステップ151)。次に、ハンドル14を掴み部15で把持し、吊り具16の取り付ける(ステップ152)。クレーンにより燃料ホルダ10をたて起こして吊り上げ、吊り上げた状態で燃料ホルダ10を燃料収納設備への移動する(ステップ153)。燃料ホルダ10を縦置きの状態で、筐体11からハンドル14が付いた状態で上蓋10を取り外し(ステップ154)、燃料ホルダ10へ核燃料体19を収納する(ステップ155)。その後、燃料ホルダ10の筐体11に、ハンドル14が付いた状態の上蓋12の取り付け(ステップ156)、ハンドル14へ吊り具16を取り付ける(ステップ157)。燃料ホルダ10を再び吊り上げて移動し、燃料輸送容器のバスケット孔に装荷する(ステップ158)。装荷後に、燃料ホルダ10の上蓋12からハンドル14の取り外す(ステップ159)。
【0033】
別の取り扱い方法の図7(c)に示す。燃料ホルダの取扱い作業のうち、核燃料体の収納前のたて起こしや移動等の作業ステップでは高い精度の位置制御が必要とされない場合があり、核燃料体の収納後の作業ステップに対してのみハンドル14を使用してもよい。そのような場合には、まず、核燃料体収納前の横置きされた燃料ホルダ10の上蓋12へ汎用の吊り金具を取付ける(ステップ151’)。例えば、上蓋12のネジ被締結部13にアイボルトを取付けて、アイボルトのリング部にシャックルを取付ける。次に、吊り金具(シャックル)へ吊り具16を取り付け(ステップ152’)、クレーンにより燃料ホルダ10をたて起こして吊り上げ、吊り上げた状態で燃料ホルダ10を燃料収納設備へ移動する(ステップ153’)。上蓋12から吊り金具を取り外し、燃料ホルダ10の筐体11から上蓋12を取り外し(ステップ154’)、燃料ホルダ10へ核燃料体19を収納する(ステップ155’)。その後、上蓋12にハンドル14を取り付けてから、燃料ホルダ10の筐体11にハンドル付きの上蓋12を取り付ける(ステップ156’)。なお、上蓋12へのハンドル14の取り付けはステップ155’と並行して行ってもよい。また、必要に応じて、ステップ156’にかわり、燃料ホルダ10の筐体11へハンドル無しの上蓋12を取り付けてから、上蓋12にハンドル14を取付けてもよい(ステップ156”)。次に、ハンドル14に吊り具16を取り付け(ステップ157’)た後に、燃料ホルダ10を再び吊り上げた状態で移動し、燃料輸送容器のバスケット孔に装荷する(ステップ158’)。装荷後に、燃料ホルダ10の上蓋12からハンドル14の取り外す(ステップ159’)。
【0034】
図9に本願発明に係る燃料ホルダおよび燃料ホルダ組立体の別の実施例を示す。図9は、燃料ホルダ組立体を上面からみた平面図である。本例の構成は図5(a)で示した構成と類似するため、以下では図5(a)の例との相違点のみ述べる。図5(a)の例では、締結穴22と位置決め係合部21が上蓋12の辺と平行となるように配置されているが、図9の例では、上蓋12の対角線IV−IV’上に直線状に整列して配置されている。2つの位置決め係合部21は、締結穴22の中心Oに対して対称となるように配置されている。対角線上に配置することにより、締結穴22から位置決め係合部21までの距離Lをより長く設定することができ、より精度よい位置決めが可能となる。
【0035】
図10は、本願発明に係る燃料ホルダ、ハンドルおよび燃料ホルダ組立体のさらに別の実施例を示す。図10は、燃料ホルダ組立体の正面図である。本例の構成は図8(a)に示した例の構成と類似するため、以下では図8(a)の例との相違点のみ述べる。本例の燃料ホルダ組立体は、ハンドル61と、上蓋62を備える燃料ホルダと、締結部材17とを備える。図8(a)に示した例では、ハンドル14に位置決めピン18が、燃料ホルダ10の上蓋12に位置決めピン18に対応する位置決め係合部21が設けられているが、本例では、燃料ホルダの上蓋62に位置決めピン18が、ハンドル61の底部32の底面96に位置決めピン18に対応する位置決め係合部21が設けられている。位置決め係合部21は、位置決めピンを保持できる形状、配設方向となっていればよく、左側の位置決め係合部21のように、ハンドル61の底部32の周縁部の一部を欠いている切欠き形状としてもよい。あるいは、ハンドルの枠部の側面自体を位置決めの機能に使用してもよい。
【0036】
図11に、本願発明に係る燃料ホルダ、ハンドルおよび燃料ホルダ組立体のさらに別の実施例を示す。図11(a)は燃料ホルダ組立体の正面図、図11(b)は破線Aで示した部分を上面からみた部分拡大図である。本例の構成は図8(a)に示す例の構成と類似するため、以下では図8(a)の例との相違点のみ述べる。本例の燃料ホルダ組立体は、ハンドル63と、上蓋64を備える燃料ホルダと、締結部材17とを備える。ハンドル63の底面96に設置された位置決めピン18は、ハンドル63の端部を越えて外向きに、ハンドル63の底部32の長手方向と平行に延びる。他方、燃料ホルダ10の上蓋64は、上面から上方に向かって延びる延長部65を有する。延長部65の内側の側面には、位置決め係合部となる溝(凹部)21が形成されている。位置決めピン18が、上蓋64の溝21と係合することにより、ハンドル63と燃料ホルダ10の上蓋64が位置決めされる。位置決め部を横方向に延びるピンと凹形状の係合部とで構成することにより、位置決め部どうしの接触面積や位置決めピンの断面積を大きくとることができるため、位置決め精度や機械的強度が増し、またハンドル63の上下動により、簡単にハンドル63と燃料ホルダの上蓋64とを着脱することができる。なお、位置決め部の配置を本例と逆にして、ハンドル63側に溝(凹部)21が設けられた延長部65を、燃料ホルダ10の上蓋64側に上蓋64と平行に延びる位置決めピン18(または位置決め係合部の溝21と係合する凸部)を設けてもよい。
【0037】
さらに別の実施例を図12に示す。図12(a)はハンドル67を上面からみた平面図、図12(b)は正面からみた平面図、図12(c)は図12(b)と90度異なる方向からみた側面図である。本例の構成は図6で示したハンドル14の構成と類似するため、以下では図6に示した例との相違点のみ述べる。図6のハンドル14では、底部32の長手方向と平行に延長部34が形成されているが、本例のハンドル67は、底部32の長手方向と直交する方向に延びる延長部70が形成され、延長部70の底面96に位置決めピン18が形成されている。上蓋側の位置決め係合部(図示しない)は、ハンドル67の位置決めピン18と対応する位置に配置される。このように、ハンドルに設ける位置決め部材は、必ずしもハンドルの上部33の直下ではなく、上部33からオフセットした位置にあってもよい。オフセットした分だけ、締結穴36からの距離をとることができるため、位置決め精度を向上させることができる。なお、本例の場合も、位置決め部の配置を逆にして、ハンドル側に位置決め係合部を、燃料ホルダの上蓋側に位置決めピンを設けてもよい。また、本例では延長部70を底部32の長手方向と直交する方向に延在させているが、締結穴36からの距離をかせぐことができるように、ハンドルの底部32の長手方向とは異なる方向に延在させればよい。
【0038】
さらに別の実施例を図13に示す。図13は、燃料ホルダ組立体の正面図である。本例の構成は図8(a)に示す例の構成と類似するため、以下では図8(a)の例との相違点のみ述べる。本例の燃料ホルダ組立体は、ハンドル86と、上蓋87を備える燃料ホルダと、締結部材17とを備える。燃料ホルダ10の上蓋87の側面に、切り欠き形状(凹形状、溝形状)の位置決め係合部89が形成されている。他方、ハンドル86の底面96には位置決めピン88が設置さている。位置決めピン88は、ハンドル86の端部を越えて外向きに、ハンドル86の底部と平行に延び、さらに下方に折れて延在するL字型の形状を有する。位置決めピン88は、上蓋87の側面で位置決め係合部89と係合することにより、位置決めが行われる。このような構造により締結穴22から位置決め係合部89までの距離Lをより長く設定することができ、より精度よい位置決めが可能となる。
【0039】
なお、位置決めピン88は必ずしもハンドル86の底面96から延在する必要ななく、ハンドル86の上部の脚部85や底部の端部の側面から、ハンドル86の底部と平行に延び、さらに下方に折れて延びるL字型構造にしてもよい。また、位置決め部の配置を本例と逆にして、ハンドル86の側面に位置決め係合部89(切り欠き状の係合部)を、燃料ホルダ10の上蓋87の端面の一部から上向きに延びる位置決めピン(または位置決め係合部と係合する突起部)を設けてもよい。
【0040】
上述した各実施例では、ハンドルと燃料ホルダの上蓋の双方に複数の位置決め部が設けられているが、図14に示すように、ハンドル71の締結穴36と、締結部材17のネジ部56との隙間量Gを適切な量に設定することにより、一組の位置決め部18、21で、所望の位置ずれ量の範囲内となるように位置決めを行うことも可能である。
【0041】
すなわち、位置決め部の形状や外形寸法の差(はめ合い)の仕様は、燃料ホルダ10が使用される設備等の要求に応じて決定されるものである。隙間量Gの設定に際しては、これらの仕様を固定して考える。
【0042】
締結部材であるボルト17の仕様については、燃料ホルダ10とこれに収納される核燃料体の質量を考慮して、必要な強度を確保できる材質、呼び径等の仕様を選定する、また、これに対応するハンドル71の締結穴36(ボルト穴径)については、一般的な加工精度の要求(例えばJIS規格)に従う仕様とする。
【0043】
このようにして選定されたボルト17とボルト穴径36の仕様の選定結果に応じて、ネジ部56と締結穴36の隙間量Gが決定される。ここで、製作される各部品の加工精度や組立精度に起因する各種の寸法誤差が生じる可能性があることを考慮し、位置決め係合部21に位置決めピン18が挿入できることを阻害しない範囲とするために、ネジ部56と締結穴36との隙間量Gは適度な量に設定しておけばよく、過度にきついはめ合いの仕様を適用する必要はない。 例えば、JIS B 1001「ボルト穴径及びざくり径」のボルト穴径の等級のうち、最もきついはめ合いとなる1級を適用するのではなく、必要に応じて、2級、3級へと寸法の要求を緩めても構わない。
【0044】
また、燃料ホルダ組立体のたて起こし作業を行う場合を考えると、ボルトの締め付けが十分でない場合には、隙間量Gがあることから、ハンドル71の締結貫通穴36と上蓋72の締結ネジ穴22との境界位置において、締結要素17に曲げ応力が加わる可能性がある。この影響を低減するためには、貫通穴36の長さを短くすることが望ましい。そこで、図14に示すように、ハンドル71に座繰り部73を設けることによって、ハンドル71の貫通穴36の長さを短くすることが望ましい。この場合、必要なハンドル71の強度を確保するために、ハンドル71の底部32の幅や厚さを増加させてもよい。
【0045】
また、燃料輸送容器の上で作業者が燃料ホルダ10からハンドル14を外す場合に、誤ってボルト17の落下させる事故を防止し、またボルト落下のリスクを排除して作業性を向上するために、燃料ホルダ10の上蓋12にハンドル14を取り付けた後に、図15に示すように、ボルト頭部55に設けたボルト17側の接続部81(例えば穴、溝など)と、ハンドル14の底部または上部に設けたハンドル側の接続部82(例えば穴)とを、ワイヤ、チェーン、リング状のフック等を用いた接続具57により接続してもよい。さらに、接続具57のねじれによって、ボルト17の緩め回転ができなくなることがないよう、接続具57にはねじれ防止機構90を付けることが望ましい。例えば、ねじれ防止機構90にはより戻しを用いればよい。より戻しは、2つのリング状金具と1つの棒状金具から構成され、2つのリング状金具はそれぞれ接続具57に接続され、接続具57を中継する。リング状金具のリング部には穴部が形成され、この穴部には棒状金具が挿通され、棒状金具の両端は穴部よりも径が大きく設定されていることから、リング状金具と棒状金具とが外れることはない。2つのリング状金具が棒状金具を共通の軸として互いに回転可能な構造となっていることから、ボルト17に緩め回転を加えたときにも、接続具57に複数回転分のねじれが蓄積することはない。
【0046】
さらに別の実施例を図16に示す。本例の燃料ホルダ組立体は、ハンドル94と、上蓋95を備える燃料ホルダと、締結部材17とを備える。図16(a)は、蓋95を上面からみた概略平面図であり、参考のためハンドル94を破線で示した。図16(b)はハンドル94を上面からみた概略平面図、図16(c)は正面からみた概略正面図、図16(d)は図16(c)と90度異なる方向からみた概略側面図である。本例の上蓋95は図5(a)で示した上蓋12と、ハンドル94は図6で示したハンドル14の構成と類似するため、以下では図5(a)、図6の例との相違点のみ述べる。
【0047】
ネジ被締結部93は、ネジ被締結部13と同様に上蓋95の上面から上方に向かって締結穴22の周囲に延びる円柱形状の凸部であるが、側面の一部に平坦部92が形成されている点がネジ被締結部13と異なる。本例では、互いに平行な2つの平坦部92がネジ被締結部93の周面上に、中心Oに対して対称となるように設けられているが、平坦部92は1つであっても、3つ以上設けてもよい。この平坦部92が、上蓋95の位置決め部の1つとなる。
【0048】
他方、ハンドル94は、底部32の両側面から底面96よりも下方に延びる突出部91を有する。突出部91は、ハンドル94の位置決め部であり、平坦部92と対応する位置に設けられ、平坦部92と係合することにより、ハンドル94と燃料ホルダ10の上蓋95が位置決めされる。本例の突出部91は、互いに平行な2つの平板であるが、突出部の数は1つであっても、3つ以上設けてもよいし、形状や配置も必ずしも平板状である必要はない。平坦部92と突出部91の隙間は、上述した式(1)〜(3)に示す位置ずれ量E1,E2,E3と最大許容位置ずれ量C1,C2,C3の関係を考慮して設定すればよい。
【0049】
なお、図16の実施例では、平坦部92と対応する突出部91の形状がともに平坦な場合について説明したが、それぞれの平坦部92の一部に対して、(上蓋95の上面の接線方向について)一方にキー溝(切欠きまたは凹部)、もう一方の対応する位置をキー(凸部)とすることにより、位置ずれを制限できる方向を増加させることも可能である。
【0050】
また、ハンドルの底部32の底面96から延びる突出部91の長さについては、上蓋95と接触しない範囲であって、上蓋95とわずかな間隙(例えば1mm未満)を確保できる長さに設定することにより、上蓋95へのハンドル94の取り付け時に、ハンドル94の傾きが抑制できるため、ハンドルの取り付け作業を効率よく行うことが可能となる。なお、この傾き抑制の効果は、上述のような突出部に位置決め機能を持たせる場合に限らず、得られるものであり、ネジ被締結部に平坦部を設けない場合にも、ネジ被締結部と干渉しない位置に設けてもよい。
【0051】
以上、本願発明に係るハンドル、燃料ホルダ、その組立体及び位置決め方法等に関する説明を行ったが、当業者であれば、実施態様にあわせて適宜変更することができることは、容易に想到できよう。例えば、上述した例では、位置決め係合部が1つと2つの例を説明したが、3つ以上であってもよい。また、位置決め係合部の配置や形状も上述した例によらず、位置決め精度や上蓋・ハンドルの設計の仕様にしたがって任意の形状で任意の位置に形成することが可能である。さらに、上述した例では締結部材としてボルトを使用しているが、ハンドルと燃料ホルダの締結する機能を有するその他の締結部材を利用してもよい。
【符号の説明】
【0052】
10 燃料ホルダ
11 筐体
12、62、64、72、87、95 上蓋
13、93 ネジ被締結部
14、40,41,42、61、63、67、71、86、94 ハンドル
15 掴み部
16 吊り具
17 締結部材(ボルト)
18、88 位置決めピン
19 核燃料体
21、89 位置決め係合部
22 締結穴(ネジ穴)
23、25 面取り
24 上蓋取付穴
28 底蓋
29 作業台
32 底部
33 上部
34、65、70 延長部
35 凸部
36 締結穴(貫通穴)
37、37’ 基準面
55 ボルト頭部
56 ボルトネジ部
57 接続具
74、75 中心
81、82 接続部
85 脚部
90 ねじれ防止機構
91 突出部
92 平坦部
96 底面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15
図16