(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6851930
(24)【登録日】2021年3月12日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】ノブ装着構造
(51)【国際特許分類】
B60K 20/02 20060101AFI20210322BHJP
G05G 1/00 20080401ALI20210322BHJP
【FI】
B60K20/02 A
G05G1/00 G
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-148604(P2017-148604)
(22)【出願日】2017年7月31日
(65)【公開番号】特開2019-26125(P2019-26125A)
(43)【公開日】2019年2月21日
【審査請求日】2020年5月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129643
【弁理士】
【氏名又は名称】皆川 祐一
(72)【発明者】
【氏名】廣谷 高志
【審査官】
岡本 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】
実開平04−123864(JP,U)
【文献】
特開2002−362177(JP,A)
【文献】
特開2007−022536(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 20/02
G05G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスミッションの変速段の切り替えのために操作される操作レバーにおけるノブの装着構造であって、
前記操作レバーは、丸棒状をなしており、外周面にねじが切られたねじ部を先端に有し、前記ねじ部と間隔を空けた位置に外周面に対して凹んで周方向に延びる溝部を有し、
前記ノブは、前記操作レバーにおける前記ねじ部と前記溝部との間の部分および前記溝部よりも前記操作レバーの基端側の部分に跨がって外嵌される円筒状の外嵌部を有し、
前記外嵌部には、周方向に延びる装着溝が径方向に貫通して形成され、
前記装着溝には、縮径方向の弾性力を有する円環状の弾性体が外嵌にて装着され、
前記外嵌部が前記操作レバーに外嵌されて、前記弾性体が前記溝部に嵌まり、前記ねじ部が前記ノブに螺合することにより、前記ノブが前記操作レバーに装着される、ノブ装着構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスミッションの変速段の切り替えのために操作される操作レバーにおけるノブの装着構造に関する。
【背景技術】
【0002】
マニュアルトランスミッション(MT:Manual Transmission)を搭載した車両では、たとえば、車室内にフロアシフト式のシフトレバー装置が設けられる。
【0003】
シフトレバー装置は、車室内のフロアに固定されるシフトボディと、シフトボディに支持されたシフトレバーとを備えている。シフトレバーは、車両の左右方向に沿うセレクト方向および前後方向に沿うシフト方向に傾動可能に設けられている。シフトレバーがセレクト方向に操作(セレクト操作)されると、その操作力がセレクトケーブルを介してマニュアルトランスミッションに伝達され、マニュアルトランスミッションのシフトアンドセレクトシャフトが軸線方向に移動する。また、シフトレバーがシフト方向に操作(シフト操作)されると、その操作力がシフトケーブルを介してマニュアルトランスミッションに伝達され、シフトアンドセレクトシャフトが軸線まわりに回動する。これらの動作の組合せにより、手動変速機のギヤの噛み合い状態が変更されて、シフトレバーのセレクト操作およびシフト操作に応じた変速段が構成される。
【0004】
シフトレバーの先端には、運転者により把持されるシフトノブが装着される。その装着構造としては、種々の構造が提案されている。
【0005】
その一例では、シフトレバーの先端部に、ねじが切られ、シフトノブに形成された凹部には、ねじが切られたねじ部とその奥側にねじが切られていない不完全ねじ部が形成されている。そして、シフトノブのねじ部をシフトレバーの先端部に螺合させた後、シフトノブをさらに回転させてシフトレバーの先端部をシフトノブの不完全ねじ部にねじ込み、シフトレバーのねじで不完全ねじ部をねじ切りすることにより、シフトノブがシフトレバーにがたつきなく装着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−16109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、シフトノブをシフトレバーに装着する作業者によって、シフトノブの不完全ねじ部へのシフトレバーのねじ込み量にばらつきがある。そのため、シフトノブの高さ位置および回転位置がばらついてしまう。
【0008】
本発明の目的は、ノブの高さ位置および回転位置のばらつきを抑制できる、ノブ装着構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するため、本発明に係るノブ装着構造は、トランスミッションの変速段の切り替えのために操作される操作レバーにおけるノブの装着構造であって、操作レバーは、丸棒状をなしており、外周面にねじが切られたねじ部を先端に有し、ねじ部と間隔を空けた位置に外周面に対して凹んで周方向に延びる溝部を有し、ノブは、操作レバーにおけるねじ部と溝部との間の部分および溝部よりも操作レバーの基端側の部分に跨がって外嵌される円筒状の外嵌部を有し、外嵌部には、周方向に延びる装着溝が径方向に貫通して形成され、装着溝には、縮径方向の弾性力を有する円環状の弾性体が外嵌にて装着され、外嵌部が操作レバーに外嵌されて、弾性体が溝部に嵌まり、ねじ部がノブに螺合することにより、ノブが操作レバーに装着される。
【0010】
この構成によれば、ノブに設けられた弾性体が操作レバーの溝部に嵌まることにより、ノブの高さ位置が溝部内における弾性体の可動範囲内に制限される。その後、ノブが回転されて、ねじ部がノブにねじ込まれると、ノブが操作レバーの基端側に下がり、弾性体が溝部の基端側の壁面に押しつけられる。これにより、ノブが高さ方向および回転方向に位置決めされる。よって、ノブの高さ位置および回転位置のばらつきを抑制することができる。
【0011】
ノブは、ねじ部が螺合する不完全ねじ部を有し、ねじ部が不完全ねじ部にねじ込まれて、不完全ねじ部がねじ部のねじによりねじ切りされながら、ねじ部が不完全ねじ部に螺合することにより、ノブが操作レバーに装着されてもよい。
【0012】
操作レバーは、ねじ部と溝部との間に、溝部の先端側の壁面から先端側に延びる円筒状の周壁を有し、周壁には、先端側の端縁から基端側に切り欠かれた形状のガイド溝が形成され、ノブは、ノブが操作レバーに装着されるときに、操作レバーのねじ部が不完全ねじ部に達する前にガイド溝に嵌まる突起を有していてもよい。
【0013】
これにより、ノブが操作レバーに装着される過程において、操作レバーに対するノブの回転位置を一定の位置に合わせることができる。
【0014】
突起がガイド溝に嵌まる構成が採用される場合、ノブは、突起に対して回転方向の一方側に第1角度ずらした回転位置に、外嵌部から基端側に延びる係合爪を有し、操作レバーは、溝部よりも基端側の部分であって、ガイド溝に対して回転方向の一方側に第1角度と異なる第2角度ずらした回転位置に、外周面に対して凹む係合穴を有し、ねじ部が不完全ねじ部に一定量ねじ込まれたときに、係合爪の先端部が係合穴に係合することが好ましい。
【0015】
これにより、ねじ部が不完全ねじ部にねじ込まれる際のノブの回転量が一定の回転量に規制されるので、ノブの高さ位置および回転位置のばらつきを一層抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ノブの高さ位置および回転位置のばらつきを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係るノブ装着構造が適用されたシフトレバー装置の分解斜視図である。
【
図2A】シフトレバーおよびシフトノブの断面図であり、シフトノブがシフトレバーに装着される途中の状態を示す。
【
図2B】シフトレバーおよびシフトノブの断面図であり、シフトレバーへのシフトノブの装着が完了した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0019】
<シフトレバー装置>
図1は、本発明の一実施形態に係るノブ装着構造が適用されたシフトレバー装置1の分解斜視図である。
【0020】
シフトレバー装置1は、車両にマニュアルトランスミッション(図示せず)とともに搭載されて、運転者によりマニュアルトランスミッションの変速段の切り替えのために操作されるものである。シフトレバー装置1は、車室内のフロアまたはセンタコンソールに固定されるシフトボディ(図示せず)と、シフトボディに支持されるシフトレバー2と、シフトレバー2の先端部に装着されるシフトノブ3とを備えている。
【0021】
シフトレバー2は、丸棒状をなし、車両の左右方向に沿うセレクト方向および前後方向に沿うシフト方向に傾動可能にシフトボディに支持されている。シフトレバー2の基端部には、シフトケーブルおよびセレクトケーブルの一端が接続される。シフトケーブルの他端は、マニュアルトランスミッションに接続される。シフトレバー2がセレクト方向に操作されると、その操作力がセレクトケーブルを介してマニュアルトランスミッションに伝達され、マニュアルトランスミッションのシフトアンドセレクトシャフトが軸線方向に移動する。また、シフトレバー2がシフト方向に操作されると、その操作力がシフトケーブルを介してマニュアルトランスミッションに伝達され、シフトアンドセレクトシャフトが軸線まわりに回動する。これらの動作の組合せにより、手動変速機のギヤの噛み合い状態が変更されて、シフトレバー2のセレクト操作およびシフト操作に応じた変速段が構成される。
【0022】
シフトレバー2は、外周面にねじが切られたねじ部21を先端に有している。また、シフトレバー2は、ねじ部21と間隔を空けた位置に、シフトレバー2の外周面に対して凹んで周方向に延びる溝部22を有している。
【0023】
ねじ部21と溝部22との間には、溝部22の先端側の壁面の外周端から先端側に延びる円筒状の周壁23が設けられている。周壁23には、先端側の端縁から基端側に直線状に切り欠かれた切欠からなるガイド溝24が形成されている。
【0024】
また、シフトレバー2には、溝部22よりも基端側の部分であって、ガイド溝24に対して周方向の一方側に45°ずらした回転位置に、外周面に対して凹む係合穴25が形成されている。
【0025】
シフトノブ3は、円筒状の外嵌部31を有している。外嵌部31には、複数の装着溝32が周方向に並んで形成されている。各装着溝32は、周方向に延び、径方向に外嵌部31を貫通している。装着溝32には、縮径方向の弾性力を有する円環状の弾性体であるスナップリング33が外嵌にて装着されている。
【0026】
シフトノブ3は、外嵌部31よりも先端側に、円環状の挿入部34を有している。挿入部34の外径は、シフトレバー2の周壁23の内径よりも小さく、挿入部34の内径は、ねじ部21の外径よりも大きい。挿入部34の外周には、1個の直方体形状のガイド突起35と3個の三角柱状のガタ詰め突起36とが等角度間隔、つまり90°間隔で形成されている。
【0027】
また、シフトノブ3は、挿入部34よりもさらに先端側に、不完全ねじ部37を有している。不完全ねじ部37は、シフトレバー2のねじ部21の外径よりも少し小さい径を有する円筒状の凹部であり、基端側に開放されている。挿入部34と不完全ねじ部37との間には、シフトレバー2のねじ部21を挿通可能な空洞38が形成されており、挿入部34内と不完全ねじ部37内とは、その空洞38を介して連通している。
【0028】
さらに、シフトノブ3には、外嵌部31から基端側に延びる係合爪39を有している。係合爪39は、挿入部34に形成されているガイド突起35に対して周方向の一方側、つまりシフトレバー2のガイド溝24に対する係合穴25側に315°ずれた回転位置に位置している。
【0029】
<シフトノブの装着>
図2Aは、シフトレバー2およびシフトノブ3の断面図であり、シフトノブ3がシフトレバー2に装着される途中の状態を示す。
図2Bは、シフトレバー2およびシフトノブ3の断面図であり、シフトレバー2へのシフトノブ3の装着が完了した状態を示す。
【0030】
シフトノブ3がシフトレバー2に装着されるときには、シフトノブ3の外嵌部31がシフトレバー2の周壁23に先端側から外嵌される。シフトノブ3がシフトレバー2の基端側に移動される途中、シフトノブ3のガイド突起35が周壁23のガイド溝24に嵌まるように、シフトノブ3の回転位置が調整されて、ガイド突起35がガイド溝24に嵌められる。ガイド突起35がガイド溝24に嵌まった状態で、シフトノブ3がシフトレバー2の基端側にさらに移動されると、3個のガタ詰め突起36が周壁23に押圧されて潰れ、シフトレバー2とシフトノブ3とのがたつきがなくなる。シフトノブ3の移動が進むと、
図2Aに示されるように、シフトノブ3の装着溝32に装着されているスナップリング33がシフトレバー2の溝部22に嵌まる。また、シフトレバー2のねじ部21がシフトノブ3の不完全ねじ部37の入口に到達する。
【0031】
その後、シフトノブ3がシフトレバー2の基端側に押圧されながら、周方向の他方側、つまりガイド突起35に対する係合爪39側に回転される。これにより、ねじ部21が不完全ねじ部37にねじ込まれて、不完全ねじ部37の周面がねじ部21のねじによりねじ切りされながら、ねじ部21が不完全ねじ部37に螺合される。ねじ部21が不完全ねじ部37にねじ込まれることにより、シフトノブ3がシフトレバー2の基端側に移動する。このシフトノブ3の移動に伴い、溝部22内でスナップリング33が下がり、スナップリング33が溝部22の基端側の壁面に押しつけられる。
【0032】
そして、シフトノブ3が270°回転されると、シフトノブ3の係合爪39の先端部がシフトレバー2の係合穴25に対向し、
図2Bに示されるように、係合爪39の先端部が係合穴25にはまり込む。これにより、それ以上のシフトノブ3の回転が規制されて、シフトレバー2へのシフトノブ3の装着が完了する。
【0033】
なお、ガイド突起35は、シフトノブ3が回転されたときに、周壁23に摺擦して潰されてもよいし、ガイド突起35を逃がす溝が周壁23に形成されていてもよい。
【0034】
<作用効果>
以上のように、シフトレバー2へのシフトノブ3の装着の際には、シフトノブ3に設けられたスナップリング33がシフトレバー2の溝部22に嵌まることにより、シフトノブ3の高さ位置が溝部22内におけるスナップリング33の可動範囲内に制限される。その後、シフトノブ3が回転されて、ねじ部21が不完全ねじ部37にねじ込まれると、シフトノブ3がシフトレバー2の基端側に下がり、スナップリング33が溝部22の基端側の壁面に押しつけられる。これにより、ねじ部21を不完全ねじ部37にねじ込むのに必要な力が増大し、それ以上のねじ込みが制限されて、シフトノブ3が高さ方向および回転方向に位置決めされる。よって、シフトノブ3の高さ位置および回転位置のばらつきを抑制することができる。
【0035】
また、シフトレバー2の周壁23には、ガイド溝24が形成され、シフトノブ3がシフトレバー2に装着されるときに、シフトノブ3に形成されたガイド突起35がガイド溝24に嵌まる。これにより、シフトノブ3がシフトレバー2に装着される過程において、シフトレバー2に対するシフトノブ3の回転位置を一定の位置に合わせることができる。
【0036】
さらに、シフトノブ3は、ガイド突起35に対して回転方向の一方側に第1角度、たとえば315°ずらした回転位置に係合爪39を有し、シフトレバー2は、ガイド溝24に対して回転方向の一方側に第1角度と異なる第2角度、たとえば45°ずらした回転位置に係合穴25を有しており、ねじ部21が不完全ねじ部37に一定量ねじ込まれたときに、係合爪39の先端部が係合穴25に係合する。これにより、ねじ部21が不完全ねじ部37にねじ込まれる際のシフトノブ3の回転量が一定の回転量に規制されるので、シフトノブ3の高さ位置および回転位置のばらつきを一層抑制することができる。
【0037】
<変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
【0038】
たとえば、ガイド突起35に対する係合爪39のずれ量である第1角度およびガイド溝24に対する係合穴25のずれ量である第2角度として、315°および45°を例示したが、第1角度および第2角度は、その具体的な数値に限定されず、不完全ねじ部37へのねじ部21のねじ込み量に応じて適宜に設定されるとよい。
【0039】
また、前述の実施形態では、シフトノブ3が不完全ねじ部37を備え、シフトレバー2のねじ部21が不完全ねじ部37にねじ切りしながら螺合される構造を取り上げたが、不完全ねじ部37に代えて、既にねじが切られたねじ部が設けられて、そのねじ部にシフトレバー2のねじ部21が螺合される構造であってもよい。ただし、前者の構造では、後者の構造と比較して、シフトノブ3をシフトレバー2にがたつきなく装着することができる。
【0040】
その他、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0041】
2:シフトレバー(操作レバー)
3:シフトノブ
21:ねじ部
22:溝部
31:外嵌部
32:装着溝
33:スナップリング(弾性体)
37:不完全ねじ部