特許第6851931号(P6851931)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6851931
(24)【登録日】2021年3月12日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】フェンス
(51)【国際特許分類】
   E04H 17/14 20060101AFI20210322BHJP
   E04H 17/16 20060101ALI20210322BHJP
【FI】
   E04H17/14 103Z
   E04H17/16 105A
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-149263(P2017-149263)
(22)【出願日】2017年8月1日
(65)【公開番号】特開2019-27200(P2019-27200A)
(43)【公開日】2019年2月21日
【審査請求日】2020年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002462
【氏名又は名称】積水樹脂株式会社
(72)【発明者】
【氏名】前川 拓也
【審査官】 土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−270559(JP,A)
【文献】 特開2016−188493(JP,A)
【文献】 特開2010−248825(JP,A)
【文献】 実開昭62−019398(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0114506(US,A1)
【文献】 韓国登録実用新案第20−0459322(KR,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 17/14,17/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の支柱本体にキャップが取付けられた支柱にパネルが取付けられたフェンスであって、
前記支柱本体は、内部空間を囲む壁部に該支柱本体の外部空間と連通する係止孔を有し、前記キャップは、前記支柱本体の開口を覆う蓋部と、上下方向に形成され前記内部空間内に挿入される筒状部と、前記筒状部から外側に向けて突出して前記係止孔に係止する突起とを備え、
前記支柱本体の壁部は、
前記係止孔を有する前壁部と該前壁部と対向する後壁部と、前記前壁部及び後壁部を連結する二個の側壁部とを備え、
前記二個の側壁部は、前記前壁部及び後壁部より薄肉に形成された薄肉部を有し、
前記筒状部が前記内部空間内に挿入された際、前記薄肉部との間に隙間が形成されることを特徴とするフェンス。
【請求項2】
前記前壁部は、前記突起を前記支柱本体の長手方向に誘導する溝部を備えるとともに、前記係止孔は前記溝部と該支柱本体の外部空間とを連通していることを特徴とする請求項1に記載のフェンス。
【請求項3】
前記支柱本体は、前記係止孔とは異なる位置に形成された貫通孔を有し、
前記キャップは、前記筒状部の厚さ方向に貫通する透孔を有し、
前記貫通孔と前記透孔とを貫通する固定具を介して支柱にパネルが固定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のフェンス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路近傍の住宅、工場、公園等の敷地境界部や隣地境界部に沿って設置されるフェンスに関する。
【背景技術】
【0002】
住宅、工場、公園等の敷地境界部や隣地境界部に沿って設置されるフェンスは、一般には支柱間に鋼線材を格子状に組んだ網状体、多数の角筒状の縦材を横材で支持した格子体、金属板や金属板と樹脂板とを積層した積層体等の板材等のパネルや、ルーバー材等が取付けられている。
【0003】
支柱の上端部には、支柱内部に雨水等が入らないようにキャップが取付けられることが多く、このキャップとしては、主に、支柱の上端部に外嵌するタイプと、内挿するタイプとがある。外嵌タイプのキャップは、溶接やかしめ作業によって支柱に固定できるため製作は比較的容易であるが、キャップの外嵌箇所が支柱に取付けるフェンス体と干渉するおそれがある。内挿タイプのキャップは、支柱に取付けやすい構造とすると、取付けた後は支柱から抜け出しやすい傾向にあるため、これを解決するための構造が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、中空状又は半中空状形材の開口端部にプラスチック製のキャップを嵌着する門扉用キャップの取付装置において、前記形材の開口端部近傍のウェブに係合孔を形成する一方、前記キャップは、キャップ本体の裏面において前記形材の開口端部内に嵌挿される突設壁に一体に形成されて前記係合孔に係合する係止舌片とを備えてなるものであって、前記突設壁の下部を連結壁として残存させつつその上部を一部切欠くとともに、該連結壁の外側に前記舌片を形成した門扉用キャップの取付装置が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、門柱等の中空部の端部にキャップの挿入部を挿入し、その挿入部に門柱の外側からビスをねじ込んで固定するキャップの取付構造において、キャップの挿入部のビスがねじ込まれる部分をビスねじ込み時の引き込み力により外側方向に変形可能に形成した門柱等のキャップの取付構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭62−19398号公報
【特許文献2】特開2010−248825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に記載の門扉用キャップは、係合孔に係止舌片を係合させればよいので、キャップの取付は容易であるが、キャップ取付作業時、係止舌片が比較的大きく変形するため、係止舌片が破損するおそれがあった。一方、特許文献2に記載のキャップは、ビスねじ込み時にキャップも同方向に回動するように作用するため、キャップの傾きや外側方向への変形箇所に歪みが生じやすいものであった。
【0008】
本発明は、前記の如き問題点を解消し、支柱に取付け易く、しかもしっかりと固定できるキャップ付きの支柱を備えたフェンスを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は次のような構成としている。
すなわちこの発明に係るフェンスは、筒状の支柱本体にキャップが取付けられた支柱にパネルが取付けられたフェンスであって、前記支柱本体は、内部空間を囲む壁部に該支柱本体の外部空間と連通する係止孔を有し、前記キャップは、前記支柱本体の開口を覆う蓋部と、上下方向に形成され前記内部空間内に挿入される筒状部と、前記筒状部から外側に向けて突出して前記係止孔に係止する突起とを備え、前記支柱本体の壁部は、前記係止孔を有する前壁部と該前壁部と対向する後壁部と、前記前壁部及び後壁部を連結する二個の側壁部とを備え、前記二個の側壁部は、前記前壁部及び後壁部より薄肉に形成された薄肉部を有し、前記筒状部が前記内部空間内に挿入された際、前記薄肉部との間に隙間が形成されることを特徴とするものである。
【0010】
本発明において、前記前壁部は、前記突起を該支柱の長手方向に誘導する溝部を備えるとともに、前記係止孔は前記溝部と前記支柱本体の外部空間とを連通するようにしてもよい。
【0011】
また本発明において、前記支柱本体は、前記係止孔とは異なる位置に形成された貫通孔を有し、前記キャップは、前記筒状部の厚さ方向に貫通する透孔を有し、前記貫通孔と前記透孔とを貫通する固定具を介して支柱にパネルが固定されるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、キャップは支柱本体に取付けやすく、しっかりと固定できるので、支柱の組立作業が容易となり、フェンスを設置しやすくなる。
【0013】
本発明において、前記前壁部は、前記突起を前記支柱本体の長手方向に誘導する溝部を備えるとともに、前記係止孔は前記溝部と前記支柱本体の外部空間とを連通するにすれば、内部空間内に筒状部を挿入した際、前壁部及び後壁部との間隔が広がるように弾性的に変形しうるので、突起の内側への弾性変形による変形量を減らし、突起の破損等が起こりにくくなる。
【0014】
また、本発明において、前記支柱本体は、前記係止孔とは異なる位置に形成された貫通孔を有し、前記キャップは、前記筒状部の厚さ方向に貫通する透孔を有し、前記貫通孔と前記透孔とを貫通する固定具を介して支柱にパネルが固定されるようにすれば、固定具によりキャップの抜け止めを図りつつパネルの固定ができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係るフェンスの実施の一形態を示す正面図である。
図2】本発明に係るフェンスの実施の一形態を示す側面図である。
図3】本発明に係るフェンスの実施の一形態を示す平面図である。
図4図1の支柱のキャップ付近の説明図である。
図5図4の一部分解説明図である。
図6図5と異なる方向から見た一部分解説明図である。
図7図6のA−A線の断面において支柱本体に対するキャップの取付方法の一例を示す説明図である。
図8図4のB−B線の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照し、具体的に説明する。
【0017】
図面において、10は筒状の支柱本体、20は支柱本体10に取付けられたキャップ、Pは、支柱本体10にキャップ20が取付けられた支柱、30は支柱Pに取付けられたパネルであって、本発明に係るフェンスFは主に支柱Pとパネル30とから構成されており、間隔をあけて立設された支柱Pの間にパネル30が固定されてフェンスFとなされている。
【0018】
図1図3は、本発明に係る支柱を用いたフェンスの実施の一形態を示す説明図であって、図1は正面図、図2図1のA−A線の拡大断面図は側面図、図3は平面図である。支柱本体10は、一般に金属製であって、本形態では、アルミニウム合金からなる押出形材を適宜長さに切断して用いたものである。支柱本体10の材質は、アルミニウム合金以外に、ステンレス合金、鋼材等を挙げることができる。また、支柱の耐食性や耐候性を高めるために金属めっきや塗装が施されてもよい。支柱Pは左右方向に間隔をあけて立設されており、支柱Pの前面側にパネル30が固定されている。
【0019】
次に、支柱本体10に対するキャップ20の取付構造について図4図8を用いて説明する。図4図1の支柱のキャップ付近の説明図、図5図4の一部分解説明図、図6図5と異なる方向から見た一部分解説明図、図7図6のA−A線の断面において支柱本体に対するキャップの取付方法の一例を示す説明図、図8図4のB−B線の拡大断面図である。なお、図7に示された図6のA−A線は、キャップ20において後述する突起23とリブ26とを通る断面である。支柱Pは、図4に示すように、支柱本体10の上端部にキャップ20が取付けられたものであって、キャップ20によって支柱本体10の内部への雨水等の浸入を防いでいる。
【0020】
支柱本体10は、図5に示すように、長手方向に沿って形成された内部空間11と、該内部空間11を囲む壁部12とによって筒型に形成されている。壁部12は、内部空間11と該支柱本体10の外部空間とを連通する係止孔13を有している。
【0021】
キャップ20は、図5図7に示すように、支柱本体10の開口を覆う蓋部21と、支柱本体10の内部空間11内に挿入可能な筒状部22とを備えている。筒状部22は、上下方向に沿って形成されており、支柱本体10の壁部12の内側形状に対向する外形を有し、下方に開口する有底の筒状に形成されている。また、筒状部22は、筒状部22の内側に向けて弾性変形可能であって、かつ、外側に向けて突出する突起23を備えている。
【0022】
続いて、支柱本体10に対するキャップ20の取付方法の一例について、図5図7に基づいて説明する。すなわち、図5に示すように、筒状部22の突起23と、壁部12の係止孔13の位置を合わせて、支柱本体10の内部空間11内にキャップ20の筒状部22を挿入する段階、図7の(a)に示ように、突起23の先端部23aが壁部12と隙間S1が生じた状態であって、内部空間11の長手方向に沿って筒状部22の移動が容易な段階、(b)に示すように、突起23が壁部12から相対的に押圧されて、筒状部22の内側に向けて弾性変形する段階、(c)に示すように、突起23の弾性変形が解放され、該突起23が係止孔13に係止される段階、これらの複数の段階を経て、キャップ20が支柱本体10に取付けられる。
【0023】
壁部12は、長手方向に沿って連続して形成され、かつ、内部空間11に向けて開口する溝部14を備えた前壁部15を有しており、前記溝部14の底部14aから支柱本体10に向けて貫通する貫通孔が前述の係止孔13となされている。また、突起23は溝部14内に配置可能の大きさであって、溝部14内の長手方向に沿って移動可能である。
【0024】
これにより、平面視において、突起23を溝部14内に配置した状態で、内部空間11内に筒状部22を挿入すれば、突起23を係止孔13に誘導させやすくなる。
【0025】
突起23は、本形態では、図5に示すように、筒状部22の下端から上方に延びる二個の切欠部24の間に位置する舌片25に形成されている。
【0026】
これにより、内部空間11の中心側に向けて弾性変形可能な舌片25に追従して、突起23も内部空間11の中心側に向けて移動可能となる。すなわち、突起23が弾性変形可能とは、突起23自身が弾性変形可能な形態と、本形態のごとく、突起23が形成された舌片25が弾性変形可能な形態を含む。
【0027】
また、筒状部22は、図5図7に示すように、突起23と対向する位置に、外側に向けて突出するリブ26を有しており、内部空間11内に筒状部22を挿入した際、図7の(a)の段階から、突起23の先端部23aが溝部14の底部14aに当接するとともに、リブ26が壁部12に当接する段階を経て、(b)に示される突起23が弾性変形した段階となる。
【0028】
これにより、壁部12は、前壁部15と対向し、かつ、リブ26が当接する後壁部16では、筒状部22との接触面積を少なくなり、摩擦を抑えることで支柱本体10に対するキャップ20の取付作業が容易となる。リブ26は、上下方向に沿って細長形状に形成されるとともに、幅方向に離間して二個形成されたものであるが、形状や個数は適宜設定することができる。
【0029】
更に、図8に示すように、壁部12は、係止孔23を有する前壁部15と該前壁部15と対向する後壁部16と、前壁部15及び後壁部16を連結する二個の側壁部17,17とを備えており、前壁部15及び後壁部16は相対的に厚肉に形成されており、前壁部15と後壁部16とを連結する一対の側壁部17,17は薄肉に形成された薄肉部17aを有している。薄肉部17aは、内部空間11内に挿入された筒状部22との間に隙間S2が形成されている。
【0030】
これにより、内部空間11内に筒状部22を挿入した際、前壁部15及び後壁部16との間隔が広がるように弾性的に変形しうるので、図7の(b)に示す突起23の内側への弾性変形による変形量を減らし、突起23の破損等が起こりにくくなる。
【0031】
続いて、固定具を介して支柱本体10にキャップ20とパネル30を固定する固定構造について、図6を用いて詳しく説明する。キャップ20の筒状部22は、下方に突出して厚さ方向に貫通する透孔27aを有する垂下片27を備えている。支柱本体10にキャップ20を取付けた際、支柱本体10には、透孔27aに対向する位置に前後方向に貫通する貫通孔18,18が形成されており、貫通孔18、透孔27a、貫通孔18を貫通する固定具40と固定具40に締結される締結具43により、支柱本体10からキャップ20が抜け出さないように固定される。
【0032】
これにより、フェンスFの組立後は、キャップ20の突起23の支柱本体10の係止孔13から外そうとしても、具体的には、突起23を支柱本体10の内側に押し込んでも、固定具40が貫通孔18と透孔27aを貫通しているので、キャップ20は容易に取り外すことができない。
【0033】
固定具40は、本形態では、一端部はナット43が螺合されるねじ部41を有し、他端部は半円弧状に形成され、その内側にパネル30の横材32を係止する係止部42を有している。また締結具43は、ねじ部41に螺入されるナットである。これにより、キャップ20とパネル30を一度の作業で固定することができるので、フェンスFの組立作業が容易となる。なお、本形態では、パネル30は縦材31と横材32とからなる格子パネルであって、横材32がボルト40の係止部42に係止されたものであるが、パネル30の形態は特に限定されるものではない。
【0034】
以上、本発明の支柱Pについて、実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲内で当業者が思いつく各種変形を施したものも本発明の範囲内に含まれる。
【0035】
例えば、壁部12を構成する側壁部17は、前壁部15及び後壁部16より薄肉で、かつ、キャップ20の筒状部22との間に隙間S2が生じていればよいので、側壁部17の外側面は平坦に形成されたものでもよい。また、隙間S2は、側壁部17の内壁面の全域にわたって形成されているのが最も好ましいが、キャップ20の筒状部22を内部空間11内にスムーズに挿入できることが好ましく、本形態のように少なくとも側壁部17の中央部付近に隙間S2が形成されるようにすることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、道路近傍の住宅、工場、公園等の敷地境界部や隣地境界部に沿って取付けられるフェンスの支柱として広く利用することができる。
【符号の説明】
【0037】
10 支柱本体
11 内部空間
12 壁部
13 係止孔
14 溝部
14a 底部
15 前壁部
16 後壁部
17 側壁部
17a 薄肉部
18 貫通孔
20 キャップ
21 蓋部
22 筒状部
23 突起
23a 先端部
24 切欠部
25 舌片
26 リブ
27 垂下片
27a 透孔
30 パネル
31 縦材
32 横材
40 固定具
41 ねじ部
42 係止部
43 締結具
F フェンス
P 支柱
S1,S2 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8