(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記解除位置変更部は、前記検出装置で検出された前記実際位置と前記規制の解除前における前記目標位置とに基づいて前記解除位置を変更する請求項1又は2に記載の作業機。
前記解除位置変更部は、前記規制の解除前における前記目標位置が前記実際位置を中心として一方側である場合には前記解除位置を前記一方側にシフトし、前記規制の解除前における前記目標位置が前記実際位置を中心として他方側である場合には前記解除位置を前記他方側にシフトする請求項3に記載の作業機。
前記解除位置変更部は、前記規制の解除前における前記目標位置が前記一方側である場合、前記第1解除範囲よりも前記第2解除範囲を大きくする請求項5に記載の作業機。
前記解除位置変更部は、前記規制の解除前における前記目標位置が前記他方側である場合、前記第2解除範囲よりも前記第1解除範囲を大きくする請求項5又は6に記載の作業機。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、作業機1の一実施形態を示す側面図である。本実施形態の場合、作業機1はトラクタである。但し、作業機1は、トラクタ以外の作業機(作業車両)であってもよい。例えば、作業機1は、コンバインや移植機等の農業機械(農業車両)であってもよいし、ローダ作業機等の建設機械(建設車両)等であってもよい。
【0012】
以下の実施形態では、作業機1がトラクタ1であるとして説明する。また、トラクタ1の運転席15に着座した運転者の前側(
図1の左側)を前方、運転者の後側(
図1の右側)を後方として説明する。
図1に示すように、トラクタ1は、車体2と、走行装置3と、連結装置4と、を備えている。
【0013】
車体2は、車体フレーム5と、クラッチハウジング6と、ミッションケース7とを有している。車体フレーム5は、車体2の前後方向に延びている。エンジン8は、車体フレーム5に搭載されて車体2の前部に配置されている。クラッチハウジング6は、エンジン8の後部に連設されており、クラッチを収容している。ミッションケース7は、クラッチハウジング6の後部に連結されて後方に延びている。ミッションケース7は、変速装置や後輪差動装置等を収容している。
【0014】
走行装置3は、車体2の前部に設けられた前輪3Fと、車体2の後部に設けられた後輪3Rとを有している。本実施形態の場合、走行装置3はタイヤ式であるが、クローラ式であってもよい。
連結装置4は、圃場等に対して作業を行う作業装置9をトラクタ1の後部に連結するための装置である。連結装置4は、3点リンク機構等から構成されており、作業装置9を昇降可能に連結することができる。作業装置9は、ミッションケース7から後方に突出するPTO軸10から伝達される動力により駆動される。
【0015】
連結装置4は、リフトアーム4a、ロアリンク4b、トップリンク4c、リフトロッド4dを有している。リフトアーム4aの前端部は、ミッションケース7の後上部に上方又は下方に揺動可能に支持されている。リフトアーム4aは、リフトシリンダ4eの駆動によって揺動(昇降)する。リフトシリンダ4eは、油圧シリンダから構成されている。
図2に示すように、リフトシリンダ4eは、制御弁10を介して油圧ポンプ11と接続されている。制御弁10は、後述する制御装置12によって制御される電磁弁である。
【0016】
ロアリンク4bの前端部は、ミッションケース7の後下部に上方又は下方に揺動可能に支持されている。トップリンク4cの前端部は、ロアリンク4bよりも上方において、ミッションケース7の後部に上方又は下方に揺動可能に支持されている。リフトロッド4dは、リフトアーム4aとロアリンク4bとを連結している。ロアリンク4bの後部及びトップリンク4cの後部には、作業装置9が連結される。リフトシリンダ4eが駆動(伸縮)すると、リフトアーム4aが昇降するとともに、リフトロッド4dを介してリフトアーム4aと連結されたロアリンク4bが昇降する。これにより、作業装置9がロアリンク4bの前部を支点として、上方又は下方に揺動(昇降)する。
【0017】
作業装置9は、本実施形態の場合はロータリ耕耘装置であるが、他の作業装置(例えば、収穫装置、肥料散布装置、農薬散布装置、播種装置等)であってもよい。
図2に示すように、作業機1は、制御装置12、検出装置13、設定具14を備えている。
制御装置12は、車体2に搭載されている。制御装置12は、演算部(CPU)や記憶部(RAM,ROM等)を備えたコンピュータから構成されている。制御装置12は、制御部12a、牽制部12b、牽制解除部12c、解除位置変更部12dを備えている。制御部12a、牽制部12b、牽制解除部12c、解除位置変更部12dは、記憶部に記憶された所定のプログラムを演算部が実行することによって実現される。制御部12a、牽制部12b、牽制解除部12c、解除位置変更部12dについては、後程より詳しく説明する。
【0018】
検出装置13は、リフトアーム4aが実際に存在する位置(以下、「実際位置」という)を検出する装置である。検出装置13は、例えば、ポテンショメータ等のセンサ(角センサ等)から構成されている、検出装置13は、例えばリフトアーム4aの前部(揺動支点Pの近傍)等に取り付けられることによって、リフトアーム4aの実際位置(現在の高さ位置)を検出する。検出装置13は、制御装置12と通信可能に接続されている。検出装置13で検出されたリフトアーム4aの実際位置は、制御装置12に入力(送信)される。
【0019】
設定具14は、作業者がリフトアーム4aの昇降を行うときに操作する部材である。言い換えれば、設定具14は、作業者が所望するリフトアーム4aの位置(以下、「目標位置」という)を手動で設定する部材である。設定具14は、運転席15に着座した作業者が操作可能な位置(例えば、運転席15の前方や側方)に設けられる。設定具14は、例えば、回転操作される操作ダイヤルや、揺動操作される操作レバーから構成される。設定具14が、操作ダイヤルである場合、当該操作ダイヤルを一方向に回すことによってリフトアーム4aが上昇し、他方向に回すことによってリフトアーム4aが下降する。設定具14が、操作レバーである場合、当該操作レバーを一方向に揺動することによってリフトアーム4aが上昇し、他方向に揺動することによってリフトアーム4aが下降する。
【0020】
設定具14の操作位置は、ポテンショメータ等のポジションセンサ16により検出される。ポジションセンサ16により検出された操作位置は、リフトアーム4aの目標位置として制御装置12に入力(送信)される。
以下、制御部12a、牽制部12b、牽制解除部12c、解除位置変更部12dの機能(動作)について説明する。
【0021】
制御部12aは、検出装置13で検出されたリフトアーム4aの実際位置を、設定具14で設定された目標位置に一致させる制御(ポジション制御)を行う。より詳しくは、制御部12aは、設定具14で設定された目標位置に基づいて、制御弁10に制御信号を出力することにより、リフトシリンダ4eを駆動して、リフトアーム4aの実際位置が目標位置に一致するまでリフトアーム4aを上昇又は下降させる。
【0022】
牽制部12bは、設定具14により設定された目標位置がリフトアーム4aの実際位置に基づいて設定された解除位置(以下、「設定解除位置」という場合がある)と異なる場合に、制御部12aによるポジション制御の実行を規制(停止)する。牽制部12bによる規制は、例えば、エンジン8の始動(エンジン始動スイッチのON操作等)によって開始される。
【0023】
以下、設定解除位置について説明する。
設定解除位置は、リフトアーム4aの実際位置を中心とした一方側に設定された第1解除位置と、リフトアーム4aの実際位置を中心とした他方側に設定された第2解除位置とを含む。
例えば、
図3に示すように、リフトアーム4aの実際位置が一点鎖線Lで示される位置である場合、第1解除位置は、一点鎖線Lよりも一方側である矢印Aで示される側に設定される。また、第2解除位置は一点鎖線Lよりも他方側である矢印Bでされる側に設定される。
【0024】
図3に示す例では、第1解除位置はリフトアーム4aの実際位置Lを中心とした下方に設定されており、第2解除位置はリフトアーム4aの実際位置Lを中心とした上方に設定されている。つまり、本実施形態の場合、一方側が下方であり、他方側が上方である。従って、以下の説明においても、便宜上、一方側が下方、他方側が上方であるとする。但し、第1解除位置をリフトアーム4aの実際位置Lを中心とした上方に設定し、第2解除位置をリフトアーム4aの実際位置Lを中心とした下方に設定してもよい。
【0025】
設定解除位置は、制御部12aにより設定される基準の解除位置(以下、「基準解除位置」という)と、解除位置変更部12dにより変更された後の解除位置(以下、「変更解除位置」という)とを含む。基準解除位置は、制御部12aにより設定される初期の解除位置である。変更解除位置は、解除位置変更部12dにより変更された後の解除位置である。つまり、設定解除位置は、制御部12aにより設定された初期の時点では基準解除位置であり、解除位置変更部12dにより変更されることによって基準解除位置からシフトして変更解除位置となる。
【0026】
基準解除位置は、制御部12aによって、検出装置13で検出されたリフトアーム4aの実際位置に基づいて設定される。
図4に示すように、基準解除位置は、リフトアーム4aの実際位置Lを中心として一方側と他方側(下方及び上方)に同じ大きさで拡がる範囲R(以下、「基準解除範囲R」という)に設定される。つまり、基準解除範囲Rは、第1解除位置と第2解除位置とを含むように設定される。
【0027】
変更解除位置は、解除位置変更部12dによって、基準解除位置から一方側(下方)又は他方側(上方)にシフトした位置に設定される。変更解除位置については、後ほど詳しく説明する。
牽制部12bは、設定具14により設定された目標位置と設定解除位置とを比較し、両者が異なる場合には、制御部12aによるポジション制御の実行を規制(停止)する。これにより、制御部12aから制御弁10への制御信号の出力は行われず、リフトアーム4aは昇降しない。
【0028】
そのため、例えば、設定具14により設定された目標位置が設定解除位置と異なっている状態においてエンジン8を始動した場合に、制御部12aによるポジション制御が実行されてリフトアーム4a及び作業装置9が昇降することが防止できる。つまり、牽制部12bによって、作業者が意図しないリフトアーム4a及び作業装置9の昇降を防止することができる。
【0029】
牽制解除部12cは、設定具14によって設定された目標位置が設定解除位置と一致する場合に、牽制部12bによる規制を解除する。言い換えれば、牽制部12bは、設定具14により設定された目標位置と設定解除位置とが一致する場合は、制御部12aによるポジション制御の実行を規制しない。
具体的には、例えば、設定具14によって設定された目標位置が設定解除位置と異なっている状態(牽制部12bによる規制が実行されている状態)から、作業者が設定具14を手動で操作することによって目標位置と設定解除位置とが一致すると、牽制解除部12cは牽制部12bによる規制を解除する。
【0030】
解除位置変更部12dは、設定解除位置を変更する。具体的には、解除位置変更部12dは、制御部12aにより設定された解除位置である基準解除位置を変更して、変更解除位置とする。
詳しくは、解除位置変更部12dは、牽制部12bによる規制の解除前における目標位置に基づいて設定解除位置を変更する。より詳しくは、解除位置変更部12dは、検出装置13で検出されたリフトアーム4aの実際位置と、牽制部12bによる規制の解除前における目標位置に基づいて、設定解除位置を変更する(基準解除位置から変更解除位置とする)。
【0031】
以下、解除位置変更部12dによる設定解除位置の変更(変更解除位置の設定)について、より詳細に説明する。
解除位置変更部12dは、検出装置13で検出されたリフトアーム4aの実際位置と、設定具14により設定された牽制部12bによる規制の解除前における目標位置(以下、「解除前目標位置」という)とを比較し、両者の位置関係を判定する。具体的には、解除位置変更部12dは、解除前目標位置が、検出装置13で検出された実際位置を中心として一方側(下方)にあるか他方側(上方)にあるかを判定する。
【0032】
解除位置変更部12dは、解除前目標位置が、検出装置13で検出された実際位置を中心として一方側(下方)である場合(以下、「第1の場合」という)は、設定解除位置(基準解除位置)を一方側(下方)にシフトする。また、解除位置変更部12dは、解除前目標位置が、検出装置13で検出された実際位置を中心として他方側(上方)である場合(以下、「第2の場合」という)は、設定解除位置(基準解除位置)を他方側(上方)にシフトする。
【0033】
ここで、
図5、
図6を参照して、リフトアーム4aの実際位置、解除前目標位置、シフト前の設定解除位置(基準解除位置)、シフト後の設定解除位置の関係を説明する。
図5、
図6に示す例において、リフトアーム4aの実際位置Lを一点鎖線で示し、解除前目標位置Cを二点鎖線で示している。また、基準解除位置を含む基準解除範囲Rは、
図4に示した基準解除範囲Rと同じ範囲として示している。
【0034】
図5に示す例は、第1の場合を示している。第1の場合、シフト後の設定解除位置(変更解除位置)は、実際位置Lよりも一方側(下方)にシフトした範囲Ra内に位置する。言い換えれば、第1の場合、シフト後の設定解除位置(変更解除位置)は、基準解除位置を含む基準解除範囲Rから一方にシフトした範囲Raに含まれる。範囲Raは実際位置Lを含んでいる。
図5に示す例では、実際位置Lは範囲Raの上限となっている。
【0035】
図6に示す例は、第2の場合を示している。第2の場合、シフト後の設定解除位置(変更解除位置)は、実際位置Lよりも他方側(上方)にシフトした範囲Rb内に位置する。言い換えれば、第2の場合、シフト後の設定解除位置(変更解除位置)は、基準解除位置を含む基準解除範囲Rから他方にシフトした範囲Rbに含まれる。範囲Rbは実際位置Lを含んでいる。
図6に示す例では、実際位置Lは範囲Raの下限となっている。
【0036】
さらに、
図7、
図8に示すように、解除位置変更部12dは、設定解除範囲を範囲Ra又は範囲Rbにシフトさせることに加えて、範囲Ra,Rbと実際位置Lを挟んで反対側に設定解除範囲を拡大する。
図7は、範囲Raと実際位置Lを挟んで反対側に設定解除範囲を拡大した例を示している。
図8は、範囲Rbと実際位置Lを挟んで反対側の設定解除範囲を拡大した例を示している。
【0037】
図7に示すように、解除位置変更部12dは、実際位置Lよりも一方側(下方)にシフト後の設定解除位置を含む範囲Raが設定された場合、実際位置Lよりも他方側(上方)に設定解除範囲を拡大する。また、
図8に示すように、解除位置変更部12dは、実際位置Lよりも他方側(上方)にシフト後の設定解除位置を含む範囲Rbが設定された場合、実際位置Lよりも一方側(下方)に設定解除範囲を拡大する。拡大された設定解除範囲は、シフト後の設定解除位置を含む範囲Ra、Rbに比べて大きい。
【0038】
別の表現をすると、
図7、
図8に示すように、解除位置変更部12dは、リフトアーム4aの実際位置Lを中心とした一方側(下方)に設定された第1解除位置を含む第1解除範囲R1の大きさと、リフトアーム4aの実際位置Lを中心とした他方側(上方)に設定された第2解除位置を含む第2解除範囲R2の大きさとを異ならせる。言い換えれば、解除位置変更部12dは、第1解除範囲R1と、第1解除範囲R2とは異なる大きさの第2解除範囲R2とを設定解除範囲として設定する。
【0039】
具体的には、
図7に示すように、解除位置変更部12dは、解除前目標位置Cが実際位置Lを中心として一方側(実際位置Lよりも下方)である場合(第1の場合)、第1解除範囲R1よりも第2解除範囲R2を大きくする。また、
図8に示すように、解除前目標位置Cが実際位置Lを中心として他方側((実際位置Lよりも上方)である場合(第2の場合)、第2解除範囲R2よりも第1解除範囲R1を大きくする。
【0040】
図7に示すように、第1の場合には、第1解除範囲R1と第2解除範囲R2とを合わせた解除範囲の中心Dは、実際位置Lよりも他方側(上方)に設定される。
図8に示すように、第2の場合には、第1解除範囲R1と第2解除範囲R2とを合わせた解除範囲の中心Dは、実際位置Lよりも一方側(下方)に設定される。つまり、解除位置変更部12dは、検出装置13で検出されたリフトアーム4aの実際位置Lと、牽制部12bによる規制の解除前における目標位置(解除前目標位置)Cとに基づいて、第1解除範囲R1と第2解除範囲R2とを合わせた解除範囲の中心Dを、実際位置Lに対して一方側又は他方側に設定する。
【0041】
また別の表現をすれば、解除位置変更部12dは、第1の場合と第2の場合とで設定解除位置を下式に従って異ならせる(変更する)。具体的には、解除位置変更部12dは、検出装置13で検出されたリフトアーム4aの実際位置Lと、牽制部12bによる規制の解除前における目標位置(解除前目標位置)Cとに基づいて、以下の2通りの設定解除位置のいずれかを選択して設定する。
・第1の場合:(実際位置−x%)≦(設定解除位置)≦(実際位置+y%)
・第2の場合:(実際位置−y%)≦(設定解除位置)≦(実際位置+x%)
但し、第1の場合及び第2の場合のいずれもx<yである。
【0042】
図9は第1の場合を示す説明図であり、
図10は第2の場合を示す説明図である。
図9、
図10において、設定解除位置は、第1解除範囲R1と第2解除範囲R2とを合わせた解除範囲に設定される。
上記式において、(実際位置−(マイナス))で表される位置は、実際位置Lよりも一方側(下方)に設定される設定解除位置(即ち、第1解除位置)を意味し、(実際位置+(プラス))で表される位置は、実際位置Lよりも他方側(上方)に設定される設定解除位置(即ち、第2解除位置)を意味する。また、(実際位置−x%)とは実際位置Lを中心として一方側(下方)にx%シフトした位置を意味し、(実際位置+y%)とは実際位置Lを中心として他方側(上方)にy%シフトした位置を意味する。
【0043】
また、(%)は実際位置に対する角度のズレの大きさ(割合)を意味する。例えば、
図9に示すように、実際位置Lが水平位置Hに対して45°上昇した位置にある場合(
図9における角度α=45°の場合)には、(実際位置+5%)は水平位置に対して50°上昇した位置を意味し、(実際位置−5%)は水平位置に対して40°上昇した位置を意味する。
【0044】
図9に示すように、第1の場合、第1解除位置を含む第1解除範囲R1は、実際位置Lを上限として当該実際位置Lから−x%の範囲である。また、第2解除位置を含む第2解除範囲R2は、実際位置Lを下限として当該実際位置Lから+y%の範囲である。また、x<yより、第1解除範囲R1よりも第2解除範囲R2が大きい。
図10に示すように、第2の場合、第1解除位置を含む第1解除範囲R1は、実際位置Lを上限として当該実際位置Lから−y%の範囲である。また、第2解除位置を含む第2解除範囲R2は、実際位置Lを下限として当該実際位置Lから+x%の範囲である。また、x<yより、第2解除範囲R2よりも第1解除範囲R1が大きい。
【0045】
牽制解除部12cは、作業者が設定具14を手動で操作することによって、解除前目標位置が設定解除位置と一致すると、牽制部12bによる規制を解除する。具体的には、
図9に示す第1の場合、解除前目標値Cが(実際位置−x%)から(実際位置+y%)の間の範囲に入ったときに、牽制部12bによる規制が解除される。また、
図10に示す第2の場合、解除前目標値Cが(実際位置−y%)から(実際位置+x%)の間の範囲に入ったときに、牽制部12bによる規制が解除される。
【0046】
上述した通り、xとyの値はx<yの関係を満たすように設定されるが、x<yの関係を満たす範囲でxとyの大きさの比の許容範囲を変更することもできる。具体的には、例えば、2x≦yの関係を満たすように設定することもできる。また、3x≦yの関係を満たすように設定することもできる。また、4x≦yの関係を満たすように設定することもできる。また、5x≦yの関係を満たすように設定することもできる。
【0047】
ここで、一例として、5x=yの関係を満たすように、xとyの値をx=1及びy=5と設定した例について説明する。この例では、第1の場合、解除前目標値が(実際位置−1%)から(実際位置+5%)の間の範囲に入ったときに、牽制部12bによる規制が解除される。また、第2の場合、解除前目標値が(実際位置−5%)から(実際位置+1%)の間の範囲に入ったときに、牽制部12bによる規制が解除される。
【0048】
尚、xとyの設定値は、x=1及びy=5に限定されないことは言うまでもなく、x<yの関係を満たす範囲で適当な値に設定することができる。但し、x<y≦10xの関係を満たすように設定することが好ましい。つまり、yの設定値の上限はxの設置値の10倍以下とすることが好ましい。このように設定することによって、本発明の効果を充分に得ることができる。
【0049】
上述した実施形態の作業機1によれば、設定具14によって設定された目標位置が、リフトアーム4aの実際位置に基づいて設定された解除位置と異なる場合に、制御部12aによるポジション制御の実行を規制する牽制部12bを備えていることにより、作業装置9が不測に昇降されることを防ぐことができる。つまり、牽制部12bによって、作業者が意図しないリフトアーム4a及び作業装置9の昇降を防止することができる。
【0050】
また、設定具14によって設定された目標位置が解除位置に一致する場合に牽制部12bによる規制を解除する牽制解除部12cと、解除位置を変更する解除位置変更部12dとを備えていることにより、制御部12aにより設定される解除位置(基準解除位置)を、解除位置変更部12dによって、より適切な別の解除位置(変更解除位置)に変更することができる。そのため、牽制解除部12cによるポジション制御の規制の解除を確実に行わせることが可能となる。
【0051】
また、解除位置変更部12dは、規制の解除前における目標位置(解除前目標位置)に基づいて解除位置(設定解除位置)を変更することから、解除前目標位置に基づいて適切な解除位置(変更解除位置)を設定することができる。そのため、牽制解除部12cによるポジション制御の規制の解除をより確実に行うことができる。
また、解除位置変更部12dは、検出装置13で検出された実際位置と規制の解除前における目標位置(解除前目標位置)とに基づいて解除位置を変更することから、検出装置13で検出された実際位置と解除前目標位置との両方に基づいて適切な解除位置(変更解除位置)を設定することができる。そのため、牽制解除部12cによるポジション制御の規制の解除をより確実に行うことができる。
【0052】
また、解除位置変更部12dは、規制の解除前における目標位置(解除前目標位置)が実際位置を中心として一方側である場合(第1の場合)には解除位置(設定解除位置)を一方側にシフトし、解除前目標位置が実際位置を中心として他方側である場合(第2の場合)には解除位置(設定解除位置)を他方側にシフトする。これにより、第1の場合であっても第2の場合であっても、解除位置変更部12dによって解除位置(設定解除位置)が解除前目標位置に近づけられる。そのため、作業者が牽制部12bによる規制を解除するために設定具14を操作したときに、牽制解除部12cによる規制の解除が早期に確実に行われる。また、シフトによって解除位置を設定するため、設定解除位置が一方側又は他方側に過剰に拡大されることがない、そのため、検出装置13による実際位置の検出が正確に行われなかった場合に、実際位置と解除前目標位置とが異なるにも関わらず牽制部12bにより規制が解除されてしまうことが防止できる。
【0053】
また、解除位置(設定解除位置)は、実際位置を中心として一方側に設定された第1解除位置と、実際位置を中心として他方側に設定された第2解除位置とを含み、解除位置変更部12dは、第1解除位置を含む第1解除範囲の大きさと、第2解除位置を含む第2解除範囲の大きさとを異ならせる。そのため、解除位置が実際位置を中心として一方側のみ又は他方側のみに設定されている場合に比べて、牽制解除部12cによる規制の解除を確実に行うことが可能となる。
【0054】
また、解除位置変更部12dは、牽制部12bによる規制の解除前における目標位置(解除前目標位置)が実際位置を中心として一方側である場合、第1解除範囲R1よりも第2解除範囲R2を大きくする。これにより、解除前目標位置が実際位置Lを中心として一方側である状態から、作業者が牽制部12bによる規制を解除するために設定具14を他方側に向けて操作したときに、設定具14により設定される目標位置(解除前目標位置)が実際位置Lを越えて他方側に移行することで牽制部12bによる規制が解除できない不具合の発生を防止できる。つまり、第1解除範囲R1よりも第2解除範囲R2を大きくすることで、作業者が規制を解除するために設定具14を他方側に向けて操作したときに、設定具14により設定される目標位置(解除前目標位置)が実際位置Lを越えて他方側に移行した場合であっても、解除前目標位置が第2解除範囲R2に収まる可能性が高くなり、牽制部12bによる規制を確実に解除できる。
【0055】
また、解除位置変更部12dは、牽制部12bによる規制の解除前における目標位置(解除前目標位置)が実際位置Lを中心として他方側である場合、第2解除範囲R2よりも第1解除範囲R1を大きくする。これにより、解除前目標位置が実際位置Lを中心として他方側である状態から、作業者が牽制部12bによる規制を解除するために設定具14を一方側に向けて操作したときに、設定具14により設定される目標位置(解除前目標位置)が実際位置を越えて一方側に移行することで牽制部12bによる規制が解除できない不具合の発生を防止できる。つまり、第2解除範囲R2よりも第1解除範囲R1を大きくすることで、作業者が牽制部12bによる規制を解除するために設定具14を一方側に向けて操作したときに、設定具14により設定される目標位置(解除前目標位置)が実際位置Lを越えて一方側に移行した場合であっても、解除前目標位置が第1解除範囲R1に収まる可能性が高くなり、牽制部12bによる規制を確実に解除できる。
【0056】
以上、本発明の実施形態について説明したが、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。