(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術では、未架橋のゴムシートの端部が接合される。架橋されたゴムシートの端部を接合して筒状ゴムシートが製造できると、既成の架橋済みゴムシートを用いて筒状ゴムシートを製造できて良いが、特許文献1の技術では、そのようなことはできない。
【0006】
一方、架橋されたゴムシートの端部を、公知の接合法により接合して筒状ゴムシートを製造する場合、接合部の強度が低下しがちである。
【0007】
本発明の目的は、架橋された矩形状のゴムシートの端部を接合して筒状にする筒状ゴムシートの製造方法において、接合部の強度を高めうるような、筒状ゴムシートの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者は、鋭意検討の結果、接合すべき架橋ゴムシートの端部の間にテープ状の未架橋ゴムを挟み込み、金型を利用してゴムシート端部に隣接して所定の形状の空間を形成し、加熱プレス時に、未架橋ゴムが流動して前記空間を充填するようにしつつ未架橋ゴムを架橋すると、筒状ゴムシートの接合部の強度が高められることを知見し、本発明を完成させた。
【0009】
本発明は、架橋された矩形状のゴムシートの端部を接合して筒状にする筒状ゴムシートの製造方法であって、接合すべきゴムシートの端部を重ねあわせ、重ねあわせられたゴムシート端部の間にテープ状の未架橋ゴムを挟み込む第1工程及び、前記ゴムシート端部に金型を隣接配置して、一方のゴムシートの端面と、接合相手方のゴムシートの表面と、金型により囲まれた三角柱状の空間を、ゴムシート端部に隣接させて形成する第2工程、を行ったのちに、加熱手段を備えるプレス機により、前記ゴムシート端部が重ねあわせられた部分を加熱プレスし、挟み込まれた未架橋ゴムを流動させて、前記三角柱状空間を未架橋ゴムにより充填し、未架橋ゴムを架橋する第3工程を経て、重ねあわせられたゴムシート端部が接合される、筒状ゴムシートの製造方法である(第1発明)。
【0010】
第1発明において、好ましくは、ゴムシートの接合箇所が、筒状ゴムシートの周方向に2か所以上存在し、2つの接合箇所において第3工程が同時進行するようにゴムシート端部が接合される(第2発明)。
【発明の効果】
【0011】
第1発明の筒状ゴムシートの製造方法によれば、得られる筒状ゴムシートの接合部の強度が高められる。また、さらに、第2発明のようにした場合には、得られる筒状ゴムシートの周長もより正確なものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下図面を参照しながら、発明の実施形態について説明する。以下に説明される実施形態は、例であり、発明は以下に示す個別の実施形態に限定されるものではなく、その形態を変更して実施することもできる。
【0014】
図1に、後述する筒状ゴムシートの製造方法により製造される筒状ゴムシート1の斜視図を示す。筒状ゴムシート1は、架橋された矩形状のゴムシートを原材料として、矩形状ゴムシートの端部を接合して筒状にした筒状ゴムシートである。ゴムシート端部の接合箇所は、筒の長さ方向に沿って延在している。ゴムシート端部の接合箇所は、1カ所であってもよいし、2か所以上であってもよい。本実施形態では、2枚の架橋された矩形状のゴムシート11,12が2か所で接合されて、筒状のゴムシート1が構成されている。
【0015】
筒状ゴムシート1は、例えば、筒の両端部を閉じることにより、袋状となって、加圧用のダイアフラムや加圧用のゴム袋、空気入りの緩衝部材、冷却水ジャケット等に利用可能である。筒状ゴムシート1の具体的仕様、例えば、厚みやサイズ、材料等は、個別の用途に応じて決定され、特に限定されない。例えば、筒状ゴムシート1の周長が、筒の長さ方向にわたって一定であってもよいし、筒の長さ方向にわたって周長が漸増するよう、テーパ筒状の筒状ゴムシートとされていてもよい。
【0016】
図2に、筒状ゴムシート1において、ゴムシートの端部同士が接合された部分の断面図を示す。
図2や、
図3ないし
図7では、図を見やすくするため、ゴムシート部分の断面を示すハッチングは省略している。接合部では、一方のゴムシート11の端部11aと、他方のゴムシート12の端部12aとが、重ねあわされて、接着体13により接合されている。
筒状ゴムシート1では、筒の長さ方向の全長にわたって、ゴムシートの端部11a,12aが同様の断面形状で接合されている。
【0017】
接着体13は、その一部が、ゴムシートの端部11a,12aが重ねあわせられた部分の間に挟み込まれており、挟み込まれた部分でゴムシートの表面11s、12sに対し、接着体13が架橋接着されている。また、接着体13の端部は、
図2の断面視でみて略三角形になるように、ゴムシートの表面11sとゴムシートの端面12eにまたがるように、(もしくは、ゴムシートの表面12sとゴムシートの端面11eにまたがるように、)架橋接着されている。本実施形態においては、接着体13の両端部が共に、略三角形になってシートの表面や端面に架橋接着されている。なお、必ずしも両端部がこのようにされている必要はなく、接着体13の片側のみが、略三角形になってシートの表面や端面に架橋接着されていてもよい。
【0018】
ゴムシート11,12の材料となるゴム材料は、用途に応じ選択され、特に限定されない。ゴム材料としては、例えば、シリコーンゴムが好適に使用できる。シリコーンゴムは、ミラブルタイプのものであることが好ましい。また、シリコーンゴムの他、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)やアクリルゴム、フッ素ゴムなど、多様なゴム材料が使用できる。ゴムシート11,12は積層ゴムシートであってもよく、繊維や織布などの補強層を含むものであってもよい。なお、接着体13により接合可能な限りにおいて、ゴムシート11の材料とゴムシート12の材料が異なるゴム材料であってもよい。
【0019】
接着体13の材料は、ゴム材料である。後述するように、筒状ゴムシート1の製造過程においては、接着体13となるゴム材料は未架橋ゴムであるが、完成した筒状ゴムシート1では、接着体13は架橋されたゴム材料である。ゴムシート11,12に対し架橋接着可能なゴム材料であれば、接着体13のゴム材料は特に限定されないが、接着強度を高める観点から、ゴムシート11,12と同種の、より好ましくは、同じゴム材料であることが好ましい。
【0020】
筒状ゴムシート1の製造方法の実施形態について説明する。
筒状ゴムシート1は、架橋されたゴムシートを材料にして、ゴムシートの端部を接合して筒状にすることにより製造される。架橋されたゴムシートとしては、公知の架橋ゴムシートを製造、調達すればよい。準備された架橋ゴムシートは、所定の大きさの矩形状に裁断され、以下に説明する接合工程に供される。この際、接合されるべきゴムシート端部に、接合が完全に行われるよう、脱脂や表面処理が行われることが好ましい。
【0021】
以下に説明する第1工程、第2工程、第3工程を経て、ゴムシート端部が接合される。
まず、第1工程では、接合すべきゴムシート11,12の端部11a,12aを重ねあわせ、重ねあわせられたゴムシート端部11a,12aの間にテープ状の未架橋ゴムT1を挟み込む。テープ状の未架橋ゴムT1が挟み込まれた状態を
図3に示す。テープ状の未架橋ゴムT1の幅(
図3における左右方向の寸法)は、ゴムシート端部の重ねあわせ幅と同じにされることが好ましい。なお、テープ状の未架橋ゴムT1の幅は、ゴムシート端部の重ねあわせ幅よりも短くてもよい。また、テープ状の未架橋ゴムT1の幅が、ゴムシート端部の重ねあわせ幅よりも長く、未架橋ゴムT1が重ねあわせ部分からはみ出していてもよい。
【0022】
テープ状の未架橋ゴムT1には、架橋剤が配合されており、後の工程で加熱されることにより、架橋反応が進行して、架橋されたゴムとなると共に、ゴムシートの端部に架橋接着される。テープ状の未架橋ゴムT1の製造方法は、未架橋のゴム材料を所定の断面形状に押出成型したり、所定の厚みにロール成形してから所定の幅にカットしたりすればよい。
【0023】
第1工程に引き続き、もしくは、第1工程と並行して、第2工程が行われる。第2工程では、前記ゴムシート端部11a,12aに隣接するように金型D1,D2を配置して、
一方のゴムシートの端面と、接合相手方のゴムシートの表面と、金型により囲まれた、三角柱状の空間G1,G2を、ゴムシートの端部11a,12aに隣接させて形成する。本実施形態においては、
図4に示すように、ゴムシート11の端面11eと、接合相手方のゴムシート12の表面12sと、金型D1により囲まれた三角柱状の空間G1が設けられると共に、ゴムシート12の端面12eと、接合相手方のゴムシート11の表面11sと、金型D2により囲まれた三角柱状の空間G2が設けられている。
【0024】
第2工程に使用される金型D1,D2は、所定の断面形状で筒状ゴムシートの長手方向(接合部が延在する方向)に沿って延在させる。典型的には、金型D1,D2は、ゴムシート11,12とほぼ同じ厚さの板状もしくは帯板状に設けられ、金型を配置した際に三角柱状の空間G1,G2が形成されるように、ゴムシートの端部に対向する側の金型端部が斜めにカットされている。金型の具体的形状は他の形態であってもよい。なお、金型D1,D2は、金属製であってもよいし、樹脂製であってもよい。
【0025】
第1工程と第2工程が完了し、ゴムシート端部を接合すべき部分にテープ状の未架橋ゴムT1と金型D1,D2が配置された後に、以下に説明する第3工程を行う。
第3工程では、加熱手段を備えるプレス機により、ゴムシート端部11a,12aが重ねあわせられた部分を加熱プレスする。加熱手段としては、熱盤や、加熱気体や加熱液体を利用する加熱手段などが利用できる。プレス機は、いわゆる直圧プレス機であることが好ましい。
【0026】
加熱プレスされることにより、テープ状の未架橋ゴムT1は軟化し、加圧力Pによって厚み方向に圧縮される。すると、
図5に示すように、挟み込まれた未架橋ゴムが軟化して流動し、重ね合わせ部分に隣接して設けられた三角柱状空間G1,G2に流れ込んでいく。加熱プレスを継続することにより、流動した未架橋ゴムにより、三角柱状空間G1,G2が充填される。この充填が確実になされるよう、三角柱状空間を形成するための金型D1,D2が、ゴムシートの端面11e,12eやゴムシートの表面11s、12sに対し、大きな隙間が無いように配置されることが好ましい。
【0027】
さらに加熱プレスを継続することにより、未架橋ゴムは架橋して接着体13となり、ゴムシートの表面11s、12sや、ゴムシートの端面11e,12eに架橋接着して、重ねあわせられたゴムシート端部の接合が完了する。その後、加熱プレスを解除し、接合されたゴムシートを取り出し、金型を取り外す。金型の取り外しがしやすいよう、適宜、金型に離型剤処理を施すことが好ましい。
【0028】
本実施形態の筒状ゴムシート1のように、ゴムシートの接合箇所が、筒状ゴムシートの周方向に2か所以上存在する場合には、
図7に示すように、2つの接合箇所において第3工程が同時進行するようにゴムシート端部が接合されることが好ましい。
図7は
図5に対応する図であり、加熱プレスの加圧力Pによって、未架橋ゴムが流動し、三角柱状空間を充填していく様子を示している。図の左側の部分でゴムシート11とゴムシート12が金型D1,D2を利用しながら接合され、同時進行で、図の右側の部分でゴムシート11とゴムシート12が金型D12,D22を利用しながら接合される。この加熱プレスの工程は、1台のプレス機上で実行されることが好ましい。可能であれば、金型D1と金型D12を一体化してもよい。
【0029】
上記実施形態における筒状ゴムシートの製造方法の作用、及び効果について説明する。上記製造方法により筒状ゴムシートを製造すると、得られる筒状ゴムシートの接合部の強度が高められる。すなわち、加熱プレスによって、挟み込まれた未架橋ゴムを流動させて、金型により形成された三角柱状空間を未架橋ゴムにより充填し、未架橋ゴムを架橋することにより、未架橋ゴムT1が、接合すべきゴムシートの端面11e,12eやゴムシートの表面11s,12sにしっかりと密着した状態で架橋接着することになり、接合強度が高められる。このようになっていると、ゴムシート端部の接合部が、ゴムシートの端面部分からめくれにくくなり、接合強度が高められる。
【0030】
また、上記実施形態における筒状ゴムシートの製造方法によれば、形成される接着体13が、ゴムシートの表面11sとゴムシートの端面12eにまたがるように、(もしくは、ゴムシートの表面12sとゴムシートの端面11eにまたがるように、)断面視でみて略三角形になる部分を有するよう、架橋接着が行われる。これにより、接合部における断面積(周方向に沿って見た断面積)の急変が緩和されるので、筒状ゴムシートに周方向の張力が作用した際にも、ゴムシートの接合部がはがれにくくなる。この観点から、ゴムシートの重ね合わせ部分の両側に、接着体13が三角形状になってゴムシートの端面11e,12eに架橋接着された部分を有するようにされることが好ましい。
【0031】
第3工程における三角柱状空間への未架橋ゴムの充填と架橋接着を確実、かつ十分に行うために、テープ状の未架橋ゴムT1の断面積が調整される。すなわち、加圧による押圧で、未架橋ゴムが流動した際に、三角柱状空間を確実に満たすように、テープ状の未架橋ゴムの断面積は、三角柱状空間の部分の断面積の和よりも、大きくなるようにされる。
【0032】
さらに、
図7に示した実施形態のように、ゴムシートの接合箇所が、筒状ゴムシートの周方向に2か所以上存在して、2つの接合箇所において第3工程が同時進行するようにゴムシート端部が接合される場合には、得られる筒状ゴムシート1の周長がより正確なものとなる。
【0033】
加熱プレスされる接合箇所が、プレス機上に1カ所だけ配置される場合には、ゴムシート端部を重ねあわせた部分の左右で、高低差が生じやすく、高低差があると加熱プレスの際にゴムシートの重ねあわせ部が傾いたり引っ張られたりして、重ねあわせ部が横方向にずれてしまうことがある。
一方、
図7のように、2つの接合箇所において第3工程が同時進行するようにゴムシート端部が接合されるようにすれば、接合構造を左右対称に設けることで、ゴムシートの高低差の発生を抑えることができる。これにより、重ねあわせ部が横方向にずれてしまうことが抑制され、得られる筒状ゴムシート1の周長がより正確なものとなる。
【0034】
発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の改変をして実施することができる。以下に発明の他の実施形態について説明するが、以下の説明においては、上記実施形態と異なる部分を中心に説明し、同様である部分についてはその詳細な説明を省略する。また、これら実施形態は、その一部を互いに組み合わせて、あるいは、その一部を置き換えて実施できる。
【0035】
製造される筒状ゴムシートが備える接合部の数は、上記実施形態では2つであったが、接合部は1つ、もしくは3つ以上であってもよい。
【0036】
また、筒状ゴムシートが有する接合部は、必ずしも1回の加熱プレスで接合されなければならないわけではない。例えば、筒状ゴムシートの筒の長さ(例えば3m)が、プレス機のプレス可能長さ(例えば1m)に比べて長い場合には、いわゆる送り焼きを行い、長い接合部を順次加熱プレスして接合部を完成していけばよい。
即ち、上記筒状ゴムシートの製造方法は、長い筒状ゴムシートの製造にも適用できる。
【0037】
また、筒状ゴムシートが複数の接合部を備える場合、必ずしもすべての接合部が、上記接合方法により接合されなければならないわけではなく、一部の接合部が他の接合方法により接合されてもよい。
【0038】
製造される筒状ゴムシートの用途は特に限定されない。ゴム筒や、ゴム袋、ダイアフラム、加圧用袋、冷却液ジャケットやゴムベルト等の多様な用途に、筒状ゴムシートは利用可能である。