(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両に搭載される手動変速機には、運転者によるシフトノブ(シフトレバー)の操作に連動するシャフトアッセンブリが設けられている。
【0003】
シャフトアッセンブリは、トランスミッションケースに取り付けられるコントロールカバーと、コントロールカバーに保持されたシフトアンドセレクトシャフト(シフト&セレクトシャフト)とを備えている。シフトアンドセレクトシャフトは、コントロールカバーに対して軸線方向に移動可能かつ軸線まわりに回動可能に設けられている。
【0004】
シフトアンドセレクトシャフトの端部には、シフトアウタレバーが取り付けられている。コントロールカバーには、セレクトアウタレバーが設けられている。セレクトアウタレバーは、シフトアンドセレクトシャフトの軸線方向と直交する方向(径方向)に延びる軸線まわりに回動可能に設けられている。シフトアウタレバーおよびセレクトアウタレバーには、それぞれシフトケーブルおよびセレクトケーブルの一端が接続されている。シフトケーブルおよびセレクトケーブルの各他端は、運転者によって操作されるシフトレバーに連結されている。
【0005】
シフトレバーのセレクト操作が行われると、そのセレクト操作力がセレクトケーブルを介してセレクトアウタレバーに伝達され、セレクトアウタレバーが回動することにより、シフトアンドセレクトシャフトが軸線方向(セレクト方向)に移動する。また、シフトレバーのシフト操作が行われると、そのシフト操作力がシフトケーブルを介してシフトアウタレバーに伝達され、シフトアウタレバーが回動することにより、シフトアンドセレクトシャフトが軸線まわり(シフト方向)に移動する。これらの動作により、シフトフォークが選択的に移動され、手動変速機のギヤの噛み合い状態が変更されて、シフトレバーのセレクト操作およびシフト操作に応じた変速段が構成される。
【0006】
シャフトアッセンブリには、シフトアンドセレクトシャフトの周囲には、ストッパ機構が設けられている。ストッパ機構には、シフトゲートに対応した形状のガイド溝を有するシフトアンドセレクトガイドと、先端部がガイド溝に挿入されたガイドピンとが含まれる。シフトアンドセレクトガイドは、シフトアンドセレクトシャフトに取り付けられ、シフトアンドセレクトシャフトと一体的にシフト方向およびセレクト方向に移動する。
【0007】
これにより、シフトレバーがセレクト操作されて、シフトアンドセレクトシャフトがセレクト方向に移動し、ガイドピンの先端部がガイド溝のセレクト方向の側面と当接すると、シフトアンドセレクトシャフトのそれ以上の移動が阻止される。また、シフトレバーが変速段を構成する位置にシフト操作されると、ガイドピンの先端部がガイド溝のシフト方向の端面に当接することにより、シフトアンドセレクトシャフトのそれ以上の移動が阻止される。これにより、シフトアンドセレクトシャフトのシフト方向およびセレクト方向のストローク(移動量)を規制することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、シフト操作時に、ガイドピンの先端部がガイド溝のシフト方向の端面に当接したときに、壁に突き当たったような感覚を運転者に与えたり、その当接による衝撃音が発生したりする。
【0010】
本発明の目的は、シフト操作時のシフトフィーリングが向上された、シャフトアッセンブリを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成するため、本発明に係るシャフトアッセンブリは、手動変速機に設けられるシャフトアッセンブリであって、手動変速機のケースに取り付けられるコントロールカバーと、コントロールカバーに対して中心軸線を中心とするシフト方向に回動可能かつ中心軸線に沿ったセレクト方向に移動可能に設けられるシフトアンドセレクトシャフトと、シフトアンドセレクトシャフトのシフト方向の回動に伴って、セレクト方向と直交する方向に直線的に移動するフォークシャフトと、シフトアンドセレクトシャフトと一体的にシフト方向に回動可能かつセレクト方向に移動可能に設けられ、シフト方向に延びるシフト溝部、およびセレクト方向に延びるセレクト溝部を含むガイド溝が形成されたシフトアンドセレクトガイドと、コントロールカバーに対して固定的に設けられ、ガイド溝に挿入される先端部を有するガイドピンと、シフトアンドセレクトシャフトと一体的に回動可能に設けられ、シフトアンドセレクトシャフトの中心軸線側に凹状をなす凹面、および凹面のシフト方向の両側で凹面から離れるにつれて中心軸線に近づくように延びる斜面を含むカム面が形成されたシフトカムと、コントロールカバーに対して固定的に設けられ、カム面に弾性的に当接するカム当接部材と、コントロールカバーに対して固定的に設けられ、フォークシャフトの周面に弾性的に当接するシャフト当接部材とを含み、シフト溝部は、シフト方向の両側に開放され、セレクト溝部は、セレクト方向の両端が閉塞されて、セレクト方向の両側に開放されておらず、シフトカムは、斜面のそれぞれに対して凹面側と反対側に、斜面に対して折り返される面を有しておらず、フォークシャフトの周面には、ガイドピンがシフト溝部の一端部に位置するときにシャフト当接部材が嵌まる第1ディテント溝と、ガイドピンがシフト溝部の他端部に位置するときにシャフト当接部材が嵌まる第2ディテント溝とが形成されている。
【0012】
この構成によれば、シフトアンドセレクトシャフトは、手動変速機のケースに取り付けられるコントロールカバーに対して、その中心軸線を中心とするシフト方向に回動可能かつ中心軸線に沿ったセレクト方向に移動可能に設けられている。車室内に設けられたシフトレバーがシフト操作されると、シフトアンドセレクトシャフトがシフト方向に回動し、シフトレバーがセレクト操作されると、シフトアンドセレクトシャフトがセレクト方向に移動する。
【0013】
シフトアンドセレクトシャフトと一体的に回動可能に、シフトアンドセレクトガイドおよびシフトカムが設けられている。
【0014】
シフトアンドセレクトガイドには、シフト方向に延びるシフト溝部およびセレクト方向に延びるセレクト溝部を含むガイド溝が形成されている。ガイド溝には、コントロールカバーに対して固定的に設けられているガイドピンの先端部が挿入される。シフトアンドセレクトシャフトのシフト方向の回動およびセレクト方向の移動により、ガイドピンの先端部がガイド溝に案内されつつ移動する。これにより、シフト操作およびセレクト操作時のシフトアンドセレクトシャフトの軌跡を安定させることができる。その結果、シフトアンドセレクトシャフトと一体的に設けられるシフトアンドセレクトレバーがそれぞれフォークシャフトと一体的に設けられる複数のシフトヘッドに同時に係合する、いわゆる二重噛みの発生や、シフトアンドセレクトレバーがシフトヘッドに係合する際の引っ掛かりの発生などを抑制できる。そのため、シフトアンドセレクトレバーとシフトヘッドとの係合をタイトに設計することができ、シフト操作後のシフトレバーのがた量を小さくすることができる。
【0015】
しかも、ガイド溝のシフト溝部がシフト方向の両側に開放されているので、シフト操作時に、壁に突き当たったような感覚を運転者に与えたり、衝撃音が発生したりすることを抑制できる。
【0016】
一方、ガイド溝のセレクト溝部は、セレクト方向の両端が閉塞されることによりセレクト方向の両側に開放されていない。そのため、ガイド溝内でのガイドピンのセレクト方向の移動量を一定に制限することができ、ひいてはシフトレバーのセレクト操作の操作量を一定に制限することができる。
【0017】
また、シフトカムには、凹面および斜面を含むカム面が形成されている。凹面は、シフトアンドセレクトシャフトの中心軸線側に凹状をなし、斜面は、凹面のシフト方向の両側に凹面から離れるにつれてシフトアンドセレクトシャフトの中心軸線に近づくように延びている。カム面には、カム当接部材が弾性的に当接している。シフトアンドセレクトシャフトがシフト方向に回動されると、カム当接部材が凹面の一端または他端を乗り越えて斜面に至る。そのため、カム当接部材が凹面の一端または他端を乗り越えるときに、シフト操作の荷重が最大となり、カム当接部材が凹面の一端または他端を乗り越えると、シフト操作の荷重が急激に低減し、シフトレバーがシフト操作の方向に吸い込まれる感覚を運転者に与えることができる。そして、シフトカムは、各斜面の凹面側と反対側に斜面に対して折り返される面(ディテントストッパ)を有していないので、シフト方向の小型化を図ることができる。そのため、シフトカムの回転半径を大きく確保して、凹面とカム当接部材との距離を短縮することにより、カム当接部材から凹面に入力される弾性力を増すことができ、シフトレバーの吸い込み感を大きく得ることができる。
【0018】
さらには、フォークシャフトの周面に、第1ディテント溝および第2ディテント溝が間隔を空けて形成されるとともに、シャフト当接部材が弾性的に当接している。ガイドピンがガイド溝のシフト溝部の一端部に位置するときには、シャフト当接部材が第1ディテント溝に嵌まり、ガイドピンがシフト溝部の他端部に位置するときには、シャフト当接部材が第2ディテント溝に嵌まる。これにより、ガイド溝内でのガイドピンのシフト方向の移動量を一定に制限することができ、ひいてはシフトレバーのシフト操作の操作量を一定に制限することができる。
【0019】
シフトアンドセレクトガイドとシフトカムとは、一体的に設けられていることが好ましい。
【0020】
これにより、シフトアンドセレクトガイドのガイド溝とシフトカムのカム面との相対位置を一定にすることができる。その結果、シフト操作の際に、シフト操作の荷重の変化とシフト操作が規制されるタイミングとを上手く同期させることができ、シフトフィーリングを向上させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、シフト操作時のシフトフィーリングを向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0024】
<シャフトアッセンブリ>
図1は、本発明の一実施形態に係るシャフトアッセンブリ1が設けられた手動変速機10の斜視図である。
【0025】
シャフトアッセンブリ1は、自動車などの車両用の手動変速機10に設けられる。シャフトアッセンブリ1は、コントロールカバー11、シフトアンドセレクトシャフト12、シフトアウタレバー13、セレクトアウタレバー14、シフトアンドセレクトレバー15およびインターロックプレート16を備えている。
【0026】
コントロールカバー11は、一方側に開放された略ハット形状に形成されている。コントロールカバー11の開放側の端部は、手動変速機の外殻をなすケース17に形成された開口を取り囲む周囲にケース17の外側から当接されて、ボルトによってケース17に締結される。
【0027】
なお、
図1には、シャフトアッセンブリ1がケース17を透過して示されている。
【0028】
シフトアンドセレクトシャフト12は、コントロールカバー11を貫通し、コントロールカバー11に対して軸線方向に移動可能かつ軸線まわりに回動可能に設けられている。シフトアンドセレクトシャフト12の軸線方向の一端部は、コントロールカバー11の外部に配置され、他端部は、ケース17内に配置されている。
【0029】
シフトアウタレバー13は、その一端部がシフトアンドセレクトシャフト12の上端部、つまりコントロールカバー11の外部に配置される端部に固定され、シフトアンドセレクトシャフト12の径方向(以下、単に「径方向」という。)に延びている。シフトアウタレバー13の先端部には、マス21が取り付けられている。シフトアウタレバー13の途中部には、シフトアンドセレクトシャフト12の軸線から外れた位置に、棒状のケーブル接続部22が立設されている。ケーブル接続部22には、シフトケーブル(図示せず)の一端が接続され、シフトケーブルの他端は、運転者により操作されるシフトレバーに接続されている。シフトレバーは、車室内に配設されている。
【0030】
セレクトアウタレバー14は、コントロールカバー11の外部に配置され、径方向に延びる回動軸23の一端部に固定されている。回動軸23は、コントロールカバー11の側面を貫通し、コントロールカバー11に回動可能に保持されている。回動軸23の他端部には、操作部材24が固定されている。操作部材24は、シフトアンドセレクトシャフト12と係合している。セレクトアウタレバー14には、回動軸23と平行に延びる棒状のケーブル接続部25が設けられている。ケーブル接続部25には、セレクトケーブル(図示せず)の一端が接続され、セレクトケーブルの他端は、シフトレバーに接続されている。
【0031】
シフトアンドセレクトレバー15は、シフトアンドセレクトシャフト12におけるケース17内に配置された部分に取り付けられている。具体的には、シフトアンドセレクトレバー15は、略円筒状の取付部26と、取付部26の外周面から径方向に延びる略板状のレバー部27とを一体的に備えている。取付部26には、ピン挿通孔が側面を貫通して形成されている。そのピン挿通孔がシフトアンドセレクトシャフト12に形成されたピン挿通孔と位置合わせされて、それらのピン挿通孔にグローブピン28が挿通されることにより、取付部26は、シフトアンドセレクトシャフト12に固定的に(シフトアンドセレクトシャフト12に対して軸線方向および回動方向に変位不能に)取り付けられている。
【0032】
インターロックプレート16は、シフトアンドセレクトシャフト12に対して軸線方向に変位不能かつ軸線まわりに回動可能に設けられている。インターロックプレート16は、シフトアンドセレクトレバー15を挟んだ軸線方向の一方側および他方側においてそれぞれ径方向に延びるアーム部31,32と、アーム部31,32の基端間に跨がる架設部33とを一体的に有している。アーム部31,32の先端部は、軸線方向のコントロールカバー11側と反対側に屈曲し、それぞれロック爪部34,35をなしている。ロック爪部34,35は、シフトアンドセレクトレバー15の先端部と軸線方向に間隔を空けて対向している。
【0033】
一方、ケース17内には、たとえば、3個のシフトヘッド41,42,43が設けられている。シフトヘッド41〜43の一端部は、それぞれ径方向に延びる板状に形成され、互いに軸線方向に間隔を空けて積層された状態に設けられている。そして、その一端部には、シフトアンドセレクトレバー15の先端部が係合可能、かつ、ロック爪部34,35が挿通可能な切欠が形成されている。
【0034】
シフトヘッド41〜43の他端部は、それぞれフォークシャフト44,45,46に連結されている。フォークシャフト44〜46は、シフトヘッド41〜43の一端部の延在方向およびシフトアンドセレクトシャフト12の軸線方向の両方向と直交する方向に互いに平行をなして延びている。フォークシャフト44〜46は、それぞれシフトフォーク47,48,49に連結されている。
【0035】
シフトレバーのセレクト操作が行われると、そのセレクト操作力がセレクトケーブルを介してセレクトアウタレバー14に伝達され、セレクトアウタレバー14が回動することにより、シフトアンドセレクトシャフト12が軸線方向(セレクト方向)に移動する。シフトアンドセレクトシャフト12の軸線方向の移動により、シフトアンドセレクトレバー15の先端部がシフトヘッド41〜43のいずれかの1つの切欠と係合する。そして、シフトレバーのシフト操作が行われると、そのシフト操作力がシフトケーブルを介してシフトアウタレバー13に伝達され、シフトアウタレバー13が回動することにより、シフトアンドセレクトシャフト12が中心軸線まわり(シフト方向)に回動する。シフトアンドセレクトシャフト12の回動に伴って、シフトアンドセレクトレバー15がシフト方向に移動する。そして、シフトアンドセレクトレバー15の移動により、シフトアンドセレクトレバー15の先端部が係合したシフトヘッド41〜43のいずれか1つが移動する。
【0036】
シフトヘッド41〜43のいずれか1つが移動すると、その移動するシフトヘッド41〜43とフォークシャフト44〜46およびシフトフォーク47〜49を介して連結されるシンクロメッシュのスリーブが移動し、その移動方向の下流側の変速ギヤのスプラインとスリーブの内スプラインとが噛み合って、所定の変速段が構成される。
【0037】
シフトアンドセレクトレバー15の先端部が最上段のシフトヘッド41の切欠と係合する状態では、シフトヘッド42,43の切欠には、インターロックプレート16のロック爪部35が配置される。これにより、シフトヘッド42,43の移動が阻止される。シフトアンドセレクトレバー15の先端部が中段のシフトヘッド42の切欠と係合する状態では、シフトヘッド41,43の切欠には、それぞれインターロックプレート16のロック爪部34,35が配置される。これにより、シフトヘッド41,43の移動が阻止される。また、シフトアンドセレクトレバー15の先端部が最下段のシフトヘッド43の切欠と係合する状態では、シフトヘッド41,42の切欠には、インターロックプレート16のロック爪部34が配置される。これにより、シフトヘッド41,42の移動が阻止される。このように、シフトヘッド41〜43のいずれか1つが移動するときに、残りの2つの移動が阻止されることにより、変速ギヤが2重に噛み合う、いわゆるインターロックが防止されている。
【0038】
<カム/ガイド部材>
図2は、シャフトアッセンブリ1の斜視図であって、フォークシャフト44〜46が延びる方向から見た図である。
図2では、コントロールカバー11の図示が省略されている。
図3は、
図2に示される切断面線A−Aにおけるシャフトアッセンブリ1の断面図である。
図4は、
図2に示される切断面線B−Bにおけるシャフトアッセンブリ1の断面図である。
【0039】
コントロールカバー11の内側には、
図3に示されるように、カム/ガイド部材51が設けられている。カム/ガイド部材51は、外嵌部材52、シフトカム53およびシフトアンドセレクトガイド54を一体に備えている。
【0040】
<外嵌部材>
外嵌部材52は、略円筒状を有し、シフトアンドセレクトシャフト12に外嵌されている。外嵌部材52には、ピン挿通孔61が側面を貫通して形成されている。外嵌部材52は、ピン挿通孔61がシフトアンドセレクトシャフト12に形成されたピン挿通孔(図示せず)と重なるように位置合わせされて、ピン挿通孔61およびシフトアンドセレクトシャフト12のピン挿通孔に跨がってグローブピン62が挿通されることにより、シフトアンドセレクトシャフト12に固定的に(シフトアンドセレクトシャフト12に対して軸線方向および回動方向に変位不能に)取り付けられている。
【0041】
グローブピン28,62がそれぞれ挿通されるシフトアンドセレクトシャフト12のピン挿通孔は、軸線方向に間隔を空けて並び、互いに平行をなして延びている。これにより、シフトアンドセレクトレバー15とカム/ガイド部材51とは、シフトアンドセレクトシャフト12の回動方向であるシフト方向および軸線方向であるセレクト方向の相対位置が一定となる。
【0042】
<シフトカム>
図5は、カム/ガイド部材51の斜視図である。
【0043】
シフトカム53は、シフトアンドセレクトシャフト12の軸線からの径方向の距離がシフト方向の位置により変化するカム面71を有している。カム面71は、シフトアンドセレクトシャフト12の中心軸線C(
図2参照)側に凹状をなす凹面72と、凹面72のシフト方向の両側で凹面72から離れるにつれて中心軸線Cに近づくように延びる平面からなる斜面73,74とを含む。
【0044】
シフトカム53と径方向に対向する位置には、
図3に示されるように、カム当接部材81が設けられている。カム当接部材81は、略円筒状の外筒部材82と、外筒部材82内に移動可能に設けられた移動部材83と、移動部材83を外筒部材82の開口側に付勢する付勢部材84と、付勢部材84の付勢力によりシフトカム53のカム面71に弾性的に当接するボール85とを備えている。外筒部材82は、コントロールカバー11の側面に形成された開口87にコントロールカバー11の外側から挿入されて、コントロールカバー11に保持されている。
【0045】
シフトレバーがニュートラルの位置に位置する状態では、ボール85がカム面71の凹面72の最奥部に当接するように、シフトカム53およびカム当接部材81の相対位置が決められている。シフトレバーのシフト操作により、シフトアンドセレクトシャフト12がシフト方向に回動し、ボール85が凹面72の最奥部から凹面72上を斜面73,74の一方に向けて移動すると、ボール85が凹面72に押圧されて、付勢部材84が圧縮される。凹面72には、その反力が付与される。ボール85が凹面72と斜面73,74との境界を乗り越えるまで、ボール85から凹面72に付与される反力が増大し、これに伴い、シフトアンドセレクトシャフト12を回動させるシフト操作の荷重が増大する。そして、ボール85が凹面72と斜面73,74との境界を乗り越えると、ボール85からシフトカム53に付与される反力が急激に低減し、これに伴い、シフトアンドセレクトシャフト12を回動させるシフト操作の荷重が低減する。
【0046】
このように、シフトカム53およびカム当接部材81は、シフトアンドセレクトシャフト12を回動させるシフト操作の荷重を変化させるディテント機構を構成している。
【0047】
<シフトアンドセレクトガイド>
シフトアンドセレクトガイド54は、側面視で略矩形状の外形を有している。シフトアンドセレクトガイド54の外周面には、ガイド溝91が形成されている。ガイド溝91は、シフトレバーの操作をガイドするためのシフトゲートに対応した形状に形成されている。
【0048】
具体的には、ガイド溝91は、
図5に示されるように、セレクト方向(シフトアンドセレクトシャフト12の軸線方向)に延びるセレクト溝部92と、セレクト溝部92の一端からシフト方向の両側に延びる第1シフト溝部93と、セレクト溝部92の中央からシフト方向の両側に延びる第2シフト溝部94と、セレクト溝部92の他端からシフト方向の両側に延びる第3シフト溝部95とを有している。
【0049】
シフトアンドセレクトガイド54のセレクト方向の一端部および他端部には、それぞれ端縁に沿って延びる規制壁96,97が形成されている。そのため、セレクト溝部92は、セレクト方向の一端および他端がそれぞれ規制壁96,97により閉塞されて、セレクト方向の両側に開放されていない。
【0050】
一方、シフトアンドセレクトガイド54のシフト方向の両端部には、壁が形成されておらず、第1シフト溝部93、第2シフト溝部94および第3シフト溝部95(以下、総称する場合には「シフト溝部93〜95」という。)は、シフト方向の両側に開放されている。
【0051】
シフトアンドセレクトガイド54と径方向に対向する位置には、
図3に示されるように、ガイドピン101が設けられている。ガイドピン101は、コントロールカバー11の側面に形成された開口102に挿通されて、コントロールカバー11に保持されている。ガイドピン101の先端部103は、ガイド溝91の溝幅よりも小さい直径の円柱状に形成されており、ガイド溝91に挿入されている。
【0052】
シフトレバーがニュートラルの位置に位置する状態では、ガイドピン101の先端部103がセレクト溝部92内に位置する。シフトレバーがニュートラルの位置でセレクト操作されると、ガイドピン101の先端部103がセレクト方向に移動し、セレクト溝部92のセレクト方向の端面に当接して、それ以上の移動が阻止される。
【0053】
シフトレバーがニュートラルの位置から1速段の位置に操作されると、ガイドピン101の先端部103は、セレクト溝部92から第1シフト溝部93の一方の端部104に移動する。
【0054】
シフトレバーがニュートラルの位置から2速段の位置に操作されると、ガイドピン101の先端部103は、セレクト溝部92から他方の端部105に移動する。
【0055】
シフトレバーがニュートラルの位置から3速段の位置に操作されると、ガイドピン101の先端部103は、セレクト溝部92から第2シフト溝部94の一方の端部106に移動する。
【0056】
シフトレバーがニュートラルの位置から4速段の位置に操作されると、ガイドピン101の先端部103は、セレクト溝部92から他方の端部107に移動する。
【0057】
シフトレバーがニュートラルの位置から5速段の位置に操作されると、ガイドピン101の先端部103は、セレクト溝部92から第3シフト溝部95の一方の端部108に移動する。
【0058】
シフトレバーがニュートラルの位置からリバースの位置にシフト操作されると、ガイドピン101の先端部103は、セレクト溝部92から第3シフト溝部95の他方の端部109に移動する。
【0059】
第1シフト溝部93の一方の端部104と第2シフト溝部94の一方の端部106とを仕切る仕切壁111には、第1シフト溝部93の他方の端部105と第2シフト溝部94の一方の端部106とを結ぶ直線と略平行に延びる案内面112が形成されている。また、第2シフト溝部94の一方の端部106と第3シフト溝部95の一方の端部108とを仕切る仕切壁113には、第2シフト溝部94の他方の端部107と第3シフト溝部95の一方の端部108とを結ぶ直線と略平行に延びる案内面114が形成されている。
【0060】
これにより、シフトレバーが2速段の位置から3速段の位置に斜め操作される際に、ガイドピン101の先端部103が案内面112に案内されて、第1シフト溝部93の他方の端部105から第2シフト溝部94の一方の端部106にスムーズに移動する。また、シフトレバーが4速段の位置から5速段の位置に斜め操作される際に、ガイドピン101の先端部103が案内面114に案内されて、第2シフト溝部94の他方の端部107から第3シフト溝部95の一方の端部108にスムーズに移動する。
【0061】
<シフトストッパ>
フォークシャフト44〜46の一方の端部上には、それぞれシャフト当接部材121が設けられている。シャフト当接部材121は、コントロールカバー11に固定的に保持される固定部122と、固定部122の下端部にコイルばね123を介して弾性的に支持されたボール124とを備えている。各シャフト当接部材121のボール124は、フォークシャフト44〜46の周面に弾性的に当接している。
【0062】
フォークシャフト44には、シフトレバーがニュートラルの位置でボール124が当接する部位に対して軸線方向の一方側および他方側に、それぞれディテント溝131,132が形成されている。
【0063】
フォークシャフト45には、シフトレバーがニュートラルの位置でボール124が当接する部位に対して軸線方向の一方側および他方側に、それぞれディテント溝133,134が形成されている。
【0064】
フォークシャフト46には、シフトレバーがニュートラルの位置でボール124が当接する部位に対して軸線方向の一方側および他方側に、それぞれディテント溝135,136が形成されている。
【0065】
シフトレバーニュートラルの位置から1速段の位置に操作されると、フォークシャフト46の周面に当接しているボール124がディテント溝135に嵌まる。これにより、フォークシャフト46の移動に抵抗が生じ、それ以上のフォークシャフト46の移動が弾性的に阻止される。
【0066】
シフトレバーニュートラルの位置から2速段の位置に操作されると、フォークシャフト46の周面に当接しているボール124がディテント溝136に嵌まる。これにより、フォークシャフト46の移動に抵抗が生じ、それ以上のフォークシャフト46の移動が弾性的に阻止される。
【0067】
シフトレバーニュートラルの位置から3速段の位置に操作されると、フォークシャフト45の周面に当接しているボール124がディテント溝133に嵌まる。これにより、フォークシャフト45の移動に抵抗が生じ、それ以上のフォークシャフト45の移動が弾性的に阻止される。
【0068】
シフトレバーニュートラルの位置から4速段の位置に操作されると、フォークシャフト45の周面に当接しているボール124がディテント溝134に嵌まる。これにより、フォークシャフト45の移動に抵抗が生じ、それ以上のフォークシャフト45の移動が弾性的に阻止される。
【0069】
シフトレバーニュートラルの位置から5速段の位置に操作されると、フォークシャフト44の周面に当接しているボール124がディテント溝131に嵌まる。これにより、フォークシャフト44の移動に抵抗が生じ、それ以上のフォークシャフト44の移動が弾性的に阻止される。
【0070】
シフトレバーニュートラルの位置からリバースの位置に操作されると、フォークシャフト44の周面に当接しているボール124がディテント溝132に嵌まる。これにより、フォークシャフト44の移動に抵抗が生じ、それ以上のフォークシャフト44の移動が弾性的に阻止される。
【0071】
<作用効果>
以上のように、シフトアンドセレクトシャフト12は、手動変速機10のケース17に取り付けられるコントロールカバー11に対して、その中心軸線Cを中心とするシフト方向に回動可能かつ中心軸線Cに沿ったセレクト方向に移動可能に設けられている。車室内に設けられたシフトレバーがシフト操作されると、シフトアンドセレクトシャフト12がシフト方向に回動し、シフトレバーがセレクト操作されると、シフトアンドセレクトシャフト12がセレクト方向に移動する。
【0072】
シフトアンドセレクトシャフト12と一体的に回動可能に、シフトカム53およびシフトアンドセレクトガイド54が設けられている。
【0073】
シフトアンドセレクトガイド54には、シフト方向に延びるシフト溝部93〜95およびセレクト方向に延びるセレクト溝部92を含むガイド溝91が形成されている。ガイド溝91には、コントロールカバー11に対して固定的に設けられているガイドピン101の先端部が挿入される。シフトアンドセレクトシャフト12のシフト方向の回動およびセレクト方向の移動により、ガイドピン101の先端部がガイド溝91に案内されつつ移動する。これにより、シフト操作およびセレクト操作時のシフトアンドセレクトシャフト12の軌跡を安定させることができる。その結果、シフトアンドセレクトシャフト12と一体的に設けられるシフトアンドセレクトレバー15がそれぞれフォークシャフト44〜46と一体的に設けられるシフトヘッド41〜43に同時に係合する、いわゆる二重噛みの発生や、シフトアンドセレクトレバー15がシフトヘッド41〜43に係合する際の引っ掛かりの発生などを抑制できる。そのため、シフトアンドセレクトレバー15とシフトヘッド41〜43との係合をタイトに設計することができ、シフト操作後のシフトレバーのがた量を小さくすることができる。
【0074】
しかも、ガイド溝91のシフト溝部93〜95がシフト方向の両側に開放されているので、シフト操作時に、壁に突き当たったような感覚を運転者に与えたり、衝撃音が発生したりすることを抑制できる。
【0075】
一方、ガイド溝91のセレクト溝部92は、セレクト方向の両端が閉塞されることによりセレクト方向の両側に開放されていない。そのため、ガイド溝91内でのガイドピン101のセレクト方向の移動量を一定に制限することができ、ひいてはシフトレバーのセレクト操作の操作量を一定に制限することができる。
【0076】
また、シフトカム53には、凹面72および斜面73,74を含むカム面71が形成されている。凹面72は、シフトアンドセレクトシャフト12の中心軸線C側に凹状をなし、斜面73,74は、凹面72のシフト方向の両側に凹面72から離れるにつれてシフトアンドセレクトシャフト12の中心軸線Cに近づくように延びている。カム面71には、カム当接部材81のボール85が弾性的に当接している。シフトアンドセレクトシャフト12がシフト方向に回動されると、ボール85が凹面72の一端または他端を乗り越えて斜面73,74に至る。そのため、ボール85が凹面72の一端または他端を乗り越えるときに、シフト操作の荷重が最大となり、ボール85が凹面72の一端または他端を乗り越えると、シフト操作の荷重が急激に低減し、シフトレバーがシフト操作の方向に吸い込まれる感覚を運転者に与えることができる。そして、シフトカム53は、各斜面73,74の凹面72側と反対側に斜面73,74に対して折り返される面(ディテントストッパ)を有していないので、シフト方向の小型化を図ることができる。そのため、シフトカム53の回転半径を大きく確保して、凹面72とボール85との距離を短縮することにより、ボール85から凹面72に入力される弾性力を増すことができ、シフトレバーの吸い込み感を大きく得ることができる。
【0077】
さらには、フォークシャフト44の周面には、ディテント溝131,132が間隔を空けて形成されるとともに、シャフト当接部材121のボール124が弾性的に当接している。ガイドピン101がガイド溝91の第3シフト溝部95の一端部に位置するときには、ボール124がディテント溝131に嵌まり、ガイドピン101が第3シフト溝部95の他端部に位置するときには、ボール124がディテント溝132に嵌まる。これにより、ガイド溝91の第3シフト溝部95内でのガイドピン101のシフト方向の移動量を一定に制限することができる。フォークシャフト45,46についても同様の構成であり、第1シフト溝部93および第2シフト溝部94内でのガイドピン101のシフト方向の移動量を一定に制限することができる。よって、シフトレバーのシフト操作の操作量を一定に制限することができる。
【0078】
シフトアンドセレクトガイド54とシフトカム53とは、一体的に設けられている。これにより、シフトアンドセレクトガイド54のガイド溝91とシフトカム53のカム面71との相対位置を一定にすることができる。その結果、シフト操作の際に、シフト操作の荷重の変化とシフト操作が規制されるタイミングとを上手く同期させることができ、シフトフィーリングを向上させることができる。
【0079】
<変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
【0080】
たとえば、シフトアンドセレクトガイド54とシフトカム53とは、一体的に設けられていることが好ましいが、一体的に設けられていなくてもよい。
【0081】
その他、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。