(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6851969
(24)【登録日】2021年3月12日
(45)【発行日】2021年3月31日
(54)【発明の名称】一連のオブジェクトを製造するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
B22F 3/16 20060101AFI20210322BHJP
B22F 3/105 20060101ALI20210322BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20210322BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20210322BHJP
B29C 64/165 20170101ALI20210322BHJP
B29C 64/176 20170101ALI20210322BHJP
B29C 64/357 20170101ALI20210322BHJP
B29C 64/25 20170101ALI20210322BHJP
B29C 64/232 20170101ALI20210322BHJP
B29C 64/40 20170101ALI20210322BHJP
【FI】
B22F3/16
B22F3/105
B33Y10/00
B33Y30/00
B29C64/165
B29C64/176
B29C64/357
B29C64/25
B29C64/232
B29C64/40
【請求項の数】27
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2017-526962(P2017-526962)
(86)(22)【出願日】2015年11月18日
(65)【公表番号】特表2017-536479(P2017-536479A)
(43)【公表日】2017年12月7日
(86)【国際出願番号】EP2015076987
(87)【国際公開番号】WO2016079192
(87)【国際公開日】20160526
【審査請求日】2018年10月23日
(31)【優先権主張番号】1420601.5
(32)【優先日】2014年11月19日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】514048257
【氏名又は名称】ディジタル メタル アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン,ボ−ゴラン
(72)【発明者】
【氏名】ブルゲマイスター,マグヌス
【審査官】
西田 彩乃
(56)【参考文献】
【文献】
特表2013−542867(JP,A)
【文献】
特表2006−519925(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0067501(US,A1)
【文献】
特開平08−252867(JP,A)
【文献】
特開2015−071282(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 3/16
B22F 3/105
B29C 64/165
B29C 64/176
B29C 64/232
B29C 64/25
B29C 64/357
B29C 64/40
B33Y 10/00
B33Y 30/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一連のオブジェクトを製造する方法であって、当該方法は、
製造媒体の層を提供するステップと、
前記媒体の層の部分を、該層の少なくとも端部領域で結合して支持部を形成するステップと、
前記層の端部領域の付近で前記支持部を把持しながら前記支持部を下げるステップと、
前記支持部によって支持される媒体のさらなる層を提供するステップと、
前記媒体のさらなる層の部分を選択的に結合して少なくともオブジェクト部を形成するステップと、
を含み、
前記オブジェクトと比べて結合強度が異なる部分で前記支持部が形成されるように、前記製造媒体の異なる部分が異なる結合強度で結合され、
前記支持部の結合は前記オブジェクトの結合よりも弱く、前記支持部の結合は前記オブジェクトが形成された後に解消され、
前記支持部の結合は可溶性バインダを用いたものであり、前記支持部の結合は、該結合を解消するための適切な溶剤を適用することにより後で解消される、方法。
【請求項2】
前記支持部をさらに下げるステップと、
前記さらなる層の上に前記媒体の他のさらなる層を提供するステップと、
前記媒体の他のさらなる層の部分を結合してさらなる支持部を形成するステップと、
前記さらなる層の端部領域の付近で前記さらなる支持部を把持するステップと、
前記支持部をリリースするステップと、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記層及び前記さらなる層を含む前記媒体の層は連続した柱状体を構成する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記オブジェクト部が前記層内で追加の支持部によって周りが囲まれるように、前記さらなる層の部分を選択的に結合して前記支持部に連結される前記追加の支持部を形成するステップをさらに含む、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記支持部及び前記追加の支持部は箱を形成する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記適切な溶剤は、前記支持部に前記適切な溶剤を噴霧することより又は前記支持部を前記適切な溶剤に浸漬することにより適用される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記支持部から前記オブジェクトをリリースするために前記支持部の結合が解消される、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記支持部の作成に用いられる前記製造媒体は、その結合が解消された後にリサイクルされる、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記可溶性バインダは可溶性ポリマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記製造媒体は金属粉末である、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
一連のオブジェクトを製造するための装置であって、当該装置は、
構築領域と、
前記構築領域内に製造媒体の層を配置するように構成された分注ユニットであって、該構築領域内で前記層の部分が選択的に結合される、分注ユニットと、
前記構築領域の下に配置されて、前記層の下にある下側の層を該下側の層の端部の付近で支持するとともに、該下側の層を前記構築領域から離れるように下方に移動させるように構成された支持ユニットと、
を含み、
当該装置は、前記構築領域内で一連の層の部分を選択的に結合して周囲構造によって周りが囲まれるオブジェクトを形成するとともに、前記周囲構造を少なくとも形成後に前記支持ユニットで支持するように構成され、
当該装置は、前記オブジェクトと比べて結合強度が異なる部分で前記周囲構造が形成されるように、前記製造媒体の異なる部分を異なる結合強度で結合するように適合され、
前記周囲構造の結合は前記オブジェクトの結合よりも弱く、前記周囲構造の結合は前記オブジェクトの形成後に解消され、
前記周囲構造の結合は可溶性バインダを用いたものであり、前記装置は、前記周囲構造の結合を解消するための適切な溶剤を適用することにより該結合を後で解消するように構成されている、装置。
【請求項12】
前記支持ユニットは一対の対向する把持部を含み、該一対の把持部は相互に対向する方向に前記下側の層に対して把持力を適用するように構成されている、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
各把持部は、前記周囲構造と平行に配置されるとともに前記下側の層の端部で前記下側の層を把持するためのクランプ面を有し、該クランプ面は前記下側の層を下方に移動させるために前記一対の把持部のうちの他方の把持部と共に前記構築領域から離れるように移動可能である、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記装置はさらなる一対の対向する把持部を含み、該さらなる一対の対向する把持部は前記一対の把持部の相互に対向する方向に対して傾斜した相互に対向する方向に前記下側の層に対して把持力を適用するように構成されている、請求項12又は13に記載の装置。
【請求項15】
各把持部は、前記周囲構造と平行に配置されるとともに、前記下側の層を下方に且つ前記構築領域から離れるように漸進的に移動させながら前記下側の層を支持するための把持面を有するエンドレスベルトを含む、請求項12に記載の装置。
【請求項16】
前記支持ユニットが前記下側の層をリリースした後で前記周囲構造を受け取るように構成されたレシーバーをさらに含む、請求項11乃至15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
前記装置は、前記オブジェクトと比べて結合強度が異なる領域で前記周囲構造が形成されるように、前記層の異なる部分を異なる結合強度で結合するように適合された選択的結合ユニットをさらに含む、請求項11乃至16のいずれか一項に記載の装置。
【請求項18】
前記装置は、前記周囲構造に前記適切な溶剤を噴霧することより又は前記周囲構造を前記適切な溶剤に浸漬することにより前記適切な溶剤を適用するように適合されている、請求項11に記載の装置。
【請求項19】
前記周囲構造から前記オブジェクトをリリースするために前記周囲構造の結合が解消される、請求項11乃至18のいずれか一項に記載の装置。
【請求項20】
前記装置は、前記周囲構造の作成に用いられる前記製造媒体の結合が解消された後で前記製造媒体をリサイクルするように適合されている、請求項11乃至19のいずれか一項に記載の装置。
【請求項21】
前記可溶性バインダは可溶性ポリマーである、請求項11に記載の装置。
【請求項22】
前記製造媒体は金属粉末である、請求項11乃至21のいずれか一項に記載の装置。
【請求項23】
一連のオブジェクトを製造する方法であって、当該方法は、
製造媒体の柱状体の連続層の部分を選択的に結合して、一連のオブジェクトの周りを囲む一連の支持構造を形成するステップと、
前記製造媒体の柱状体を下方に移動させながら、前記柱状体の上部に製造媒体の層をさらに加えるとともに前記柱状体の底部から支持構造を取り出すステップと、
を含み、
前記製造媒体の柱状体は、前記柱状体の底部に位置する1つの支持構造により支持され、該支持構造は該支持構造の側部の付近で外部的に支持され、
前記オブジェクトと比べて結合強度が異なる部分で前記支持構造が形成されるように、前記製造媒体の異なる部分が異なる結合強度で結合され、
前記支持構造の結合は前記オブジェクトの結合よりも弱く、前記支持構造の結合は前記オブジェクトが形成された後に解消され、
前記支持構造の結合は可溶性バインダを用いたものであり、前記支持構造の結合は、該結合を解消するための適切な溶剤を適用することにより後で解消される、方法。
【請求項24】
一連のオブジェクトを製造する方法であって、当該方法は、
構築領域内に製造媒体の一連の層を配置するステップであって、該一連の層は、該一連の層の少なくとも端部領域に配置される第1の支持構造によって周りが囲まれる第1のオブジェクトを形成するために選択的に結合された部分を有する、ステップと、
前記第1の支持構造を形成する層の端部で前記第1の支持構造を外部的に支持しながら前記第1の支持構造を前記構築領域から離れるように下方に移動させるステップと、
製造媒体の一連の層を配置するステップであって、該一連の層は、該一連の層の端部領域に配置される第2の支持構造によって周りが囲まれる第2のオブジェクトを形成するために選択的に結合された部分を有する、ステップと、
前記第2の支持構造を形成する層の端部で前記第2の支持構造を外部的に支持しながら前記第1の支持構造を外部的に支持するステップと、
前記第2の支持構造が外部的に支持されたときに前記第1の支持構造をリリースするステップと、
前記構築領域の下の取り出し位置から前記第1の支持構造がリリースされた後に、前記オブジェクトを含む前記第1の支持構造を取り出すステップと、
を含み、
前記オブジェクトと比べて結合強度が異なる部分で前記第1の支持構造及び前記第2の支持構造が形成されるように、前記製造媒体の異なる部分が異なる結合強度で結合され、
前記第1の支持構造及び前記第2の支持構造の結合は前記オブジェクトの結合よりも弱く、前記第1の支持構造及び前記第2の支持構造の結合は前記オブジェクトが形成された後に解消され、
前記第1の支持構造及び前記第2の支持構造の結合は可溶性バインダを用いたものであり、前記第1の支持構造及び前記第2の支持構造の結合は、該結合を解消するための適切な溶剤を適用することにより後で解消される、方法。
【請求項25】
一連のオブジェクトを製造するための装置であって、当該装置は、
選択的に結合された部分を有する製造媒体の一連の層を構築領域内に配置して、該一連の層の少なくとも端部領域に配置される支持構造により周りを囲まれるオブジェクトを形成するように構成された材料配置ユニットと、
前記支持構造を形成する層の端部で前記支持構造を支持しながら、前記支持構造を前記構築領域の下に位置する取り出し領域に向けて前記構築領域から離れるように下方に移動させるように構成された支持ユニットと、
を含み、
前記支持ユニットは、垂直に配置されたオブジェクトをそれぞれが含む少なくとも2つの連続する支持構造を、下側の支持構造がリリースされたときに上側の支持構造が支持されたままであるとともに該下側の支持構造を置き換えるために下方に移動できるよう同時に支持するように構成され、
前記オブジェクトと比べて結合強度が異なる部分で前記支持構造が形成されるように、前記製造媒体の異なる部分が異なる結合強度で結合され、
前記支持構造の結合は前記オブジェクトの結合よりも弱く、前記支持構造の結合は前記オブジェクトが形成された後に解消され、
前記支持構造の結合は可溶性バインダを用いたものであり、前記支持構造の結合は、該結合を解消するための適切な溶剤を適用することにより後で解消される、装置。
【請求項26】
前記支持部を下げるステップは前記支持部を異なる垂直位置から把持するために前記層の端部領域に交互に把持力を適用しながら行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記支持ユニットは、前記下側の層に対して互いに対向する方向に把持力を適用するように構成された対向する第1の対の把持部対及び対向する第2の対の把持部を含み、該第1の対の把持部及び該第2の対の把持部は異なる垂直位置に配置され、前記下側の層が下方に送られるときに前記下側の層の端部に対して交互に把持力を適用するように構成されている、請求項11に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元オブジェクトを製造するための方法及び装置に関し、具体的には、連続的な製造プロセスで一連の3次元オブジェクトを製造可能な方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
3次元印刷は、各層の部分が結合された連続する材料層が構築領域内に配置されて、連続する層の結合部分によって所望のオブジェクトが形成される付加製造技術の一種である。配置の時点では、材料は液体媒体、粒状の固体媒体又は別の流動可能な媒体であり得る。
【0003】
従来、配置ユニットから材料層が配置されると、第1の材料層が配置される支持プレートは、さらなる材料層を構築領域に加えることができるように構築領域から離れて下方に移動させられる。そのため、配置された層は、上部に構築領域を有するとともに底部に支持プレートを有するウエル内に含まれる。概して支持プレートの寸法と、支持プレートが構築領域から離れて下方に移動され得る最大距離とに対応するウエルの寸法によって、製造のための利用可能な容量が制限される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特に、同じ製造稼働(manufacturing run)で大量のオブジェクトを製造することを望む場合、ウエルの容量によって製造できるオブジェクトの数が制限されてしまう。ウエルに同時に収容できる数よりも多い数のオブジェクトを製造することが望ましい場合、第1のバッチのオブジェクトを第1のジョブで製造してから該バッチのオブジェクトをウエルから取り出し、支持プレートを構築領域の直ぐ下のその元の位置に戻し、第2のバッチ又はさらなるバッチのオブジェクトを第2のジョブ又はさらなるジョブで製造しなければならない。とりわけ、各オブジェクトがウエルの最大寸法と同等の最大寸法を有する場合、製造された各オブジェクトには別々の製造ジョブが必要になることがあり、各オブジェクトをさらなるオブジェクトが製造される前にウエルから取り出さなければならない。このようなやり方で大量のオブジェクトを製造することは労働集約的であるとともに時間がかかる。
【0005】
したがって、大量のオブジェクト
を効率的に形成できる付加製造方法に対するニーズかある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、一連のオブジェクトを製造する方法が提供される。当該方法は、製造媒体(manufacturing medium)の層を提供するステップを含む。当該方法は、前記媒体の層の部分を、該層の少なくとも端部領域で結合して支持部を形成するステップを含む。当該方法は、前記層の端部領域の付近で(by)前記支持部を把持しながら前記支持部を下げるステップを含む。当該方法は、前記支持部によって支持される媒体のさらなる層を提供するステップを含む。
当該方法は、前記媒体のさらなる層の部分を選択的に結合して少なくともオブジェクト部を形成するステップを含む。
【0007】
一実施では、前記方法は、前記支持部をさらに下げるステップをさらに含む。本実施では、前記方法は前記さらなる層の上に前記媒体の他のさらなる層を提供するステップを含む。本実施では、前記方法は、前記媒体の他のさらなる層の部分を結合してさらなる支持部を形成するステップを含む。本実施では、前記方法は前記さらなる層の端部領域の付近で前記さらなる支持部を把持するステップを含む。本実施では、前記方法は前記支持部をリリースするステップを含む。
【0008】
一実施では、前記媒体のさらなる層は前記支持部の上の位置から提供され、前記支持部は前記さらなる支持部の下の位置からリリースされる。
【0009】
一実施では、前記層及び前記さらなる層を含む前記媒体の層は連続した柱状体(column)を構成する。
【0010】
一実施では、前記方法は前記オブジェクト部が前記層内で追加の支持部によって周りが囲まれるように、前記さらなる層の部分を選択的に結合して前記支持部に連結される前記追加の支持部を形成するステップを含む。
【0011】
一実施では、前記支持部及び前記追加の支持部は箱を形成する。
【0012】
一実施では、前記箱は開口部を含む。
【0013】
本発明の第2の態様によれば、一連のオブジェクトを製造するための装置が提供される。当該装置は構築領域(build region)を含む。当該装置は、前記構築領域内に製造媒体の層を配置するように構成された分注ユニットであって、該構築領域内で前記層の部分が選択的に結合される、分注ユニットを含む。当該装置は、前記構築領域の下に配置されて、前記層の下にある下側の層(lower layer)を該下側の層の端部の付近で支持するとともに、該下側の層を前記構築領域から離れるように下方に移動させるように構成された支持ユニットを含む。当該装置は、前記構築領域内で一連の層(successive layers)の部分を選択的に結合して周囲構造によって周りが囲まれるオブジェクトを形成するとともに、前記周囲構造を少なくとも形成後に前記支持ユニットで支持するように構成されている。
【0014】
一実施形態では、前記支持ユニットは一対の対向する把持部を含み、該一対の把持部は相互に対向する方向に前記下側の層に対して把持力を適用するように構成されている。
【0015】
一実施形態では、各把持部は、前記周囲壁と平行に配置されるとともに前記下側の層の端部で前記下側の層を把持するためのクランプ面を有し、該クランプ面は前記下側の層を下方に移動させるために前記一対の把持部のうちの他方の把持部と共に前記構築領域から離れるように移動可能である。
【0016】
一実施形態では、前記装置はさらなる一対の対向する把持部を含み、該さらなる一対の対向する把持部は前記一対の把持部の相互に対向する方向に対して傾斜した相互に対向する方向に前記下側の層に対して把持力を適用するように構成されている。
【0017】
一実施形態では、各把持部は、前記周囲壁と平行に配置されるとともに、前記下側の層を下方に且つ前記構築領域から離れるように漸進的に移動させながら前記下側の層を支持するための把持面を有するエンドレスベルトを含む。
【0018】
一実施形態では、前記装置は、前記支持ユニットが前記下側の層をリリースした後で前記支持構造を受け取るように構成されたレシーバーをさらに含む。
【0019】
一実施形態では、前記装置は、前記オブジェクトと比べて結合強度が異なる領域で前記周囲構造が形成されるように、前記層の異なる部分を異なる結合強度で結合するように適合された選択的結合ユニット(selective binding unit)をさらに含む。
【0020】
本発明の第3の態様によれば、一連のオブジェクトを製造する方法が提供される。当該方法は、製造媒体の柱状体の連続層(sequential layers)の部分を選択的に結合して、一連のオブジェクトの周りを囲む一連の支持構造を形成するステップを含む。当該方法は、前記製造媒体の柱状体を下方に移動させながら、前記柱状体の上部に製造媒体の層をさらに加えるとともに前記柱状体の底部から支持構造を取り出すステップを含み、前記製造媒体の柱状体は、前記柱状体の底部に位置する1つの支持構造により支持され、該支持構造自体は該支持構造の側部の付近で外部的に支持されている。
【0021】
本発明の第4の態様によれば、一連のオブジェクトを製造する方法が提供される。当該方法は、構築領域内に製造媒体の一連の層を配置するステップであって、該一連の層は、該一連の層の少なくとも端部領域に配置される第1の支持構造によって周りが囲まれる第1のオブジェクトを形成するために選択的に結合された部分を有する、ステップを含む。当該方法は、前記第1の支持構造を形成する層の端部で前記第1の支持構造を外部的に支持しながら前記第1の支持構造を前記構築領域から離れるように下方に移動させるステップを含む。当該方法は、製造媒体の一連の層を配置するステップであって、該一連の層は、該一連の層の端部領域に配置される第2の支持構造によって周りが囲まれる第2のオブジェクトを形成するために選択的に結合された部分を有する、ステップを含む。当該方法は、前記第2の支持構造を形成する層の端部で前記第2の支持構造を外部的に支持しながら前記第1の支持構造を外部的に支持するステップを含む。当該方法は、前記第2の支持構造が外部的に支持されたときに前記第1の支持構造をリリースするステップを含む。当該方法は、前記構築領域の下の取り出し位置から前記第1の支持構造がリリースされた後に、前記オブジェクトを含む前記第1の支持構造を取り出すステップを含む。
【0022】
本発明の第5の態様によれば、一連のオブジェクトを製造するための装置が提供される。当該装置は、選択的に結合された部分を有する媒体の一連の層を構築領域内に配置して、該一連の層の少なくとも端部領域に配置される支持構造により周りを囲まれるオブジェクトを形成するように構成された材料配置ユニットを含む。当該装置は、前記支持構造を形成する層の端部で前記支持構造を支持しながら、前記第1の支持構造を前記構築領域の下に位置する取り出し領域に向けて前記構築領域から離れるように下方に移動させるように構成された支持ユニットを含む。当該装置では、前記支持ユニットは、垂直に配置されたオブジェクトをそれぞれが含む少なくとも2つの連続する支持構造を、下側の支持構造がリリースされたときに上側の支持構造が支持されたままであるとともに該下側の支持構造を置き換えるために下方に移動できるよう同時に支持するように構成されている。
【0023】
本発明の実施形態又は実施では、前記オブジェクトと比べて結合強度が異なる部分で前記周囲構造が形成され得るように、前記製造媒体の異なる部分が異なる結合強度で結合され得る。
【0024】
本発明の実施形態又は実施では、前記周囲構造の結合は前記オブジェクトの結合よりも弱くてもよく、前記周囲構造の結合は前記オブジェクトが形成された後に解消され得る。
【0025】
本発明の実施形態又は実施では、前記周囲構造の結合は可溶性バインダ(soluble binder)を用いたものであってもよく、前記周囲構造の結合は、該結合を解消するための適切な溶剤を適用することにより後で解消され得る。
【0026】
本発明の実施形態又は実施では、前記適切な溶剤は、前記周囲構造に前記適切な溶剤を噴霧することより又は前記周囲構造を前記適切な溶剤に浸漬することにより適用され得る。
【0027】
本発明の実施形態又は実施では、前記周囲構造から前記オブジェクトをリリースするために前記周囲構造の結合が解消され得る。
【0028】
本発明の実施形態又は実施では、前記支持構造の作成に用いられる前記製造媒体は、その結合が解消された後にリサイクルされ得る。
【0029】
本発明の実施形態又は実施では、前記可溶性バインダは可溶性ポリマーであり得る。
【0030】
本発明の実施形態又は実施では、前記製造媒体は金属粉末であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0031】
本開示をより理解できるようにするとともに、本開示がどのように実行に移されるかを示すために、一例として添付の図面を参照する。図面の内容は以下のように要約される。
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る製造装置を示す。
【
図4】
図4a〜
図4cは、オブジェクトが装置から取り出される
図1の装置の一連の動作を示す。
【
図5】
図5は、ベルトを利用する代替的な送り機構の図である。
【
図6】
図6a及び
図6bは、ネジを利用する代替的な送り機構の図である。
【
図7】
図7a〜
図7dは、歯付きの駆動ローラーを利用する代替的な送り機構の図である。
【
図8】
図8a〜
図8cは、弾性の又は型押しされた駆動ローラーを利用する代替的な送り機構の図である。
【
図9】
図9a〜
図9fは、送り機構内の材料の柱状体が傾斜した代替的な送り機構の図である。
【
図10】
図10a〜
図10cは、1つの製造システムに関連して複数の構築領域及び送り機構が設けられる代替的な実施形態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本開示は、連続的に配置された一連の層からオブジェクトが形成される付加製造技術に関する。連続的に配置された一連の層の部分は、各層内及び下側の層の部分の双方と結合されている。そのようなプロセスは、例えばUV光を当てることにより流体ポリマーの層を固化すること、金属粉末等の粒状材料の層を、例えばレーザーにより選択的に焼結すること、バインダの液滴を適用することにより粒状材料の一連の層を選択的に結合すること、例えば接着剤の液滴を適用してセラミック粉末を結合すること又は例えばホットメルトポリマー又は光硬化性ポリマーを用い、一方で強い構成材料を、他方で弱い支持材料を層状に選択的に配置することによって実現できる。
【0033】
走査インクジェットヘッドから粉末床にバインダが選択的に噴射される粉末床インクジェットヘッド3D印刷(powder bed and ink jet head 3D printing)との関連で開示する例示の実施形態を以下で説明する。本開示は、分注ユニットにより層状に配置され、その後に選択的結合ユニットによって選択的に結合される粒状の製造材料を伴う構成に有利に適用される。しかしながら、開示する技術は、プリントヘッド及び配置される媒体を適切に選択することで他の付加製造の方法にも適用可能であるのが分かり得る。
【0034】
図1は、本開示の第1の実施形態を示す。
図1の実施形態では、ウエル4aが形成される上面を有するテーブル4が設けられる。該上面は平面状であり得る。
図1には、テーブル4の上面に亘って第1の方向Xに移動するように配置された粉末ディスペンサ1も示す。粉末ディスペンサ1は少なくとも1つの分注オリフィスを有する。粉末ディスペンサ1がウエル4aを横断する間に、分注オリフィスから構築領域を定義するウエル4a内に粉末が層として均一に分注され得る。分注オリフィスは、第1の方向に垂直な第2の方向Yに十分な広さを有するため、ウエル4aの幅に亘って第2の方向に均一な粉末の層をウエル4a内に分注できる。あるいは、分注オリフィスの幅は小さく、ウエル内に粉末の層を均一に分注できるように粉末ディスペンサ1の第2の方向における長さを走査し得る。
【0035】
図1には、選択的結合ユニットとしての役割を果たすプリントヘッド2も示す。本実施形態では、プリントヘッド2は粉末ディスペンサ1の第1の方向の前端に配置されるとともに、粉末ディスペンサ1の前側に亘って第2の方向に移動するように配置されたインクジェットユニットを含む。あるいは、プリントヘッド2は、ウエル4aの幅に広がるとともに第2の方向に固定された1つのインクジェットヘッドを含み得る。
図1の実施形態では、プリントヘッドは粉末ディスペンサ1の前端に固定されているが、代替的に、プリントヘッドは粉末ディスペンサ1から独立してウエル4aに亘って第1の方向に移動できるように設けられてもよい。
【0036】
ウエル4aは、その上側で粉末ディスペンサ及びプリントヘッドが配置されて移動するテーブル4aの上面が開口しているだけでなく、テーブル4の下面が開口するように広がっており、それによりテーブル4の上面と下面とが連結している。
【0037】
ウエル4aの下には、支持ユニットとしての役割を果たす送り機構5が設けられている。送り機構5は2対の把持部5a、5c及び5b、5dを含む。各把持部対は、ウエル4aの形状及び寸法に対応するがウエル4aの下に位置する空間に亘って互いに対向するように配置されている。各把持部対は互いに対向する方向に内向きの圧力を加えるように構成された把持面を有する。そのため、把持部は、ウエル4aと同等の形状を有するとともにウエル4aの直ぐ下に位置するオブジェクトの端部に把持力を加えることができる。
【0038】
図1の実施形態では、複数の把持部対がウエル4aの対向する角部に対応する場所に位置しており、ウエル4aの対応する角部に形状が対応する把持面を有する。
図1の実施形態では、把持部5a、5bからなる第1の対及び把持部5c、5dからなる第2の対は、互いに対向する同じ角部対に対応するように配置されている。しかしながら、代替的な構成では、第1の把持部対及び第2の把持部対のそれぞれがウエルに亘って互いに対向する方向が傾斜するように、より具体的には直角に傾斜するように、第1の把持部対が第1の角部対に関連付けられ、第2の把持部対が第2の対向する角部対に関連付けられる。第1の把持部対及び第2の把持部対のそれぞれは独立して、ウエルの下の空間から内方に駆動されるとともに外方に後退されることにより、それぞれ把持力を適用及び解除し、第1の把持部対及び第2の把持部対は、内方に駆動された状態又は外方に後退された状態のいずれかでウエル4aに対して上下に独立して移動され得る。
【0039】
送り機構5の下には、レシーバーユニットとしての機能を果たす、さらなる対の取り出し把持部6a、6bを有する取り出し機構(removal mechanism)が位置している。把持部6a、6bも、ウエル4aの対向する角部にも対応するとともに、把持部の間に位置するオブジェクトに対してそれぞれ把持力を加える/解除するために内方に挿入される/外方に後退され得る把持面を有する。
【0040】
最後に、取り出し機構6の下にはコンベア7が位置する。コンベア7はその上に置かれる物品を搬送するための搬送ユニットとしての機能を果たす。
【0041】
図1は、製造が始まる前の構成にある装置を示す。ウエル4a内には開始プレート(start plate)3が位置している。開始プレート3は、粉末ディスペンサ1から分注される第1の粉末層のための初期支持構造としての機能を果たす。テーブル4を透明な状態で示す
図2からより明確に分かるように、製造の開始時の時点では開始プレート3は、その表面がテーブル4の上面と同一平面上にあるように送り機構の把持部5a、5bからなる少なくとも第1の把持部対によって把持されている。実際に、
図1及び
図2では、第1の把持部対及び第2の把持部対の双方が開始プレートを把持するとともに支持している。
【0042】
図3aに示す位置から、開始プレート3の端部に把持圧力を加える送り機構5は、把持された開始プレート3をウエル4aに対して下方に移動させるために把持部5a、5bからなる第1の把持部対及び把持部5c、5dからなる第2の把持部対のそれぞれを下方に移動させることができる。これにより、粉末ディスペンサからウエル4aの少なくとも一部内の開始プレート3の上に第1の粉末層を分注することができるようにウエル4aに空間を作ることができる。その状態を
図3bに示す。送り機構5は製造プロセスの1つの断面層を作れるのに十分な深さを提供するためにプレートをかなり僅かな距離下方に移動させるだけでよい。
【0043】
図3bの状態から、
図3cに示すように、粉末ディスペンサはウエル4aに亘って第1の方向に移動して、ウエル4a内の開始プレート3の上面に均一な粉末層を分注する。テーブル4の上面に粉末層が充填されると、開始プレート3の上面に位置する薄い粉末層の上面を平滑且つ平らにするためにテーブル4の上面に亘ってスクレーパー又はローラー等の平滑化ユニット(図示せず)が移動し得る。平滑化ユニットはディスペンサ1との一体部分であってもよいし別に設けられたものでもよい。
【0044】
粉末が分注された後、装置の状態は
図3dに示すものとなる。
【0045】
図3dに示す位置から、粉末ディスペンサが後退されて
図3eに示す段階に到達する。この状態から、プリントヘッド2はウエル4aに亘って移動して粉末層上の選択的位置にバインダを噴射することにより粉末の部分を選択的に結合する。代替的な構成では、プリントヘッド2は第1の方向における粉末ディスペンサ1の後ろに固定配置でき、粉末の分注及びバインダの噴射作業を、統合された粉末ディスペンサ及びプリントヘッドの第1の方向における一回のパスで行うことができる。
【0046】
前進パス又は後退パスのいずれか若しくはその双方の間に又は後で、バインダが硬化性の場合は、紫外線硬化性バインダの場合には紫外光源等の硬化ユニットがバインダを硬化するために構築領域の上を通過し得る。バインダが経時的に硬化する場合は、別個の硬化ユニットは必要ない場合がある。硬化ユニットは構築領域の上を第1の方向に独立して移動可能であってもよいし、ディスペンサ1又はプリントヘッド2の端に固定されていてもよい。
【0047】
本実施形態では、プリントヘッドは、以下でさらに説明するように支持構造を形成するためにウエル4aの少なくとも端部領域で粉末を選択的に結合するように制御される。
【0048】
図3eの位置から、粉末ディスペンサ1及びプリントヘッド2は
図3aに示す位置に戻る。そして、送り機構5は、
図3b〜
図3dに連続的に示すように、ウエル内の開始プレート3の上面に現時点で存在する、分注されて少なくとも部分的に結合された層の上にさらなる層を分注することができるように開始プレート3をさらなる増分距離(incremental distance)下方に移動させる。
【0049】
なお、バインダの作用によって前の層の少なくとも端部領域が結合されているため、開始プレート3がこの時点でテーブル4の下面の下に下げられてウエル4aから完全に出ているとしても、プレート3の上面上の粉末層の固化した端部領域は粉末層を拘束するとともにその上に配置される1つ以上の連続する粉末層を支持する。したがって、
図3a〜
図3eに示す印刷装置の動作及び開始プレート3を下げることは、開始プレート3に形成されたウエル4aが支持構造の深さ全体に延在する必要なく、開始プレート3の上面に結合されていない粉末を実質的に含む箱様の支持構造が作られるまで連続的に繰り返され得る。
【0050】
この状態で、
図3fに示すように、把持部5c、5dからなる第2の把持部対は
図3fに示すように解除されるのに対して、把持部5a、5bからなる第1の把持部対は開始プレート3と係合したままである。この状態を
図3gに示す。そして、第2の把持部対は
図3hに示すように構築領域4aの方へと上方に動かされ、ウエル4aを通る一連の粉末層の固化された端部領域によって少なくとも部分的に形成された支持構造を把持するために内方に適用され得る。この状態を
図3iに示す。このプロセスは箱様の支持構造の任意の高さのために続けられ得ることが分かる。支持構造が全体として構築領域から下げられるときに、第1及び第2の把持部対が支持構造の壁部の連続する高い位置で支持構造の把持を交互に行う。
【0051】
このプロセスは、支持構造を製造する間に、一連の層の支持構造を形成する部分以外の部分を選択的に固化することで所望のオブジェクトも製造するようにプリントヘッドが制御され得るという利点がある。製造されるオブジェクトの最大寸法は、上述したように、結合の強さ及びウエルの下の利用可能な深さによってのみ制限される実質的に任意の高さを有し得る支持構造の内部空間によってのみ制限される。
【0052】
このプロセスを用いて、連続的な製造プロセスで同じであるか又は異なる一連のオブジェクトを続けて製造することができる。連続的な製造プロセスでは、一連の材料層が構築領域に加えられ、それぞれが1つ以上の所望のオブジェクトを含む一連の支持構造が完成後に送り機構5の下から取り出される。これは、
図3aを再度検討することで理解できる。しかしながら、ウエル内に開始プレート3が位置する
図3aで説明した前の状況に代えて、ウエルは、ウエルの壁部により抑制されるとともに、前に作られた箱様の支持構造の上面に支持される1つ以上の実質的に結合されていない粉末層を含んでいると考えるべきである。箱様の支持構造はオブジェクトを含み、その上部は開始プレート3の機能を果たし得る。支持構造の上部は閉じていてもよいし開いていてもよい。送り機構5によって支持構造が連続的に下げられると、上述したようにウエル4a内に配置される一連の層からオブジェクトを含み得る新たな支持構造が製造される。完成した下側の支持構造は、未完の上側の支持構造が形成されるまで、送り機構5の把持部5a、5bからなる少なくとも1つの把持部対によって保持される。その時点では、把持部5c、5dからなる他方の把持部対は少なくとも上側の支持構造を支持するために適用され得る。完成した下側の支持構造及び未完の上部の支持構造を含む粉末の柱状体の全体は、未完の上側の支持構造が製造されるのに伴って、上側の支持構造体及び下側の支持構造が含み得る任意の各オブジェクトと共にウエル4aから下方に移動させられる。送り機構5の少なくとも1つの把持部対によって未完の上側の支持構造が支持されると、完成した下側の支持構造を支持する把持部は、完成した下側の支持構造を送り機構5からリリースするために外方に取り外され得る。
【0053】
完成した下側の支持構造と未完の上側の支持構造との間には少なくとも1つの結合されていない粉末層又は少なくとも1つの部分的に結合されていない層が存在するため、下側の支持構造及び上側の支持構造と共に、結合されていない粉末及びその中に含まれるオブジェクトで構成される、結合及び非結合の粉末の一連の柱状体は結合されていない粉末層で分離される。そのため、下側の完成した支持構造は送り機構から離れる方に落とされ得る。
図1の実施形態では、取り出し機構6は第2の把持部対を含む。第2の把持部対は、最も下側の完成した支持構造を制御された形で粉末の柱状体の残りの部分から分離するために、粉末の柱状体内にある下側の支持構造に適用される。下側の完成した支持構造の上に配置される上側の未完の支持構造は既に把持部5a、5bからなる第1の把持部対によって保持されているため、下側の完成した支持構造が取り外されてもさらなる粉末層がウエル4a内に配置されて製造プロセスを続けることができる。
【0054】
図1の実施形態では、柱状体内の最も下側の支持構造を把持するとともにそれを粉末の柱状体から分離した取り出し機構6は、支持構造と該支持構造が含み得るオブジェクトとが、例えば焼成ステップ、焼結ステップ、焼き付けステップ、硬化ステップ、検査ステップ、塗装ステップ、別のさらなる製造ステップ又は梱包ステップのために装置から離れるよう動かされるように支持構造をコンベア7上に配置するように配置及び制御される。
【0055】
そのような動作を
図4a〜
図4cに連続的に示す。
図4aでは、取り出し機構6の把持部6a、6bが支持構造の壁部に適用されている。そして、把持部6a、6bは、支持構造とそれが含むオブジェクトとを柱状体から分離するために、支持構造を材料の柱状体から離れるように下方に移動させる。
図4bでは、取り出し機構によって支持構造がコンベア7の上に設置され、把持部6a、6bを後退させることでリリースされる。
図4cでは、取り出し機構は、次の支持構造を受け取るために
図4aに示す位置に対応する位置に配置されている。コンベア7の上に配置された支持構造は次のステップのために矢印の方向に運ばれる。
【0056】
粉末及びバインダの好適な供給が利用可能であるとすれば、上述のプロセスは無制限に行うことができる。開始プレート3は、最初に配置される結合されていない粉末のために安定したベースを提供するために製造プロセスの開始時にだけ必要となる。開始プレート3が送り機構からリリースされた後、製造されるオブジェクトをそれぞれが含む一連の支持構造の連続的な製造を続けることができる。この場合、粉末の柱状体は、送り機構5内の最も下で支持される、製造される少なくとも支持構造によって常に支持される。したがって、粉末及びバインダがウエル4aに加えられて、支持構造と、支持構造内に含まれる任意の所望のオブジェクトが形成され、完成した支持構造と共にそれらが含み得るオブジェクトとが送り機構5の底部で取り出し機構6によって取り出されてコンベア7によって遠くに搬送されるという、完全に連続した製造プロセスが可能になる。
【0057】
支持構造が粉末柱状体を支持できるとともに支持構造の側部から又はベースを通じて粉末が流れ出るのを抑制できれば、支持構造の構成は特に重要でない。多くの粉末は押し固められると開口面を通って流れ出ることはない。したがって、支持構造の壁部及びベースは固くなくてもよく、開口しているか又はメッシュとして形成することもできる。これは、支持構造内に含まれる製造されたオブジェクトを容易にリリースするのにとりわけ有用である。支持構造が送り機構からリリースされて、例えば取り出し機構6の把持部6a、6bによって支持されると、粉末を妨げる(disturb)とともに粉末が箱体の開口部を通って流れ出るように箱体が優しく振動される。使用済みの粉末と任意で支持構造自体とを任意で洗浄し粉末ディスペンサに戻してリサイクルするためにサイロ内に回収することができる。
【0058】
支持構造の側部を把持及びリリースするために挿入及び後退される2つの把持部対を有する送り機構を有するものとして上記の実施形態を説明してきたが、代替的な構成も可能である。そのような構成の1つを
図5に示す。係る構成では、
図1の第1の把持部対及び第2の把持部対は第1のベルト5a及び第2のベルト5bに置換されている。ベルト5a及び5bはエンドレスであるとともに弾性を有し、支持構造がベルト5a及び5bの下端でそれらをリリースするためにウエル4a内でそれらの製造から降りてくるときに支持構造の側部を把持するためにウエル4aの下の空間に亘って互いに離間して配置される外向きの把持面を有する。したがって、支持構造は、降りてくる間は常にそれらの端部で支持されている。
図5の実施形態では、取り出し機構6を省略してもよい。この場合、最も下側の支持構造が単純にリリースされてコンベア7の上に落とされる。コンベア7は支持構造、内部に含まれる結合されていない粉末及び支持構造内の任意の製造されたオブジェクトを矢印で示す方向に移動させる。
【0059】
他の形体の把持部も可能である。例えば、支持構造の互い違いの角部対に作用する複数の把持部対を設けてもよい。
【0060】
一部の構成では、支持構造の端部と係合する要素、例えばベルトの表面は柱状体の一方側のみに設けられ得る。柱状体の反対側の面は滑らかな摺動面のみに対向し得る。
【0061】
支持構造をより簡単に把持することができるように、支持構造の外面に把持パターンを有するように製造してもよく、把持面は、支持構造の把持パターンに対応する把持パターンを有するように形成され得る。
【0062】
別の変形例では、支持構造に対して必要な支持及び移動を提供するために、ワーム駆動の形で支持構造の端部と係合するように配置される1つ以上の回転スクリューを設けることができる。そのようなスクリューは、対応して形成される支持構造の部分を把持するために構築領域内に突出し得る。一部の構成では、対応して形成される支持構造の部分は、少なくとも部分的にスクリューの上部等の好適な部分の周りに形成され得る。柱状体の対向する側に配置された2つのスクリュー5a、5bを有するそのような構成を
図6aに示す。スクリュー5a、5b、5c、5dがより大きく、柱状体の4つの辺に配置されて、構造領域内へとさらに広がる代替的な構成を
図6bに示す。例えば、とりわけ回転テーブルと関連する一部の構成では、スクリューは、支持構造がスクリューの周りに配置されるように構築領域の中央位置内に又は中央位置を通るように広がり得る。中央位置は回転テーブルの材料ディスペンサの回転軸と一致し得る。
【0063】
さらなる変形例では、支持構造に必要な支持及び移動を提供するために、ラックアンドピニオン駆動の形で支持構造の1つ又は2つ以上の端部と係合するように配置される1つ以上の駆動ギア又は歯付きローラーを、説明した各把持部に代えて設けることができる。形成される支持構造を構成する層の端部領域は各ギアに対向するために端部又は壁部に対応する歯付き部又は突起部(ridged portion)を有することが好ましい場合がある。対向する一対のローラー5a、5bを有するそのような構成を
図7aに示す。2対の対向するローラー5a、5b、5c、5dを有する代替的な構成を
図7bに示す。2対の対向するローラー5a、5b、5c、5dは、互いに直角に配置され、5a、5bの対が5c、5dの対の下に配置されている。
図7cは、歯付きローラー5aが柱状体の一方側のみに配置され、柱状体の他方側の面は平滑面5bに対向する構成を示す。
図7dは、回転テーブル4の下に歯付きローラー5a、5b、5c、5dの対が配置された構成をさらなる代替例として示す。柱状体に沿って設けられる一連の複数組のギア又は歯付きローラーは、下側の支持構造をリリースするときに上側の支持構造が支持されたままでいられるように送り領域を構成することができる。連続して配置された2つ以上のギア若しくはローラー又は複数組のそのようなギア若しくはローラーをそのような送り機構内に設けることができる。
【0064】
さらなる変形例では、支持構造に必要な支持及び移動を提供するために、支持構造の端部に圧力を加えるように配置された一連の弾性ローラーあるいは型押しされたローラーを設けることができる。一対の対向するローラーを有するそのような構成を
図8aに示す。このアプローチのために、2対の対向するローラーを有する代替的な構成を
図8bに示す。2対の対向するローラーは直角に配置されるとともに、一方の対が他方の対の下に配置されている。
図8cは、柱状体の一方側だけに弾性ローラー5aが配置され、柱状体の他方側の面は平滑面5bに対向する構成を示す。再び、柱状体に沿って設けられる一連の複数組のローラーは、下側の支持構造をリリースするときに上側の支持構造が支持されたままでいられるように送り領域を構成することができる。連続して配置された2つ以上のローラー若しくは複数組のローラーをそのような送り機構内に設けることができる。
【0065】
開示した構成において、送り機構は層を垂直に、即ち下方向のみに移動させることに限定されていない。例えば、
図5のベルトから想像できるように、送り機構は、傾斜した粉末柱状体を形成する層を垂直に移動させて、層の動きに横方向の要素を与えるために傾斜させることができる。特に、そのような構成では、支持構造の端部と係合する要素、例えばベルトの表面は一方側のみに、好ましくはそのような傾斜した柱状体の下側のみに設けられ得る。傾斜した柱状体の反対側の面は結合されていない粉末だけを含むために滑らかな摺動面に対向し得る。そのような構成の例を
図9a〜
図9fに示す。
【0066】
図9aでは、歯付き把持面を有する把持部5a、5bは傾斜した柱状体の一方側のみに配置される。傾斜した柱状体の反対側の面は平滑な摺動面に対向し得る。
図9bでは、傾斜した柱状体の傾斜していない2つの側にスクリュー5a、5bが配置されている。少なくとも傾斜した裏面と、任意で柱状体の傾斜した裏面に対向する面は平滑な摺動面に対向する。
図9cでは、傾斜した柱状体の2つの側に歯付きギア5a、5bが配置されている。少なくとも傾斜した裏面と、任意で柱状体の傾斜した裏面に対向する面は平滑な摺動面に対向する。
図9dでは、傾斜した柱状体の2つの傾斜した側に歯付きローラー5a、5bが配置されている。
図9eでは、傾斜した柱状体の裏面に対向するように歯付きローラー5a、5bが配置されている。任意で、柱状体の傾斜した裏面の反対側の面は、平滑な摺動面に対向し得る。
図9fでは、傾斜した柱状体の裏面に対向するように平滑な摺動面5cが配置されている。歯付きローラー5a、5bは、柱状体の傾斜した裏面と反対側の面に対向するように配置されている。様々な支持要素及び把持要素の数及び配置は限定なく変更され得る。
【0067】
一部の構成では、複数のテーブルを設けることができる。それらの上に共通のプリントヘッド、材料ディスペンサ、平滑化ユニット等が必要に応じて可動に配置され得る。一部の変形例では、共通の平面に配置されるいくつかの構築領域が設けられ得る。例えば、構築領域を定義する複数のウエルが共通のテーブルの上面に形成され得る。各構築領域は自身の送り機構と、任意で自身のコンベアとに関連付けられ得る。そして、そのような構成は、個々に支持構造内で収容された複数のオブジェクトを連続したプロセスで同時に製造することができる。各ウエルに関連する送り機構は、簡潔性のために同様の構造を有することができる。そのような変形例を
図10a〜
図10cに示す。
【0068】
図10aは、共通の固定されたテーブル4に6つの構築領域を有するロータリーテーブルへの適用を示す。6つの構築領域のそれぞれは、下向に延びるとともにテーブルの中心から外方へ半径方向に延びるラックアンドピニオン送り機構5を含み、共通のプリントヘッド、材料ディスペンサ、平滑化ユニット等はテーブルの中心を中心に回転する。各送り機構は関連するコンベア7で終了する。図示の構成では、コンベア7はリリースされた支持構造をテーブルから離れるように半径方向に移動させる。
【0069】
図10bは、3つの構築領域を有するリニアテーブ4への適用を示す。各構築領域は、下方に延びるとともに、共通のプリントヘッド、材料ディスペンサ、平滑化ユニット等が沿って移動する線から横方向に離れるように同じ方向に延びるラックアンドピニオン送り機構5を含む。各送り機構は共通のコンベア7で終了する。図示の構成では、コンベア7はリリースされた支持構造を材料ディスペンサの移動方向と平行にテーブルから離れるように移動させる。あるいは、各送り機構は別個の関連するコンベアで終了し得る。
【0070】
図10cは、3つの構築領域を有するリニアテーブ
ル4への適用を示す。各構築領域は、下方に延びるとともに、共通のプリントヘッド、材料ディスペンサ、平滑化ユニット等が沿って移動する線から横方向に延びるラックアンドピニオン送り機構5を含む。送り機構のうちの2つは、前記線から離れる1つの方向に延びるのに対して、1つの送り機構は反対方向に延びる。各送り機構は関連するコンベア7で終了する。図示の構成では、コンベア7はリリースされた支持構造を材料ディスペンサの移動方向と平行にテーブルから離れるように移動させる。送り機構のうちの2つは共通のコンベアを共有するのに対して、他方の送り機構は別のコンベアに関連する。この変形例では、別のコンベアは共通のコンベアと同じ方向に延びる。
【0071】
支持構造の構成も特に限定されない。
図1〜
図5の実施形態では、開いた上面を有するとともに例えば全ての側面及び底面が完全に閉じた立方体状の箱が使用され得る。しかしながら、代替的な構成も可能である。例えば、
図11aは、上面と2つの対向する側壁とがメッシュで形成された立方体状の箱の形体の支持構造を示す。
図11bは、例えば一連の立方体状の箱支持構造I〜IVを示す。Iは開いた上面を有し、IIは開いた上面と開いた1つの側壁とを有し、IIIは開いた1つの側壁と分離可能な上面とを有し、IVは開いた1つの側壁と、一対の対向する側壁を部分的に下方に延びる分離可能な上面とを有する。分離可能な部分を有する支持構造は、分離可能な部分と支持構造の残りの部分との間の結合されていない材料又は緩やかに結合された材料の小さな領域を使って形成され得る。そのため、結合されていない材料又は緩やかに結合された材料の部分で支持構造が破砕されて支持構造が開くため、収容されたオブジェクトに容易にアクセスできる。そのような結合されていない領域又は緩やかに結合された領域は、結合されていない領域に供給されるバインダの量を減らすことによって又は分離可能な部分を、多孔質領域(多孔質領域内でボンド接続部が分離可能な部分から支持構造の残りの部分に延びるがそれら自体は結合されていない材料によって分離されている)により支持構造の残りの部分に接続することによって生成され得る。この後者のアプローチは。用紙にミシン目を設けて、そのミシン目に沿って分離を容易にすることに似たものである。
【0072】
図11cは、立方体状の形体の支持構造Iと傾斜した平行六面体の形体の支持構造IIとの比較を示す。後者の構造は、
図9a〜
図9eに示す傾斜した送り機構の場合にとりわけ有用であり得る。
【0073】
さらなる可能性として、
図11dは内部が複数の区画IIに分割された支持構造Iを示す。各区画II内にオブジェクトが形成され得る。そのような構成は取扱いに対する強度が改善している。
【0074】
最後に、
図11eは、環状の代替的な分割された支持構造Iを示す。分割すべき結合されていない領域又は緩やかに結合された領域に沿って分かれて、例えば5つ小さな容器IIに分割され得る。それぞれの容器は、例えば環状の1つの区画を表す。そのような構成は、
図12に示すように、
図8bに図示のロータリーテーブルとの関連でとりわけ有用である。
【0075】
粉末及びバインダに関しては特定の要件は存在しない。1つの考えられる変形例では、オブジェクトの場合とは異なるバインダが支持構造を形成するため用いられる。あるいは、オブジェクトの場合とは異なる接合又は結合技術が支持構造を形成するのに用いられ得る。これにより、支持構造を一時的な又は弱い結合で、例えば可溶性ポリマーで金属粉末を結合させて製造する一方で、金属粉末内に含まれる任意の製造オブジェクトをレーザー焼結等のより強力な結合で製造することが可能になる。そのような構成は、支持構造の作成に用いる金属粉末を適切な溶剤で洗浄して粉末の結合を解消させることでリサイクルさせることができ、製造されるオブジェクトはそのような洗浄の影響を実質的に受けない。また、そのようなアプローチは、支持構造の粉末の結合を解消するとともにオブジェクトの周りの結合されていない粉末を洗い流すが製造されたオブジェクトに影響を与えない好適な溶剤を支持構造に噴射するか又は該好適な溶剤に支持構造を浸漬させることにより支持構造内に含まれるオブジェクトの容易なリリースを可能にする。
【0076】
本技術は、限定されないが、レーザー焼結、熱焼結、液体の光重合又は構成材料及び支持材料を層状に押し出すことを含む、他の種類の3D印刷及び関連製造技術にも同等に適用可能である。当業者であれば、必要なのはプリントヘッド及び/又はディスペンサに適切な変更を加えることだけであるのが容易に分かる。
【0077】
正方形又は長方形の構築領域であって、その上を少なくとも第1の方向に粉末ディスペンサ及びプリントヘッドが直線的に前後に移動する、正方形又は長方形の構築領域との関連で上記の開示を説明してきたが、本技術は、円形の構築領域を定義する円形状のウエルを有し、該円形状の構築領域の上を継続的に回転する放射状(radial)粉末ディスペンサ及び連続的に回転する放射状プリントヘッドが連続して通過する装置にも適用可能である。そのような構成を
図7dに示す。実際に、そのような状況は、支持構造が製造されるオブジェクトの一部ではないため、そのような円形印刷構成の端部では低解像度で印刷するだけでよく、オブジェクトはウエルの中心に配置されて比較的高い空間解像度で印刷され得ることからよりさらに好ましい。
【0078】
当然ながら、一方でプリントヘッド及び粉末ディスペンサの動きと、他方で構築領域とは相対的であればよく、実際には、プリントヘッド及び粉末ディスペンサは、ベースフレーム等の外部の基準フレーム(reference frame)に対して固定される一方で、テーブル、構築領域及び送り機構が外部基準フレームに対して移動する。実際に、大半の用途では、プリントヘッド及び粉末ディスペンサを、任意の外部基準フレームに対して可動に配置する方が簡単である。
【0079】
図1の実施形態では、連続する支持構造体が常に強固に保持されるのを確実にするために第1の把持部対と第2の把持部対との間隔が適切に調節されるため、高さが一定の箱様の支持構造が有利に用いられる。対照的に、
図4のベルト型の構成では、一連の粉末柱状体内で様々な高さの箱を収容することができる。
【0080】
一部の粉末の場合、箱は最低で1つの側壁支持部があればよい。しかしながら、粉末の閉じ込めを改善するためには、底面と、任意で上面とを有する支持構造が選択され得る。底面及び上面は、支持構造の取り扱いを容易にするために相互に平行であるのに対して、側部が構築領域の正面の寸法及び形状に概ね対応することが有利であり得る。
【0081】
上記の開示は、開示した発明を限定しないことを意図しているため、添付の特許請求の範囲は、当業者が上記の開示を実施する上で実現可能であり得る変形、変更、置換及び同等物の全てを含むものと解釈すべきである。開示した構成の全ては限定なく組み合わされ得るとともに、開示した1つの構成からの適用可能な概念は、限定なく他の開示した構成に適用され得る。